• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部申立て  登録を維持 W1421242526272835
管理番号 1383425 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2022-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-06-25 
確定日 2022-04-05 
異議申立件数
事件の表示 登録第6372874号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6372874号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6372874号商標(以下「本件商標」という。)は、「ETRE TOKYO」の欧文字及び「エトレトウキョウ」の片仮名を上下2段に書してなり、平成30年12月17日に登録出願、別掲のとおり、第14類、第16類、第21類、第24類ないし第28類及び第35類に属する商品及び役務を指定商品及び指定役務として、令和3年3月4日に登録査定、同年4月5日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標は商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するものとして、引用する登録第1825116号商標、登録第1903490号商標、登録第2630803号、登録第2677701号商標、登録第2687892号商標、登録第2695327号商標、登録第3080537号商標、登録第3151639号商標、登録第3285166号商標、登録第3297576号商標、登録第4155150号商標、登録第4200506号商標、登録第4255916号商標、登録第4300853号商標、登録第4679959号商標、登録第5395478号商標、国際登録第610967号商標、国際登録第610969号商標、国際登録第844764号商標、国際登録第1017112号商標、国際登録第1017364号商標、国際登録第1121098号商標及び国際登録第1324447号商標は、「ETRO」の文字よりなる商標、「ETRO」の文字を要部とする商標、「エトロ」の文字よりなる商標及び「エトロ」の文字を要部とする商標(以下、これらをまとめて「引用商標」という。)であって、いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標はその指定商品及び指定役務中、第14類、第21類、第24類ないし第28類及び第35類の商品及び役務(以下「申立てに係る商品及び役務」という。)について商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第19号に違反して登録されたものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第27号証(枝番号を含む。以下、枝番号のすべてを示すときは、枝番号を省略する。)を提出した。
1 引用商標の周知著名性について
(1)申立人について
申立人は、イタリア国ミラノに所在するファッション業界において著名なイタリア法人であり、ハウスマーク「ETRO」を用いて、イタリアのみならず、我が国を含む80ヶ国以上にてビジネス展開を行っている(甲5〜甲10)。
申立人は、創業者ジローラモ・エトロ氏によって1968年に設立され、特別な可塑化技術で処理した、いわゆる「ペイズリー」柄のジャガード織物は、1980年代におけるステータスシンボルとして認知されている。
さらに、申立人は、事業を1985年にホームコレクション(寝具・インテリア用織物製品)に展開し、1989年には、香水製品を発売開始し、1990年代に入ると、既製服部門(プレタポルテファッション)に進出し、1996年には、ミラノで有名なファッションウィークにてファッションショーを開催し、その知名度を高めることになった。
その後、30年以上にわたり、ベースとなるデザインを変更することなく、「ペイズリー」柄を各製品のデザインの一部(ワンポイント)又は全部として採用し、とりわけ、この「ペイズリー」柄を採用したバッグコレクションは、「アルニカ」と称され、申立人の代表的な商品ラインナップとして、特別なカテゴリーに分類されている。
そして、2018年に、創立50周年を迎え、「ペイズリー(アルニカ)」に焦点を当てた展覧会を、イタリアのミラノ文化博物館で開催し、我が国でも関連するイベントや、伊勢丹新宿店本館、阪急うめだ本店にてポップアップストア「ETRO 50」が期間限定でオープンするなど、世界中の関連需要者の間で、多くの注目を集めた。
申立人の取扱商品は、ジャケット、シャツ、ドレス、パンツ、スカートなどのウェア(衣料品)、スカーフ、ショール、宝飾品等のアクセサリー、バッグ、シューズなどの革製品に加えて、クッション、毛布等の寝具・インテリアリネン製品、香水類など、多岐にわたる(甲4)。
申立人の我が国への進出は、50年近く前に遡るものの、現在は、子会社である株式会社エトロジャパン(以下「エトロジャパン社」という。)を通じて、日本全国の需要者向けに営業活動が行われている。
申立人は、現在、我が国において、東京銀座にある直営店を中心に、松屋銀座、高島屋、三越、大丸、阪急、伊勢丹、小田急、東武、西武、そごう、松坂屋、岩田屋など、全国の大手百貨店に、また、プレミアム・アウトレットや三井アウトレットパークなどの主要なアウトレットモール店舗を有し、現在48店舗を数える(甲11)。
また、バーニーズニューヨークなどの、セレクトショップを通じた販売も存在する(甲12)。
エトロジャパン社の2014年ないし2018年の年間売上高は、我が国においては、年間74億円ないし80億円であり、コンスタントな売り上げがある。
申立人の2005年ないし2016年の全世界の国別売上高を示し(甲13)、日本向け輸出の規模は、全世界で4位ないし7位を占め、1,400万ユーロないし2,500万ユーロ(現在の為替基準で約20億円ないし35億円)の売上高を計上している。
エトロジャパン社向けに申立人から、2017年及び2018年に発行されたインボイスの写し(甲14)、2013年ないし2018年までに、申立人が我が国向けに支出した宣伝広告費をまとめたレポートの写し(甲15)により、我が国向けに年間2,000万円前後の広告支出を行っており、申立人の我が国におけるビジネスが甚大であり、また、申立人の知名度が継続的に高まっていることが推察される。
申立人の広告は、VOGUE(ヴォーグ)、HARPER’S BASAAR(ハーパーズバザー)、ELLE(エル)、FIGARO(フィガロ)、家庭画報、婦人画報、25ans、PRECIOUS、SPURなどの女性誌、並びにLEON、PEN、Safariなどの男性誌といった著名な雑誌類に掲載され、我が国のファッション業界や関連需要者に対して影響力を与え、注目されてきたことが推認される(甲15)。
(2)引用商標の使用について
引用商標は、包装箱、紙袋、タグ、バインダー、領収書入れ、封筒、便せん及び招待レターなどの各種資材に例外なく用いられており、申立人の業務に係る商品の出所を示すアイコン(シンボル)として、広く統一的に使用されている(甲18〜甲20)。これにより、顧客は、タグ等に表示された引用商標から、申立人の出所を認識することができる。
東京芸術大学にて2012年11月7日に開催したイベントでの申立人がペイズリー柄とともに歩んできた歴史や独自性のPR(甲21)、前日のワークショップでのペイズリー柄を自らのアイコンとして築きあげてきたかを実演とともに説明する機会となった(甲22)。
東京銀座の直営店で開催された「アルニカ・エキシビジョンプレビューパーティ」では、「ペイズリー(アルニカ)」について周知するイベントであり、招待状、当日の会場内には、引用商標が統一的に表示され、「アルニカ・エキシビジョン」の内覧会で177名の報道関係者、42名の重要顧客を招き、招待レターには、引用商標が用いられ、招待者のギフトには、引用商標を表示した紙袋に入れられたポシェットとプレスリリースを配布した(甲23、甲24)。
(3)引用商標の周知著名性について
2014年ないし2018年の5年間に申立人に関して取り上げられた新聞記事の写し(甲25)から、とりわけ、全国主要百貨店38店のバイヤーの投票によって選出される百貨店バイヤーズ賞において、メンズ部門賞のラグジュアリー部門でランク上位を維持し続けていること、特に2014年ないし2016年にかけて1位を獲得したことが判る。
これらの記事からは、申立人が、ラグジュアリーファッションブランドの一つとして、主要な百貨店を中心に、全国的に名声を伝播させてきたことが推認される。
また、2016年ないし2021年までに発行された、申立人に関して取り上げられたインターネット記事の写し(甲26)から、とりわけ、シャネル、ジバンシイ、ルイ・ヴィトン、フェンディ、サルバトーレ・フェラガモ、ディオールといった世界有数のファッションブランドとともに、2018年及び2019年の秋冬流行ファッションの解説に、申立人のブランド「エトロ」が取り上げられている(甲26の5)。
他の記事からも判るように、引用商標は、世界有数のハイエンドファッションブランドの一つとして認知されており、シーズンごとに記事に取り上げられるほどの人気を博している。
さらに、「日本での知名度はアルマーニやVersace・PRADAなどに劣るが、ミラノコレクション系ブランド全体の中では最高ランクの一つであるため、価格帯はかなり高額であり、ショーは大規模な会場で開催され、世界中のスーパーモデルが出演し、世界中のメディア・一般層からの注目を浴びる。」、「日本の有名人の間では40代を中心とする世代で着用されている傾向のようです。」の記述がある(甲7)。
申立人は、ファッション業界において世界的に著名なアパレル業者であるが、とりわけハイエンドな高級商品を多く取り扱っており、購入する需要者層も、セレブ層を含む比較的裕福な層であるか、あるいは、ファッションに高い関心を持つ層であり、申立人に関して比較的深い知識を備えている者が中心であると推測される。
よって、申立人による各商品の販売活動に加えて、各資料に示すようなファッション誌サイトや新聞記事における紹介・報道、イベント・展示会の開催を通じて、かかる需要者の間で、引用商標が、申立人固有の出所識別標識として、広く認知されるに至っていることが容易に推認され、その高い名声は、申立人の本国イタリアはもちろん、国境を越えて、欧州のみならず、我が国に至るまで、世界中に伝播しているというべきである。
以上のことから、引用商標は、長年にわたる継続的な使用により、申立人の業務に係る商品の出所を示す商標として、少なくともイタリアや我が国における関連する取引者、需要者の間で、遅くとも本件商標の登録出願日には、広く認識されるに至ったというべきであり、その周知著名性は、現在に継続されているというべきである。
2 商標法第4条第1項第11号該当性
(1)本件商標は、その構成中に「TOKYO/トウキョウ」の語を含み、当該語は、東京都を示す地理的表示として、我が国の取引者、需要者が容易に認識し得るものであって、特に商品及び役務との関係を問わず、当該語について独立した自他商品・役務の識別機能を発揮しないことは明確である。
他方、本件商標の構成中「ETRE」及び「エトレ」部分は、フランス語で「be動詞」の意味合いを持つとしても、その指定商品及び指定役務との関係で、特定の品質等の記述的意味合いを持つものとして理解されないことも明白であり、平均的な語学力を有する日本人のフランス語に関する知識がさほど高くないことからすると、実質的に造語として捉えることは明らかである。当該フランス語の観念の把握が需要者において容易でない事情を考慮すると一方の語が他方を概念的に修飾するような、熟語的な一体的な観念が認識されるとは考え難く、かかる構成において、「ETRE」」及び「エトレ」部分に着目して取引に供されることは想像に難くない。
よって、本件商標は、「エトレトウキョウ」と一体に称呼されるとともに、「ETRE」及び「エトレ」部分に着目され、「エトレ」と称呼される可能性は全く否定できず、その蓋然性は相当程度あるというべきである。
他方、引用商標は、「ETRO」又は「エトロ」を要部として含んで構成され、「エトロ」と称呼される。
この点、本件商標の称呼「エトレ」とは、最も弱く発音される末尾音において異なるのみであり、その相違音「ロ」と「レ」は、互いにラ行で共通し、日本人は、巻き舌音を言語の発音構成に有しないこともあり、ラ行内での母音の相違は、聞き分けにくい特徴がある。また、末尾音である点に加えて、前音の「ト」が比較的響きのある子音であることからすると、前音に吸収されてその相違音が与える印象は小さくなり得る。
よって、本件商標は、引用商標との間で称呼上相紛らわしいというべきである。
また、外観も、「ETRE」と「ETRO」を比較する場合、4文字中、1文字が相違するのみであり、外観上も相紛れるおそれがある。
よって、本件商標と引用商標とは、互いに類似するというべきである。
(2)本件商標に係る指定商品は、引用商標に係る指定商品に含まれるか、密接に関係するものであり、両指定商品は、同一又は類似するものであることは明らかであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
3 商標法第4条第1項第15号該当性
(1)本件商標と引用商標とは、極めて高い類似度を有する。
(2)申立人は、引用商標を、ジャケット、シャツ、ドレス、パンツ、スカートなどのウェア(衣料品)、スカーフ、ショール、宝飾品等のアクセサリー、バッグ、シューズなどの革製品に加えて、クッション、毛布等の寝具・インテリアリネン製品、香水類について、我が国において、長年にわたり継続的に使用してきた。
その結果、遅くとも本件商標の登録出願日には、引用商標は、取引者、需要者の間で、申立人の業務に係る商品の出所を示す表示として、広く知られるに至っていたというべきであり、その周知・著名性は、現在に至るまで維持されている。
(3)引用商標は、当該業界において、ありふれて採択されていない、申立人によって独自に創作、採択された商標である。
また、引用商標は、申立人の主要なハウスマークとして、また、商号の要部として、長年にわたって使用されてきたものである。
このように、引用商標は、創造性の高い造語であり、また、申立人のビジネスを代表する申立人固有の商標として、使用されてきた。
(4)申立人は、上記(2)の申立人商品を展開し、少なくとも、これらの展開実績からして、申立人の衣料品、雑貨類に関する多角経営の可能性は疑いない。
(5)本件商標に係る指定商品は多岐にわたるものの、引用商標の使用されてきた申立人商品は、本件商標に係る指定商品のうち、第14類、第24類及び第25類の各商品と同一又は類似するものである。
また、その他、第21類、第26類ないし第28類における本件商標に係る指定商品はいずれも、雑貨類、家庭用品、衣服用の装飾品の類であって、第35類の指定役務は、主に上記商品を取り扱う小売関連役務であるから、仮に申立人商品と重複しないものであっても、それらとの関係で、取引者、需要者が共通し、また、流通経路も重複し得ることから、互いに密接な関連性を有するものである。
(6)小括
以上のように、本件商標は、引用商標との間で高い類似度を有し、引用商標は、申立人の業務に係る商品を示すものとして、取引者、需要者の間で、広く知られており、引用商標は、申立人により独自に採択された、ありふれて採択されていない独特な創造商標であって、かつ、申立人のハウスマークないし商号の要部として用いられてきたものであり、本件商標に係る指定商品と、申立人の業務に係る商品とは、重複ないし密接に関連し、また、取引者、需要者は共通している。
これらの事情を総合的に考慮すれば、本件商標をその指定商品に使用した場合、これに接したと取引者、需要者は、申立人、同人と資本関係又は業務提携関係を有する者の業務に係る商品であるかの如くその出所について誤認混同を生ずるおそれが十分にあるというべきであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
4 商標法第4条第1項第19号該当性
(1)申立人は、引用商標を、自らの業務に係る商品を示す商標として、我が国を含む世界各国において長年にわたって使用しており、その結果、引用商標は、申立人の業務に係る商品を示すものとして、取引者、需要者の間で、我が国において又は外国において、広く知られているというべきである。
(2)本件商標と引用商標とは、互いに類似する。
(3)不正の目的について
本件商標の商標権者(以下「本件商標権者」という。)は、「衣料品・雑貨等の企画・製造・販売」を業としている(甲27)。これは明らかに申立人のビジネスと共通し、関連するものであることは疑いなく、上述のとおり、引用商標は、ファッション業界における世界有数のハイエンドブランドの一として、同業界において広く知られているものである。
かかる状況において、本件商標権者が、その登録出願時点において、周知著名な引用商標を知しつしていたことは明らかであり、知り得る立場にあったというべきである。すなわち、本件商標権者は、その知り得る立場からすれば、申立人ないし引用商標に何ら依拠することなく、偶然に本件商標を採択したとは考えられない。
事実、甲第27号証に示すとおり、本件商標権者は、「ETRE」の文字を、「TOKYO」の文字に比して著しく大きく書した、より引用商標に近い態様で本件商標を使用しており、引用商標との間で、出所の誤認混同を生じさせる意図で、本件商標を採択したものと容易に推認可能である。
よって、本件商標権者は、本件商標の登録出願時点において、外国または日本国内において周知著名な引用商標の存在を知りながら、その顧客吸引力にフリーライドする目的で、引用商標と類似する本件商標を登録出願しようとしたものである。
(4)小括
以上より、本件商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして我が国又は外国における需要者の間に広く認識されている引用商標と類似し、また、不正の目的をもって使用するものであるから、商標法第4条第1項第19号に該当する。

第4 当審の判断
1 引用商標の周知性について
(1)申立人の主張及び同人の提出した証拠によれば、以下のとおりである。
ア 申立人は、テキスタイルメーカーとして1968年に創業され、1981年には、カシミール紋様を使った生地を「ペイズリー」という名称で展開し、家具やカーテンなどに用いられ、その製品に「ETRO」と名付け、その後、1985年には、ペイズリー柄を使ったホームコレクション(寝具・インテリア用織物製品)を発表し、1989年には、その柄をジャガード織りで表現したバッグを完成させ、ネクタイ、ショールなどを合わせたアクセサリー分野にも進出し、メンズ・ウイメンズウエアを含めたトータルブランドとして成長した(甲5〜甲7)。
その後、2018年に、創立50周年を迎え、「ペイズリー」に焦点を当てた展覧会を、イタリアのミラノ文化博物館で開催し、我が国でも関連するイベントや、伊勢丹新宿店本館、阪急うめだ本店にてポップアップストア「ETRO 50」が期間限定でオープンした(甲8〜甲10)。
申立人は、現在、我が国において、東京銀座にある直営店を中心に、高島屋、三越などの大手百貨店にエトロブティック、また、エトロ・アウトレットとして48店舗を有し(甲11)、申立人のホームページには、ウィメンズ&メンズウェア、アクセサリー、フレグランス、クッションなどのホームコレクションが掲載されている(甲4)。
イ 新聞記事情報の写し(甲25)によると、申立人は、「百貨店バイヤーズ賞メンズ」において、2014年ないし2016年にかけて1位を獲得し、ブランドの一つとして「エトロ」が記載されている。また、本件商標の登録出願前の「Precious」のウェブサイト(甲26の1〜7)には、申立人の商品が取上げられている。
ウ 申立人は、日本向け輸出の規模(甲13)、宣伝広告費(甲15)に関する申立人作成の一覧表を提出しているが、その裏付けとなる証拠の提出もなく、それをもって評価することはできない。
また、エトロジャパン社向けの申立人からのインボイス(甲14)及び各ファッション雑誌の申立人商品掲載(甲16)から、我が国において販売されているものの、引用商標を付した申立人の業務に係る商品についての市場シェア、売上高や具体的な宣伝広告の回数や範囲が確認できない。
(2)上記(1)からすると、引用商標は、被服、バッグ、クッションなどの商品に使用されて、我が国においてもある程度知られていることは認められるとしても、引用商標に係る商品の市場シェア、売上高、宣伝広告の状況など、引用商標の著名性を具体的に裏付ける証拠が提出されていないため、申立人の提出に係る証拠のみをもってしては、本件商標の登録出願時において、引用商標が申立人の業務に係る商品を表示する商標として、取引者、需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標
本件商標は、上記第1のとおり、「ETRE TOKYO」の欧文字及び「エトレトウキョウ」の片仮名を上下2段に横書きした構成よりなるところ、上段の「ETRE」と「TOKYO」の間に半文字程度の空白があるとしても、外観上まとまりよく一体に表されており、下段の片仮名は上段の欧文字の読みを表したものと認識できるものである。
そして、本件商標から生じる「エトレトウキョウ」の称呼も格別冗長でなく無理なく一連に称呼し得るというべきである。
また、本件商標の構成中「TOKYO」及び「トウキョウ」の文字部分が地名の「東京」を表したものであるとしても、本件商標の上記構成及び称呼からすれば、取引者、需要者は、本件商標の構成全体をもって、一体不可分のものとして認識し、把握するとみるのが相当である。
さらに、本件商標の構成中「ETRE」及び「エトレ」の文字部分のみが取引者、需要者に対し商品及び役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認めるに足りる事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、その構成文字から「エトレトウキョウ」の称呼のみを生じ、該文字は、辞書等に載録がないものであって、かつ、当該文字が、我が国において、特定の意味合いを有する語として親しまれている等の特段の事情は存在しないから、特定の観念は生じないものである。
(2)引用商標
ア ETRO商標
引用商標中、「ETRO」の文字よりなる商標及び「ETRO」の文字を要部とする商標(以下、これらをまとめて「ETRO商標」という。)は、該「ETRO」文字に相応して「エトロ」の称呼を生じ、該文字は、辞書等に載録がないものであって、かつ、当該文字が、我が国において、特定の意味合いを有する語として親しまれている等の特段の事情は存在しないから、特定の観念は生じないものである。
イ エトロ商標
引用商標中、「エトロ」の文字よりなる商標及び「エトロ」の文字を要部とする商標(以下、これらをまとめて「エトロ商標」という。)は、該「エトロ」の文字に相応して「エトロ」の称呼を生じ、該文字は、辞書等に載録がないものであって、かつ、当該文字が、我が国において、特定の意味合いを有する語として親しまれている等の特段の事情は存在しないから、特定の観念は生じないものである。
(3)本件商標と引用商標との類否について
ア 本件商標とETRO商標との類否について
本件商標とETRO商標を比較すると、本件商標は、欧文字と片仮名を2段に表し、ETRO商標は、「ETRO」の文字よりなるもの又は「ETRO」の文字を要部とするものであるところ、両者は、その構成文字数が明らかに相違するものであり、かつ、本件商標における「TOKYO」及び「トウキョウ」の文字の有無の差異を有するものであるから、外観上、明確に区別できるものである。
また、本件商標から生じる「エトレトウキョウ」の称呼とETRO商標から生じる「エトロ」の称呼とは、両者は、語頭の「エト」の音を共通にするとしてもその他の音を異にするばかりでなく、全体の構成音数において明らかに相違するものであるから、称呼上、明瞭に聴別できるものである。
さらに、本件商標及びETRO商標は、特定の観念を生じないから、両者は、観念において比較することができない。
そうすると、本件商標とETRO商標とは、観念において比較することができないとしても、外観において明確に区別できるものであり、称呼において明瞭に聴別できるものであるから、これを総合的に考察すれば、互いに紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
その他、本件商標とETRO商標とが類似するというべき事情も見いだせない。
イ 本件商標とエトロ商標との類否について
本件商標とエトロ商標とを比較すると、本件商標は、欧文字と片仮名を2段に表し、エトロ商標は、「エトロ」の文字よりなるもの又は「エトロ」の文字を要部とするものであるところ、両者は、その構成文字数が明らかに相違するものであり、かつ、本件商標における「TOKYO」及び「トウキョウ」の文字の有無の差異を有するものであるから、外観上、明確に区別できるものである。
また、本件商標から生じる「エトレトウキョウ」の称呼とエトロ商標から生じる「エトロ」の称呼とは、両者は、語頭の「エト」の音を共通にするとしてもその他の音を異にするばかりでなく、全体の構成音数において明らかに相違するものであるから、称呼上、明瞭に聴別できるものである。
さらに、本件商標及びエトロ商標は、特定の観念を生じないから、両者は、観念において比較することができない。
そうすると、本件商標とエトロ商標とは、観念において比較することができないとしても、外観において明確に区別できるものであり、称呼において明瞭に聴別できるものであるから、これを総合的に考察すれば、互いに紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
その他、本件商標とエトロ商標とが類似するというべき事情も見いだせない。
(4)小括
以上のとおり、本件商標と引用商標とは、非類似の商標であるから、本件商標の指定商品及び指定役務と引用商標の指定商品が類似するとしても、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用商標の周知性について
引用商標は、上記1のとおり、申立人の業務に係る商品を表すものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国又は外国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないものである。
(2)本件商標と引用商標の類似性の程度について
上記2のとおり、本件商標と引用商標とは、観念において比較することができないとしても、外観及び称呼において相違し、互いに紛れるおそれのない非類似の商標というべきであるから、商標の類似性の程度は低いというべきである。
(3)出所の混同のおそれについて
上記(1)及び(2)のとおり、引用商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国又は外国の需要者の間に広く認識されているとはいえず、本件商標と引用商標とは、商標の類似性の程度は低いものである。
そうすると、本件商標は、本件商標権者がこれをその指定商品及び指定役務について使用しても、取引者、需要者が、引用商標を連想又は想起することはなく、その商品及び役務が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品及び役務の出所について混同を生ずるおそれはないとするのが相当である。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第19号該当性について
引用商標は、上記1のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国又は外国の需要者の間で、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、広く認識されていたとは認められないものであって、上記2のとおり、本件商標と引用商標とは、類似しないものである。
また、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、本件商標権者が引用商標にフリーライドするなど不正の目的をもって本件商標を使用するものであると認めるに足りる証拠は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
5 むすび
以上のとおり、本件商標は、申立てに係る商品及び役務について、商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
別掲(本件商標の指定商品及び指定役務)
第14類「貴金属,宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品,キーホルダー,宝石箱,記念カップ,記念たて,身飾品,貴金属製靴飾り,時計」
第16類「事務用又は家庭用ののり及び接着剤,封ろう,紙製包装用容器,プラスチック製包装用袋,型紙,裁縫用チャコ,ししゅう用図案,衛生手ふき,紙製タオル,紙製テーブルクロス,紙製手ふき,紙製ハンカチ,荷札,電気式鉛筆削り,印刷物,書画,写真,写真立て」
第21類「デンタルフロス,ガラス基礎製品(建築用のものを除く。),電気式歯ブラシ,家事用手袋,ガラス製又は陶磁製の包装用容器,プラスチック製の包装用瓶,アイスボックス,氷冷蔵庫,米びつ,食品保存用ガラス瓶,水筒,魔法瓶,清掃用具及び洗濯用具,アイロン台,霧吹き,こて台,へら台,湯かき棒,浴室用腰掛け,浴室用手おけ,ろうそく消し,ろうそく立て,植木鉢,家庭園芸用の水耕式植物栽培器,じょうろ,愛玩動物用食器,愛玩動物用ブラシ,小鳥かご,小鳥用水盤,洋服ブラシ,貯金箱,お守り,おみくじ,化学物質を充てんした保温保冷具,紙タオル取り出し用金属製箱,せっけん用ディスペンサー,トイレットペーパーホルダー,花瓶,水盤,香炉,靴ブラシ,靴べら,靴磨き布,軽便靴クリーナー,シューツリー」
第24類「織物(「畳べり地」を除く。),メリヤス生地,フェルト及び不織布,オイルクロス,ゴム引防水布,ビニルクロス,ラバークロス,レザークロス,ろ過布,布製身の回り品,かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布,ふきん,シャワーカーテン,のぼり及び旗(紙製のものを除く。),織物製トイレットシートカバー,織物製椅子カバー,織物製壁掛け,カーテン,テーブル掛け,どん帳,織物製ティッシュボックスカバー,織物製ティッシュケース用カバー」
第25類「被服,洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,キャミソール,ティーシャツ,和服,アイマスク,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,耳覆い,ナイトキャップ,帽子,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,靴類,げた,草履類,仮装用衣服,運動用特殊靴,運動用特殊衣服」
第26類「電気式ヘアカーラー,被服用はとめ,テープ,リボン,編みレース生地,刺しゅうレース生地,房類,組みひも,腕止め,衣服用き章(貴金属製のものを除く。),衣服用バックル,衣服用バッジ(貴金属製のものを除く。),衣服用ブローチ,帯留,ボンネットピン(貴金属製のものを除く。),ワッペン,腕章,頭飾品,ボタン類,靴飾り(貴金属製のものを除く。),靴はとめ,靴ひも,靴ひも代用金具,造花の花輪・リース」
第27類「洗い場用マット,敷物,壁掛け(織物製のものを除く。)」
第28類「愛玩動物用おもちゃ,おもちゃ,人形,浮袋,水泳用浮き板」
第35類「新聞記事情報の提供,織物及び寝具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,履物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,かばん類及び袋物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,金具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,印刷物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,時計及び眼鏡の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,ろうそくの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,愛玩動物用被服類・愛玩動物用ベッド・犬小屋・小鳥用巣箱・愛玩動物用食器・愛玩動物用ブラシ・小鳥かご・小鳥用水盤・愛玩動物用おもちゃの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,花瓶・水盤・風鈴の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,靴クリーム・靴墨の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,靴べら・靴ブラシ・靴のインソール・靴磨き用クロス・靴用ストレッチャーの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,織物製トイレットシートカバー・トイレ用織物製フタカバー・トイレットペーパーホルダー用織物製カバーの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,カーテン及び敷物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」


この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
異議決定日 2022-03-25 
出願番号 2018154027 
審決分類 T 1 652・ 222- Y (W1421242526272835)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 榎本 政実
特許庁審判官 小俣 克巳
豊田 純一
登録日 2021-04-05 
登録番号 6372874 
権利者 株式会社HYBES
商標の称呼 エトレトウキョウ、エトレトーキョー、エトレ 
代理人 野村 明代 
代理人 山尾 憲人 
代理人 勝見 元博 
代理人 佐藤 玲太郎 
代理人 鷺 健志 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ