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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W093542
管理番号 1381177 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2022-01-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-06-04 
確定日 2022-01-05 
異議申立件数
事件の表示 登録第6366094号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6366094号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6366094号商標(以下「本件商標」という。)は、「LineairDB」の欧文字を標準文字で表してなり、令和2年3月19日に登録出願、第9類、第35類及び第42類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同3年3月9日に登録査定され、同年3月19日に設定登録されたものである。

2 引用商標等
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標及び標章は次のとおりである。
(1)申立人が引用する商標
ア 登録第5544081号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の態様 別掲1のとおり
指定商品及び指定役務 第9類、第35類及び第36類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務
登録出願日 平成24年5月16日
設定登録日 平成24年12月21日
イ 登録第5544082号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の態様 別掲1のとおり
指定商品及び指定役務 第16類、第38類、第41類及び第42類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務
登録出願日 平成24年5月16日
設定登録日 平成24年12月21日
ウ 登録第5570784号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の態様 別掲2のとおり
指定商品及び指定役務 第9類及び第38類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務
登録出願日 平成24年7月9日
設定登録日 平成25年3月29日
エ 登録第5577357号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の態様 別掲1のとおり
指定商品 第28類に属する商標登録原簿に記載の商品
登録出願日 平成24年5月16日
設定登録日 平成25年4月26日
オ 登録第5669069号商標(以下「引用商標5」という。)
商標の態様 別掲3のとおり
指定商品及び指定役務 第9類、第38類、第41類及び第42類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務
登録出願日 平成25年5月28日
設定登録日 平成26年5月9日
カ 登録第5794495号商標(以下「引用商標6」という。)
商標の態様 LINE(標準文字)
指定商品 第20類に属する商標登録原簿に記載の商品
登録出願日 平成25年11月6日
設定登録日 平成27年9月18日
キ 登録第5798250号商標(以下「引用商標7」という。)
商標の態様 別掲4のとおり
指定役務 第35類に属する商標登録原簿に記載の役務
登録出願日 平成26年12月10日
設定登録日 平成27年10月9日
ク 登録第5804548号商標(以下「引用商標8」という。)
商標の態様 別掲5のとおり
指定商品及び指定役務 第9類及び第41類に属する閉鎖商標原簿に記載の商品及び役務
登録出願日 平成27年2月6日
設定登録日 平成27年11月6日
ケ 登録第5964445号商標(以下「引用商標9」という。)
商標の態様 別掲6のとおり
指定商品及び指定役務 第9類、第16類、第28類、第35類及び第41類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務
登録出願日 平成28年12月14日
設定登録日 平成29年7月14日
コ 登録第5978272号商標(以下「引用商標10」という。)
商標の態様 別掲7のとおり
指定商品及び指定役務 第9類、第16類、第28類、第35類、第36類、第38類、第41類、第42類及び第45類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務
登録出願日 平成28年11月4日
設定登録日 平成29年9月8日
サ 登録第6006627号商標(以下「引用商標11」という。)
商標の態様 別掲8のとおり
指定商品及び指定役務 第9類、第35類、第38類、第41類、第42類、第44類及び第45類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務
登録出願日 平成28年11月10日
設定登録日 平成29年12月22日
なお、引用商標1ないし11をまとめて、以下「引用商標」といい、引用商標1ないし7、9ないし11に係る商標権は現に有効に存続しているものであり、引用商標8に係る商標権は分割(後期分)登録料不納により抹消登録されている。また、引用商標3については、第35類、第43類及び第44類に属する商標登録原簿に記載の役務を指定役務として防護標章登録されている。
(2)申立人が引用する標章
申立人が引用する標章(以下「引用標章」という。)は、「LINE」の欧文字からなり、同人の略称として著名であるとするものである。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号、同項第8号及び同項第15号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきものであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第54号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)申立人及びその関連企業並びに引用商標の著名性について
ア 申立人及びその関連企業の著名性並びに引用商標について
申立人及びその関連企業は、コミュニケーション・アプリケーションソフト「LINE」を中心にインターネット関連事業を展開する企業である。
引用商標に係る「LINE」の文字は、2011年3月11日に発生した東日本大震災をきっかけに、同年6月23日に提供が開始されたモバイルメッセンジャーサービス(以下「申立人役務」という。)の名称であり、申立人の著名な略称である。引用商標3及び5は、開始当初から申立人役務に係るアプリケーションソフトのアイコンとして使用され続けられている(甲13、甲14)。
イ 申立人役務に係るアプリケーションソフトのダウンロード数及びユーザー数について
申立人役務は、2011年6月に提供が開始された後、我が国及び世界233以上の国と地域で利用されるようになり、同年末には、申立人役務に係るアプリケーションソフト(以下「申立人アプリ」という。)のダウンロード数が1,000万件を突破した(甲15〜甲17)。そして、そのサービス開始から3年後の2014年6月には、世界累計のダウンロード数が10億件を突破し、世界中で利用者が拡大した(甲18)。
申立人アプリ「LINE」は、2011年に提供が開始された後、短期間にユーザー数を増やし、2020年10月のアクティブユーザー数は、日本国内で8,600万人に及び、他のSNSに係る各媒体(Facebook、Instagram、Twitter、Youtube)に比べても圧倒的に利用者が多い(甲15、甲19)。
日本国内で8,600万人というアクティブユーザー数は、日本の総人口(1億2,565万人)の68%に及び、インターネットを活発に利用している年齢層(15歳〜64歳)の人口(7,444万人)の115%に当たることからすると、インターネット利用者又はスマートフォン利用者のほぼ全てが申立人アプリ「LINE」を利用しているものと推定できる(甲19、甲20)。
そして、申立人アプリ「LINE」は、10代から20代の女性の半数以上が毎日使用しており、また、男女を問わず幅広い年齢層において利用され、40代から60代の利用者が57%を占める(甲20、甲21)。
また、申立人アプリ「LINE」内の「LINE OpenChat」は、大学生に活発に利用され、その活用方法が「文化祭」「時間割」「授業」「就活」など多岐に渡る(甲21)。
以上のとおり、申立人アプリ「LINE」は、日本国内において主要なコミュニケーションツールとして支持されており、重要な社会基盤として利用されている。
ウ 申立人役務の特徴について
申立人役務の人気の理由の一つは、様々な感情を「スタンプ」という形で表すことを可能とし、コミュニケーションをより豊かにしたことである(甲22)。
申立人役務において販売されているスタンプは、約490万セットにも上り、スタンプの売上収益は、年間約30億円強となっている(甲23、甲24)。
エ 申立人役務を基盤とする事業の多角化について
申立人は、申立人役務において販売されているスタンプから生まれたグローバルキャラクターブランドを利用した商品化事業を行っている(甲25)。その収益は、2016年が1億4,300万円、2017年が2億6,700万円、2018年が3億3,100万円、2019年(予測)が約6億円である(甲26)。
そして、申立人は、多数の国内外の有名企業との間でコラボレーションした商品・サービスも積極的に展開している(甲27〜甲34)。また、申立人は代理店など12社に、商標を使用許諾しており(甲26)、これらのライセンシーが製造販売する商品、広告活動に広く使用されていることから、「LINE」の文字に係るブランドは、業種を超えて需要者に広く知られるに至っている。
さらに、申立人は、多様な事業を展開しており、それらには、いずれも「LINE」の文字を中核・主要部とする「LINE」関連商標が使用されている(甲35、甲36)。
現在の主要なサービスには、「LINE(情報コミュニケーションサービス)」「LINEアンチウィルス(情報セキュリティサービス)」「LINE MUSIC(音楽の配信・提供)」「LINEチケット(興行場の座席の手配)」「LINE RECORDS(電子出版物の提供)」などがあり(甲37)、これらは需要者に活発に使用されており、例えば、申立人役務は、アプリ情報プラットフォームを提供するAppAnnieが発表しているiOS・Google Playでの合計パプリッシャー収益ランキングにおいて、2013年ないし2015年に3年連続1位を獲得し、2018年も第10位にランクインした。また、同年の国内のアプリ収益ランキングでは「LINE」「LINEマンガ」及び「LINE MUSIC」に係るアプリが上位3位を独占している(甲38〜甲40)。
さらに、LINE証券が2020年3月に始めた外国為替証拠金(FX)取引サービス「LINEFX」の口座数が10万に到達し、同年3月ないし9月までの口座開設数は比較可能なFX大手の中で最も多く、決済サービス「LINE Pay」においては、2021年1月には「請求書払い」機能に対応した団体が2,000を超え、税金や料金などの公金払いに約650団体が対応、電気ガス水道など公共料金に約500団体が対応している(甲40)。
そして、これら申立人役務に係る社会基盤とサービス開発力を活かした事業の好調により、2021年度の売上収益は、2,595億円を達成している(甲41)。
以上のとおり、申立人及びその関連会社は、申立人の業務に「LINE」の文字を冠して様々な商品の販売及びサービスを提供している。
以上よりすると、「LINE」の文字は、申立人の著名な略称として、一般取引者及び需要者に認識されているというべきである。
オ 宣伝広告について
申立人役務を提供するにあたり、申立人は「LINE」の文字に係るブランドを前面に出した広告宣伝・営業活動を行ってきた(甲42〜甲44)。これらテレビCMは、2018年には計4万5,160GRP(「グロス・レイティング・ポイント」の略、ある期間中に放映したCMの各回の世帯視聴率の合計。)を記録している(甲45)。
申立人は、申立人役務及びその関連事業に莫大な宣伝広告費をかけてきておりグループ全体の広告宣伝費は、2016年が118億3,300万円、2017年が154億7,700万円、2018年が203億1,100万円である(甲46)。
これらの宣伝広告においては、常に、申立人の略称、申立人のハウスマーク及び申立人関連会社の冠ブランド名として「LINE」の文字からなる商標やその表音文字に当たる「ライン」が、ブランド名称等と共に表示・使用されている。
カ 受賞歴等
(ア)申立人は、申立人アプリ「LINE」が評価され、財団法人日本産業デザイン振興会主催の2012年度グッドデザイン賞「金賞」を受賞した(甲47)。
(イ)申立人アプリ「LINE」は、「モバイルプロジェクト・アワード2012」の「モバイルプラットフォーム・ソリューション部門」で優秀賞を受賞した(甲48)。
(ウ)申立人は、申立人アプリ「LINE」のキャラクターブランド「LINE FRIENDS」において、「iFデザインアワード2016」食品・飲料パッケージ部門でLINE Cafe商品パッケージが「iF金賞」を受賞した(甲49)。
(エ)決済サービス「LINE Pay」のクレジットカードは、株式会社晋遊舎が提供する月刊誌「MONOQLO」のアワード「BEST BUY OF THE YEAR 2020」高還元カード部門において「SERVICE OF THE YEAR」を受賞した(甲49)。
(オ)申立人アプリ「LINE」において、首相官邸が行政機関として初めて公式アカウントの導入をした(甲50)。
キ 防護標章登録及び異議決定例
申立人は、商標登録第5570784号(引用商標3)について、第35類、第43類及び第44類を指定役務として、平成27年3月20日に防護標章登録を受けている(甲51)。
なお、本件商標の第35類の指定役務は、当該防護標章の指定役務と同一又は類似のものといえる。
また、異議決定(異議2017−900173)において、引用商標1及び3に係る「LINE」商標の周知・著名性が認められている(甲52)。
ク 小括
以上のとおり、申立人及びその関連会社が使用する引用商標を構成する「LINE」の文字は、申立人の略称、申立人のハウスマーク及び申立人関連会社の冠ブランド名として、非常に幅広い商品・役務について使用されており、我が国において著名であることは明らかである。
(2)商標法第4条第1項第11号について
本号における商標の類否判断に係る最高裁判決(昭和39年(行ツ)第110号、平成6年(オ)第1102号、昭和37年(オ)第953号、平成3年(行ツ)第103号、平成19年(行ヒ)第223号)の判示内容に沿って、以下検討する。
ア 本件商標について
(ア)本件商標は、「LineairDB」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成文字である「Line」の文字は、申立人の著名な略称及び申立人グループの著名な商標であって、かつ、「線」等を意味する語として親しまれた英語である(甲53)。
また、本件商標の構成中の「air」は、「空気、大気」等を意味する英語として親しまれたものであり、「DB」は「データベース」を意味する略語として親しまれているものである(甲53、甲54)。
しかも、本件商標は、その構成全体が一つの成語として特定の意味を有する一般的な語ということはできない。
そうすると、本件商標は、一般的な取引者及び需要者をして、「Line」「air」及び「DB」の文字からなるものと容易に理解されるものである。
(イ)本件商標の構成中、目に留まりやすい語頭に表された「Line」の文字部分は、申立人の著名な略称及び著名な商標「LINE」と同一の綴りであるから、本件商標に接する者は、その指定商品及び指定役務との関係において、まず、本件商標の語頭の「Line」の文字部分に着目し、申立人の著名な略称及び著名な商標「LINE」を表すものと理解するといえる。
(ウ)以上を総合考慮すると、本件商標の構成中「Line」の文字部分が、申立人の業務に関するものとして広く認識される商標「LINE」の文字と同一の綴りであって、商品及び役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるといえるから、本件商標のうち、「Line」の文字部分を要部として抽出し、当該文字部分のみを引用商標と比較して商標の類否判断をすることも許されるというべきである。
したがって、本件商標は、その構成中の「Line」の文字部分から、「ライン」という称呼及び「申立人及びその関連会社に係るブランド」の観念をも生じるというべきである。
イ 引用商標について
引用商標は、いずれもその構成中に「LINE」の文字をゴシック体で横書きしてなるところ、引用商標には図形を伴うものがあるとしても、それらの構成中「LINE」の文字部分は、引用商標の中央のひときわ目立つ場所に、読み取りやすい書体で明瞭に記載されているから、外観上、図形部分と一見して明確に区別して認識できる。
そして、「LINE」の文字は、ローマ文字4字からなる極めて平易なものであって、それから生じる「ライン」の音も称呼しやすく、申立人の著名な略称及び著名な商標であることを考え合わせると、引用商標を見る者に強い印象を与えるとともに、その注意を強く引くものである。
また、引用商標には図形を伴うものがあるとしても、図形部分と「LINE」の文字部分とが、分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているということはできない。
しかも、「LINE」の文字は、上記(1)のとおり、我が国においては、申立人の略称、ハウスマーク及び申立人関連会社の冠ブランド名として、著名なものである。
そうすると、引用商標は、「ライン」の称呼を生じ、「申立人及びその関連会社に係るブランド」の観念を生じるといえる。
ウ 本件商標と引用商標との類否
本件商標の商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与える「Line」の文字部分と引用商標の「LINE」の文字とは、外観上、同一の綴りであることから極めて類似し、称呼及び観念はいずれも同一である。
そうすると、本件商標と引用商標は、本件商標がその指定商品又は指定役務に使用された場合に、商品又は役務の出所につき誤認混同を生じるおそれのある類似の商標というべきである。
エ 指定商品・役務について
本件商標の指定商品及び指定役務と引用商標の指定商品及び指定役務は、同一又は類似であることは明らかである。
オ 小括
以上よりすると、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念がいずれも同一の相紛れるおそれのある類似の商標というべきであって、両商標の指定商品及び指定役務も同一又は類似のものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第8号について
本号に係る最高裁判決(平成15年(行ヒ)第265号、平成16年(行ヒ)第343号、昭和57年(行ツ)第15号)を考慮し、以下検討する。
「LINE」の文字は、上記(1)のとおり、本件商標が出願された当時及びその登録時を含む現時点においても、申立人の略称として、本件商標の指定商品及び指定役務の需要者の間で著名となっていた。本号は文理解釈上、問題となる商標が著名な略称を含んでいれば、出所の混同を生じるか否かにかかわらず、適用されるべきである。
しかも、本件商標は、上記(2)ア(ア)のとおり、一般的な取引者及び需要者をして、「Line」「air」及び「DB」の文字からなるものと容易に理解されるものであり、その構成全体が一つの成語として特定の意味を有する一般的な語ではない。
そうすると、本件商標は、申立人の商号の略称として著名な「LINE」の文字と同一の綴りである「Line」の文字を含むものであることは明らかである。
そして、本件商標は、その登録に際しては、申立人からの承諾が必要であったにもかかわらず、この承諾なしに登録されたものである。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第8号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第15号について
本号に係る最高裁判決(平成10年(行ヒ)第85号)の判示内容に沿って、以下検討する。
混同を生ずるおそれの有無
(ア)本件商標と引用商標の類否
本件商標と引用商標とは、上記(2)のとおり、本件商標中の「Line」の文字と引用商標を構成する「LINE」の文字とは、外観、称呼及び観念がいずれも同一であるから、両商標の類似性は極めて高いというべきである。
(イ)引用商標の周知著名性及び独創性の程度
引用商標は、上記(1)のとおり、本件商標が出願された当時及びその登録時を含む現時点においても、申立人のハウスマーク及び申立人関連会社の冠ブランド名として、我が国において著名であることは明らかである。
「LINE」の文字は、親しまれた英語であるとしても、申立人が提供している商品及び役務とは何ら関係性を有するものでなく、いわゆる恣意的商標(Arbitrary marks)といえるから、引用商標は、相当程度、独創性が高いものというべきである。
(ウ)本件商標の指定商品及び指定役務と申立人及び申立人関連会社の業務に係る商品及び役務との関連性の程度
本件商標の指定商品及び指定役務は、「携帯情報端末,コンピュータソフトウェア,インターネットを利用して受信し及び保存することができる音楽ファイル及び音声ファイル,インターネットを利用して受信し及び保存することができる画像ファイル,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,録音・録画済み記録媒体,電子出版物」及び「電子計算機用プログラムの提供」等、一般需要者用の商品及び役務も多く、加えて、本件商標の指定商品及び指定役務は、そのほとんどがコンピュータ関連のものである。
一方、申立人及びその関連会社は、申立人アプリ「LINE」を中心に、インターネット関連事業を展開し、ほとんどの商品及び役務は携帯端末等、すなわちコンピュータにより提供されているものであり、しかも、その業務範囲は、非常に広範囲に及んでいる。
以上よりすると、本件商標の指定商品及び指定役務と申立人及びその関連会社の業務に係る商品及び役務は、共通なものを含むものであるから、両者に密接な関連性があることは明らかである。
(エ)商品の取引者及び需要者の共通性
上記(ウ)のとおり、本件商標の指定商品及び指定役務は、そのほとんどがコンピュータ関連の商品及び役務であり、コンピュータ関連の取引者、需要者のほか、コンピュータ関連の商品及び役務は一般需要者を対象とするものが多く含まれるものである。
一方、申立人アプリ「LINE」は、一般需要者を対象として提供されているものであり、申立人に係る様々な商品及び役務は当該アプリ「LINE」を介して提供され、コンピュータとも深く関連しコンピュータ関連の取引者、需要者に対しても提供されているから、本件商標の指定商品及び指定役務と申立人及びその関連会社の業務に係る商品及び役務とは、その取引者、需要者において共通する。
イ 小括
以上のとおり、引用商標は、申立人のハウスマーク及び申立人関連会社の冠ブランド名として、本件商標の指定商品を含め、幅広い商品・役務について使用されており、我が国において著名なものである。
そして、本件商標は、引用商標と類似性の極めて高い商標であること、引用商標が相当程度、独創性の高い商標であること、本件商標の指定商品及び指定役務は申立人及び申立人関連会社が使用する商品及び役務と共通するものを含み、密接な関連性があること、また、その需要者も共にコンピュータ関連の取引者・需要者及び一般需要者を対象とするものであることなどを併せ考慮すると、本件商標をその指定商品及び指定役務について使用するときは、その取引者、需要者に引用商標を想起、連想させ、当該商品及び役務が、申立人及び申立人関連会社との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある者の業務に係る商品及び役務であると誤信され、商品及び役務の出所について混同を生じさせるおそれがあるというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

4 当審の判断
(1)引用商標等の周知著名性について
ア 申立人提出の甲各号証、同人の主張及び職権調査(インターネット情報、新聞記事情報など)によれば、次の事実を認めることができる。
(ア)申立人は、その関連会社とともにコミュニケーション・アプリケーションソフト「LINE」を中心にインターネット関連事業を展開している企業であること(甲13〜甲15、職権調査)。
(イ)申立人(前身を含む。)は、2011年6月から現在まで、モバイルメッセンジャーサービス(申立人役務)「LINE」の提供をしていること(甲13、甲36、職権調査)。
(ウ)申立人役務に係るアプリケーションソフト「LINE」(申立人アプリ)のダウンロード数は、我が国を含む世界累計で、2011年末に1,000万件を突破、2014年6月に10億件を突破したこと(甲16〜甲18)。
(エ)申立人アプリ「LINE」の日本国内におけるアクティブユーザー数は、2020年10月には8,600万人であったこと(甲19)。
(オ)申立人は、申立人役務「LINE」について、提供当初から引用商標3及び5を申立人アプリのアイコンなどとして使用し、その後引用商標1、2、10及び11を使用していること(甲13、甲14、甲36)。
(カ)申立人及びその関連会社は、申立人役務「LINE」の提供のほか、「LINEアンチウィルス(情報セキュリティサービス)」「LINE MUSIC(音楽の配信・提供)」「LINEチケット(興行場の座席の手配)」「LINE RECORDS(電子出版物の提供)」「LINEFX(外国為替証拠金取引サービス)」「LINE Pay(決済サービス)」など、「LINE」の文字を用いて、多様な事業を展開していること(甲36、甲37)。
イ 上記アのとおり、申立人は2011年6月から現在まで申立人役務「LINE」の提供をし、同役務に係る申立人アプリ「LINE」のダウンロード数は世界累計ではあるが2014年6月に10億件を超え、同アプリの日本国内におけるアクティブユーザー数は2020年10月に8,600万人であり、加えて同役務について引用商標1ないし3、5、10及び11が使用されていることからすれば、引用商標1ないし3、5、10及び11は、本件商標の登録出願の日前から、登録査定日はもとより現在においても継続して、申立人の業務に係る役務(申立人アプリ「LINE」を用いたSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)の提供)を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと判断するのが相当である。
しかしながら、引用商標4及び6ないし9は、それらが各指定商品及び指定役務について使用され、申立人及びその関連会社の業務に係る商品及び役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていると認めるに足りる証左は見いだせないから、そのように認識されているものと認めることはできない。
また、「LINE」の文字が申立人の略称として用いられていると認め得る証左は限られ(甲21の2、5、甲22、甲23、甲36、甲38、甲41)、かつ、それらはウェブ上の情報や申立人作成に係る資料であって、それらに接した者の実状は確認できず、さらに他に該文字が申立人の著名な略称と認め得る証左は見いだせないから、「LINE」の文字からなる引用標章は、申立人の著名な略称と認めることはできない。なお、「Line」及び「line」の文字も申立人の著名な略称と認めることはできない。
(2)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標
(ア)本件商標は、上記1のとおり、「LineairDB」の欧文字を標準文字で表してなり、その構成文字に相応し「ラインエアーディービー」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
そして、本件商標は、その構成文字中語頭の「L」及び語尾の「DB」が大文字で表されていることから、視覚上「Lineair」の文字と「DB」の文字とを結合してなるものと認識し得るものであって、かつ、後者の「DB」の文字が商品・役務の形式等を表す記号・符号として普通に使用される欧文字2字の一類型であって、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章といえるから、前者の「Lineair」の文字部分が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与え、該文字に相応し「ラインエアー」の称呼も生じ、かつ、該文字からは特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。
そうすると、本件商標は、「ラインエアーディービー」「ラインエアー」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものというべきである。
(イ)なお、申立人は、本件商標はその構成中語頭に表された「Line」の文字部分が申立人の業務に関するものとして広く認識されている商標「LINE」の文字と同一の綴りであり、商品及び役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるといえるから、当該「Line」の文字部分を要部として抽出し引用商標と比較して商標の類否判断をすることも許される旨主張している。
しかしながら、本件商標は、上記(ア)のとおり、その構成中「Lineair」の文字部分を要部として抽出し得るものであるが、「Lineair」の文字部分は同書同大同間隔でまとまりよく一体に表され、その称呼「ラインエアー」は無理なく一連に称呼し得るものであるから、かかる構成及び称呼からすれば、引用商標1ないし3、5、10及び11が需要者の間に広く認識されているものであることを考慮してもなお、本件商標は、これに接する取引者、需要者をして「Lineair」の文字部分が一体不可分のものとして認識、把握させるものと判断するのが相当である。
さらに、本件商標は、その構成中「Line」の文字部分を分離抽出し他の商標と比較検討すべきとする事情は見いだせない。
したがって、申立人の係る主張は採用できない。
イ 引用商標
引用商標は、いずれも上記2(1)のとおりの構成からなり、その構成文字又は構成中の文字「LINE」に相応し「ライン」の称呼を生じるものである。
そして、観念については、引用商標1ないし3、5、10及び11は、上記(1)のとおり申立人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められるものであるから、「(申立人のブランドとしての)LINE」の観念を生じ、引用商標4、6及び7は、「line(LINE)」の文字が「線」などの意味を有する我が国で親しまれた英単語であるから「線」の観念を生じ、引用商標8及び9は「LINE」の文字を白抜きした緑色の吹き出しのような図形からなるものであるから、特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。
ウ 本件商標と引用商標の類否
本件商標と引用商標の類否を検討すると、本件商標の構成全体及び「Lineair」の文字部分と引用商標とを比較すれば、それらの上記のとおりの外観は、構成態様が明らかに異なり、両者を離隔的に観察しても相紛れるおそれのないものである。
次に、前者から生じる「ラインエアーディービー」「ラインエアー」の称呼と後者から生じる「ライン」の称呼を比較すると、両者は構成音数、語調語感が明らかに異なり、相紛れるおそれのないものである。
さらに、観念においては、前者は特定の観念を生じないのに対し、後者は「(申立人のブランドとしての)LINE」若しくは「線」の観念を生じるもの又は特定の観念を生じないものであるから、両者は相紛れるおそれがないか、比較することができないものである。
そうすると、本件商標と引用商標は、外観、称呼において相紛れるおそれがなく、観念において相紛れるおそれがないか、比較できないものであるから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。
その他、本件商標と引用商標が類似するというべき事情は見いだせない。
エ 小括
以上のとおり、本件商標と引用商標は非類似の商標であるから、両商標の指定商品及び指定役務が同一又は類似のものであるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第8号について
上記(2)ア(イ)のとおり、本件商標は、「Lineair」の文字部分が一体不可分のものとして認識、把握させるものであり、何より上記(1)のとおり引用標章「LINE」は、申立人の著名な略称と認めることはできないものであるから、本件商標は他人(申立人)の著名な略称を含む商標ということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第15号について
上記(2)のとおり、本件商標は、引用商標と相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。
そうすると、本件商標は、引用商標1ないし3、5、10及び11が申立人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものであることを考慮しても、「line(Line)」の文字が「線」などの意味を有する我が国で親しまれた英単語であることと相まって、これに接する取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させるものということはできない。
してみれば、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品及び指定役務について使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その商品及び役務が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品及び役務の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が、他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(5)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第8号、同項第11号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
別掲1(引用商標1、2、4)

(色彩は原本参照。)

別掲2(引用商標3)

(色彩は原本参照。)

別掲3(引用商標5)

(色彩は原本参照。)

別掲4(引用商標7)

(色彩は原本参照。)

別掲5(引用商標8)

(色彩は原本参照。)

別掲6(引用商標9)

(色彩は原本参照。)

別掲7(引用商標10)

(色彩は原本参照。)

別掲8(引用商標11)

(色彩は原本参照。)


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異議決定日 2021-12-22 
出願番号 2020030402 
審決分類 T 1 651・ 23- Y (W093542)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 齋藤 貴博
特許庁審判官 岩崎 安子
板谷 玲子
登録日 2021-03-19 
登録番号 6366094 
権利者 日本電信電話株式会社
商標の称呼 ラインエアーデイビイ、リネールデイビイ、ラインエアー、リネール 
代理人 特許業務法人第一国際特許事務所 

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