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審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない W33
管理番号 1382421 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2022-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-07-10 
確定日 2022-02-14 
事件の表示 商願2018− 32473拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成30年3月20日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年12月6日付け:拒絶理由通知書
平成31年1月21日 :意見書の提出
平成31年4月5日付け :拒絶査定
令和元年7月10日 :審判請求書の提出

第2 本願商標
本願商標は,別掲1のとおりの構成からなり,第33類「料理用清酒」を指定商品として,平成30年3月20日に登録出願されたものである。

第3 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は,「本願商標は,『料理のための』及び『清酒』の文字を縦書き二行に筆書き風の書体をもって表してなるところ,その指定商品との関係では『料理のために用いる清酒』であることを直ちに認識させるものである。そして,料理のために用いる清酒が一般に広く製造・販売等に資されている実情がある。そうすると,本願商標は,これをその指定商品に使用しても,単に,商品の用途及び品質を表示するにすぎず,商標法第3条第1項第3号に該当する。また,出願人が提出する各証拠を総合的に考慮しても,本願商標は出願人の業務に係る商品の出所表示として広く認識されているとはいえず,これを出願人がその指定商品に使用した結果,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものとは認められないから,商標法第3条第2項を適用することもできない。」旨を認定,判断し,本願を拒絶したものである。

第4 当審における審尋(要旨)
当審において,令和2年6月22日付け審尋で,別掲2ないし別掲4に示すとおりの事実を示した上で,「本願商標をその指定商品に使用しても,これに接する取引者,需要者は,当該商品が『料理のために用いる日本酒(清酒)』であること,すなわち,商品の品質,用途を表示したものとして認識するにとどまるとみるのが相当であるから,本願商標は商標法第3条第1項第3号に該当するものである。また,請求人の提出に係る甲各号証のみによっては,本願商標が商標法第3条第2項の要件を具備しているものであると認めることはできない。」旨の見解を示し,期間を指定して,これに対する回答を求めた。

第5 審尋に対する請求人の意見(要旨)
1 本願の指定商品は,第33類「清酒」に属する商品であって,第30類に属する「食塩や酢等で不可飲処理のされた『料理酒』」とは商品カテゴリーを異にするものであり,本願の指定商品の比較対象とすべき商品のカテゴリーは「料理用清酒」であり,その上位概念である「清酒」を限度とするものである。
2 本願商標を付した商品「料理用清酒」(以下「本件商品」という。)の販売量について
(1)請求人が製造する清酒の課税移出数量(kl)は,宝酒造株式会社の清酒(「松竹梅」ブランドと一緒に)の数量を申告しており,その全数量は,国税庁に届出のとおりである。ただし,国税庁への届出は,ブランド別,販売容器容量別等の届出はしないので,前記「清酒」の総数量として届け出たうち実際に販売した本件商品の数量(kl)のみを抽出して年度別一覧表にして提出したものが甲第44号証である。
なお,販売本数は,前記の数量を最も売れている荷姿の1.8Lパック換算した販売本数である。
(2)本件商品の販売数量を裏付ける証拠として直近の容器包材の発注先証明書を提出する(甲165〜甲167)。これらの紙パック,ペットボトル,または,パウチパック容器と容量は,多岐多種類に渡り個別本数は複雑すぎるので,1.8Lパック換算の本数を参考本数として示してある(甲44)。
3 「料理用清酒」市場における本件商品のシェアについて
他社の販売量がつかめないため正確なシェアを示すことはできない。その代わりに,甲第48号証の1として株式会社インテージ(以下「インテージ社」という。)のデータを参考提出しており,今回これに加えてインテージ社の証明書を甲第169号証として提出する。
本件商品のシェアは,これと非類似の別カテゴリーの「不可飲処理料理酒(調味料)」は,比較すべき対象ではないので,本願の指定商品の上位カテゴリーである「清酒」の単品銘柄の売上げランキングにおける本件商品の地位を示すため甲第49号証ないし甲第60号証,甲第145号証,甲第146号証を参考提示している。
本件商品のうち1.8L単品だけみても,「清酒」全体の単品銘柄のなかで,ベスト20位以内にランクされるということは,本件商品が,「飲用清酒」と並んでも堂々ベスト20位以内の売上げを誇ることを示すものである。
本件商品は,「飲用清酒」の中においてはトップの地位にはないが,決して低いランキングではなく,「飲用清酒」と「料理用清酒」を合わせた市場シェアにおいて,「料理用清酒」としては唯一本件商品のみがランクインしており「他社の料理用清酒」がランク外であることは,本件商品が「料理用清酒」市場ではトップシェアを誇る商品であることが十分推認されるものである。
4 証明書について
証明書(甲137〜甲144)の証明者は,いずれも料理に造詣深く,料理界に精通された方々であり,その知識と経験により,本件商品の特徴や市場動向等を知り尽くした料理指導者として,また,現場で調理人として活躍されている日本の料理界を代表する方々の証明であり,一般の需要者の認識程度の把握もされているものであり,その意味では,需要者の代表でもあるから,一般需要者の証明に勝るものである。

第6 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号該当性について
本願商標は,別掲1のとおり,「料理のための」の文字及び「清酒」の文字を筆書き風の書体で二列に縦書きしたものであり,その構成中「料理の」,「ための」,「清酒」の各文字の大きさを若干変えて表してなるものである。
そして,別掲2のとおり,本願の指定商品を取り扱う業界においては,商品名称等を,筆記体風の書体で文字毎に大きさを変えて表すことは普通に行われていることからすれば,本願商標は,格別特徴的な構成態様からなるともいえないものであるから,普通に用いられる方法で表された標章からなるものとみるのが相当である。
ところで,本願の指定商品を取り扱う業界においては,別掲3のとおり,「料理のため」に用いる日本酒(清酒)が一般に広く製造,販売されている実情があり,その中には別掲4のとおり,「料理のための清酒」あるいは「料理のためのお酒」であることを直接うたった商品も少なからず存在している。
そうすると,本願商標をその指定商品について使用しても,これに接する取引者,需要者は,当該商品が「料理のために用いる日本酒(清酒)」であること,すなわち,商品の品質,用途を表示したものとして認識するにとどまるとみるのが相当である。
したがって,本願商標は,商品の品質,用途を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであるから,商標法第3条第1項第3号に該当する。
2 商標法第3条第2項該当性について
請求人は,本願商標は使用をされた結果,特別顕著性を獲得したものであるから,商標法第3条第2項の要件を具備するものであり,登録を受けることができるものである旨主張し,甲第1号証ないし甲第167号証及び甲第169号証ないし甲第235号証(審決注:甲第168号証は欠番である。)を提出している。そこで,本願商標が商標法第3条第2項の要件を具備するに至ったものであるかについて,以下検討する。
請求人が提出した証拠及び請求人の主張によれば,以下のとおりである。
(1)本願商標の使用について
ア 本件商品の販売実績等について
(ア)使用の期間並びに販売の数量及び金額
請求人の100%子会社である宝酒造株式会社(以下「宝酒造」という。)は,遅くとも平成13年(2001年)10月以降継続して,自己の製造,販売に係る調味料の一つとして,本件商品の製造,販売を行っている(甲1〜甲43,甲135,甲136,甲230,甲231)。
また,本件商品について,平成14年(2002年)4月ないし同29年(2017年)3月の販売数量(1.8Lパック換算)は約4045万本,販売金額は約328億円であり,平成18年(2006年)ないし同29年(2017年)12月の広告宣伝費は約6.6億円に及ぶとされる(甲44〜甲46,請求人の主張)。
そして,請求人が,本件商品の販売数量を裏付ける証拠として提出する平成31年(2019年)4月ないし令和2年(2020年)3月の容器包材の発注先証明書(甲165〜甲167)には,「『料理のための清酒』商標記載資材の購入実績」の表題の下,内容量や商品名が異なる容器包材ごとの納品数量が記載されており,これらの数量が相違ない旨の記載とともに,令和2年(2020年)7月22日,同月29日又は同年8月3日付けで,これら容器包材を印刷・製造し,納品した者の従業員の氏名の記載と押印がなされている。また,これらには印刷・製造した容器包材の最終版下の写しが添付されている。
しかしながら,これらは最近1年間の商品の梱包材料の納品数量を表すものであって,本件商品が販売された数量を証明するものではない。そして,ほかに,本件商品の販売金額に関する主張を裏付ける証拠は提出されていない。
(イ)本件商品の市場シェアについて
インテージ社の「SRI(全国小売店パネル調査)」を使用したものであるとする資料には,平成28年(2016年)10月ないし同29年(2017年)9月の「非加塩料理酒(金額ベース)」における本件商品の市場シェアは75.55%であり,「加塩・非加塩料理酒(販売店率)」では17.06であったと記載されている(甲48の1)。
また,これらのデータが客観的な証拠であることを主張して提出する令和2年(2020年)7月21日付けのインテージ社発行のデータ内容証明書(甲169)には,平成28年(2016年)10月ないし同29年(2017年)9月の「縦構成比(フィルタ内)(金額)が75.55」,「販売店率が17.06」であることを証明する旨記載され,インテージ社及び西日本支社長の氏名の記載と押印がされている。
しかしながら,上記「縦構成比(フィルタ内)(金額)」及び「販売店率」は当該インテージ社のデータを使用して算出したものであるといえるとしても,これらが,どのようなデータをもとに,どのように算出されたものなのかは提出された証拠からは不明であって,これらが本件商品の市場シェアや販売金額とどのように関係するものか示されていない。そして,これらが本件商品の市場シェアや販売金額を示すものであるとしても,平成28年(2016年)9月以前及び平成29年(2017年)10月以降については不明である。
(ウ)本件商品の売上げランキングについて
平成23年(2011年)4月ないし平成30年(2018年)9月及び平成31年(2019年)4月ないし令和2年(2020年)3月における日本酒売上ランキングの掲載された新聞記事(甲49〜甲60,甲145,甲146,甲234,甲235)には,本件商品が当該期間において5位ないし18位に位置し,平成30年(2018年)4月ないし9月及び平成31年(2019年)4月ないし令和2年(2020年)3月において最大で1.3%のシェアを占めていたことが記載されている。
しかしながら,これらの順位や市場シェアは,飲用清酒と料理用清酒を区別することなく集計されたものであり,料理用清酒における本件商品の順位や市場シェアは明らかとはいい難い。さらに,甲第60号証,甲第146号証,甲第234号証及び甲第235号証には,「1.8L」の商品と「紙パック900ml」の商品が別々に集計されていることからすれば,本件商品のうち他のバリエーション商品のシェアは別に集計されていることが想定されるから,これらからは本件商品全体の市場シェアがどの程度であるかは不明であるし,そもそも上記日本酒ランキングは本願の指定商品とは異なる分野におけるものである。
(エ)本件商品の広告宣伝費について
宝酒造が実施した「タカラレシピコンテスト2021」(応募期間:令和3年(2021年)4月12日〜同年6月6日,結果発表:同年7月1日,応募総数:2999件)に係る株式会社東急エージェンシーが作成した「PR活動報告書」(甲229)には,当該コンテストの開催前後に行った記者発表会の様子が,テレビ番組,新聞,ウェブサイトを通じPRされ,当該コンテストを実施したことを広告費に換算すると約2億3864万円であることが記載されている。
しかしながら,当該コンテストは本件商品だけをテーマとしたものではなく,件外商品(タカラ本みりん)をも対象として実施されたものであるから,当該コンテストに係るPRが約2億3864万円相当の広告と同価値であったとしても,その額すべてが,本件商品の広告に使用された広告と同視することはできないし,その額のすべてが本件商品の広告に使用されたのと同視できるとしても,その額の多寡については,これを判断するための客観的な証拠の提出はなく,ほかに,本件商品の広告宣伝費に関する証拠は見当たらない。
また,当該レシピコンテストの記者発表会を報じた新聞記事,ウェブサイトの記事(甲229)には,「タカラ『料理のための清酒』」,「たから『料理のための清酒』」,「タカラ・料理のための清酒」,「『タカラ料理のための清酒』」,「タカラ 料理のための清酒」,「『タカラ本みりん』『同・料理のための清酒』」を使用した(使った,用いた)と記載されており,本願商標が単独で使用されたものとはいえない。
(オ)本件商品に関するアンケートについて
宝酒造が,2021年5月17日ないし同年6月15日に,全国の医療機関に勤務する管理栄養士を対象に実施した本件商品についてのアンケート結果(甲232)には,当該アンケートの配布枚数は「500部」,回答者は「232名」,回収率は「46.4%」であったことが記載されている。また,「普段から料理酒を使う方へ『料理のための清酒』各種をおすすめしたいと思いますか?」の問いに対しては回答者の98%が,「おいしく減塩したい方へ『料理のための清酒』各種をおすすめしたいと思いますか?」の問いに対しては回答者の97%が,「今後も『料理のための清酒』各種をご紹介したいと思いますか?」の問いに対しては回答者の98%が「はい」と回答したことが記載されている。
しかしながら,当該アンケートには本件商品と比較すべき他社製品はなく,アンケート方法も本件商品のサンプルと商品紹介チラシを対象患者に配布し,その感想等を管理栄養士が回答したものであるが,本件商品のパッケージには「食塩0ゼロ」の表示があり,これに接した患者にとって塩分の摂取を減らし健康を気遣うことはごく当たり前のことであって,おすすめしたいとの回答が高いことは十分予想されることである。そして,本件商品の需要者は,一般消費者であって,管理栄養士からの回答の数字が高いことをもって需要者の商標の認知度を把握することは困難である。
そして,本件商品のパッケージを当該アンケート結果が反映されたものに変更することを公表する宝酒造のウェブサイトにおける2021年8月24日付けのニュースリリース(甲230)には,パッケージの右上部に,緑色の円図形内に「管理栄養士推奨」と記載したマークが表示されており,また,宝酒造のウェブサイトにおける上記アンケートの結果を掲載したとされる特設ページ(甲231)には,本件商品のパッケージ画像とともに,「タカラ『料理のための清酒』を管理栄養士の97%がおすすめしています!」と表示するとともに,「管理栄養士がおすすめする理由」や管理栄養士が魅力を感じるポイントなどが記載されている。さらに,請求人の主張によれば,これらのパッケージ変更及びウェブサイトの内容追加によって,健康に配慮した食事に好適の商品であるという点における宣伝強化により,一層の市場シェアの拡大と本件商品に係るブランドの認知度・普及度の向上が見込まれるとされる。
しかしながら,パッケージ変更後の本件商品がどの程度の数量販売されたのか等は不明であって,これらのパッケージ変更及びウェブサイトの内容追加によって,本件商品の市場シェアやブランドの認知度・普及度がどの程度拡大・向上したのかはうかがい知ることはできないし,これらのパッケージ変更及びウェブサイトの内容追加が市場シェアやブランドの認知度・普及度の拡大・向上に貢献したとしても,その拡大・向上後の本件商品の市場シェアや売上高,認知度・普及度がどの程度なのかについては,客観的に把握することができる証拠の提出はない。
イ 本願商標の使用態様について
(ア)本件商品についての使用
「宝グループレポート2018」(甲1),「宝酒造株式会社ウェブサイト」(甲2,甲4〜甲14,甲127〜甲129,甲230,甲231),「宝ホールディングス 90周年記念誌」(甲3),請求人及び宝酒造の業務に係る商品カタログ(甲15〜甲43,甲135,甲136)には,本件商品のパッケージ画像が掲載されており,本願商標は,商品の容器側面に付されており,かつ,その付近に視認し得る範囲内に,請求人が自己の製造,販売に係る商品であることを表示するものとして広く用いている「タカラ」の文字からなる標章が表されている。
なお,本件商品は,発売当初,「1.8L紙パック」入りの商品のみであったが,近時においては,容量及び容器の形状が異なるものや「糖質ゼロ」をうたったもの等,複数のバリエーション商品が製造,販売されているところ,いずれの商品の容器についても,上記同様,本願商標の付近に「タカラ」の文字からなる標章が表されている。
(イ)広告宣伝における使用
a 雑誌における宣伝広告について
「『料理のための清酒』雑誌出稿実績」(以下「整理表」という。甲61〜甲66,甲68〜甲72)には,請求人が本件商品の広告を掲載したとする媒体名,実施日(実施期間),制作物画像が掲載されており,平成18年(2006年)11月ないし同19年(2007年)3月の間に6誌に計20回,同年9月ないし同20年(2008年)2月の間に6誌に計10回,同年8月ないし同21年(2009年)1月の間に6誌に計12回,同年6月ないし同22年(2010年)1月の間に12誌に計31回,同年4月ないし同23年(2011年)3月の間に4誌に計22回,同年4月ないし同24年(2012年)3月の間に3誌に計17回,同年4月ないし同25年(2013年)3月の間に5誌に計5回,同年4月ないし同26年(2014年)3月の間に2誌に計6回,同年4月ないし同27年(2015年)3月の間に4誌に計7回,同年4月ないし同28年(2016年)3月の間に3誌に計4回,同年4月ないし同29年(2017年)3月の間に3誌に計8回,同年4月ないし同30年(2018年)3月の間に2誌に計5回行った旨が記載されており,その一部には,掲載広告例の画像が掲載されているものの,画像が小さく不鮮明であることから,どのような広告がなされたものか不明である。
また,整理表の一部と思われる掲載広告例である「ミールタイム 2012夏号」(甲92),媒体名や掲載日の整合がとれない等により整理表との対応関係が不明な掲載広告例や整理表掲載対象外の掲載広告例(甲73〜甲83,甲85〜甲90,甲172〜甲195)の一部には,本件商品の画像や「料理のための清酒」の文字が掲載されていることが確認できるものの,いずれも本願商標の近傍に「タカラ」の文字が表示されているから,本願商標が単独で使用されたものとはいえない。さらに,これら雑誌の頒布数,頒布方法等については,これらを客観的に証明する証拠はない。
そして,請求人が雑誌「女性セブン」における商品紹介記事であると主張するもの(甲102)には,本件商品のパッケージ画像とともに本件商品を紹介する記事が掲載されているものの,実際に当該雑誌に掲載されたことの裏付けとなる証拠の提出はなく,実際に当該雑誌に掲載されていたとしても,本願商標の近傍に「タカラ」の文字が表示されているものであるから,本願商標が単独で使用されたものとはいえないし,当該雑誌の頒布数,頒布方法等については,これらを客観的に証明する証拠はない。
なお,請求人は,「整理表に掲載されている『きょうの料理ビギナーズ』の広告体裁については,甲第187号証ないし甲第195号証で確認できる」旨主張しているが,当該主張を裏付ける証拠の提出はないから,これらのうち,甲第187号証ないし甲第195号証以外については,実際に「きょうの料理ビギナーズ」(NHK出版)に掲載されたのか,掲載されていたとして,どのような広告がなされたのかは不明であるといわざるを得ない。
また,請求人は,甲第73号証ないし甲第78号証及び甲第80号証ないし甲第82号証は,「『きょうの料理』(NHK出版)に掲載の記事広告であって,甲第79号証と同じ体裁で各号に掲載されたものである」旨主張しているが,これを裏付ける証拠の提出はなく,実際に「きょうの料理」(NHK出版)に掲載されたものかどうかは不明であるといわざるを得ない。
b 新聞における宣伝広告について
上記整理表には,請求人が本件商品の広告を掲載したとする新聞の媒体名,実施日,制作物画像も掲載されており,平成20年(2008年)7月17日及び同年11月29日のリビング新聞において広告の掲載を行った旨が記載されている。これらにおいて,広告例の画像も掲載されているものの,画像が小さく不鮮明であることから,どのような広告がなされたのかは不明であるし,発行媒体,実施日等も裏付けとなる証拠の提出はない。
また,請求人は,整理表に含まれない新聞への掲載例として,平成13年(2001年)2月15日付け日本工業新聞(甲94),同14年(2002年)3月4日付け日本食糧新聞(甲95),同21年(2009年)9月2日付け日刊工業新聞(甲96)及び同年10月9日付け日本食糧新聞(甲97),同23年(2011年)8月25日の日経産業新聞とされる記事(甲99),同年8月26日の京都新聞とされる記事(甲100),同年8月31日の日本経済新聞京都版とされる記事(甲101),同28年(2016年)10月17日の毎日新聞とされる記事(甲103),同年10月20日の北海道新聞とされる記事(甲104),同年10月17日の福井新聞とされる記事(甲105),同年10月25日の山陽新聞とれる記事(甲106),同年11月12日の茨城新聞とされる記事(甲107)を示している。これらには本件商品の販売が開始された際やラインナップの追加がなされた際等の紹介記事が掲載されており,「宝酒造の“料理のための清酒”」「タカラ本料理清酒『料理のための清酒』」「タカラ『料理のための清酒』」等のように「料理のための清酒」の文字が掲載されているものの,いずれも本願商標の近傍に「タカラ」や「宝酒造」の文字が表示されているから,本願商標が単独で使用されたものとはいえない。
また,上記甲第99号証ないし甲第101号証及び甲第103号証ないし甲第107号証の発行元,発行日については,裏付けとなる証拠の提出はない。
そして,これら新聞記事への掲載は,平成13年(2001年)2月ないし同28年(2016年)11月の約15年間で12回であり,仮に,整理表のどのように掲載されたか不明な掲載例1誌2回(甲63)を入れても14回であり,掲載数は1年に1回程度とわずかである。
c ウェブサイトやバナーにおける広告宣伝について
整理表(甲61〜甲69)には,請求人が本件商品の広告を掲載したとする媒体名,実施日(実施期間),制作物画像が掲載されており,本件商品の広告を主に料理関連のウェブサイトにおいて,平成18年(2006年)11月ないし同19年(2007年)1月の間に3媒体(期間は媒体ごとに異なる。以下同じ。),同年9月ないし同20年(2008年)3月の間に3媒体,同年6月ないし12月の間に2媒体,同21年(2009年)6月ないし12月の間に2媒体,同22年(2010年)6月ないし12月の間に2媒体,同23年(2011年)7月から同24年(2012年)3月の間に2媒体,同年4月ないし同25年(2013年)3月の間に5媒体,同年4月ないし同26年(2014年)3月の間に4媒体,同年4月ないし同27年(2015年)3月の間に2媒体で行った旨が記載されている。これらにおいて,広告例の画像も示しているものの,画像が小さく不鮮明であるため,どのような広告であったかは不明であるし,発行媒体,発行日,掲載期間等も裏付けとなる証拠の提出はない。
また,整理表に掲載されていないか,対応関係が不明な7つの広告例(甲91,甲98,甲116〜甲120)のうち,「WOMEN’S PARK」のウェブサイトにおける「ウィメンズパーク ママのための口コミ大賞2015 食品部門」の料理酒部門で「タカラ『料理のための清酒』」の文字が,本件商品の画像とともに掲載されていること(甲91),「株式会社共同通信社」のウェブサイトの平成23年(2011年)8月25日付けの記事において,本件商品が「料理のための清酒」の文字及び本件商品と思しき画像とともに紹介されていること(甲98),「Kurashiru」のウェブサイトにおいて「煮るだけ!てりうま!豚バラ肉豆腐」の見出しの下,材料として「タカラ『料理のための清酒』」の文字が記載されるとともにその商品画像が掲載されている(甲116),「nanapi」のウェブサイトにおいて「ちょい足し『料理清酒』で料理が驚くほどおいしくなる裏ワザまとめ」の見出しの下,「タカラ『料理のための清酒』」の文字とともに本件商品の画像が掲載されていること(甲117)等が確認できるものの,いずれも本願商標の近傍に「タカラ」や「宝酒造」の文字が表示されているから,本願商標が単独で使用されたものとはいえないし,これらの掲載期間については不明である。さらに,「WOMEN’S PARK」のウェブサイト(甲91)については,URL及び日付の記載もないため,実際に一般に公開されていたのか,公開されていたとして,いつの時点で公開されていたのかについても不明である。
d イベントにおける宣伝広告について
(a)宝酒造及びNHK出版「今日の料理」テキストの共同企画「京 名料理人に学ぶ日本料理教室」について
請求人が,「NHK出版『NHKテキスト きょうの料理』に掲載された,宝酒造及びNHK出版『今日の料理』テキストの共同企画『京 名料理人に学ぶ日本料理教室』についての記事広告である」と主張するもの(甲73〜甲83,甲172〜186)の一部には,「タカラ『料理のための清酒』」の文字や本件商品の画像とともに,京都,東京,名古屋,大阪における当該料理教室の開催概要を内容とする記事が掲載されていることが確認できる(甲72〜甲82,甲172,甲173,甲176,甲178,甲179,甲183〜甲185)。しかしながら,いずれも本願商標の近傍に「タカラ」や「宝酒造」の文字が表示されているから,本願商標が単独で使用されたものとはいえない。
そして,甲第83号証,甲第174号証,甲第175号証,甲第177号証,甲第180号証ないし甲第182号証及び甲第186号証には,平成24年7月ないし令和2年9月に,京都,東京,大阪において,各回40名を定員として,宝酒造とNHK出版の共催による「京 名料理人に学ぶ日本料理教室」の開催を案内する広告が合計30回分掲載されているものの,これらには本願商標や本件商品の表示は確認できない。また,当該料理教室の開催状況を示す写真(甲84)の一部には,本件商品の画像が掲載されている。
さらに,これら料理教室の一部の回に係る「本日のレシピ」(甲84)には,各回のレシピやその調理方法を示すスライドや,完成料理の写真が掲載されているものの,そのほとんどについては,「タカラ料理清酒」等の文字の記載であって,ごく一部に「料理のための清酒」の文字が表示されているにすぎない。
以上からすると,宝酒造とNHK出版の共催による料理教室が,平成24年7月ないし令和2年9月に,京都,東京,名古屋,大阪において,各回40名を定員として,合計30回程度開催されたことはうかがえる。しかしながら,当該料理教室において本件商品が使用されたことによって,本願商標がその一般需要者にどの程度認識されるに至ったかはうかがい知ることはできない。
(b)平成24年(2012年)5月26日及び27日に広島県呉市で開催された「減塩サミットin呉 2012」
当該イベントにおけるプログラムの一部,開催時の写真,開催を案内するウェブサイト,地域誌「くれえばん2012年6月号」の一部(甲108)には,宝酒造が協賛企業の一つとして参加し,「味くらべ体験ブース」を設置し,当該イベントへの参加者数は約1000名であったこと,当該ブースには,宝酒造の名称である「宝酒造株式会社」の表示のほか,請求人や宝酒造が,自己の製造,販売に係る商品であることを表示するものとして広く用いている「タカラ」の文字からなる標章と「料理のための清酒」の文字との2段書きからなる表示が掲げられていること,上記地域誌においては,当該イベントにおける上記ブースの開催状況を伝える記事や本件商品の画像が表示された広告が掲載されていることが確認できる。
しかしながら,上記地域誌の頒布数等が不明であって,どの程度一般需要者の目に触れる機会があったかは不明であること,当該イベントにおいてどの程度参加者の目に触れたのか不明であることなどから,当該イベントによって,本願商標がその一般需要者にどの程度認識されるに至ったかはうかがい知ることはできない。
(c)宝酒造と小売店のタイアップによる料理教室
請求人が,平成28年度(2016年度)における全国の小売店とのタイアップによる料理教室を136回開催したことを主張して提出する甲第110号証は,宝酒造の本社及び日本各地の支社が当該年度に何回ずつ料理教室を開催したのかが記載された実績表であり,当該年度は宝酒造全体で合計136回であったことが記載されている。
また,そのうち,平成28年(2016年)8月26日開催の「宝酒造×竹田シェフ 澪と楽しむ夏の創作フレンチ」及び同年12月20日開催の「宝酒造 『澪』と楽しむ和モダンなクリスマス」における当日資料と思われるもの(甲111)には「タカラ料理のための清酒」の文字及び本件商品の画像が掲載されていることが確認できるものの,いずれも本願商標の近傍に「タカラ」の文字が表示されているから,本願商標が単独で使用されたものとはいえない。
さらに,請求人が上記料理教室の広告例として提出する甲第112号証及び甲第113号証は,前者には宝酒造が「ウオロク」とともに料理教室を開催したことが記載されており,後者には「実感クッキング事例」のタイトルの下,「ヨークマート」及び「ぎゅーとら」の文字とともにその開催風景を写したと思われる写真が掲載されている。
しかしながら,上記料理教室の開催回数及び参加人数を示す客観的な証拠の提出はない。
さらに,甲第112号証及び甲第113号証については,その掲載媒体が何かも不明であることに加え,「ウオロク」又は「ぎゅーとら」と開催した料理教室は開催日も不明である。また,これらにおいては,掲載されている画像が不鮮明であって,本件商品が掲載されているかどうかの確認ができないし,文中に「料理のための清酒」の文字の記載もされていない。
e セミナーにおける広告宣伝について
平成24年(2012年)6月8日に女子栄養大学駒込キャンパスで開催された「減塩が健康への要!高血圧を予防する減塩セミナー」(宝酒造は,協賛企業として参加。)において講演等が行われた際に用いられた「タカラ『料理のための清酒』/〜おいしい減塩のご提案〜」と題する資料(甲109)には,料理用の清酒として,本件商品の画像が掲載されていることは確認できるものの,当該資料がどのように利用されたかを裏付ける証拠の提出はないことに加え,当該セミナーの参加人数は不明である。
f キャンペーンにおける広告宣伝について
上記ア(エ)の「タカラレシピコンテスト2021」に係る特設サイト(甲217)や宝酒造のウェブサイトにおける当該コンテストに係るニュースリリース・プレスリリース(甲218〜甲221),及び,当該コンテストにおいて参加者がレシピ応募に利用した6つのウェブサイト(「クックパッド」,「レシピブログ」,「おうちごはん」,「みんなのきょうの料理」,「mamastaセレクト」,「オリーブをひとまわし」)において,当該コンテストの「タカラ『料理のための清酒』」の文字や本件商品のパッケージ画像を表示するとともに,その開催概要が記載されている(甲222〜甲227)ものの,いずれも「タカラ『料理のための清酒』」の紹介とともに,本願商標の近傍に「タカラ」や「宝酒造」の文字が表示された本件商品が掲載されているから,本願商標が単独で使用されたものとはいえない。
(ウ)その他
宝酒造の作成した「ギモン解決BOOK」(甲114),「お酒の調味料について」の商品説明用資料(甲115),店頭陳列等の際に用いられる広告物(甲123),本件商品の宣伝用チラシ(甲124,甲125),レシピカード(甲126)には,本件商品の画像や「タカラ料理のための清酒」の文字が記載されているものの,これらが実際に頒布されたものであることを裏付ける証拠の提出がないことに加え,実際に頒布されたものであるとしても,これらの頒布方法,頒布期間,頒布数等については不明である。
ウ 本願商標が単独のブランドとして認められ著名であることの証明について
請求人は,本願商標が使用による識別力を獲得したことを証明すべく第三者が署名又は捺印した8者の証明書を提出(甲137〜甲144)している。
そして,これらの証明書には,証明年月日及び本願商標の下に,たとえば,「宝ホールディングス株式会社・・・から証明要請のある上記商標は,宝酒造株式会社・・・が製造・販売する料理用清酒に,遅くとも2011年6月から継続して使用されているものであり,当該商標が使用された場合,同社の業務にかかわるものであることが,京都市内の取引者及び需要者の間において広く認識されていることを証明いたします。」(甲137)といった文章があらかじめ印刷され,各証明者の名称等が記載され,押印されている。
しかしながら,証明者は,地域経済社会の振興・発展において請求人と関係がある者であり,また,請求人と取引がある者であることからすれば,請求人から協力依頼があれば協力する立場にあったといえる。そして,証明者がいかなる具体的事実に基づき証明しているか不明であることから,当該証明書の内容は信ぴょう性に欠けるといわざるを得ない。また,本願の指定商品の取引者,需要者には広く一般の需要者も含まれるところ,一般需要者がどのような認識であるかについては,これらからはうかがい知ることはできないし,証明書の数もわずか8者分にすぎない。
エ 本件商品の受賞歴について
請求人は,本件商品の一つである1.8L紙パック商品が,「日経POSセレクション2020 ロングセラー」「日経POSセレクション 平成売上げNo.1」「日経POSセレクション 2019売上No.1」「日経POSセレクション 2020売上No.1」に選出されたことを主張し,選出者である日本経済新聞社からの書信及び同社のウェブサイトを示しており(甲209〜甲216),これらからは,日本経済新聞社が独自の情報(全国のスーパー,コンビニエンスストアなどから収集した販売実績データである日経POS情報)をもとに独自の基準に基づいて選出した上記各賞の商品「調理用日本酒」のカテゴリーにおいて,本件商品のラインナップ一つである1.8L紙パック商品が選出されたことが確認できる。
しかしながら,日経POS情報をもとに本件商品のうち1.8L紙パック商品が売上No.1に選出されたとしても,「調理用日本酒」全体の売上において本件商品の売上がどの程度を占めているか明らかではない。
(2)まとめ
以上によれば,宝酒造は,平成13年(2001年)10月以降継続して本件商品の製造,販売を行っている。
しかしながら,本件商品の販売数,売上高などの販売実績,市場シェア及び広告宣伝費等について確認できる証拠はないこと,本件商品やその広告等における本願商標の使用例はいずれも本願商標の近傍に「タカラ」や「宝酒造」の文字が表示されているものであって,本願商標が単独で使用されたものとはいえないこと,アンケートには本件商品と比較すべき他社製品はなく,本件商品の需要者は,一般消費者であって,管理栄養士からの回答の数字が高いことをもって需要者の商標の認知度を把握することは困難であること,女性誌や料理雑誌の発行年月日,発行者,頒布数等について,裏付ける証拠がないこと,新聞への掲載は,約15年間で12回と1年に1回程度で少ないこと,料理関連のウェブサイトの画像は小さく不鮮明であり,一部は掲載日,掲載期間等も不明であること,料理教室において本件商品が使用されたことによって本願商標が一般需要者にどの程度認識されるに至ったのかは不明であること,イベントにおける宣伝広告は地域誌の頒布数等が不明であること,宝酒造と小売店のタイアップによる料理教室は開催した事実が不明であること,セミナーの参加人数は不明であること,本願商標が著名であるとの第三者の証明書は,証明書の数が8者分とわずかにすぎないことに加え,証明者がいかなる具体的事実に基づき証明しているか不明であること,本件商品の受賞歴からは,本件商品が「調理用日本酒」全体の売上においてどの程度を占めているか明らかではないことからすると,本願商標が,請求人の出所を表示するものとして,需要者の間で全国的に認識されていることを客観的に判断することはできない。
したがって,本願商標は,請求人及び宝酒造により使用された結果,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものとは認められないから,本願商標は,商標法第3条第2項の要件を具備するものではない。
3 請求人の主張について
(1)請求人は,本願商標の周知性を検討する材料として,本件商品の市場シェアを検討するにあたっては,「不可飲処理料理酒(調味料)」を含めるべきではなく,本願の指定商品のみで検討するべき旨を主張している。
しかしながら,本願の指定商品と「不可飲処理料理酒(調味料)」とは,これら商品の用途,需要者が共通であって,販売場所を共通にすることも少なくないものであることからすると,本願商標の周知性を判断するにあたっては,「不可飲処理料理酒(調味料)」も含めた「料理酒」全体の市場シェアや販売金額を基準に行うべきである。
したがって,請求人の主張は採用できない。
(2)本件商品やそれに関する記事が掲載された雑誌の頒布数等について,請求人は,整理表に掲載されている雑誌のうち2008年5号以降に発行されたものの発行日,発行者,頒布数は,一般社団法人日本雑誌協会の公表している「印刷部数公表」(甲170)により証明する旨主張している。
これらによれば,たとえば,「きょうの料理」(NHK出版)は多いときで68万部(平成20年(2008年)4月〜6月),「ESSE」(扶桑社)は多いときで65万7634部(平成20年(2008年)10月〜12月)が印刷・発行されたことが確認でき,ある程度の発行部数があったことはうかがえるるものの,これらは各雑誌の3か月ごとの印刷・発行部数であり,各雑誌において請求人の記事広告が掲載された号の印刷・発行部数は不明である。
そして,上記2(1)イ(イ)aのとおり,雑誌における本願商標及び本件商品の掲載例は,いずれも本願商標の近傍に「タカラ」の文字が表示されているものであって,本願商標が単独で使用されたものとはいえないものであるから,これらをもってしては本願商標の周知性を判断することはできない。
(3)請求人は,証明書(甲137〜甲144)について,「証明者は,いずれも料理に造詣深く,料理界に精通された方々であり,その知識と経験により,『本件商品』の特徴はもとより,『加塩料理酒』との違い,『飲用清酒』との調理効果の違い,『料理用清酒』の他社商品との異同,ならびに『本件商品』の市場動向を知り尽くした料理指導者として,また,現場で調理人として活躍されている錚々たる日本の料理界を代表する方々の証明であり,一般の需要者の認識程度の把握もされているものであり,その意味では,需要者の代表でもあるので,一般需要者の証明に勝る」旨を主張しているが,証明書に記載された料理指導者及び料理人が一般需要者の代表であるとの裏付けとなる具体的な証拠は提出されておらず,請求人の独自の主張といえるものであるから,この主張は採用できない。
4 まとめ
以上のとおり,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当するものであって,かつ,同条第2項に規定する要件を具備するものではないから,登録することができない。
よって,結論のとおり審決する。

別掲

別掲1 本願商標


別掲2 商品名称等を筆記体風の書体で文字毎に大きさを変えて表している例
(1)キッコーマン株式会社のウェブサイトに掲載されている「マンジョウ国産米こだわり仕込み料理の清酒」という商品のパッケージには,「料理の清酒」という文字のうち,「料理」の文字及び「清酒」の文字が大きく書され,「の」の文字が小さく書されている。

(https://www.kikkoman.co.jp/products/product/K102005/)
(2)キング醸造株式会社のウェブサイトに掲載されている「料理専用の清酒」という商品のパッケージには,「料理」「専用の」「清酒」のそれぞれの文字の大きさを変えて表されている。

(https://hinode-mirin.co.jp/products/ryouri_seisyu/sake-cooking-senka/)
(3)オエノングループのウェブサイトに掲載されている「天然水仕込みの料理清酒」という商品のパッケージには,「天然水仕込みの」の文字よりも「料理清酒」の文字が大きく表されている。

(https://www.oenon.jp/product/sake/normal/tennensuisikomino-ryoriseishu.html)
(4)月桂冠株式会社のウェブサイトに掲載されている「美味しく仕上がる料理清酒」という商品のパッケージには,「美味しく仕上がる」の文字よりも「料理清酒」の文字が大きく表されている。

(https://www.gekkeikan.co.jp/products/type13/ryoriseishu/)
(5)Amazonのウェブサイトに掲載されている「東亜酒造 和風天国わが家の料理清酒」という商品のパッケージには,「わが家の」の文字よりも「料理清酒」の文字が大きく表されている。

(https://www.amazon.co.jp/%E6%9D%B1%E4%BA%9C%E9%85%92%E9%80%A0-%E5%92%8C%E9%A2%A8%E5%A4%A9%E5%9B%BD-%E3%82%8F%E3%81%8C%E5%AE%B6%E3%81%AE%E6%96%99%E7%90%86%E6%B8%85%E9%85%92-%E3%83%91%E3%83%83%E3%82%AF-900ml/dp/B01A9T411K)
(6)ヤマコ醤油株式会社のウェブサイトに掲載されている「相生 料理酒」という商品のラベルには,「料理用の酒」と記載されており,そのうち「酒」の文字は「料理用の」の文字よりも大きく表されている。

(http://www.yamakosyouyu.co.jp/detail.php?id=20&schemas=type020_20_5&detail=2)

別掲3 「料理のため」に用いる日本酒(清酒)が一般に広く製造,販売されている例(下線は合議体による。)
(1)2003年(平成15年)12月1日付け産経新聞(東京朝刊25頁)に,「【安心マークの食べ物さがし】料理酒(福島県矢吹町)」の見出しの下,「慶応元(1865)年創業の同店では,その歴史にふさわしくさまざまな酒が造られているが最近,料理研究家などに評判なのが,料理酒『蔵の素』だ。現在,市場で売られている料理酒には,アルコールや糖類,塩分などが添加されていて,酒とは名ばかりのものが多い。『蔵の素は,米と麹,水だけで造った純米酒。合成食品添加物は,一切使っていません。この酒には,料理をおいしくするうまみ成分がたっぷり含まれていて,天然のアミノ酸は通常の純米酒の3倍,清酒の4倍もあります』と,4代目大木代吉さん(66)は胸を張る。・・・料理のための本格派純米料理酒『蔵の素』は,和食に限らず,どんな料理にも使うことができる。・・・」との記載がある。
(2)「株式会社杜の蔵」のウェブサイトにおいて,「商品のご案内」中の「琥珀の料理酒」の見出しの下,「天然由来の濃潤なコクとうまみが琥珀色に輝くおいしい料理のためのお酒 福岡・糸島で農薬を使わずに契約栽培した酒米『山田錦』を贅沢に使用。・・・糖類・塩・化学調味料 不使用」との記載がある。
(http://www.morinokura.co.jp/hyakufukura/products/shouhin.html)
(3)「幸せの酒 銘酒市川」のウェブサイトにおいて,その取扱商品の一として,「福来純 純米料理酒 1.8L」の商品紹介として「『福来純』純米料理酒 ★★知る人のみぞ知る『究極の料理酒』!・・・★★〜料理のためのお酒です。料理がいっそうおいしくなります!」との記載がある。
(https://www.e-sakaya.com/products/list?category_id=6068)
(4)「日本名門酒会公式サイト」のウェブサイトにおいて,「料理酒について」の見出しの下,「料理のために生まれた日本酒・・・そこで,こちらでご紹介している『料理酒』。伝統的な醸造技術を活かした各蔵元独自の製法で,"調味料としての酒"にポイントを置いて造られた料理のために生まれたお酒です。料理に旨みやコクを与えてくれるアミノ酸や有機酸がたっぷり含まれています。『料理酒』として売られているものの中には,糖類や調味料,はたまた塩まで添加されているものもありますが,そうした無用な添加もいっさいしていません。」との記載があり(http://www.meimonshu.jp/modules/xfsection/article.php?articleid=2121),また,同ウェブサイトにおいて,「千代寿 純米料理酒『千代之味』/煮物が格別に美味しくなる! 旨みたっぷり純米原酒・・・『千代之味』は料理のために造られた原酒タイプの純米酒です。」との記載がある。
(http://www.meimonshu.jp/modules/xfsection/article.php?articleid=2119)

別掲4 「料理のための清酒」あるいは「料理のためのお酒」であることを直接うたった商品の例(下線は合議体による。)
(1)キッコーマン株式会社のウェブサイトにおいて,「2014年7月15日付け」のニュースリリースとして,「マンジョウから,調理効果に優れた,料理のための清酒!『国産米こだわり仕込み 料理の清酒』新発売!」の見出しの下,「キッコーマン食品株式会社は,8月4日より,国産米100%で仕込み,食塩無添加の料理のための清酒『マンジョウ 国産米こだわり仕込み 料理の清酒』500mlを全国で新発売します。『国産米こだわり仕込み 料理の清酒』は,料理をよりおいしくするための機能を高めた,料理のための清酒です。」との記載がある。
(https://www.kikkoman.co.jp/corporate/news/14034.html)
(2)Rakutenにおける焼酎屋ドラゴン奥野酒店のウェブサイトにおいて,「国産米を100%使用し,天然水で仕込んだ料理用の清酒 【数量限定】天然水仕込みの料理清酒 13% 1.8Lパック×6本 1ケース 1800ml 福徳長酒類 料理酒食塩無添加 さまざまな料理に」の見出しの下,「『天然水仕込みの料理清酒』は,南アルプスや八ヶ岳,富士山を望む豊かな自然に囲まれた地で,国産米を100%使用し,天然水で仕込んだ料理用の清酒です。・・・さまざまな料理のための清酒」との記載がある。
(https://item.rakuten.co.jp/shochuya-doragon/4978432377396-1/)
(3)LOHACOのウェブサイトにおいて,「おいしい料理のためのお酒」の見出しの下,「いつもの料理がワンランクアップ・・料理上手への近道は,良い調味料を選ぶこと。そこで常備しておきたいのが,可愛いパッケージだけでなく品質にもこだわった『おいしい料理のためのお酒』。」との記載がある。
(https://lohaco.jp/event/ozeki_oishiiryori-osake/)
(4)西出酒造オンラインストアのウェブサイトにおいて,「本醸造『加賀藩料理番金の料理酒』1000ml(無添加)」の見出しの下,「『加賀藩料理番 金の料理酒』は,江戸時代の加賀藩料理番と加賀の杜氏の歴史物語をもとに企画開発した料理のための清酒です。伝統的な酒造りの技と心を受け継ぎ,現代の様々な料理にも調和するように仕上げました。」との記載がある。
(https://nishidesake.shop-pro.jp/?pid=133895240)
(5)Demae−canのウェブサイトにおいて,「【931042】白鶴 コクと旨みたっぷりの料理の清酒 500ml」の見出しの下,「料理のための清酒です。」との記載がある。
(https://demae-can.com/shop/item/27102010002/3029411/a11/00000166/001/?addressId=&zip=)

(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは,この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は,その日数を附加します。)以内に,特許庁長官を被告として,提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は,著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては,著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
審理終結日 2021-11-05 
結審通知日 2021-11-10 
審決日 2021-12-21 
出願番号 2018032473 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (W33)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 佐藤 松江
特許庁審判官 須田 亮一
平澤 芳行
商標の称呼 リョーリノタメノセーシュ、リョーリノタメノ、リョーリノタメ 
代理人 特許業務法人みのり特許事務所 

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