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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W0941 |
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管理番号 | 1383408 |
総通号数 | 4 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2022-04-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2021-04-09 |
確定日 | 2022-04-08 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6341679号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6341679号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第6341679号商標(以下「本件商標」という。)は、「歴史チャンネル」の文字を標準文字で表してなり、令和元年11月26日に登録出願、第9類「電子応用機械器具及びその部品,通信網を介してダウンロード可能な映像又は動画,ダウンロード可能な画像(動画・静止画を含む。)・音声付き画像(動画・静止画を含む。)・映像・音声・音楽・歌詞,電子書籍」及び第41類「インターネット等の通信ネットワークを介した通信教育及びこれに関する情報の提供,セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供,書籍の制作,動画の電子画像処理及びこれに関する情報の提供,映画の上映・制作又は配給,動画の制作,インターネット・携帯電話を含む通信回線を用いて行う音楽・音声・画像・動画の提供及びこれらに関する情報の提供,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。)」を指定商品及び指定役務として、同2年12月1日に登録査定、同3年1月18日に設定登録されたものである。 第2 引用商標及び使用標章 1 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するとして、引用する商標は、以下のとおりであり、いずれも現に有効に存続しているものである。 (1)登録第4645254号商標(以下「引用商標1」という。) 商標の構成:「ヒストリーチャンネル」 登録出願日:平成11年2月17日 設定登録日:平成15年2月21日 指定役務:第38類「有線テレビジョン放送,テレビジョン放送」及び第41類「教育及び娯楽に関するケーブルテレビジョン放送及びテレビジョン放送番組の制作・配給,その他のケーブルテレビジョン放送及びテレビジョン放送番組の制作・配給」 (2)登録第4677070号商標(以下「引用商標2」という。) 商標の構成:「ヒストリーチャンネル」 登録出願日:平成11年2月17日 設定登録日:平成15年5月30日 指定商品及び指定役務:第9類「録画済みビデオディスク及びビデオテープ並びに録音済みコンパクトディスク及びオーディオテープ」、第16類「テレビ・ラジオ番組案内用雑誌,その他の雑誌,テレビ・ラジオ番組の紹介用パンフレット,その他のパンフレット,定期的に発行される小冊子,定期的に発行されるニューズレター,学習手引書,その他の書籍,その他の印刷物」及び第42類「インターネットによるビデオの内容に関する書籍・雑誌記事情報の提供,その他のインターネットによる書籍・雑誌記事情報の提供」 以下、引用商標1及び引用商標2をまとめていうというときは「引用商標」という。 2 申立人が、本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当するとして、引用する標章は、申立人主張の全趣旨から、「THE HISTORY CHANNEL」の欧文字を横書きしてなるもの(以下「使用標章」という。)と認められるものであり、申立人が、役務「放送,放送番組の制作」に使用し、当該役務を表示する標章として米国をはじめとする世界の需要者の間に広く認識されていると主張するものである。 第3 登録異議の申立ての理由(要旨) 申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第98号証を提出した。 1 商標法第4条第1項第11号について (1)指定商品及び指定役務の類否について 本件商標の指定商品中、第9類「通信網を介してダウンロード可能な映像又は動画,ダウンロード可能な画像(動画・静止画を含む。)・音声付き画像(動画・静止画を含む。)・映像・音声・音楽・歌詞,電子書籍」は、引用商標2の指定商品中、第9類「録画済みビデオディスク及びビデオテープ並びに録音済みコンパクトディスク及びオーディオテープ」及び第16類「テレビ・ラジオ番組案内用雑誌,その他の雑誌,テレビ・ラジオ番組の紹介用パンフレット,その他のパンフレット,定期的に発行される小冊子,定期的に発行されるニューズレター,学習手引書,その他の書籍,その他の印刷物」と同一又は類似である。 また、本件商標の指定役務中、第41類「動画の制作」は、引用商標1 の指定役務中、第41類「教育及び娯楽に関するケーブルテレビジョン放送及びテレビジョン放送番組の制作・配給,その他のケーブルテレビジョン放送及びテレビジョン放送番組の制作・配給」と同一又は類似である。 (2)商標の類否について ア 観念について 本件商標は、漢字と片仮名の「歴史チャンネル」を標準文字で表してなり、引用商標は、片仮名の「ヒストリーチャンネル」をゴシック体の文字で表してなるものである。 本件商標の構成中の「歴史」の文字は、「人類社会の過去における変遷・興亡のありさま。また、その記録。」を意味し、「チャンネル」の文字は、「ラジオ・テレビ放送で、適当な間隔をおいて並んだ各使用周波数に順次番号を付けたもの。」を意味する(甲6、甲7)。 他方、引用商標の構成中の「ヒストリー」の文字は、「歴史。沿革。由緒」の意味を有する英語「history」に由来する外来語であり(甲8〜甲10)、広く一般に知られているものである。 そして、両者に接した需要者等が、「歴史」と「ヒストリー」の文字をあえて別異に解するとは考えられず、漢字2文字と片仮名5文字による形式的な外観及び称呼上の相違があるとしても、需要者等が一般的に有する理解力をもってすれば、「歴史」と「ヒストリー」が同義であることに、容易に想到し得るものである。 そうすると、需要者等は両者から具体的な放送番組の内容を直接的に感取することはないとしても、「歴史(ヒストリー)に関する何らかの事柄を放送するチャンネル」といった共通の観念を想起するものである。 したがって、本件商標及び引用商標は、需要者等が出所の混同を生じるおそれのある類似商標である。 イ 称呼について 本件商標は、その構成文字に相応して「レキシチャンネル」の称呼が生じ、引用商標は、その構成文字に相応して「ヒストリーチャンネル」の称呼が生じる。 そして、両者は、「レキシ」の3音と「ヒストリー」の5音において相違するものの、両者に接した需要者等が、称呼上の相違に殊更着目し、観念的に一致する「歴史」と「ヒストリー」をあえて異なるものとして理解、認識するとは考え難く、英語の「history」を和訳したにすぎない「歴史」の文字から生じる称呼と、同じ英語に由来する「ヒストリー」の文字から生じる称呼が相違していても、それは漢字の音韻と片仮名の読みとの違いから生じる当然の結果であって、商標としての類似性の判断には影響を及ぼさないものである。 ウ 外観について 本件商標は、漢字2文字と片仮名5文字の計7文字からなるものであり、引用商標は、片仮名10文字からなる商標であるという差異がある。 しかしながら、両者に接した需要者等が、外観上の相違に殊更着目し、観念的に一致する「歴史」と「ヒストリー」をあえて異なるものとして理解、認識するとは考え難く、漢字の「歴史」と片仮名の「ヒストリー」との相違は、文字種の違いから生じる必然的な結果であって、商標としての類似性の判断には影響を及ぼさないものである。 (3)小括 以上のとおり、本件商標と引用商標とは、外観、称呼において異なるとしても、それら相違は形式的であり、観念上の共通性を覆すほどの特徴はないから、本件商標と引用商標は類似する。また、本件商標の指定商品及び指定役務は、引用商標の指定商品及び指定役務と類似する。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。 2 商標法第4条第1項第15号について (1)引用商標の周知著名性について ア 歴史 申立人の商標に係る放送は、1999年1月に申立人の了承のもとに、株式会社スーパーネットワークによって開始され、当初は「レッツトライ」という番組で時間を限定して放送されていた(甲13〜甲18)。 2000年12月に申立人と株式会社スーパーネットワークとの合弁会社であるヒストリーチャンネルジャパンが設立され、2001年1月に「ヒストリーチャンネル」として開始し、同年から歴史専門チャンネルとして豊富なラインナップによる番組が放送されるようになった(甲19〜甲24)。 2016年7月には、「ヒストリーチャンネル」の運営会社が合同会社化し、エーアンドイーネットワークスジャパンとなった後も、引き続き衛星放送やケーブルテレビ局の有線放送を通じて放送され、さらに、近年では各種の動画配信サービスによるデジタル配信も加わり、歴史総合エンタテイメントの専門チャンネルとして、より一層浸透するようになった(甲25〜甲29)。 イ 視聴世帯数の状況 放送開始当時の2001年6月時点において、我が国の視聴世帯数は約173万世帯(うち、ケーブルテレビの加入数が約137万世帯、衛星放送の受信が約36万世帯)であった(甲30)。その後、動画配信サービスによる視聴も加わり、2020年12月末時点では、約659万世帯(うち、衛星放送の受信が約130万世帯、ケーブルテレビの加入数が約456万世帯、IPTVなどが約73万世帯)にまで達している(甲31)。 全世界においては、185か国以上、3億8千万世帯以上で視聴されている(甲32)。 ウ 各種メディアによる情報発信 「ヒストリーチャンネル」は、2000年ないし2001年の創業当時から、テレビガイドや番組情報誌をはじめ、週刊誌や業界紙、さらに、全国紙や地域のブロック紙の各種紙面に掲載され、歴史総合エンタテイメントの専門チャンネルとして、たびたび紹介されてきた(甲33〜甲58)。 そして、2013年には、「衛星放送協会オリジナル番組アワード」において、「ヒストリーチャンネル」が編成企画最優秀賞として表彰された(甲59)。 近年では、動画共有サイトにも、公式チャンネルとして多数の動画が投稿されている(甲60)。 さらに、「ヒストリーチャンネル」によるイベントやキャンペーン(甲61、甲62)、異業界とのコラボレーション企画(甲63〜甲65)なども複数行われている。 その他、SNSを通じて、一般ユーザーにより「ヒストリーチャンネル」に関する情報が拡散していることも確認できる(甲66〜甲68)。 以上から、引用商標は、歴史総合エンタテイメントの専門チャンネルとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時には既に日本国内において広く一般に知られており、周知著名なものになっていた。 (2)出所の混同について 主要な検索エンジンで「歴史チャンネル」の文字列を検索すると、「ヒストリーチャンネル」に関する情報までもが表示され、両者に関する情報が混在するかたちで表示されていることが確認できる(甲69〜甲74)。 そのため、簡易・迅速性が求められる現実の取引過程、とりわけ検索エンジンを用いた情報収集及び選択の過程において、需要者等が通常有する注意力をもってしても、商品及び役務の出所を混同し、誤って選択するおそれがあり、さらには、経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品及び役務であると誤認するおそれがある。 (3)小括 以上のとおり、本件商標は、歴史総合エンタテイメントの専門チャンネルとして周知著名な引用商標と観念が共通し、両者に接した需要者等が誤認混同するおそれが高いことから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。 3 商標法第4条第1項第19号について (1)「THE HISTORY CHANNEL」の世界的な展開と周知著名性 上記2のとおり、引用商標は、日本国において、歴史総合エンタテイメントの専門チャンネルとして、需要者等の間に広く認識されているものである。 一方、使用標章は、申立人が所有する衛星放送及びケーブルテレビのチャンネルであり、その開局は1995年1月までさかのぼる。当該放送は、米国をはじめ世界185か国以上、3億8千万世帯以上で視聴されており、歴史をテーマとした専門チャンネルとして、世界的にも広く知られている(甲32)。 (2)本件商標と使用標章の類似性 申立人は、米国において「THE HISTORY CHANNEL」(使用標章)の商標登録を有し(甲4、甲5)、そのほか、カナダ、オーストラリア、ドイツ、フランス、イギリス、中国等でも、同一商標を保有している(甲75〜甲83)。 一方、本件商標は、漢字の「歴史」と片仮名の「チャンネル」の結合商標であるところ、両者は外観及び称呼上の相違があるものの、本件商標は単に「HISTORY」の文字を漢字の「歴史」に和訳し、「CHANNEL」の文字を片仮名の「チャンネル」に置き換えたものにすぎないから、需要者等は歴史をテーマとした専門チャンネルとして世界的にも周知著名な「THE HISTORY CHANNEL」のうち、冠詞の「THE」のみを取り除いた「HISTORY CHANNEL」の文字から生じる観念により、両者を混同し、誤って商品及び役務を選択する可能性が高い。 (3)不正の目的について 本件商標は、米国で周知著名な申立人の商標と類似するものであり、出所の混同を生ぜしめ、あるいは、申立人の周知著名な商標についての出所表示機能を希釈化させる可能性があるものである。さらに、申立人の商標は永年にわたって各種メディアを通じて使用されていることからも、本件商標権者は、世界的に周知著名な使用標章の存在を知りつつ、あえて本件商標の使用を行わんとするものであり、不正目的の使用に該当する。 (4)小括 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。 第4 当審の判断 1 商標法第4条第1項第11号該当性について (1)本件商標 本件商標は、「歴史チャンネル」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成文字は同じ書体、同じ大きさ、同じ間隔でまとまりよく一体に表されており、その構成文字全体に相応して生じる「レキシチャンネル」の称呼も、よどみなく一連に称呼し得るものである。 また、その構成中の「歴史」の文字は「人類社会の過去における変遷・興亡のありさま。また、その記録。」等の意味を有し、「チャンネル」の文字は「ラジオ・テレビ放送で、適当な間隔をおいて並んだ各使用周波数に順次番号を付けたもの。」等の意味を有する語(いずれも「広辞苑第7版」)であるから、「歴史チャンネル」の文字全体からは「歴史の事柄を放送するチャンネル」ほどの意味合いを理解させるものである。 そうすると、本件商標は、その構成文字に相応し「レキシチャンネル」の称呼を生じ、「歴史の事柄を放送するチャンネル」の観念を生じるものである。 (2)引用商標 引用商標は、「ヒストリーチャンネル」の片仮名を横書きしてなるところ、その構成文字は同じ書体、同じ大きさ、同じ間隔でまとまりよく一体に表されており、その構成文字全体に相応して生じる「ヒストリーチャンネル」の称呼も、よどみなく一連に称呼し得るものである。 また、その構成中の「ヒストリー」の文字は「歴史。沿革。由緒。」の意味(前掲書)を有する英単語「history」を片仮名で表したものであり、「チャンネル」の文字は上記(1)のとおりの意味を有し、英単語「CHANNEL」を片仮名で表したものと容易に認識されるから、「ヒストリーチャンネル」の文字全体からは「歴史の事柄を放送するチャンネル」ほどの意味合いを理解させるものである。 そうすると、引用商標は、その構成文字に相応し「ヒストリーチャンネル」の称呼を生じ、「歴史の事柄を放送するチャンネル」の観念を生じるものである。 (3)本件商標と引用商標との類否 本件商標と引用商標とを比較すると、外観については、両者の構成は上記(1)及び(2)のとおりであり、後半部における「チャンネル」の文字が共通するとしても、前半部において「歴史」と「ヒストリー」という文字に顕著な差異を有し、全体としてもその構成文字数も相違するから、両者は、外観上、判然と区別し得るものである。 次に、称呼については、本件商標から生じる「レキシチャンネル」の称呼と引用商標から生じる「ヒストリーチャンネル」の称呼とは、後半部における「チャンネル」の音が共通するとしても、前半部において「レキシ」と「ヒストリー」という音に明らかな差異を有し、全体としてもその構成音数及び音構成が相違するから、称呼上、明瞭に聴別し得るものである。 さらに、観念については、本件商標及び引用商標は、「歴史の事柄を放送するチャンネル」の観念を共通にするものである。 そうすると、本件商標と引用商標とは、外観及び称呼において明らかに差異を有するものであるから、観念を共通にするとしても、その共通性は、外観及び称呼における差異を凌駕するほど大きな影響を与えるとはいえず、両者が取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。 (4)小括 以上のとおり、本件商標と引用商標とは、非類似の商標であるから、本件商標の指定商品及び指定役務と引用商標の指定商品及び指定役務が同一又は類似であるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。 2 引用商標及び使用標章の周知著名性について (1)申立人の提出した証拠及び同人の主張によれば、以下のとおりである。 ア 「ヒストリーチャンネル」(引用商標1)に係る番組は「歴史総合エンタテイメントの専門チャンネル」として、我が国おいて、2000年から、衛星放送やケーブルテレビ局の有線放送を通じて放送を開始し(甲13、甲15〜甲18)、2001年からは、歴史総合エンタテイメントの専門チャンネル「ヒストリーチャンネル」として番組が放送され、テレビガイドや番組表において番組名として引用商標が表示されている(甲13、甲15〜甲26、甲33〜甲58)。 その後も、衛星放送やケーブルテレビ局の有線放送を通じて「ヒストリーチャンネル」に係る番組が放送されていることがうかがえ、放送番組名として引用商標が表示されている(甲25、甲26)。 イ 我が国における2001年6月時点の衛星放送やケーブルテレビ等の視聴世帯数は、約173万世帯(ケーブルテレビ約137万世帯、直接受信約36万世帯)であり(甲30)、2020年12月末時点では、約659万世帯(衛星放送約130万世帯、ケーブルテレビ約456万世帯、IPTVほか約73万世帯)に達したとされる(甲31)。 また、全世界185か国以上、3億8千万世帯以上で有線放送が視聴されているとされる(甲32)。 ウ 2013年に、「第3回衛星放送協会オリジナル番組アワード」において、「ヒストリーチャンネル」に係る番組が編成企画最優秀賞を受賞した(甲59)。 エ 「ヒストリーチャンネル」に係る番組による期間限定のキャンペーンやイベント等(甲61、甲62)、異業界とのコラボレーション企画(甲63〜甲65)が行われた。 オ 一般ユーザーのブログの文章中に「ヒストリーチャンネル」が表示されている(甲67、甲68)。 (2)判断 ア 上記(1)によれば、「ヒストリーチャンネル」は歴史総合エンタテイメントの専門チャンネルとして、我が国において2000年以降、現在に至るまで衛星放送やケーブルテレビ等において番組が放送されており、テレビガイドや番組表に引用商標が表示されているが、それら引用商標の表示と申立人の関係が明らかとはいえない。 イ 2020年12月末時点の衛星放送やケーブルテレビ等の視聴世帯数が約660万世帯であることはうかがえる。 しかしながら、衛星放送やケーブルテレビ等における放送では、複数のチャンネル(番組)をまとめたパックプランやスポーツ、映画、音楽などジャンルに特化した視聴プランがあり、視聴者が、それらプラン内のチャンネル(番組)を自由に視聴していることからすると、660万世帯は「ヒストリーチャンネル」を視聴可能な状態にある世帯数にすぎず、実際に、どの程度の視聴者が当該チャンネル(番組)を視聴しているのかは定かではない。 ウ 海外の視聴世帯数についても上記イと同様であり、実際の視聴規模が定かではなく、また、引用商標又は使用標章をその商品及び役務に使用して販売又は提供している等の具体的な使用事実も示されていない。 エ 「ヒストリーチャンネル」に係る番組が衛星放送協会の編成企画最優秀賞を受賞したことやイベント等の開催、異業界とのコラボレーションが、引用商標の著名性にどのように結びつくのかについて明らかでない。 オ インターネット上での動画配信、動画共有サイト、SNSについては、引用商標を確認することができず、それらと申立人との関係も明らかでない。また、一般ユーザーのブログについては、わずか2件であって、個人による日常の感想を記載したブログ中に記載されたものにすぎないというべきものであるから、商標的使用とはいえない。 カ その他、申立人が、引用商標及び使用標章を商品及び役務に使用して販売又は提供している等の具体的な使用事実をはじめ、引用商標が、我が国及び外国における取引者、需要者において、どの程度申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして認識されているかを客観的に把握できる証拠は提出されていない。 (3)小括 以上からすれば、申立人の提出に係る証拠によっては、引用商標及び使用標章が、申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、我が国及び外国における取引者、需要者において、広く認識されていたとまでは認めることはできない。 その他、引用商標及び使用標章が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国又は外国の取引者、需要者の間に広く認識されていると認めるに足る事情は見いだせない。 3 商標法第4条第1項第15号該当性について (1)本件商標と引用商標との類似性の程度 上記1(3)のとおり、本件商標と引用商標は、非類似の商標であって、別異の商標というべきものであるから、類似性の程度は低いものである。 (2)混同を生じるおそれについて 上記2のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品及び役務であることを表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないものであり、また、上記(1)のとおり、本件商標は、引用商標と非類似の商標であって、類似性の程度は低いものである。 そうすると、上記に照らし、本件商標の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断すれば、本件商標を申立てに係る指定商品及び指定役務に使用した場合に、これに接する取引者、需要者は引用商標を連想、想起するようなことはないというべきであるから、その取引者、需要者をして、申立人又は同人と業務上何らかの関係を有する者の取扱業務に係る商品及び役務であるかのように、商品及び役務の出所について混同を生じさせるおそれがあるものと認めることはできない。 その他、本件商標が申立人の業務に係る商品及び役務について、出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 4 商標法第4条第1項第19号該当性について 本号は、「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。)をもつて使用をするもの」と規定されている。 そして、引用商標及び使用標章は、上記2のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国及び外国の需要者の間で広く認識され著名になっていたということはできないものである。 また、本件商標と引用商標は、上記1(3)のとおり、非類似の商標である。さらに、本件商標権者が、本件商標を不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用をするものであるとの証左は何ら示されておらず、かつ、他にこれを認めるに足る具体的な事実も見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号所定の他の要件を判断するまでもなく、同号に該当しない。 5 むすび 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも違反して登録されたものではないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
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異議決定日 | 2022-03-31 |
出願番号 | 2019148726 |
審決分類 |
T
1
651・
222-
Y
(W0941)
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最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
平澤 芳行 |
特許庁審判官 |
小俣 克巳 水落 洋 |
登録日 | 2021-01-18 |
登録番号 | 6341679 |
権利者 | イマジニア株式会社 |
商標の称呼 | レキシチャンネル |
代理人 | 江藤 聡明 |
代理人 | 岸野 幸子 |