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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W05
管理番号 1381169 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2022-01-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-05-06 
確定日 2021-12-09 
異議申立件数
事件の表示 登録第6349829号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6349829号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6349829号商標(以下「本件商標」という。)は、「コタラヒムスラット」の片仮名を標準文字により表してなり、令和元年9月19日に登録出願され、第5類「コタラヒムブツを使用したサプリメント,カプセル,コタラヒムブツを使用した乳幼児用粉乳,コタラヒムブツを使用した食餌療法用飲料,コタラヒムブツを使用した食餌療法用食品,コタラヒムブツを使用した乳幼児用飲料,コタラヒムブツを使用した乳幼児用食品,コタラヒムブツを使用した栄養補助用飼料添加物(薬剤に属するものを除く。)」を指定商品として、令和2年12月25日に登録査定、同3年2月8日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
1 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するとして、引用する登録第5032382号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲1に示すとおりの構成からなり、平成17年12月27日に登録出願、第29類「サラシアレティキュラータを添加してなる肉製品・加工水産物・加工野菜及び加工野菜・カレー・シチュー又はスープのもと,サラシアレティキュラータを主原料とする粉末状・粒状・顆粒状・錠剤状・液状・カプセル状・ゼリー状又は粥状の加工食品」及び第30類「サラシアレティキュラータを主原料とする茶,サラシアレティキュラータを添加してなる菓子及びパン・焼肉のたれ・化学調味料・アイスクリームのもと・シャーベットのもと・即席菓子のもと」を指定商品として、同19年3月16日に設定登録されたものであり、現に有効に存続しているものである。
2 申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第10号及び同項第15号に該当するとして引用する商標は、引用商標1のほか、「コタラヒム」の片仮名からなる商標(以下「引用商標2」という。)及び別掲2に示すとおりの構成からなる商標(以下「引用商標3」という。)であり、申立人が「コタラヒムブツを主原料とする加工食品、健康茶」に使用しているとするものである。
上記の引用商標1ないし引用商標3をまとめていう場合は、以下、「引用商標」という。

第3 登録異議の申立ての理由
1 申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同項第11号及び同項第15号の規定に違反して登録されたものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであると申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第42号証(枝番号を含む。以下、証拠については、「甲1」、「甲2」のように記載し、甲各号証について、枝番号のすべてを記載するときは、枝番号を省略する。)を提出した。
2 具体的理由
(1)第4条第1項第11号について
ア 本件商標と引用商標1との類否
(ア)本件商標と引用商標1との称呼の比較
本件商標は、「コタラヒムスラット」の片仮名文字の文字商標であり、全体として9文字の文字構成からなるものである。そして、該構成文字は、申立人等の保有及び使用する商標を構成する語「コタラヒム」と、「細く長く形よく伸びているさま」を意味する副詞「すらっと」(甲5)を片仮名書きにした「スラット」との2単語を結合したものと容易に看取できるものである。また本件商標の構成中、「スラット」の文字は、加工食品、サプリメントなどに使用される場合、「スラット」の文字は前述の「細く長く形よく伸びているさま」を意味することから、他の文字を結合させた表示によって広く使用されている事実が認められる(甲6)。したがって、本件商標は「コタラヒム」と「スラット」の結合商標であるといえる。
そうすると、本件商標をその指定商品について使用した場合、文字構成が冗長なことに加え、これに接する取引者、需要者は、その構成中、語頭から始まり、申立人等の保有及び使用する商標として、下記理由(2)のアで述べるとおり、取引者、需要者の間で周知されている「コタラヒム」の文字部分に着目するとみるのが自然である。
してみれば、本件商標は、その構成文字全体に相応する「コタラヒムスラット」の称呼を生ずるほか、「コタラヒム」の称呼をも生ずるものである。
これに対し、引用商標1は、茶色と黄色を用いてデザイン化された円形の中に3頭の象や植物、太陽等を配置した上部の図形部分と、下部の片仮名文字「コタラヒム」とを組み合わせた結合商標である。上部の図形部分からは特定の称呼は生じず、下部の文字部分から「コタラヒム」の称呼を生ずるものである。
したがって、両商標の称呼は同一又は類似であるといえる。
(イ)本件商標と引用商標1との外観の比較
本件商標は、上記(ア)のとおり、片仮名の文字商標であり、全体として9文字からなる文字構成であるが、「コタラヒム」と「スラット」の結合商標である。本件商標をその指定商品について使用した場合、文字構成が冗長であり、これに接する取引者、需要者は、その構成中、語頭から始まり、申立人等の保有及び使用する商標を構成する語「コタラヒム」として周知されている「コタラヒム」の文字部分に着目するとみるのが自然である。
これに対し、引用商標1は、茶色と黄色を用いてデザイン化された円形の中に3頭の象や植物、太陽等を配置した上部の図形部分と、下部の片仮名文字「コタラヒム」とを組み合わせた結合商標である。
したがって、本件商標と引用商標1は、「コタラヒム」の文字部分を共通とするものであり、この部分において外観においても同一又は類似する。
(ウ)本件商標と引用商標1との観念の比較
本件商標と引用商標1とは、「コタラヒム」の部分については、引用商標1の商標出願人らがコタラヒムブツを縮めて創作した造語であり、いずれの商標も造語商標であって、特定の観念は生じない。したがって、本件商標と引用商標1の観念の比較は不可能である。
(エ)まとめ
本件商標と引用商標1とは、外観及び称呼が同一又は類似であり、観念はともに生じないから、互いに類似する商標である。
イ 本件商標と引用商標1の指定商品の類否
本件商標の指定商品のうち、「コタラヒムブツを使用したサプリメント」及び「コタラヒムブツを使用した乳幼児用粉乳」は、引用商標1の指定商品「サラシアレティキュラータを主原料とする粉末状・粒状・顆粒状・錠剤状・液状・カプセル状・ゼリー状又は粥状の加工食品」及び「サラシアレティキュラータを添加してなるアイスクリームのもと・シャーベットのもと」と同一又は類似のものである。
ウ 小括
本件商標と引用商標1とは、外観及び称呼が同一又は類似であり、観念はともに生じないから、互いに類似する商標であり、また、その指定商品も同一又は類似のものである。したがって、本件商標登録は商標法第4条第1項第11号に違反してなされたものであるから、取り消されるべきである。
(2)第4条第1項第10号について
ア 引用商標の周知性
申立人は、我が国にて2018年に源株式会社として設立されたスリランカ専門の商社であり、コタラヒムブツ、その他食品やアーユルヴェーダ関連商品の輸入販売を行っている(甲7)。元来、1981年4月21日に設立された株式会社スカイインターナショナルが同事業を開始し、2001年にスリランカの関係者からコタラヒムブツを扱うことを認められ、その後、設立されたコタラヒムジャパン株式会社、スカイ・イン・ジャパン株式会社等への事業の承継等を経て、2018年以後は申立人である源株式会社がコタラヒムブツ、その他食品やアーユルヴェーダ関連商品の輸入販売事業を承継している(以下、各時代の法人を総称して「申立人等」と記載する。甲8)。
「コタラヒムブツ」は、スリランカに伝統的に生育しており、学名をサラシア・レティキュレータとされる植物の、シンハラ語での呼称であり、申立人等が輸入を開始した1990年代当時、日本では周知されていなかったが、申立人等は営業活動を経て、2001年には、独自にスリランカ政府より「コタラヒムブツ」の独占輸入権の許可を得て輸入し、その薬効及びこれを利用した商品を本邦に紹介した。その際に、申立人等は「コタラヒムブツ」を縮めて独自に「コタラヒム」という造語を愛称として創作した。その後一貫して、申立人等及び申立人の所属するスカイ・グループ及び委託販売先は共通して、引用商標等を独自に作出し使用している。
以下に、申立人等の各商標の使用経緯を時系列に沿って概観すると、
(ア)株式会社スカイインターナショナルによる使用
1981年4月21日に設立された株式会社スカイインターナショナルはスリランカ政府との交渉努力により、本邦に植物コタラヒムブツとその加工品を輸入することを日本企業として初めて認められた。これに伴い、コタラヒムブツの輸入業を手掛けることとなり当該植物の名称から、造語「コタラヒム」を独自に創作し、この語を2001年6月8日に商標として出願した(甲3)。
(イ)コタラヒムジャパン株式会社による使用
その後、設立されたコタラヒムジャパン株式会社(以下、コタラヒムジャパンという)は、「コタラヒム」の商標を付した商品を開発し、主に加工食品として販売し、その販売の資料において、積極的にコタラヒムブツについての紹介や自社がまさに独自にコタラヒムブツに関する輸入ルートを開拓している旨を付し、本邦の消費者にコタラヒムブツの薬効を紹介した。この際、コタラヒムブツの単なる略称として原材料名などを示す一般名詞として「コタラヒム」を使用するのではなく、「コタラヒム」との商品名、商標登録がなされている旨を意味するアールマーク及び、登録商標である旨を表示して販売してきた。このことは「コタラヒム」の加工食品としての販売資料(甲9)、冊子(甲10)等から裏付けられる。また私法契約上の争訟ではあるものの、前提となる商品「コタラヒム」の原料を2001年(平成13年)に取り扱い、独占的輸入権を付与されていたことや、「コタラヒム」という名称は、申立人等が命名したものであって、商標として登録されていることについての実態が存在したことは東京高等裁判所の認定するところでもある(甲11)。
さらに、コタラヒムブツの効能について日本での認知が広まり、その薬効についての理解の向上や市場の拡大のため、販売のみならず、原材料としてのコタラヒムブツ、加工された商品としての「コタラヒム」の情報の普及活動にも積極的に取り組み、その結果、商品であるコタラヒムのエキス末は、糖尿病患者の摂取により病状改善を見込める商品として学術論文にも紹介され、当該エキス末含有の粉末を利用したパンが糖尿病患者の健康状態を改善させる効果を有するとの内容が発表されることにもなった(甲12)。
(ウ)スカイ・イン・ジャパン株式会社による使用
コタラヒムジャパンは2014年にグループ会社であるスカイ・イン・ジャパン株式会社にコタラヒム事業を統合し閉鎖した。以後、スカイ・イン・ジャパン株式会社も、スリランカ政府からコタラヒムブツの販売に関する許可を得てこれらを輸入し(甲13)、インターネット上のショッピングサイトである、アマゾンジャパン、楽天、ケンコーコム等において、コタラヒムブツを含有する商品を「コタラヒム」として販売した(甲14〜甲16)。それに加えて、各委託販売先を通じて販路を拡大し、同商品を販売した(甲17〜甲20)。また、取引先であるRMI株式会社に原材料であるコタラヒムブツ原木を供給し、それを材料として加工し製造した商品が協和薬品株式会社により販売され、共同して営業、周知活動を行い、イベント等の機会でも同社製品を展示している(甲21〜甲23)。
さらに、コタラヒムブツの効能について日本での認知をコタラヒムジャパン株式会社による活動に続きさらに広め、その薬効についての理解の向上、市場の拡大をさらに進めるよう、販売のみならず、原材料としてのコタラヒムブツ、加工された商品としてのコタラヒムの情報の普及活動にも積極的に取り組んできた(甲24〜甲26)。かかる使用については原材料としてのコタラヒムブツ、加工された商品としてのコタラヒムを日本市場の薬品・食品や健康茶、健康食品の分野においてより広範囲に広めようとの努力の顕れであるが、一方で「コタラヒム」の語の使用を商標として使用してきていることは、引用商標2について別会社に対して商標権の使用許諾契約が行われた事実(甲27)や、前掲の各証拠において「コタラヒム」の語を掲載する際にはRマークを付して行われている点等から裏付けられる。また、販売対象となる商品について商品としての品質保持のために検査依頼等を行い、商品としての「コタラヒム」の品質の管理を行っていた(甲28)。
その後、スカイ・イン・ジャパン株式会社は会社買収により休眠したが、コタラヒムに関する事業は買収先会社の半数以上の株式について行使代理権を有する星野徹氏が代表取締役を務める源株式会社により継続された(甲29、甲30)。
(エ)源株式会社による使用
申立人である源株式会社は引用商標2を含む各商標を譲り受け、健康食品に関する事業類を承継してその販売を行ってきた。その販売は多岐にわたり、インターネット上のショッピングサイトアマゾン等において、コタラヒムブツを含有する商品を「コタラヒム」として販売し(甲31〜甲34)、その他にも各委託販売先を通じて販路を拡大し、同商品を販売した(甲35〜甲38)。また、販売対象となる商品について商品としての品質保持のために検査依頼等を行い、商品として「コタラヒム」の維持管理を行ってきている(甲39)。
上記(ア)ないし(エ)で概観したとおり、申立人等は、長年にわたり、申立人等が自ら、又は、委託先に使用許諾するなど、様々な販売ルートを用いて、引用商標を自己の商標として使用しており、これらの商標を付した商品の販売実績から我が国内の需要者の間に広く認識されているといえる。
以上の使用実績に照らせば、商標「コタラヒム」は申立人の商品表示として、少なくとも、コタラヒムブツを主原料とする加工食品、健康茶について商標法4条1項10号でいう「需要者の間に広く認識されている商標」であるといえる。
イ 本件商標と引用商標1ないし引用商標3との類否
本件商標と引用商標1との類否については、指定商品の部分を除いて、上記(1)に記載のとおりである。また本件商標と引用商標2及び引用商標3との類否については以下のとおりである。
(ア)本件商標と引用商標2及び引用商標3との比較
申立人等及びその委託販売先が使用する引用商標2及び引用商標3は、いずれの文字列からも、同じく「コタラヒム」の称呼を生ずるものである。
そうすると、本件商標と引用商標2及び引用商標3とは称呼において類似する類似商標というべきである。また、引用商標2は引用商標1と文字部分の文字の種類及び数並びに配列が同じであるから、上記(1)ア(イ)のとおり、本件商標と引用商標2とは外観において類似する類似商標というべきである。
観念については、上記(1)ア(ウ)のとおりである。
(イ)本件商標の指定商品と申立人等の業務に係る商品
申立人及び、上記ア(ア)ないし(エ)で示した事業を行い引用商標を使用してきた商品の販売者(申立人等)は、健康や美容、痩身を目的とした商品として、「コタラヒム」の商標を付した商品を販売しており、その主なものは血糖値の上昇を抑制する効果や痩身の効果等を目指す健康食品、又はサプリメント、健康茶としての販売である。これらは当初より、原材料であるコタラヒムブツの血糖値の上昇を抑制する薬効を活かし、学術輪文(甲12)において、粉末を加えたパンが糖尿病患者の血糖値抑制に効果的であった実験結果等を踏まえ、食後血糖値の上昇を抑えたい消費者等の需要を見込んでコタラヒムブツの原材料を食品、サプリメント、茶等に加工して販売しているものである。
一方で、本件商標の指定商品のうち、「コタラヒムブツを使用した食餌療法用飲料」、「コタラヒムブツを使用した食餌療法用食品」については、いずれも前述のコタラヒムブツの薬効を利用し、これを食餌療法の際の食品・飲料に加工し利用する商品であると考えられる。これは引用商標が付されて販売されてきた「サラシアレティキュラータを主原料とする粉末状・粒状・顆粒状・錠剤状・液状・カプセル状・ゼリー状又は粥状の加工食品」又は「健康茶」と、少なくとも、原材料から食用、飲用に精製加工する製造を経る段階で、生産部門が一致し、原材料及び品質が一致し、用途が一致する。
さらに、一般的に血糖値の抑制を目的として販売されている食品・飲料等の商品は幅広く、それが特に厚生労働省や、消費者庁により特定の表示が許可される特定の品以外にも食餌療法の際に利用されうる食品・飲料は幅広く、その市場の流通ルートは多岐にわたる。
具体的には、例えば、大手インターネットショッピングサイト「楽天市場」にて「食事療法食品」の検索を行った場合、上位に「樺のあな茸茶ハト麦ブレンド」の健康茶が表示される(甲40)。また、食餌療法が採られるような状況の場合、患者又は需要者は漠然と「食餌療法」のみを購買時の検索用語に指定するとは考えにくいことから、そのような需要者が個別に指定するであろう商品の効果・薬効に留意して、例えば、コタラヒムブツを利用した商品を求める購買層が求める薬効として血糖値の上昇が考えられることから、同サイトにてより具体的に「血糖値食品」の語で検索を行った場合、同サイトで上位に表示されるのは「【特定保健用食品】血糖値が気になる方食物繊維入り緑茶」「グルコケア粉末スティック濃い茶5.6g×30袋」[トクホ]血糖値が気になる方の「緑の力茶」であり、上位3つが健康茶の部類であるといえるが、この結果からは、血糖値の抑制効果に着目すべき病態で摂取される食品については、多くの場合健康茶が商品として流通の俎上にあり、食餌療法用の飲料や食品と類似・同一の購買層に対し商品として扱われていることがうかがえる。すなわち、本件商標の「コタラヒムブツを使用した食餌療法用飲料」、「コタラヒムブツを使用した食餌療法用食品」は、引用商標が付されて販売されてきた「健康茶」と、販売部門が一致し、需要者の範囲が一致する。
また、検索結果の1つには「大正製薬食後の血糖値が気になる方のタブレット(粒タイプ)」も表示されており、この結果からは、申立人等の業務に係る商品である「錠剤状の加工食品」と、食餌療法用の食品・飲料は流通が共通する部分があり、このように、特定の薬効や健康上の効果を求める場合には、食餌療法用に供される食品と、加工食品は流通経路を同一とする面があり、類似・同一の購買層に対する商品であるといえる(甲41)。すなわち、本件商標を付された「コタラヒムブツを使用した食餌療法用飲料」、「コタラヒムブツを使用した食餌療法用食品」は、引用商標が付されて販売されてきた「サラシアレティキュラータを主原料とする粉末状・粒状・顆粒状・錠剤状・液状・カプセル状・ゼリー状又は粥状の加工食品」と、販売部門が一致し、需要者の範囲が一致する。
以上のとおり、本件商標の「コタラヒムブツを使用した食餌療法用飲料」、「コタラヒムブツを使用した食餌療法用食品」は、引用商標が付されて販売されてきた「サラシアレティキュラータを主原料とする粉末状・粒状・顆粒状・錠剤状・液状・カプセル状・ゼリー状又は粥状の加工食品」、「健康茶」と商品が同一又は類似である。
さらに、本件商標の指定商品のうち「カプセル」については、申立人等の業務に係る商品のうち「サラシアレティキュラータを主原料とする粉末状・粒状・顆粒状・錠剤状・液状・カプセル状・ゼリー状又は粥状の加工食品」としてサプリメントが薬局の店頭で販売されていることからすると(甲35)、販売部門が一致し、需要者の範囲が一致し、完成品と部品との関係にあるといえる。
以上のとおり、本件商標の「カプセル」は、引用商標が付されて販売されてきた「サラシアレティキュラータを主原料とする粉末状・粒状・顆粒状・錠剤状・液状・カプセル状・ゼリー状又は粥状の加工食品」と商品が同一又は類似である。
これらの事実を踏まえると、本件商標の指定商品のうち「カプセル」「コタラヒムブツを使用した食餌療法用飲料」、「コタラヒムブツを使用した食餌療法用食品」は、申立人等の業務に係る商品「サラシアレティキュラータを主原料とする粉末状・粒状・顆粒状・錠剤状・液状・カプセル状・ゼリー状又は粥状の加工食品」「健康茶」と同一又は類似のものである。
ウ 小括
本件商標は、申立人等の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標に類似する商標であって、その商品と同一又は類似する商品について使用するものである。したがって、本件商標登録は、商標法第4条第1項第10号の規定に違反してなされたものであるから、取り消されるべきである。
(3)第4条第1項第15号について
ア 商標の周知性について
申立人等が使用する引用商標2が我が国において周知であることは、上記(2)アにおいて述べたとおりである。
さらに、申立人等は、当初日本では認知されていなかった「コタラヒムブツ」について、これが日本で認知され、広まるよう、営利活動以外の行為も行い、市場の開拓及びスリランカと日本の文化交流に尽力してきた(甲8及び甲9の2)。その結果、輸入が開始された1900年代当時、日本ではほとんど周知されていなかった「コタラヒムブツ」が、申立人等の営業活動を経て、日本の消費者に受け入れられるに至った(甲42)。
これらの活動の結果、「コタラヒムブツ」が日本で認知されるようになり、その結果、市場に着目した他の追随者が「コタラヒムブツ」関連商品の輸入を行うようになったとともに、申立人が創作し商標登録した「コタラヒム」についても広く世間に知られるようになった。しかし、申立人等は「コタラヒム」の一般名詞化を受容しているわけではなく、あくまでスリランカと日本の文化交流及び「コタラヒムブツ」の日本の需要者への浸透を目標としているものであり、このことは申立人等が一貫して、商品販売の際の資料や広告、商品パッケージには「コタラヒム」をRマークを付した態様で使用し、また頻繁に「コタラヒム」の語が申立人等独自の創作によるものである点や登録商標であることを明記し、紹介されていること等からも明らかである(甲9、甲14、甲20、甲31、甲32など)。その結果、「コタラヒム」はブランド名として大手インターネットショッピングサイトでも掲示されるに至っている(甲33)。
以上の販売、活動実績に照らせば、引用商標は申立人等が我が国において使用することにより、申立人等が扱うコタラヒムブツを含有する商品を示すものとして、商標法4条1項15号でいう我が国内の需要者の間に広く認識されているといえる。このように、大手インターネットショッピングサイトにおいて、ブランド名として「コタラヒム」が掲載されるに至っていること、また、当該インターネット通販サイト、アマゾン株式会社は広く日本全国の需要者に商品を供給し販売を行うものであること等からすると、申立人等の販売地域は日本全国に及んでいるといえ、広く日本国内の需要者に申立人等の商標は申立人等独自の商標として認識されているといえ、「標章の周知度」は強いものであるといえる。
イ 本件商標と引用商標2ないし3との類否について
申立人等が使用する引用商標2ないし3が本件商標と類似であることは、上記(2)イにおいて述べたとおりである。したがって、「出願商標とその他人の標章との類似性の程度」は強いといえる。
ウ 標章が造語よりなるものであるについて
引用商標は、上記(2)アにおいて述べたとおり創造標章である。また、その点について申立人等はアにおいて述べたように、頻繁に「コタラヒム」の語が申立人等独自の創作によるものである点や登録商標であることを明記している(甲9、甲14、甲20、甲31、甲32など)。したがって、「標章は造語からなる」ものである。
エ 企業における多角経営の可能性について
申立人等の業務は我が国にて2018年に源株式会社として設立されたスリランカ専門の商社であり、コタラヒムブツ、その他食品やアーユルヴェーダ関連商品の輸入販売を行っていることは、上記(2)アで述べたとおりである。一般に商社は取引のある国から輸出入できる商品を取り扱い、関連する商品を展開することで市場を確保するものであり、特に申立人等がスリランカ専門の商社として営業活動をなし、コタラヒムブツを含む商品「コタラヒム」を広く普及させてきた実績からは、既存の商品のみならず多角的な経営を販売についてなし「コタラヒム」の標章を付した商品が多角的に展開される可能性が十分考えられる。
オ 本件指定商品と申立人等の業務に係る商品の関連性について
本件商標の指定商品と申立人等の業務に係る商品に関連性があることは、上記(2)イ(イ)において述べたとおりであ。
カ 商品等の需要者の共通性その他取引の実情について
我が国において、本件商標の指定商品である「コタラヒムブツを使用したサプリメント,カプセル,コタラヒムブツを使用した乳幼児用粉乳,コタラヒムブツを使用した食餌療法用飲料,コタラヒムブツを使用した食餌療法用食品,コタラヒムブツを使用した乳幼児用飲料,コタラヒムブツを使用した乳幼児用食品,コタラヒムブツを使用した栄養補助用飼料添加物」を購入する需要者層は、特定の海外の植物の薬効に着目して商品を購入する購買意欲を有する消費者であると考えられるが、このような購買層については申立人が扱っている商品であるサラシアレティキュラータを主原料とする各種の加工食品を購入しようとする購買層と一致する。
また、既に述べたとおり、申立人等による長年にわたる周知のための営業活動により、引用商標1の、特にその称呼は多方面にわたり使用され、営利活動のみならず、学術の分野においても広く普及してきたと考えられる。
そうすると、本件商標の指定商品と、申立人等の業務に係る商品等の需要者の共通性が認められるし、申立人等の業務に係わる商品等について非営利の分野を含む多方面で認識が普及していること、特定の植物の薬効に着目し商品を購入する消費者は、これらの情報も加味したブランドイメージを基に購入を選択的に決定する実情等がうかがえる。
キ 小括
以上のことを総合考慮すると、「コタラヒム」の文字列からなる本件商標が、本件指定商品について使用された場合には、需要者が、申立人等の業務に係わる商品又は役務であると誤認混同するおそれがあるといえる。

第4 当審の判断
1 引用商標の周知著名性について
(1)申立人の主張及び提出した証拠によれば、以下のとおりである。
ア 申立人は、我が国で2018年に設立されたスリランカ専門の商社であり、健康食品原材料の輸出入及び販売等を行っている(甲7)。1981年4月21日に設立された株式会社信和(後に株式会社スカイインターナショナルに社名変更)が、該事業を開始し、2001年にスリランカ政府よりコタラヒムの独占輸入権を許可され、その後、このコタラヒムを独占的に製造・販売する会社としてコタラヒムジャパン株式会社を設立し、スカイ・イン・ジャパン株式会社等への事業の承継等を経て、2018年以後は申立人がコタラヒム関連商品の輸入販売事業を承継している(甲8、甲9、甲14、甲15、甲30など)。
イ 「コタラヒムブツ」は、スリランカに伝統的に生育しており、学名をサラシア・レティキュレータとされる植物の、シンハラ語での呼称であり、申立人等が輸入を開始した1990年代当時、日本では周知されていなかったが、申立人等は営業活動を経て、2001年には、独自にスリランカ政府より「コタラヒムブツ」の独占輸入権の許可を得て輸入し、その薬効及びこれを利用した商品を我が国に紹介した。その際に、申立人等は「コタラヒムブツ」を縮めて「コタラヒム」という造語を創作した(甲8、甲9など)。
ウ 株式会社スカイインターナショナルは、「コタラヒム」の語を平成13年(2001年)6月8日に商標として出願した(甲3)。
エ コタラヒムジャパン株式会社は、「コタラヒム」の商標を付した商品(主に加工食品)を販売し、その販売の資料において、コタラヒムブツについての紹介や自社が独自にコタラヒムブツに関する輸入ルートを開拓している旨を付し、我が国の消費者にコタラヒムブツの薬効を紹介した。この際、「コタラヒム」との商品名、商標登録がなされている旨を表示して販売してきた(甲9、甲10)。
オ スカイ・イン・ジャパン株式会社も、スリランカ政府からコタラヒム原木の国外輸出許可、資格を取得し、インターネット上のショッピングサイトである、アマゾンジャパン、楽天、ケンコーコム等において、「コタラヒム」の商標を付した商品を販売した(甲14〜甲16)。
カ その後、スカイ・イン・ジャパン株式会社のコタラヒムに関する事業は申立人により継続された(甲30)。申立人は、「コタラヒム」を含む各商標を譲り受け、健康食品に関する事業類を承継してその販売を行ってきた(甲31〜甲38)。また、販売対象となる商品について商品としての品質保持のために検査依頼等を行い、商品として「コタラヒム」の維持管理を行ってきている(甲39)。
(2)上記(1)の事実によれば、申立人は、その前身であるスカイ・イン・ジャパン株式会社等から健康食品原材料の輸出入及び販売事業等を承継し、2018年に設立以降、現在、コタラヒムブツ関連商品の輸入販売を行っていることが認められる。
しかしながら、申立人が提出した証拠において、申立人等から購入者等にあてた請求書は散見されるものの、それは、2019年ないし2020年にかけての決して長い期間ではない上に、この請求金額を商品販売額と考慮しても、コタラヒムブツ関連商品の販売の期間、該期間における販売した数量及び売上高等の販売実績、並びに該商品についての宣伝広告の回数、期間、範囲及び費用等の広告実績に関する具体的事実は明らかにされていない。また、コタラヒムブツに関するパンフレットや小冊子等の作成日、作成部数、配布先、配布方法等も明らかではなく、ウェブサイトにおける記事の掲載日やアクセス数等が不明である。
そうすると、コタラヒムブツ関連商品に使用されているとされる引用商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において申立人の業務に係る商品(「コタラヒムブツ」)を表示するものとして我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたと認めるに足る事実を見いだすことはできない。
したがって、申立人が提出した証拠をもってしては、引用商標が本件商標の登録出願時及び登録査定時において申立人の業務に係る商品(「コタラヒムブツ」)を表示するものとして我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたとは認めることができない。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標と引用商標1について
ア 本件商標について
本件商標は、上記第1のとおり「コタラヒムスラット」の片仮名を標準文字で表してなるところ、該文字は、同じ書体、同じ大きさ、同じ間隔をもってまとまりよく一体的に表されていることから、視覚上、一つの語として看取されるといえるものである。
そして、本件商標の全体から生じる「コタラヒムスラット」の称呼はやや冗長であるとしても、無理なく称呼し得るものであり、また、「コタラヒムスラット」の文字は、一般に使用されている辞書等には掲載されていない文字である上に、本件商標の指定商品との関係において、直ちに何らかの意味合いを想起させるものでもないから、特定の意味合いを有さない造語と認められ、特定の観念を生じない。
加えて、本件商標の構成中の「コタラヒム」の文字部分が、上記1のとおり、申立人の業務に係る商品を表示するものとして取引者、需要者に広く知られているものではないため、当該文字部分が需要者等に対し強い印象を与えるとはいえない。
してみれば、本件商標は、その構成及び称呼等から全体をもって一体不可分のものと把握されるとみるのが相当であるから、これより「コタラヒムスラット」の称呼のみが生じ、特定の観念を生じないものである。
イ 引用商標1について
引用商標1は、別掲1に示すとおり、全体が太い茶色の線で縁取りされた、多角形台座の上に大小3つの円形図形を組み合わせてなる図形と、その下に「コタラヒム」の片仮名を配した構成からなるところ、該図形部分と文字部分とは、特段相互に関連性を見いだせないから、それぞれが独立して自他商品の識別標識としての機能を果たすものであって、取引者、需要者は、文字部分を捉えて取引に資する場合も決して少なくないとみるのが相当である。
そうすると、引用商標1は、構成中の文字部分より、「コタラヒム」の称呼を生じ、該文字は、一般に使用されている辞書等には掲載されていない文字である上に、本件商標の指定商品との関係において、直ちに何らかの意味合いを想起させるものでもないから、特定の意味合いを有しない造語と認められ、これより特定の観念を生じない。
(2)本件商標と引用商標1の類否
本件商標と引用商標1の構成は、それぞれ上記ア及びイのとおりであり、構成全体において比較するときは、図形部分の有無という明確な差異があることから、容易に区別することができ、また、本件商標と引用商標1の構成中の文字部分とを比較しても、両者は、全体の構成文字数が明らかに相違するものであるから、外観において相紛れるおそれはない。
次に、本件商標から生じる「コタラヒムスラット」の称呼と引用商標1から生じる「コタラヒム」の称呼とは、全体の音構成、構成音数の相違により、称呼において相紛れるおそれはない。
さらに、本件商標と引用商標1は、ともに造語であって特定の観念を生じないものであるから、観念において比較することはできない。
そうすると、本件商標と引用商標1とは、観念において比較することができないとしても、外観及び称呼において相紛れるおそれはないものであるから、外観、称呼及び観念を総合的に勘案すれば、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
(3)小活
以上のとおり、本件商標と引用商標1とは、非類似の商標であるから、本件商標の指定商品と引用商標1の指定商品とが同一又は類似のものであるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第10号該当性について
引用商標は、上記1のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたとは認めることができない。
また、引用商標2は「コタラヒム」の文字からなり、引用商標3は「KothalahiM」の文字部分を含むところ、それぞれの構成に鑑みれば、引用商標1と同様に、「コタラヒム」の称呼を生じ特定の観念を生じないものであって、外観においては上記第1及び第2のとおり相紛れるおそれはないというべきであるから、引用商標2及び引用商標3もまた、本件商標とは、外観、称呼及び観念を総合して勘案しても、非類似の商標であると判断するのが相当である。
そうすると、引用商標は、他人(申立人)の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標とはいえず、また、引用商標1のほかに、引用商標2及び引用商標3と本件商標とは非類似の商標であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第15号該当性について
引用商標は、上記1のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたとは認めることができないものであり、また、本件商標と引用商標とは、上記2及び上記3のとおり、非類似の商標であって別異の商標というべきである。
そうすると、商標権者が本件商標をその指定商品に使用した場合であっても、これに接する取引者、需要者が、引用商標を連想、想起し、その商品が他人(申立人)又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかと誤認しその商品の出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
5 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同項第11号及び同項第15号に違反して登録されたものではなく、他にその登録が同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
別掲1
引用商標1(登録第5032382号商標)(色彩は原本参照)



別掲2
引用商標3(未登録)(色彩は原本参照)




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異議決定日 2021-11-29 
出願番号 2019123663 
審決分類 T 1 651・ 25- Y (W05)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 齋藤 貴博
特許庁審判官 板谷 玲子
岩崎 安子
登録日 2021-02-08 
登録番号 6349829 
権利者 株式会社愛幸
商標の称呼 コタラヒムスラット、スラット 
代理人 葛和 清司 

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