• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W09
管理番号 1381165 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2022-01-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-04-22 
確定日 2021-12-03 
異議申立件数
事件の表示 登録第6348168号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6348168号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6348168号商標(以下「本件商標」という。)は、「ネオンモンスターズ」の片仮名と「NEON MONSTERS」の欧文字を上下二段に書してなり、令和元年12月17日に登録出願、第9類「業務用テレビゲーム機用プログラム,写真機械器具,映画機械器具,プラネタリウム投影機,投影機,音声及び音楽再生機能付き家庭用映像投影機,光学機械器具,電気通信機械器具,携帯情報端末,スマートフォン,電子応用機械器具(「ガイガー計数器・高周波ミシン・サイクロトロン・産業用X線機械器具・産業用ベータートロン・磁気探鉱機・磁気探知機・地震探鉱機械器具・水中聴音機械器具・超音波応用測深器・超音波応用探傷器・超音波応用探知機・電子応用扉自動開閉装置・電子顕微鏡」を除く。),電子管,半導体素子,電子回路(「電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路」を除く。),電子計算機用プログラム,モバイル機器のためのアプリケーションソフトウェア,ダウンロード可能な画像・映像・音声又は音楽,家庭用テレビゲーム機用プログラム,携帯用液晶画面ゲーム機用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD−ROM, 電子楽器用自動演奏プログラムを記憶させた電子回路及びCD−ROM, レコード,インターネットを利用して受信し及び保存することができる音楽ファイル,インターネットを利用して受信し及び保存することができる画像ファイル,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,電子出版物,映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント」を指定商品として、同3年1月20日に登録査定され、同年2月3日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、登録異議の申立ての理由に該当するとして引用する商標は、次の1ないし6のとおりである。
1 登録第5379390号商標(以下「引用商標1」という。)は、「MONSTER」の文字を標準文字で表してなり、平成22年7月8日に登録出願、第32類「アルコール分を含まない飲料,清涼飲料,果実飲料」を指定商品として、同年12月24日に設定登録され、その商標権は、有効に存続しているものである。
2 登録第5057229号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、平成18年6月9日に登録出願、第32類「エネルギー補給用清涼飲料,スポーツ用清涼飲料,その他の清涼飲料,果実飲料,エネルギー補給用のアルコール分を含有しない飲料,スポーツ用のアルコール分を含有しない飲料,ビール風味の麦芽を主体とするアルコール分を含有しない飲料,その他のアルコール分を含有しない飲料」を指定商品として、同19年6月22日に設定登録され、その商標権は、有効に存続しているものである。
3 登録第5393681号商標(以下「引用商標3」という。)は、「MONSTER ENERGY」の文字を標準文字で表してなり、平成22年7月8日に登録出願、第32類「アルコール分を含まない飲料,清涼飲料,果実飲料」を指定商品として、同23年2月25日に設定登録され、その商標権は、有効に存続しているものである。
4 登録第6148588号商標(以下「引用商標4」という。)は、別掲2のとおりの構成よりなり、2018年5月8日にオーストラリア連邦でした商標登録出願に基づきパリ条約第4条の優先権を主張して、平成30年11月7日に登録出願、第9類、第12類、第14類、第16類、第18類及び第25類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として、令和元年5月31日に設定登録され、その商標権は、有効に存続しているものである。
5 登録第5788676号商標(以下「引用商標5」という。)は、「MONSTER ENERGY」の文字を標準文字で表してなり、平成26年12月25日に登録出願、第9類、第16類、第18類及び第25類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として、同27年8月28日に設定登録され、その商標権は、有効に存続しているものである。
6 申立人が申立人の取扱いに係る商品を表示するものとして需要者の間に広く知られていると主張する商標は、「MONSTER」の欧文字からなるもの(以下「引用商標6」という。)である。
以下、引用商標1ないし引用商標6をまとめていう場合は、引用商標という。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第7号及び同項第15号に違反して登録されたものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第452号証(枝番号を含む。)及び別紙1ないし別紙9を提出した。
1 申立人の使用に係る「MONSTER」(以下「申立人商標」という場合がある。)及びその表音「モンスター」の周知性について
(1)申立人商標と取扱い商品
ア 申立人は、1930年代に創業した米国の飲料メーカーであり、創業以降、アルコールを含有しない飲料(炭酸飲料、フルーツジュース、エネルギー補給用飲料等)の様々な飲料製品の企画、開発、製造、マーケティング、販売の事業に従事していたが、2015年6月からはエネルギー補給飲料(エナジードリンク)の事業に注力している(甲2、甲58)。
イ 申立人は、2002年に「MONSTER」なるエナジードリンクのブランド(以下「MONSTERブランド」という。)を創設し、これ以降、現在に至るまで「MONSTER」をMONSTERブランドのエナジードリンク(以下「申立人商品」という。)の出所識別標識として使用している。
申立人商品は、2002年に米国で「MONSTER ENERGY」(甲4、甲7、甲18、甲58)を発売後、世界各国における販売も開始し、現在は日本を含む世界130以上の国及び地域で販売中で、米国で最も売れているエナジードリンクであり、全世界では2017年の米ドルベースで第2位の売上げを記録(甲58)した世界でも有数のブランドといえるものである。
ウ 国内市場における申立人商品は、申立人と国内独占販売契約を締結したアサヒ飲料株式会社(以下「アサヒ飲料社」という。)を通じて、2012年5月に「MONSTER ENERGY(モンスターエナジー 缶355ml)」及び「MONSTER KHAOS(モンスターカオス 缶355ml)」が発売された。
2012年5月以降に、我が国において発売されたMONSTERエナジードリンク(リニューアル製品及び季節限定製品を含む。以下「申立人国内商品」という。)は次のとおりである。
(ア)2012年5月発売:「MONSTER ENERGY(モンスターエナジー 缶355ml)」(甲5、甲7、甲8、甲11、甲12、甲14、甲131、甲131、甲258、甲264、甲322)
(イ)2012年5月発売:「MONSTER KHAOS(モンスターカオス 缶355ml)」(甲6、甲7、甲14、甲128、甲130、甲259、甲264)
(ウ)2013年5月発売;「MONSTER ABSOLUTELY ZERO(モンスターアブソリュートリーゼロ 缶355ml)」(甲10、甲11、甲13、甲15、甲131、甲252〜255、甲260、甲264、甲322)
(エ)2014年8月発売:「MONSTER ENERGY M3(モンスターエナジーM3 ワンウェイびん150ml)」(甲59、甲61、甲127、甲129、甲131、甲261、甲264)
(オ)2014年8月発売:「MONSTER ENERGY M3(モンスターエナジーM3 缶160ml)」(甲361)
(カ)2014年10月発売:「MONSTER COFFEE(モンスターコーヒー 缶250ml)」(甲60、甲62)
(キ)2015年7月発売:「MONSTER ENERGY ULTRA(モンスターウルトラ 缶355ml)」(甲101〜甲103、甲118、甲131、甲262、甲264)
(ク)2017年6月発売:「MONSTER ENERGY THE DOCTOR(モンスターロッシ 缶355ml)」(甲256、甲257、甲263、甲264)
(ケ)2017年12月発売:平野歩夢コラボ缶 「MONSTER ENERGY(モンスターエナジー スペシャルデザイン 缶355ml)」及び「MONSTER ENERGY ULTRA(モンスターウルトラ スペシャルデザイン缶 355ml)」(甲291)
(コ)2018年4月発売:「MONSTER CUBA LIBRE(モンスターキューバリブレ 缶355ml)」(甲323〜甲326)
(サ)2019年4月発売:「MONSTER PIPELINE PUNCH(モンスターパイプラインパンチ 缶355ml)」(甲353、甲357〜甲360)
エ 申立人商品の海外での人気の高さは、日本上陸前から国内の需要者の間でもよく知られていたものであり(甲378〜甲382)、2012年5月に「MONSTER ENERGY(モンスターエナジー 缶355ml)」及びMONSTER KHAOS(モンスターカオス 缶355ml)」の2種の個別製品が発売されると、その直後から国内でもたちまち人気商品となり、同年9月時点で既に年間売上目標の100万箱を突破し(甲8、甲65〜甲67)、その後も好調に売上を伸ばして157万箱の売上を記録した(甲9、甲65〜甲67)。
オ 「MONSTER」の文字及び「MONSTER」の頭文字「M」とその爪を象った図柄(以下「爪図形」という。)(甲328)を付した包装容器と個別製品名を使用する申立人のMONSTERブランドのエナジードリンク事業は急速に業績を拡大し、その成功は経済界で高い評価を受けている(甲2〜甲33、甲51〜甲58、甲391〜甲393)。
(2)売上高
ア 申立人商品は、2002年の発売以来、220億缶以上が販売され、世界中で毎年30億缶以上を売上げ、全世界で総額350億米ドルを超える収益を生み出している。全世界における小売販売額は毎年60億米ドルを超え、申立人の全売上の90%以上を占める。
2017年度(12月31日締め)の申立人の年間総売上高は、2016年度(12月31日締め)の35億米ドル、2015年度(12月31日締め)の31.1億米ドル、2014年度(12月31日締め)の28.2億米ドル、2013年度(12月31日締め)の25.9億米ドル、2012年度(12月31日締め)の23.7億米ドル及び2011年度(12月31日締め)の19.5億米ドルから38.6億米ドルに増加した。
当該エナジードリンクの販売は、申立人の2017年度、2016年度、2015年度、2014年度及び2013年度の年間総純売上に対して、それぞれ90.1%、90.1%、92.5%、93.9%及び93.2%を占める(甲58)。
イ 日本国内の市場では、2012年5月の販売開始から2018年12月までの期間において約8億3,800万缶を超える申立人商品を販売し、当該期間の総販売額は5億7,600万米ドルを超え、日本円で620億円以上に達した。
申立人商品は、日本のコンビニエンスストア、自動販売機、キオスク、スーパーマーケット、列車の売店、会員登録が必要な会員制ストア、店舗、ゲームセンター、ドラッグストア及びホームセンターなどを通じて販売されている(甲58)。
(3)「MONSTER」の使用態様
申立人は、一貫して、申立人商品の個別製品名に、「MONSTER」の文字を使用し、かつ、すべての個別製品に特徴的な書体の「MONSTER」の文字(甲416)を独立して看者の目をひく態様で表示したデザインの包装容器(缶、瓶)を採用している。
当該包装容器において「MONSTER」の文字部分は、個別製品名を構成する他の文字部分と段を違えて表示されており、また、異なる色彩、異なるフォントで大きく視覚的に強調して表示されており、見る者が「MONSTER」の文字部分をブランドとして容易に認識できる態様で使用されている。
(4)広告宣伝活動
申立人商品に関する広告宣伝活動は、国際的に活躍する多数の有名アスリート・チーム及びイベントに対するスポンサー活動を中核として、ウェブサイト及びプレスリリースによる広告、申立人商品のサンプルの配布、大手コンビニエンスストアやイベント主催者と提携した大規模な販売キャンペーン(景品・賞品のプレゼントを含む)、スポーツイベント等の開催、契約アスリート等の動画・画像の公開、MONSTERブランドのライセンス商品の開発及び販売、ビデオゲーム会社と提携したMONSTERブランドを使用したビデオゲームの開発及び共同販売促進活動の実施など極めて多彩な内容である。こうした広告宣伝活動は、「MONSTER」の文字(特徴的な書体で表示したものを含む)、申立人図形商標と特徴的な書体で表示した「MONSTER」の文字と活字体で表示した「ENERGY」の文字からなるロゴマーク、「MONSTER ENERGY」の文字を使用して、本件商標の登録出願日前から継続的かつ頻繁に全国規模で実施されている(別紙3〜別紙7)。
また、申立人は、申立人商品の中心的需要者層である10代ないし30代の若い世代(特に男性)に人気が高いF1自動車レース、ドリフト、モトクロスなどのモータースポーツ、スノーボード、スケートボードなどのエクストリームスポーツの分野を中心にスポンサー活動を行い、また、全16の異なるウェブサイト及びソーシャルメディアのアカウント(別紙9)を開設して、こうした若い世代が多く利用するインターネットメディアによる大規模な情報発信を通じてMONSTERブランドを需要者に強くアピールするための効果的な広告を実施している。
(5)ライセンスによる申立人商標の使用
ア 申立人は、2002年から、MONSTERブランドマークを付した被服、スポーツ用具、ステッカー、転写シール、時計、自動車、テレビ、スピーカー、ヘッドフォン、ウェアラブルカメラ、ビデオゲーム機及びゲームソフトウェア、CDプレーヤー、録画済み又は録音済みのDVD及びCD等のライセンス商品の製造販売を第三者に使用許諾している。
当該ライセンス商品はライセンシー等を通じて大手ネットショッピングサイトでも販売されているほか、申立人がスポンサー参加するスポーツイベント等の会場で販売したり、イベント来場者に無料配布したり、申立人商品の販売キャンペーンの応募者・当選者に景品・商品として配布することもしている(甲47、甲48、甲58、甲92〜甲100、甲134、甲135、別紙7)。
イ MONSTERブランドの国内市場での人気、ブランド認知度の高まりに便乗して、申立人の商標権を侵害する様々な模倣品(帽子、衣類、手袋、バッグ、ステッカー、転写シール等)が海外で製造されており、税関で輸入が差し止められた事案が多数存在する(別紙8)。
(6)世界における商標出願及び登録
申立人は、MONSTERブランドマークについて、引用商標をはじめとして、様々な構成の商標について日本を含む世界150を超える国及び地域で商標出願し、登録を取得している(甲432〜甲443)。
(7)ブランド認知度及び市場占有率
ア 2012年8月1日の株式会社アスマーク運営のウェブサイト掲載の記事「エナジードリンクに関するアンケート調査」には、同社が2012年8月24日ないし26日にインターネットで実施したアンケート調査において、「各商品の認知度」の項目で同年5月発売の申立人商品の「モンスターエナジー」が第2位(34.1%)、同じく同年5月発売の申立人商品の「モンスターカオス」が第5位(13.9%)であったこと、また、「購入による飲用経験」の項目で「モンスターエナジー」が第2位(15.1%)、「モンスターカオス」が第4位(6.4%)であったことが記載されている(甲385)。
イ 2014年4月16日の株式会社翔泳社運営のウェブサイト「MarkeZine」掲載の記事「激化するエナジードリンク市場!認知度は『RedBull』8割超、国産『RAIZIN』は2割弱に【ジャストシステム調査】」には、国産・外国産問わず認知度が高い商品の項目で「RedBull」(82.8%)が1位、「MONSTERENERGY」(47.6%)が2位、「burn」(38.7%)が3位だったこと、エナジードリンクを飲んだ経験がない人が初めて飲むならどれがよいかの項目で「RedBull」(28.4%)が1位、「MONSTERENERGY」(8.3%)が2位、「コーワパワードコーヒー」(7.7%)が3位だったこと、年代別では、全世代1位の「RedBull」に次いで、「MONSTERENERGY」が10代、30代、40代で2位だったことが記載されている(甲319)。
ウ 2014年5月16日の株式会社フォーカスマーケティング運営のウェブサイト掲載の記事「エナジードリンク市場にフォーカスする」には、「エナジードリンクが好調です。富士経済(甲316)の調べでは2014年市場規模は500億円の見込としています。2005年にレッドブルが日本市場に参入してから9年間で大きな成長を遂げています。」と記載され、「2013年約950万ケース(30本換算)が出荷されている中で、首位のレッドブルは550万ケース、2位のモンスターエナジーは240万ケースということで、2ブランドで市場の80%以上を独占しているという状況です。(飲料総研しらべ)」と記載されている(甲317、甲318)。
エ 2014年5月の株式会社ジェイ・エム・アール生活総合研究所運営のウェブサイト「J−marketing.net」掲載の記事「エナジードリンク市場第二幕〜レッドブルを追撃する国内メーカー〜」には、2013年のエナジードリンクの国内市場シェアは、首位の「レッドブル(RedBull Gmbh/オーストリア)」が550万ケース、第2位の「モンスターエナジー(MonsterBeverage/アメリカ)」が240万ケースを占め、上位2ブランドで市場の80%超を占める寡占市場であることが記載されている(甲383)。
オ 2014年6月16日のダイジョブ・グローバルリクルーティング株式会社運営のウェブサイト「グローバル転職NAVI」掲載の記事「過熱するエナジードリンク業界で独走する海外メーカーその強さの秘密とは!?」には、「飲料総研の調査によると、2013年のエナジードリンクの出荷は約950万ケース)(1ケース30本換算)。なんとそのうち、首位の『レッドブル』は550万ケース、2位の『モンスターエナジー』は240万ケース。つまり、2大ブランドで市場の80%以上を独占しているのです。」と記載され、「『レッドブル』に迫る勢いの『モンスター』の成功にも新しい視点があります。それは、主力の『モンスター・エナジー』だけでなく、女性を意識した『モンスター・カオス』を投入した点です。『モンスター・カオス』はオレンジ色のデザインで果汁入り。ただの果汁ドリンクだけではなく、エネルギーも欲しい女性層にぴったりのものでした。『栄養を補給したいけど、サラリーマンのイメージが強い栄養ドリンクには抵抗がある』という働く女性層にターゲットを絞り、『女性用エナジードリンク』市場を作ったと言っても過言ではありません。」と記載されている(甲320)。
カ 2014年6月30日の株式会社富士経済(甲316)によるノンアルコール飲料の市場調査に関する記事「清涼飲料の国内市場を調査」には、「エナジードリンクは、エネルギー補給を訴求し、カフェインやアルギニンなどの成分を含有した炭酸飲料で、且つ1本当たり小売価格が150円以上の商品を対象とする。『レッドブルエナジードリンク』(レッドブル・ジャパン)がけん引し急拡大している。2012年に参入した『モンスターエナジー』(アサヒ飲料)も存在感を高めている。2014年は大手メーカーによる新規参入が相次いでおり、女性や中年層などこれまでとは異なる層をターゲットにした商品の投入もみられることから、ユーザーの広がりとともに、市場拡大が見込まれる。」と記載され、「エナジードリンクが若年層の需要を獲得し急成長したことで前年比6.0%増となった。2014年はエナジードリンクで新商品の投入が続いており、引き続き拡大が見込まれる。」と記載されている(甲314)。
キ 2014年7月の株式会社ジェイ・エム・アール生活総合研究所運営のウェブサイト掲載の記事「消費者調査No.196エナジードリンク(2014年7月版)レッドブルを追うモンスターエナジー。国内メーカーはどこまで迫れるか」には、「まず今回測定した7項目中、『認知者の今後の購入意向』以外の6項目で『レッドブル・エナジードリンク』(Red Bull GmbH/オーストリア・2005年より国内発売)がトップであった。また同じく6項目における2位は『モンスターエナジー』(Monster Beverage/アメリカ・2012年よりアサヒ飲料から発売)で、海外の2ブランドが上位を占めた。この2ブランドは市場の8割以上を占めているとされ、その強さを裏付ける結果となった。」と記載されている(甲311)。
ク 2014年8月5日のアイテイメディア株式会社運営のニュースサイト「ITmedia ビジネスオンライン」掲載の記事「本命『レッドブル』、では対抗は?〜競争激化、エナジードリンク夏の陣」には、2014年4月までにジャストシステムが実施したエナジーブランド認知度調査において、申立人商品「モンスターエナジー(販売:アサヒ飲料)」(47.6%)」が「レッドブル」(82.8%)に次ぐ第2位であったこと、また、2014年7月にメディア・シェイカーズM1・F1総研が実施したエナジードリンクブランド認知率調査において、申立人商品「モンスターエナジー/モンスターエナジーカオス」(66.8%)が「レッドブル」(95.8%)、「リゲイン」(80.5%)に次ぐ第3位であったことが記載されている(甲384)。
ケ これらの記事はいずれも、本件商標の登録出願日前に発行されたものである。これらの記事を総合すれば、本件商標の登録出願時及び登録査定時の国内エナジードリンク市場における申立人商品のブランド認知度は、首位のレッドブル(RedBull)に次ぐ第2位であり、両者が「二大ブランド」として認識されていたことが明らかである。
さらに、2013年の国内エナジードリンク市場出荷総数の約950万ケース(30本換算)のうち、レッドブル(RedBull)が550万ケース、申立人商品が240万ケースを占め、当該二大ブランドで市場の8割以上を独占していたことが明らかである。
したがって、本件商標の登緑出願日前の2013年の時点で申立人商品のエナジードリンク市場における占有率は既に25%を超えていたことが明らかである。
そして、上記市場調査以降も申立人商品は売上を伸ばしてレッドブルを猛追しており、消費者におけるブランド認知度はさらに上昇したといえる。例えば、2016年9月12日のLINE株式会社運営のウェブサイト「ライブドアニュース」掲載の記事には、「レッドブルの人気に陰り?」「レッドブルの売上は大きく変化はないが、モンスターの売上は伸びているそう」と記載されている(甲321)。
また、大手ネットショッピングモール「楽天市場」に出店するドラッグストア「爽快ドラッグ楽天支店」における2017年12月11日時点のエナジードリンクの売上ランキングでは、売上額の上位9位までの全商品中5つを申立人商品が独占した(甲322)。
これらの第三者による市場調査報告書やエナジードリンクの市場に関する記述によれば、2013年時点で申立人商品の国内市場占有率は既に25%を超えており、それ以降も着実に売上げを伸ばし、男子若年層を中心とした従来の主要需要者層に止まらず、女性層にも知名度、人気を拡大している。
(8)「MONSTER」、「モンスター」との表示で認識されていること
申立人商品は、実際の市場で「モンスター」と称され「MONSTER」、「モンスター」と表示され認識されている(甲10、甲16、甲17 ほか)。
(9)小括
以上の事柄に照らせば、申立人の使用に係る「MONSTER」及びその表音「モンスター」は、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、国内外の取引者、需要者の間で広く認識されていたことが明らかである。
2 商標法第4条第1項第15号該当性
(1)本件商標の構成文字「ネオンモンスターズ」及び「NEON MONSTERS」は、成語ではなく、熟語的観念を生じるものではない一方、「NEON」が英単語の「neon」、「MONSTERS」が英単語の「monster」の複数形に通じるものであり、その表音「ネオン」(甲446、甲447)及び「モンスター」(甲444、甲445)がともに外来語として一般に広く親しまれていることから、「NEON」と「MONSTER」の複数形「MONSTERS」の2語、並びにこれらの表音の「ネオン」と「モンスター」の複数形「モンスターズ」の2語を、それぞれ結合したものであると容易に認識、理解される。「ネオンモンスターズ」及び「NEON MONSTERS」は、「MONSTER」又はその表音「モンスター」の文字、「モンスター」の称呼、「モンスター」の観念を包含する点で、引用商標と一致し、引用商標と外観、称呼及び観念の印象が類似する。
また、「ネオンモンスターズ」及び「NEON MONSTERS」の文字は、申立人商品に使用されているすべての個別製品名と同一のネーミング規則、すなわち、「MONSTER(S)」又はその表音「モンスター(ズ)」と他の語を結合する方法によって構成されている。
したがって、本件商標は、申立人の使用に係る商標と類似性の程度が極めて高いことが明らかである。
(2)本件商標の指定商品(以下「本件指定商品」という。)は、引用商標4及び引用商標5の指定商品と同一又は類似のものである。
そして、本件指定商品は、申立人又はその商標ライセンシーが取り扱う各種ライセンス商品(テレビ、スピーカー、ヘッドフォン、ウェアラブルカメラ、ビデオゲーム機及びゲームソフトウェア、CDプレーヤー、録画済み又は録音済みのDVD及びCD等をはじめとする一般消費者向け商品と同一又は類似のものであり、また、これらと需要者を共通にする点で関連性が強いものである。
加えて、申立人は、申立人商品の広告活動において、人気ゲームソフトタイトルとコラボレーションした販売キャンペーンの実施、並びに、東京ゲームショウにおける公式ドリンクスポンサー、出展、サンプル配布等(別紙6)、さらには、eスポーツチームに対するスポンサー提供(別紙4)を長年にわたり継続的に行っており、申立人商品とビデオ・コンピュータゲームとの関連は密接である。本件指定商品は、コンピューゲーム及びテレビゲームのプログラムを包含するものである。本件指定商品の需要者は一般消費者であるから、その通常の需要者の注意力の程度はさほど高いものとはいえない。
(3)本件商標が本件指定商品に使用された場合、これに接した需要者は、申立人の使用に係る「MONSTER」及び申立人会社を直観し、当該商品が申立人あるいは申立人と経済的又は組織的関係を有する者の取り扱いに係るものであると誤信し、その出所について混同を生じるおそれがある。
また、本件商標の使用は、申立人の商品及び役務の出所識別標識として広く認識されている「MONSTER」の出所表示力を希釈化するものであり、また、その名声、顧客吸引力にフリーライドするものといわざるを得ない。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
3 商標法第4条第1項第7号該当性
本件商標が使用された場合、申立人商品及び役務の出所識別標識として広く認識されている「MONSTER」の出所表示力が希釈化するおそれが高いものであり、また、本件商標の使用は、申立人がこれらの商標について獲得した信用力、顧客吸引力にフリーライドするものといわざるを得ず、申立人に経済的及び精神的損害を与える。
したがって、本件商標は、社会一般道徳及び公正な取引秩序の維持を旨とする商標法の精神並びに国際信義に反するものであり、公の秩序を害するおそれがあるものといわざるを得ない。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。

第4 当審の判断
1 引用商標の周知著名性について
(1)申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、次のとおりである。
ア 申立人は、米国の飲料メーカーであって、我が国においてはアサヒ飲料社を通じて2012年5月にエナジードリンク「MONSTER ENERGY(モンスターエナジー) 缶355ml」(甲5、甲7、甲8、甲11、甲12、甲14、甲131、甲258、甲264、甲322)及び「MONSTER KHAOS(モンスターカオス) 缶355ml」(甲6、甲7、甲14、甲128、甲130、甲131、甲259、甲264)の販売を開始し、その後、2013年5月に「MONSTER ABSOLUTELY ZERO(モンスターアブソリュートリーゼロ) 缶355ml」(甲10、甲11、甲13、甲15、甲131、甲252〜255、甲260、甲264、甲322)、2014年8月に「MONSTER ENERGY M3(モンスターエナジーM3 ワンウェイびん150ml)」(甲59、甲61、甲127、甲129、甲131、甲261、甲264)、「MONSTER ENERGY M3(モンスターエナジーM3 缶160ml)」(甲361)、同年10月に「MONSTER COFFEE(モンスターコーヒー 缶250ml)」(甲60、甲62)、2015年7月に「MONSTER ENERGY ULTRA(モンスターウルトラ 缶355ml)」(甲101〜甲103、甲118、甲131、甲262、甲264)、2017年6月に「MONSTER ENERGY THE DOCTOR(モンスターロッシ 缶355ml)」(甲256、甲257、甲263、甲264)、同年12月に平野歩夢コラボ缶「MONSTER ENERGY(モンスターエナジー スペシャルデザイン 缶355ml)」及び「MONSTER ENERGY ULTRA(モンスターウルトラ スペシャルデザイン 缶355ml)」(甲291)、2018年4月に「MONSTER CUBA LIBRE(モンスターキューバリブレ 缶355ml)」(甲323〜甲326)、2019年4月に「MONSTER PIPELINE PUNCH(モンスターパイプラインパンチ 缶355ml)」(甲353、甲357〜甲360)(以下、これらの商品をまとめていう場合は、「申立人国内商品」という。)の販売を開始した。
イ 申立人国内商品の販売量は同年9月には累計100万箱を超え、12月には累計157万箱となった(甲7〜甲17、甲65〜甲67)。
ウ 申立人国内商品の容器の側面には、例えば、以下のような表示がある。
(ア)「MONSTER ENERGY(モンスターエナジー) 缶355ml」の容器には、爪図形の下に、「MONSTER」の文字(「O」の文字を貫く縦線が描かれている。以下同じ。)、その下に「ENERGY」の文字が表されている(甲14 ほか)。
(イ)発売当初の「MONSTER KHAOS(モンスターカオス) 缶355ml」の容器には、爪図形の下に「MONSTER」の文字、その下に「KHAOS」の文字、その下に「ENERGY」及び「+果汁」の文字が表されている(甲14 ほか)。
また、2016年にリニューアル発売された同商品の容器には、上部に「KHAOS」の文字、その下に爪図形を配し、その下に「MONSTER」の文字、その下に「ENERGY」の文字が表されている(甲130)。
(ウ)「モンスター アブソリュートリーゼロ 缶355ml」の容器には、爪図形の下に「MONSTER」の文字、その下に「ENERGY」の文字、その下に「ABSOLUTELY ZERO」の文字が表されている(甲13)。
(エ)「モンスターエナジーM3 ワンウェイびん150ml」の容器には、爪図形の右横上に数字「3」を、爪図形の下に「MONSTER」の文字、その下に「ENERGY」の文字、その下に「M−3 SUPER CONCENTRATE」の文字が表されている(甲59、甲61)。
(オ)「モンスターコーヒー 缶250ml」の容器には、爪図形の下に「COFFEE」の文字、その下に「MONSTER」の文字、その下に「COFFEE」、「+」及び「ENERGY」の文字が表されている(甲60、甲62)。
(カ)「モンスター ウルトラ 缶355ml」の容器には、爪図形の下に「MONSTER」の文字、その下に「ENERGY」の文字、その下に「ULTRA」の文字が表されている(甲101)。
(キ)「モンスターロッシ 缶355ml」の容器中央部には,「MONSTER」の文字,その下には「ENERGY」の文字,さらにその下には「THE DOCTOR」の文字が表されている(甲257)。
エ 申立人は、申立人国内商品に関する広告宣伝活動として、国際的に活躍する多数の有名アスリート・チーム及びイベントに対するスポンサー活動、ウェブサイト及びプレスリリースによる広告、申立人国内商品のサンプルの配布、大手コンビニエンスストアやイベント主催者と提携した大規模な販売キャンペーン(景品・賞品のプレゼントを含む)、スポーツイベント等の開催、契約アスリート等の動画・画像の公開、MONSTERブランドのライセンス商品の開発及び販売、ビデオゲーム会社と提携したMONSTERブランドを使用したビデオゲームの開発及び共同販売促進活動の実施などを行っている。
また、申立人は、申立人国内商品の中心的需要者層である10代ないし30代の若い世代(特に男性)に人気が高いF1自動車レース、ドリフト、モトクロスなどのモータースポーツ、スノーボード、スケートボードなどのエクストリームスポーツの分野を中心にスポンサー活動等を行っている(別紙3〜別紙7、別紙9)。
オ 申立人は、2002年から、MONSTERブランドマークを付した被服、スポーツ用具、ステッカー、転写シール、時計、自動車、テレビ、スピーカー、ヘッドフォン、ウェアラブルカメラ、ビデオゲーム機及びゲームソフトウェア、CDプレーヤー、録画済み又は録音済みのDVD及びCD等のライセンス商品の製造販売を第三者に使用許諾し、当該ライセンス商品はライセンシー等を通じて大手ネットショッピングサイトやスポーツイベント等の会場で販売やイベント来場者に無料配布等が行われている(甲47、甲48、甲58、甲92〜甲100、甲134、甲135、別紙7)。
カ 申立人は、引用商標をはじめとして、様々な構成の商標について日本を含む世界150を超える国及び地域で商標出願し、登録を取得している(甲432〜甲443)。
キ 市場調査報告書やエナジードリンクの市場に関する記述によると、2013年時点で申立人国内商品の国内市場占有率は既に25%を超えていることが確認できる(甲311、甲314、甲316〜甲320、甲383〜甲385 ほか)。
ク 申立人国内商品は、国内市場で「モンスター」と称され「MONSTER」及び「モンスター」と表示され認識されている(甲10、甲16、甲17 ほか)。
(2)上記(1)のとおり、申立人は、我が国において、2012年5月からエナジードリンク「MONSTER ENERGY 缶355ml」及び「MONSTER KHAOS 缶355ml」の販売を開始し、現在まで販売が継続されていること、様々な種類の申立人国内商品には、爪図形の下に「MONSTER」の文字等が使用されていること、各種のスポーツ競技会、イベント及びキャンペーンなどを通じ、申立人国内商品の広告宣伝を行っていたこと、2013年時点の申立人国内商品のエナジードリンクにおける国内市場占有率が25%を超えていることは確認できる。
しかしながら、申立人はテレビなどの一般的なメディアを通じた広告宣伝はそもそも行わない方針であり、その広告宣伝の多くは、主に比較的若い世代が集まるようなモータースポーツ、格闘技、音楽イベントやミュージシャンなどと関連したスポンサー活動やプロモーション活動であり、申立人国内商品の紹介に当たっても、10代や20代の需要者層における支持が言及されていることからすると、申立人国内商品の主要な需要者層や、広告などを通じて申立人国内商品を目にする需要者層の範囲も、自ずと若年層を中心であり、老若男女を問わず広い世代の者に対して,申立人国内商品の宣伝広告が行われたことが不明であること、申立人国内商品の宣伝広告の際、これを「モンスター」と称する場合や、「モンスターエナジー」と称する場合もあり、その宣伝広告の方法が一貫していないこと、我が国の清涼飲料全体における申立人国内商品の市場占有率は確認することができない。
そうすると、申立人国内商品は、本件商標の登録出願日の前までには、我が国のエナジードリンクの取引者や若い世代を中心とする需要者の間では、ある程度認知されていたということができるとしても,幅広い需要者層を有する清涼飲料の分野一般においては、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されるに至っていたとまでは認めることができない。
したがって、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において申立人又は申立人国内商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
なお、申立人が挙げる引用商標4及び引用商標5は、いずれもその指定商品中に「清涼飲料」は含まれていないため、これらの商標は、申立人の取扱い係るエナジードリンクに使用される商標ではない。
2 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)申立人は、引用商標との関係で、出所の混同を生ずるおそれがある旨主張していると認められるので、以下検討する。
ア 引用商標の周知著名性について
上記1のとおり、引用商標は、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において申立人又は申立人国内商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
イ 本件商標と引用商標の類似性の程度
(ア)本件商標
本件商標は、上記第1のとおり、「ネオンモンスターズ」の片仮名と「NEON MONSTERS」の欧文字を上下二段に書してなるところ、当該文字より生じる「ネオンモンスターズ」の称呼はよどみなく一連に称呼できるものである。
また、本件商標の構成中の「NEON(ネオン)」は、「希ガス元素の一種。元素記号Ne 原子番号10。原子量20.18。大気中にきわめて微量に存在。無臭・無色・無味の気体。放電管に封入すると美麗な赤色を呈する。ネオンランプ・広告用ネオン管などに利用。」(株式会社岩波書店 広辞苑第六版)を意味する語であるとしても、本件商標の指定商品との関係において商品の品質等を表示するものとして判断するべき特段の事情は見いだせない。
さらに、本件商標は、その構成中「モンスターズ」及び「MONSTERS」の文字部分が取引者、需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるとみるべき特段の事情は見いだせない。
加えて、「ネオンモンスターズ」の片仮名及び「NEON MONSTERS」の欧文字は、いずれも辞書等に載録されている等、特定の意味合いを有するものと看取されるとみるべき特段の事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、「ネオンモンスターズ」の称呼を生じるものであり、特定の観念は生じないものである。
(イ)引用商標
引用商標1及び引用商標6は、「MONSTER」の文字からなるところ、その構成文字に相応して「モンスター」の称呼及び「怪物、化け物」の観念を生じる。
引用商標2は、別掲1の構成からなるところ、爪の図柄と文字部分を分離し看取する場合もあると考えられることから、これより文字部分を捉えて、「モンスターエナジー」の称呼及び「怪物の力、化け物の力」の観念を生じる。
引用商標3及び引用商標5は、「MONSTER ENERGY」の文字よりなるところ、その構成文字に相応して「モンスターエナジー」の称呼及び「怪物の力、化け物の力」の観念を生じる。
引用商標4は、別掲2の構成からなるところ、爪の図柄と文字部分を分離し看取する場合もあると考えられることから、これより文字部分を捉えて、「モンスターエナジー」の称呼及び「怪物の力、化け物の力」の観念を生じる。
(ウ)本件商標と引用商標との類似性の程度
本件商標と引用商標1及び引用商標6とは、本件商標の構成中の「ネオン(NEON)」の文字及び語尾の「ズ(S)」の有無の差異から外観において相違し、称呼においては「ネオン」及び「ズ」の音の有無の差異を有し、観念においては、本件商標から特定の観念が生じないのに対して、引用商標1及び引用商標6は「怪物、化け物」の観念を生じるから、観念において相紛れるおそれはない。
本件商標と引用商標2とは、本件商標の構成中の「ネオン(NEON)」及び語尾「ズ(S)」と引用商標2の構成中の「ENERGY」の文字及び図形の有無の差異があることから外観において相違し、称呼においては「ネオン」及び「ズ」と「エナジー」の有無の差異を有し、本件商標から特定の観念が生じないのに対して、引用商標2は「怪物の力、化け物の力」の観念を生じるから、観念において相紛れるおそれはない。
本件商標と引用商標3及び引用商標5とは、本件商標の構成中の「ネオン(NEON)」及び語尾「ズ(S)」と引用商標3及び引用商標5の構成中の「ENERGY」の文字の有無の差異があることから外観において相違し、称呼においては「ネオン」及び「ズ」と「エナジー」の有無の差異を有し
、本件商標から特定の観念が生じないのに対して、引用商標3及び引用商標5は「怪物の力、化け物の力」の観念を生じるから、観念において相紛れるおそれはない。
本件商標と引用商標4とは、本件商標の構成中の「ネオン(NEON)」及び語尾「ズ(S)」と引用商標4の構成中の「ENERGY」の文字及び図形の有無の差異があることから外観において相違し、称呼においては「ネオン」及び「ズ」と「エナジー」の有無の差異を有し、本件商標から特定の観念が生じないのに対して、引用商標4は「怪物の力、化け物の力」の観念を生じるから、観念において相紛れるおそれはない。
そうすると、本件商標と引用商標とは、外観において相違することから判然と区別することができ、称呼においてはそれぞれの音の有無といった差異を有することから明瞭に聴別することができ、観念において相紛れるおそれはないものである。
したがって、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標であり、別異の商標というべきであるから、類似性の程度は低いというべきである。
ウ 本件商標の指定商品と申立人商品との関連性
本件商標の指定商品は、コンピュータプログラム、音楽ファイル及び画像ファイルであり、申立人国内商品である「エナジードリンク」とは、取扱い(提供)事業者、用途、目的、需要者等が明らかに異なるものであり、その関連性は低いというべきである。
エ 出所混同のおそれ
上記アのとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において申立人又は申立人国内商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないものであり、上記イのとおり、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標であり、別異の商標というべきであるから、類似性の程度は低いというべきでものであり、上記ウのとおり、本件商標の指定商品と申立人商品との関連性は低いというべきであるから、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品に使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起することはなく、その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他に、申立人のいずれの主張を検討しても、本件商標が引用商標と出所の混同を生ずるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
(2)小括
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標は、上記第1のとおり、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激又は他人に不快な印象を与えるような文字からなるものではない。
また、本件商標は、上記2のとおり、商標権者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることのないものである。
その他に、本件商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合等、本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標と認めるに足る具体的な証拠の提出はない。
そうすると、本件商標は、引用商標の出所表示力を希釈化するとか、その名声にフリーライドするなど不正の目的をもって使用するものとはいえず、また、他に商標権者が本件商標をその指定役務に使用することが社会一般の道徳に反し公正な取引秩序を乱す、あるいは国際信義に反するなど、公序良俗に反するものというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
4 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同項第15号のいずれにも違反して登録されたものではなく、他にその登録が同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
別掲1(引用商標2)


別掲2(引用商標4)(色彩は原本を参照されたい。)



(この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
異議決定日 2021-11-22 
出願番号 2019159010 
審決分類 T 1 651・ 22- Y (W09)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 榎本 政実
特許庁審判官 豊田 純一
小俣 克巳
登録日 2021-02-03 
登録番号 6348168 
権利者 株式会社セガ トイズ
商標の称呼 ネオンモンスターズ 
代理人 柳田 征史 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ