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審決分類 |
審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W28 |
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管理番号 | 1379944 |
審判番号 | 取消2020-300462 |
総通号数 | 264 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2021-12-24 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2020-06-26 |
確定日 | 2021-10-13 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第5593050号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第5593050号商標の商標登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5593050号商標(以下「本件商標」という。)は、「ドクターストレッチ」の片仮名と「Dr.Stretch」の欧文字を二段に併記してなり、平成25年2月22日に登録出願、第28類「ストレッチ運動具,サポーター,その他の運動用具」を指定商品として、同年6月21日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。 そして、本件審判の請求の登録日は、令和2年7月17日である。 なお、本件審判の請求の登録前3年以内の期間である平成29年7月17日から令和2年7月16日までを、以下「要証期間」という。 第2 請求人の主張 請求人は、結論同旨の審決を求め、審判請求書及び弁駁書において、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、甲第1号証(以下、証拠の表記に当たっては、「甲(乙)第○号証」を「甲(乙)○」のように、「第」及び「号証」を省略して記載する。)を提出した。 1 請求の理由 本件商標は、その指定商品について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。 2 答弁に対する弁駁 被請求人提出に係る乙1ないし乙16は、請求に係る指定商品について、要証期間内に本件商標の使用をしていたことを基礎づけるものではない。 (1)乙1及び乙2について 被請求人は、令和2年5月より販売を開始した商品「腰サポーター」に関する取扱説明書及び実物写真であると主張するが、乙1及び乙2には、令和2年5月より販売を開始したという事実は示されていない。乙1はいつ、誰に配布され、乙2はいつ、誰に販売されたのかという事実が示されていない。 また、乙2は、撮影日が示されていない。 したがって、乙1及び乙2は、要証期間内に、現実に取引者・需要者に販売されたことを示すものではなく、要証期間内に本件商標が使用されたということもできない。 なお、証拠説明書によれば、乙2の撮影日は、令和2年9月9日であり、予告登録日(令和2年7月17日)の後である。 (2)乙3及び乙4について 被請求人は、乙3及び乙4の注文書及び納品書の発注番号と備考欄の4桁の数字が共通するとして、注文書及び納品書が対応していると主張する。 一方、乙3には本件商標が明記されていないが、乙1の「月村泰規先生 開発腰サポーター 『ドクターストレッチ』」の中の、「月村」「先生」「腰サポーター」を略して記載したもので、本件サポーター(以下「本件商品」という。)を説明したものであり、乙4は乙3に対応するものだから同様である(という趣旨と思われる)と主張し、したがって、乙1ないし乙4は同一商品を示していると読み取れると主張する。 しかしながら、乙3及び乙4には、本件商標の表示はなく、乙3及び乙4は、本件商標に関する証拠ではないから、乙1ないし乙4が同一商品に関する証拠であるという認定など成し得ないことは明らかである。 乙1ないし乙4の繋がりは、客観的に表れていない事実を、あたかも主観により縫い合わせて繋げるかのような主張であり、失当である。 なお、仮に、乙1ないし乙4が本件商標に関する証拠であるとしても、本件商品は吉田司株式会社との共同開発商品であるから(乙1)、乙3及び乙4の注文及び納品のやり取りは、共同開発者間での、試作等のためのやり取りにすぎず、取引者・需要者に対する商標の使用には当たらない。 (3)乙5ないし乙8について 乙5について、被請求人は、商品説明書(企画書)であって販売予定日も記載されていると主張するが、乙5には本件商標の記載はなく、そもそも商標の使用に当たらない。また、企画の段階にとどまり、使用準備としても企画の段階で熟しておらず、取引者・需要者に対する商標の使用にも当たらない。 乙6について、被請求人は、乙5の企画に対応するカタログであるとするが、乙5において述べたのと同様である。 なお、被請求人は、乙1中の開発者の名前及び図、乙2の写真と同一形状のサポーターが、乙5及び乙6で使用されていること、乙2と乙6の素材の構成が共通することから、乙5及び乙6は、乙1ないし乙4の本件商標であることが理解できると主張する。 しかしながら、このように、各証拠を比較検討することによって同一商品であると認められるのであれば、商標を表示しなくても、商標を使用したことになるという立論は、表示されない商標の存在を認めるかのごとくであり、商標概念を揺るがすものであって認められない。 乙7について、被請求人は、乙6のカタログに基づき消費者が注文した場合、日本文化センター株式会社(以下「日本文化センター」という。)の商品発送状態を示すものであるとし、箱に貼付されているラベルの商品番号が乙5及び乙6に記載・掲載されている番号と一致すること、また内箱には本件商標が付された取扱説明書及び商品が販売されたことがわかるとする。 しかしながら、乙7には本件商標の表示がない。また、「乙6のカタログに基づき」「消費者が」「注文した」ことは、全く立証されておらず、撮影日も立証されていない。 以上から、乙7には本件商標の表示がなく、取引者・需要者に販売したこと、要証期間内の使用についての立証がなされておらず、使用に関する証拠として意味をなさない。 なお、証拠説明書によると、撮影日は令和2年9月14日であって、予告登録日の後である。 乙8について、被請求人は、日本文化センターからの本件商品に関する発注書の写しであり、商品コードが、乙5ないし乙7に記載・掲載された商品番号と一致することから、乙1ないし乙7の本件商標に係る商品であることが理解できるとする。 しかしながら、乙8にも商標の記載はなく、使用日の立証もなされていない。 したがって、乙8は、商標の表示を欠き、取引者・需要者に対する販売の事実の立証を欠くことから、商標の使用に当たらず、要証期間内の使用も立証されていない。 なお、証拠説明書によると、撮影日は、令和2年9月11日であって、予告登録日の後である。 (4)乙9ないし乙15について 被請求人は、乙9について、株式会社アイケイ(以下「アイケイ社」という。)との間でも、本件商標を用いた新商品を開発中であるとし、連絡を取り合い、ストレッチトレーナーを含めたミーティングやメールのやり取りを成していると主張する。 しかしながら、乙9は、共同開発者間のいわば内部のやり取りにすぎず、取引書類ですらないものである。取引者・需要者に対する関係で、販売等に当たり本件商標を使用したという事実を示すものではない。 なお、乙9の1(令和2年2月25日)には、「『ドクターストレッチ』での取り組みができないものかと」という文が見られるが、「具体的商品はまったく未定です」とも記載されており、本件商標をいかなる商品に使用するかは全く定まっておらず、この段階で、本件商標を使用したと認められないことは明らかである。 乙9の2以降は、企画会議の内部資料にすぎないものであるが、本件商標との結びつきすら明らかでなく、客観的に商標使用の事実が表れている証拠は皆無である。 なお、乙9の8(令和2年5月22日)の時点で、「これからファストサンプルを作る」という記載があり、この時点では、サンプルも未完成であることが示されている。 乙9の11(令和2年7月17日(予告登録日))の時点で、同月29日又は30日に、サンプルを使って試着しながらの打ち合わせが企図されている。すなわち、予告登録日には、商品は完成していない。そして、何より、本件商標との結びつきが全く明らかでない。 乙9の12(令和2年8月13日)の時点で、「成型工場では」「裁断無しの方法を考えて欲しい」「ゴムの劣化を検証する必要がある」とされ、予告登録日以後も、縫製方法や縫製工場を検討し、探していたことが示されている。すなわち、予告登録日において、商品は試作段階(準備段階)で、商品形状、製法(さらに、素材も確定していないとも読み得る可能性もある)について確定していなかったことが明らかである。商品形状、製法が確定せず、見積りも未了で、量産する体制も築けていない段階では、商標使用の準備段階としても熟していないものといわざるを得ない。しかも、ここにおいては、当該試作品群と本件商標の結びつきは何ら示されていない。 以上から、乙9は商標の表示を欠き、取引者・需要者に対する販売の事実の立証を欠き、要証期間内に商品の完成も認められず、商品準備としても熟した段階にないことから、本件商標を使用したことは立証されていない。 乙10について、被請求人は、本件商標の表示がみられるとするが、乙10は、共同開発者における企画会議の資料であって、商品の開発の端緒としての会議資料にすぎず、取引者・需要者に対する販売等の使用には当たらないことは明らかである。 なお、インナーとサポーターが同義語として表示されるという主張がなされているが、両者は完全に一致するものではない。乙14の内容は、インナーとサポーターの意義に関する被請求人の主張を支持するものではなく、乙15についても、インナーとサポーターが同義であるという説明にはならない。 被請求人は、乙11については、Y氏のデザイン案、乙12については、縫製仕様書であり、商品がストレッチ用サポーターであることが理解できるとする。 しかしながら、乙11及び乙12は、本件商標の表示を欠き、受信日時が示されておらず、商品は試作中であることも明らかである。 したがって、乙11及び乙12は、商標の表示を欠き、商品は末完成であって、取引者・需要者に対する販売の事実の立証を欠き、要証期間内の立証も認められないことから、本件商標を使用したことは立証されていない。 乙13について、被請求人は、乙9ないし乙12の試作品であり、奈良や鹿児島の工場において、試作品を作成していることがわかるとするが、乙13は、商標の表示を欠き、予告登録日の2日前の令和2年7月15日の段階で試作中であり、完成に至るには乗り越えなければない課題が存在することが示されている。 したがって、乙13は、商標の表示を欠き、取引者・需要者に対する販売の事実の立証を欠き、要証期間内に商品の完成も認められないことから、本件商標を使用したことは立証されていない。 (5)乙16について 乙16について、被請求人は、サポーターを開発していた経緯を示す資料であると主張するが、乙16はストレッチボード及びトレーニング法に関する資料であり、本件商標の指定商品の範囲に属する資料ではない。 したがって、本件商標の不使用取消審判における使用の事実を基礎づける資料とはならない。 (6)結語 被請求人提出に係る乙1ないし乙16は、大半において本件商標の表示を欠くものであること、商品は未完成であり取引者・需要者に対する販売の事実が認められないこと、本件商標の使用準備としても、被請求人内部又は共同開発者内部における企画の段階であって使用準備として全く熟した段階にないこと、要証期間内の立証もなされていないことから、請求に係る指定商品について、要証期間内に本件商標の使用をしていたことを基礎づけるものではない。 また、請求に係る指定商品に関し、本件商標の使用をしていないことについて正当な理由はない。 第3 被請求人の主張 被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙1ないし乙16(枝番号を含む。)を提出した。 1 本件商標は、指定商品「サポーター」について、少なくとも令和2年(2020年)1月から、被請求人により使用の準備が開始され、既に使用(販売)もされているから、商標法第50条第1項の規定による取消しの対象となるものではない。 2 被請求人(商標権者)について 被請求人であるセラフィック株式会社は、東京都に本社を置く、美と健康をコンセプトにした商品開発をしている企業であり、主に通信販売業者に商品を卸している。 3 本件商標の使用・使用準備の状況について (1)乙1及び乙2は、令和2年5月より販売を開始した商品「腰サポーター」に係る取扱説明書及びその実物写真である。当該説明書及び実物のタグから、商品「サポーター」に本件商標を被請求人であるセラフィック株式会社が使用していることが読み取れる。 (2)乙3は、乙2の「サポーター」の製造元である「吉田司株式会社」へ商品の製造を発注(注文)した際の「注文書」である。 乙2の白いタグ上部にある品番と、乙3の品名の番号「K10-0170-0109」が一致することから、乙1ないし乙3が同一商品を示していることが確認できる。 なお、乙3には「ドクターストレッチ」と明記されていないが、乙1の「月村泰規先生 開発腰サポーター『ドクターストレッチ』」中の、「月村」「先生」「腰サポーター」を略して記載したもので、本件商品を説明したものである。 また、乙4は、乙3の商品注文に対し、Mサイズと3Lサイズの納品に関する「吉田司株式会社」からの「納品書」である。 乙3の発注番号「9598」と乙4の備考欄の「9598」、サイズごとの数量・単価・金額が共通することから、これらが対応する書面であることが理解できる。 これらの事実から、乙1ないし乙4が同一商品を示していること、被請求人は、本件商標を指定商品「サポーター」に使用すべく、令和2年(2020年)2月から準備を開始していることが読み取れる。 (3)乙5は、日本文化センターのカタログに販売商品の掲載を依頼するために被請求人が同社宛に送付した商品説明書(企画書)であり、商品の写真や材質の説明などから、2020年1月14日の企画書記入日には商品「サポーター」が既に完成していることが読み取れる。なお、書面右上の記載からは、2020年5月よりカタログに掲載して販売する旨も記載されている。 また、乙6は、乙5の企画に基づき商品が掲載された、日本文化センターが発行するカタログ(暮らし快適通信(No.553)2020年8月号)である。 なお、乙5及び乙6には、本件商標が明示されていないが、「開発」者として「月村泰規先生」の名前が掲載されていること、乙1の使用状態の図及び乙2の実物の写真と同一形状のサポーターが乙5及び乙6に掲載されていること、乙2のタグに掲載されている「品質表示」と乙5の材質表示並びに乙6中の素材の構成が一致することから、乙5及び乙6の商品が乙1ないし乙4の本件商標に係る商品であることが理解できる。 さらに、乙7は、乙6のカタログに基づき消費者が注文した場合の、日本文化センターの商品発送状態を表す写真である。乙7の1及び2にあるように、箱に貼付されているラベルの商品番号が、乙5及び乙6に記載・掲載されている番号と一致すること、また、外箱を開封すると、内箱が入っており、この内箱には本件商標が付された取扱説明書及び商品(サポーター)がPP袋に収められていることから、乙1及び乙2が確かに日本文化センターを通じて販売されていることがわかる。 乙8は、日本文化センターからの本件商品に関する「発注書」の写しであり、商品コードが、乙5ないし乙7に記載・掲載されている商品番号と一致することから、日本文化センターのカタログに掲載されている商品であることが確認でき、乙1ないし乙7の本件商標に係る商品であることが理解できる。 これらの事実から、被請求人は、本件商標を指定商品「サポーター」に使用すべく、少なくとも令和2年(2020年)1月から準備を開始し、同年5月から日本文化センターを介して販売を開始している事実が理解できる。 (4)被請求人は、また、愛知県名古屋市に本社を置く通信販売代行業者であるアイケイ社と「ドクターストレッチ」の名称を用いた新商品を開発中である。 乙9にあるように、2020年2月からアイケイ社と連絡を取り合っており、さらにはストレッチトレーナーのY氏も含めたミーティングやメールのやりとりも数多くなされている。 乙10は、アイケイ社が商品開発会議において社内で配布した「提案書」であり、【品名】欄等に本件商標が記載されている。 なお、乙10及び後述の証拠において、商品名を「肩甲骨ストレッチインナー」と記載しているが、乙10中の「商品イメージ」のような「インナー(下着)」のことを業界では「サポーター」と位置づけ・称呼する慣習があり、通販サイトにおいても「インナー」と「サポーター」は同義語として表示されている事実が認められることから(乙14、乙15)、乙10及び後述の証拠は本件商標の指定商品「サポーター」の使用と認められるべきものである。 また、乙11は、乙9の6にてアイケイ社から被請求人が受領した、Y氏の商品デザイン案、乙12は、乙9の8にて被請求人がアイケイ社及びY氏に送信した「縫製仕様書」であり、これらの事実から、商品は、背中などのストレッチ用サポーターであることが理解できる。 乙13は、アイケイ社のK氏に向けたサンプル送付状であり、乙9ないし乙12における準備の次のステップとして、既に奈良や鹿児島の工場にて試作品を作成していることがわかる。 これらの事実から、被請求人は、本件商標を指定商品「サポーター」に使用すべく、令和2年(2020年)2月から準備を開始し、現在もこれを継続していることが読み取れる。 (5)乙16は、被請求人が本件商標の登録前から「サポーター」を開発している経緯を表す資料であり、2012年当時から通信販売業者「カタログハウス」などと開発を続けていたこと、全く同じ形状のストレッチボードが他社から販売されてしまい企画を中止するというアクシデントも重なり、何回も試作を重ね数年がたってしまった経緯を示すものである。 また、この資料には、開発にあたり指導を仰いだ、乙1等で紹介される月村先生の経緯などのメモも含まれる。 4 まとめ 以上より、被請求人は、要証期間内に日本国内において、商標権者が、本件審判の請求に係る指定商品中「サポーター」に、本件商標の使用の準備をしていた事実及びそれに伴う使用を開始している事実を証明したものと認めることができる。 また、かかる商標権者の行為のうちいくつかは、審判請求前三月以内の使用にあたるものの、審判請求がされることを知る前から継続して具体的な使用計画や準備をしていた結果であり、正当な理由があると十分にいえるから、第50条第3項に規定するいわゆる「駆け込み使用」にも該当しない。 よって、本件審判の請求は成り立たないとの審決を求めるものである。 第4 当審における審尋 当審において、令和3年4月28日付けで送付した審尋において示した合議体の暫定的見解の要旨は、以下のとおりである。 被請求人の提出に係る答弁書によっては、以下のとおり、本件商標の本件指定商品についての要証期間内の使用を立証するには不充分又は不適切な点がある。 1 乙1ないし乙8に基づく主張について 乙1ないし乙8の証拠を通してみても、本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。以下、同じ。)が、要証期間内に、本件指定商品について使用された事実を確認できない。 (1)被請求人が本件商標を使用していると主張する商品が「運動用サポーター」であることを確認できない。 すなわち、本件指定商品は、第28類の「運動用具」を指定するものであるから、本件指定商品中「サポーター」は、運動用であることを要す。しかしながら、乙1、乙5及び乙6に記載された「腰サポーター」は、いずれも、運動用である旨の説明がなく、むしろ、腰痛への対策をうたった商品であることから、「腰用サポーター」であることは認められるものの、運動用であることを確認できない。また、乙2ないし乙4、乙7及び乙8をみても、これらに記載又は表示された商品が運動用の「サポーター」であることを確認できない。 (2)乙1の取扱説明書には、「ドクターストレッチ」の文字が表示されており、証拠説明書によれば、この作成日は2020年5月末とされているが、乙1からは、作成日の表示を確認できない。なお、乙5には、発売が「’20年5月」と記載されているが、記入年月日が同年1月14日であるから、当該記載は、予定にすぎないものであり、そのときに販売されたことを客観的に裏付けるものとはいえない。 また、2020年9月14日に撮影したとされる商品の梱包写真(乙7)には、乙1と同じと思われる取扱説明書が商品の包装袋に入れられているが、上記撮影日は要証期間の後である。 その他、当該取扱説明書が要証期間内に頒布されたことを示す証拠を見いだせない。 したがって、乙1の取扱説明書が要証期間内に頒布された事実を確認できない。 (3)乙2の商品写真は、証拠説明書によれば、2020年9月9日に撮影したとされているが、この日付は要証期間後である。 また、当該商品は、タグに商標「Dr.Stretch」及び商品番号「K10-0170-0109」の表示があるところ、その商品番号は、発注日を2020年2月25日とする注文書(乙3)に記載された商品番号と一致しており、さらに、当該注文書に記載された「発注No.9598」は、被請求人が当該注文書に対応すると主張する、売上日を同年4月17日とする納品書(乙4)に記載された「No.9598」と一致している。しかしながら、当該注文書と当該納品書とは、品名が一致しておらず、品目の数も一致していない。 したがって、要証期間内に乙2の商品が被請求人の注文により製造された事実を確認することができない。 (4)乙5、乙6及び乙8によれば、2020年1月に、同年5月を発売予定として、「お医者さんが開発した腰サポーター」を商品名とする商品が企画されたこと、同年8月頃に同商品が「暮らし快適通信」に掲載されたこと、及び、同年9月11日に同商品が被請求人に3枚発注されたことがうかがえるものの、上記各証拠には、本件商標の表示がなく、商品の掲載月とされる2020年8月及び発注日である同年9月11日は、要証期間後である。 (5)上記(1)ないし(4)によれば、被請求人が、要証期間内に、本件指定商品の範ちゅうに属する商品について、本件商標を使用した事実を認めることができない。 なお、乙1、乙2に係る商品と乙3ないし乙6及び乙8の商品とは、その商品名又は商品コード等に整合しない点があることから、これらが同一の商品であるとは認め難い。また、乙1、乙3ないし乙5及び乙8に記載されている住所は、商標権者の住所とは異なることから、これらが被請求人に係るものであることも確認することができない。 2 乙9ないし乙15に基づく主張について これらの証拠を通してみても、本件商標が、要証期間内に、本件指定商品について使用された事実を確認できない。 3 乙16に基づく主張について 乙16をみても、本件商標が、要証期間内に、本件指定商品について使用された事実を確認できない。 第5 被請求人の対応 被請求人は、上記第4の審尋に対し何らの応答もしていない。 第6 当審の判断 商標法第50条第1項による商標登録の取消審判の請求があったときは、同条第2項の規定により、その審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについての登録商標の使用をしていることを被請求人が証明し、又は使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにしない限り、その登録の取消しを免れない。 そこで、被請求人の提出に係る証拠について検討する。 1 被請求人提出の証拠について (1)乙1は、「月村泰規先生 開発 腰サポーター 『ドクターストレッチ』取扱い説明書」と題する書面であり、1葉目の右下には、四角枠内に「販売元 東京都中央区新川2丁目13-10 新川ビル7階 セラフィック株式会社 日本製」との表示がある。 そして、その記載内容をみるに、例えば、「本品は20年来、整形外科の第一線で診療、治療に携わってこられた月村泰規先生と医療、スポーツ用サポーター専門製造メーカーである吉田司(株)(石川県)との共同開発商品です。」「整形外科において腰痛はもっとも遭遇する疾患のひとつであり、その原因はさまざまであることから、運動療法から手術まで治療法も多岐にわたります。しかし腰部の負担軽減の第一歩は日常生活において腰部を保護しサポートしてあげることです。これまでも治療現場において多くのサポーターを利用してきましたが、サポート力、安定感、そして夏場の不快感、通気性や軽量化など課題も見えてきました。そして今回、吸汗性や発散性に優れる『メッシュ編地素材』と『極細コイルボーン 12本』との組み合わせで既存のサポーターの欠点をできるだけ解決したサポーターの開発に成功いたしました。」のように、本件商品についての説明がなされている。 また、2葉目には、「月村泰規先生 開発 腰サポーター 『ドクターストレッチ』着用方法」の表題があり、着用方法について、簡略図とともに説明がなされている。 そうすると、表題及び上述の記載内容からすれば、乙1は、本件商品に係る取扱説明書であると認められる。 なお、当該取扱説明書について、証拠説明書には、作成年月日は「令和2年5月末」と記載されているものの、その発行日、作成部数等の作成事実、頒布日、頒布先等の頒布事実を裏付ける資料は提出されていない。 (2)乙2は、被請求人が、本件商品の実物写真と主張するものであり、乙2の1及び乙2の3は、本件商品の全体を折り曲げたように撮影されたものであり、本件商品に、黒いタグと白いタグが付されていることが確認できる。 乙2の2及び乙2の4は、乙2の1及び乙2の3のタグ部分を拡大して撮影したと思われるものであり、黒いタグには、「Dr.Stretch」の文字が表示されている。そして、白いタグには、「NO.K10-0170-0109」の表示とともに、サイズ及び品質についての表示がある。 乙2の6は、乙2の2及び乙2の4における白いタグを裏返して撮影したと思われるものであり、「セラフィック(株)」の文字が洗濯表示とともに表示されている。 乙2の5は、本件商品を装着するように折りたたんだ状態を撮影したと思われるものである。 なお、乙2の写真について、証拠説明書には、撮影日は「令和2年9月9日」と記載されているものの、当該写真からは、その撮影日を確認することはできない。 (3)乙3は、「注文書」と題する書面であり、右上部に「発注No. 9598」「発注日 20年2月25日」の記載があり、注文先と思われる箇所には「吉田司株式会社 御中」、注文元と思われる箇所には「セラフィック・株式会社」の文字が住所、電話番号及びFAX番号とともに記載されている。そして、「納期」として「20年4月20日」の記載があり、「※発注書NOを納品書に必ず明記して下さい。」の記載がある。さらに、発注内容と思われる表には、「品名」欄に「K10-0170-0109 月村先生の腰サポーター M」、「数量」欄に「25」、「単価」欄に「2,850」、「金額」欄に、「71,250」が記載されているほか、「月村先生の腰サポーター」のサイズ違いの4種類の商品の発注内容が、それぞれ記載されており、数量の合計は、5種類合わせて「156」、「金額合計」は「489,060」と記載されている。また、下部には、「摘要」として「日本文化センター様分」の記載がある。 (4)乙4は、「納品書」と題する書面であり、納品先と思われる箇所には「セラフィック(株)御中」の文字が住所及び電話番号とともに記載され、納品元と思われる箇所には「吉田司株式会社」の文字が住所、電話番号及びFAX番号とともに記載されている。そして、「売上日」の欄には「2020/04/17」の記載がある。さらに、納品内容と思われる箇所には、「品名・カラー・サイズ」欄に「C313400-01 コイルフィット M」、「数量」欄に「25」、「単価」欄に「2,850」、「金額」欄に「71,250」、「備考」欄に「No.9598」が記載されているほか、「C313400-04 コイルフィット 3L」に係る内容が記載され、「商品計」として「156,750」の記載がある。 (5)乙5は、「商品説明書」と題する書面であり、右上部には、「記入年月日」として「2020年1月14日」の記載があり、その下には「発売」として「’20年5月 日」の記載がある。そして、「商品名」として「お医者さんが開発した腰サポーター」、「商品番号(色・サイズ・名入れ)」として「71443000」、「製造メーカー名」及び「納入業者名」として「セラフィック(株)」の記載があり、その右には、商品写真が2枚掲載されているものの、商品タグ等は確認できない。さらに、「用途 特徴」として「・・・月村先生が患者さんの声をもとに開発したムレにくい腰サポーターになりました。・・・腰痛でお悩みの方、また動く時の保護、補助として最適な腰サポーターです。」の記載がある。そして、左下部には、「納入業者 セラフィック(株) (業者コード 3544)」「住所 東京都中央区新川2-13-10 新川ビル7階」の記載がある。 (6)乙6は、被請求人が、乙5の企画に基づき商品が掲載された日本文化センターのカタログと主張するものであるところ、1葉目の右側には「暮らし快適通信」「No.553」の表示がある。2葉目の最上段には、「暮らし快適通信 (No.553) 2020年 8月号」の表示があり、上半分には、商品写真(商品タグ等は確認できない。)とともに、「お医者さんがすすめるサポーター!腰の悩みを忘れて毎日を活動的に。」「腰の悩みや不安を抱える人たちに欠かせない腰サポーター。・・・月村先生が開発した腰サポーターです。・・・あなたもこの腰サポーターで、今まで抱えてきた腰の悩みから解放されてください。」「効き目に注目!お医者さんが開発した腰サポーター」等の記載がある。さらに、「商品番号」として「71443-000」の表示がある。3葉目の下部には、「日本文化センター」の表示がある。 なお、1葉目及び3葉目と2葉目の縮尺は異なっており、1葉目及び3葉目は不鮮明であって、具体的な掲載内容は確認できない。 (7)乙7は、被請求人が、乙6のカタログに基づき消費者が注文した場合の日本文化センターの商品発送状態を示すものと主張するものであるところ、1葉目は段ボールを撮影した写真であり、段ボール側面のラベルには「日本文化センター」の文字が表示されている。2葉目は、当該ラベルを拡大した写真であり、「商品番号 71443-030」「商品名 お医者さん開発 腰サポーター」「生活ネットワーク 日本文化センター」の表示がある。3葉目は、上記段ボールを開封した状態を撮影したと思われる写真であり、段ボール箱(外箱、内箱)とともに「月村泰規先生 開発 腰サポーター 『ドクターストレッチ』取扱い説明書」と題する書面がメッシュ状の商品とともにビニール袋に包装されている状態が撮影されている。 なお、当該写真について、証拠説明書には、撮影日は「令和2年9月14日」と記載されているものの、当該写真からは、その撮影日を確認することはできない。 (8)乙8は、「発注書」と題するFAX文書と思われる書面であり、「発注日」には「09月11日」、「納入締切日」には「09月14日」の記載があり、「(納入業者コードNO.3544)」の記載がある。そして、「商品コード」として「71443030」、「納入区分」として「05」、「商品名」として「お医者さん開発 腰サポーター M(「M」は手書きである。)」の記載がある。 (9)乙9ないし乙13は、被請求人がアイケイ社との間でも、本件商標を用いた新商品を開発中であることを示す証拠であると主張するものである。 乙9は、令和2年2月21日から同年8月13日までのメールと思われるところ、被請求人の担当者から、アイケイ社の担当者へ送付したと思われる最新のメール(乙9の12)には、「成型工場では・・・裁断無しの方法を考えて欲しい。・・・ゴムの劣化については検証する必要がある。との答えでした。」「縫製工場はあれから約10社あたりました。」「来週には再度お見積りを提出させていただきます。」のような記載がある。 乙10は、アイケイ社が商品開発会議において社内で配布したとされる「提案書」、乙11は、乙9の6のメールに添付した商品デザイン案、乙12は、乙9の8のメールに添付した縫製仕様書とされるものである。乙10には、【品名】欄に「<Dr.ストレッチ>」の表示があり、【商品イメージ※画像添付、イラストなど】欄に本件商標が表示されている。 乙13は、被請求人がアイケイ社の担当者に向けたサンプル送付状と主張しているものであるところ、当該書面には、「2020年7月15日」の表示があり、「本日、サンプル3点送らせていただきます。」「ご検証頂きましてご意見をお願い致します。」のような記載がある。 (10)乙16は、被請求人が本件商標の登録前から「サポーター」を開発している経緯を表す資料と主張するものであるところ、1葉目の左上には「ドクターストレッチ」、右上には「2012年11月26日」の記載がある。2葉目には「ドクターストレッチ」の見出しの下、「日本人女性の体型、そして現代生活から起きる肩甲骨回りの筋肉の硬直・肩こりを和らげる道具。」の記載がある。9葉目には「商品エントリーシート」の表題の下、「会社名」として「セラフィック株式会社」、「商品名」として「ドクターストレッチ」、「商品業種」として「健康関連」、「商品の特徴」として、例えば「簡単にストレッチのできるオリジナル形状。」「肩甲骨にボードがフィット。乗るだけで肩甲骨回り・胸部・肩・背中回りの筋肉をほぐす。」のような記載がある。 2 判断 (1)乙1ないし乙8に基づく主張について ア 本件指定商品は、第28類の「運動用具」を指定するものであるから、本件指定商品中「サポーター」は、運動用であることを要するものである。 一方、乙1、乙5及び乙6に記載された「腰サポーター」は、いずれも、運動用である旨の説明がなく、むしろ、その記載内容に照らせば、腰痛への対策をうたった商品であることから、「腰用サポーター」であることは認められるものの、運動用の商品であるとはいい難い。また、乙2ないし乙4、乙7及び乙8をみても、これらに記載又は表示された商品が運動用の「サポーター」であるということもできない。 そうすると、被請求人が本件商標の使用を主張する本件商品は、本件指定商品の範ちゅうに属する商品とはいえないものである。 イ 取扱説明書(乙1)には、「ドクターストレッチ」の文字が表示されており、証拠説明書によれば、この作成日は2020年5月末とされているが、乙1からは、作成日の表示を確認できない。なお、乙5には、発売が「’20年5月」と記載されているものの、記入年月日が同年1月14日であるから、当該記載は予定にすぎないものであり、2020年5月に販売されたことを客観的に裏付けるものとはいえない。 また、2020年9月14日に撮影したとされる商品の梱包写真(乙7)には、乙1と同じと思われる取扱説明書が商品の包装袋に入れられているものの、上記撮影日は要証期間の後である。 その他、当該取扱説明書が要証期間内に頒布されたことを示す証拠を見いだせない。 したがって、乙1の取扱説明書が要証期間内に頒布されたということはできない。 ウ 乙2の商品写真は、証拠説明書によれば、2020年9月9日に撮影したとされているが、当該写真からは、その撮影日を把握することはできない。また、2020年9月9日に撮影されたものであったとしても、この日付は要証期間後である。 また、当該商品は、タグに商標「Dr.Stretch」及び商品番号「K10-0170-0109」の表示があるところ、その商品番号は、発注日を2020年2月25日とする注文書(乙3)に記載された商品番号と一致しており、さらに、当該注文書に記載された「発注No.9598」は、被請求人が当該注文書に対応すると主張する、売上日を同年4月17日とする納品書(乙4)に記載された「No.9598」と一致している。 しかしながら、当該注文書(乙3)と当該納品書(乙4)とは、その品名が一致しておらず、品目の数も一致していない。 したがって、要証期間内に乙2の商品が被請求人の注文により製造されたということはできない。 エ 乙5、乙6及び乙8によれば、2020年1月に、同年5月を発売予定として、「お医者さんが開発した腰サポーター」を商品名とする商品が企画されたこと、同年8月頃に同商品が「暮らし快適通信」に掲載されたこと、及び、同年9月11日に同商品が被請求人に3枚発注されたことがうかがえるものの、上記各証拠には、本件商標の表示がなく、商品の掲載月とされる2020年8月及び発注日である同年9月11日は、要証期間後である。 オ 上記アないしエからは、被請求人が、要証期間内に、本件指定商品の範ちゅうに属する商品について、本件商標を使用した事実を認めることができない。 (2)乙9ないし乙15に基づく主張について 被請求人は、アイケイ社との間でも、本件商標を用いた新商品を開発中であると主張しており、これらの証拠からは、被請求人がアイケイ社との間でも、本件商標を用いた新商品を開発中であることはうかがえる。 しかしながら、2020年8月13日付けの最新のメール(乙9の12)において、「成型工場では・・・裁断無しの方法を考えて欲しい。・・・ゴムの劣化については検証する必要がある。との答えでした。」「縫製工場はあれから約10社あたりました。」「来週には再度お見積りを提出させていただきます。」のような記載があることからすれば、要証期間後である2020年8月13日においても、未だ商品開発中であるといわざるを得ず、要証期間内に当該商品に係る取引を行っていたとみることはできない。 また、本件商標が付されていると主張する乙10は、アイケイ社が商品開発会議において社内で配布したとされる「提案書」であり、内部文書といわざるを得ないものである。 そうすると、乙9ないし乙15の証拠を通してみても、本件商標が、要証期間内に、本件指定商品について使用された事実を認めることはできない。 (3)乙16に基づく主張について 乙16は、本件要証期間より前である2012年において、肩甲骨回りのストレッチができる道具に関する書面であるから、その記載を通してみても、本件商標が、要証期間内に、本件指定商品について使用された事実を認めることはできない。 (4)小括 以上からすれば、被請求人が、要証期間内に、日本国内において、本件商標の指定商品中の「サポーター」について、本件商標を使用したと認めることはできない。 その他、要証期間内に、本件商標の指定商品のいずれかについて、本件商標に係る商標権者又は使用権者が本件商標の使用をしたことを認めるに足りる証拠の提出はない。 3 むすび 以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが本件商標の指定商品について本件商標の使用をしていたことを証明したものとは認められない。 また、被請求人は、本件商標を使用していないことについて、正当な理由があることも明らかにしていない。 したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、その登録を取り消すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2021-08-03 |
結審通知日 | 2021-08-06 |
審決日 | 2021-08-30 |
出願番号 | 商願2013-12478(T2013-12478) |
審決分類 |
T
1
31・
1-
Z
(W28)
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最終処分 | 成立 |
特許庁審判長 |
中束 としえ |
特許庁審判官 |
冨澤 美加 杉本 克治 |
登録日 | 2013-06-21 |
登録番号 | 商標登録第5593050号(T5593050) |
商標の称呼 | ドクターストレッチ |
代理人 | 井垣 弘 |
代理人 | 柴田 雅仁 |