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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W43
審判 全部申立て  登録を維持 W43
審判 全部申立て  登録を維持 W43
審判 全部申立て  登録を維持 W43
審判 全部申立て  登録を維持 W43
管理番号 1380154 
異議申立番号 異議2021-900106 
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2021-12-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-03-18 
確定日 2021-11-24 
異議申立件数
事件の表示 登録第6341442号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6341442号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6341442号商標(以下「本件商標」という。)は、「Live Like a Local」及び「Tokyo Hub」の欧文字を上下2段に別掲1のとおりの態様で表してなり、令和2年7月7日に登録出願、第43類に属する商標登録原簿に記載の役務を指定役務として、同3年1月7日に登録査定され、同月15日に設定登録されたものである。

2 引用商標等
(1)登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する商標は次のとおりであり(以下、それらをまとめて「引用商標」という。)、いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。
ア 登録第5192391号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の態様 別掲2のとおり
指定商品及び指定役務 第3類、第4類、第6類、第8類、第9類、第14類、第16類、第18類、第20類、第21類、第24類ないし第30類、第32類ないし第34類、第36類ないし第39類及び第41類ないし第45類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務
登録出願日 平成20年6月9日
設定登録日 平成20年12月26日
イ 登録第5208279号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の態様 別掲2のとおり
指定商品及び指定役務 第9類、第20類、第21類、第29類、第30類、第39類、第41類及び第45類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務
登録出願日 平成20年6月9日
設定登録日 平成21年2月27日
ウ 登録第5210647号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の態様 別掲3のとおり
指定役務 第36類ないし第39類及び第41類ないし第45類に属する商標登録原簿に記載の役務
登録出願日 平成20年4月25日
設定登録日 平成21年3月6日
エ 登録第5252354号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の態様 別掲3のとおり
指定役務 第39類、第41類及び第45類に属する商標登録原簿に記載の役務
登録出願日 平成20年4月25日
設定登録日 平成21年7月31日
オ 登録第5542681号商標(以下「引用商標5」という。)
商標の態様 別掲4のとおり
指定役務 第39類に属する商標登録原簿に記載の役務
登録出願日 平成24年1月25日
設定登録日 平成24年12月14日
カ 登録第5575542号商標(以下「引用商標6」という。)
商標の態様 別掲5のとおり
指定役務 第39類に属する商標登録原簿に記載の役務
登録出願日 平成24年11月14日
設定登録日 平成25年4月19日
キ 登録第5822813号商標(以下「引用商標7」という。)
商標の態様 別掲6のとおり
指定役務 第39類及び第41類に属する商標登録原簿に記載の役務
登録出願日 平成27年9月14日
設定登録日 平成28年1月29日
ク 登録第5822814号商標(以下「引用商標8」という。)
商標の態様 別掲7のとおり
指定役務 第39類及び第41類に属する商標登録原簿に記載の役務
登録出願日 平成27年9月14日
設定登録日 平成28年1月29日
(2)申立人が、本件商標は商標法第4条第1項第15号及び同項第7号に該当するとして引用する商標は、別掲3のとおりの構成からなる「東京スカイツリーのシルエット形状」(以下「使用商標」ということがある。)であり、申立人等が土産品の販売、飲食物の提供、宿泊施設の提供などに使用し、著名であるとするものである。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第15号、同項第11号及び同項第7号に違反して登録されたものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第8号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)本件商標の構成
ア 本件商標の構成の詳細
(ア)本件商標は、上段に「Live Like a Local」、下段に「Tokyo Hub」からなる紫色の文字を含む商標である。下段中央部のローマ字「o」「H」は、コンセント、プラグの形状を含む。上段右部のローマ字「l」はタワー形状に置き換えられて、当該タワー形状は小さいとはいえ、我が国において絶大な著名性を誇る「東京スカイツリー」のシルエットとして、需要者が容易に認識しうるものである。よって、文字部分のみならず上段右部のタワー形状も、本件商標の要部のひとつである。
図形に表されたタワーは、「東京スカイツリー」の事業主体が所有する引用商標のタワー形状、たとえば引用商標3及び4と比較して、
・全体的に細身の形状である
・ゲイン塔を除いた第二展望台までの長さが、縮尺を含めて完全に一致する
・全体(塔体)の太さも同じである
・中央部に矩形形状を2つ(第一展望台(天望デッキ)、第二展望台(天望回廊))を有しており、位置、高さ、上辺の長さが一致する
・上部にアンテナのような細長い塔芯(ゲイン塔)を有している
という特徴を有しており、これらは引用商標3及び4の特徴とほぼ一致し、少なくとも類似する。
本件商標において、文字「l」と一体化したタワー形状は、全体に対する高さの割合が約28%、幅の割合が約2%であり、全体に占める割合は約0.5%にすぎない(甲1)。しかし、本件商標のタワー形状は上述の「東京スカイツリー」の形状の特徴をとらえており、容易に「東京スカイツリー」と認識しうるものである。
また、「東京スカイツリー」のシルエット形状が「全体の約0.5%」と小さくても、「東京スカイツリー」と十分認識できるオフィシャルグッズが現在販売されている(後述)。
つまり、本件商標の図形部分は、当該先願先登録商標、「東京スカイツリー」の特徴的な外形形状やロゴマークを知らなければ本件商標に至らなかったともいうべきである。なお、本件商標のタワー形状は、引用商標3、4及び「東京スカイツリー」の外形形状よりもゲイン塔のみが短く、当初発表された高さ610mの際の外形形状(甲5)を参考としている可能性がある。
(イ)上述のとおり、本件商標の上段右部の「l」に相当する図形部分(タワー形状)は、本件商標全体と比して小さいものであるが、当該タワー形状が、引用商標、特に引用商標3及び4、著名な「東京スカイツリー」の外形形状と同一であることは疑いようがない。本件商標に接する取引者、需要者は当該タワー形状に着目し、公共性・著名性を有する「東京スカイツリー」の名称を容易に看取することができるものである。
そして、本件商標のタワー形状は著名な使用商標とほぼ同一のものであり、本件商標に接する取引者、需要者はマスコミ報道などで話題の「東京スカイツリー」とほぼ同一の外形形状に注目し、詳細は(4)で後述するが、これより生じる称呼、観念をもって取引に資する場合も少なくないものである。
同様に引用商標1、2、5ないし8には、引用商標3及び4の「東京スカイツリー」のシルエット形状が含まれており、その著名性、公益性から当該部分が要部とされる。引用商標1、2、7及び8は、その中央部に「東京スカイツリー」のシルエット形状を含み、引用商標5及び6ではローマ字「I」が、本件商標のように「東京スカイツリー」のシルエット形状(図形)にそれぞれ置き換わっている。
本件商標は、称呼・観念を勘案してもなお著名な「東京スカイツリー」部分が要部として認識され、引用商標と商標全体として類似する。
イ 酷似するオフィシャルグッズについて
電波塔「東京スカイツリー」やその足元の商業施設「東京ソラマチ」を中心とした「東京スカイツリータウン」(甲3-1)では、その事業主体やその関連会社によるオフィシャルグッズやライセンスグッズが多数生産され、お士産品として販売されている(甲3)。オフィシャルショップで販売されている(されていた)オフィシャルグッズのうち、本件商標に酷似した図形と考えられるものは次のとおりである。
(ア)EVA Tシャツ
日本の著名なアニメーション「エヴァンゲリオン(EVANGELION)」と「東京スカイツリー」のコラボレーションによる商品(Tシャツ)であり、令和2年12月23日から現在にかけて販売されている。
当該Tシャツには、本件商標と同様に、「EVANGELION」のローマ字「I」が「東京スカイツリー」のシルエット形状に置き換わって表されている。
(イ)AU テラスツアーポストカード昼景・夜景
事業主体(運営会社)である申立人が行っている、「東京スカイツリー」の内部を案内するツアー「スカイツリーテラスツアーズ」(甲3-5)のポストカードであり、平成30年10月23日から現在にかけて販売されている。
このオフィシャルグッズ(ポストカード)では、本件商標や上記のTシャツのような、ローマ字の置き換えはないが、タワー形状の図形が表されている。
(ウ)各種商品貼付シール
「東京スカイツリー」の1階、5階、展望デッキフロアにあるオフィシャルショップ「THE SKYTREE SHOP」では多くのオフィシャルグッズを販売するほか、商品や包装袋に貼付ける無料のシールを季節やイベントごとに企画、製造しており、これらには容易に「東京スカイツリー」と認識しうる形状の図形が表されている。
(エ)オフィシャルグッズに関するまとめ
上述の商品のほか、「東京スカイツリー」や「東京ソラマチ」などでは、「東京スカイツリー」の外形形状やそのシルエット形状を使用したオフィシャルグッズ、ライセンスグッズを多数企画、販売している。
本件商標のタワー形状は、全体に占める割合は小さいが、著名な「東京スカイツリー」の形状の各特徴をとらえているため、需要者をして容易に「東京スカイツリー」と認識しうるものである。
本件商標は、「東京スカイツリー」が存在しなければ当該構成に至るはずのないものであり、明らかに著名な「東京スカイツリー」にあやかったものである。
(2)「東京スカイツリー」の概略と外形形状
ア 「東京スカイツリー」の概要
「東京スカイツリー」は、東京都墨田区に建設された高さ634mの世界一の電波塔の名称であり、2012年5月22日に開業した。その事業主体は申立人である。
なお、後述するように「東京スカイツリー」という名称、外形形状、その公益性や著名性及び特徴的な外形形状等は「広く知られている」と特許庁において認められている(甲7、甲8)。
2012年5月22日の開業後、1周年の2013年5月22日までに「東京スカイツリー」に638万人、「東京スカイツリータウン」に5,080万人が訪れ、2019年3月31日までには、それぞれ3,503万人、2億4,482万人が訪れている。
「東京スカイツリータウン」の核となる「東京スカイツリー」は一大名所の地位を確保しつつあるとともに、「東京スカイツリー」の名称や公益性、特徴的な外形形状がマスコミによって全国的に連日報道されており、著名の域に達している(甲5)。
したがって、本件商標の出願日には「東京スカイツリー」の特徴的な外形形状は著名の域にあったといえる。
イ 「東京スカイツリー」の商品化事業及び知的財産の使用について
「東京スカイツリー」の事業主体である申立人は、「東京スカイツリーライセンス事務局」を設けて「東京スカイツリー」の開業前から知的財産の使用に関する問い合わせを受け付けており(甲4)、事業主体やその許諾を受けた者による商品化事業が幅広く展開されている。「東京スカイツリー」に関する名称、ロゴマーク、シルエットデザイン(図形)、610m及び634mの高さなどのCG画像などは、そのイメージ維持のため、事業主体等(前記事務局)の許諾なしに使用する事はできない。
申立人は、「東京スカイツリー」に関するイメージやブランドの維持のため(特に名称は普通名称化防止のため)、「[R](商標登録表示)」や「[C](著作物の表示)」(異議決定注:「[R]」は「○の中にR」の記号、「[C]」は「○の中にC」の記号である。以下同じ。)、知的財産に関する文章「[C]TOBU RAILWAY CO.,LTD.& TOBU TOWER SKYTREE CO.,LTD.ALL Rights Reserved.東京スカイツリー、スカイツリーは東武鉄道・東武タワースカイツリーの登録商標です。」を、パンフレットといった配布物、刊行物、ホームページなどに積極的に付している(甲3-3?6、甲6)。すなわち、申立人は、「東京スカイツリー」に関するイメージ維持などのため、不断の努力を続けている(甲3-2?6、甲4、甲6など)。
また、申立人は、本件商標の商標権者(出願人)から「東京スカイツリーのシルエット形状を使用させてほしい」などの連絡や、シルエット形状を使用した商標の出願に関する連絡を一切受けていない。
オフィシャルショップ「THE SKYTREE SHOP」では、お土産物として一般的な商品をはじめとしたオフィシャルグッズが販売されているが、そのほかにも、例えば次のような多数の役務が行われている(甲3-3)。
・「東京スカイツリー」の展望台(天望デッキ)の「SKYTREE CAFE」「MUSASHI SKY RESTAURANT」なるカフェ、レストラン及び「東京ソラマチ」の各カフェ、レストランにより役務「飲食物の提供」(類似群「42B01」)が行われている(甲3-4、甲6)
・前記「スカイツリーテラスツアーズ」を実施し、役務「主催旅行の実施、旅行者の案内」など(類似群「42A02」)が行われている(甲3-5)。
・申立人の関連会社である東武トップツアーズ株式会社が「東京スカイツリー」に関するツアーを企画するとともに、「東京ソラマチ」にも出店しており、役務「主催旅行の実施、旅行者の案内」や役務「宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ」(類似群「42A02」)が行われている(甲3-6、甲6)。
・申立人の関連会社である株式会社東武ホテルマネジメントが「東京スカイツリー」のオフィシャルホテル「東武ホテルレバント東京」などを運営しており、役務「宿泊施設の提供」(類似群「42A01」)が行われている(甲3-6)。
「東京スカイツリー」を始め、これらのホームページなどには「東京スカイツリー」のシルエットデザインや、シルエット形状を含むロゴマークが左上などに記載されている(甲3、甲4、甲6など)。
実際にはこの他にも数多くの「東京スカイツリー」に係るオフィシャルグッズ及びライセンスグッズや様々な役務が展開され、これらの商品及び役務には「東京スカイツリー」の名称やその外形形状のシルエットデザイン・CGが、事業主体の監修のもとで適法に付されている。
なお、引用商標の他にも、商標「東京スカイツリー」「スカイツリー/SKYTREE」などは、すでに多数登録されており、その商標権者は申立人である。
(3)商標法第4条第1項第15号違反について
ア 「東京スカイツリータウン」内におけるライセンシーの使用について
上述のように、オフィシャルショップ「THE SKYTREE SHOP」が「東京スカイツリー」の内部に設けられ、オフィシャルグッズが販売され(甲3-3)、本件商標に酷似したデザインのTシャツ、ポストカード、シールなどのオフィシャルグッズも販売等されている。
すなわち、申立人は「東京ソラマチ」の出店者に対しても、一定の基準のもとで、自社が有する登録商標「東京スカイツリー」「『東京スカイツリー』のシルエット形状」などの使用を許諾している。
そして、「東京スカイツリー」に関するロゴマーク、シルエットデザインなどは、事業主体の許諾なしに使用する事ができないことはオフシャルサイトでも告知されているとおりである(甲4)。
本件商標の図形部分は、前述のとおり、事業主体が使用しているシルエット形状とほぼ同一のものである(甲1)。たとえ本件商標における図形部分が小さいものであっても著名な「東京スカイツリー」のシルエット形状を知っていなければ本件商標に至らないものである。事業主体は、本件商標の商標権者から「東京スカイツリー」のシルエット形状の使用や商標登録出願についてなんら連絡を受けていないし、シルエット形状の使用許諾をしていない。
イ 第三者出願について
第三者により「東京スカイツリー」の外形形状や名称などを含む商標が出願され、特許庁により商標法第4条第1項第15号で拒絶等された例として、商願2017-6257(甲7)をはじめ、商願2010-11258、商願2010-45015など13件がある。
これらは、商標の類似性も異なり、事案を異にするものであるから、本件商標にそのまま採用することはできないが、中には商標中のタワー形状が本件商標と同様に商標中に占める割合は小さく、「東京スカイツリー」といった文字も含まれていないものもある。よって、本件商標も本号が適用されるべきと思慮する。
ウ まとめ
「東京スカイツリータウン」へは驚異的なペースで来場者が押し寄せており、開業7周年を経過する前の2019年3月31日までに約2億4,482万人が来場するとともに、数多くのマスコミ報道により「東京スカイツリー(東京スカイツリータウン)」は一大名所の地位を確保しつつある。
そして、その中核である「東京スカイツリー」の名称、外形形状、シルエット形状もよく知られることとなった(甲5?甲7)。本件商標の要部のひとつは、「東京スカイツリー」のシルエットデザインそのものであり、著名な「東京スカイツリー」の外形形状やシルエットデザインがなければ、本件商標は選択されなかったというべきである。
上述のとおり、オフィシャルショップでは、Tシャツ、ポストカード、シールなどが販売等されており、これらの商品には使用商標が使用されている。さらに、「東京スカイツリー」のオフィシャルサイトにはロゴマークやシルエット形状が付されるとともに、カフェ、レストラン、塔体ツアー、ホテルなどに関する情報が記載されており、実際に各役務が提供されている(甲3-2?6)。
よって、申立人(「東京スカイツリー」の事業主体)と何ら関係のない第三者によって、本件商標が「東京スカイツリー」で実際に行われている役務に使用されれば、その役務が申立人又は同人と組織的又は経済的に何らかの関連のある者の事業に係る役務であるかの如く一般需要者に認識されて出所の混同を生じるおそれがある。
よって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第11号違反について
本件商標は、たとえ商標法第4条第1項第15号に該当しないとしても、同項第11号に該当するものと思慮する。
ア 指定役務の類否について
本件商標の指定役務中「飲食物の提供,宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,展示施設の貸与,動物の宿泊施設の提供,ホテルその他の宿泊施設のあっせん,宿泊の予約の取次ぎ,宿泊施設の予約の取次ぎ,食事の支度に関する情報の提供及び助言」は、引用商標の指定役務と同一又は類似の役務(類似群42A01、42A02、42B01、42V04、42Xl0)である。
イ 商標の類否について
(ア)観念及び称呼について
本件商標の要部は、その指定役務との関係や商標の構成からして、文字「Live Like a Local」「Tokyo Hub」や図形「プラグとコンセント」のみならず、絶大な著名性及び公益性を考慮すると、上段右部の文字「l」を構成する「東京スカイツリー」の図形も要部となりうるものである(甲7)。
余白を除いた本件商標において、文字「l」と一体化したタワー形状が全体に占める割合は約0.5%にすぎない。しかし、本件商標のタワー形状は「東京スカイツリー」の形状の特徴をとらえており、また、全体に占める割合が小さくても「東京スカイツリー」のオフィシャルグッズとして販売している製品も存在していることから、容易に「東京スカイツリー」と認識しうるものである。
本件商標の要部である「l」部分の図形からは、著名な「東京スカイツリー」の観念が生じるとともに、「トウキョウスカイツリー」「スカイツリー」の称呼が生じる。
また、文字「Live Like a Local」「Tokyo Hub」からは「リブライクアローカルトーキョーハブ」「ライブライクアローカルトーキョーハブ」「リブライクアローカル」「ライブライクアローカル」「トーキョーハブ」の称呼が生じる。そして、文字「Live Like a Local」からは「地域として生きる」、文字「Tokyo Hub」からは「(地名)東京の中心地」といった観念が生じる。
図形「プラグとコンセント」部分からは「プラグ」「コンセント」の称呼及び観念を生じる。
引用商標は、著名な「東京スカイツリー」のシルエット形状を含み、そのほかの文字を含む場合は、その文字からの称呼がそれぞれ生じるとともに、著名な「東京スカイツリー」の観念、「トウキョウスカイツリー」「スカイツリー」の称呼が生じる。
本件商標の要部と引用商標(の要部)は、「東京スカイツリー」の観念及び称呼が同一である。
よって、本件商標の要部と引用商標は観念及び称呼が同一又は類似する。
(イ)外観について
本件商標は、前述のとおり「東京スカイツリー」を容易に認識することができる(甲1)。
ウ まとめ
本件商標中のタワー形状(シルエットデザイン)は、一般的に知られている「東京スカイツリー」の外観形状と酷似するものである。
よって、本件商標及び引用商標に接する取引者、需要者は、話題の「東京スカイツリー」に酷似した該タワー形状部分に着目し、これより生じる称呼・観念をもって取引に資する場合も少なくないものと判断するのが相当である。
本件商標及び引用商標は、タワーのシルエットのみの図形部分に相応して「トウキョウスカイツリー」(「東京スカイツリー」)の称呼・観念が共通する類似の商標であり、また、指定役務も同一又は類似する。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当する。
(5)商標法第4条第1項第7号違反について
ア 本号違反の詳細について
本件商標の要部のひとつは、著名な「東京スカイツリー」のシルエット画像である。
「東京スカイツリー」は、事業主体の許諾を受けたライセンシーにより様々なアレンジがなされて商品自体や商品パッケージ、役務の提供を受ける者の利用に供する物に描かれている。そして、上記のとおり、「東京スカイツリー」の外形形状は非常に特徴的なものであり、日本及び世界各国を見ても類似するものはない。
本件商標の要部のひとつであるタワー形状は、明らかに「東京スカイツリー」のシルエット画像そのものであるから(甲1)、「東京スカイツリー」の外形形状がなければ、本件商標は選択されなかったというべきである。
してみれば、本件商標は、「東京スカイツリー」が持つ著名性及び顧客吸引力に便乗する意図のもとで出願されたものと推認され、公益性の高い「東京スカイツリー」の事業主体(申立人)と何ら関係のない一私人に指定役務について独占使用を認めることは、一般的道徳観念に照らして穏当ではなく、公の秩序又は善良の風俗を害するものであるため、商標法第4条第1項第7号に該当する。
イ 第三者出願について
第三者により「東京スカイツリー」の外形形状や名称などを含む商標が出願され、特許庁により商標法第4条第1項第7号で拒絶等された例として、商願2007-94708(甲8)をはじめ、商願2007-103520など28件がある。
これらは、商標の類似性も異なり、事案を異にするものであるから、本件商標にそのまま採用することはできないが、これらは「出願に係る商標は著名な『東京スカイツリー』を想起させ、著名な『東京スカイツリー』にあやかったものであるから、社会信義則に反し、公の秩序を害するおそれがある」として本号に該当するとしている。
よって、本件商標も本号が適用されるべきと思慮する。

4 当審の判断
(1)使用商標及び引用商標の周知性について
ア 申立人提出の甲各号証、同人の主張及び職権調査(インターネット情報、新聞記事情報など)によれば、申立人は東京都墨田区において2012年5月に開業した「東京スカイツリー」の運営会社であり、当該「東京スカイツリー」に設置された展望台における展望施設の提供やオフィシャルショップにおいて菓子、雑貨等の販売をしていること(甲3、甲5)、「東京スカイツリー」の外形形状は開業以前から新聞各紙で多数報道されたこと(甲5)、2008年6月に使用商標を構成中に含む標章が「東京スカイツリー」のシンボルマークに決定され、新聞で報道されたこと(甲5-2)、「東京スカイツリー」及びこれと「東京ソラマチ」などで構成される商業施設「東京スカイツリータウン」の来場者数は2012年5月の開業から2019年3月31日までで、それぞれ述べ3,503万人及び2億4,482万人であったこと(申立人主張、職権調査:2018年1月27日付け朝日新聞朝刊など)などが認められる。
また、本件商標の登録出願の日前であることは確認できないが、当該シンボルマークは「東京スカイツリー」「東京スカイツリータウン」のウェブページに表示されていること(甲3、甲4)及び「東京スカイツリー」内のオフィシャルショップにおいて使用商標が表示されていること(甲3-3)が認められる。
イ 上記のとおり、申立人は「東京スカイツリー」の運営会社であり、「東京スカイツリー」では展望台における展望施設の提供をし、「東京スカイツリー」の外形形状は開業以前から新聞各紙で多数報道され、加えて「東京スカイツリー」の来場者は2012年5月の開業から2019年(平成31年)3月31日までで述べ3,503万人(「東京スカイツリータウン」は2億4,482万人)であったことからすれば、「東京スカイツリーのシルエット形状」(使用商標)は、本件商標の出願前における具体的な使用状況は確認できないものの、本件商標の登録出願の日(令和2年7月7日)前から、申立人の業務に係る役務(展望台における展望施設の提供)を表示するものとして、需要者の間に広く認識されているものであって、その状況は本件商標の登録査定時(登録査定日:令和3年1月7日)においても継続していたものと判断するのが合理的である。
しかしながら、引用商標は、それらの指定商品及び指定役務との関係において、いずれも本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めるに足りる証左は見いだせないから、それを認めることはできない。
(2)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標
本件商標は、上記1のとおり「Live Like a Local」及び「Tokyo Hub」の欧文字を上下2段に別掲1のとおりの態様で表してなり、該文字に相応し「リブライクアローカルトーキョーハブ」「リブライクアローカル」「トーキョーハブ」の称呼を生じ、観念については「地元住民として生きる」「東京の中心」などの意味合いを想起させるとしても、特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。
イ 引用商標
引用商標1及び2は別掲2のとおりの構成からなり、引用商標3及び4は別掲3のとおりの構成からなり、いずれも特定の称呼及び観念を生じないものと判断するのが相当である。
引用商標5は、別掲4のとおりの構成からなり、その構成中の文字「SPACIA」「TUBU LIMITED EXPRESS」に相応し、「スペーシア」「トーブリミテッドエクスプレス」の称呼を生じ、後者の文字から「東武特急」の観念を生じるものと判断するのが相当である。
引用商標6は、別掲5のとおりの構成からなり、その構成中の文字「SKYTREE\TRAIN」に相応し、「スカイツリートレイン」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。
引用商標7は、別掲6のとおりの構成からなり、その構成中の文字「Excitement Awaits. TOKYO SKYTREE」に相応し、「エキサイトメントアウェイツトーキョースカイツリー」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。
引用商標8は、別掲7のとおりの構成からなり、その構成中の文字「Lift Your Spirit, TOKYO SKYTREE」に相応し、「リフトユアスピリットトーキョースカイツリー」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。
ウ 本件商標と引用商標の類否
本件商標と引用商標の類否を検討すると、まず本件商標と引用商標3及び4とを比較すれば、両者の上記のとおりの外観は構成態様が明らかに異なり、相紛れるおそれのないものである。
次に、称呼についてみると、本件商標は「リブライクアローカルトーキョーハブ」「リブライクアローカル」「トーキョーハブ」の称呼が生じるのに対し、引用商標3及び4は特定の称呼を生じないものであるから、両者は相紛れるおそれのないものである。
さらに、観念においては、両商標はいずれも特定の観念を生じないものであるから比較することができない。
そうすると、本件商標と引用商標3及び4は、外観、称呼において相紛れるおそれがなく、観念において比較できないものであるから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。
その他、本件商標と引用商標3及び4が類似するというべき事情は見いだせない。
また、本件商標と引用商標1、2、5ないし8とは、それらの上記のとおりの外観、称呼及び観念からすれば、それらが相紛れるおそれのないこと明らかであるから、両者は非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。
したがって、本件商標はいずれの引用商標とも相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。
エ 申立人の主張について
申立人は、本件商標の構成中上段の文字「Live Like a Local」の語尾の文字「l」がタワー形状に表され、その形状は小さいとはいえ著名な「東京スカイツリー」のシルエットとして需要者が容易に認識しうるものであるから、当該タワー形状が本件商標の要部の一つであるとして、本件商標と引用商標が類似する旨主張している。
しかしながら、本件商標は、これを子細に見れば、その構成中上段の文字「Live Like a Local」の語尾の文字「l」がタワー形状に表されているといい得るものであるが、本件商標は全体が同色で表されていること、下段の「TOKYO HUB」の文字が目立つように大きく、かつデザイン化されて表されているのに対し、上段の「Live Like a Local」の文字が小さく表されていること、上段を構成する各語はいずれも平易な英単語であること、及び「l」の文字の形状とタワー形状とが近似していることをあわせ考慮すれば、本件商標は、看者をして、下段の「TOKYO HUB」の文字部分に強く印象付けられ、その上部に小さな「Live Like a Local」の文字が付されているものと理解、認識させるものとみるのが自然である。
そうすると、本件商標は、これに接する取引者、需要者をして、上段の文字の語尾にタワー形状の図形が表されていると認識させるものということは困難である。
したがって、本件商標はその構成中のタワー形状が要部ということはできないから、申立人のかかる主張は、その前提において採用できない。
さらに、本件商標と引用商標とが類似するというべき事情は見いだせない。
オ 小括
以上のとおり、本件商標と引用商標は非類似の商標であるから、両商標の役務が同一又は類似するとしても、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するものといえない。
(3)商標法第4条第1項第15号について
上記(1)のとおり使用商標は、申立人の業務に係る役務を表示するものとして、需要者の間に広く認識されているものと認められるものである。
しかしながら、本件商標と使用商標は、上記(2)と同様の理由により、相紛れるおそれのない非類似の商標であって別異の商標というべきものといえる。
そうすると、本件商標は、その指定役務と使用商標に係る役務の関連性、取引者、需要者の共通性などを考慮しても、これに接する取引者、需要者が使用商標を連想又は想起するものということはできない。
してみれば、本件商標は、商標権者がこれをその指定役務について使用しても、取引者、需要者をして使用商標を連想又は想起させることはなく、その役務が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標は、引用商標との関係を含め、出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものといえない。
(4)商標法第4条第1項第7号について
上記(1)のとおり使用商標は、申立人の業務に係る役務を表示するものとして、需要者の間に広く認識されているものと認められるものである。
しかしながら、上記(2)のとおり本件商標は、その構成中にタワー形状の図形が表されていると認識させるということが困難なものであり、上記(3)のとおり本件商標は、使用商標と相紛れるおそれのない非類似の商標であって別異の商標であり、使用商標を連想又は想起させるものではない。
そうすると、本件商標は、使用商標及び「東京スカイツリー」の著名性及び顧客吸引力に便乗するなど不正の目的をもって使用をするものと認めることはできない。
さらに、本件商標が、その出願及び登録の経緯に社会的相当性を欠くなど、公序良俗に反するものというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものといえない。
(5)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号、同項第11号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
別掲1(本件商標)(色彩は原本参照。)


別掲2(引用商標1、2)


別掲3(引用商標3、4。使用商標)


別掲4(引用商標5)


別掲5(引用商標6)(色彩は原本参照。)


別掲6(引用商標7)(色彩は原本参照。)


別掲7(引用商標8)(色彩は原本参照。)


異議決定日 2021-10-26 
出願番号 商願2020-83987(T2020-83987) 
審決分類 T 1 651・ 22- Y (W43)
T 1 651・ 261- Y (W43)
T 1 651・ 271- Y (W43)
T 1 651・ 263- Y (W43)
T 1 651・ 262- Y (W43)
最終処分 維持  
前審関与審査官 蛭川 一治 
特許庁審判長 齋藤 貴博
特許庁審判官 板谷 玲子
馬場 秀敏
登録日 2021-01-15 
登録番号 商標登録第6341442号(T6341442) 
権利者 株式会社表屋商店
商標の称呼 リブライクアローカルトーキョーハブ、ライブライクアローカルトーキョーハブ、リブライクアローカル、ライブライクアローカル、トーキョーハブ、ハブ、エイチユウビイ、エッチユウビイ 
代理人 藁科 孝雄 
代理人 藁科 えりか 
代理人 藁科 えりか 
代理人 藁科 孝雄 

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