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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W05
管理番号 1383428 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2022-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-07-12 
確定日 2022-04-10 
異議申立件数
事件の表示 登録第6377176号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6377176号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6377176号商標(以下「本件商標」という。)は、「PISEn」の欧文字を別掲のとおりの態様で表してなり、令和2年2月27日に登録出願、第5類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として、同3年4月9日に登録査定され、同月14日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する国際登録第1524157号商標(以下「引用商標」という。)は、「PISANE」の欧文字を横書きしてなり、第1類、第5類及び第29類ないし第33類に属する日本国を指定する国際登録において指定された商品を指定商品として、2019年(平成31年)4月15日にBeneluxにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、2019年(令和元年)10月8日に国際商標登録出願されたものである。
なお、引用商標に係る出願は、現在、審査係属中である。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第8条第1項及び同法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきものであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第28号証を提出した。
(1)商標法第8条第1項について
ア 本件商標は、やや太字で丸みを帯びた「PISEn」の欧文字を斜体で横書きしてなるところ、該文字は特定の観念を生じ得ない造語ないし日本ではなじみのない語であるから、これに接する取引者・需要者はその構成文字からみて、容易に「ピセン」の称呼を生ずるものといえる。
イ 引用商標は、「PISANE」の文字からなるところ、特定の観念を生じ得ない造語ないし日本ではなじみのない語であるから、これに接する取引者・需要者はその構成文字からみて、英語読み又はローマ字読み等で称呼するとみられる。そこで引用商標についてみると、冒頭の「PI」は「ピ」と読まれ、これに続く「SANE」は、「サネ」の称呼のほか、例えば、親しまれた英語でボーリング場のレーンを表す「lane」、クレーンを表す「crane」、飛行機を表す「plane」(プレーン)、窓ガラスを表す「windowpane」(ウィンドウペーン)のように、「・・・ane」の部分は直前の文字と結合した「ーン」の長音で発音されることと同様に、「S」と「ANE」が結合されて「セーン」の称呼が生ずるということができる(甲3〜甲6)。
そうすると、引用商標に接する場合は「ピサネ」ないし「ピセーン」の称呼が生ずると結論付けられる。
ウ 本件商標から生ずる「ピセン」の称呼と引用商標から生ずる「ピセーン」の称呼とは、その中間音の「セ」の音に長音「ー」を帯同するか否かの差があるのみで、両称呼をそれぞれ一連に称呼するときは、その語調、語感が近似し、称呼上相紛れるおそれがあるものと判断すべきである。
してみれば、本件商標と引用商標とは、外観においては区別することができるとしても、観念の点においては比較することができず、結局、称呼において類似する商標であり、かつ、その指定商品においても同一もしくは類似のものと認められるから、本件商標は、商標法第8条第1項に違反して登録されたものである(甲7)。
(2)商標法第4条第1項第15号について
本号に係る最高裁判決(平成12年7月11日 第三小法廷判決)に沿って、以下のとおり詳述する。
ア 本件商標と引用商標の類似性について
上述したように、本件商標と引用商標は、称呼において類似する商標である。
イ 引用商標の周知・著名性について
申立人は、1852年にビーツの製糖業を開始して以来、植物を加工した食品原料等の製造を中心に、欧米・アジア等世界規模で事業を進める創業160年を迎えようとする企業である(甲8、甲9)。特に、1990年からエンドウ豆たん白の生産を開始し、「PISANE」をブランド名として事業を展開し、日本市場にも平成29年から本格的に進出し、日本のCBC株式会社(以下「CBC社」という。)と共同で「PISANE」ブランドのエンドウ豆たん白の拡販を進めている(甲10〜甲13)。とりわけ、「国際食品素材展」、「ヘルスフードエキスポ」及び「食品開発展」等、日本開催の展示会には日本進出初年から出展して、積極的に事業展開を行っている(甲14〜甲16)。
申立人に係るエンドウ豆たん白は、「代替たん白質」と呼ばれる分野における商品で「持続可能な開発目標(SDGs)」の目標2である持続可能な食料生産システムに対する関心が世界的に高まる中、注目を浴びている。例えば、欧州では2020年5月に新戦略「Farm to Fork Strategy」が発表され、植物・藻類・昆虫等の代替たん白質分野の研究開発を重視している。我が国でも、農林水産省がフードテック(食に関する最先端技術)分野における課題や対応について、民間企業、関係省庁等の関係者で構成する「フードテック研究会」を令和2年4月に立ち上げた(甲17)。
代替たん白質が注目を浴びる背景として、世界的な人口増による将来のたん白質不足への懸念と、家畜を飼育する畜産業が地球環境に与える温室効果ガスによる負荷の高さ、ビーガン等の動物の福祉に対する関心の高まりがある。加えて、超高齢社会においては、健康寿命延伸のため、フレイル(加齢による心身の虚弱)予防等、高齢者の身体機能の低下を抑制する観点から、食生活の中で十分なたんばく質を摂取することが市場の活況を後押ししている。昨今のコロナ禍においては、巣ごもり需要の長期化を背景に、たん白質関連食品が勢いを増している。健康意識が一層高まる中、たん白質が重要な栄養素との認識が生活者の間に広がり、たん白質関連市場の追い風となっている。粉末をはじめ飲料、スナック類、水産練り製品に加えて、主食の麺類や豆腐など日常の食事にも浸透し、選択肢の幅が大きく広がっている。これに伴い、たん白原料の種類も拡大している。乳たん白の他、エンドウ豆、魚、アーモンド、昆虫など多様化が進んでいる(甲18〜甲22)。
このような市場環境の下、申立人は、植物を加工したエンドウ豆たん白等の食品原料製造等の分野で世界の主導的企業として知られており、日本国内においても売上げを伸ばしている(甲23、甲24)。
そして、申立人に係るブランドである「PISANE」は、30年以上にわたり使用をされ、引用商標の他、日本を含む世界各国において商標登録を受けている(甲25〜甲28)。
以上から、申立人に係る引用商標は、食品原料製造等の分野で広く知られているということができる。
ウ 引用商標の独創性
引用商標は、特定の観念を生じ得ない造語ないし日本ではなじみのない語であり、かつ、本件商標の登録出願時及び登録査定時において申立人の商標として既に広く知られていたから、独創性のある商標ということができる。
エ 商品の関連性及び需要者の共通性について
本件商標の指定商品のうち、「食餌療法用食品・飲料・薬剤」及び「乳幼児用食品」は、代替たん白を原料とするものも含まれるから、申立人に係る代替たん白の分野と密接に関連する。加えて、上述した代替たん白を原料とする食品需要の高まり・市場の拡大を考慮すれば、本件商標が上記商品について使用をされた場合には、取引者・一般需要者等が商品の出所を誤認するおそれがある。
そうすると、申立人の商品を表示するものとして広く知られた「PISANE」の文字と類似する本件商標が、当該指定商品について使用をされた場合、取引者・需要者が、当該商品が申立人ないし申立人と経済的・組織的に関連がある者に係る商品であるかのように認識され、出所の混同を生じさせるおそれがあることは明らかである。
オ 小括
以上の事情を勘案すると、本件商標が指定商品について使用をされた場合、その商品の取引者・需要者が普通に払われる注意力をもってしても、申立人の業務に係る商品と出所について混同するおそれがある。
申立人の引用商標は、本件商標の出願日前において出願され、かつ、保護すべき申立人の業務上の信用が化体し、著名な表示となっていたからである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。

4 当審の判断
(1)商標法第8条第1項について
ア 本件商標
本件商標は、前記1のとおり、「PISEn」の欧文字を別掲のとおりの態様で表してなるものである。
そして、我が国においては、特定の意味合いを有しない欧文字からなる商標は、英語読み風又はローマ字読み風に称呼されるのが一般的といえるから、本件商標は、その構成文字に相応し「パイセン」又は「ピセン」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものというのが相当である。
イ 引用商標
引用商標は、前記2のとおり、「PISANE」の欧文字からなり、上記アと同様の理由により、該文字に相応し「ピセーン」又は「ピサネ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものというのが相当である。
ウ 本件商標と引用商標との類否
本件商標と引用商標との類否を検討すると、上記ア及びイのとおり、両者の外観は、構成態様が明らかに異なることに加え、構成文字のつづりを比較しても、後半部において「En」と「ANE」という文字の差異を有するところ、この差異が5文字又は6文字という比較的少ない文字構成からなる外観全体の視覚的印象に与える影響は大きく、両者は相紛れるおそれのないものとみるのが相当である。
次に、本件商標から生じる「パイセン」又は「ピセン」と引用商標から生じる「ピセーン」又は「ピサネ」の称呼について、まず、「ピセン」と「ピセーン」の称呼を比較すると、両者は、第2音「セ」の長音の有無という差異を有するところ、この差異が3音又は長音を含む4音という短い音構成からなる称呼全体の語調語感に及ぼす影響は少なくなく、両者をそれぞれ一連に称呼しても、相紛れるおそれのないものと判断するのが相当である。
また、両商標の他の称呼の比較においては、両者の称呼は、3音又は4音と短い音構成において、1音以上の差異を有していることからすれば、語調語感が明らかに異なり、相紛れるおそれのないものである。
さらに、観念においては、両商標は共に特定の観念を生じないものであるから比較することができない。
そうすると、本件商標と引用商標は、外観、称呼において相紛れるおそれがなく、観念において比較できないものであるから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。
その他、両商標が類似するというべき事情は見いだせない。
エ 小括
以上のとおり、本件商標と引用商標は非類似の商標であるから、両商標の指定商品が同一又は類似するとしても、本件商標は、商標法第8条第1項に違反して登録されたものといえない。
(2)商標法第4条第1項第15号について
ア 引用商標の周知性
(ア)申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、申立人は、1852年にビーツの製糖業を開始、1990年からエンドウ豆たん白の生産を開始し、「Pisane」(「PISANE」など大文字、小文字が異なるものを含む。)をブランド名として事業を展開していること(甲10〜甲12)、我が国において、CBC社が中心となり、申立人の商品「エンドウ豆たん白『Pisane』」(以下「申立人商品」という。)を2017年及び2018年の「国際食品素材/添加物展・会議」、「ヘルスフードエキスポ」に出展したこと(甲14、甲15)、及び近時、代替たん白質が注目を浴びていること(甲17〜甲22)が認められる。
しかしながら、申立人商品の我が国における販売量、売上高など販売実績を示す具体的な主張及び証左は見いだせない。なお、申立人が日本国内で売上げを伸ばしていることを示すものとして提出された甲第24号証は、容易に作成可能な書面であり、当該売上を裏付ける証左は見いだせないから、かかる売上を採用することはできない。
(イ)上記(ア)からすれば、引用商標「PISANE」は、我が国において、遅くとも2017年(平成29年)頃から申立人商品に使用されていると認められるものの、申立人商品の我が国における販売実績を示す証左は見いだせないから、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
イ 混同のおそれ
上記アのとおり、引用商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、上記(1)のとおり本件商標は、引用商標と相紛れるおそれのない非類似の商標であって別異の商標というべきものである。
そうすると、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものといえない。
(3)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第8条第1項及び同法第4条第1項第15号のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
別掲(本件商標)


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異議決定日 2022-04-01 
出願番号 2020021003 
審決分類 T 1 651・ 4- Y (W05)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 佐藤 淳
特許庁審判官 小俣 克巳
石塚 利恵
登録日 2021-04-14 
登録番号 6377176 
権利者 カントン ピセン エレクトロニクス カンパニー リミテッド
商標の称呼 ピセン、パイセン 
代理人 伊東 忠彦 
代理人 大上 寛 
代理人 宮崎 修 
代理人 伊東 忠重 

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