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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W0942
管理番号 1381831 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2022-02-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-02-17 
確定日 2022-01-21 
異議申立件数
事件の表示 登録第6324800号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6324800号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6324800号商標(以下「本件商標」という。)は、「VtuberBaseball」の文字を横書きしてなり、令和元年12月24日に登録出願、第9類「コンピュータ用ゲームソフトウェア(電気通信回線を通じてダウンロードにより販売されるもの),コンピュータ用ゲームソフトウェア(記憶されたもの)」及び第42類「ソフトウェア制作におけるコンピュータソフトウェアの開発,コンピュータソフトウェアのバージョンアップ」を指定商品及び指定役務として、同2年11月5日に登録査定、同年12月4日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において引用する商標は、以下の6件である。
1 登録第4999382号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:YouTube(標準文字)
登録出願日:平成18年7月28日
優先権主張:アメリカ合衆国 2006年1月30日
設定登録日:平成18年10月27日
指定役務:第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,ウェブサイトの作成又は保守」を含む第42類並びに第38類及び第41類に属する商標登録原簿記載の役務
2 登録第4999383号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:別掲1のとおり
登録出願日:平成18年7月28日
優先権主張:アメリカ合衆国 2006年1月30日
設定登録日:平成18年10月27日
指定役務:第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,ウェブサイトの作成又は保守」を含む第42類並びに第38類及び第41類に属する商標登録原簿記載の役務
3 国際登録第991364号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の構成:別掲2のとおり
国際登録日:2008年年10月16日
設定登録日:平成22年7月16日
基礎出願又は基礎登録の効力の一部終了による本件の登録の一部抹消:平成22年9月29日
指定商品及び指定役務:第9類「Software to enable uploading, posting, showing, displaying, tagging, blogging, sharing or otherwise providing electronic media or information over the Internet and other communications networks; application program interface (API) that enables developers to integrate video content and functionality into websites, software applications, or devices.」並びに第35類、第38類、第41類及び第42類に属する国際商標登録原簿記載の役務
4 登録第6094059号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の構成:別掲3のとおり
登録出願日:平成29年8月31日
優先権主張:アメリカ合州国 2017年8月28日
設定登録日:平成30年11月2日
指定商品及び指定役務:第9類「オーディオコンテンツ及びビデオコンテンツを携帯電話・タブレット・パーソナルコンピュータ及びテレビジョンにストリーミングするためのダウンロード可能なコンピュータソフトウェア,インターネット及びその他のコミュニケーションネットワークを介した電子メディア又は情報のアップロード・投稿・表示・ディスプレイ・タグ付け・ブロギング・共有又は提供を可能にするダウンロード可能なコンピュータソフトウェア,開発者がビデオコンテンツ及びビデオ機能をウェブサイト・ソフトウェアアプリケーション及びデバイスに統合するためのアプリケーションプログラミングインターフェース(API),コンピュータソフトウェア」、第42類「広告主・マーケティング担当者・パートナー及びコンテンツプロバイダーがオンラインユーザーと接触・関与・交流することが出来るウェブサイト検索エンジンの提供」を含む第42類並びに第25類、第35類、第38類、第41類及び第45類に属する商標登録原簿記載の商品及び役務
5 申立人が「引用商標1ないし引用商標4又は『YouTube』の商標を用いて提供する動画共有・配信ウェブサイト(以下『YouTube』という。)に頻繁に動画を投稿し、人気やその結果の広告収入を得ている者」を示す「YouTuber」の文字よりなる商標(以下「引用商標5」という。)であり、申立人が周知著名であると主張するものである。
6 申立人が提供する「『YouTube』に、コンピュータグラフィックスを用いた日本発祥のキャラクター(アバター)、又は、キャラクター(アバター)を用いた動画を、投稿・配信する者」を示す「Vtuber」の文字よりなる商標(以下「引用商標6」という。)であり、申立人が周知著名であると主張するものである。
なお、上記の引用商標1ないし引用商標4の商標権は、現に有効に存続しているものである。
また、引用商標1ないし引用商標6をまとめていうときは「引用商標」という。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第11号及び同項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第55号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 引用商標1ないし引用商標4の周知著名性について
(1)引用商標1ないし引用商標4に係る「YouTube」の文字は、申立人の提供する動画共有・配信ウェブサイトであるYouTubeとして採択され(甲3)、我が国において周知著名となっている商標である。
「YouTube」は2005年(平成17年)の立ち上げ以来、全世界で何十億人ものユーザーが、自ら作成した動画をアップロードし、共有し、再生することができる場として親しまれ、そこでは、世界中のユーザーが繋がり、情報を交換し、お互いに影響を与え合うことができることから(甲4)、「YouTube」は、インターネット上における動画配信サービスの先駆けとなり、極めて短期間のうちに世界中で広く知られるようになった。
また、動画コンテンツ制作者や広告主は、「YouTube」を用いて、動画や広告を自由に配信することもでき、広告媒体としての利用も推奨されており、個人のインターネットユーザーのみならず、多くの企業にも幅広く活用されている(甲5)。
(2)グーグル社と関連会社ユーチューブ リミテッド ライアビリティーカンパニーについて
グーグル社は、インターネットの代表的なサーチエンジンのひとつである「Google」を運営する米国の企業であり、今日では、サーチエンジンのほかに、ウェブブラウザ、動画共有、地図、インターネット広告、電子メールなどソフトウェアアプリケーションの提供を中心として、さまざまなサービスを提供している。
その中核サービスの一つ動画共有は、主に「YouTube」の管理運営を通じて提供されているものであるが、同サイトは、グーグル社が2006年(平成18年)11月にユーチューブ,インコーポレイテッド(以下「ユーチューブ社」という。のちに、ユーチューブ リミテッド ライアビリティーカンパニーとなる。)を買収し、その事業を実質的に運営・管理する形で開始されたものである(甲6)。
(3)「YouTube」ロゴ(甲2の4)の採択の由来
「YouTube」の名前は、二人称単数を表す英語の「You」と、「ブラウン管」を意味し、「テレビ」を表す米国の俗語として用いられている「Tube」の文字を組み合わせた創造語であり、ユーザー(You)が、インターネットを通じて、テレビ(Tube)に見立てたPCモニターに自らを映し出すものというメッセージを込めて採択されたものである。
(4)「YouTube」の特徴
「YouTube」においては、会員登録をしたユーザーは、動画ファイルをインターネット上にアップロードすることにより投稿し、公開することができる。また、「YouTube」で公開された動画ファイルの検索・閲覧は会員登録の有無に拘わらず誰でも無料で閲覧することができる。会員登録したユーザーはさらに閲覧した動画に対するコメントを投稿したり、動画を5段階で評価したりすることもできる。
もっとも、「YouTube」が登場以前からも動画配信サイト自体は存在していたが、一般的なインターネット個人ユーザーが動画をウェブ上で公開するための手段として使い勝手の良い動画配信サイトは、「YouTube」が初めてのものである。
「YouTube」が開設されたことにより、個人が容易にビデオクリップ等の動画をウェブ上にアップロード、検索・閲覧、インターネット・個人専用のビデオネットワーク又は電子メールを経由して他人と動画を共有することが極めて容易にできることとなったことが最大の特徴であった(甲7)。
(5)急増した「YouTube」の利用者
「YouTube」は、サービスを開始した当初は英語のみで運営していたが、動画のアップロード・閲覧が簡単にできるという高い利便性・娯楽性から世界中で人気が爆発し、サービスを開始後間もなく(2006年春)、世界中から一日当たり6万5千件もの動画のアップロードがなされ、1億件を超える動画の配信が行われるようになった(甲8〜甲10)。
(6)「YouTube」の事業者による利用拡大について
「YouTube」を利用することによってインターネット上で手軽に動画を公開・配信することが可能になることに着目し、同サイトを広告・宣伝の媒体として利用する者も現れた(甲11〜甲18)。また、純粋な放送・娯楽の提供のメディアとしての利用方法も盛んになった(甲19〜甲28)。
(7)「YouTube」の個人による利用促進
グーグル社は、個人に対しても利用の促進するための各種プログラムを用意した(甲29、甲30)。
より多くのユーザーが「YouTubeクリエイター」として魅力的な動画を配信することで閲覧数を稼ぎ、ひいては広告収入を得られることとなった。一部の「YouTubeクリエイター」は、「YouTuber(ユーチューバー)」と呼ばれて、インターネットユーザーの間で爆発的人気を有する者もあらわれ、ある種の社会現象の如くになっている。
(8)「YouTube」のアプリケーションソフトウェアとしての利用
特にグーグル社の提供するスマートフォンやタブレットコンピュータ用のオペレーションソフトである「アンドロイド(Android)」を搭載したスマートフォンやタブレットコンピュータに、「YouTube」のアプリケーションソフトウェアが、プレインストールされている事実は特筆すべきものである。
このことが、「YouTube」利用の際の利便性を高め、動画共有・配信ウェブサイトの利用者数増加、固定ユーザー層の獲得に多大な貢献をしたことはいうまでもない。
(9)「YouTube」が我が国における動画共有・配信ウェブサイトの利用者数No.1であること
「YouTube」は、日本国内において、動画サイトの利用者数第1位となり、2位以下を大きく引き離すとともに(甲32)、申立人であるグーグル社は、すでに2016年(平成28年)においてパソコン経由の動画ストリーミングの閲覧数が最も多いサービス企業(甲33、民間企業、コムスコア社調べ)となっていた。
(10)引用商標1ないし引用商標4に関わる「YouTube」に関連する商品及び役務について
引用商標1ないし引用商標4は、インターネットにおけるビデオ映像のストリーミングサービスを始めとして、「YouTube」の利用のための、電子媒体又は「情報をインターネット上又は他の通信ネットワーク上でアップロード・ポスティング・発表・表示・タグ付け・ブログ・共有又は他の提供を可能にするアプリケーションソフトウェア(ダウンロードによるもの、ダウンロードされないもの)(第9類、第42類)に大々的に使用され、少なくともこれらの商品・役務について周知著名性を獲得している。
(11)まとめ
以上より、本件商標の登録出願前から、引用商標1ないし引用商標4に係る「YouTube(ユーチューブ)」は、グーグル社の提供に係る動画共有・配信ウェブサイトについて継続して使用された結果、周知著名性を獲得していた事実は疑いようがないのであり、本件商標の登録査定時においても継続してその周知著名性を維持していたと優に推認できるものである。
2 「YouTube」(ユーチューブ)から派生した引用商標5及び引用商標6について
(1)「YouTuber(ユーチューバー)」(引用商標5)について
「YouTuber(ユーチューバー)」は、「YouTube」に頻繁に動画を投稿し、人気やその結果の広告収入を得ている人たちを示すものである(自由国民社「現代用語の基礎知識2016」)。
また、「知恵蔵MINI」(株式会社朝日新聞出版、2014年(平成26年)5月8日)によれば、「日本国内では、2014年4月現在、チャンネル登録者数360万人以上、配信動画の総アクセス数が8億回超える、オンラインタレントHIKAKIN(ヒカキン)が『トップユーチューバー』の1人として有名である。ヒカキン氏は2013年12月11日にYouTubeが発表した『2013年トップチャンネル』で、エイベックスやAKB48らに次いで5位を獲得しており、旅行大手・人材派遣などの企業がトップユーチューバーたちとタッグを組み、テレビCMなどとは違った訴求力を持つ作品によりネット上で広告・販促活動を行うようになっている。」と記載されている(甲36〜甲42)。
(2)「Tuber(チューバー)」を含む標章(「VTuber(Vチューバー)」)(引用商標6)について
2016年(平成28年)には、「YouTube」(ユーチューブ)」から派生した標章である「YouTuber(ユーチューバー)」の略語「Tuber(チューバー)」を一部に含む標章として、動画配信・投稿を行う、コンピュータグラフィックスを用いた日本発祥のキャラクター(アバター)、又は、キャラクター(アバター)を用いた動画を「YouTube」に投稿・配信する者を示す「VirtualYouTuber(バーチャルユーチューバー)」の用語が使われるようになった(甲43〜甲49)。
これにより、「YouTube(ユーチューブ)」から派生した標章である、「VirtualYouTuber(バーチャルユーチューバー)」又は、「VTuber(Vチューバー)」についても、「キャラクター(アバター)を用いて動画を『YouTube』に投稿・配信する者」として我が国において広く認知されることとなった。
(3)まとめ
「YouTuber(ユーチューバー)」及び「VTuber(Vチューバー)」等の「YouTube(ユーチューブ)」から派生した標章は、常に、「YouTube」に係る上記商品及び役務と関連して用いられているものであり、その事実は我が国の需要者間で周知の事実となっている。
3 申立人が、「YouTube」の動画投稿者に義務付けている利用規約における禁止事項について
申立人は、「YouTuber(ユーチューバー)」又はその略称である「Tuber(チューバー)」の各標章を、動画を制作し「YouTube」に投稿する人の総称として、「YouTube」のブランドの一つとして位置付ける一方、「YouTube」に動画を投稿する一般ユーザー及び「YouTubeチャンネル」のチャンネル登録者などの動画投稿者に対して、自らを「YouTuber(ユーチューバー)」又は「Tuber(チューバー)」と名乗ることを許容し、自由な使用を認めるため、自らも敢えて商標登録を行わないという戦略をとっている。これにより、「YouTube」を閲覧するインターネットユーザー等の需要者の動画投稿、閲覧を行う意欲も高め、結果として、「YouTube」の事業の更なる発展が期待される。
4 商標法第4条第1項第7号について
引用商標1ないし引用商標4に係る「YouTube」は、申立人であるグーグル社の提供する「YouTube」として採択され、我が国において周知著名となっている商標とられるものである(甲3〜甲42)。
また、「YouTube」は、基本的には世界中のあらゆる個人又は団体が一定のルールの範囲内で自由に動画を投稿できる世界最大の動画交友・配信プラットフォームであり、重要な基本的人権である表現の自由に寄与するという公益的役割も担っている。
そして、「YouTube」の動画投稿者は、自らを「YouTuber(ユーチューバー)」又は「VTuber(ブイチューバー)」と名乗り、「YouTube」上の表現者であることを閲覧者に対して示し、自らを他の投稿者と差別化している。
そのようなことから、申立人は「YouTube」に動画を投稿する一般ユーザー及び「YouTubeチャンネル」のチャンネル登録者などの動画投稿者に対して、自らを「YouTuber(ユーチューバー)」又は「VTuber(Vチューバー)」と名乗ることを許容し、自由な使用を認めており、自らの情報発信に際して使用を欲する者が使用をちゅうちょしないよう、自らも敢えて商標登録を行わないこととしている。
これにより、「YouTube」を閲覧するインターネットユーザー等の需要者の動画投稿、閲覧を行う意欲も高め、結果として、「YouTube」の事業の更なる発展、ひいては、「YouTube」上で多様な表現が発信されることを促進することが期待されている。
してみれば、本件商標は、動画作成者に適用される申立人のガイドラインに違反して登録されたものであり、「YouTube」における他の動画投稿者による「YouTuber(ユーチューバー)」又は「VTuber(Vチューバー)」の標章の使用を委縮させ、ひいては、公共性・公益性の高い「YouTube」における自由な表現行為を委縮させかねないものであるから、社会公共の利益に反し、また、社会の一般的道徳観念に反するものというのが相当である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当し、取消されるべきである。
5 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標と引用商標1ないし引用商標4の類似性について
本件商標は、「VtuberBaseball」の文字を表してなる。ここで、先頭の欧文字「V」と、中間の欧文字「B」が大文字で表され、その余の文字が小文字であることから、「Vtuber」と「Baseball」の文字からなるものと容易に理解できるところである。
これに対し、引用商標1ないし引用商標4は、通常用いられる文字を用いて「YouTube」の文字を表したもの(引用商標1)、その文字と赤色又は黒色に着色した、角を丸くした横長楕円形の内側に白抜き右向き三角形を表した図形を組み合わせたもの(引用商標4)と、「You」の文字と赤色又は黒色に着色した、角を丸くした横長楕円形の内側に白抜き文字で表した「Tube」の文字により構成されてなるもの(引用商標2ないし引用商標4)である。
ア 観念について
本件商標は、構成中の「Vtuber」の文字から、引用商標1ないし引用商標4に係る「YouTube(ユーチューブ)」、あるいは、その派生標章である「VTuber(ブイチューバー)」が想起され、「キャラクター(アバター)を用いて動画を『YouTube』に投稿・配信する者」との観念を以って理解されるものであり、引用商標1ないし引用商標4とは、その意味合いにおいて非常に紛らわしい。
さらに、本件商標からは、何か「グーグル社の提供する動画共有・配信ウェブサイト」、又は、「『YouTube』に頻繁に動画を投稿し、人気やその結果の広告収入を得ている人たち」に関連する商品又は役務に通じる観念、又は、「YouTube(ユーチューブ)」又は「YouTuber(ユーチューバー)」を想起、連想する。
したがって、本件商標は、観念上、引用商標1ないし引用商標4と類似し、その類似性は非常に高い。
イ 称呼について
次に、称呼についてみるに、本件商標からは構成文字に照応して「ブイチューバーベースボール」の称呼が生じるとみられる。
そして、このような称呼は、全体で10音を優に超える冗長なものであって、簡易迅速を尊ぶ取引界においては、取引者、需要者をして、読みやすい前半部の「Vtuber」に照応した「ブイチューバー」の略称をもって、取引に資する場合も少なくないと考えられる。
これに対し、引用商標1ないし引用商標4は、「ユーチューブ」の称呼が生じる。
そこで、本件商標から生じる「ブイチューバー」の称呼と、引用商標1ないし引用商標4から生じる「ユーチューブ」の称呼を対比すると、両者を構成する5音から6音のうち、3音から4音が共通する上、前半の音が比較的弱く柔らかに称呼され、強音として聴取される後半の「チュー」へとリズミカルにテンポよくつながる全体の音調が著しく類似する。
(2)本件商標と引用商標1ないし引用商標4の類否について
そこで、異なる時間・場所を想定した隔離観察を行った場合、本件商標と引用商標1ないし引用商標4は、観念上類似しており、称呼上も近似する場合がある。
しかも、本件商標の「Vtuber」又は「tuber」の文字が、申立人の商標として周知著名である「ユーチューブ」又は「ユーチューブ」に密接に関連する「ユーチューバー」、「ブイチューバー」と共通にしていることから、これに接する需要者、取引者をして「チューバー」の文字が強く印象付けられ、需要者等の通常の注意力のみをもってしては、本件商標と引用商標1ないし引用商標4とを区別することは必ずしも容易ではない。
以上を総合すると、本件商標と引用商標1ないし引用商標4は、彼此紛れるおそれの高い類似の商標である。
(3)指定商品及び指定役務の類似性について
本件商標に係る指定商品及び指定役務は、引用商標1ないし引用商標4の指定商品及び指定役務と同一又は類似のものである。
(4)したがって、本件商標は、引用商標1ないし引用商標4との関係において、商標法第4条第1項第11号に該当する。
6 商標法第4条第1項第15号について
(1)本件商標と引用商標1ないし引用商標4との類似性の程度について
本件商標と引用商標1ないし引用商標4との類似性の程度は高いといわなければならない。
(2)引用商標1ないし引用商標4の周知著名性
引用商標1ないし引用商標4は、インターネットにおけるビデオ映像のストリーミングサービスを始めとして、電子媒体又は情報をインターネット上又は他の通信ネットワーク上でアップロード・ポスティング・発表・表示・タグ付け・ブログ・共有又は他の提供を可能にするアプリケーションソフトウェア(ダウンロードによるもの、ダウンロードされないもの:第9類、第42類)について使用される商標として、広く知られるに至っていた事実は疑いようがなく、本件商標の登録査定時はもとより、登録査定時においても継続してその周知性を維持していたと推認できるものである。
(3)引用商標1ないし引用商標4の独創性の程度
引用商標2及び引用商標3は、黒い太い文字(ゴシック体)を用いて表わした「You」の右側に、四隅に丸みをもたせた赤色(又は、灰色・黒色)の横長四辺形(四辺形の各辺はなだらかな曲線で書され、全体としてやや丸みがかった態様となっている)の内部に白抜きした太い文字(ゴシック体)「Tube」を表わした申立人関連会社であるユーチューブ社の創作に係る特異な構成からなる。
また、引用商標1ないし引用商標4に係る「YouTube」の文字は、二人称単数を表す英語の「You」と、「ブラウン管」を意味し、「テレビ」を表す米国の俗語として用いられている「Tube」の文字を組み合わせた創造語である。
(4)商品及び役務間の関連性
引用商標1ないし引用商標4は、インターネットにおけるビデオ映像のストリーミングサービスを始めとして、少なくとも「電子媒体又は情報をインターネット上又は他の通信ネットワーク上でアップロード・ポスティング・発表・表示・タグ付け・ブログ・共有又は他の提供を可能にするアプリケーションソフトウェア(ダウンロードによるもの、ダウンロードされないもの:第9類、第42類)」との関係で周知著名となっている。
してみると、本件商標の指定商品及び指定役務と引用商標1ないし引用商標4が周知性を有する各商品及び役務の間における商品の性質及び役務の質、用途、目的における関連性の程度は極めて高いというべきである。
(5)需要者・取引者の共通性
本件商標の商標権者の需要者である一般消費者には、老若男女も含まれ、その注意力の程度は決して高くはない。
特に、「YouTube」において、10代の若年層による利用率が他の年代にくらべて高いことや(甲34)、「YouTuber(ユーチューバー)」が、小中学生人気の職業となっている(甲39、甲40)になっているところ、小中高生などの未成年者の注意力・判断力はさらに低いものとなる。
(6)その他の取引の実情
引用商標に係る「YouTube」及び「YouTuber」の特徴的部分である「Tube(TUBE)」及び「Tuber(TUBER)」を名称(商標)の一部に用いた、「YouTube」を模倣、又は、依拠したウェブサイトがインターネット上に多数存在している事実がある。
他人による模倣サイトが存在する事実は、引用商標中の「TUBE」又はその関連する標章「TUBER」がありふれていることを示すものではなく、逆に、引用商標がインターネット関連、動画共有サイト、ビデオストリーミング関連の役務分野において極めて高い周知著名性及び顧客吸引力を有していることの証左である。
このような取引の実情からすれば、「TUBER(チューバー)」の文字を含む本件商標を商標登録し、その指定役務について使用した場合には、これに接する需要者等は、あたかもそのウェブサイトが、グーグル社又は関連会社であるユーチューブ社が運営する著名な動画共有・配信ウェブサイトの関連サイトと誤解、誤信して、その出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。
(7)まとめ
以上の事情を総合的に勘案すれば、本件商標は、これに接する需要者、取引者に対して、引用商標を連想させて商品の出所について誤認を生じさせ、不当に需要者等を誘導するために取得されたものであることは明らかであり、その登録を認めた場合には、引用商標の持つ顧客吸引力ヘのただ乗り(いわゆるフリーライド)や、その希釈化(いわゆるダイリューション)を招くという結果を生じえない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号にいう「混同を生ずるおそれがある商標」にあたるというべきである。

第4 当審の判断
1 引用商標の周知著名性について
(1)申立人の主張及び同人の提出した証拠によれば、以下の事実が認められる。
ア 「YouTube」は、2005年(平成17年)の立ち上げ以来、動画共有・配信ウェブサイトとして親しまれ、また、2006年(平成18年)の申立人によるユーチューブ社の買収後には、全世界で何十億人ものユーザーが、自ら作成した動画をアップロードし、共有し、再生することができる場として、世界のユーザーが繋がり、情報を交換できる動画配信サービスの先駆けとなり、短期間に世界中で広く知られるようになった(甲3〜甲8)。
我が国においても、株式会社インプレスによる「INTERNET WATCH」のウェブサイトにおいて、「読者が選ぶ2006年のインターネット10大ニュース」に「YouTube」が第3位に取り上げられ(甲9)、株式会社マイナビによる「マイナビニュース」のウェブサイトにおいて、「2007年2月のインターネット利用動向調査」の結果として、「YouTube」の利用者数が、サービス開始から14か月で1,000万人を超えた旨記載されている(甲10)。
また、「YouTube」は、広告・宣伝的活用法が着目され、民放各社が専用チャンネルを開設し(甲15〜甲18)、当該チャンネルのホームページ上部には、引用商標2が付されている(甲15、甲16、甲18)。 そして、株式会社ジェー・ピー・シーによる「JPC」のウェブサイトにおいて、「YouTube」は、日本国内において、動画サイトの利用者数第1位となった旨(甲32)、トラベルボイス株式会社による「トラベルボイス」のウェブサイトにおいて、申立人が2016年(平成28年)におけるパソコン経由の動画ストリーミングの閲覧数が多い企業となっている旨が記載されている(甲33)。
イ 「YouTuber」は、「『YouTube』に頻繁に動画を投稿し、人気やその結果の広告収入を得ている人たち」を示す語として、また、「VTuber」は、「『YouTube』にキャラクター(アバター)を用いた動画を投稿し、人気やその結果の広告収入を得ている人たち」を示す語として本件商標の登録出願時及び登録査定時には、広く知られているといえる(甲41〜甲45)。
しかしながら、「YouTuber」及び「VTuber」が、申立人の業務に係る商品及び役務について使用され、申立人の業務に係る商品及び役務を表すものとして、広く知られていたといい得る証左を見いだすことはできない(甲44〜甲55)。
(2)上記(1)によれば、「YouTube」に係る役務は、2005年(平成17年)の立ち上げ以来、また、2006年(平成18年)の申立人によるユーチューブ社の買収後において、世界中に多数のユーザーを有し、我が国においても利用者が多くいることからすれば、「YouTube」の文字又は「YouTube」の文字を含む引用商標1ないし引用商標4は、申立人の提供する「YouTube」を表すものとして、我が国の需要者の間で周知著名なものであるというのが相当である。
そして、上記(1)によれば、動画共有・配信ウェブサイトにおいて、引用商標1ないし引用商標4は、本件商標の登録出願前から、申立人の業務に係る「通信ネットワークを利用した音声・音楽・静止画・動画の提供」(以下「申立人役務」という。)等に使用されていたといえる。
しかしながら、引用商標5の「YouTuber」は、「『YouTube』に頻繁に動画を投稿し、人気やその結果の広告収入を得ている人たち」を表すもの、また、引用商標6の「VTuber」は、「『YouTube』にキャラクター(アバター)を用いた動画を投稿し、人気やその結果の広告収入を得ている人たち」を表すものと理解されているということはできるものの、申立人の業務に係る商品又は役務を表すものとして使用され、広く知られていたといい得る証拠を見いだすことはできない。
したがって、引用商標5及び引用商標6は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、周知著名であったということはできない。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標
本件商標は、上記第1のとおり、「VtuberBasaball」の欧文字を横書きに同一の書体をもって、外観上まとまりよく表されているところ、その構成文字全体から生じる「ブイチューバーベースボール」の称呼もよどみなく一連に称呼し得るものである。
また、本件商標が、「Vtuber」と「Basaball」の文字を有してなるものと看取されるとしても、欧文字において語頭の1文字を大文字で表すことは一般的な表し方であることからすれば、これらの文字の語頭が大文字で表されているとしても、そのことをもって、これに接する者が当該文字部分を別々に看取するとはいい難いものであり、また、本件商標の構成中のいずれかの文字が、取引者、需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものというべき事情は見いだせない。
そして、「VtuberBasaball」の文字は、辞書等に載録のないものであるから、特定の観念を生ずることのない一種の造語として認識されるものというべきである。
してみれば、本件商標は、その構成文字全体をもって、一体不可分の造語を表したものとして認識されるとみるのが相当であり、その構成文字に相応して「ブイチューバーベースボール」の称呼が生じ、特定の観念は生じないものである。
(2)引用商標1ないし引用商標4
引用商標1は、上記第2の1のとおり、「YouTube」の文字を標準文字で表してなり、引用商標2及び引用商標3は、別掲1及び別掲2のとおり、「YouTube」の欧文字及び「You」の欧文字の右側に赤色又は黒色の隅丸四角形の背景図形(以下「背景図形」という。)内に白抜きで「Tube」の欧文字を表した構成よりなり、引用商標4は、別掲3のとおり、「YouTube」の欧文字及び該文字の左側に赤色の隅丸四角形内に白抜きで右向三角形(以下「図形部分」という。)を表した構成からなるところ、引用商標2ないし引用商標4の背景図形及び図形部分からは、特段の称呼及び観念は生じないことから、当該構成文字に相応して、いずれも「ユーチューブ」の称呼を生じ、上記1(2)のとおり、引用商標1ないし引用商標4は、申立人の提供する「動画共有・配信ウェブサイト」を表すものとして、周知著名なものであるから、「申立人の業務に係る動画共有・配信ウェブサイト」の観念を生じるものである。
(3)本件商標と引用商標1ないし引用商標4との類否について
本件商標と引用商標1ないし引用商標4は、それぞれ上記(1)及び(2)のとおりの構成よりなるものであるから、外観においては、図形の有無及び構成文字の相違等から明確に区別できるものである。
また、称呼においては、本件商標から生じる「ブイチューバーベースボール」の称呼と、引用商標1ないし引用商標4から生じる「ユーチューブ」の称呼とは、3音目と4音目に位置する「チュー」の音を共通にするとしても、全体の構成音数も異なり、語頭における「ブイ」と「ユー」の音が相違し、本件商標の5音目以降における「バーベースボール」の音と引用商標1ないし引用商標4の語尾における「ブ」の音にも明らかな差異を有していることから、それぞれを全体として称呼した場合において、その語調、語感が著しく異なり、明瞭に聴別し得るものである。
さらに、本件商標は、特定の観念を有しないものであるのに対し、引用商標1ないし引用商標4は、「申立人の業務に係る動画共有・配信ウェブサイト」の観念を生じるから、観念において紛れるおそれはない。
そうすると、本件商標と引用商標1ないし引用商標4とは、外観において明確に区別できるものであり、称呼において明瞭に聴別できるものあり、観念において紛れるおそれはないから、これらを総合して考察すれば、互いに相紛れるおそれのない非類似の商標である。
その他、本件商標と引用商標1ないし引用商標4が類似するというべき特段の事情も見いだせない。
(4)本件商標の指定商品及び指定役務と引用商標1ないし引用商標4の指定商品及び指定役務の類否について
引用商標1ないし引用商標4の指定商品及び指定役務には、本件商標の指定商品及び指定役務と同一又は類似する商品又は役務を含んでいる。
(5)小括
上記(1)ないし(4)のとおり、引用商標1ないし引用商標4の指定商品及び指定役務には、本件商標の指定商品及び指定役務と同一又は類似する商品又は役務を含んでいるとしても、本件商標は、引用商標1ないし引用商標4とは非類似の商標であるから、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用商標の周知著名性について
ア 引用商標1ないし引用商標4の周知著名性について
引用商標1ないし引用商標4は、上記1(2)のとおり、本件商標の登録出願前から、「申立人の業務に係る動画共有・配信ウェブサイト」を表示すものとして周知著名であったといえるものである。
イ 引用商標5及び引用商標6の周知著名性について
一方、引用商標5及び引用商標6は、上記1(2)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品及び役務を表示する商標として周知著名であったということはできない。
(2)本件商標と引用商標との類似性の程度について
ア 本件商標と引用商標1ないし引用商標4との類似性の程度について
本件商標と引用商標1ないし引用商標4とは、上記2(3)のとおり、非類似の商標であり、別異の商標というべきものであるから、両商標の類似性の程度は高いとはいえない。
イ 本件商標と引用商標5及び引用商標6との類似性の程度について
(ア)本件商標
本件商標は、上記第1のとおりの構成よりなり、上記2(1)のとおり、その構成文字に相応して「ブイチューバーベースボール」の称呼が生じ、特定の観念は生じないものである。
(イ)引用商標5及び引用商標6
引用商標5は、上記第2の5のとおりの構成よりなり、その構成文字に相応して、「ユーチューバー」の称呼が生じるものである。
そして、「ユーチューバー」の文字は、辞書等に載録のないものであるから、特定の観念を生ずることのない一種の造語として認識されるものというべきである。
してみれば、引用商標5は、その構成文字に相応して「ユーチューバー」の称呼が生じ、特定の観念は生じないものである。
また、引用商標6は、上記第2の6のとおりの構成よりなり、その構成文字に相応して、「ブイチューバー」の称呼が生じるものである。
そして、「ブイチューバー」の文字は、辞書等に載録のないものであるから、特定の観念を生ずることのない一種の造語として認識されるものというべきである。
してみれば、引用商標6は、その構成文字に相応して「ブイチューバー」の称呼が生じ、特定の観念は生じないものである。
(ウ)本件商標と引用商標5及び引用商標6の類否について
本件商標と引用商標5及び引用商標6は、それぞれ上記(ア)及び(イ)のとおりの構成よりなるところ、外観においては、構成文字及び構成文字数の相違等から、両者は、外観上、明確に区別できるものである。
また、称呼においては、本件商標から生じる「ブイチューバーベースボール」の称呼と引用商標5から生じる「ユーチューバー」の称呼とは、3音目ないし6音目に位置する「チューバー」の音を共通にするとしても、全体の構成音数も異なり、語頭における「ブイ」と「ユー」の音が相違し、本件商標の7音目以降における「ベースボール」の音の有無の差異を有していることから、両者は、それぞれ全体として称呼した場合において、その語調、語感が著しく異なる。
次に、本件商標から生ずる「ブイチューバーベースボール」と引用商標6から生ずる「ブイチューバー」の称呼とは、「ブイチューバー」の音を共通にするとしても、本件商標の7音目以降における「ベースボール」の音の有無の差異を有していることから、両者は、それぞれを全体として称呼した場合において、その語調、語感が著しく異なる。
してみれば、本件商標と引用商標5及び引用商標6は、称呼上、明瞭に聴別し得るものである。
さらに、観念においては、本件商標並びに引用商標5及び引用商標6とは、いずれも特定の観念を生じないから、観念において、比較することはできない。
そうすると、本件商標と引用商標5及び引用商標6とは、観念において比較できないとしても、外観において明確に区別できるものであり、称呼において明瞭に聴別できるものであるから、これらを総合して考察すれば、互いに相紛れるおそれのない非類似の商標である。
その他、本件商標と引用商標5及び引用商標6が類似するというべき特段の事情も見いだせない。
してみると、上記のとおり、本件商標と引用商標5及び引用商標6とは、非類似の商標といえるものであるから、両商標の類似性の程度は高いとはいえない。
(3)判断
上記(1)及び(2)を総合して考察するに、引用商標1ないし引用商標4は、申立人の業務に係る商品及び役務を表すものとして、我が国の需要者の間で周知著名であるとしても、本件商標と引用商標1ないし引用商標4とは、非類似の別異の商標といえるものであから、類似性の程度は高いとはいえない。
また、引用商標5及び引用商標6は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、周知著名であったということはできないものであり、また、本件商標と引用商標5及び引用商標6とは、非類似の別異の商標といえるものであるから、類似性の程度は高いとはいえない。
そうすると、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品及び指定役務について使用しても、これに接する取引者、需要者をして、引用商標を連想、想起することはなく、当該商品及び役務が申立人又は同人と組織的若しくは経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品及び役務であるかのように、その商品及び役務の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標と引用商標とが、取引者、需要者において混同を生じさせるおそれがあるというような事情は見いだせない。
(4)小括
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第7号該当性について
同号に規定する「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には、「(a)その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合、(b)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合、(c)他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合、(d)特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合、(e)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合、などが含まれるというべきである。」(知財高裁平成17年(行ケ)第10349号参照。)。
そして、申立人は、本件商標が「『YouTube』に動画を投稿し、広告料収入等を得ている者を示す『YouTuber(ユーチューバー)』又は「『Tuber(チューバー)』の標章によってもたらされる利益の独占を図る意図で登録出願されたものといわざるを得ず、公正な競合秩序を害するおそれがあるから、これは社会公共の利益に反し、また、社会の一般的道徳観念に反するものというのが相当である旨主張している。
しかし、上記1(2)のとおり、引用商標5及び引用商標6は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品及び役務を表すものとして、我が国の需要者の間で広く認識されていたものと認められないものであり、商品の出所について混同を生じさせるおそれはないから、本件商標が、引用商標5及び引用商標6の持つ顧客吸引力(名声・信用・評判)にただ乗りフリーライド)することや、信用・名声・顧客吸引力等を毀損(希釈化)するなどの不正の目的をもって使用するものであると認めることもできないものである。
また、申立人の提出した証拠から、動画作成者に適用される申立人のガイドラインを作成していることは認められるとしても、具体的に本件商標権者が申立人の事業を妨害し、不正の目的があることを裏付ける証拠は見いだすことができない。
そして、申立人が提出した証拠からは、本件商標の登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠く等の事実は見当たらず、本件商標をその指定商品及び指定役務について使用することが、社会の一般道徳観念に反し、商取引の秩序を乱すものともいえず、その他、本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標であると認めるに足りる証拠の提出はない。
さらに、本件商標は、その構成自体が、非道徳的、きょう激、卑わい、差別的又は他人に不快な印象を与えるようなものではなく、その構成自体がそのようなものではなくとも、それを指定商品及び指定役務に使用することが社会公共の利益に反し社会の一般的道徳観念に反するものともいえないものであり、特定の国若しくはその国民を侮辱するものとはいえず、又は一般に国際信義に反するとはいえないものである。
してみると、本件商標は、その登録を維持することが商標法の予定する秩序に反し、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標に該当するとまではいえないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものとはいえない。
5 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第11号、及び同項第15号のいずれにも該当するものではなく、同法第4条第1項の規定に違反して登録されたものとはいえないものであり、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録は維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
別掲1 引用商標2(色彩は原本を参照。)


別掲2 引用商標3


別掲3 引用商標4(色彩は原本を参照。)


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異議決定日 2022-01-12 
出願番号 2019170564 
審決分類 T 1 651・ 22- Y (W0942)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 榎本 政実
特許庁審判官 小俣 克巳
豊田 純一
登録日 2020-12-04 
登録番号 6324800 
権利者 株式会社スタジオワンオアエイト
商標の称呼 ブイチューバーベースボール、ブイチューバー、ベースボール 
代理人 右馬埜 大地 
代理人 田中 克郎 
代理人 石田 昌彦 
代理人 稲葉 良幸 

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