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審決分類 審判 査定不服 商4条1項7号 公序、良俗 登録しない W35
管理番号 1381799 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2022-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-04-30 
確定日 2022-01-11 
事件の表示 商願2020−38433拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。
理由 第1 本願商標及び手続の経緯
本願商標は,「東宮陵」の文字を標準文字で表してなり,第35類「被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,身の回り品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,宝玉の原石の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,宝玉及びその模造品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,美術品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,陶器の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,漆器製の食器類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定役務として,令和2年4月6日に登録出願されたものである。
本願は,令和2年6月24日付けで拒絶理由の通知がされ,同年7月10日付けの意見書が提出されたが,同3年3月30日付けで拒絶査定がなされ,これに対して同年4月30日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は,「本願商標は,『東宮陵』の文字を標準文字で表してなるところ,その構成中に『皇太子の称』の意味を有する『東宮』の文字を有してなるものであるから,これを一出願人が自己の商標として採択使用することは,公の秩序を害するおそれがあり穏当でない。したがって,本願商標は,商標法第4条第1項第7号に該当する。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。

第3 当審における審尋
当審において,令和3年9月2日付け審尋により,請求人に対し,本願商標は,皇室と何らかの関係があることを認識させ、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標であるから,商標法第4条第1項第7号に該当する旨の暫定的見解を示し,期間を指定して,これに対する回答を求めた。

第4 審尋に対する請求人の回答
請求人は,上記第3の審尋に対し,何ら回答をしていない。

第5 当審の判断
1 商標法第4条第1項第7号の考え方について
商標法第4条第1項第7号でいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には,(1)その構成自体が非道徳的,卑わい,差別的,矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合,(2)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも,指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳観念に反する場合,(3)他の法律によって,当該商標の使用等が禁止されている場合,(4)特定の国若しくはその国民を侮辱し,又は一般に国際信義に反する場合,(5)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合,などが含まれると解される(知的財産高等裁判所 平成17年(行ケ)第10349号判決)。
そこで,上記の観点から,本願商標について検討する。
2 本願商標について
本願商標は,「東宮陵」の文字を標準文字で表してなるものである。
(1)「東宮」の文字について
本願商標の構成中,「東宮」の文字の語義や使用状況等については,以下を確認することができる。
ア 辞書における掲載
(ア)広辞苑第七版:「1 皇太子の宮殿。 2 皇太子の称。はるのみや。」
(イ)大辞泉第二版(株式会社小学館発行):「1 皇太子の住む宮殿。 2 皇太子の称。」
(ウ)新明解国語辞典第七版(株式会社三省堂発行):「皇太子(の御所)」
イ 辞書における「東宮」に関連する語の掲載(広辞苑第七版)
(ア)「東宮御所」:「皇太子の御殿。」
(イ)「東宮職」:「宮内庁の一部局。皇太子家の生活に関する事務をつかさどる。」
ウ 法令における「東宮」に関連する語の記載
(ア)宮内庁法第6条:「東宮職においては、皇太子に関する事務をつかさどる。」
(イ)同法第12条第2項:「東宮大夫は、命を受け、東宮職の事務を掌理する。」
エ 新聞記事情報(※下線は,合議体による。以下,同じ。)
(ア)平成31年2月22日付け京都新聞夕刊の7頁には,「皇室ナビ 東宮(とうぐう) なぜ『東宮』と呼ぶ?」の見出しの下,「皇太子の別称。同じ読みで『春宮』とも書く。皇太子ご一家の住まいを『東宮御所』という。(略)現在は東京・元赤坂の『赤坂御用地』内にある。ご一家を公私ともに支えているのは、宮内庁の側近部局の一つ『東宮職』。トップは東宮大夫(とうぐうだいぶ)で、最近は3代続けて元外交官が務めている。天皇、皇后両陛下を支える側近部局『侍従職』と構成は似通い、皇太子さまの身の回りの世話をする東宮侍従、その統括者の東宮侍従長といった職員の肩書の多くに『東宮』が付く。」の記載がある。
(イ)令和元年5月1日付け日刊スポーツには,「新天皇陛下の歩み」の見出しの下,「昭和35年(1960)2月23日、東宮殿下(平成天皇=当時26歳)、美智子さま(25歳)の第1子『浩宮さま』としてご誕生」の記載がある。
(ウ)平成31年4月28日付け河北新報朝刊の2頁には,「侍従長ら幹部スライド/宮内庁新態勢/部局職員は拡充」の見出しの下,「天皇の代替わりに伴い、皇室の活動を支える宮内庁は新たな態勢を敷く。新天皇となる皇太子さまや、皇太子の役割を担う秋篠宮さまの公務が増えるため、側近部局の職員を拡充する。(略)トップの侍従長は、皇太子さまの側近部局『東宮職』トップの東宮大夫、(略)氏が就任。侍従次長には、東宮侍従長の(略)氏を充てる。皇太子さまの信頼が厚く、活動に対する思いを深く理解していることから、新天皇のスタートを支えるのに最適と判断した。」の記載がある。
(エ)平成30年12月4日付け山形新聞朝刊の7頁には,「やましんサロン 山形県民歌を歌い継ぐ」の見出しの下,「『広き野を流れゆけども最上川―』。これは先日、孫娘が通っている立川小の文化祭で4年生が合唱した『山形県民歌』である。(略)山形県民歌は、昭和天皇(当時東宮殿下)が1925(大正14)年10月に山形県行啓された時の最上川の情景をお詠みになられたもので、26年の歌会始での御製歌とのこと。」の記載がある。
(オ)平成29年12月26日付け東京読売新聞朝刊の31頁には,「『上皇職』60人台半ば 宮内庁 新侍従職は70人台半ば」の見出しの下,「宮内庁の(略)次長は25日、定例記者会見で、2019年4月30日に退位して上皇となられる天皇陛下と皇后さまを支える新組織『上皇職』は、60人台半ばで発足する方向であることを明らかにした。(略)現在、皇太子ご一家を支える『東宮職』の人員は51人で、皇太子さまと同等の活動量が見込まれる皇嗣を支える組織も同程度の規模を維持する方向だ。」の記載がある。
(カ)平成29年4月13日付け毎日新聞朝刊の2頁には,「考・皇室:課題検証/4 『皇太子同様』どこまで 秋篠宮さま、待遇や位置づけ」の見出しの下,「『東宮』は皇太子の別称であるため、体制拡充とともに部署の名称変更も必要となりそうだ。」の記載がある。
(キ)平成29年3月9日付けFujiSankei Business i.の10頁には,「【山形発 輝く】丸八やたら漬、醸造業から漬物店へ 130年進化続ける老舗」の見出しの下,「『丸八やたら漬』は1885年に創業した漬物製造・販売の老舗だ。(略)25年には当時、東宮さまとしてご来県した昭和天皇が、山形土産としてやたら漬を購入された。」の記載がある。
(ク)平成22年10月20日付け北海道新聞朝刊の28頁には,「皇后さま76歳」の見出しの下,「皇后さまは20日、76歳の誕生日を迎えた。宮内記者会の質問に文書で回答、(略)病気療養中の皇太子妃雅子さまや小学校への時限登校が続く長女愛子さまの現状に『東宮(皇太子)一家が健康や通学の問題で苦しんでおり、身内の者は皆案じつつ、見守っています』と、心配する気持ちを表明。」の記載がある。
オ 小括
以上よりすれば,「東宮」の文字は,「皇太子の住む宮殿」や「皇太子のこと」を意味し,また,「東宮」の文字単独で,又は「東宮御所」や「東宮職」など「東宮〇〇」のように他の文字と結合して,実際に皇太子のことを表すものとして新聞記事において使用されている実情があることからすれば,「東宮」の文字は,皇太子を認識させるというべきである。
(2)「陵」の文字について
本願商標の構成中,「陵」の文字の語義や使用状況等については,以下を確認することができる。
ア 辞書における記載
(ア)広辞苑第七版:「天皇・皇后・皇太后・太皇太后の墓所。山稜。御陵。」
(イ)大辞泉第二版(株式会社小学館発行):「1 大きな丘。 2 天使の墓。日本では、天皇および三后の墓をいう。山稜。みささぎ。」
(ウ)新明解国語辞典第七版(株式会社三省堂発行):「1 おか。『丘陵』 2 天皇・皇后の墓。みささぎ。『陵墓・御陵』」
イ インターネット情報
(ア)「公益社団法人堺観光コンベンション協会」のウェブサイトにおいて,「仁徳天皇陵古墳」の見出しの下,「日本最大の前方後円墳で北側の反正天皇陵古墳(田出井山古墳)、南側の履中天皇陵古墳(石津ヶ丘古墳)とともに百舌鳥耳原三陵と呼ばれ、現在はその中陵・仁徳天皇陵として宮内庁が管理しています。」の記載がある(https://www.sakai-tcb.or.jp/spot/detail/126)。
(イ)「大阪府」のウェブサイトにおいて,「応神天皇陵を眺める拝所」の見出しの下,「世界文化遺産登録が決定した百舌鳥・古市古墳群にある応神天皇陵は世界最大級の陵墓と言われる仁徳天皇陵に次ぐ規模であり、拝所からの厳かな景観は日本の歴史ある伝統と文化を感じさせます。」の記載がある(https://www.pref.osaka.lg.jp/kenshi_kikaku/viewspotosakaproject/viewspot-m-habi1.html)。
(ウ)「公益社団法人奈良市観光協会」のウェブサイトにおいて,「聖武天皇陵・光明皇后陵」の見出しの下,「多聞城跡のすぐ西隣。この佐保山一帯には元明・元正天皇陵など奈良時代の天皇や皇族の陵墓が数多くつくられました。」の記載がある(https://narashikanko.or.jp/spot/remain/shomutennoryo-komyokogoryo/)。
(エ)「じゃらんnet」のウェブサイトにおいて,「桓武天皇陵」の見出しの下,「桓武天皇陵について/柏原陵(かしわばらのみささぎ)とも呼ばれる。現在の陵は、明治以降に大修理されたもの。」の記載がある(https://www.jalan.net/kankou/spt_26109aj2200023806/)。
(オ)「朝日新聞DIGITAL」のウェブサイトにおいて,「上皇ご夫妻が孝明・明治天皇陵で拝礼 退位の行事終える」の見出しの下,「京都に滞在中の上皇ご夫妻は12日、京都市内にある孝明天皇と明治天皇の各陵を訪れ、拝礼した。」の記載がある(https://www.asahi.com/articles/ASM675QVWM67UTIL030.html)。
(カ)「八王子まちナビ」のウェブサイトにおいて,「武蔵陵墓地(多摩御陵)(大正天皇陵。昭和天皇陵)」の見出しの下,「武蔵陵墓地は、東京都八王子市長房町にある皇室墓地。大正天皇・貞明皇后陵・昭和天皇・香淳皇后陵の4陵が造営されており、多摩御陵とも呼ばれています。」,「大正天皇陵『多摩陵』」,「貞明皇后陵『多摩東陵』」,「昭和天皇陵『武藏野陵』」,「香淳皇后陵『武藏野東陵』」の記載がある(https://hachioji-machinavi.jp/musashiryo/)。
(キ)「おもてなし八王子」のウェブサイトにおいて,「武蔵陵墓地」の見出しの下,「東日本に初めてつくられた天皇陵で八王子八十八景のひとつに選ばれています。/陵墓内には北山杉が植えられ、大正天皇陵の多摩陵、貞明皇后陵の多摩東陵、昭和天皇陵の武藏野陵、香淳皇后陵の武藏野東陵の4陵があります。」の記載がある(https://hachi-navi.com/omotenashi/touristspot/musashiryo)。
(ク)宮内庁のウェブサイトにおいて,「天皇陵」の見出しの下,「歴代天皇陵一覧」の記載と共に,歴代の天皇の陵墓が紹介されている(https://www.kunaicho.go.jp/ryobo/)。
ウ 小括
以上よりすれば,「陵」の文字は,「天皇及び三后(皇后・皇太后・太皇太后)の墓」の意味を有すると共に,天皇や皇后等の墓の名称を表す場合には,天皇や皇后等の名称を冠して「〇〇陵」のように使用され,また,それらの墓が地方自治体や観光案内に関するウェブサイト,ニュース等で広く一般に紹介されていることからすれば,「陵」の文字が「〇〇陵」として使用される場合には,天皇や皇后等,皇室と関係がある者の墓の名称として認識されるというべきである。
3 商標法第4条第1項第7号該当性について
本願商標は,上記2のとおり,「東宮陵」の文字を標準文字で表してなるものである。
そして,その構成中,「東宮」の文字は,上記2(1)のとおり,皇太子を認識させ,「東宮〇〇」のように他の文字と結合しても使用されるものであり,一方,「陵」の文字は,上記2(2)のとおり,「天皇及び三后の墓」を意味し,天皇や皇后等の名称を冠して「〇〇陵」として使用される場合には,天皇や皇后等皇室と関係がある者の墓の名称として認識されるというべきである。
そうすると,「東宮」及び「陵」の各文字を結合させた本願商標は,全体として,「皇太子の墓」ほどの意味合いを認識させ,皇室と何らかの関係があることを認識させるものというべきである。
してみれば,本願商標は,その構成自体が非道徳的,卑わい,差別的,矯激又は他人に不快な印象を与えるようなものでないとしても,皇室と何の関係もない請求人が,本願商標「東宮陵」の文字を,自己の業務のために,指定役務について独占的に使用することは,皇室の尊厳を損ね,国民一般の不快感や反発を招くおそれがあるものであるから,社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳観念に反するというべきである。
したがって,本願商標は,公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標であるから,商標法第4条第1項第7号に該当する。
4 まとめ
以上のとおり,本願商標は,商標法第4条第1項第7号に該当するから,これを登録することはできない。
よって,結論のとおり審決する。

別掲

(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
審理終結日 2021-11-10 
結審通知日 2021-11-11 
審決日 2021-11-24 
出願番号 2020038433 
審決分類 T 1 8・ 22- Z (W35)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 岩崎 安子
特許庁審判官 茂木 祐輔
小田 昌子
商標の称呼 トーグーリョー 
代理人 原田 貴史 

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