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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W10
管理番号 1383417 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2022-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-06-10 
確定日 2022-04-07 
異議申立件数
事件の表示 登録第6369220号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6369220号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6369220号商標(以下「本件商標」という。)は、「EMSgo」の欧文字を標準文字で表してなり、令和2年3月12日に登録出願、第10類「医療用機械器具,家庭用電気マッサージ器,医療用電子式筋肉刺激装置,美容用マッサージ器,マッサージ機器,振動マッサージ器,医療用リハビリテーション機械器具,ガルヴァーニ電気ベルト(医療機械),ガルヴァーニ電気治療機械,医療用紫外線ランプ,医療用電極,医療用電気式ベルト,物理療法用機械器具,電気式はり治療器,医療用超音波装置,医療用ランプ,家庭用の電気式低周波マッサージ器,家庭用超音波式美容マッサージ器,家庭用電気マッサージ器の部品及び付属品,業務用美容マッサージ器用カバー,業務用美容マッサージ器,家庭用電熱マッサージ器,業務用電気式美顔マッサージ器,業務用電気マッサージ器,家庭用美顔電気マッサージ器,超音波を利用した家庭用の美顔用電気マッサージ器,電気式美顔マッサージ器,低周波治療機能を有する家庭用電気マッサージ器,家庭用低周波マッサージ器,美容用の家庭用電気マッサージ器,美容用電気マッサージ器,脱毛処置部冷却用パッド,クッション型家庭用電気マッサージ器,顔の手入れに用いる家庭用電気マッサージ器,足用のバスタブのついた家庭用電気マッサージ器,医療用カテーテル・ガイドワイヤ・ステント並びにその部品及び附属品,医療用機械器具並びにその部品及び附属品」を指定商品として、同3年3月16日に登録査定、同月26日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が本件商標に係る登録異議の申立てにおいて引用する登録第4395854号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、1997年7月31日にスイス連邦においてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、平成10年1月28日に登録出願、第10類「歯科用機械器具,獣医科用機械器具,義肢,義眼,義歯,その他の医療用機械器具」を指定商品として、同12年6月30日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第19号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
本件商標は、互いに欧文字で構成され、大文字表記の「EMS」と小文字表記の「go」とに分かれていることから、「EMS」の文字と「go」の文字とは、視覚上分離して観察される。
また、「go」の文字は、自他商品等識別力を発揮する商標の末尾に付加されることで、当該商標の関連製品として理解、認識される実情も存在する(甲3、甲4)。
さらに、本件商標の構成文字全体より生じる「イーエムエスゴー」の称呼も8音と比較的冗長であるため、「イーエムエス」と「ゴー」との間で息継ぎが自然に発生する。
そのため、本件商標に接する取引者、需要者は「EMS」の文字部分に印象を留め、これより生じる称呼をもって取引に資する場合も決して少なくない。
してみれば、本件商標の要部は「EMS」の文字部分であり、「イーエムエス」の称呼を生じる。
(2)引用商標について
引用商標は、互いに欧文字で構成され、大文字で表記された「EMS」と、「ELECTRO MEDICAL SYSTEMS」とを、上下に二段書きした構成であることから、「EMS」と「ELECTRO MEDICAL SYSTEMS」とに、視覚上分離して観察される。
また、下段の「ELECTRO MEDICAL SYSTEMS」の文字は、上段の「EMS」の文字よりも小さく付随的に表記されている。
さらに、引用商標の構成文字全体より生じる「イーエムエスエレクトロメディカルシステムズ」の称呼も冗長であるため、「イーエムエス」と「エレクトロメディカルシステムズ」との間で息継ぎが自然に発生する。
そのため、引用商標に接する取引者、需要者は「EMS」の文字部分に印象を留め、これより生じる称呼をもって取引に資する場合も決して少なくない。
してみれば、引用商標の要部は「EMS」の文字部分であり、「イーエムエス」の称呼を生じる。
(3)商標の類否
ア 外観
本件商標の構成文字「EMSgo」は、引用商標の要部「EMS」の構成文字を全て含むこと、大文字表記の「EMS」と小文字表記の「go」とに分かれ「EMS」の文字部分が「go」の文字部分よりも目立つ形で配置されていることなどから、時と処を異にして離隔的に観察した場合には、両者は外観上相紛れる可能性が高い。
イ 称呼
本件商標及び引用商標からは「イーエムエス」の称呼が生じるから、両商標の称呼は同一である。
ウ 観念
本件商標の要部「EMS」及び全体構成「EMSgo」は、いずれも引用商標の要部「EMS」の構成文字を全て含んでいる。
そうすると、本件商標からは、引用商標の権利者でもある申立人の「EMS」製品のラインナップに属する商品であるという観念が生じる。
よって、本件商標と引用商標は、観念において混同が生じるおそれがある程度に類似しているといえる。
(4)指定商品の類否
本件商標は、第10類「医療用機械器具,医療用電子式筋肉刺激装置,マッサージ機器,振動マッサージ器,医療用リハビリテーション機械器具,ガルヴァーニ電気ベルト(医療機械),ガルヴァーニ電気治療機械,医療用紫外線ランプ,医療用電極,医療用電気式ベルト,物理療法用機械器具,電気式はり治療器,医療用超音波装置,医療用ランプ,医療用カテーテル・ガイドワイヤ・ステント並びにその部品及び附属品,医療用機械器具並びにその部品及び附属品」を一部の指定商品としている。
一方、引用商標は、第10類「歯科用機械器具,獣医科用機械器具,義肢,義眼,義歯,その他の医療用機械器具」を指定商品としている。
よって、本件商標の指定商品と、引用商標の指定商品とは、いずれも医療用機械器具の分野に属するものであり、同一又は類似の商品であることは明らかである。
(5)広く認識された引用商標を本件商標の構成に含んだ場合
商標審査基準[第15版]によれば、商標法第4条第1項第11号に該当するものとして「指定商品又は指定役務について需要者の間に広く認識された他人の登録商標と他の文字又は図形等と結合した商標は、その外観構成がまとまりよく一体に表されているもの又は観念上の繋がりがあるものを含め、原則として、その他人の登録商標と類似するものとする。」が挙げられている。
申立人は、自身が開発した歯科用機械器具に「EMS」の語を使用し、英語、ドイツ語、フランス語、イタリア語、中国語、韓国語など計14か国語に及ぶウェブサイトを開設し販売を行っている(甲5)。同サイトには日本語に翻訳された我が国向けのウェブサイトも含まれており(甲6)、同サイトの企業情報ページ(甲7)には、申立人の現地法人であるEMSJapan株式会社(以下「EMSJapan社」という。)が記載されている。
我が国では、このEMSJapan社を通じて、日本国内の歯科医療器具の商社等の需要者に対し、歯科用機械器具を販売している(甲8〜甲11)。
また、これらの販売にあたって需要者向けのチラシやパンフレットを作成し、営業活動を行っている(甲12〜甲15)。
さらに、申立人は、諸外国において、第10類の歯科用機械器具を指定商品とする「EMS」の語を含んだ商標権を取得している(甲16〜甲19)。
以上の事実を考慮すると、少なくとも本件商標の登録査定時において、引用商標が、申立人の業務に係る商品を表示する商標として我が国における取引者、需要者の間に広く認識されていたことは明白である。
よって、本件商標「EMSgo」が、外観構成がまとまりよく一体に表されていると仮定したとしても、本件商標は、需要者の間に広く認識されている引用商標と、他の文字とを結合した商標に該当する。
(6)小括
以上のとおり、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛らわしい類似商標であり、その指定商品も同一又は類似している。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
2 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号の規定に違反してなされたものであるから、その登録は取り消されるべきである。

第4 当審の判断
1 「EMS」の文字及び引用商標の周知性について
(1)申立人は、「EMS」の文字及び引用商標の周知性を根拠として、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当する旨主張しているところがあるので、まずこの点について判断する。
申立人の提出した証拠及び同人の主張によれば、以下のとおりである。
ア 申立人は、スイスの法人であり、我が国においては、現地法人であるEMSJapan社を通じて2020年(令和2年)5月から2021年(令和3年)2月にかけて4社に対し、歯科用機械器具を販売していたことがうかがえる(甲8〜甲11)。
イ 申立人は、これらの販売にあたってチラシやパンフレット(甲12〜甲15)を作成し、営業活動を行っていたと主張している。これらには「EMS」の文字が使用されているものの、当該チラシやパンフレットの作成・頒布事実、作成・頒布部数、作成・頒布時期等を確認できる証拠は提出されていない。
ウ 申立人は、スイス、インド、欧州及び米国において、第10類の歯科用機械器具を指定商品とする「EMS」の文字を含んだ商標権を取得している(甲16〜甲19)。
(2)判断
上記(1)によれば、申立人は、我が国において、2020年(令和2年)5月から2021年(令和3年)2月にかけて4社に対し、歯科用機械器具を販売していることはうかがえるものの、提出された証拠は、わずか4社に対する請求書のみである。また、その販売に際してチラシやパンフレットを作成していたと主張するも、当該チラシやパンフレットの作成・頒布事実、作成・頒布部数、作成・頒布時期等を確認できる証拠は提出されていないものであるから、当該チラシやパンフレットに「EMS」の文字が使用されているとしても、これらの証拠をもって、我が国において「EMS」及び引用商標が広く知られていたとはいい難い。
さらに、スイス、インド、欧州及び米国において、「EMS」の文字を含んだ商標権を取得しているとしても、それが直ちに我が国における「EMS」の文字及び引用商標の周知性に結びつくものともいえない。
その他、「EMS」の文字及び引用商標を使用した具体的な申立人の取扱いに係る商品の販売を示す証拠や、当該商品の売上高や市場シェアなどの実績、取引状況等を示す客観的な証拠の提出はなく、他に、本件商標の登録査定時における「EMS」の文字及び引用商標の使用事実を示す客観的な証拠は見いだせない。
そうすると、具体的な使用事実に基づいて、「EMS」の文字及び引用商標の使用状況を把握し、その周知性の程度を客観的に推し量ることができないから、「EMS」の文字及び引用商標は、本件商標の登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表すものとして、取引者、需要者の間に広く認識されていたと認めることはできない。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
本件商標は、「EMSgo」の欧文字を標準文字で表してなるところ、「EMSgo」の文字は、辞書等に載録されている語ではなく、全体として特定の意味合いを有するものとして認識されているというような事情も見いだせないものであるから、一種の造語として認識されるものである。
また、上記1のとおり、「EMS」の文字及び引用商標の周知性は認められないものであって、そのほかに、本件商標の構成中、いずれかの文字部分が殊更に看者の注意をひくというような事情も見いだせない。
そして、本件商標より生じる「イーエムエスゴー」の称呼も、無理なく一連に称呼し得るものである。
そうすると、本件商標は、その構成全体をもって一体のものと認識されるというべきであるから、その構成文字に相応して「イーエムエスゴー」の称呼のみを生じ、特定の観念を生じないものである。
(2)引用商標について
引用商標は、別掲のとおりの構成よりなるところ、その構成態様からして、上段の「EMS」の文字部分が取引者、需要者に対し、商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものというべきであり、当該文字部分だけを要部として抽出し、本件商標と比較して商標の類否を判断することも許されるというべきである。
そうすると、引用商標においては、その構成全体より生じる「イーエムエスエレクトロメディカルシステムズ」の称呼とともに、要部である「EMS」の文字部分に相応して「イーエムエス」の称呼も生じるというべきである。
そして、「EMS」は、「European Monetary System(通貨の統合をめざすEC(欧州共同体)が、域内での為替の安定化を目的として1979年に設けた制度。)」、「Express Mail Service(最優先の扱いで配達される国際郵便。)」等を表す語であるものの、直ちに特定の観念を生じるとはいい難いものである。
してみれば、引用商標は、「イーエムエスエレクトロメディカルシステムズ」又は「イーエムエス」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
(3)本件商標と引用商標の類否について
ア 外観について
本件商標と引用商標の外観を比較すると、両者の構成はそれぞれ上記(1)及び(2)のとおりであるから、その構成全体の比較においては明らかに異なるものである。
また、本件商標と引用商標の要部である「EMS」の文字部分とを比較しても、「go」の文字の有無の差異により、判然と区別し得るものである。
そうすると、本件商標と引用商標とは、外観において紛れるおそれはない。
イ 称呼について
本件商標から生じる「イーエムエスゴー」の称呼と引用商標全体から生じる「イーエムエスエレクトロメディカルシステムズ」の称呼を比較すると、構成音数、構成音が明らかに異なるものである。
また、本件商標から生じる「イーエムエスゴー」の称呼と引用商標の要部から生じる「イーエムエス」の称呼との比較においても、構成音数、「ゴー」の音の有無の差異により、両者は明瞭に聴別し得るものである。
そうすると、本件商標と引用商標とは、称呼において紛れるおそれはない。
ウ 観念について
本件商標及び引用商標は、いずれも特定の観念を生じないものであるから、観念において比較することはできない。
エ そうすると、本件商標と引用商標とは、観念において比較することができないものであるとしても、外観及び称呼において相紛れるおそれのないものであるから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標であるというのが相当である。
その他、本件商標と引用商標とが類似するというべき事情は見いだせない。
(4)小括
本件商標と引用商標とは、上記(3)のとおり、非類似の商標であるから、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品が同一又は類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものでなく、その登録は、同条第1項の規定に違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。

別掲
【別掲】
引用商標


(この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
異議決定日 2022-03-28 
出願番号 2020026837 
審決分類 T 1 651・ 261- Y (W10)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 小松 里美
特許庁審判官 榎本 政実
冨澤 美加
登録日 2021-03-26 
登録番号 6369220 
権利者 ▲陳▼真武
商標の称呼 イイエムエスゴー、イイエムエス、ゴー 
代理人 山口 真二郎 
代理人 山口 朔生 
代理人 大島 信之 
代理人 原田 貴史 

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