ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W09 |
---|---|
管理番号 | 1383411 |
総通号数 | 4 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2022-04-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2021-05-07 |
確定日 | 2022-04-08 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6352209号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6352209号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第6352209号商標(以下「本件商標」という。)は、「DocuWalk」の文字を標準文字で表してなり、令和2年7月29日に登録出願、第9類「コンピュータアプリケーションソフトウェア,モバイル機器のためのコンピュータアプリケーションソフトウェア,デスクトップコンピュータ,ノートブック型コンピュータ」を指定商品として、令和3年2月5日登録査定、同月15日に設定登録されたものである。 2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、異議申立ての理由として引用する登録6184362号商標(以下「引用商標」という。)は、「DOCUSIGN」の欧文字を横書きしてなり、平成29年2月22日に登録出願、別掲のとおりの第9類、第38類及び第42類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務を指定商品及び指定役務として、令和元年9月27日に設定登録され、その商標権は、現に有効に存続しているものである。 3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は、その指定商品及び指定役務中、第9類「全指定商品」(以下「申立商品」という。)について、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第10号証を提出した。 (1)商標法第4条第1項第11号該当性について ア 引用商標 引用商標は、「DOCUSIGN」の欧文字からなるものであり、申立人が行う電子署名・電子契約サービスに係る商品及び役務を表示するものとして、引用商標の指定商品及び指定役務の分野(以下「電子商取引分野」という。)の取引者及び需要者の間に広く知られた周知の商標である。 また、引用商標は、「書類」を意味する英語「DOCUMENT」の最初の4文字「DOCU」と、「署名」を意味する4文字の英語「SIGN」とを結合した商標であると容易に把握されるため、引用商標の電子商取引分野における周知性に照らせば、「DOCU(Docu)」の4文字に英単語を結合させた商標は、同分野において、申立人の商標を連想させ、そのような構成における冒頭の「DOCU(Docu)」の4文字は、引用商標の要部である。 イ 本件商標 本件商標「DocuWalk」は、「Docu」の4文字と「Walk」の4文字の英単語を結合させた商標であり、引用商標とはその要部である冒頭の4文字「DOCU(Docu)」が共通し、取引者及び需要者にとって、外観及び称呼上相紛らわしいものである。 また、本件商標の指定商品は、引用商標の指定商品と類似する。 ウ 小括 以上より、本件商標は、引用商標と類似するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。 (2)商標法第4条第1項第15号該当性について ア 引用商標の周知性について 引用商標は、世界ナンバーワン(74%)のシェアを有する電子署名・電子契約サービスを提供する申立人が、同サービスについて使用している商標である(甲3、甲4)。 実際には「DocuSign」という大文字・小文字の態様で使用されている。「DocuSign」はクラウド型のサービス(甲5)であり、スマホやタブレットからも操作できるように、ダウンロード可能なモバイルアプリケーションソフトウェアも提供されている(甲6)。「DocuSign」は、44言語で利用可能、180か国以上で利用されており、有償版の登録社数は、世界で75万社以上となっている(甲3、甲7)。また、米国においては、不動産契約の約90%に「DocuSign」が使用されている(甲8)といわれている。このように、「DocuSign」は、世界的な実績を誇るサービスインフラとも呼べる存在となっている。 そして、「DocuSign」は、国内では最も利用されている電子署名・電子契約サービスではないが、アカウントを有していなくとも「ログイン不要」で署名を行えるようになっている(甲9)上、世界的には圧倒的なシェアを有している(甲3、甲4)ことから、国内の企業が海外の取引先との間で電子署名・電子契約を行う際には「DocuSign」を利用しているケースが多いものである。 よって、「DocuSign」の国内での実際の知名度は、登録社数をベースにした国内シェアの数字を大きく超えるものとなっている。「DocuSign」は、シャチハタ株式会社(以下「シャチハタ社」という。)と連携したeHankoが使用可能で我が国のハンコ文化にも対応(甲9)、PCだけではなく、スマホやタブレットなどネットにつながるあらゆるデバイスからいつでもどこでも契約書を締結可能であるなど、その利便性に対する評価は高く、電子署名・電子契約サービスについてネットで調べれば、最も利用されている電子署名サービスと並んで、ほぼ紹介されていないことはないといえるほどである(甲3、甲4、甲9)。 このように、引用商標は、電子署名・電子契約を必要とするか、これらに関心がある者であれば、サービス利用時に認識するか、あるいはサービス検索時に見聞きしている可能性が高いものであり、引用商標は、その指定商品及び指定役務に係る電子商取引分野における取引者、需要者の間に広く知られた周知商標である。 イ 出所の混同のおそれについて 引用商標は、「書類」を意味する英単語「DOCUMENT」の最初の4文字「DOCU」と、「署名」を意味する4文字の英単語「SIGN」とを結合した商標であると容易に把握され、電子商取引分野において、取引者、需要者間に広く知られた商標であることに照らせば、「Docu」の文字の後に別の英語を結合した「DocuSign」と類似の構成、すなわち、「Docu」の「D」の文字が大文字であり、二つ目の英語の最初の文字も大文字である構成を有する商標は、同分野において引用商標を連想させるものである。 そして、本件商標は、「Docu」の文字に「Walk」という4文字の英単語を結語させた商標であって、構成中の「Docu」の文字は「DocuSign」の冒頭の4文字と一致し、また「Walk」の最初の文字「W」が大文字となっている本件商標は、引用商標と類似の構成を有している。 さらに、「DocuSign」と「DocuWalk」は、全体の文字数が同じである。 したがって、本件商標が、電子商取引分野、すなわち電子署名・電子契約サービスに関連する第9類の指定商品に使用された場合、本件商標は、引用商標と類似しているか、少なくとも密接な関連性があるかのような印象を、取引者、需要者に与えるものである。 そうすると、本件商標が、電子署名・電子契約サービスに使用されていることに照らせば、その混同のおそれは高いものであるといえる(甲1)。 以上のとおり、本件商標が、電子商取引分野において、申立商品に使用された場合、取引者・需要者は、その商品が申立人の商品であると誤認し、又は、申立人との間にいわゆる親子会社・系列会社等の緊密な営業上の関係がある者の商品であると誤認するおそれが高いものである。 したがって、本件商標は、他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがあり、商標法第4条第1項第15号に該当する。 4 当審の判断 (1)商標法第4条第1項第11号該当性について ア 本件商標について 本件商標は、上記1のとおり、「DocuWalk」の文字を標準文字で表してなるものであるから、構成文字に相応して「ドキュウォーク」又は「ドクウォーク」の称呼を生じ、「DocuWalk」の欧文字は、一般の辞書等には載録されていないものであるから、特定の意味合いを有する語とは認められないものである。 そうすると、本件商標は、その構成文字に相応して「ドキュウォーク」又は「ドクウォーク」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。 イ 引用商標について 引用商標は、上記2のとおり、「DOCUSIGN」の欧文字を横書きで表してなるものであるから、構成文字に相応して「ドキュサイン」又は「ドクサイン」の称呼を生じ、また、「DOCUSIGN」の欧文字は、一般の辞書等には載録されていないものであるから、特定の意味合いを有する語とは認められないものである。 そうすると、引用商標は、その構成文字に相応して「ドキュサイン」又は「ドクサイン」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。 ウ 本件商標と引用商標との類否について 本件商標と引用商標は、上記ア及びイのとおりの構成からなるものであるところ、両者は、構成中、「DOCU(Docu)」の綴りを共通にするとしても、それに続く「Walk」と「SIGN」の文字に明らかな差異を有するものであるから、両者は、構成全体として、外観上、判然と区別できるものである。 次に、本件商標から生じる「ドキュウォーク」又は「ドクウォーク」の称呼と、引用商標から生じる「ドキュサイン」又は「ドクサイン」の称呼とを比較すると、前半の「ドキュ」又は「ドク」の音を共通にするとしても、後半の「ウォーク」及び「サイン」が明らかに相違し、両者をそれぞれ一連に称呼したときは、明瞭に聴別し得るものであるから、両者は、称呼上、相紛れるおそれはない。 さらに、本件商標と引用商標は、いずれも特定の観念を生じないものであるから、観念において比較することができない。 そうすると、本件商標と引用商標とは、観念においては比較することができないとしても、外観においては判然と区別できるものであり、称呼においても明瞭に聴別し得るものであるから、これらを総合して判断すれば、両者は、相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。 エ 小括 以上のとおり、申立商品と引用商標の指定商品が同一又は類似であるとしても、本件商標と引用商標とは、非類似の商標であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。 (2)商標法第4条第1項第15号該当性について ア 引用商標の周知性について (ア)申立人の主張及び同人の提出に係る証拠によれば、以下のとおりである。 a 申立人は、申立人が世界ナンバーワン(74%)のシェアを有する電子署名・電子契約サービスを提供する法人である(申立人の主張)。 b 「DocuSign」の文字は、電子署名・電子契約サービスに使用している商標であって、クラウド型サービス上で提供され、スマホやタブレットからも利用可能なように、ダウンロード可能なモバイルアプリケーションソフトウェアも提供されている(甲3〜甲6)。 c 「DocuSign」の文字を使用した電子署名・電子契約サービスでは、アカウントを有していなくとも「ログイン不要」で署名を行うことができ、シャチハタ社と連携したeHanakoが使用可能で日本のハンコ文化にも対応している(甲9)。 d 申立人は、「DocuSign」は、180か国以上で、44言語で利用でき、有償版の登録者数が、世界で75万社以上である旨、また、米国では不動産契約の約90%に使用されており、世界的な実績を誇るサービスインフラとも呼べる存在である(申立人主張)。 e 申立人は、「DocuSign」が世界的には圧倒的なシェアを有していることから、国内企業が海外の取引先との間で電子署名・電子契約を行う際に利用しているケースが多く、国内での実際の知名度は、登録者数をベースにした国内シェアの数字を大きく超える旨、また、利便性への評価が高く、最も利用されている電子署名サービスと並び、ほぼ紹介されていないことはない(申立人の主張)。 (イ)引用商標の周知性について 上記(ア)において認定したとおり、申立人が電子署名・電子契約サービスを提供している法人であること、引用商標と綴りを同じくする「DocuSign」の文字が同サービスに使用され、クラウド型サービス上で提供されていること、同サービスはスマートフォンやタブレットからも利用可能であり、アカウントが無くてもログイン不要で署名を行えること、及び、ハンコ文化にも対応していることは推認できる。 しかしながら、同サービス分野において、申立人が世界ナンバーワン(74%)の市場占有率(シェア)を有していること、「DocuSign」が、180か国以上で、44言語で利用でき、有償版の登録者数が世界で75万社以上であり、米国で不動産契約の約90%に使用され、世界的な実績を誇るサービスインフラであること、及び、国内企業が海外の取引先との間で電子署名・電子契約を行う際に「DocuSign」を利用しているケースが多く、国内での実際の知名度は、登録者数をベースにした国内シェアの数字を大きく超えることについては主張のみであり、それらの世界的なシェア、及び国内での知名度等を裏付ける証拠の提出は無く、確認することができない。 また、「DocuSign」が付された商品の販売数量又は役務の取引数量、広告宣伝の方法、広告期間、広告地域及び広告宣伝費等も明らかではなく、その使用状況を把握することができない。 そうすると、引用商標が、我が国において、申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして我が国の取引者、需要者の間に広く認識され、本件商標の登録出願時及び登録査定時に周知性を獲得していたとは認められないものである。 イ 出所の混同のおそれについて 引用商標は、上記アのとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、また、本件商標は、上記(1)のとおり、引用商標と非類似の商標であって別異の商標というべきものであり、両商標の類似性の程度は低いものである。 そうすると、本件商標は、商標権者がこれを申立商品について使用しても、これに接する取引者、需要者が引用商標を連想又は想起するようなことはなく、その商品が他人(申立人)若しくは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、商品又は役務の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。 その他、本件商標が出所の混同を生ずるおそれがあるというべき事情は見いだせない。 ウ 小括 以上よりすると、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 (3)むすび 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲 (引用商標の指定商品及び指定役務) 第9類「電子応用機械器具及びその部品,電子文書及びメッセージの送信並びにユーザーの認証に使用される携帯電話機用コンピュータアプリケーションソフトウェア,ユーザーがグローバルコンピュータネットワーク経由により電子商取引を行うことを可能にする電子商取引用コンピュータソフトウェア」 第38類「電気通信(「放送」を除く。),電子送信によるメッセージの配信,グローバルコンピュータネットワーク経由によるオンラインによる文書の配信」 第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,電子計算機用プログラムの提供,電子商取引におけるユーザーの認証の分野におけるウェブサイト経由による電子データの検証及びグローバル情報ネットワーク経由による安全なデジタル取引用のダウンロード不可能なソフトウェアの提供,電子商取引におけるユーザーの認証」 (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。 |
異議決定日 | 2022-03-31 |
出願番号 | 2020093205 |
審決分類 |
T
1
651・
261-
Y
(W09)
|
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
榎本 政実 |
特許庁審判官 |
青野 紀子 豊田 純一 |
登録日 | 2021-02-15 |
登録番号 | 6352209 |
権利者 | シェルタ−ズ−ム コ−ポレ−ション |
商標の称呼 | ドキュウオーク、ドクウオーク |
代理人 | 岡田 貴子 |
代理人 | 村橋 史雄 |
代理人 | 鈴木 康仁 |
代理人 | 小林 浩 |
代理人 | 瀧澤 文 |