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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Y01
管理番号 1381723 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2022-02-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2019-09-25 
確定日 2022-01-07 
事件の表示 上記当事者間の登録第2713903号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第2713903号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、昭和56年8月20日に登録出願、第1類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成8年5月31日に設定登録され、その後、同19年2月28日に、その指定商品を第1類「化学品,二硫化モリブデンを主剤とする潤滑油用添加剤(化学品に属するもの。),のり及び接着剤(事務用又は家庭用のものを除く。),植物成長調整剤類」とする指定商品の書換登録がされ、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、令和元年10月4日である。
なお、本件審判において商標法第50条第2項に規定する「その審判の請求の登録前3年以内」とは、平成28年(2016年)10月4日ないし令和元年(2019年)10月3日である(以下「要証期間」という場合がある。)。

第2 請求人の主張
請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の指定商品中、第1類「化学品」についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第4号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品中、第1類「化学品」(以下「取消請求商品」という場合がある。)について、継続して3年以上日本国内において使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。
2 弁駁の理由
(1)本件使用商品は、本件審判請求に係る指定商品に含まれない。
ア 被請求人の主張について
被請求人は、乙第3号証に示される「被請求人の取扱い商品である『アルミスペシャル』、『パワーマックス』」と称される商品(以下、それぞれ「本件使用商品1」、「本件使用商品2」という。なお、「本件使用商品1」と「本件使用商品2」とをまとめていうときは「本件使用商品」という。)が、「『化学品』に属する商品である」と主張する。
しかしながら、本件使用商品がいかなる内容(原材料、用途、使用方法等)の商品であるかの説明がなく、さらに、当該商品が、いかなる理由をもって「化学品」の範ちゅうに属する商品であるかの根拠についての説明が一切ないことから、本件使用商品が、審判請求に係る指定商品「化学品」と同一の商品であるとは、認められない。
イ 本件使用商品1について
被請求人は、「乙第3号証には、被請求人の取扱い商品である『アルミスペシャル』が掲載されている」と述べるが、乙第3号証には、本件使用商品1に関する情報が一切掲載されていない。
よって、本件使用商品1をもってして、本件請求に係る指定商品について本件商標の使用を証明するに足るものではない。
ウ 本件使用商品2について
(ア)本件使用商品2の内容について
請求人において、被請求人より提出された証拠(乙3) をもとに、本件使用商品2の内容について検討する。
まず、乙第3号証において、商品の「特長」(※実際には、「使用方法」を示すと思われる)として、「エンジンオイル添加剤。パワーアップ、燃費の節約、オーバーヒート防止、オイルの劣化防止、エンジンの静寂性の向上。ガソリン、ディーゼルオイル兼用。ターボエンジンに最適、ロータリーエンジンにも使用できます。」との記載、及び、その「用途」(※実際には、「使用方法」を示すと思われる)として「オイル交換時(オイルエレメント交換後)小型車(3〜5l車)に250ml、大型車(12〜20l車)に1l。添加量は5〜10%を目安にして下さい。」との記載がある。
そして、本件使用商品2を収納した「プルトップ缶」を手にして、エンジンのオイル注入口に本件使用商品2を流し込んでいる様子を示す写真が掲載されている。
そうすると、上記のとおり、本件使用商品2は、「エンジンオイル用添加剤」であって、エンジンの摩耗保護性を向上し、よって、エンジン出力の向上、エンジンのオーバーヒート防止、エンジンオイルの劣化防止、エンジン音の低下等を目的として、当該商品をオイル注入口から注入されるものである。
このような商品は、一般に、自動車用品店又は商社・卸問屋等を通じて、自家用自動車を保有する個人又は自動車整備を行う事業者等によって、自動車部品の潤滑性能向上等を目的として、「完成品」として購入されるものであり、自動車のエンジンオイルの交換の際等に、エンジンオイル口から、追加的に注入して使用される商品であると考えられる。
(イ)「エンジンオイル用添加剤」が属する区分について
ここで、独立行政法人工業所有権情報・研修館が提供する特許情報プラットフォームにおける「商品・役務名検索」によれば、「エンジンオイル用添加剤」は、「(第1類)エンジンオイル用添加剤(化学品に属するものに限る。)」(類似群コード01A01)という、「化学品」(類似群コード01A01) に類する商品と、「エンジンオイル用添加剤(化学品を除く。)」(類似群コード05B01)という、「エンジンオイル」(類似群コード05B01) に類する商品の2種類が存在する(甲3)。
したがって、本件使用商品2がこれらのいずれに属するものであるかが問題となるが、第1類に属する「エンジンオイルの添加剤」であるか、第4類に属する「エンジンオイル用添加剤」であるかの区別は、主として「化学品」に属するか、属しないかの違いによってされていることがわかる。
(ウ)第1類「エンジンオイル用添加剤(化学品に属するものに限る。)」と第4類「エンジンオイル用添加剤(化学品を除く。)」の区別における、かっこ書き(「化学品に属する」「化学品を除く」)の解釈基準について
本件商標が書換登録申請された平成18年(2006年)2月24日において適用される商品・サービス国際分類表[第9版]によれば、第1類の類見出しには、「工業用、科学用、写真用、農業用、園芸用及び林業用の化学品、未加工人造樹脂、未加工プラスチック」と記載され、第1類の注釈には、「第1類には、主として工業用、科学用及び農業用の化学品(他の類に属する商品の製造用に用いられるものを含む。)を含む。」と記載されている。
このような記載からすると、「化学品」とは、主として工業用、科学用及び農業用の化学品であって、他の類に属する商品の製造用(製造工程)に用いられるものということができる。
そして、「エンジンオイル」が第4類に属し、「他の類に属する商品」であることから、第1類の「エンジンオイル用添加剤(化学品に属するものに限る。)」とは、「エンジンオイル」の製造用(製造工程で用いられるもの)に用いられる商品であると考えられる。
これらを踏まえると、当該商品が第1類に属する「エンジンオイルの添加剤」であるか、第4類に属する「エンジンオイル用添加剤」であるかの区別は、それが、「他の類の商品」である「エンジンオイル」の製造工程に用いられる商品であるか、そうでないかにより判断されるとみられるものである。
(エ)取引界に流通する「エンジンオイルの添加剤」の種類について
一般に「エンジンオイルの添加剤」とは、自動車のエンジン内においては、エンジン内の駆動部分の潤滑のために、通常、エンジンオイルが使用されているところ、エンジンオイルが元来有している耐摩耗性能等をさらに向上させ、エンジンオイルのみを使用した場合に比べて、エンジンの出力向上、燃料消費の低減、エンジンのオーバーヒートの防止、オイルの劣化防止、エンジンの静寂性の向上、ひいては、エンジンの寿命を長くすることを目的として、自動車等を使用する一般消費者が、エンジンオイルをエンジン内に注入した後に、補助的に注入して使用される。
他方、「エンジンオイル用添加剤」には、エンジンオイルの原材料の一つとして、エンジンオイルの製造を行う事業者に向けて販売されるものも存在する。
すなわち、エンジンオイルは、通常、オイルを作るための製法によって「化学合成油」、「部分合成油」、「鉱物油」に分類されるが、このような「ベースオイル」に、製造工程において、「添加剤」がプラスされて、最終製品である「エンジンオイル」となる(「ベースオイル」+「添加剤」=「エンジンオイル」)(甲4)。
このようなエンジンオイルの製造工程で用いられる「(エンジンオイル用)添加剤」は、化学剤・化学品の製造を行う事業者によって製造され、エンジンオイルの原材料の一つとして同商品の製造を行う事業者に向けて販売されるものである。
上記で述べた判断基準に照らせば、前者が第4類の「エンジンオイル用添加剤(化学品を除く。)」であり、後者が第1類の「エンジンオイル用添加剤(化学品に属するものに限る。)」と容易に理解することができる。
(オ)上記判断基準の本件使用商品2へのあてはめ
この点、本件使用商品2 「エンジンオイルの添加剤」は、乙第3号証にあるような本件商品の使用方法から明らかなとおり、エンジンオイルが元来持つ耐摩耗性能をさらに向上させ、エンジンオイルのみを使用した場合に比べて、エンジンの出力向上、燃料消費の低減、エンジンのオーバーヒートの防止、オイルの劣化防止、エンジンの静寂性の向上、ひいては、エンジンの寿命を長くするために、エンジンオイルをエンジン内に注入した後に、補助的に注入するために用いられる商品であることを踏まえると、自家用自動車を保有する個人又は自動車整備を行う事業者等によって、自動車部品の潤滑性能向上等を目的として、「完成品」として購入され、自動車のエンジンオイルの交換等の際に、エンジンオイルとともに追加的に注入することによって使用される商品ということができるものである。
これが、他の類の製品(エンジンオイル)の製造工程に用いられるものではないことは明らかである。
したがって、本件使用商品2は、第1類に属する「エンジンオイル用添加剤(化学品に属するもの。)」ではない。
なお、本件審判請求に係る指定商品は「二硫化モリブデンを主剤とする潤滑油用添加剤(化学品に属するもの。)」(審決注:「化学品」の誤記と認める。)であるところ、上記詳述したところに照らせば、二硫化モリブデンを主剤とする潤滑油の製造工程で用いられる添加剤と理解、把握するのが相当であり、本件使用商品2がこれに含まれる商品でないことは明らかである。
むしろ、本件使用商品2は、自家用自動車を保有する個人又は自動車整備を行う事業者等によって、自動車部品の潤滑性能向上等を目的として、「完成品」として購入され、自動車のエンジンオイル交換等の際に、エンジンオイルに、追加的に注入することによって使用される商品であって、本件使用商品2自体、完成品(最終製品)として販売されている事実からすれば、本件使用商品2は、第4類に属する「エンジンオイル用添加剤(化学品を除く。)」の範ちゅうに属する商品であるとみるのが自然である。
そうすると、本件使用商品2は、本件審判請求に係る指定商品に含まれないことは明らかである。
エ まとめ
したがって、被請求人が本件商標を使用していると主張する本件使用商品1及び本件使用商品2は、いずれも、本件審判請求に係る指定商品「化学品」とは同一の商品ではない。
よって、被請求人によるその余の主張・証拠を検討するまでもなく、本件商標が審判請求登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが本件審判請求に係る指定商品について本件商標の使用を証明するに足るものではない。
(2)名目的な使用にすぎない。
被請求人は、売上実績表と称する書類(乙4〜乙6)等を提出し、2018年10月から2019年3月までの売上実績を示すとしており、この期間において実際に商品の販売の実績があることが認められると主張する。そして、詳細な金額・数量については、公開されることを望まないため、一部について黒塗りとしているとのことである。
しかしながら、仮に、本件使用商品が実際に販売されたことが事実であるとしても、乙第4号証において示された、本件使用商品1の半年間の購入者として記載されたのは計2名、かつ、総販売数は計3点であり、乙第5号証及び乙第6号証において示された、本件使用商品1の半年間の購入者として記載されたのはのべ7名(乙第5号証における「営業所在庫」は他人に販売されたものではないと推測される)、かつ、総販売数は計25点(営業所在庫分を除く)である。これは一般の取引者の取引概念に照らせば、極めて少数であって、反復継続性にも欠くといわざるを得ない。
よって、本件商標が審判請求登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが本件審判請求に係る指定商品について本件商標の使用を証明するに足るものではない。
なお、被請求人は本件商標を使用していないことについて正当な理由があることは何ら主張立証していない。
(3)結語
以上のとおり、被請求人が提出した乙第1号証ないし乙第9号証は、それ自体、本件審判請求の登録前3年以内に本件商標が日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者によって本件審判請求に係る指定商品について使用された事実を立証するものではない。
そして、被請求人は本件商標を使用していないことについて正当な理由があることを何ら主張立証していない。
よって、本件商標は、商標法第50条第1項の規定によって、本件審判請求に係る指定商品についてその登録を取り消すべきである。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第33号証(枝番号を含む。以下、枝番号を含む号証で枝番号の全てを引用するときは、枝番号を省略して記載する。)を提出した。
1 令和元年11月26日付け答弁書
(1)本件商標を使用している商品
本件商標の商標権者は、本件商標を指定商品「化学品」に使用している。
(2)使用態様について
乙第3号証には、本件商標と同一の商標又は社会通念上同一と認められる商標が表示されている。
まず、乙第3号証には、被請求人の取扱商品である「アルミスペシャル」、「パワーマックス」が掲載されている。「アルミスペシャル」は「焼付防止剤」であって、「化学品」に属する商品であり、「パワーマックス」は「潤滑油用添加剤」であって、同様に「化学品」に属する商品である。
次に、乙第3号証には、そのカタログの表紙右上部分に本件商標が付されている。その態様は色こそ白色で表されているものの、商標法第70条の規定により、本件商標と同一視して問題がないことが明らかである。また、その付された位置からすれば、掲載されている商品全般についての目印として使用されているといって差し支えはなく、当該カタログに掲載されている商品「アルミスペシャル」、「パワーマックス」についての使用であるともいえる。
このように、商品及びその商品が掲載されたカタログに、商標を付す行為は、少なくとも商標法第2条第3項第1号、同項第2号及び同項第8号の使用に該当する行為であるといえる。
(3)本件商標の使用者
本件商標は、商標権者である被請求人がその商品を製造及び販売するに際して使用をしている。
(4)商標の使用の事実及び期間等
本件商標を使用した商品の製造販売は、現在に至るまで継続して行われている。乙第4号証ないし乙第7号証については、本件商標が使用されている前記商品、すなわち「アルミスペシャル」、「パワーマックス」が、要証期間に実際に販売されている事実が以下のとおり示されている。
まず、乙第4号証は商品「アルミスペシャル」の売上実績表、乙第5号証は、商品「パワーマックス」の容量1Lの売上実績表、乙第6号証は、商品「パワーマックス」の容量250mlの売上実績表である。
これらは、業務管理ソフトウェアからエクセル形式で出力したものであって、2018年10月から2019年3月までの各商品の売上の実績を示すものである。上記期間は、要証期間に含まれるものであって、この期間において実際に商品の販売の実績があることが認められる。なお、その詳細な金額、数量については、公開されることを望まないため、一部について黒塗りとしている。
なお、これら売上実績表が真正なものであることを示すために、念のため乙第7号証として、パソコン上で業務管理ソフトを起動してから売上実績表を出力するまでの流れを撮影した写真の写しを提出する。全体の流れとしてはパソコン上で「SMILE」を起動し、「ユーザーID」と「パスワード」を入力する(乙7の1)。「業務メニュー」を選択し(乙7の2)、「販売」→「月次業務」→「売上管理帳票」と進み(乙7の3)、「商品別得意先別売上実績表」において、「集計期間」や「対象商品」を選択する(乙7の4・5)と、その商品に応じた売上実績が表示される(乙7の6)。これを出力し印刷したものが乙第4号証ないし乙第6号証となっている。
また、乙第3号証のカタログは、裏表紙右下に「17−6.○○○(T)」の表示がなされており、これは要証期間である2017年に発行されたカタログであることを示している。この点、当該カタログが2017年に実際に製作されたことを示す証拠として、さらに、カタログ製作を依頼した会社からの費用の請求書の写しを提出する(乙8)。請求書には、品名として「リキモリカタログVOL.11」との記載がなされているが、これは、乙第3号証のカタログ表紙右上の記載と一致しており、かつ、その伝票日付も平成29年6月30日となっているため、要証期間内に実際にカタログが製作されていることを把握することができる。
乙第9号証は、過去のWEBページを閲覧できるツール「WAYBACK MACHINE」を利用して、出願人ウェブサイトの過去の状態、すなわち、要証期間内である2016年11月11日時点の「製品紹介」の頁の状態を表示させたものを出力したものであり、その当時において、前記に説明したような商品「アルミスペシャル」や「パワーマックス」が、取扱商品として掲載されていたことが確認できる。
今回提出する各証拠からすれば、「化学品」に属する商品の販売に際して本件商標が使用されており、かつ、その商品が要証期間内において実際に販売されているということが明らかである。
以上より、商標権者である被請求人が、要証期間に、本件商標を、請求に係る指定商品「化学品」について使用している事実は明らかである。
2 令和2年9月4日付け答弁書
(1)本件使用商品が本件審判請求に係る指定商品「化学品」に含まれる理由
ア 請求人の主張は、本件使用商品「パワーマックス」及び「アルミスペシャル」は、いずれも、本件審判請求に係る指定商品第1類「化学品」の証明にたるものではない旨主張している。
その多岐にわたる主張を総合すれば、まず、「アルミスペシャル」については、乙第3号証には、商品に関する情報が一切掲載されていないので、「化学品」について商標の使用を証明するに足るものではないというものである。
次に、「パワーマックス」については、いわゆる「エンジンオイル添加剤」には、第1類「エンジンオイルの添加剤(化学品に属するものに限る。)」と、第4類「エンジンオイル用添加剤(化学品を除く。)の2種類が存在し、「化学品」とは、主として工業用、化学用及び農業用の化学品であって、他の類に属する商品の製造用(製造工程)に用いられるものである。よって、本件使用商品の用途等から見れば、「化学品」に属さないため、第1類の指定商品には該当しないというものである。
イ 被請求人が、本件商標の出願当時に、「化学品」に属する「二硫化モリブデンを主剤とする潤滑油用添加剤」について、そのように具体的な表示をして出願を行っており、その当時の審査において、商品の区分が異なるなどの理由から拒絶がなされていないこと、また、書換登録申請時にも、指定商品を「二硫化モリブデンを主剤とする潤滑油用添加剤」と具体的に記載してその申請を行っており、これに対しても、商品区分が異なるとの理由で拒絶査定をしていないこと、当該書換において権利範囲(保護範囲)に変更を加える意図は全く有していなかったことをふまえて考えれば、本件使用商品中の「パワーマックス」に相当する「二硫化モリブデンを主剤とする潤滑油用添加剤」は、書換前も書換後も、第1類に属するものであったと解するべきである。
また、使用商品「アルミスペシャル」については、「アルミの熱伝導性が高いという物性を利用した焼付きを防止する効果を有する商品」であることから「化学品」に属する商品であるといえる。
ウ 使用商品に係る証拠の追加について
今回答弁書を提出するにあたり、再度の調査・確認を行ったところ、本件商標の使用に係る新たな証拠を発見したため、合わせて提出する。
乙第18号証は、被請求人ウェブサイトにおける融雪剤「D−グリップ」の商品紹介ページであって、当該ウェブサイトの左上部分には、その出所を表すものとして本件商標が付されおり、本件商標を「融雪剤」との関係で使用しているといえる。また、「融雪剤」は「化学品」に属する商品である。 なお、乙第18号証は、被請求人ウェブサイトの現在の表示であるが、ウェブサイトの過去の表示を確認できる「WAYBACK MACHINE」で確認すると、2016年12月には、当該商品に係るウェブページが存在し、かつ、同様の商標が使用されていたことを確認することができる(乙19)。
また、合わせて当該商品に係る売上実績表を提出する(乙20)。当該売上実績表は乙第4号証ないし乙第6号証と同様の手法により、業務管理ソフトから要証期間における製品の売上の実績を出力したものであるが、当該融雪剤「D−グリップ」が要証期間内に実際に販売されていたことを確認することができる。なお、数量や売上等について一部を黒塗りとしている点については、先に提出した各売上実績表と同様の理由からであり、総売上数量の合計の欄において黒塗りの対象外としている「90」が全販売数量ではない点も同様である。
以上のとおり、追加の証拠によっても、本件商標が「化学品」に属する「融雪剤」について使用されていた事実を確認することができる。
(2)本件商標の使用が「名目的な使用にすぎない」との主張について
請求人は、被請求人の提出した売上実績表について、商品「アルミスペシャル」は購入者が2名、総販売数が計3点、商品「パワーマックス」については、購入者がのべ7名かつ、総販売数が計25点であるため、一般の取引者の概念に照らせば、極めて少数であって、反復継続性に欠けたため、「名目的な使用にすぎない」と述べている。
しかしながら、先の答弁書でも述べているとおり、販売数量及び金額については、いずれも公開されることを望まないため、下一桁を残し、黒塗りとしており、下一桁の合計が販売総数であることを意味するものではなく、その下一桁を加算した3点(アルミスペシャル)、3点(パワーマックス)が全販売数量ではない。
また、請求人は「一般の取引者の取引概念に照らせば、極めて少数」と述べているものの、その根拠は不明である。本件商標の使用商品は主に「卸商」を通じて自動車関連の事業者や販売店に流通するものであること、その性質上使用頻度が高いとはいえず、また、一度に大量に消費させるものでもなく、需要者もある程度限定されるものであることからすれば、それを流通させる卸店がある程度限定され、販売総数量がそれほど多くなくとも何ら不自然とはいえない。
このような点からすれば、本件商標の使用が「名目的な使用にすぎない」とする請求人の主張が失当であることは明らかである。
(3)「不使用について正当な理由は存在しない」との主張について
前記のとおり、被請求人は本件商標を審判の請求対象商品について使用しているので、「不使用について正当な理由は存在しない」との請求人の主張は失当である。
(4)結論
以上述べたとおり、本件商標については、要証期間に、日本国内において、その商標権者が、本件審判請求に係る指定商品「化学品」について本件商標を使用しており、本件審判の取消理由は失当である。
3 令和2年12月7日付け回答書
(1)提出する取引関連書類等の概要について
被請求人と各顧客の間における取引の流れは概ね以下のとおりとなっている。
まず、顧客から製品の注文があると、それがカタログ製品である場合には、その出荷を大阪工場又は協力倉庫会社に指示し、その出荷の報告があると売上処理を行う。それは得意先台帳に反映されるようになる。次に、顧客の請求締日において、得意先台帳のデータをもとにその締日の顧客を対象とする「請求一覧表」が作成されるとともに、その期間の売上明細を記した「請求明細書」が作成され、これが各顧客に送付される。各顧客はその請求明細書が自らの仕入と合致する場合、被請求人に商品の購入代金を支払う、というものである。
以下、この流れに従い、被請求人の顧客のいくつかの取引に関する取引書類を示すことで、実際に「融雪剤」である「D−グリップ」の取引が行われていることを示す。なお、各取引書類はその多くがコンピュータ上で管理しているものであるため、今回新たに書類を出力し直したものについては、その出力日が作成日となっているものがあることを補足する。また、既に提出した乙第18号証、乙第19号証の商品写真の左側に「5kg/袋」「25kg/袋」とあるとおり、当該商品は5kg入りのものと、25kg入りの商品があることについても念のため補足する。
(2)日本礦油との取引にかかる取引書類について
まず、平成28年(2016年)12月の取引書類について説明すると、第一に乙第21号証の1は顧客からの発注内容・入金状況等を管理するための「得意先台帳」であって、同年12月12日と15日に「D−グリップ」の5kg入りの注文があったことがわかる。第二に乙第21号証の2は12月末締めの顧客各社ごとの売上額が記載された請求一覧表のうちの当該顧客が記載されている頁の抜粋(以下、単に「請求一覧表」という。)である。第三に乙第21号証の3は各顧客へ送付される12月末締めの「請求明細書」であって、前記「得意先台帳」と同じ商品「D−グリップ」の記載があり、かつ、これが12月分の請求として顧客に請求されていることを把握することができる。
次に、平成29年(2017年)1月の取引書類について説明すると、乙第22号証の1は「得意先台帳」であって、同年1月6日、同月25日に「D−グリップ」5kg入りの注文があったことがわかる。乙第22号証の2は1月末締めの売上額が記載された「請求一覧表」である。乙第22号証の3は顧客へ送付される1月末締め「請求明細書」であり、得意先台帳と同一の商品の記載がある。
さらに、平成30年(2018年)1月の取引書類について説明すると、第一に乙第23号証の1は「得意先台帳」であって、同年1月15日、同月30日に「D−グリップ」5kg入りの注文があったことがわかる。第二に乙第23号証の2は1月末締めの「請求一覧表」である。第三に乙第23号証の3は顧客へ送付される「請求明細書(控)」である。
最後に、平成30年(2018年)2月の取引書類について説明すると、第一に乙第24号証の1は「得意先台帳」であって、同年2月1日、同月2日、同月23日に「D−グリップ」5kg入りの注文があったことがわかる。第二に乙第24号証の2は2月末締めの「請求一覧」である。第三に乙第24号証の3は顧客へ送付される「請求明細書」である。
上記のいずれについても、当然のことながら得意先台帳に記載されている商品と請求明細書に記載されている商品は一致している。さらに、各書類に記載されている売上金額も一致している。
すなわち、乙第21号証の1ないし3に記載されている売上額はいずれも2,263, 399円(税込)、乙第22号証の1ないし3に記載されている売上額は2, 224, 115円(税込)、乙第23号証の1ないし3に記載されている売上額はいずれも1, 494, 826円(税込)、乙第24号証の1ないし3に記載されている売上額はいずれも2, 261, 140円(税込)と一致するものである。
上記売上金額に基づいて行われた請求に対しては、いずれも顧客より入金がなされ、商品の注文・手配・納品・請求・入金までが完結しているが、この点を補足して説明するため、取引先銀行の「平成29年2月の当座勘定照会表(抜粋)」及び「顧客からの平成29年1月の入金額が反映された同年2月の取引先台帳」を乙第25号証として、「平成30年2月の当座勘定照合表(抜粋)」を乙第26号証として提出する。
この点、まず乙第22号証に記載されているとおり、平成29年1月の日本礦油に対する売上は2, 224, 115円(税込)であるが、請求人と日本礦油との間では商品の売り買いがなされており、請求金額のうちの一部は相殺されたうえで、翌月の入金がなされることになる。この点は、乙第25号証の2にかかる平成29年2月の入金額反映後の取引先台帳の末尾頁に「1月末〆分相殺」として記載されていることからもわかるが、平成29年2月における相殺額は634,932円である。また、同ページに記載されている「振込料」についても、被請求人が負担することとなっている。
したがって、日本礦油が2月末に入金する金額は、1月の被請求人からの請求額「2,224,115円」から相殺額「634, 932円」と振込料「864円」を差し引いた「1,588,319円」である。そこで、前記乙第25号証の1の「当座勘定照会表(抜粋)」をみると、2月28日付けで「1, 588, 319円」が入金されており金額が一致している。
次に乙第23号証の1ないし3によれば、平成30年1月の日本礦油に対する売上は、1,494, 826円(税込)であるが、乙第24号証の1にかかる平成30年2月の取引先台帳の末尾頁を見ると、その相殺分は1, 003, 596円である。また、同ページに記載されている「振込料」が、被請求人の負担である点は同様である。
したがって、日本礦油の平成30年2月末の入金金額は、1月の被請求人からの請求額「1,494,826円」から相殺額「1,003,596円」と振込料「864円」を差し引いた「490, 366円」である。ここで、乙第26号証の「当座勘定照会表(抜粋)」をみると、2月28日付けで「490, 366円」となっており、やはり一致している。
以上のとおり、被請求人の顧客に対する請求の明細等に融雪剤「D−グリップ」に係る記載があり、その商品を含む請求金額に対し、適切に支払いがなされて取引が完了しているということをふまえて考えれば、当該商品が要証期間に実際に取引されていたことに疑義は生じないものと確信する次第である。
(3)丸井産業との取引にかかる取引書類について
乙第27号証の1は平成29年12月の得意先台帳であって、同年12月15日に丸井産業株式会社山梨営業所より「D−グリップ」25kg入りの発注があったことを把握でき、乙第27号証の2に係る「請求明細書」により、同月20日付けで、同社に対して当該製品に係る請求がなされていることを確認できる。さらに乙第27号証の3に係る2018年1月ないし3月分を出力した「得意先台帳」を見ると、平成30年1月31日付けの「振込」として、その入金が処理されていることを確認できる(なお、請求金額と入金金額が1円異なるのは消費税の額の算出の際の誤差である。)。
(4)大和ライフネクストとの取引にかかる取引書類について
乙第28号証の1は、平成29年1月の得意先台帳であって、平成29年1月6日ないし同月27日の間に複数回にわたり、「D−グリップ」25kg入りの発注があったことを把握することができ、乙第28号証の2の請求明細書で、その発注に基づいて請求がなされていることも確認できる。さらに乙第28号証の3に係る当座勘定照合表から、同年2月20日付けでその取引金額に係る入金が完了していることも確認することができる。
(5)佐川印刷との取引にかかる取引書類について
乙第29号証の1は、得意先台帳であって、平成29年1月6日(審決注:「平成29年1月11日」の誤記と認める。)ないし同月31日の間に複数回にわたり「D−グリップ」25kg入りの発注があったことを把握することができる。当該顧客との請求は毎月20日締めとなっているが、同年1月20日までの期間においては、「152, 064円」の発注があり、その発注に基づいて請求がなされていることを、乙第29号証の2に係る請求明細書で確認することができる。さらに乙第29号証の3に係る当座勘定照合表から、平成29年2月20日付けで「151,200円」の入金があったことが確認できる。なお、請求金額と入金金額には「864円」の差額があるが、これは、被請求人が振込手数料を負担することとしているためであり、請求金額と入金金額は一致している。
(6)顧客より受領した陳述書について
前記(2)で述べた、日本礦油との取引に関しては、合わせて乙第30号証として、同社の代表取締役から受領した「陳述書」を提出する。
当該陳述書は、「陳述書」、「請求明細書(添付資料1−1〜3)」及び「すでに提出済の乙第18号証と同様の、商品『D−グリップ』のウェブサイトの写し(添付資料2)」からなるものであるが、取引先である日本礦油が、ウェブサイトに記載された商品「D−グリップ」を被請求人に確かに発注し、その納品を受けたうえで、代金の支払いまでが完了していること、すなわち、本件商標が使用された融雪剤「D−グリップ」の取引が実際に行われたことを、より明確にすることを目的として提出するものである。
(7)まとめ
以上のとおり、これまでに提出した各証拠と、今回提出する日本礦油の他複数の顧客との取引書類の状況をふまえて考えれば、本件商標が要証期間において、化学品に属する「融雪剤」の「D−グリップ」について、少なくとも商標法第2条第3項第8号に該当する使用がなされ、かつ当該使用に係る商品の取引が実際になされていることが明らかである。

第4 当審の判断
1 事実認定
(1)被請求人が提出した証拠及び同人の主張によれば、以下のとおりである。
ア 乙第19号証は、インターネットアーカイブ(WayBackMachine)に保存されている本件商標権者のウェブサイトの写しであり、これは、2016年10月12日のものであって、1葉目の左上部には、略四角形の内部に「LM」と「リキモリ」の文字を二段に横書きした標章が表示され、その下に本件商標権者の名称及び住所が記載されている。
当該ウェブサイトは「雪対策商品のご案内」の表題の下、「融雪剤」「D−グリップ」として商品の画像とともに「塩化ナトリウムにクエン酸を配合した特別な融雪剤です」の記載、また、その特徴、効果、使用にあたっての目安などが記載されている。
イ 乙第30号証は、本件商標権者の取引先の代表取締役社長が令和2年12月2日付けで作成した「陳述書」であり、代表取締役社長の署名捺印がされているところ、取引先と本件商標権者は、平成28年(2016年)12月、同30年(2018年)1月及び2月に本件商標権者の取り扱う融雪剤「D−グリップ」について取引を行った旨陳述され、添付資料として、本件商標権者が作成した取引先宛の平成28年12月31日、同30年1月31日及び同年2月28日付け「請求明細書」並びに2020年11月25日に出力された本件商標権者のウェブサイトの「融雪剤 D−グリップ」のページが添付されている。
(2)上記(1)によれば、次の事実を認めることができる。
本件商標権者は、平成28年(2016年)10月12日に、略四角形の内部に「LM」と「リキモリ」の文字を二段に横書きした標章(以下「使用商標」という。)を表示した、本件商標権者のウェブサイトに「D−グリップ」と称する商品「融雪剤」(以下「使用商品」という。)を掲載し、広告したことが認められる。
なお、当該本件商標権者のウェブサイトの写しがインターネットアーカイブ(WayBackMachine)に保存されているものであるとしても、平成28年(2016年)12月、同30年(2018年)1月及び2月に本件商標権者は取引先と上記商品について取引をしたことを合わせみれば、上記年月日にウェブ上に存在していたことは、優に推認できるものである。
2 判断
(1)使用商標について
使用商標は、略四角形の内部に「LM」と「リキモリ」の文字を二段に横書きしたものであり、これは、別掲の構成態様からなる本件商標と同一の構成態様といえるものである。
したがって、使用商標は、本件商標と社会通念上同一の商標といえる。
(2)使用商品について
使用商品は、「融雪剤」であり、これは、取消請求商品「化学品」の範ちゅうに属する商品である。
(3)使用時期及び使用行為について
本件商標権者は、要証期間の平成28年(2016年)10月12日に本件商標権者のウェブサイトに使用商品に関する広告を内容とする情報に使用商標を付して電磁的方法により提供した。
(4)使用者について
使用商標の使用者は、本件商標権者である。
(5)小括
以上によれば、本件商標権者は、本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において、その請求に係る指定商品中の「化学品」の範ちゅうに属する商品について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付して、電磁的方法により提供したと認められる。
そして、その行為は、商標法第2条第3項第8号にいう「商品に関する広告を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」に該当する。
3 むすび
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において、本件商標権者が、本件審判の請求に係る指定商品について、本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)の使用をしていることを証明したといわなければならない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
別掲(本件商標)




(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。

審判長 榎本 政実
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
審理終結日 2021-06-30 
結審通知日 2021-07-02 
審決日 2021-09-01 
出願番号 1981070642 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (Y01)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 榎本 政実
特許庁審判官 齋藤 貴博
小松 里美
登録日 1996-05-31 
登録番号 2713903 
商標の称呼 リキモリ、エルエム 
代理人 工藤 貴宏 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 三井 直人 
代理人 角藤 大樹 
代理人 鈴木 一永 
代理人 廣中 健 
代理人 阿部 豊隆 
代理人 右馬埜 大地 
代理人 涌井 謙一 
代理人 山本 典弘 
代理人 太田 知成 
代理人 田中 克郎 

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