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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W25
管理番号 1381159 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2022-01-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-04-05 
確定日 2021-12-09 
異議申立件数
事件の表示 登録第6345763号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6345763号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6345763号商標(以下「本件商標」という。)は、「そばネット」の文字を標準文字で表してなり、令和2年2月10日に登録出願、第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,ティーシャツ,和服,ハッピ,エプロン,ショール,スカーフ,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,マフラー,防暑用ヘルメット,帽子」を指定商品として、同3年1月14日に登録査定され、同月27日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は、次のとおりである。
(1)商願2020−45415号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の態様 別掲1のとおり
指定役務 第35類及び第41類に属する願書に記載の役務
登録出願日 令和2年4月10日
(2)登録第6422194号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の態様 別掲2のとおり
指定役務 第35類及び第41類に属する商標登録原簿に記載の役務
登録出願日 令和2年4月10日
設定登録日 令和3年7月29日
(3)商願2020−40245号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の態様 そばづくりスト(標準文字)
指定役務 第35類及び第41類に属する願書に記載の役務
登録出願日 令和2年3月30日
(4)登録第6407395号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の態様 手打ちそば伝道師(標準文字)
指定役務 第35類及び第41類に属する商標登録原簿に記載の役務
登録出願日 令和2年7月17日
設定登録日 令和3年6月25日
(5)登録第6332391号商標(以下「引用商標5」という。)
商標の態様 そば打ち伝道師(標準文字)
指定商品及び指定役務 第25類及び第41類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務
登録出願日 令和2年2月10日
設定登録日 令和2年12月21日
(6)登録第6332392号商標(以下「引用商標6」という。)
商標の態様 そばづくりスト(標準文字)
指定商品及び指定役務 第25類及び第41類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務
登録出願日 令和2年2月10日
設定登録日 令和2年12月21日

なお、引用商標1ないし引用商標4の出願人又は商標権者は申立人であり、引用商標5及び引用商標6の商標権者は本件商標の商標権者(以下「商標権者」という。)である。また、引用商標1及び引用商標3に係る出願は現在審査に係属中であり、引用商標2及び引用商標4は登録異議の申立時においては審査に係属中であったが、その後設定登録されたものである。さらに、引用商標2及び引用商標4ないし引用商標6に係る商標権はいずれも現に有効に存続しているものである。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第7号、同項第8号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第22号証を提出した。
以下、証拠の表記に当たっては、「甲第○号証」を「甲○」のように省略して記載する。
(1)登録異議の申立ての理由の要約
本件商標は、商標権者が、申立人である特定非営利活動法人(以下「NPO法人」という。)そばネットジャパン(2020年4月にNPO法人そばネット埼玉から名称変更。)の活動を妨害する目的で、申立人が商標登録出願を予定していた「『NPOそばネットジャパン』、『そばネット』又は『そばネットのシンボルロゴ』」、「手打ちそば伝道師」、「そばづくりスト」の情報を聞きつけ、不正な目的で剽窃的及び先取り的に出願したものである。
すなわち、本件商標は、出願の経緯、目的に社会的相当性を著しく欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反し到底認容できない場合に当たるものとして、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものであり、さらに、同項第8号、同項第15号及び同項第19号にも該当するものである。
(2)本件商標の登録出願前の経緯
ア 商標権者と申立人及び申立人代表者理事等との関係
商標権者の周辺情報及び申立人等との関係については、申立人が2020年8月に提供した刊行物等提出書(甲1)の中で、ある程度詳細に述べているが、要約すると次のとおりである。
申立人は、そば打ち愛好団体で構成される連合体のNPO法人であるが、商標権者は、申立人の名称変更前である「NPO法人そばネット埼玉」が設立された2005年当時の設立発起人の一人であり、2016年に辞任するまで10年もの間、理事職を務めていた。また、申立人と密接な関係にある、そば打ち愛好団体「さいたま蕎麦打ち倶楽部」の会員でもあったが、本件商標の登録出願後の2020年3月に退会している。さらに、商標権者は、「そばネット雷門そば倶楽部」(設立当初は「雷門そば倶楽部」であったが、本件商標の登録出願後に現名称となった。)の会長・代表者であり、加えて、そば打ち愛好団体の連合体の中では国内最大規模である「一般社団法人全麺協」(以下「全麺協」という。)の専務理事兼事務局長(本件商標の登録出願当時は、理事兼事務局長)という立場でもある。
商標権者は、数年前より方針等の違いにより、申立人の代表理事、申立人役員及びさいたま蕎麦打ち倶楽部幹部等との間であつれきが高まり、申立人である「NPO法人そばネット埼玉」を2016年に、「さいたま蕎麦打ち倶楽部」を2020年3月にそれぞれ辞任退会している(甲1の別紙)。
イ 申立人が出願予定の商標を採択した理由
申立人は、2005年に「NPO法人そばネット埼玉」として設立し、2020年に設立15周年を迎えるにあたり、より一層の公益的価値を高めるための計画を理事会及び評議員会等で討議検討していた。
その成果の一つが、「NPO法人そばネット埼玉設立15年改革案について」(甲1の資料11、資料12)である。
この中には、「手打ちそば伝道師」(引用商標4)、「そば打ち伝道師」(引用商標5)の文言が確認できる。また、「そばづくりスト」(引用商標3)は、2019年12月27日開催の評議員会開催時に初めて公表されたものである(甲1の別紙、甲1の資料43、資料44)。その他、引用商標1、引用商標2となる申立人の名称変更に伴うシンボルロゴの選定も検討していた(なお、引用商標3の名称発案者は口頭審理に出席の用意がある。)。
ウ 申立人商標の登録出願決定と剽窃冒認出願
申立人は、「『NPOそばネットジャパン』、『そばネット』又は『そばネットのシンボルロゴ』」、「手打ちそば伝道師」、「そばづくりスト」(以下、これら3件をまとめて「申立人出願予定商標」という。)の商標登録出願を、2020年1月27日に開催された「第167回そばネット埼玉理事会」(以下「第167回理事会」という。)において議事として初めて取り上げ、正式に決定した(甲1の別紙、甲1の資料6〜資料8)。なお、商標登録出願は初の試みであったが、経費面から代理人への依頼はせず、また、具体的な標章態様も未決定な部分もあったため、決議後直ちに出願とは至らなかった。ところで、一般的に組織による商標登録出願を行うときは、まず、しかるべき会議等で出願の決議を諮り、その後詳細を詰めてから出願に至るのが通常である。その意味では合理的な期限内での出願といえる。
このような中、商標権者は、第167回理事会の内容を聞きつけ、「そばネット」など申立人出願予定商標を盗用し、剽窃的に先んじて出願したのである。これらの出願は、上述のアに述べた商標権者と申立人代表を含むその他幹部との遺恨の下に、申立人の公益活動を妨害する不正な目的で剽窃的に冒認出願したものである。さらに、本件商標は、商標権者が過去に申立人の理事職として長年在籍していた関係上、申立人の重要な商号として、本来信義則上の義務を負わなければならない立場であるにもかかわらず、自ら取得するに及んだということは、不正な利益を得ることを目的として、又は、他人に損害を加えることが目的であることは明白であり、不正競争の(不正な)意図で行われたもの以外の何物でもない。
(3)冒認(盗用)出願の根拠
ア 本件商標並びにこれと同日出願した引用商標5及び引用商標6の合計3件(以下、これらをまとめて「本件関連商標」という。)は、申立人の第167回理事会決議による申立人出願予定商標と同一又は類似と思われる商標であるが、商標権者が行ったこれら3件の商標登録出願が、申立人出願予定商標と全て社会通念上同一になるとは、たまたま偶然に一致した出願であったで通用することではなく、盗用したことは誰が見ても疑う余地も無く明々白々である。
イ 申立人の理事職であった一人は、「第167回理事会」当日の会議終了後に辞任し、現在は、商標権者が代表である「そばネット雷門そば倶楽部」の事務局長及び全麺協研修センター運営部長に就いている(甲1の別紙、甲1の資料4、資料10)。当該理事は、そばネット15年改革案にも当初より携わっていたが、申立人のあらゆる活動と計画は、逐一「さいたま蕎麦打ち倶楽部」の一部役員を通じて全麺協幹部に報告されていた(甲2、甲3)。一部役員と述べたのは、メールの送信先に同倶楽部の役員でありながらも申立人の代表及び代表に近しい幹部は除外されているからである。あたかも、グループアドレスを用いて全役員への送信のように装いつつ、役員グループアドレスから申立人関係者を除き、全麺協幹部(商標権者、全麺協副理事長)に配信するという、巧みな細工を施して発信していると推認できる。
ウ 商標権者は、辞書に掲載がない造語である本件関連商標を採択するに至るまでの説明及びそれに込める思いが何ら語られてない。商標権者が代表を務める「そばネット雷門そば倶楽部」のホームページを閲覧しても僅か9条からなる会則に突然出てくるのみである(甲1の別紙、甲1の資料9)。一方、申立人は、採択までの過程と確かな計画を企図しており(甲1の別紙)、使用においても申立人のパンフレット(甲1の資料45)の印刷準備を始め、2020年12月及び2021年1月開催の「そばづくりスト技能検定会」の実施等計画どおりに遂行されている(甲4)。両者を比較すれば、本件商標を含む申立人出願予定商標は申立人が熟考のうえ採択し、出願の準備を進めていたことは明白である。
エ その他として、後述する(5)エ(ア)商標権者の回答が挙げられる。
(4)全麺協理事長から個人会員宛の通知
2020年2月1日付けの「類似団体発足に伴う一般社団法人全麺協の対応について」と題する通知(甲5。申立人を「類似団体」と称し競合相手とみている。)の内容は全くの虚偽であり、事実は、そばネット埼玉代表及び全麺協東日本支部長としての申立人代表者の排除攻撃の開始(甲1の別紙、甲1の資料38〜資料41)である。また、全麺協は、申立人が2020年4月を目標に、より多様性・公益性を高めた「そばネット埼玉設立15年改革案」を計画していたことは、前出理事の他、関係同士より逐一報告されていたとおりであり、全て把握していたことは疑うべくもない(上述(3)イ)。
なお、同通知Q&Aの、全麺協と新団体(申立人)の両方に所属することは差し支えない、会費負担は二重になる旨の回答は、後に二転三転することとなる。
(5)本件商標の登録出願後(組織ぐるみの妨害行為)
ア 「さいたま蕎麦打ち倶楽部」の分裂
申立人は、全麺協との路線の違いや商標権者及び全麺協幹部からの圧力もあり、全麺協を2020年3月末日退会した(甲1の別紙)。この退会を境に、申立人設立母体の一つであり、車の両輪のごとく関係性を保っていた「さいたま蕎麦打ち倶楽部」は、申立人に継続加盟する意見(主に新都心道場)と、脱会を主張する意見(主に北本道場)とに分かれた。幾度かの話し合いを設けたが意思統一することがかなわず、2020年8月末日にて二分割することとなり、同倶楽部は自然消滅されることになった。二分されるにあたり話し合いの下、個人会員の新都心道場と北本道場間での移籍を認めることとし希望を募った結果、第167回理事会終了後に辞任した当時理事職であった1名のみが、新都心道場から北本道場に移籍した。付言するに、北本道場側には全麺協副理事長が顧問として在籍している。
イ 一転倶楽部の全麺協入会拒否
元「さいたま蕎麦打ち倶楽部」が、「さいたま蕎麦打ち倶楽部新都心」(以下「新都心」という。)と「さいたま蕎麦打ち倶楽部北本道場」(以下「北本道場」という。)に二分され、新都心会長が全麺協に退会届と新規加盟を申請したところ、全麺協専務理事兼事務局長の商標権者より新都心会長宛に、「退会は受理。」、「新規入会は全麺協と申立人の団体双方の所属は認めず、どちらかを選択せよ。」、「申立人の役員に就任している方は、全麺協の個人会員、各段位、役職を自主的に返上せよ。」との書面が届いた(甲6)。全麺協東日本支部個人会員宛の書面(甲5のQ&A)の内容とは甚だしく矛盾していた。
これに対し、新都心会長はかかる矛盾を指摘し、全麺協と申立人双方に加盟する方針である旨の内容で返答した(甲7)。この一転入会拒否の背景にある思惑は、申立人の中心的存在である新都心の入会を拒み、申立人を孤立させる意図があるからである。
ウ 全麺協理事長から新都心会長宛通知
令和2年10月2日付けの全麺協理事長から新都心会長宛の「さいたま蕎麦打ち倶楽部新都心道場(仮称)の一般社団法人全麺協正会員登録について」と題する通知(甲8)の骨子は、(ア)申立人は段位制度を模倣した、(イ)申立人の役員に新都心在籍のものが10数名就任しているが、その者は民法上の注意義務(善管注意義務)を科せられているので他の法人を利する行動は制限される、(ウ)申立人の役員が保有している全国審査員、地方審査員、指定指導員、主席指導員、支部公認指導員の役職、資格による活動の制限を科す、(エ)令和2年2月1日付けの「類似団体発足に伴う全麺協の対応について」(甲5)の文書で「全麺協と新団体の両方に所属することは差し支えない」とあったが、いずれか一方の法人に所属するよう決議がなされた、というものである。
このように、理不尽かつ一方的な主張で、申立人及び申立人と密接な関係にある新都心への妨害行為が顕著になってきた。加えて、全麺協に対する入会申請を拒否されているのは、新都心のみであり、北本道場側は何ら問題なく継続扱いとなっていることが後日判明した。これまでの相関図(甲9)を提出する。
エ 申立人による商標権者への取り下げ要求及び全麺協理事長への質問と回答
申立人は、令和2年10月16日付けで出願人(商標権者)に、本件関連商標に対し、商標法第4条第1項第7号その他の不登録条項に該当するとして情報提供をした旨と、取り下げ要求及び誠意ある回答が無い場合は申立人のホームページ上に公開する旨の通知をした(甲10)。併せて同日、全麺協理事長宛に商標権者による悪意による商標登録出願の事実の通知と質問を内容とする書面(甲11)を送付した。
(ア)商標権者の回答
商標権者の令和2年10月29日の回答(甲12)は、商標権者自らが申立人出願予定商標を全て盗用したと認めていると解釈でき、この回答により、公益法人である申立人の活動を妨害することが目的の、悪質かつ不正な出願であることが疑いようもない事実となった。
(イ)全麺協理事長からの回答
全麺協理事長からの回答(甲13)は、申立人からの質問(甲11)には一切答えてないのではなく、答えられないと解すべきである。一部答えているような文言とも受け取れるのは、あえてはぐらかしているものであり、国内最大規模であるそば打ち団体の理事長の返答書簡としては、誠意ある回答とはいい難い。また、その対応も理事長の立場とすれば、問題解決に向け話し合いの場を設ける等の行動を取ってしかるべきであるが、真逆の立ち位置である。これは商標権者と相補関係の故の回答であり、全麺協一部上層部の組織ぐるみの妨害行為と解するのが相当である。
オ 全麺協への入会許可
令和2年11月11日に、全麺協理事長より新都心会長宛に、新都心会員の入会許可通知を受領した。
しかし、その内容は、申立人に所属する役員は除くとなっていた。なお、新都心は新たに入会費と団体会員費を支払ったが、北本道場側は継続扱いのため支払いはない。
カ 商標権者から新都心会長へのメール
2020年11月17日付け、商標権者から新都心会長へのメールがあり、新入会の手続きが完了したとの通知を受けた(甲14)。その内容は正しく本人が専務理事を務める全麺協のみが唯一のそば打ち業界(そば打ちを趣味として集う団体、個人など)の連合体であればよく、他者を排除する宣言である。すなわち、申立人への賛同者、加盟会員が増すにつれその規模が拡大することをおそれ、その活動を不正に妨害する手段として本件商標登録出願に及んだことの証であり、申立人の公益活動を否定するものである。
キ 全麺協による申立人会員への不利益処分の通知とそれへの対応(疑義と提言、不正な商標登録出願についての声明)
令和2年11月18日付け「そば道段位認定制度と近似する制度を取り入れた『NPOそばネットジャパン』への対応について」と題する書面が、全麺協会員である270余の団体代表に送付された(甲15)。
その骨子は、全麺協及び申立人双方の団体に加盟することは差し支えないと回答(甲5)したことについては、申立人会員の入会は認めないこととしたこと、申立人の会員(団体及び個人)は全麺協の会員となることができない、などとする基本方針を、令和3年4月1日から施行するというものである。
申立人としては、これまで数々の誹謗中傷を受けたにもかかわらず、あえて争うことなく静観してきた。しかしながら、申立人の会員に対してまでも法令違反の蓋然性が高い内容で、公然と一方的に差別することを主張する全麺協に対しては、看過することはできないものの、当該通知に対して、当面静観して頂きたい旨の通知を、会員宛2020年12月4日付けで送付した(甲16)。
そのうえで、同日、全麺協理事長及び全麺協団体会員宛に、法令違反の示唆を含め「一般社団法人全麺協のNPOそばネットジャパン会員に対する対応についての疑義と提言」と題する書面、及び冒認出願の事実の公開として「NPOそばネットジャパンの活動を妨害する、不正な商標登録出願についての声明」と題する書面を、各々送付した(甲17、甲18(申立人ホームページ掲載中))。
そうしたところ、全麺協は、2020年12月10日付けで「NPOそばネットジャパンから当法人理事長及び会員に対する疑義、提言について」と題する通知を発した(甲19)。その内容は、(ア)当法人の会員資格喪失ということではない、(イ)個人会員、特別個人会員の資格を剥奪することはないと、またもや前言を翻す内容であった。
このように全麺協の声明・ポリシーに一貫性が無くその場を取り繕う玉虫色の主張を繰り返すばかりなのは、申立人に対する本件商標の登録出願をはじめとした不正な妨害行為を正当化するための自己弁護であると解せざるを得ない。
この通知に対して、申立人は、困惑している会員宛に、「NPOそばネットジャパン」の方針を丁寧に説明したうえで、当法人は常に開かれた法人であり、会員の自主的な活動を保証し、入退会も自由である旨の通知を発した(甲4)。
以上のように、出願後についても述べてきた理由は、商標権者及び全麺協という個人と組織による善意の第三者を巻き込んでの申立人排除の思惑があり、その思惑を達成する手段の一つとして本件商標の登録出願があったと解するのが相当であるとの観点からである。付言するに、全麺協が過去に行った商標登録出願件数は4件あるが、商標権者の出願内容とその区分及び指定商品は全て同一である。
(6)全麺協指摘が不条理であることの事実
ア 全麺協は、書面通知の中で、全麺協と申立人との役員兼職は忠実義務・善管注意義務に違反する等、利益相反的な指摘をしているが、双方の役員兼職は任意団体であった全麺協が2014年に一般社団法人全麺協に移行して以来のもので、なぜ6年も経過してからこのような主張をするのか理解し難く正当な理由もない。また、申立人は、公益法人としてNPO法にのっとった活動を行っているものであり、利益相反の指摘は、全く根拠がなく失当である。加えて、商標権者は2014年から2016年まで全麺協理事と申立人理事を兼職していたもので、過去の商標権者による申立人代表理事に対する勧告を含め、全麺協の主張は、合理性に著しく欠けるものである。
イ 全麺協は、申立人の設立を2020年4月1日と主張しているが、設立は2005年10月である。このことは、申立人のホームページからでも明らかである。当時の名称は「NPO法人そばネット埼玉」であったが、2020年4月に役員・会員も既存のまま現在の法人名に変更している。この事実は所轄官庁が認定していることであり、全麺協の指摘はその前提として誤りである。
ウ 申立人の「そばづくりスト技能検定制度」を全麺協段位制度の盗用であると主張しているが、申立人の検定制度は多彩な郷土そば打ち、さらしなそば打ち等を取り入れ、検定基準も独自のものである。なお、全麺協は「申立人のそば打ち基準は全麺協の主旨にあわない」と自らその相違について言及している事実がある(甲1の別紙、甲1の資料42)。
また、段位制度自体も日本では武道や趣味の世界を始め広く普及しているものであり、手打ちそばにあっても、全麺協や申立人以外にも独自の認定制度を設け活動している道場・教室は多く存在している。
このような不条理な指摘を基に申立人の会員及び関係者を欺く行為は、不正競争防止法第2条第1項第21号に該当する蓋然性が高いものといわざるを得ない。
仮に、本件商標の登録が維持されるようであれば、商標権者はその権利を濫用し、申立人及び申立人会員関係者の活動に対し、さらなる妨害行為に及ぶであろう。
(7)結び
ア 商標法第4条第1項第7号該当性
(ア)以上述べてきたように、商標権者は、過去のあつれきを根に持ち、また商標権者が属する全麺協が、そば打ち業界での唯一の盟主でありたいという独善的な考えの下、申立人の活動を妨害する目的をもって本件関連商標を登録出願したものとみるのが相当であり、本件商標は、出願の経緯、目的に社会的相当性を著しく欠き、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものであり到底認容できない場合に当たるものとして、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するといわざるを得ない。
(イ)本件商標は、単なる私的利害調整のみの問題でなく、申立人のNPO法人としての公益活動を妨害する目的であり、善意の第三者である申立人の会員をも巻き込み、多大な混迷をもたらし心労を被ることを余儀なくされていることは、特段の事情があるものといえる。また、商標権者は、本人が代表を務める「雷門そば倶楽部」という、申立人と類する役務を提供するそば打ち教室に、本件商標の登録出願後、申立人の名声にフリーライドすることを目的として「そばネット雷門そば倶楽部」に改称しているのである。
これらの行為は、公益性と公正な競業秩序を害するものであって、社会公共の利益に反するものであるとして、商標法第4条第1項第7号に該当するものである。
イ 商標法第4条第1項第8号該当性
(ア)本件商標は、申立人の前商号である「NPO法人そばネット埼玉」及び現商号「NPO法人そばネットジャパン」の商号の一部であり、ハウスマークや略称としても使用している「そばネット」と社会通念上同一であり、2005年にNPO法人として設立以来、一貫して使用してきた結果、申立人の商標として広く認知されるまでに至ったものである。ハウスマーク及び略称の使用例として、横断幕、ユニフォーム、修了証書などの使用写真又は写しを提出しているが、これらは申立人が活動する場において、常に使用しているものである(甲1の別紙、甲1の資料20、資料21、資料23〜資料26)。
(イ)また、2020年7月に、インターネット上で「そばネット」を検索すると、申立人の関係者のみヒットしたのは、申立人の商標として遅くとも、当該検索時には既に周知性著名性を獲得していることの現れともいえるものである(甲1の資料33)。
以上のことから、本件商標は、申立人の人格的利益侵害が高く、商標法第4条第1項第8号に該当するものである。
ウ 商標法第4条第1項第15号該当性
(ア)前述のイで述べたごとく、本件商標は、申立人の商号の一部であり、ハウスマーク及び略称として、2005年以来一貫して使用してきた結果、取引者、需要者の間で広く認知されるまでに至ったものであるが、周知性を証するその他の証として、申立人が全麺協の前身である「全国麺類文化地域間交流推進協議会」に入会後、僅か3年にして別格のA会員に推挙されたこと(甲1の別紙、甲1の資料29)、2008年創刊の「蕎麦春秋」(月刊リベラルタイム別冊)に「蕎麦打ち団体最大規模のNPOとまで称されるようになった」と評されていること、同誌において申立人の名称変更が2度に渡り取り上げられていること(甲1の別紙、甲1の資料30〜資料32)等が挙げられる。
(イ)本件商標の審査においても、申立人の前名称である「そばネット埼玉」が取引者、需要者間で広く認識されているとして、商標法第4条第1項第10号、同項第15号該当の拒絶理由が発せられている。この拒絶理由に対し商標権者は、意見書で反論することもなく、すんなりと認めていることから、反論の余地がなかったものと推定できる。
(ウ)申立人の規模も団体正会員数は8県47団体に上り、その活動の一つである段位認定検定制度で認定された会員の居住地も、1都1道9県とさらに拡大傾向にある(甲20)。この規模は、そば打ち業界最大規模の連合体である全麺協の1支部と同等の規模となっている。
(エ)申立人の商号である「NPO法人そばネット埼玉」又は「NPO法人そばネットジャパン」の構成において出所識別機能として強い印象を取引者、需要者に与えるのは、外観、称呼、観念とも本件商標と同一の「そばネット」の部分であるということができる。本件商標の指定商品は、第25類「洋服,ハッピ,エプロン,帽子」の他、商標登録原簿に記載のとおりの商品であるが、本件指定商品等に使用された場合、これに接した取引者、需要者は、申立人の使用に係る「そばネット」及び申立人とその活動を想起し、当該商品等が申立人又は申立人と経済的若しくは組織的関係を有する者の取扱いに係るものであると誤信し、その出所について誤認混同を生じるおそれが高いことは明らかである。さらに、上述したように、申立人及びその会員が活動するときは、常に「そばネット」の文字を施したジャンパーやポロシャツ等を着用しているが、このような行為は、スポーツや武芸を例に挙げるまでもなく、自己の名称や団体名称をウェア、ユニフォーム等に施して活動することは、社会一般的な実情である。
以上のことから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものである。
エ 商標法第4条第1項第19号該当性
(ア)本件商標は、審査の過程において、申立人の前商号の一部でありハウスマークや略称として本件商標の登録出願前より申立人が使用し、申立人の役務を表示するものとして需要者、取引者の間で広く認識されている「そばネット埼玉」と同一又は類似するものと認定されたものである。また、本件商標は、申立人が本件商標の登録出願日以前の理事会で商標登録出願する決議をした申立人出願予定商標の中の一つと同一の商標である。
(イ)商標権者は、申立人が設立された2005年の設立発起人であり、2016年に辞任するまで長らく理事職に就任していたことから、本件商標が申立人の重要な商号の一部であり、ハウスマークや略称として使用していることは、極々承知していたものである。そして、過去に理事であったという信義則上の義務を負う立場にあるべき商標権者が、本件商標を自ら出願し取得することは、申立人の当該事業の遂行を妨害することを目的としたことであり、その結果、公共的利益を損なうことになることを知りながら、「そばネット」の名称による利益の独占を図ることを意図したものであり、不正の目的をもって登録出願したものである。
(ウ)商標権者が専務理事を務める全麺協は、会報誌を発行しているが、本件関連商標を2020年2月10日に登録出願後、同年3月31日発行の会報誌9号コラム欄に「登録商標と全く同じものを他社がマネた場合は当然のこと、登録商標と似た商標を使用しても『商標権侵害』として、他社の使用を法的に禁止することができます。」との記事を掲載している(甲21)。全麺協会報誌にこのような内容の記事が掲載されたことは過去に例はないが、その真意は、申立人出願予定商標を剽窃的及び先取り的に出願した本件関連商標の登録後、申立人に、その登録に基づく権利を行使して活動を妨害する不正目的の布石と見ることができる。商標権者は、当時全麺協の理事兼事務局長という立場であり、会報誌にこのような掲載を意図的に掲載したことは容易に推認できる。
(エ)本件商標の登録出願時の指定商品・指定役務は、第25類のほか、第41類「そば打ちの教授,他」を指定していたが、審査で拒絶理由を発せられ、当該指定役務を削除補正したにもかかわらず、2021年4月1日現在、商標権者が代表を務める「そばネット雷門そば倶楽部」として、いまだに使用し続けている(甲22)。しかし、商標権者は、「雷門そば倶楽部」等、自己に関する出願はない。また、本件商標の指定商品に使用した場合も含め、「そばネット」は、申立人の役務の出所表示機能として広く認識されているものであり、その使用は出所識別力希釈化するものであり、さらに、その名声、信用等の吸引力にフリーライドするための出願といわざるを得ない。また、前述のウでも述べたが、申立人は、その活動時には常に「そばネット」を施したユニフォームを着用している。商標権者もかつては着用していた一人であるが、本件商標の登録が維持されたならば、当然のごとくその権利を主張し、申立人が使用する着衣にクレームをつける目的での不正な登録であることは容易に推定できる。
(オ)商標権者及び全麺協は、申立人以外にも、「さいたま蕎麦打ち倶楽部」の二分された一方である新都心のみへの不条理な対応を含め、申立人会員や関係者に影響を及ぼす数々の妨害行為を行っているが、その根底にあるものは、商標権者の申立人に対する遺恨と「ニッポンにそばの趣味の団体は二つもいらない。」(甲14)との利己的独善的な考えを明言してはばからないことである。それ故、申立人のみでなく、その会員をも巻き込んで、わい曲した主張による妨害行為で揺さぶりをかけ、その地位を脅かしているのである。このように不条理な主張を基に申立人及びその会員並びに関係者を欺く行為は、不正競争防止法第2条第1項第21号に該当する蓋然性が高いものといわざるを得ない。本件商標も、このような一連の妨害行為を講ずるために、日本の商標制度を悪用した不正な目的での登録出願であり、需要者の間に広く認識されている申立人のハウスマーク及び略称である「そばネット」と同一又は類似の商標であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものである。

4 当審の判断
申立人は、本件商標が商標法第4条第1項第7号、同項第8号、同項第15号及び同項第19号に該当するとして、上記2のとおりの引用商標を挙げているが、合議体は、同人の主張の全趣旨から、商標法第4条第1項第8号、同項第15号及び同項第19号についての主張は、「そばネット」、「そばネット埼玉」の文字が申立人の略称又は同人の業務に係る役務を表示するものとして周知、著名であることを前提に主張するものと認め、以下、検討する。
(1)「そばネット」、「そばネット埼玉」の周知、著名性について
ア 申立人提出の甲各号証、同人の主張及び職権調査(インターネット情報、新聞記事情報など)によれば、申立人は、「手打ちそばの愛好家及び団体間の交流・情報交換」などを事業とし、2005年(平成17年)に「特定非営利活動法人そばネット埼玉」として設立された法人であり、2020年(令和2年)4月に現名称「特定非営利活動法人そばネットジャパン」に名称変更したこと(甲1の資料3、資料17、資料31)、申立人は2006年(平成18年)以降、「全麺協素人そば打ち段位認定大会」、「手打ちそばアカデミーinさいたま」と称する講演会、「手打ちそば指導者養成道場」、「親子そば打ち体験教室」、「全日本創作そば料理コンテスト」や「そば打ち選手権大会」などを開催し、その会場のほとんどは埼玉県内であること(甲1の資料17〜資料22)、申立人は会員証、設立10周年記念誌などに「そばネット」の文字を表示し、また、上記の段位認定大会、講演会などでは横断幕などに「NPO法人そばネット埼玉」の文字を表示すると共に、スタッフが「そばネット」、「そばネット埼玉」の文字が表示されたジャンパーなどを着用していること(甲1の資料17、資料20〜資料26)、及び、申立人の会員数は2020年(令和2年)1月頃において、団体会員が46、個人会員が162、賛助会員が6であったこと(甲1の資料6)などが認められる。
イ しかしながら、申立人の事業活動は、埼玉県外の団体会員や同県外からのそば打ち大会への参加者が見受けられるものの(甲1の資料14、資料20、資料22)、そのほとんどが埼玉県内で開催されているなど、上記アのとおりの申立人の事業活動の地域・規模、会員数及び「そばネット」、「そばネット埼玉」の文字の使用の状況などを考慮すれば、「そばネット」、「そばネット埼玉」の文字(以下、両者をまとめて「申立人使用商標」という。)は、いずれも本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の略称(申立人の旧名称の略称を含む。)として著名なものと認めることはできず、また、同人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることもできない。
(2)商標法第4条第1項第8号該当性について
本件商標は、上記1のとおり、「そばネット」の文字を標準文字で表してなるものであるから、申立人の名称を含むものでないことは明らかである。
そして、上記(1)のとおり、「そばネット」の文字は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の略称として著名なものと認められないものであるから、本件商標は、申立人の著名な略称を含むものということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当するものといえない。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性について
上記(1)のとおり、申立人使用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、いずれも申立人の業務に係る役務を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認められないものである。
そうとすると、本件商標は、申立人使用商標と同一又は類似するとしても、商標権者がこれをその指定商品について使用するときは、取引者、需要者をして申立人使用商標を連想又は想起させることはなく、その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものといえない。
(4)商標法第4条第1項第19号該当性について
申立人使用商標は、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、いずれも申立人の業務に係る役務を表すものとして、我が国又は外国における需要者の間に広く認識されていたものとはいえないものである。
また、本件商標が、申立人使用商標にフリーライドする意図、他人に損害を与える目的その他不正の目的をもって使用をするものであると認めるに足る具体的事実を見いだすことはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものといえない。
(5)商標法第4条第1項第7号該当性について
ア 商標法第4条第1項第7号について
商標法第4条第1項第7号は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」は商標登録をすることができないとしているところ、商標法は、出願人からされた商標登録出願について、当該商標について特定の権利利益を有する者との関係ごとに、類型を分けて、商標登録を受けることができない要件を、同法第4条第1項各号で個別的具体的に定めているから、このことに照らすならば、当該出願が商標登録を受けるべきでない者からされたか否かについては、特段の事情がない限り、当該各号の該当性の有無によって判断されるべきであるといえる。
また、当該出願人が本来商標登録を受けるべき者であるか否かを判断するに際して、先願主義を採用している日本の商標法の制度趣旨や、国際調和や不正目的に基づく商標出願を排除する目的で設けられた同法第4条第1項第19号の趣旨に照らすならば、それらの趣旨から離れて、同法第4条第1項第7号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれ」を私的領域にまで拡大解釈することによって商標登録出願を排除することは、商標登録の適格性に関する予測可能性及び法的安定性を著しく損なうことになるので、特段の事情のある例外的な場合を除くほか、許されないというべきである。
そして、特段の事情があるか否かの判断に当たっても、出願人と、本来商標登録を受けるべきと主張する者との関係を検討して、例えば、本来商標登録を受けるべきであると主張する者が、自ら速やかに出願することが可能であったにもかかわらず、出願を怠っていたような場合や、契約等によって他者からの商標登録出願について適切な措置を採ることができたにもかかわらず、適切な措置を怠っていたような場合は、出願人と本来商標登録を受けるべきと主張する者との間の商標権の帰属等をめぐる問題は、あくまでも、当事者同士の私的な問題として解決すべきであるから、そのような場合にまで、「公の秩序や善良な風俗を害する」特段の事情がある例外的な場合と解するのは妥当でない(平成19年(行ケ)第10391号)。
イ 申立人の主張及び同人の提出に係る証拠によれば、以下のとおりである。
(ア)申立人は、「手打ちそばの愛好家及び団体間の交流・情報交換」などを事業とし、2005年(平成17年)に「特定非営利活動法人そばネット埼玉」として設立された法人であり、2020年(令和2年)4月に現名称「特定非営利活動法人そばネットジャパン」に名称変更した(甲1の資料3、資料17、資料31)。
また、申立人は、「そばネット」の文字を2005年(平成17年)の設立以来、使用してきた旨主張しているところ、2005年(平成17年)以降に、会員証、スタッフジャンパー等に当該文字を使用していることがうかがえ、さらに、「2009/5/1」の表示のある申立人のウェブサイトとされるもの、及び、2016年(平成28年)5月に編集後記が作成されている「NPO法人そばネット埼玉 設立10周年記念誌」の裏表紙に、「そばネット」の文字が表示されていることが認められる(甲1の資料14、資料17、資料21、資料26ほか)。
そして、2019年(令和元年)12月27日に開催されたとする申立人の評議員会及び2020年(令和2年)1月16日に開催された臨時総会において、「手打ちそば伝道師制度」の新規導入が提案されたこと、並びに、同年1月27日に開催された第167回理事会において、当該制度の愛称として「そばづくりスト」が決定されたこと(甲1の資料7、資料8、資料11、資料12、資料43)、「NPOそばネットジャパン」、「手打ちそば伝道師」及び「そばづくりスト」について、商標登録出願を進めることで承認されたこと(甲1の資料7、資料8)がうかがわれる。
(イ)商標権者は、申立人の設立時において理事であったが、2016年(平成28年)4月に辞任し(甲1の資料3)、「そばネット雷門そば倶楽部(設立時は「雷門そば倶楽部」であったとされる。)」の代表者であり、そば打ち愛好団体の連合体の中では国内最大級とされる全麺協の専務理事兼事務局長である(甲1の資料4、資料17ほか)。
また、2020年(令和2年)2月7日から施行する旨の記載がある「そばネット雷門そば倶楽部会則」の表題の書面(甲1の資料9)には、「(会員) 第6条 倶楽部の会員は次のとおりとする。」として、「(1)一般会員」のほか、「(2)そば打ち伝道師 そば等をこよなく愛し、そばに関する多種多様な知識を持ち、これらの情報交換等を積極的に行う者」、及び「(3)そばづくりスト 手打ちそばの技術等の習得を目指す者」の記載がある。
さらに、商標権者は、本件商標「そばネット」、引用商標5「そば打ち伝道師」及び引用商標6「そばづくりスト」を2020年(令和2年)2月10日に商標登録出願した。
(ウ)申立人の理事職であったA氏(以下、単に「A氏」という。)が、第167回理事会開催日(2020年(令和2年)1月27日)に申立人の理事を辞任し(甲1の資料10)、2020年(令和2年)5月31日の日付のある「そばネット雷門そば倶楽部」のウェブサイトにおいて、当該倶楽部の事務局であり、全麺協の研修センター運営部長であることが記載されている(甲1の資料4)。また、A氏は、2019年(令和元年)12月19日に、「さいたま蕎麦打ち倶楽部 さいたま蕎麦打ち倶楽部役員各位」に宛て、「NPOそばネット埼玉理事会の資料の送付」を件名とし、同月16日にそばネット埼玉の理事会で配付された資料を送付する旨のメールを送信したことがうかがわれるが、当該資料の提出はない(甲2)。
ウ 商標法第4条第1項第7号該当性
申立人は、本件商標は、商標権者が申立人の活動を妨害する目的で、申立人が商標登録出願を予定していた「『NPOそばネットジャパン』、『そばネット』又は『そばネットのシンボルロゴ』」、「手打ちそば伝道師」、「そばづくりスト」(申立人出願予定商標)の情報を聞きつけ、不正な目的で剽窃的及び先取り的に出願したものである旨主張している。
しかしながら、上記イによれば、商標権者が、A氏又は「さいたま蕎麦打ち倶楽部」の一部役員(以下、これらをまとめて「A氏ら」という。)から、申立人出願予定商標に関して何らかの情報を得ていたことを具体的に裏づける客観的な証拠はなく、A氏が申立人の第167回理事会の開催日(2020年(令和2年)1月27日)に辞任したこと、及び「さいたま蕎麦打ち倶楽部」のウェブサイトにおいて商標権者のウェブサイトへのリンクが張られていることなどと、本件商標の登録出願との関係は明らかとはいえず、また、A氏が2019年(令和元年)12月19日付けで送付したメール(甲2)に添付された資料の内容は明らかではなく、商標権者とA氏らが何らかの関係にあることはうかがえるとしても、商標権者が、A氏らから申立人出願予定商標の情報を得て、不正の目的をもって本件商標を登録出願したものとは認め難い。
また、申立人は、2005年(平成17年)の設立当時から「そばネット」の文字を使用している旨主張し、遅くとも2009年(平成21年)5月頃には「そばネット」の文字を使用していたことからすれば、申立人は、「そばネット」の文字を自ら商標登録出願する機会は十分にあったというべきであって、自ら商標登録出願しなかった責めを被請求人に求めるべき事情を見いだすこともできない。
以上からすると、本件商標について、商標法の先願登録主義を上回るような、その登録出願の経緯に著しく社会的相当性を欠くものがあるということはできないし、本件申立ては、商標権者と申立人の代表者の間で、申立人や関係する団体の活動内容等に関する意見の相違から、両者の関係する団体を巻き込んだ、商標権者と申立人の代表者間の商標権をめぐる問題とみるのが相当であり、本件商標の登録出願に係る問題は、あくまでも、当事者間の私的な問題として解決すべきであるから、公の秩序又は善良の風俗を害するというような事情があるということはできない。
そして、「そばネット」の文字からなる本件商標は、申立人の略称として著名なものと認めることができないことは上記(1)のとおりであり、また、商標権者が代表を務める団体が、申立人の名声にフリーライドすることを目的として、当該団体の名称を改称したことの裏付けとなる証拠も見いだせない。
さらに、本件商標は、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激又は他人に不快な印象を与えるような文字からなるものではなく、その構成自体がそのようなものではなくとも、それを指定商品について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するものともいえない。
加えて、本件商標は、他の法律によって、その商標の使用等が禁止されているものではないし、特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反するものでもない。
してみると、商標権者が、本件商標の登録出願をし、登録を受ける行為が「公の秩序や善良の風俗を害する」という公益に反する事情に該当するものということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
なお、申立人は、引用商標3の名称発案者は口頭審理に出席する用意がある旨述べるところがあるが、かかる名称の発案は上記判断を左右するものとは認められないから、口頭審理は行わないこととした。
(6)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号、同項第8号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。

別掲

別掲1(引用商標1:色彩については原本参照。)



別掲2(引用商標2:色彩については原本参照。)





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異議決定日 2021-11-30 
出願番号 2020014159 
審決分類 T 1 651・ 22- Y (W25)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 中束 としえ
特許庁審判官 小田 昌子
杉本 克治
登録日 2021-01-27 
登録番号 6345763 
権利者 藤間 英雄
商標の称呼 ソバネット 
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