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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W03
管理番号 1383401 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2022-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-02-21 
確定日 2022-04-07 
異議申立件数
事件の表示 登録第6202820号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6202820号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6202820商標(以下「本件商標」という。)は、「pinkoyouth」の文字を標準文字で表してなり、2018年(平成30年)12月3日に登録出願、第3類「化粧用クレンジング乳液,シャンプー,ヘアーコンディショナー,研磨剤(研磨用補助液及び歯科用のものを除く。),薫香,化粧品,香水,皮膚の手入れ用化粧品,身体用乳液,歯磨き」を指定商品として、2019年(令和元年)11月19日に登録査定、同月29日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議申立ての理由において、引用する商標は、以下のとおりである。
(1)登録第4139836号商標は、「PINKO」の欧文字を横書きしてなり、1996年(平成8年)4月12日に登録出願、第25類「被服」を指定商品とし、1998年(平成10年)4月24日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
(2)申立人が商品「被服,ハンドバッグ,宝飾品」等に使用していると主張する商標は「PINKO」の文字からなるものである。
以下、これらをまとめて、「引用商標」という。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第15号及び同項第19号に違反して登録されたものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第61号証(枝番号を含む。以下、枝番号の全てを示すときは、枝番号を省略する。)を提出した。
(1)商標法第4条第1項第15号について
ア 本件商標と引用商標の類似性の程度
本件商標「pinkoyouth」は、互いに欧文字の小文字から構成される「pinko」と「youth」の2語を結合させた商標であり、後者の「youth」は「若者たち、若い世代」を意味する語として、日本の需要者間に広く知られた一般語である。
そうすると、当該「youth」は、本件商標の指定商品との関係では、これらが特に若い世代向けの商品ラインナップであることを記述的に表したものにすぎず、当該部分の自他商品識別力は極めて弱いといわざるを得ない。
他方、本件商標において前半部分を構成する「pinko」は、英和辞典において「(米・軽蔑)共産[社会]主義者,「赤」;(英)左翼的な人」と紹介されているものの(甲3)、当該意味合いは日本の需要者に周知であるとはいえず、また、本件商標の指定商品との関係においてその内容を何ら記述するものでもないから、極めて強い識別力をもって需要者に認識されるというべきである。
加えて、当該「pinko」部分から生じる「ピンコ」なる称呼は、通常、聴者の耳に残りやすい冒頭音を半濁音とするものであり、また、最終音「コ」は日本人名として旧来一般的である「子」に通じることから、日本語として非常にユニークな響きをもって需要者に認識され、記憶に残るというべきである。
このように本件商標が、極めて識別力が強く耳に残り易い称呼を有する「pinko」の語と、若い世代向けの商品ラインナップであることを示す一般語「youth」との結合により構成されていることを考慮すれば、本件商標において「pinko」と「youth」とが互いに分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど強く結合しているとはいい難く、特に識別力の強い「pinko」部分のみから独立した称呼が生じると考えるのが取引上自然である。
一方、引用商標は、平易な欧文字「PINKO」のみから構成されるところ、当該商標からは短い「ピンコ」のみの称呼が生じる。
両商標を対比すれば、本件商標と引用商標は互いに要部「PINKO(pinko)」を共通にし、「ピンコ」の称呼においても共通するから、互いに類似するというべきである。
イ 引用商標の周知度
「PINKO」は、申立人が運営する女性向けファッション・ブランドとして、1980年代後半の設立以降、独創的、かつ、モダンなデザインを取り入れることで、強くてセクシーな女性をファッション面から代弁することに成功し、当該ターゲット層に受け入れられた結果、現在ではヨーロッパ、北中米、アジアを始めとして世界中に250店舗以上の単一ブランド店とフランチャイズ店を、また、約1,500店舗の販売店を抱えるに至っている(甲4、甲5)。
出店地としては、フランス・パリのフォーブール・サン=トノレ通り、アメリカ・ニューヨークのマディソン・アベニュー、イギリス・ロンドンのリージェント・ストリート、イタリア・ミラノのモンテ・ナポレオーネ通り、日本・東京の青山通り、中国の深せん(「せん」の文字はつちへんに「川」からなる漢字)といった高級ブランドの本店が軒を連ねることで知られているショッピングエリアに加えて、カンヌ、ニース、マドリッド、ポルトチェルボ、カプリ、フィレンツェ、ローマ、チューリッヒといった名立たる都市にも店舗を構え、その他、発着便数の多い世界各地の空港内にも10以上の販売店を有している(甲4)。
特に日本では、東京青山に直営の旗艦店を有するほか、大阪、京都、新宿、横浜、名古屋の百貨店に直営の5店舗を有している(甲6〜甲8)。
申立人は「PINKO」が体現する強くてセクシーな女性のイメージを積極的に需要者に訴求すべく、日本でも著名なファッションモデルをその広告宣伝において起用してきた(甲9)。かかる積極的な広告宣伝により、日本でも「PINKO」ブランドが、特に女性層を中心に認知されるに至っている。
また、「PINKO」は、2017年(平成29年)3月には飲料ブランドのコカ・コーラとコラボレーションを行い、「Coca−Cola」ロゴやコカ・コーラの瓶のイラストが描かれたTシャツを販売し(甲10、甲11)、他にも2018年(平成30年)1月には、HELLOKITTYとのコラボレーション(甲12、甲13)、2019年(令和元年)5月(本件商標の出願後)には、イタリアのオートバイメーカー「Vespa」とコラボレーションを行っている(甲14)。
ウ 引用商標を付した商品の日本における販売数量
引用商標を付したシャツ、ズボン、ドレス、セーター、ジャケットなどの衣類とバッグの日本における2016年(平成28年)ないし2018年(平成30年)における直営店への販売を示したリスト(甲15の1)には、「TURNOVER(VATINCLUDED)IN EUR」欄にてユーロ換算した売上が示されている。
「PINKO」商標を付した商品のアジア太平洋エリア(Asia−Pacific/APAC)での販売額(2010年(平成22年)〜2018年(平成30年))を示したリスト(甲15の2)によれば、「PINKO」商標を付した商品は日本で2016年(平成28年)に599,195ユーロ(2020年(令和2年)5月20日のレート(以下、同じ。)にて約7,054万円)、2017年(平成29年)に2,535,079ユーロ(約2億9,900万円)、2018年(平成30年)に3,423,690ユーロ(約4億350万円)の売上げがあったことが分かる。
なお、当該リストに掲載された売上げの一部に対応する請求書の写しは、2016年(平成28年)1月19日(甲16)、2017年(平成29年)2月17日(甲17)、2018年(平成30年)1月19日(甲18)のPINKO JAPAN CO.LTDへのものであって、日本におけるファッション・ブランドの売上げ規模は非常に大きいことが推察されるが、消費者ニーズの多様化に伴ってその市場規模は非常に細分化されており、申立人の引用商標がターゲットとする強くてセクシーさを目指す女性という限定された市場においては、上記販売規模は相当大きいものというべきである。
エ 広告宣伝費
引用商標の日本を含む世界における2018年(平成30年)の広告宣伝費をまとめたリスト(甲19)によれば、日本において414,653ユーロ(約4,854万円)が広告宣伝のために投下されたことが分かる。
オ 雑誌への掲載例
引用商標は、日本のファッション雑誌である「25ans」、「Harper’s Bazaar」及び「VOGUE JAPAN」において2016年(平成28年)ないし2018年(平成30年)の間に、広告が掲載されたことから(甲20〜甲23)、引用商標が日本においても相当の認知を得ていたことがわかる。
その他、「繊研新聞」及びインターネット記事においても紹介された。
カ 展示会の開催
甲第24号証及び甲第25号証は、恵比寿ガーデンプレイス(東京都渋谷区)にある三越恵比寿店のグラススクエア地下1階で開催された「PINKO」ブランドの2010年(平成22年)秋冬物展示即売会での様子を示した資料及び展示会の開催を案内するブログ記事のプリントアウトである。かかる展示会は定期的に開催されており、例えば2018年(平成30年)秋冬商品の展示会においては、イタリアの老舗バッグメーカーである「INVICTA」ブランドとのコラボレーション商品などが発表された(甲26)。
キ ソーシャル・ネットワークにおける引用商標の露出
申立人は、ソーシャル・ネットワーキング・サイトとして著名なフェイスブックやインスタグラムにおいて公式ページを立ち上げており(甲27、甲28)、そのフォロワー数はフェイスブックで86.3万人、インスタグラムで133.3万人となっており、多くのフォロワー数は、引用商標の世界での周知性を裏付けるものである。
加えて、インフルエンサー(甲29〜甲41)による引用商標の露出やハッシュタグを用いた「pinko official」の検索タグの拡散によっても、「PINKO」ブランドが需要者間において周知性を獲得したことがうかがえる。
なお、インスタグラムにおける引用商標の露出に対しては、フォロワー数や「いいね!」の押下数、コメント数、契約により定めた割合などに応じて申立人から広告料が支払われるシステムとなっており、申立人は上記各インフルエンサーに対して2018年(平成30年)中に一定の広告料を支払っている(甲42〜甲47)。
以上のような継続的な商品販売や多様かつ大量、効率的な広告宣伝に基づいて、少なくとも本件商標の登録出願時において、引用商標は申立人の商標として周知であったというべきである。
ク 引用商標が造語よりなるものであるか、又は構成上顕著な特徴を有するものか
「pinko」は日本の需要者にとって馴染みのない英単語であり、また、指定商品の内容を何ら記述するものではないから、いわゆる恣意的商標というべきであって、その識別力は極めて高く、本件商標において「pinko」部分が需要者に独立看取される可能性は非常に高いというべきである。
ケ 引用商標がハウスマークであるか
「PINKO」は、申立人自身のハウスマークではないが、その運営する主要なファッション・ブランドであり、また、日本法人である株式会社PINKO JAPAN(甲48)の社名の一部である。
したがって、本件商標を付した商品が申立人の運営する「PINKO」ブランドに関係するものであるとの誤認が需要者間に生じる可能性は極めて高いというべきである。
コ 企業における多角経営の可能性
申立人は、「PINKO」ブランドにおいて被服だけではなく、バッグ、ブーツ及びベルトなど、多彩な女性向けファッション商品を販売している(甲49)。かかる事業の多様性は、申立人が商標「PINKO」、又は同文字を含む複数の商標について、第9類、第14類、第18類、第26類及び第35類のいずれかを指定する登録商標を所有していることからも明らかであるし(甲50〜甲55)、また、申立人の今後の事業展開が未知数であることは、上述したコカ・コーラ(飲料)、HELLOKITTY(多様な商品に展開されるキャラクター)、Vespa(オートバイ)などとの積極的なコラボレーション企画を推進していることからも明らかである。
かかる他ブランドとのコラボレーションは今後、「PINKO」が化粧品等の企業とコラボレーションを行なう可能性を十分に期待させるのであり、特にそのマーケティング上のターゲットが強くてセクシーな女性である以上、化粧品との関係は非常に密接であるというべきであるから、需要者をして「PINKO」が化粧品への事業展開を開始する可能性を十分に予期させるというべきである。
サ 商品間の関連性
本件商標の指定商品は第3類「化粧品」等であるところ、「PINKO」がその事業とし、かつ、引用商標において権利を取得している「被服」との関連性は非常に高いというべきである。
特に、「PINKO」ブランドは、強くてセクシーな女性をターゲットとし、受け入れられてきたファッション・ブランドであるところ、そのような女性は通常は積極的にメークアップも行うし、化粧品についても関心が高いと考えられるから、両商標がその指定商品において高い関連性を有することは明白である。
シ 商品等の需要者の共通性その他取引の実情
両商標の指定商品の関連性は高く、互いに広い世代の女性をその主な需要者層としている点において共通する。
加えて、実際の取引現場においては、「PINKO」ブランドの商品が「PINKOレディース」や「PINKOジーンズ」と呼ばれ取引されている実情があり(甲56、甲57)、ファッション関連業界では、ブランド名の後に需要者層や商品の種類を付加して取引されることが行われている実情があるから(甲58、甲59)、本件商標についても、通常の知識を備えた需要者であれば、「PINKO」ブランドのうち、特に若い世代に向けたラインナップであろうと理解するのが通常というべきである。
ス まとめ
以上の事実を総合的に勘案すれば、本件商標に接した需要者が、本件商標が付された化粧品等をして、あたかも申立人の業務に係る「PINKO」ブランドの商品であるかのように誤認するか、又は、当該商品が申立人とのコラボレーションに基づく等の何らかの組織的、経済的関係を有する者により提供されているかのように誤認するおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号により取消されるべきである。
セ 参考資料
本件商標の商標権者(以下「本件商標権者」という。)は、本件商標と同じ商標について韓国でも登録出願していたが、申立人からの異議申立てに基づき、要部は「pinko」の部分にあるから先登録・先使用商標「PINKO」に類似すると判断された(甲60、甲61)。
(2)商標法第4条第1項第19号について
引用商標は、少なくとも本件商標が登録出願された時点において申立人の商標として周知であったというべきである。
加えて、「PINKO」は、日本の需要者において馴染みのある語ではなく、引用商標の指定商品との関係において極めて識別力の強い語であるから、本件商標権者がこれと同じ名称を一部に含む本件商標を、需要者層の重複する商品に偶然に採用したとは考えられない。
したがって、本件商標権者には、少なくとも「PINKO」の著名性にあやかって、その化粧品等が「PINKO」と関連性を有する商品であるかのように装うことにより、不正の利益を得る目的があったことが推認されるから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号により取消されるべきである。

4 当審の判断
(1)引用商標の周知性について
ア 申立人の主張及び提出した証拠によれば、以下のとおりである。
(ア)「PINKO」は、1980年代後半に設立された申立人が運営するイタリアのファッション・ブランドであって、申立人は引用商標中、登録第4139836号商標の商標権者である。
「PINKO」は、各国に250店舗以上の単一ブランド店とフランチャイズ店、約1,500店舗の卸売販売店があり、我が国においては、直営店として2016年(平成28年)9月2日に都内に1号店をオープンし、その他に東京青山に直営の旗艦店(東京)と大阪、京都及び名古屋などの百貨店に直営の5店舗を有する(甲4〜甲8)。
また、我が国において、2017年(平成29年)ないし2019年(令和元年)には広告宣伝のため他社とコラボレーションをしたTシャツ、ニット、バッグなどを販売したこと(甲10〜甲14)、2016年(平成28年)ないし2018年(平成30年)に発行された複数のファッション雑誌に、引用商標又は「Pinko」及び「ピンコ」の表示とともに被服、バッグ及び靴等(以下「申立人商品」という。)が掲載されたこと(甲20、甲21)、2010年(平成22年)6月及び2018年(平成30年)には東京で「PINKO」の展示会を開催したこと(甲24〜甲26)がうかがえる。
また、申立人は、「PINKO」を付した商品(被服及びバッグ)について、我が国における2016年(平成28年)ないし2018年(平成30年)の間の直営店への販売額を示したリスト(甲15の1)及びアジア太平洋エリアでの2010年(平成22年)ないし2018年(平成30年)の間の販売額を示したリスト(甲15の2)並びにこれらのリストに掲載された売上げの一部の請求書の写し(甲16〜甲18)、また、商標「PINKO」の世界における2018年(平成30年)の広告宣伝費のリスト(甲19)を提出しているが、これらのリストに記載された販売額又は広告宣伝費の詳細及び商品の内容などは不明であるし、記載された数字を裏付ける証左は提出されていない。
イ 上記アからすれば、「PINKO」は、申立人のイタリアのファッション・ブランドであり、遅くとも2010年(平成22年)頃から、我が国において、申立人商品に引用商標を使用していることはうかがえるとしても、申立人が主張する申立人商品の販売額や宣伝広告費について、その数字を裏付ける証左は見いだせないから、引用商標は、本件商標の登録出願日及び登録査定時において、他人(申立人等)の業務に係る商品を表示するものとして我が国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないと判断するのが相当である。
また、申立人は、引用商標はイタリアのファッション・ブランドであると主張するも、イタリアにおける引用商標が使用された商品の売上高、シェアなど販売実績を示す証左はないから、引用商標は、他人(申立人等)の業務に係る商品を表示するものとしてイタリアをはじめとする外国の需要者の間に広く認識されているものと認めることもできない。
(2)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 引用商標の周知性について
上記(1)イのとおり、引用商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国及び外国の需要者の間に広く認識されているものとは認められない。
イ 本件商標と引用商標との類似性の程度について
本件商標は、上記1のとおり「pinkoyouth」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成は、同書、同大、等間隔で一連一体に表されており、これより生じる「ピンコユース」の称呼は、格別冗長でもなく、無理なく一連に称呼し得るものである。
そして、該文字は、辞書等に載録のない文字であり、特定の意味を有しない造語と認識されるものである。
そうすると、本件商標は、その構成文字に相応して、「ピンコユース」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
他方、引用商標は、上記2のとおり、「PINKO」の欧文字からなるところ、その構成文字に相応して「ピンコ」の称呼を生じ、該文字は、辞書に「(米・軽蔑)共産[社会]主義者,「赤」;(英)左翼的な人」(甲3:プログレッシブ英和中辞典(第4版))の意味を有する語として掲載されているとしても、我が国において、一般に知られている語とはいえないから、特定の観念を生じるとはいえない。
そこで、本件商標と引用商標との類否を検討すると、両者は、外観において、「youth」の文字の有無において明らかな差異を有し、かつ、欧文字の小文字と大文字の違いを有するものであるから、外観上、相紛れるおそれはない。
次に、称呼において、本件商標より生じる「ピンコユース」の称呼と引用商標から生じる「ピンコ」の称呼とは、本件商標の後半における「ユース」の音の有無という明らかな差異を有するものであるから、両者は、称呼上、明瞭に聴別し得るものである。
さらに、観念においては、両者は、ともに特定の観念を生じないものであるから、観念上、比較できないものである。
そうすると、本件商標と引用商標とは、観念において比較することができないとしても、外観及び称呼において明らかな差異を有するものであり、両商標は非類似の商標であって、別異の商標というべきであるから、両者の類似性の程度は低いものである。
ウ 本件商標の指定商品と申立人商品の関連性、需要者の共通性について
本件商標の指定商品は、化粧品を含む商品であるのに対して、申立人商品は「被服、ハンドバッグ」等の商品であり、ともにファッションに関連する商品といえるものであるから、その需要者の一部を共通にするものといえる。
エ 出所の混同のおそれについて
上記アないしウのとおり、引用商標は、申立人商品を表示するものとして、我が国及び外国の需要者の間に広く認識されているものとは認めることはできないし、また、本件商標と引用商標との類似性の程度は低いことからすれば、たとえ、本件商標の指定商品と申立人商品が需要者の一部において共通にする場合があるとしても、本件商標に接する需要者が、申立人に係る引用商標を連想、想起するものということはできない。
そうすると、本件商標は、本件商標権者がこれをその指定商品について使用しても、需要者が、引用商標を連想又は想起することはなく、その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係のある者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生じるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。
オ 小括
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第19号該当性について
上記(1)イのとおり、引用商標は、申立人商品を表示するものとして、我が国及び外国の需要者の間に広く認識されているものとは認められないものであって、上記(2)イのとおり、本件商標は、引用商標と非類似の商標であって、別異の商標というべきものであるから、本件商標に接する取引者、需要者が引用商標を連想又は想起させるものではない。
また、申立人から提出された証左によっては、本件商標は、本件商標権者が登録査定時に引用商標を認識し、引用商標の著名性に便乗する等、不正の目的をもって使用をするものと認めるに足る事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
(4)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同項第19号のいずれにも該当するものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
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異議決定日 2021-05-19 
出願番号 2018148193 
審決分類 T 1 651・ 271- Y (W03)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 小松 里美
特許庁審判官 小俣 克巳
豊田 純一
登録日 2019-11-29 
登録番号 6202820 
権利者 深▲せん▼子▲購▼科技有限公司
商標の称呼 ピンコユース 
代理人 特許業務法人深見特許事務所 

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