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審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない W09
管理番号 1381021 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2022-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-06-22 
確定日 2021-12-10 
事件の表示 商願2018−153995拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 第1 本願商標及び手続の経緯
本願商標は、「ビジョンセラピー」の文字を標準文字で表してなり、第9類「眼鏡,眼鏡レンズ,眼鏡の部品及び附属品」を指定商品として、平成30年12月17日に登録出願されたものである。
なお、本願は、令和元年10月15日付けで拒絶理由の通知がされ、同年11月22日付けの意見書(以下「意見書」という。)及び同月25日付け手続補足書にて、主張を立証するための資料1ないし資料12が提出されたが、同2年3月19日付けで拒絶査定がされたものである。
これに対して令和2年6月22日に拒絶査定を不服とする審判の請求がされたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、『ビジョンセラピー』の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中の『ビジョン』の文字は、『視覚。』等の意味を、『セラピー』の文字は、『治療。療法。』の意味をそれぞれ表す語(いずれも、株式会社岩波書店 広辞苑第六版)である。そして、別掲1に示すインターネット情報によると、本願の指定商品を取り扱う業界において、学習障害や注意欠陥・多動障害等の発達障害、両眼の眼球運動・視覚認知不良等に有効な視覚機能訓練のことを『ビジョンセラピー』と称している実情があることが認められ、その訓練には、『ビジョンセラピー』用の眼鏡やレンズが用いられていることもうかがえる。そうすると、本願商標をその指定商品中の『ビジョンセラピー用の眼鏡,ビジョンセラピー用の眼鏡レンズ,ビジョンセラピー用の眼鏡の部品及び附属品』に使用した場合、これに接する取引者・需要者は、単に、商品の品質を表示したものとして認識するにすぎないものというのが相当である。したがって、本願商標は、その指定商品中の前記商品に使用するときには、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるので、同法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

第3 当審における証拠調べ通知
当審において、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かについて、職権による証拠調べをした結果、別掲2の事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、その結果を請求人に通知し(令和3年1月21日付け証拠調べ通知書)、相当の期間を指定して意見を述べる機会を与えた。

第4 証拠調べ通知に対する請求人の意見
請求人は、上記第3の証拠調べ通知に対して、令和3年3月5日付けの意見書(以下「当審意見書」という。)において、要旨以下のとおり意見を述べた。
1 「ビジョンセラピー」又は「ビジョン・セラピー」の文字が、「眼の機能を改善・向上するための訓練」といった意味合いで用いられている事例
(1)総括的意見
示された事例は、各証拠の使用者が独自に「ビジョンセラピー」又は「ビジョン・セラピー」の定義について解釈し、様々な意味に用いている事実が確認できる。当該語の共通の定義は無く、使用者がそれぞれ独自に定義した漠然とした意味に用いられている。定義に共通性がないため、具体的にどういった機能を改善するのか、何の改善を目的とした訓練なのかを一義的に認識することはできない。
また、「ビジョンセラピー」又は「ビジョン・セラピー」は極めて広範で漠然とした意味に用いられているため、本願商標に接する需要者、取引者は、本願の指定商品である「眼鏡」等が「眼の機能を改善・向上するための訓練」に用いられるのか否かや、どのような用途・機能を有する商品であるかについて特定することができない。本願は指定商品との関係においては、具体的に商品の品質を具体的・直接的に示すものではないため、需要者に品質を看取させることにはならない。
また、本願の指定商品は「眼鏡」等であり、その目的、用途は言うまでもなく「視力の矯正」である。極めて広く一般的に用いられる商品であるため、何人もその目的、用途が視力の矯正であり、それ以外の用途が無いことは当然に理解している。本願の指定商品との関係において、需要者は視力の矯正具であることを一義的に理解しているため、「眼の機能を改善・向上するための訓練」の意味に使用されている場合も目の機能の訓練に関する商品や訓練用具であると誤認すること、訓練用具を想起することはあり得ない。
加えて、「眼の機能を改善・向上するための訓練」の意味に使用する者が僅かにいる場合も、視覚の訓練に眼鏡等の器具が用いることは一般的に行われているものではなく、一般的には、自身の体や絵・文字等が記載された紙や画面等を用いるのが通常であるので、この点からも本願商標に接する需要者が目の機能の訓練に関する商品や訓練用具であると誤認すること、訓練用具を想起することはあり得ない。
以上より、本願商標は指定商品との関係で間接的かつ暗示的な意味を理解させるにとどまり、自他商品の識別標識として機能し得るものと考える。
(2)各証拠の分析結果
ア 別掲2の1の(1)の証拠について
「ビジョン・セラピー[vision therapy]」の見出しの下に「発達障害を持つ子供に行う視覚機能訓練.視力回復ではなく,学習や運動に必要になる基礎的な視力の向上を目的とする.」の記載があるとのことであるが、「眼の機能を改善・向上するための訓練」には「発達障害を持つ子供」以外のスポーツ選手を対象に行うものもあるので、訓練対象者は極めて広範で不明確である。
また、「視覚機能訓練」が視覚のいかなる機能を訓練するかも不明である。
よって、本願商標は指定商品との関係で具体的な品質や機能が特定できるものではない。
イ 別掲2の1の(2)の証拠について
「発達に偏りを持つお子さんや両眼がうまく機能しないために仕事やスポーツに問題が生じる方を対象に視覚機能訓練を行います。」とあるが、「視覚機能」が具体的に何を意味するかは不明であり、また、視覚以外の向上を意味するものとして使用されている事例も多数あり、視力以外にも思考や知能との関係まで掘り下げるプロセスまでも含む意味であることが示されている。また、学力向上のトレーニングにも用いられていることが示されている。「ビジョンセラピー」の語の意味は視覚機能以外の改善の意味も含む極めて広範かつ漠然としたものであるため、本願商標は指定商品との関係で具体的な品質や機能が特定できるものではない。
ウ 別掲2の1の(3)の証拠について
「ビジョン・セラピーでは、LD(学習障害)やADHDのお子さんを中心として、発達に偏りを持つ3歳から中学生までのお子さんを対象に、『両眼をすばやく滑らかに動かす』『両眼を使ってしっかり物を見る』『近くのものや遠くのものにすばやくしっかり焦点を合わせる』『形をしっかり捉え構成する』といった、学習や運動を行う上で基礎になる眼の能力を高める訓練を行っています。」との記載があるが、「ビジョンセラピー」の語の意味は「眼の機能を改善・向上するための訓練」以外の改善の意味も含む極めて広範かつ漠然とした意味としても用いられており、本願商標は指定商品との関係で具体的な品質や機能が特定できるものではない。
エ 別掲2の1の(4)の証拠について
「遠方視力だけではなく、両眼視機能、眼球運動に続き、視知覚の発達までを包括的に把握するトータルビジョンケアや、目まぐるしくかわる視覚情報を瞬時に取り入れ、さらに次の動きに連動して対応するダイナミックビジョンという考えがそのベースにあります。」との記載から視覚機能以外の知覚の発達までも含む広範な意味として使用されている事実が確認できる。
また、「子供たちの場合は、学習のつまずきの要因となる眼球運動や視覚認知不良、さらに目と手の協調運動の苦手なお子さんに対して、ビジョンセラピーが有効だといわれております。」との記載から、単に視覚のみではなく、「目と手の協調運動」の訓練までも含む意味として用いられていることが確認できる。「ビジョンセラピー」の語が極めて広範かつ漠然とした意味としても用いられている事実が確認できる。
よって、本願商標は指定商品との関係で具体的な品質や機能が特定できるものではない。
オ 別掲2の1の(5)の証拠について
「発達障害のお子さんへの視機能評価および指導(対象:小学6年生まで)」との記載から、「眼の機能を改善・向上するための訓練」以外に「視機能評価および指導」も含む広範な意味として使用されている事実が確認できる。「ビジョンセラピー」の語が極めて広範かつ漠然とした意味としても用いられている事実が確認できるので、本願商標は指定商品との関係で具体的な品質や機能が特定できるものではない。
カ 別掲2の1の(6)の証拠について
「日本ではほとんど普及していないビジョンセラピーの話。両眼視機能や調節機能などを、どのような訓練で改善していくかの話を聞いてきました。」の記載から「ビジョンセラピー」が日本国内でほぼ認知されていない事実を示している。
また、「両眼視機能や調節機能」が目的として挙げられているが、「眼の機能を改善・向上するための訓練」以外も含む多様な意味として用いられている事実がある。
よって、本願商標は指定商品との関係で具体的な品質や機能が特定できるものではない。
キ 別掲2の1の(7)の証拠について
「単に視力だけでなく、目と思考や知能との関係まで掘り下げ、ビジョン全般のプロセスに取り組みます。これが『ビジョンセラピー』(Vision Therapy)あるいは『ビジョントレーニング』(Vision Training)と呼ばれる手法です。」との記載から、視覚以外にも思考や知能との関係まで掘り下げるプロセスまでも含む意味として用いられていることが示されている。「ビジョンセラピー」の語が極めて広範かつ漠然とした意味としても用いられている事実が確認できる。
よって、本願商標は指定商品との関係で具体的な品質や機能が特定できるものではない。
ク 別掲2の1の(8)の証拠について
「ビジョンセラピーとも呼ばれるほどケアの意味合いも高く、学力向上や発達障がいの子供たちのトレーニングとしても活用されています。」との記載から「眼の機能を改善・向上するための訓練」以外にも学力向上のトレーニングにも用いられていることが示されている。「ビジョンセラピー」の語が極めて広範かつ漠然とした意味としても用いられている事実が確認できる。
よって、本願商標は指定商品との関係で具体的な品質や機能が特定できるものではない。
ケ 別掲2の1の(9)の証拠について
「両目を効率よく使って見るためのビジョントレーニング(ビジョンセラピー)」との記載があるが、「眼の機能を改善・向上するための訓練」以外にも多様な意味として用いられている。
よって、本願商標は指定商品との関係で具体的な品質や機能が特定できるものではない。
コ 別掲2の1の(10)の証拠について
「視機能を向上させるためのプログラムのひとつで、眼や脳の理学療法というイメージ。身体の筋肉を治療するのではなく、眼と脳の連絡回路をスムーズにしたり、眼の動きをスムーズにして見え方を改善する治療法である。」との記載から「眼と脳の連絡回路をスムーズ」にする訓練も含む意味として用いられていることが確認できる。「ビジョンセラピー」の語が極めて広範かつ漠然とした意味としても用いられている事実が確認できる。
よって、本願商標は指定商品との関係で具体的な品質や機能が特定できるものではない。
サ 別掲2の1の(11)の証拠について
「ビジョンセラピーといった目の機能不全が関与した弊害を軽減するためのトレーニング」との記載から「目の機能不全が関与した弊害」の全般の軽減が目的であることが確認できる。「ビジョンセラピー」の語が極めて広範かつ漠然とした意味としても用いられている事実が確認できる。
よって、本願商標は指定商品との関係で具体的な品質や機能が特定できるものではない。
シ 別掲2の1の(12)の証拠について
「文章を逆から見てしまう、文章を1・2段飛ばして読んでしまう等々、ビジョンに問題のある子どもたちが多数いることが分かりました。」との記載から「文章を逆から見る」ことの改善、「文章を1・2段飛ばして読んでしまう」ことの改善の意味として用いられていることが確認できる。「ビジョンセラピー」の語が極めて広範かつ漠然とした意味としても用いられている事実が確認できる。
よって、本願商標は指定商品との関係で具体的な品質や機能が特定できるものではない。
ス 別掲2の1の(13)の証拠について
「眼の力を高めるトレーニング」との記載があるが、「眼の機能を改善・向上するための訓練」以外も含む多様な意味として用いられている事実がある。
よって、本願商標は具体的な品質や機能が特定できるものではない。
セ 別掲2の1の(14)の証拠について
「検診の結果、改善策の一つとしてビジョンセラピーがあります。視覚機能に関して気にかかることがありましたら、ご相談ください。」との記載があるが、「眼の機能を改善・向上するための訓練」以外も含む多様な意味として用いられている事実がある。
よって、本願商標は具体的な品質や機能が特定できるものではない。
(3)小括
以上のとおり、各証拠においては「ビジョンセラピー」の語は極めて広範かつ漠然とした意味としても用いられているため、具体的に何を意味するのか、何を行うのかは不明である。
よって、本願商標は指定商品との関係で具体的な品質や機能が特定できるものではない。本願商標は指定商品との関係で間接的かつ暗示的な意味を理解させるにとどまり、自他商品の識別標識として機能し得るものである。
2 眼の機能の改善・向上のための訓練や弱視の治療等のために、眼鏡やレンズが使用されている事例
(1)総括的意見
眼の機能の改善・向上のための訓練や弱視の治療等のために眼鏡やレンズが用いられている事例が存在しても、通知書の各証拠にはそれぞれに異なる目的、用途が記載されているため、共通の目的や共通の訓練内容が把握されるものではない。
また、各証拠に記載された目的や用途は極めて広範で漠然としたものである。
よって、どういった機能を改善する訓練なのか、どのような内容を実施する訓練なのかについては不明であり、具体的な訓練、治療の目的や訓練・治療内容を把握することはできない。
また、「眼の機能を改善・向上するための訓練」等に眼鏡やレンズが用いることは一般的に行われているものではなく、一般的には、自身の体や絵・文字等が記載された紙や画面等を用いるのが通常である。眼鏡やレンズを用いることが一般的な視覚の訓練方法ではないので、何らかの器具を用いることが必ずしも需要者に認識されるものでもない。
加えて、本願商標が視覚訓練用具に用いられている事例も存在しない。
よって、本願商標は本願指定商品との関係では、取引者・需要者に「視覚」が「矯正」(改善されること)されることの漠とした曖昧な観念が想起されるにとどまるものであり、指定商品の性質・内容を直接的かつ具体的に説明するものではない。
(2)各証拠の分析結果
別掲2の2の(1)ないし(4)の証拠については、「ピントの調整」が訓練の目的として記載されているが、別掲2の2の(5)の証拠は、「脳を活性化し眼筋を鍛え、動体視力・周辺視・深視力などスポーツビジョンを高め、運動神経、反射神経、パフォーマンスを向上する」ことが目的として記載されている。
さらに、別掲2の2の(6)及び別掲2の2の(9)の証拠は、「弱視訓練」を、別掲2の2の(7)の証拠は、「眼筋トレーニング」を、別掲2の2の(8)の証拠は「眼精疲労に対する訓練」が目的として記載されている。このように目的や用途は同一ではなく、様々な用途が記載されている。「眼の機能を改善・向上するための訓練」等に眼鏡やレンズが用いられている事例が僅かに存在する場合も、その目的、用途は多様であり、また、極めて広範かつ漠然とした用途に用いられているため、本願商標は具体的な商品の具体的な品質や機能を特定することはできない。
(3)小括
眼の機能の改善・向上のための訓練や弱視の治療等のために眼鏡やレンズが用いられている事例が存在して、各証拠においては極めて多様な目的、用途に用いられているため、需要者、取引者に本願商標から具体的な商品の品質や機能が把握されることはない。
本願商標は指定商品との関係で間接的かつ暗示的な意味を理解させるにとどまり、自他商品の識別標識として機能し得るものである。
3 まとめ
以上述べたように、「ビジョンセラピー」の語は多様な意味に用いられているため、本願商標は商品の具体的な品質や機能が特定できるものではない。
よって、本願商標を指定商品に使用しても、これに接する取引者・需要者が、単に商品の品質を表示したものと認識することはないので、自他商品識別標識として十分にその機能を発揮し得るものである。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当しない。

第5 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号の該当性について
本願商標は、上記第1のとおり、「ビジョンセラピー」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中の「ビジョン」の文字は、「視覚」等の意味を、「セラピー」の文字は、「治療。療法。」の意味をそれぞれ表す語として良く知られているものであり、本願商標は、「ビジョン」の文字と「セラピー」の文字を結合したものと容易に認識できるものであり、かつ、本願商標は、標準文字で、普通に用いられる方法で表されているものである。
そして、別掲1及び別掲2の1で示した証拠のとおり、「ビジョンセラピー」は、学習障害や注意欠陥・多動障害等の発達障害、両眼の眼球運動・視覚認知不良等に有効な視覚機能訓練のことを表す語として普通に使用されていることが確認できる。
また、本願商標の指定商品である「眼鏡,眼鏡レンズ,眼鏡の部品及び附属品」は、必ずしも視力を矯正する商品のみが該当する商品ではないところ、別掲2の2で示した証拠のとおり、「ビジョンセラピー」を行う際に、ビジョンセラピー用の眼鏡やレンズが実際に使用されていることが確認できる。
してみれば、本願商標「ビジョンセラピー」は、構成全体として「学習障害や注意欠陥・多動障害等の発達障害、両眼の眼球運動・視覚認知不良等に有効な視覚機能訓練」を表したものと認識させるものであり、本願商標の指定商品との関係において「ビジョンセラピー」用の商品が実際に存在することからすると、本願商標に接する需要者、取引者は、これらの商品が「ビジョンセラピー用に使用される商品」であることを認識、理解するにとどまるものである。
したがって、本願商標は、商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるから、商標法第3条第1項第3号に該当する。
2 請求人の主張について
請求人は、当審意見書にて、「ビジョンセラピー」の語は多様な意味に用いられているため、本願商標は商品の具体的な品質や機能が特定できるものではない。よって、本願商標を指定商品に使用しても、これに接する取引者・需要者が、単に商品の品質を表示したものと認識することはないので、自他商品識別標識として十分にその機能を発揮し得るものである旨を主張する。
しかしながら、上記1のとおり、本願商標「ビジョンセラピー」は、構成全体として「学習障害や注意欠陥・多動障害等の発達障害、両眼の眼球運動・視覚認知不良等に有効な視覚機能訓練」を表したものと認識させるものであり、本願商標の指定商品との関係において「ビジョンセラピー」用の商品が実際に存在することからすると、本願商標に接する需要者、取引者は、これらの商品が「ビジョンセラピー用に使用される商品」であることを認識、理解するにとどまるものであるから、本願商標は、単に、商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であると判断するのが相当である。
したがって、請求人の上記主張は、採用することはできず、また、請求人のその他の主張も、採用すべき理由はない。
3 まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであるから、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
別掲1(原審において提示したインターネット掲載記事)
1 「メガネのオプティ 視覚機能検査センター併設」のウェブサイト
「ビジョンセラピーとは」の見出しの下、「ビジョンセラピーとは、LD(学習障害)やADHD(注意欠陥・多動障害)のお子さんを中心として、発達に偏りを持つお子さんや両眼がうまく機能しないために仕事やスポーツに問題が生じる方を対象に視覚機能訓練を行います。」との記載があるほか、「訓練内容」の中に「・訓練用の眼鏡を使って、寄り眼や開き眼の練習」「・訓練用のレンズを使って、片眼両眼でピントを合わせるトレーニング」との記載がある。
https://opty.jimdo.com/%E3%83%93%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%82%BB%E3%83%A9%E3%83%94%E3%83%BC%E3%81%A8%E3%81%AF/
2 「大阪医科大学LDセンター」のウェブサイト
「ビジョン・セラピーのご案内」の見出しの下、「ビジョン・セラピーでは、LD(学習障害)やADHDのお子さんを中心として、発達に偏りを持つ3歳から中学生までのお子さんを対象に、『両眼をすばやく滑らかに動かす』『両眼を使ってしっかり物を見る』『近くのものや遠くのものにすばやくしっかり焦点を合わせる』『形をしっかり捉え構成する』といった、学習や運動を行う上で基礎になる眼の能力を高める訓練を行っています。」との記載がある。
https://www.osaka-med.ac.jp/deps/ldc/vision_therapy.html
3 「レデックス株式会社」のウェブサイト
「新連載:視覚認知発達検査とビジョンセラピーの実際」との見出しの下、「欧米でのビジョンセラピーの歴史は古く100年以上と言われています。遠方視力だけではなく、両眼視機能、眼球運動に続き、視知覚の発達までを包括的に把握するトータルビジョンケアや、目まぐるしくかわる視覚情報を瞬時に取り入れ、さらに次の動きに連動して対応するダイナミックビジョンという考えがそのベースにあります。…子供たちの場合は、学習のつまずきの要因となる眼球運動や視覚認知不良、さらに目と手の協調運動の苦手なお子さんに対して、ビジョンセラピーが有効だといわれております。」との記載がある。
https://www.ledex.co.jp/mailmag/20190208
4 「社会医療法人清恵会 清恵会病院」のウェブサイト
「堺清恵会LDセンター(学習障害支援)」「ビジョンセラピー」の見出しの下、「発達障害のお子さんへの視機能評価および指導(対象:小学6年生まで)」の記載がある。
https://seikeikai.or.jp/seikeikai/medical-center/learning-disabilities/

別掲2(証拠調べ通知書で提示した証拠)
1 「ビジョンセラピー」又は「ビジョン・セラピー」の文字が、「眼の機能を改善・向上するための訓練」といった意味合いで用いられている事例(下線は合議体が付与。以下同じ。)
(1)「用例でわかる カタカナ新語辞典 改訂第4版」(株式会社 学研プラス、2016年)の551頁において、「ビジョン・セラピー[vision therapy]」の見出しの下、「発達障害を持つ子供に行う視覚機能訓練.視力回復ではなく,学習や運動に必要になる基礎的な視力の向上を目的とする.」の記載がある。
(2)「メガネのオプティ」のウェブサイトにおいて、「ビジョンセラピー
とは」の見出しの下、「ビジョンセラピーとは、LD(学習障害)やADHD(注意欠陥・多動障害)のお子さんを中心として、発達に偏りを持つお子さんや両眼がうまく機能しないために仕事やスポーツに問題が生じる方を対象に視覚機能訓練を行います。」の記載がある。
(https://opty.jimdo.com/%E3%83%93%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%82%BB%E3%83%A9%E3%83%94%E3%83%BC%E3%81%A8%E3%81%AF/)
(3)「大阪医科大学LDセンター」のウェブサイトにおいて、「ビジョン・セラピーのご案内」の見出しの下、「ビジョン・セラピーでは、LD(学習障害)やADHDのお子さんを中心として、発達に偏りを持つ3歳から中学生までのお子さんを対象に、『両眼をすばやく滑らかに動かす』『両眼を使ってしっかり物を見る』『近くのものや遠くのものにすばやくしっかり焦点を合わせる』『形をしっかり捉え構成する』といった、学習や運動を行う上で基礎になる眼の能力を高める訓練を行っています。」の記載がある。
(https://www.osaka-med.ac.jp/deps/ldc/vision_therapy.html)
(4)「レデックス株式会社」のウェブサイトにおいて、「メルマガ情報」の見出しの下、「新連載:視覚認知発達検査とビジョンセラピーの実際」の項に、「テレビに取り上げられたり、たくさんの書籍の影響で、視覚認知やビジョントレーニングという言葉も日本にもだいぶ浸透してきたように感じます。」、「現在では、年間850名ほどの患者さんが受診の為来院され、週に60名ほどの患者さんのビジョンセラピーや学習支援を行っています。」、「欧米でのビジョンセラピーの歴史は古く100年以上と言われています。遠方視力だけではなく、両眼視機能、眼球運動に続き、視知覚の発達までを包括的に把握するトータルビジョンケアや、目まぐるしくかわる視覚情報を瞬時に取り入れ、さらに次の動きに連動して対応するダイナミックビジョンという考えがそのベースにあります。」及び「子供たちの場合は、学習のつまずきの要因となる眼球運動や視覚認知不良、さらに目と手の協調運動の苦手なお子さんに対して、ビジョンセラピーが有効だといわれております。」の記載がある。
(https://www.ledex.co.jp/mailmag/20190208)
(5)「社会医療法人清恵会 清恵会病院」のウェブサイトにおいて、「堺清恵会LDセンター(学習障害支援)」の見出しの下、「ビジョンセラピー
」の項に、「発達障害のお子さんへの視機能評価および指導(対象:小学6年生まで)」の記載がある。
(https://seikeikai.or.jp/seikeikai/medical-center/learning-disabilities/)
(6)「オプティックコイズミ」のウェブサイトにおいて、「両眼視機能
ビジョンセラピー」の見出しの下、「名古屋で開催された『両眼視機能ビジョンセラピー』と題するセミナーを受けてきました。米国オプトメトリストの資格を持つ講師の方による勉強会です。」及び「日本ではほとんど普及していないビジョンセラピーの話。両眼視機能や調節機能などを、どのような訓練で改善していくかの話を聞いてきました。」の記載がある。
(https://www.opt-koizumi.com/news-detail.php?id=826)
(7)「渋谷総合治療センター」のウェブサイトにおいて、「視力回復治療」の見出しの下、「海外での実績」の項に、「そういった目があれば、それを改善し、より良く機能できるようにしていくのが視力回復を目的にする者の重要な仕事なのです。そして単に視力だけでなく、目と思考や知能との関係まで掘り下げ、ビジョン全般のプロセスに取り組みます。これが『ビジョンセラピー』(Vision Therapy)あるいは『ビジョントレーニング』(Vision Training)と呼ばれる手法です。」の記載がある。
(https://medical-shibuya.com/%E8%A6%96%E5%8A%9B%E5%9B%9E%E5%BE%A9%E6%B2%BB%E7%99%82/)
(8)「宮崎日日新聞− Miyanichi e−press」のウェブサイトにおいて、「GWのコロナ感染拡大防止対策の外出自粛を受け、ストレスケアと同時に運動機能、学習ベース力を上げる『メンタルビジョントレーニング』が5月2日から4日間連続で親子でできるオンライン無料体験レッスンを開講。」の見出しの下、「アメリカで開発された、『眼』から『脳』を鍛え、スポーツや作業パフォーマンスを驚異的に向上させるビジョントレーニングに注目し、独自に『アイパフォーマンスメソッド』を構築しました。そのメソッドに基づいたトレーニングがメンタルビジョントレーニングです。ビジョントレーニングは、アスリートの運動機能向上のためだけではなく、ビジョンセラピーとも呼ばれるほどケアの意味合いも高く、学力向上や発達障がいの子供たちのトレーニングとしても活用されています。」の記載がある。
(https://www.the-miyanichi.co.jp/special/dreamNews/detailep.php?id=0000214471)
(9)「めがねの雅」のウェブサイトにおいて、「業界コラムvol.024【日本は発展途上国?】[2010/8]」の見出しの下、「私たちの業界を比べた場合アメリカでは、眼科医はふた通りいます。外科的な手術や治療を行う眼科医と病気の早期発見と目薬などでの治療、コンタクトレンズやメガネレンズの処方そして両目を効率よく使って見るためのビジョントレーニング(ビジョンセラピー)を行う眼科医です。眼鏡店は眼鏡士という資格がありメガネを処方箋の通りに作るだけで検査などはしません。」の記載がある。
(http://www.0762683366.jp/column/column024.htm)
(10)「一般社団法人日本ビジョントレーニング普及協会」のウェブサイトにおいて、「資料」の見出しの下、「ビジョントレーニングについての特集記事(PDF)」の項に、「海外では『ビジョントレーニング』のことを『ビジョンセラピー』と言います。」及び、PDFファイル内の「ビジョンセラピーとは?」の項に、「視機能を向上させるためのプログラムのひとつで、眼や脳の理学療法というイメージ。身体の筋肉を治療するのではなく、眼と脳の連絡回路をスムーズにしたり、眼の動きをスムーズにして見え方を改善する治療法である。」の記載がある。
(https://1vision.jp/documents/)
(11)「メガネ・補聴器のナルホ堂」のウェブサイトにおいて、「メガネ・補聴器マイスターへの道」の見出しの下、「アメリカ・パシフィック大学」の項に、「検眼を学んでいくうえで切っても切れないアメリカ式の視機能検査とビジョンセラピー。」及び「今の日本のメガネ屋としてはドイツが日本の実情に近いと考えてドイツに留学しましたが、アメリカの検眼医はメガネを直接販売しない代わりに、ビジョンセラピーといった目の機能不全が関与した弊害を軽減するためのトレーニングなどに詳しいので、それらを直接研究していきます。」の記載がある。
(https://www.naruhodo.jp/the_road_to_master/)
(12)「大阪府立吹田支援学校」のウェブサイトにおいて、「分科会C『見ることと見えること』」の見出しの下、「文章を逆から見てしまう、文章を1・2段飛ばして読んでしまう等々、ビジョンに問題のある子どもたちが多数いることが分かりました。ビジョンとは学習して得られるもの、
ビジョンセラピーを受けて時間はかかるが改善されていくという話を紹介されました。ビジョンセラピーという言葉を初めて耳にした先生方もいました。」の記載がある。
(https://www.osaka-c.ed.jp/blog/suita-y/wakaba/2014/03/13-042294.html)
(13)「シロアム会 田中稔眼科」のウェブサイトにおいて、「目の教室」の見出しの下、「ビジョンセラピーのクラス」の項に、「学習や運動をする上でベースとなる眼の力を高めるトレーニングを行います。」の記載がある。
(http://www.tanakaminoru-ganka.com/t1100.php)
(14)「i Vision Optometry」のウェブサイトにおいて、「ビジョンセラピー」の見出しの下、「視ることへの探求 深めるVISION」の項に、「時々物が二重に見えてしまう方、読書の際に読んでいる行をよく間違えてしまう方、3Dムービーが苦手な方、ボールを使った競技が苦手な方、視力そのものが不安定な方は更に詳しい検査をお勧めします。検診の結果、改善策の一つとしてビジョンセラピーがあります。視覚機能に関して気にかかることがありましたら、ご相談ください。」の記載がある。
(http://www.ivisionoptometry.com/vision-therapy.html)
2 眼の機能の改善・向上のための訓練や弱視の治療等のために、眼鏡やレンズが使用されている事例
(1)「メガネのオプティ」のウェブサイトにおいて、「ビジョンセラピーとは」の見出しの下、「具体的な訓練内容」の表における「訓練内容」の欄に、「訓練用の眼鏡を使って、寄り眼や開き眼の練習」、「訓練用のレンズを使って、片眼両眼でピントを合わせるトレーニング」の記載がある。
(https://opty.jimdo.com/%E3%83%93%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%82%BB%E3%83%A9%E3%83%94%E3%83%BC%E3%81%A8%E3%81%AF/)
(2)「大阪医科大学LDセンター」のウェブサイトにおいて、「ビジョン・セラピーのご案内」の見出しの下、「訓練内容」の項に、「訓練用の眼鏡を使って、寄り眼や開き眼の練習」及び「凸レンズ、凹レンズを使って、片眼ずつピントを合わせるトレーニング、両眼でピントを合わせるトレーニング」の記載がある。
(https://www.osaka-med.ac.jp/deps/ldc/vision_therapy.html)
(3)「社会医療法人清恵会 清恵会病院」のウェブサイトにおいて、「堺清恵会LDセンター(学習障害支援)」の見出しの下、「ビジョンセラピー」の項の「指導」において、「凹レンズ、凸レンズを使ったピント合わせの練習」及び「上記のような訓練をセンターおよびご家庭で行うことで『見る力』を高めます。」の記載がある。
(https://seikeikai.or.jp/seikeikai/medical-center/learning-disabilities/)
(4)「ビジョンセラピストの部屋」のウェブサイトにおいて、「視覚トレーニング」の見出しの下、「トレーニングの様子」の項に、「上下4枚のレンズがついています。凸レンズと凹レンズでピント調整の反応とスピードをトレーニングします。現代人はこの調節機能のストレッチが一番重要です。」の記載がある。
(http://vision-tu.com/training/)
(5)「Visionup Store ビジョナップストアー」のウェブサイトにおいて、「製品紹介」の見出しの下、「特徴」の項に、「レンズ部分の特殊液晶の点滅による見え難さが脳を活性化し、眼筋を刺激して鍛える世界初のビジョントレーニング用メガネです。年齢やレベルにかかわらず動体視力など“見るチカラ”(スポーツビジョン)をアップします。」の記載がある。
(https://visionup.jp/)
(6)「医療法人社団仁和会 さこう眼科」のウェブサイトにおいて、「弱視訓練器『オクルパッド』」の見出しの下、「オクルパッドとは?」の項に、「オクルパッドは専用のメガネをかけることにより、両目を開けた状態で片方の目(弱視の目)だけにタブレット端末の映像(アニメやゲームなど)を呈示して訓練を行うことができます。オクルパッドはアイパッチと異なり、専用の眼鏡をかけないとタブレット端末を操作できないため、子どもが自発的に訓練に臨むことができます。」の記載がある。
(http://www.sakoh-ganka.com/occlupad.php)
(7)「楽天市場」のウェブサイトにおいて、「アイサポートメガネ」の見出しの下、「この商品について」の項に、「アイサポートめがねの解説 今まで大変だった眼筋トレーニングが『アイサポートめがね』で簡単&時短で出来ます。かけているだけで、目の運動を自然に実行!ハードな眼筋訓練も、短時間でOKに!テレビやゲーム時にかけたり、老眼鏡の代わりに使ってトレーニングしましょう。・パソコンを使う時 ・テレビゲームをする時 ・読書をする時 ・飛行機や船、列車のご旅行中などに かけているだけで目の運動を自然に実行する眼筋訓練メガネです。」の記載がある。
(https://item.rakuten.co.jp/kireispot/aa602/)
(8)「HAMADA EYE CLINIC」のウェブサイトにおいて、「眼精疲労」の見出しの下、「眼精疲労に対する訓練」の項に、「訓練用プログラムは自宅でインターネットと訓練用の眼鏡を使用して行います。」及び「訓練用プログラムは米国の一部の学校で使われているGemstonevision社のもので、30レッスン$100で購入できます。訓練用眼鏡は貸し出し可能ですが、1万円で購入することも可能です。」の記載がある。
(http://www.oldeyeorjp.info/serv022.htm)
(9)「医療法人社団 医新会」のウェブサイトにおいて、「こどもの弱視治療」の見出しの下、「こどもの弱視治療とは」の項に、「弱視治療の基本は、まずは眼鏡装用です。眼鏡で矯正して網膜にピントをきちんと合わせ、鮮明な像を脳に送り、視機能の発達を促すことが必要です」の記載がある。
(https://www.ocular.net/treatment/amblyopia.html)


(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。

(この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
審理終結日 2021-09-27 
結審通知日 2021-09-29 
審決日 2021-10-22 
出願番号 2018153995 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (W09)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 榎本 政実
特許庁審判官 荻野 瑞樹
豊田 純一
商標の称呼 ビジョンセラピー、セラピー 
代理人 西澤 和純 
代理人 眞島 竜一郎 

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