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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W03
管理番号 1381176 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2022-01-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-06-03 
確定日 2021-12-09 
異議申立件数
事件の表示 登録第6364157号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6364157号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6364157号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおり、「ATPアタック」の文字を横書きした構成からなり、令和2年3月31日に登録出願、第3類「洗浄剤(工業用及び医療用のものを除く。),台所用洗浄剤,厨房用洗浄剤,スーパーマーケット・フードコート・レストランの厨房用洗浄剤,食品加工場用の洗浄剤,厨房設備用洗浄剤,家庭用洗浄剤,芳香洗浄剤,ビルメンテナンス用洗浄剤,室内装飾品用洗浄剤,家具用洗浄剤,排水管用洗浄剤,暖冷房装置用洗浄剤,せっけん類,歯磨き,化粧品,香料,薫料」を指定商品として、令和3年3月1日に登録査定され、同年3月16日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
1 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件登録異議申立ての理由において引用する登録第1929596号商標(以下「引用商標1」という。)は、「アタック」の片仮名を横書きした構成からなり、昭和59年2月1日に登録出願、第4類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同62年1月28日に設定登録され、その後、平成19年6月20日に、指定商品を第3類「せつけん類,歯磨き,化粧品,香料類」とする指定商品の書換登録がされたものであり、現に有効に存続しているものである。
2 申立人が本件登録異議申立ての理由において引用する登録防護標章は、上記引用商標1に係る防護標章登録第1号標章(以下「引用防護標章1」という。)及び防護標章登録第2号標章(以下「引用防護標章2」という。)であり、それぞれ第3類又は第5類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を防護標章に係る指定商品とし、いずれも現に有効に存続しているものである。
なお、上記引用商標1並びに引用防護標章1及び引用防護標章2をまとめていうときは、以下、「引用商標」という。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第10号、同項第11号及び同項第15号に該当するから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきである旨申立て、その理由を以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第18号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 申立ての具体的理由
(1)引用商標に係る「アタック」の周知・著名性等について
ア 申立人は、創業1887年の総合日用品メーカーであり(甲5)、1987年にコンパクト衣料用洗剤「アタック」を販売開始し(甲6の1、2)、「アタック」は、その後、液体洗剤や部分洗い用洗剤、漂白剤・柔軟剤入り洗剤等も販売され、30年を超えるロングランシリーズである。申立人のウェブページの製品カタログページには、アタックシリーズとして商標「アタック」を使用する液体洗剤・粉末洗剤・部分洗い用洗剤等が記載されている(甲7)。
申立人の「アタック」は、認知度に関する「2019年6月ブランド力調査」においてトップであり、シェア率を調査した「2020年7月ブランド力調査」においてもトップであった(甲8、甲9)。また、日経MJ(流通新聞)による2019年上期ヒット商品番付では「アタックZERO」が番付入りし(甲10の1、2)、雑誌「LEE」の「LEEハピ家事大賞2021」においては洗濯部門の大賞に選ばれる等(甲11の1〜3)、人気を博している商品である。
イ 申立人は、引用商標1を基本商標として、第3類に防護標章として引用防護標章1(甲3)を、また、第5類にも引用防護標章2(甲4)の登録を受けており、著名商標として認定されている。
また、J−p1atpatの「日本国周知・著名商標検索」において、日本国著名商標として、申立人の「アタック」を検索することができる(甲12)。
(2)本件商標について
ア 本件商標は、ローマ字で大文字で「ATP」と横書きし、その横に片仮名で、「ATP」よりやや小さく、「アタック」と横書きされている。
しかして、本件商標は、前半の「ATP」はローマ字で、後半の「アタック」は片仮名という差異を有し、後半の「アタック」は、前半の「ATP」よりも小さく書されており、前半の「ATP」と後半の「アタック」とは構成態様が異なる。
したがって、本件商標は、「ATP」と「アタック」とで分離観察され、本件商標の「ATP」の構成から「エーティーピー」、「アタック」の構成から「アタック」の称呼が生ずるものである。
イ 「ATP」は、辞典等に「アデノシン三リン酸(adenosine triphosphate)」と記載されている(甲15、甲16)。
ウ 件外商標である商願2006−60332「A・T・P」(甲17の1)は、その指定商品中「アデノシン三リン酸を配合した化粧品」に使用するときは、商品の品質、原材料を表すとして、商標法第3条第1項第3号の規定が適用され、拒絶査定が確定した(甲17の1)。
エ 上述のとおり、本件商標の前半の「ATP」部分は「アデノシン三リン酸」を意味するものであるところ、本件指定商品を取り扱う業界においては、「ATP(アデノシン三リン酸)」を配合した商品が各種販売されており、原材料を示す言葉として「ATP」が一般的に使用されている(甲18の1〜6)。
本件商標の前半部の「ATP」は、「アデノシン三リン酸」を意味するものであって、「化粧品」のみならず、「洗顔フォーム」や「シャンプー」などの商品においても用いられており、原材料等を表示する言葉として使用されているから、本件商標の前半部は、本件商標の指定商品との関係においても、原材料である「アデノシン三リン酸」を配合した商品と取引者・需要者間において取り扱われるものであり、自他商品識別標識としての識別力が弱い。
そうすると、本件商標は、後半部の「アタック」にその要部がある。
(3)本件商標が商標法第4条第1項第11号の規定に該当することについて
本件商標は、指定商品との関係で自他商品識別カの弱い前半部の「ATP」を含み、その要部は後半部の「アタック」にあり、「アタック」単独の称呼が生ずるものといえるから、本件商標は、引用商標1と共通の称呼を有する類似する商標である。
また、本件商標は、その構成中に申立人の周知・著名な商標「アタック」を含むから、「他人の登録商標と類似」する商標である。
そして、本件商標の指定商品は、引用商標1の指定商品と相抵触するものである。
よって、本件商標と引用商標1とは、「アタック」の称呼が共通する類似する商標であって、その指定商品も同一又は類似であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(4)本件商標が商標法第4条第1項第15号の規定に該当することについて
上述のとおり、引用商標は、遅くとも、本件商標の登録出願時までには、我が国の取引者・需要者の間で周知・著名となっていた。そして、本件商標は、申立人の周知・著名な商標「アタック」を一部に有する商標であるから、商品等の出所の混同を生ずるおそれがあるものである。
上述の事実及び過去の審決(甲13、甲14)を勘案すると、周知・著名な引用商標「アタック」と類似する本件商標を、第3類の指定商品について使用した場合には、これに接する取引者・需要者は、引用商標の商標権者である申立人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し、その商品の取引者・需要者が商品の出所について混同を生ずるおそれがある。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(5)本件商標が商標法第4条第1項第10号に該当することについて
本件商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして周知・著名な各商標「アタック」と称呼が同一であり、両者は類似する商標であることは明らかであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。
(6)以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第10号に該当する商標である。

第4 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標
本件商標は、前記第1のとおり、「ATPアタック」の文字を横書きした構成からなるところ、その構成は欧文字と片仮名からなるとはいえ、「ATP」と「アタック」の間にはスペースもなく、外観上まとまりよく一体的に表されており、これらより生ずる「エイテイピイアタック」の称呼も、無理なく一連に称呼し得るものである。
そして、本件商標の構成中、「アタック」の語は、「スポーツで、攻めること。攻撃。」等の意味を有する外来語(「広辞苑 第7版」岩波書店)として広く親しまれているものであるが、「ATP」の語は、「アデノシン三燐酸」、「男子プロテニス協会」、「自動列車保護装置」といった複数の意味合いを有しており(前掲書)、「アデノシン三燐酸」のみを理解させるものとは一義的にはいえず、これが特に親しまれた語であるともいい得ないものである。
そうすると、本件商標に接する取引者、需要者は、原材料、品質等を表した「ATP」の文字に「アタック」の文字を組み合わせたものとして認識するというよりは、むしろ、その構成全体をもって特定の意味合いを想起することのない一体不可分の一種の造語からなるものとして認識するとみるのが自然であるから、本件商標からは、「エイテイピイアタック」のみの称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。
(2)引用商標
引用商標は、前記第2のとおり「アタック」の片仮名を横書きした構成からなるところ、「アタック」の語は、上記(1)のとおり、「スポーツで、攻めること。攻撃。」等の意味を有する広く親しまれた外来語であるから、引用商標からは、その構成文字に相応した「アタック」の称呼を生じ、「攻撃」等の観念を生じるものである。
(3)本件商標と引用商標の類否
本件商標と引用商標との類否を検討すると、両者は、「ATP」の文字の有無という明らかな差異を有するから、外観上、相紛れるおそれはない。
次に、本件商標から生じる称呼「エイテイピイアタック」と引用商標から生じる称呼「アタック」とは、「エイテイピイ」の音の有無という差異を有するから、称呼上、相紛れるおそれはない。
さらに、本件商標は、特定の観念を生じないものであるのに対し、引用商標は「攻撃」等の観念を生じるものであるから、両商標は、観念上、相紛れるおそれはない。
そうすると、本件商標と引用商標とは、その外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
その他、両商標が類似するというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、引用商標とは、同一又は類似するものではないから、その指定商品の類否について検討するまでもなく、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
2 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用商標の周知・著名性について
申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、次のとおりである。
ア 申立人は、1887年創業の総合日用品メーカーであり(甲5)、1987年に引用商標「アタック」を名称とする衣料用洗剤(以下、引用商標を冠した衣料用洗剤を「申立人商品」という。)の販売を開始した(甲6の2)。現在は、「アタックZERO」、「アタック3X」、「アタック抗菌EX」等と称する申立人商品が製造販売されている(甲7)。
イ 申立人による「2019年6月ブランド力調査<衣料用洗剤>」(甲8)によれば、2018年6月、2019年1月及び同年6月において、引用商標の非助成知名は、他の5つの同種商品に比して高かったことがうかがえる。また、株式会社インテージによる「2020年7月ブランド力調査<衣料用洗剤>」(甲9)によれば、2019年7月ないし2020年7月の期間において、5つの同種商品の間で引用商標は「No1ブランド」とされていることがうかがえる。
そして、「日経MJ(流通新聞)」(甲10の1、2)において、「2019年上期ヒット商品番付」の見出しの下、申立人商品である「アタックZERO」が「西の前頭」として掲載されており、雑誌「LEE」(甲11の1〜4)において、「LEEハピ家事大賞2021」の見出しの下、申立人商品である「アタックZERO ドラム式専用 ワンハンドプッシュ」が「洗濯部門」の「ハピ家事大賞」として掲載されている。
ウ 引用商標1は、第3類「洗濯用柔軟剤,洗濯用漂白剤」等や、第5類「薬剤」等の商品について防護標章登録されており(甲3、甲4)、その権利は現在も有効に存続している(職権調査)。また、特許情報プラットフォーム「J−PlatPat」の「日本国周知・著名商標検索」において、申立人が所有する引用商標1が掲載されている(甲12)。
エ まとめ
以上によれば、引用商標は申立人商品に使用されており、2019年7月ないし2020年7月の期間において引用商標が「No1ブランド」とされていること、申立人商品が、2019年上期ヒット商品番付で番付入りしている事実があることなどを考慮すれば、申立人商品(衣料用洗剤)に係る業界において引用商標はある程度知られているといい得るとしても、申立人提出の証拠からは、引用商標を使用した商品の販売実績、市場シェア(規模)、広告宣伝費等の量的規模を示す客観的な証拠は何ら見いだせないから、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることは困難である。
申立人は、引用商標1について、(a)防護標章登録第1号及び防護標章登録第2号が登録されていること、(b)「日本国周知・著名商標検索」に掲載されていること、(c)申立人商品を表示するものとして我が国の取引者・需要者間に広く認識されていることが無効審判の審決において認められていること(甲13、甲14)を主張するが、引用商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時においても継続して、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認め得る証拠の提出はない。
その他、申立人が提出した全証拠からは、引用商標を使用した商品の売上高、引用商標に係る宣伝広告の回数や期間、広告費などを具体的に立証するものがなく、引用商標の周知性を客観的に把握することができない。
してみれば、引用商標は、本件商標の登録出願時ないし登録査定時はもとより現在においても、申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、我が国又は外国における需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないと判断するのが相当である。
(2)出所の混同について
上記1(3)のとおり、本件商標と引用商標は相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標である。
また、引用商標は、「攻撃」の意味を有する平易な英語の表音である「アタック」の文字よりなるものであるから、独創性の程度は高いものではない。
そうすると、本件商標は、これに接する取引者、需要者が、引用商標を連想又は想起するものということはできない。
してみれば、本件商標は、その指定商品に係る需要者の間において、その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、申立人や申立人商品とに関連を連想、想起させるものではなく、その商品の出所について混同を生ずるおそれはない。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、他人(申立人)の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標ではないから、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第10号該当性について
上記2(1)のとおり、引用商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、また、上記1のとおり、本件商標は、全体として一連一体の造語と理解、認識されるものであるから、引用商標と共通する「アタック」の文字を語尾に有するとしても、構成文字全体としては互いに印象が異なる別異な商標であって、類似しない。
以上のとおり、本件商標は、他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標ではないから、その指定商品と申立人商品とを比較するまでもなく、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
4 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同項第11号及び同項第15号のいずれにも該当するものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
別掲
本件商標(登録第6364157号商標)



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異議決定日 2021-11-29 
出願番号 2020034821 
審決分類 T 1 651・ 25- Y (W03)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 佐藤 松江
特許庁審判官 大森 友子
石塚 利恵
登録日 2021-03-16 
登録番号 6364157 
権利者 カルファケミカル株式会社
商標の称呼 エイテイピイアタック、エイテイピイ、アタック 
代理人 大木下 香織 
代理人 羽切 正治 
代理人 仲村 圭代 
代理人 小野 博喜 
代理人 杉山 一夫 
代理人 岩田 克子 

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