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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W14
管理番号 1381142 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2022-01-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-11-20 
確定日 2021-09-17 
異議申立件数
事件の表示 登録第6288229号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6288229号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6288229号商標(以下「本件商標」という。)は、「Carovski」の欧文字を標準文字で表してなり、令和2年3月10日に登録出願、第14類「貴金属製バッジ,宝飾品製造用ビーズ,ブレスレット,ブローチ,チェーン(宝飾品),宝飾品用チャーム,キーホルダー用チャーム,宝飾品用留め具,イヤリング,帽子用宝飾品,ネックレス,真珠(宝飾品),宝飾品用化粧箱,指輪,時計鎖」を指定商品として、同年8月18日に登録査定、同年9月3日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が本件登録異議の申立てにおいて引用する商標は、以下の5件であり、いずれも、現に有効に存続しているものである(以下、これら5件の商標をまとめて「引用商標」という。)。
1 登録第892051号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:別掲1のとおり
登録出願日:昭和44年6月4日
設定登録日:昭和46年3月8日
書換登録日:平成14年2月13日
指定商品:第14類、第18類、第25類及び第26類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
最新更新登録日:令和2年9月24日
2 登録第1600026号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:別掲1のとおり
登録出願日:昭和55年11月17日
設定登録日:昭和58年7月28日
書換登録日:平成16年2月25日
指定商品:第20類及び第21類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
最新更新登録日:平成25年7月2日
3 登録第2289643号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の構成:別掲1のとおり
登録出願日:昭和63年5月27日
設定登録日:平成2年12月26日
書換登録日:平成14年2月13日
指定商品:第9類及び第14類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
最新更新登録日:令和2年7月1日
4 登録第5464427号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の構成:別掲2のとおり
登録出願日:平成22年12月9日
設定登録日:平成24年1月20日
指定商品:第3類、第9類、第11類、第14類、第16類、第18類、第21類、第25類及び第26類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
5 登録第2294319号商標(以下「引用商標5」という。)
商標の構成:別掲2のとおり
登録出願日:昭和63年8月4日
設定登録日:平成2年12月26日
書換登録日:平成14年6月26日
指定商品:第14類、第18類、第25類及び第26類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
最新更新登録日:令和2年7月1日

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第18号証を提出した。
1 理由の要点
(1)商標法第4条第1項第7号について
本件商標は、引用商標の著名性・周知性及び顧客吸引力に便乗して、不正の利益を得ようとの目的をもって出願及び登録したと考えられる。
したがって、本件商標の出願の経緯に社会的妥当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないため、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあるものである。
(2)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、申立人に係る引用商標と類似の商標である。また、本件商標の指定商品は、いずれも、引用商標の上述した商品と同一又は類似である。
(3)商標法第4条第1項第15号について
引用商標は、本件商標の出願及び登録査定の時点で需要者の間に広く認識されており、引用商標と類似性の程度が高い本件商標を使用すると、申立人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある。
(4)商標法第4条第1項第19号について
本件商標は、本件商標の出願及び登録査定時において日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されていた引用商標と類似であり、引用商標の著名性・周知性及び顧客吸引力に便乗して、不正の利益を得ようとの目的をもって使用をするものである。
2 具体的理由
(1)申立人の商標「スワロフスキー」及び「SWAROVSKI」の日本及び世界各国における著名性
申立人は、1895年にオーストリアのヴァッテンスにて設立された、125年以上の歴史を有する伝統ある企業である。当初は、小規模なクリスタル製造業者であったが、創業者ダニエル・スワロフスキーに由来する商標「SWAROVSKI」及び「スワロフスキー」の下で、クリスタル及びクリスタルを使用したファッション製品の製造販売を主な事業として発展を続け、今や全世界規模で活動する、ジュエリー及びアクセサリーのグローバル企業へと成長している(甲3、甲4)。
2019年度時点で、申立人の正規店舗は全世界で3,000店舗あり、そのうち1,500店舗が直営店であり、残り1,500店舗がパートナー事業者によって運営されている(甲5)。申立人の正規製品を扱う店舗は、正規店舗を含めて全世界で約11,000店舗あり、日本国内だけでも約210店舗ある。束京近郊だけでも、直営店は50店舗ある(甲6)。2019年度の収入は27億ユーロ(約3,400億円)であり、世界全体での従業員数は2万9,000人である(甲5)。日本においても相当数の店舗があるため、日本における収入及び従業員数も高いことが理解できる。
これらの事実から、本件商標の出願及び登録査定の時点で、申立人は、既に125年以上、商標「SWAROVSKI」又は「スワロフスキー」を日本を含む世界の極めて広範囲の地域において使用してきたこと、及び日本においても相当な営業規模を有していたことが確認できる。
本件商標の登録日までに出願された商標「SWAROVSKI」又は「スワロフスキー」と同一の商標を調べたところ、すべてが申立人が出願及び登録した商標であった(甲7)。インターネット検索サイト「Google」にて、本件商標の登録日までにおける同商標の検索結果を調べたところ、上位検索結果は全て申立人に言及するものであった(甲8、甲9)。
したがって、本件商標の出願及び登録査定の時点で、商標「SWAROVSKI」又は「スワロフスキー」と同一の商標は専ら申立人によって登録及び使用されていたことが理解できる。
本件申立人が申立人となった異議2013−900409の決定においては、引用商標(商標「SWAROVSKI」及び「スワロフスキー」)が、対象商標の出願(平成25年4月8日)及び登録査定時(同年7月16日)において、申立人の業務に係る商品を表示する商標として取引者、需要者の間に広く認識されていた旨の判断がなされている(甲10)。当該異議以降も、申立人は引用商標を使用し続けているため、当該判断は、本件商標の出願及び登録査定時においても当てはまる。
特許庁における審査においても、申立人以外が出願した「スワロフスキー」、「SWAROVSKI」、又は「スワロ」を含む商標に対する審査において、商標「SWAROVSKI」及び「スワロフスキー」が著名である旨の判断がなされている(甲11)。
また、引用商標5は、J−PlatPatにおいて、日本国周知・著名商標として登録されている(甲12)。
以上より、商標「SWAROVSKI」は日本国内及び外国において、商標「スワロフスキー」は日本国内において、申立人の商標として、本件商標の出願及び登録査定時において需要者の間に広く認識されていたことは明らかである。
(2)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、欧文字「Carovski」を標準的な書体で書した外観を有する。
引用商標1ないし3は、欧文字「SWAROVSKI」を標準的な書体で書した外観を有する。
本件商標と引用商標1ないし3は、「AROVSKI」の文字を共通に有する。すなわち、本件商標は、8文字中7文字が引用商標1ないし3と共通している。この共通文字を含む登録商標をJ−PlatPatで検索したところ、2021年1月26日時点で27の商標が存在するが、本件商標を除き、全てが申立人が有するものである(甲13)。このことから、「AROVSKI」の文字は、引用商標1ないし3の特徴的な部分であることが理解できる。このように、本件商標は全体の8文字中7文字が、引用商標1ないし3の特徴的な部分である「AROVSKI」と共通していることから、本件商標の外観の全体的印象と引用商標1ないし3のそれとは、互いに紛らわしいものである。
また、「AROVSKI」は引用商標1ないし3の特徴的な部分であり、かつ本件商標の指定商品は申立人の主な事業であるジュエリー及びアクセサリーの分野に属するため、「SWAROVSKI」に倣って、本件商標からは「カロフスキー」との称呼が生じるのが自然である。称呼「カロフスキー」は、引用商標の称呼「スワロフスキー」と、「ロフスキー」において、6音中5音が共通するため、本件商標の称呼の全体的印象と引用商標のそれとは、互いに紛らわしいものである。
したがって、本件商標は、外観について、引用商標1ないし3「SWAROVSKI」と類似し、称呼について、引用商標「SWAROVSKI」及び「スワロフスキー」と類似するから、本件商標は、引用商標と類似の商標である。
また、本件商標の指定商品はいずれも、引用商標の上述した商品と同一又は類似している。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第15号について
仮に本件商標が引用商標と類似でなく、商標法第4条第1項第11号に該当しないとしても、本件商標は、申立人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標である。
ア 本件商標と引用商標との類似性の程度について
本件商標の全体の8文字中7文字が、需要者の間に広く認識された申立人の商標「SWAROVSKI」の特徴的な部分「AROVSKI」と共通していることから、本件商標と引用商標「SWAROVSKI」との外観上の類似性の程度は高いと考える。
また、本件商標の称呼「カロフスキー」は、引用商標の称呼「スワロフスキー」と、「ロフスキー」において、6音中5音が共通するため、本件商標と引用商標との称呼上の類似性の程度も高いと考える。
このように、本件商標と引用商標との類似性の程度は高い。
イ 引用商標の周知性について
上述したように、本件商標の出願及び登録査定時において、引用商標は、需要者の間に広く認識されていた。
ウ 引用商標が造語よりなるものであるか、又は構成上顕著な特徴を有するものであるかについて
上述したように、引用商標は、申立人の創業者に由来するものであり、専ら申立人によって使用されているため、申立人に特有の顕著な特徴を有するものである。
エ 引用商標がハウスマークであるかについて
上述したように、引用商標は、申立人のハウスマークである。
オ 商品間の関連性及び需要者の共通性について
本件商標の指定商品は申立人の主な事業であるジュエリー及びアクセサリーの分野に属する。
したがって、本件商標の指定商品と、引用商標が広く認識されている商品は同一であり、それらの関連性は極めて高い。
また、本件商標の指定商品の需要者と、引用商標が広く認識されている商品の需要者とは共通する。
カ 取引の実情について
申立人はクリスタル製造業者として事業を開始し、クリスタルの製造販売を今日まで継続して行っている(甲14)。ファッションの業界においては、様々なブランドが申立人のクリスタルを使用して自身の製品を製造販売するということが盛んに行われている。例として、靴ブランド「プーマ」が申立人のクリスタルを使用したスニーカーを販売した事例(甲15)、ファッションブランド「カール ラガーフェルド」が申立人のクリスタルを使用したジュエリーを販売した事例(甲16)がある。
ここで、申立人とは何らの関係もない者が、申立人のクリスタルを使用した商品について、引用商標と類似性の程度の高い商標を使用した場合、その商品が、申立人自身のものであるか、又は申立人と経済的若しくは組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるといった混同が容易に生じてしまう。その商品が、申立人自身が主な事業として行っているジュエリー及びアクセサリーの分野の商品であれば、混同の危険性はさらに高まる。
キ 上記アないしカを考慮すると、申立人のハウスマークとして本件商標の指定商品の需要者によって広く認識されていた引用商標と類似性の程度の高い本件商標を、その指定商品に使用すると、需要者が、本件商標が申立人が有するブランドであり、当該商品の出所が申立人であると誤認するか、又は、当該商品が、申立人と経済的若しくは組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であると誤認して、商品の出所について混同するおそれがあることは明らかである。
実際に、本件商標権者は、Eコマースサイト「Amazon」において、YSULEという名称でオンラインショップを有しており(甲17)、本件商標を使用して、申立人のクリスタルを使用したとするピアスを販売している(甲18)。
同ウェブサイトでは、本件商標に加えて、商標「スワロフスキー」が多用されており、申立人自身もピアス(イヤリング)を販売している(甲4)。
よって、当該ウェブサイトを見た需要者が、本件商標が申立人の一ブランドであり、当該ピアスが申立人の商品であると誤認するか、又は、本件商標権者が申立人と経済的若しくは組織的に何らかの関係がある者であると誤認して、当該ピアスの出所について混同するおそれがある。
したがって、本件商標は、仮に商標法第4条第1項第11号に該当しない場合でも、申立人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標であり、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第7号について
商標審査基準によれば、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当する場合の一つとして、当該商標の出願の経緯に社会的相当性を欠くものがある等、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合が挙げられている。
上述したように、本件商標は、引用商標に類似するか、又は、少なくとも申立人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標である。
また、本件商標権者は、引用商標「スワロフスキー」を多用しつつ、引用商標「スワロフスキー」又は「SWAROVSKI」に類似の本件商標を使用している(甲18)。このことから、本件商標権者が、引用商標の著名性・周知性及び顧客吸引力に便乗して、不正の利益を得ようとの目的をもって出願及び登録したことは明らかである。
したがって、本件商標の出願の経緯に社会的妥当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないため、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあるものである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
(5)商標法第4条第1項第19号について
上述したように、引用商標は、本件商標の出願及び登録査定時において、日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されていた商標である。また、本件商標は引用商標と類似する商標である。
さらに、本件商標権者は、引用商標「スワロフスキー」を多用しつつ、引用商標「スワロフスキー」又は「SWAROVSKI」に類似の本件商標を使用している(甲18)。このことから、本件商標権者が、引用商標の著名性・周知性及び顧客吸引力に便乗して、不正の利益を得ようとの目的をもって出願及び登録したことは明らかである。
よって、本件商標は不正の目的をもって使用するものである。
したがって、本件商標は、仮に商標法第4条第1項第7号、同項第11号、又は同項第15号に該当しない場合でも、商標法第4条第1項第19号に該当する。
3 以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第11号、同項第15号、同項第19号のいずれかに該当し、商標登録を受けることができないものであるから、その登録は商標法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきである。

第4 当審の判断
1 引用商標の周知著名性について
(1)申立人の提出に係る甲各号証、職権による調査及び申立人の主張によれば、以下のとおりである。
ア 申立人は、1895年にオーストリアで設立された、125年以上の歴史を有する企業であり、創業者に由来する「SWAROVSKI」及び「スワロフスキー」の商標(引用商標)の下にクリスタル及びクリスタルを使用したファッションアクセサリーの製造販売を主な事業として発展し、今や全世界規模で活動するグローバル企業となっており、世界で約3,000店舗(直営店舗約1,500)を有している(甲3〜甲5)。
我が国においては、2008年には大規模な旗艦店を銀座にオープンし(職権調査)、東京都内の百貨店(甲6)等、全国で約210店舗において正規製品を取り扱っているとされる。
イ 2019年度の収入は、27億ユーロ(約3,400億円)であるとされる(甲5)。
ウ 「貴和製作所」のウェブサイトにおいて、申立人に係るクリスタルについて、「スワロフスキー・クリスタルとは」の見出しの下、「スワロフスキー・クリスタルは、スワロフスキー社が製造するクリスタルのプレミアム・ブランドです。」「スワロフスキーのクリスタルは、設立当初からファッション界に旋風を巻き起こし、一流メゾンとの事業を次々と展開しています。」のように説明されている(甲14)。
エ 「FASHION PRESS」のウェブサイトにおいて、「プーマ×スワロフスキー新スニーカー、クリスタル装飾のスウェードクラシック」の見出しの下、「プーマ(PUMA)とスワロフスキー(SWAROVSKI)によるコラボレーションスニーカーが登場。2018年12月13日(木)より、プーマ取り扱いの限定店舗などで販売される。」「シューズのサイドに配したプーマのラインには、煌びやかなスワロフスキーのクリスタルがぎっしり装飾されている。」との記載がある(甲15)。
オ 「FASHION PRESS」のウェブサイトにおいて、「カール ラガーフェルド初のファッションジュエリー・コレクションが誕生、スワロフスキーとタッグ」の見出しの下、「カール ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)は、スワロフスキー(SWAROVSKI)とタッグを組みブランド初となるレディースのファッションジュエリー・コレクションを発表。登場は2017年秋を予定している。」との記載がある(甲16)。
カ 申立人自身も、引用商標の下に、クリスタルを使用したネックレス、ブレスレット等のファッションアクセサリーや時計を製造販売していることがうかがえる(甲4)。
(2)上記(1)からすれば、引用商標は、長きにわたり申立人によって使用されており、本件商標の登録出願時には既に、申立人の業務に係るクリスタル及びクリスタルを使用したファッションアクセサリーを表示する商標として、我が国及び外国における取引者、需要者の間に広く認識されていたものというべきであり、その状態は本件商標の登録査定時においても継続していたものといえる。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
本件商標は、「Carovski」の文字を標準文字で表したものであるところ、当該文字は、辞書等に載録されている語ではなく、また、特定の意味合いを有するものとして認識されているというような事情も見いだせないものであるから、一種の造語として認識されるものである。
そして、通常、造語からなる商標については、我が国において広く親しまれている英語読み風又はローマ字読み風に称呼されることが一般的である。
そうすると、本件商標は、その構成文字に相応して「カロフスキー」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
(2)引用商標について
引用商標1ないし引用商標3は、「SWAROVSKI」の欧文字よりなり、引用商標4及び引用商標5は、「スワロフスキー」の片仮名よりなるところ、引用商標は、上記1のとおり、申立人の業務に係るクリスタル及びクリスタルを使用したファッションアクセサリーを表示する商標として、我が国及び外国における取引者、需要者の間に広く認識されていたものである。
そうすると、引用商標は、いずれも、その構成文字に相応して、「スワロフスキー」の称呼を生じ、「申立人に係るクリスタル及びクリスタルを使用したファッションアクセサリーのブランド」の観念を生じるものである。
(3)本件商標と引用商標との類否について
本件商標と引用商標との類否について検討するに、両商標はそれぞれ上記(1)及び(2)のとおりの構成よりなるところ、本件商標は、8文字の欧文字を、先頭の「C」を大文字、それ以外を小文字で表してなるのに対し、引用商標1ないし引用商標3は、9文字の欧文字を全て大文字で表してなるものであり、引用商標4及び引用商標5は、片仮名で表してなるものである。
そして、本件商標中の「arovski」と、引用商標1ないし引用商標3中の「AROVSKI」の文字が、そのつづりを同じくするとしても、語頭における「C」の文字と「SW」の文字の相違により、外観における印象が明らかに異なるものであるから、構成文字数が異なることもあいまって、本件商標と引用商標1ないし引用商標3は、外観において、判然と区別し得るものである。
また、引用商標4及び引用商標5は「スワロフスキー」の片仮名で表されているものであるから、「Carovski」の欧文字で表された本件商標とは、外観において明らかに異なるものである。
そうすると、本件商標と引用商標は、外観において、相紛れるおそれはないというのが相当である。
次に、称呼についてみるに、本件商標から生じる「カロフスキー」の称呼と引用商標から生じる「スワロフスキー」の称呼とは、「ロフスキー」の音を同じくするとしても、構成音数が異なることに加え、称呼の識別上、重要な要素である語頭において、「カ」の音と「スワ」の音の顕著な差異を有するものであるから、称呼において、明瞭に聴別し得るものである。
さらに、本件商標は、特定の観念を生じないものであるから、「申立人に係るクリスタル及びクリスタルを使用したファッションアクセサリーのブランド」の観念を生じる引用商標とは、観念において相紛れるおそれはない。
してみれば、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても、相紛れるおそれのない別異の商標というべきである。
その他、本件商標と引用商標が類似するというべき事情は見いだせない。
(4)小括
以上のとおり、本件商標と引用商標は非類似の商標であるから、本件商標の指定商品が引用商標の指定商品と同一又は類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用商標の周知著名性について
引用商標は、上記1のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国又は外国の需要者の間に広く認識されていたといえるものである。
(2)本件商標と引用商標との類似性の程度について
本件商標と引用商標は、上記2(3)のとおり、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても、相紛れるおそれのない別異の商標というべきであるから、両商標の類似性の程度は高いとはいえないものである。
(3)商品・役務の関連性及び需要者の共通性について
申立人が引用商標を使用する商品「クリスタル及びクリスタルを使用したファッションアクセサリー」は、本件商標の指定商品と同一又は類似するものといえるから、商品の関連性を有し、需要者を共通にするものである。
(4)小括
上記(1)ないし(3)を総合的に判断すれば、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国又は外国の需要者の間に広く認識されていたといえるものであり、本件商標の指定商品と引用商標に係る商品が関連性を有し、需要者を共通にするものであるとしても、本件商標は、何より引用商標とは、上記(2)のとおり、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても、相紛れるおそれのない別異の商標というべきものである。
そうすると、本件商標権者が、本件商標をその指定商品について使用しても、取引者、需要者が、申立人若しくは引用商標を連想又は想起することはなく、その商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第19号該当性について
本号は、「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であつて、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもつて使用をするもの(前各号に掲げるものを除く。)」と規定されている。
本件商標と引用商標とは、上記2のとおり、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても、相紛れるおそれのない別異の商標というべきものであって、非類似の商標である。
また、申立人は、本件商標権者の使用状況(甲18)を挙げ、本件商標権者が、引用商標の著名性・周知性及び顧客吸引力に便乗して、不正の利益を得ようとの目的をもって出願及び登録した旨主張しているが、申立人が提出した証拠からは、本件商標権者が、不正の利益を得る目的、他人(申立人)に損害を加える目的、その他の不正の目的をもって本件商標を出願し、登録を受けたと認めるに足りる具体的事実を見いだすこともできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
5 商標法第4条第1項第7号該当性について
申立人は、本件商標権者の使用状況(甲18)を挙げ、本件商標権者が、引用商標の著名性・周知性及び顧客吸引力に便乗して、不正の利益を得ようとの目的をもって出願及び登録した旨主張しているが、申立人が提出した証拠からは、本件商標権者が、不正の利益を得る目的、他人(申立人)に損害を加える目的、その他の不正の目的をもって本件商標を出願し、登録を受けたと認めるに足りる具体的事実を見いだすこともできないし、本件商標の登録出願の経緯に著しく社会的相当性を欠く等の事情も見いだせない。
また、本件商標は、他の法律によりその使用等が禁止されているものではなく、その構成自体が、非道徳的、きょう激、卑わい、差別的又は他人に不快な印象を与えるようなものではない。
その他、本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標であると認めるに足りる証拠の提出もない。
してみると、本件商標は、その登録を維持することが商標法の予定する秩序に反し、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標」に該当するということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
6 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも該当するものではなく、その登録は、同項の規定に違反してされたものとはいえないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。

別掲
別掲1(引用商標1ないし引用商標3)


別掲2(引用商標4及び引用商標5)



(この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
異議決定日 2021-09-06 
出願番号 2020025889 
審決分類 T 1 651・ 22- Y (W14)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 中束 としえ
特許庁審判官 冨澤 美加
馬場 秀敏
登録日 2020-09-03 
登録番号 6288229 
権利者 深▲せん▼市元速楽科技有限公司
商標の称呼 カロブスキー 
代理人 行田 朋弘 
代理人 小暮 理恵子 

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