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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W0308
管理番号 1380080 
審判番号 取消2019-300173 
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-12-24 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2019-03-05 
確定日 2021-11-08 
事件の表示 上記当事者間の登録第5825462号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5825462号商標の指定商品及び指定役務中、第3類「つけづめ,つけまつ毛」、第8類「ひげそり用具入れ,ペディキュアセット,まつ毛カール器,マニキュアセット」についての商標登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5825462号商標(以下「本件商標」という。)は、「リップス」の文字を標準文字で表してなり、平成26年12月26日に登録出願、第3類「つけづめ,つけまつ毛」、第8類「ひげそり用具入れ,ペディキュアセット,まつ毛カール器,マニキュアセット」を含む、第3類、第8類、第21類、第35類、第41類、第42類及び第44類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同28年2月12日に設定登録がされ、その後、商標登録の取消しの審判により、指定役務中、第35類「広告業,広告用具の貸与」、第42類「電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供」及び第44類「医療情報の提供,栄養の指導」について取り消すべき旨の審決がされ、令和3年8月13日及び同年同月19日にその確定審決の登録がされ、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録は、平成31年3月14日であり、商標法第50条第2項に規定する「審判の請求の登録前3年以内」とは、平成28年(2016年)3月14日から同31年(2019年)3月13日までの期間(以下「要証期間」という。)である。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第4号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品及び指定役務中、第3類「つけづめ,つけまつ毛」、第8類「ひげそり用具入れ,ペディキュアセット,まつ毛カール器,マニキュアセット」(以下「請求に係る商品」という場合がある。)について、継続して三年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)被請求人による商品の販売や商標の使用は行われていない
ア 被請求人は、本件審判の登録前三年以内に、本件商標を第8類「まつ毛カール器」及び「マニキュアセット」(以下「本件商品」という。)に使用したと主張するが、被請求人の行為は、本件商品との関係における商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかによる本件商標の使用には該当しないことから、本件商標は、その登録の取り消しを免れない。
イ 被請求人は、乙第2号証の1を根拠に、「まつ毛カール器」に本件商標又はそれと社会通念上同一の商標を使用した旨の主張をするものの、乙第2号証の1に示される「ホットビューラー」なる商品は、乙第2号証の1、2頁にて「手軽にまつげをカールさせるホットビューラー。・・・仕様:電源、4乾電池×1(別売)」と記載されているとおり、乾電池によって駆動する「電気式まつ毛カール器」である。「電気式まつ毛カール器」は「まつ毛カール器」とは非類似の商品として考えられているのであって(甲1)、被請求人の主張は、明らかに失当である。
また、乙第2号証に示される商品はいつ販売されたのかが不明であり、乙第2号証は、要証期間内に販売されたことを示すものではない。
加えて、乙第2号証は、商標「LIPPS」が「まつ毛カール器」に付されていること、そして「まつ毛カール器」の広告に付されていることを示すとしても、当該商標は本件商標とは異なるものであるから、本件商標の使用の事実を立証するものではない。換言すれば、使用されている商標は「LIPPS」であって、本件商標とは称呼を同一とし得るのみであって観念を異にするものであるから、これらは社会通念上同一の関係にはない。
さらに、乙第2号証の1には、「LIPPS(リップス)」の表記が認められるものの、括弧内に示される「リップス」の文字は、単に「LIPPS」の読みを需要者に伝えるのみであって、自他商品役務の識別標識たる商標として用いられているものではない。
そもそも「電気式まつ毛カール器」についての本件商標の使用は、「まつ毛カール器」についての本件商標の使用を意味するものではないのであって、被請求人の主張は成り立たない。
ウ 被請求人は、乙第3号証を根拠に、「マニキュアセット」について、本件商標又はそれと社会通念上同一の商標を使用したと主張するが、乙第3号証は、なんら本件商標の使用の事実を立証するものではなく、また、乙第3号証の1に認められる「LIPPS(リップス)」の表記において、括弧内に示される「リップス」の文字は、単に「LIPPS」の読みを需要者に伝えるのみであって、自他商品役務の識別標識たる商標として用いられているものではないというべきである。
エ 被請求人は、乙第4号証を根拠に、本件商標が使用された本件商品が納品されたと主張するが、納品された本件商品に本件商標が付されていることを被請求人は主張立証していない。そして、そもそも、乙第4号証は、被請求人が、本件審判が請求されることを知った後に作成されたものであるから(甲2:株式会社レスプリ宛の併存交渉申入れの書簡)、意味を有しない。
(2)被請求人は、本件商品に関する「取引書類」を「頒布」していない
ア 被請求人は、フランチャイザーである被請求人とフランチャイジーであるO氏との間の契約を定めた契約書は、商標法第2条第3項第8号に定める本件商品に関する取引書類に該当し、当該取引書類はフランチャイジーに頒布されたから、被請求人は、本件商品について、本件商標を使用したと主張する。しかしながら、同号は、「商品・・・に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して・・・頒布・・・する行為」であるところ、ここで「頒布」とは、「広告等が一般に閲覧可能な状態になっていること」を意味すると解される(甲3)。また、「頒布」とは、「広くゆきわたるように分かちくばること」(甲4)を意味する語である。被請求人が同号の「取引書類」に該当すると主張する乙第5号証の1の契約書は、被請求人が、極めて限られた数のフランチャイジーとの契約において契約相手であるフランチャイジーに示したものにすぎないから、同号に定める「頒布」の対象となったものではない。実際、被請求人は、乙第5号証の1において、いくつかのマスキングをしており、明らかに「一般に閲覧可能な状態」ではない。また、前記契約書では、フランチャイジーは、契約終了後も含めてフランチャイザーから受領した情報について守秘義務を負っており、これを「一般に閲覧可能な状態」とすることは許されない。
イ フランチャイザーである被請求人は、フランチャイジーと一体となってフランチャイズシステムないしフランチャイズグループを形成しているのであり、当該フランチャイズシステムないしフランチャイズグループ内でのみ行われる書類の受け渡しは、到底「頒布」と評価し得るものではない。
ウ そもそも、乙第5号証の1は、フランチャイズ契約のための契約書であって、本件商品の販売の取引書類ではない。乙第5号証の1には、被請求人が本件商標と社会通上同一の商標を使用したと主張する本件商品への言及すらない。かかる書類が商標法第2条第3項第8号規定の「商品・・・に関する・・・取引書類」に該当する余地はない。
エ 被請求人は、乙第6号証を根拠に本件商品が販売されたかのように主張するものの、乙第6号証には「まつ毛カール器」も「マニキュアセット」も記載されていない。
(3)被請求人は、本件商標と実質的同一の商標を使用していない
ア 被請求人は、乙第5号証の1、1頁に「リップスパートナーサロン契約書」の文字が付されていることをもって、本件商標「リップス」と社会通念上同一の商標が使用されていると主張するが、「リップスパートナーサロン契約書」の文字のうち「パートナーサロン契約書」の文字を捨象して「リップス」の文字のみが出所識別標識として機能するから、これは「リップス」と社会通念上同一であるとする被請求人の主張にはなんら理由がない。
「リップスパートナーサロン契約書」の文字において、「契約書」の部分については、当該文字が契約書に付されているという取引実情に鑑みれば、これが出所識別標識として需要者に強い印象を与えるものではないと考え得るものの、称呼において淀みなく発音され、外観において片仮名でまとまりよく構成された「リップスパートナーサロン」の文字は、いずれかの部分のみが強く支配的な印象を与えるものではなく、その構成文字全体をもって需要者ないし取引者に認識される。
イ フランチャイズ契約を「パートナーサロン契約」と呼称することが一般的であるわけでもなく、被請求人自身、乙第5号証の1、2頁冒頭において「以下のとおりフランチャイズ契約(通称、『リップスパートナーサロン契約』、以下、『本契約』という)を締結する」と記載し、被請求人独自の呼称として「リップスパートナーサロン契約」の語を用いている。このような語を「リップス」と社会通念上同一と評価する理由はない。
ウ 「リップスパートナーサロン契約書」と記載されているとおり、乙第5号証の1の書類が契約書であることはそれを目にしたフランチャイジーにおいて明らかであり、「リップスパートナーサロン契約書」の文字はそのタイトルを単に示すものとして用いられているにすぎず、自他商品役務の識別標識たる商標として用いられているものではない。
なお、被請求人は、乙第5号証の2が乙第5号証の1の第1条第1項の「別紙」に当たる旨主張するところ、当該契約書と覚書は同一の締結日であるにも関わらず、フランチャイジーである乙の印影が異なり、被請求人の主張には、その全体において重大な疑義がある。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第8号証(枝番号を含む。なお、枝番号を有する証拠において、枝番号の全てを引用する場合は、枝番号の記載を省略する。)を提出した。
1 答弁の理由
(1)商標権者は、以下のとおり、要証期間内に、本件商標を、請求に係る商品のうち第8類の「まつ毛カール器」及び「マニキュアセット」(本件商品)について使用している。
(2)乙第2号証の1は「男性用のビューラー」、すなわち、「男性用のまつ毛カール器」の広告の写しであり、乙第2号証の2及び3は、当該広告の写真の商品を拡大したものである。乙第2号証の1の広告には、「LIPPS」や「リップス」の表示があり、本件商標と社会通念上同一の商標が表示されている。加えて、乙第2号証の2及び3によれば、商品本体には、本件商標と社会通念上同一の「LIPPS」の文字を伴う被請求人の登録第5865364号商標が表示されているとともに、「COSFAIR」の文字が表示されている。
また、乙第3号証の1は「男性用のマニキュアセット」の広告の写しであり、第3号証の2は当該広告の写真の商品を拡大したもの、乙第3号証の3はセットの道具を収納したケースの内部の写真である。乙第3号証の1の広告には、「LIPPS」や「リップス」の表示があり、本件商標と社会通念上同一の商標が表示されている。加えて、乙第3号証の2及び3によれば、ケース本体には、本件商標と社会通念上同一の「LIPPS」の文字を伴う被請求人の登録第5865364号商標が表示されている。
そして、乙第4号証の1及び2は、当該商品の仕入れ先である株式会社コーエイトレードから商標権者に宛てた平成31年(2019年)1月28日付の請求書と同年2月25日付の納品書の写しである。その「品番・品名」の欄に「コスフェアホットビューラー(まつ毛カール器)」又は「コスフェアホットビューラー」の記載や、「ネイルケアセット6p(マニキュアセット)」の記載があり、これらが上述の「男性用のまつ毛カール器」及び「男性用のマニキュアセット」に係るものであること明らかであるから、本件商標が要証期間内に商標権者によって使用されていたといえる。
(3)加えて、商標権者は、ヘアサロンに関するフランチャイズシステムを運営しているところ、被請求人は、乙第5号証の1としてフランチャイズ契約書の写し、乙第5号証の2として乙第5号証の1のフランチャイズ契約書第1条第1項の別紙に当たる覚書の写しを提出する。そのフランチャイズ契約書の下では、フランチャイジーはヘアサロンで使用する化粧品、器具、備品等についてフランチャイザーである商標権者に従わなければならないこととなっており、商標権者は、フランチャイザーとして、フランチャイジーであるヘアサロンに対して、そのフランチャイズ契約書に基づき、ヘアサロンにおける施術に使用する化粧品や、種々の化粧用具などを販売している。すなわち、フランチャイズ契約書の第5条第1項〈4〉(審決注:〈4〉は、○の中に4の数字。以下、同契約書からの引用において同じ。)によれば、ヘアサロンの業務遂行にあたって、フランチャイジーである乙は「ヘアサロンで使用する化粧品、器具、備品、材料についての内容、品目、銘柄、取引先、その他甲が指定する一切の事項」について、フランチャイザーである商標権者に従うこととなっており、同条第10項によればその費用はフランチャイジーが負担することになっている。このことは、乙第6号証の商標権者からの請求書の商品名の欄に、化粧品や、種々の化粧用具が含まれていることからも明らかであり、請求に係る商品も、美容を行うフランチャイジーの店舗にとって、ヘアサロンの業務遂行にあたって当然使用する器具、備品、材料の一つといえる。
そして、フランチャイザーである商標権者は、フランチャイズ契約書に基づき、フランチャイジーに商品の販売をしているのであり、その契約書は商標法第2条第3項第8号に定める商品に関する取引書類に該当する。さらに、同契約書の末尾には「甲、乙及び丙は上述のとおり合意したので、本契約に署名、捺印をなし、3通作成のうえ、各自1通宛保有する。」とあり、契約日として「平成29年4月5日」と記載されている。そうすると、契約日である「平成29年4月5日」は要証期間内であり、同日にフランチャイジーが契約書を手にしたことは明らかであるから、商標法第2条第3項第8号に定める商品に関する取引書類である同契約書は要証期間内にフランチャイジーであるヘアサロンの乙に頒布されたといえる。
しかも、その契約書の1頁に「リップスパートナーサロン契約書」として、「リップス」の商標が使用されている。「パートナーサロン契約書」の文字を伴ってはいるが、該文字部分が、ヘアサロンに関するフランチャイズ契約との関係においては出所識別標識としては全く機能しない部分であって、出所識別標識としての使用に係る商標は「リップス」の文字部分といえる。そうすると、その使用に係る商標と本件商標とは、社会通念上同一の商標ということができる。
したがって、かかる観点からも、本件商標は、要証期間内に商標権者によって使用されていたといえる。
(4)以上のとおり、本件商標は、要証期間内に、日本国内において、商標権者又は使用権者により、請求に係る商品である第3類「つけづめ,つけまつ毛」及び第8類「ひげそり用具入れ,ペディキュアセット,まつ毛カール器,マニキュアセット」のうちの「男性用のビューラー」や「男性用のマニキュアセット」を始めとした商品について使用されていたことが明らかであるから、本件審判請求は成り立たない。
2 令和2年11月26日付け審尋に対する回答(同3年2月15日付け回答書)
(1)乙第3号証の「広告」の主体及び日時について
乙第3号証に関しては、ウェブページを改めて提出する(乙7)。当該ウェブページは、Amazon.com,Inc.が運営するECサイトにおける被請求人に係る商品ページである。
乙第7号証の1及び2の、2頁目「登録情報」の「メーカー」の項に「株式会社レスプリ」と記載されていることから、「マニキュアセット」が被請求人に係る商品であることは明らかである。同号証1頁目右側の四角内には「販売元LIPPS(リップス)」と記載されており、当該リンクから確認できる出品者プロフィールには「株式会社レスプリ」と記載があることから(乙8)、被請求人による「マニキュアセット」の広告であると理解できる。
また、「取り扱い開始日」の項には「2019/3/5」と記載されていることから、当該日付から掲載されていることが明らかである(乙7の1、2)。
(2)乙第3号証の再提出について
上記のとおり、乙第3号証は改めて提出する(乙7)。乙第7号証の商品ページを二種類提出しているのは、乙第3号証の2及び3の商品の拡大写真に代えて、商品頁と合わせて確認できるものを用意したためである。
乙第3号証の2の「商品外観」を乙第7号証の1、乙第3号証の「商品内容」を乙第7号証の2としている。これにより、当該ウェブページにおける広告対象となる商品がマニキュアセットであり、「LIPPS」の文字が付されていることが確認できる。
(3)乙第3号証の「マニキュアセット」の販売者について
上記(1)のとおり、乙第7号証の1及び2の、1頁目右側の四角内に「販売元LIPPS(リップス)」と記載されており、当該リンクから確認できる出品者プロフィールには「株式会社レスプリ」と記載があることから被請求人が販売元であることが確認できる。
(4)乙第5号証及び乙第6号証について
乙第5号証、「リップスパートナーサロン契約書」は、被請求人が通常使用権者たるフランチャイジー店舗に、本件商品を含む被請求人の「独自商品」(同契約書第1条2項〈5〉)を供給していることを示すものである。ただし、当該証拠及び答弁書の記載を検めたところ、乙第6号証内に「マニキュアセット」の記載は見当たらないことや、被請求人が「マニキュアセット」に「LIPPS」及び「リップス」が使用されていたことについては前項証拠及び説明で十分であると考えるため、乙第5号証及び乙第6号証とそれに関する答弁書の主張については本件の判断において除外して問題ない。
3 令和3年4月22日付け審尋について
審判長は、期間を指定して、乙第7号証で示された、Amazon.co.jpでの本件商標を使用した商品の取り扱い開始日(2019年3月5日)が、商標法第50条第3項の「審判の請求前3月からその審判の請求の登録の日までの間」(2018年12月5日から2019年3月14日の期間)に該当し、「その登録商標の使用がその審判の請求がされることを知った後であることを請求人が証明したとき」に該当するものであるから(甲2)、当該期間に使用したことについて正当な理由があることを証明するか、前記期間以前の本件商標の使用に係る証拠の追加提出を求める審尋を発したが、被請求人は、応答していない。

第4 当審の判断
1 証拠及び被請求人の主張によれば、以下の事実が認められる。
(1)被請求人は、本件商標と社会通念上同一の商標を、請求に係る商品のうち第8類の「まつ毛カール器」及び「マニキュアセット」について使用していると主張するが、乙第2号証の「LIPSメンズホットビューラー」は、同号証の2頁目に「商品の説明」として、「手軽にまつげをカールさせるホットビューラー。・・・仕様:電源、4乾電池×1(別売)」と記載されているとおり、乾電池によって駆動する「電気式まつ毛カール器」であるから、本件商品の手動式の器具である「まつ毛カール器」に含まれる商品ではない(甲1)。
(2)ア Amazonのウェブサイト(乙7)において、「【メンズマニキュアセット/爪のお手入れに必要な5アイテム】LIPPS(リップス)メンズマニキュアセット」の見出しで、ハサミ、爪切り(2種類)、爪やすり、甘皮取り、毛抜きの6商品がセットとなったものが掲載されており、当該商品ケースの中央に、「P」(アクサンテギュが付されている。以下同じ。)の文字を内包する正方形及び「LIPPS」の欧文字が表示されている。また、1頁目の右側に「販売元 LIPPS(リップス)」の記載、2頁目の下に「Amazon.co.jpでの取り扱い開始日:2019/3/5」及び「メーカー:株式会社レスプリ」の記載がある。
イ また、乙第7号証に記載された「販売元LIPPS(リップス)」のリンクから確認できる「LIPPS(リップス)」の出品者プロフィール(乙8)には、「株式会社レスプリ」と、被請求人の住所、代表取締役の氏名の記載がある。
ウ さらに、乙第4号証の1の請求書は、前記アの「マニキュアセット」がAmazonで取り扱い開始される少し前の平成31年(2019年)1月28日付けのものであり、同年2月20日に、株式会社コーエイトレードから被請求人に対し、「品番・品名」の欄の「ネイルケアセット6p(マニキュアセット)」及び「名入れ代」、「数量」の欄の「50」の記載から、名入れをしたマニキュアセットが50個納品されたであろうことがうかがえる。また、乙第4号証の2の同年同月25日付け納品書は、「品番・品名」欄に「マニキュアセット6P」及び「名入れ代」、「数量」の欄に「50」とあることから、当該請求書に記載された商品の納品書であると推認される。
(3)ア 甲第2号証によれば、請求人は被請求人に対し「ご連絡」と題する併存交渉申し入れのための書留内容証明郵便物を2018年12月5日付けで送付し、翌6日に被請求人に配達された。当該郵便物の内容には、併存交渉に応じない場合には、被請求人は本件商標に対し、商標法第50条第1項の商標登録の取消しの審判を請求する旨の記載がある。
イ 乙第7号証によると、「LIPPS(リップス)メンズマニキュアセット」の「Amazon.co.jpでの取り扱い開始日」は、2019年3月5日である旨の記載がある。
ウ そして、被請求人は、上記第3の3のとおり、本件商標を商標法第50条第3項の「審判の請求前3月からその審判の請求の登録の日までの間」(2018年12月5日から2019年3月14日の期間)に使用したことについて正当な理由があることを証明しておらず、上記期間以前の本件商標の使用に係る証拠の追加提出もしていない。
2 判断
(1)使用者について
上記1(2)ア及びイによれば、乙第7号証に示される「マニキュアセット」のメーカー、出品者は、本件商標権者(被請求人)である。したがって、本件商標の使用者は、商標権者である。
(2)使用商標及び使用商品について
上記1(2)アのとおり、Amazonのウェブサイト(乙7)において、「【メンズマニキュアセット/爪のお手入れに必要な5アイテム】LIPPS(リップス)メンズマニキュアセット」の見出しで、マニキュアセットが掲載されており、当該商品ケースの中央に、「P」の文字を内包する正方形及び「LIPPS」の欧文字が表示されている。
本件商標は、前記第1のとおり、「リップス」の文字を標準文字で表してなるものである。
他方、使用に係る商標は、前記1(2)アの認定事実からすれば、マニキュアセットのケースの中央に表示された、「P」の文字を内包する正方形の図形の下段に「LIPPS」の欧文字を表してなるもの(以下「使用商標1」という。)及び見出し中に表示された「LIPPS(リップス)」の文字を表してなるもの(以下「使用商標2」という。)である(以下、これらをまとめていうときは、単に「使用商標」という。)。
そして、使用商標1の構成中、図形部分と文字部分は常に一体のものとしてみなければならないというほど不可分的に結合しているものとはいえないから、それぞれが分離して看取されるものであるところ、「LIPPS」の欧文字は、辞書等に載録のない造語であるから、使用商標1からは、「リップス」の称呼が生じ、特定の観念は生じないものである。
他方、本件商標は、前記第1のとおり、「リップス」の文字を表してなるところ、これより「リップス」の称呼が生じ、特定の観念は生じない。
そうすると、本件商標と使用商標1中の文字部分は、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼を生じ、観念においても異なるものではない。
次に、使用商標2は、「LIPPS(リップス)」の文字からなるところ、その構成中、「(リップス)」の文字は、「LIPPS」の読みを表すものと理解される。そして、「LIPPS」の欧文字は、辞書等に載録のない造語であるから、「LIPPS」の欧文字部分からは、「リップス」の称呼が生じ、特定の観念は生じないものである。
そうすると、本件商標と使用商標2は、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼を生じ、観念においても異なるものではない。
よって、使用商標は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標である。
(3)本件商標の使用時期について
ア 商標法第50条第3項は、「審判の請求前3月からその審判の請求の登録の日までの間に、日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品・・・についての登録商標の使用をした場合であって、その登録商標の使用がその審判の請求がされることを知った後であることを請求人が証明したときは、その登録商標の使用は第1項に規定する登録商標の使用に該当しないものとする。ただし、その登録商標の使用をしたことについて正当な理由があることを被請求人が明らかにしたときは、この限りでない。」と規定している。
イ 本件商標に係る商標登録原簿の記載によれば、本件審判の請求日は、平成31年3月5日であり、本件審判の請求の登録の日は、同年同月14日であるところ、上記(2)に係る本件商標の使用は、平成31年3月5日以降と認められるから、その使用は、商標法第50条第3項に規定する「審判の請求前3月からその審判の請求の登録の日までの間の使用」に該当するものである。
ウ これに対し、上記1(3)のとおり、請求人は、2018年(平成30年)12月5日付けの書留内容証明郵便物(甲2)をもって、本件商標権者に対し、本件商標について併存交渉を申し入れ、交渉に応じない場合には、本件商標について不使用取消審判を請求する旨を通知し、翌6日に配達されたことが認められる。
エ したがって、本件商標権者による本件商標の使用は、本件審判の請求前3月からその審判の請求の登録の日までの間の使用であって、本件審判の請求がされることを知った後の使用であることを請求人が証明し得たものといえるから、商標法第50条第3項ただし書所定の「正当な理由」があることを被請求人が明らかにしない限り、同条第1項に規定する登録商標の使用に該当しないこととなる。
(4)商標法第50条第3項ただし書所定の「正当な理由」の有無について
上記1(3)ウのとおり、商標法第50条第3項ただし書所定の「正当な理由」があることを被請求人は明らかにしていない。
(5)小括
本件商標権者は、要証期間内と認められる平成31年3月5日に、請求に係る商品中の第8類「マニキュアセット」について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標及び本件商標と同一の商標をAmazonのウェブサイトの画面上に表示して広告したものと認められる。
しかしながら、当該商品の広告を開始した平成31年3月5日は、本件審判の請求前3月からその審判請求の登録の日までの間であって、かつ、本件商標権者において本件審判が請求されることを知った後であるところ、被請求人は、その使用について「正当な理由」があることを明らかにしたものとは認められないから、当該商品に係る使用商標の使用は、商標法第50条第1項に規定する登録商標の使用に該当しないといわざるを得ない。
その他、要証期間に、本件商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、請求に係る商品のいずれかについて、本件商標の使用をしたことを認めるに足りる証拠の提出はない。
したがって、被請求人が、請求に係る商品についての本件商標の使用をしていることを認めることはできない。
3 まとめ
以上のとおり、被請求人は、要証期間内に、請求に係る商品について本件商標の使用をしていることを証明したとはいえないから、被請求人の提出に係る証拠によっては、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが請求に係る商品についての本件商標(本件商標と社会通念上同一と認められる商標を含む。)の使用をしていることを被請求人が証明したとはいえない。
また、当該使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにしたともいえない。
したがって、本件商標の登録は、その指定商品及び指定役務中、請求に係る商品について、商標法第50条の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

別掲
審理終結日 2021-08-26 
結審通知日 2021-08-31 
審決日 2021-09-30 
出願番号 商願2014-110409(T2014-110409) 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (W0308)
最終処分 成立  
前審関与審査官 吉田 聡一 
特許庁審判長 森山 啓
特許庁審判官 綾 郁奈子
板谷 玲子
登録日 2016-02-12 
登録番号 商標登録第5825462号(T5825462) 
商標の称呼 リップス 
代理人 特許業務法人大島・西村・宮永商標特許事務所 
代理人 大谷 寛 

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