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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W35 審判 全部申立て 登録を維持 W35 |
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管理番号 | 1378992 |
異議申立番号 | 異議2020-900333 |
総通号数 | 263 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2021-11-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2020-12-14 |
確定日 | 2021-10-14 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6306665号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6306665号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第6306665号商標(以下「本件商標」という。)は、「CASPER」の欧文字を横書きした構成からなり、平成30年10月23日に登録出願された商願2018-131860に係る商標法第10条第1項の規定による商標登録出願として、令和2年6月10日に登録出願され、第35類「コンピュータハードウェアの小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,コンピュータネットワーク用ハードウェアの小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,オンライン上の音声及び映像の記録・閲覧・記憶・共有及び分析に用いる携帯電話機・タブレット及びその他の無線装置用コンピュータソフトウェアの小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,アプリケーションプログラミングインタフェース(API)として使用されるコンピュータソフトウェアの小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,ホームオートメーション用及び家庭用装置の統合用コンピュータソフトウェアの小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,音声・音響・映像及びデータ送信のための無線通信用のコンピュータソフトウェアの小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,個人情報管理用コンピュータソフトウェアの小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,ネットワーク化された家庭用電化製品・家庭用装置及び照明製品を無線ネットワーク経由で接続・操作・統合・制御及び管理するためのコンピュータソフトウェアの小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,睡眠の監視及び睡眠環境の管理用コンピュータハードウェア及びソフトウェアの小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,睡眠データ(動作・位置・呼吸・心拍数・睡眠の質・睡眠時間等を含む)に関する情報の受信・処理・送信及び表示用コンピュータソフトウェアの小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,睡眠スケジュールの追跡・順守及び動機付けに関する情報の管理用コンピュータソフトウェアの小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,睡眠データ(動作・位置・呼吸・心拍数・睡眠の質及び睡眠時間を含む)に関する情報の表示・測定及びインターネットへのアップロード用の電気通信機械器具又は電子応用機械器具の小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,睡眠中のパターン及び出来事(睡眠の質に影響するもの)の監視及び記録用・睡眠に役立つ心地よい音及びメロディーの再生用並びに目覚まし時計機能の提供に用いる睡眠管理用のダウンロード可能なモバイルアプリケーションソフトウェアの小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定役務として、令和2年9月25日に登録査定、同年10月21日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する登録商標は、以下の2件の商標であり、いずれも現に有効に存続しているものである。 1 登録第4176581号商標(以下「引用商標1」という。)は、「CASPER」の欧文字を横書きした構成からなり、平成6年11月30日に登録出願、第24類「布製身の回り品,ふきん,布団,毛布,カーテン,テーブル掛け,シャワーカーテン」を指定商品として、同10年8月14日に設定登録され、その後、同21年2月24日及び同30年6月26日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。そして、その指定商品については、商標登録の取消し審判により、指定商品中の第24類「布団,毛布」について取り消すべき旨の審決がされ、平成28年7月8日にその確定審決の登録がされているものである。 2 登録第3210119号商標(以下「引用商標2」という。)は、「CASPER THE FRIENDLY GHOST」の欧文字を横書きした構成からなり、平成5年11月25日に登録出願、第28類「遊戯用器具,ダイヤモンドゲーム,おもちゃ,人形,運動用具」を指定商品として、同8年10月31日に設定登録され、その後、同18年8月15日及び同28年8月23日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。 以下、上記の引用商標1及び引用商標2をまとめていうときは、「引用商標」という。 第3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号によって、その登録は取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第8号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 申立人商標「CASPER」の周知著名性について (1)商標「CASPER」の周知著名性 申立人の商標「CASPER」(以下「申立人商標」という。)は、1945年にアメリカで製作及び発表されたテレビアニメーション作品「Casper the Friendly Ghost」(邦題「出てこいキャスパー」)及び同作品をもとに実写映画化した1995年公開の「Casper」(邦題「キャスパー」)のほか、我が国において1962年より放映されたアニメーション作品「The New Casper Cartoon Show」(邦題「キャスパーと遊ぼう」)、「Casper and Friends」(邦題「おばけのキャスパー」)等の一連の映像作品の題名及び作品中に登場する主人公であるお化けのキャラクターの名称として、また、映像作品から派生した様々な関連商品及び役務について我が国及び世界中で長年にわたり一貫して使用されてきた結果、申立人の業務に係る商品及び役務を表す商標として、我が国を含む世界中の需要者、取引者の間において広く知られるに至っている周知著名商標である(甲4)。 申立人は、2000年に設立された米国のエンターテインメント企業であり、上記「Casper the Friendly Ghost」のほか、我が国でも人気の高い「ウォーリーをさがせ!」や「名犬ラッシー」等、多数の有力キャラクター・アニメーション番組を保有しているほか、コミックブックの権利も多く保有しており、その累計販売は20億部を超える(甲5)。なお、引用商標の商標権者は「ハーヴィー コミックス インコーポレーテッド」であるが、引用商標に係る商標権は、譲渡や合併により、現在は申立人が保有している。 (2)申立人商標に係る映像作品の日本での展開 申立人商標に係る映像作品は、1962年以降現在に至るまで、我が国で継続的にテレビ放送や映画配給がされたほか、ビデオやDVD作品として販売及びレンタルがされている。 (3)小括 以上のとおり、申立人商標は、申立人の保有する映像作品の題名及び作品中に登場する主人公であるお化けのキャラクターの名称として継続的に使用された結果、申立人の業務に係る商品及び役務を表す商標として我が国を始め世界中で広く知られるに至ったものであり、本件商標の出願時及び登録査定時において、我が国の需要者、取引者の間に広く認識された申立人の周知著名商標であったことは明らかである。 2 商標法第4条第1項第15号該当性について (1)商標法第4条第1項第15号該当性 前記1で述べたとおり、申立人商標は、申立人の業務に係る商品及び役務を表す商標として、本件商標の出願時及び登録査定時において、我が国を含む世界中の需要者、取引者の間において広く知られるに至っている周知著名商標である。 本件商標は、「CASPER」の欧文字を横一列に書してなる商標であり、その構成文字に照応して「キャスパー」の称呼が生じる。そして、「CASPER」は、既述のとおり、申立人の業務に係る商品及び役務を表す商標として、我が国の取引者及び需要者の間で周知著名となっている商標であるから、本件商標は、観念上、申立人の業務に係る映像作品及びその主人公のお化けのキャラクターとしての観念が明確に生じる。 一方、「CASPER」の欧文字からなる引用商標1及び「CASPER」の欧文字をその構成中に含む引用商標2は、既述のとおり、申立人の保有する映像作品の題名及び作品中に登場する主人公であるお化けのキャラクターを指称するものとして、我が国の取引者及び需要者の間で理解し認識されていることから、引用商標のいずれからも、「キャスパー」の称呼並びに申立人の業務に係る映像作品及びその主人公のお化けのキャラクターとしての観念が生じることは明らかである。 したがって、本件商標と引用商標が、その外観、称呼及び観念を共通にするものであることは明らかであり、その類似性の程度は極めて高いというべきである。 また、申立人の周知著名商標である「CASPER」は、1945年に米国で最初に発表されたアニメーション作品「Casper the Friendly Ghost」(邦題「出てこいキャスパー」)及びその後に多数製作及び発表されたシリーズ作品に一貫して登場する主人公であるお化けのキャラクターの名称であり、十分な独創性が認められる。「CASPER」の語は、辞書等に掲載されておらず、よって既成の語に相当するものではなく、申立人による造語であることから、このような文字を採択すること自体、高い顕著性を有しているといえる。したがって、引用商標の独創性は極めて高いものである。 しかして、申立人商標が、申立人の保有する映像作品の題名及び作品中に登場する主人公であるお化けのキャラクターの名称として我が国において周知著名性を獲得している商標であることからすれば、需要者において普通に払われる注意力としては、本件商標に接した需要者は、申立人の保有する映像作品及び作品中に登場する主人公であるお化けのキャラクターを連想、想起し、本件商標に係る指定役務が、申立人又はその関係会社の業務に係る役務ではないかと誤認して取引に当たるであろうことは容易に想像されるところである。 (2)我が国における判決及び特許庁の審決 平成12年7月11日最高裁第三小法廷判決(甲6)以降、他人の周知著名な商標と同一又は類似する商標あるいは他人の周知著名な商標を一部に含む商標について、当該他人の業務に係る商品等と混同を生じるおそれがあるとして、登録拒絶又は登録無効若しくは取消しの判断をした判決や特許庁の審決は多数存在する(甲7の1?10)。 (3)小括 以上の事実並びに先行判決及び審決例に基づき総合的に勘案すれば、本件商標は、申立人の保有する映像作品の題名及び作品中に登場する主人公であるお化けのキャラクターの名称として我が国で周知著名な「CASPER」と同一の文字からなる商標であり、また「CASPER」は、申立人による造語商標であって、1945年に初めて米国でアニメーション作品「Casper the Friendly Ghost」(邦題「出てこいキャスパー」)が発表され、我が国でも1962年から同作品がテレビで放映されて以来、継続的にそのシリーズ作品となるアニメーション作品及び実写映画作品が多数製作及び発表され、我が国においてテレビ放映及び映画公開並びにそれらの作品を収録したビデオ及びDVDが販売及びレンタルされ、さらに映像作品から派生した様々な関連商品及び役務について使用されてきた結果、我が国において極めて高い周知著名性を獲得するに至ったものであり、その著名性は本件商標の出願前から現在に至るまで継続しているものである。 よって、本件商標をその指定役務に使用するときは、これに接する需要者、取引者は、本件商標と同一の文字からなり、申立人の保有する映像作品の題名及び作品中に登場する主人公であるお化けのキャラクターとしての「CASPER」を連想、想起し、その役務があたかも申立人又は申立人と同一の営業主体の業務に係る役務、又は申立人と経済的・組織的に何らかの関係を有する者の取り扱う業務に係る役務であると錯覚して取引にあたると考えられるから、その役務の出所について混同を生ずるおそれがあるといわざるを得ない。そして、本件商標の登録を認めた場合には、申立人の引用商標が持つ顧客吸引力ヘのただ乗り(いわゆるフリーライド)やその希釈化(いわゆるダイリューション)を招くという結果を免れない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号にいう「混同を生ずるおそれがある商標」に該当するというべきである。 3 商標法第4条第1項第19号該当性について (1)申立人商標「CASPER」の周知著名性 前記1で述べたとおり、申立人商標は、申立人の保有する映像作品の題名及び作品中に登場する主人公であるお化けのキャラクターの名称として、また映像作品から派生した様々な関連商品及び役務について、我が国及び世界中で長年にわたり一貫して使用されてきた結果、申立人の業務に係る商品及び役務を表す商標として、我が国を含む世界中の需要者、取引者の間において高い周知著名性を獲得するに至った商標であることは明らかである。 したがって、申立人商標は、商標法第4条第1項第19号に規定されるとおり、他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、本件商標の出願時及び登録査定時において、我が国又は外国における需要者の間に広く認識されている商標に該当するものである。 (2)本件商標と申立人商標の同一性 本件商標は、「CASPER」の欧文字を横一列に書してなる商標であるが、これは「CASPER」の欧文字を横一列に書してなる申立人商標と同一である。また、本件商標及び申立人商標の文字からは、いずれも「キャスパー」の称呼が生じる。本件商標は既成語ではなく、特定の観念を生じるとはいえないものであるが、申立人の周知著名な商標と同一の「CASPER」の文字から構成されるものであることから、申立人の業務に係る映像作品及びその主人公のお化けのキャラクターとの観念が生じる点において、観念上も、引用商標(決定注:「申立人商標」の誤記と認める。)と共通する。 したがって、本件商標と申立人商標がその外観、称呼及び観念を共通にする同一の商標であることは明白である。 (3)本件商標権者の「不正の目的」 申立人商標は、前述のとおり申立人による長年にわたる努力の積み重ねの結果、需要者の間において広く知られ、高い名声、信用及び評判を獲得するに至っているものであり、本件商標の出願時には、申立人商標は、既に申立人の業務に係る商品及び役務を表す商標として、我が国及び外国における需要者の間に極めて広く認識されていた周知著名商標であったことに疑いを挟む余地はない。 本件商標は、そのような申立人の周知著名な商標である「CASPER」と同一の文字からなるものであって、「CASPER」の語は、辞書等に掲載されているような既成の語に相当するものではないことを考慮すれば、本件商標において、申立人の周知著名な商標である「CASPER」と同一の文字が偶然に採択されたものとは到底認め難く、本件商標権者は、一般に相当程度知られていた申立人商標を知りつつ、それが有する高い名声、信用及び評判にただ乗り(フリーライド)する目的、すなわち不正の目的をもって、本件商標の登録出願をし、本件商標を使用したものと推認される。 以上のことから、本件商標権者は、我が国及び外国において周知著名な申立人商標について、その存在を知りつつ、それに化体した信用や名声等に対してただ乗り(フリーライド)する目的で、本件商標の登録出願をしたものと優に推認される。 したがって、本件商標は、他人である申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして我が国及び外国における需要者の間に広く認識されている商標「CASPER」と同一の商標であって、不正の目的をもって使用するものであることは明らかであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するというべきである。 (4)我が国における判決及び特許庁の審決 商標法第4条第1項第19号該当性について判断した裁判例や審決例は多数存在し(甲8の1?12)、いずれも、我が国又は外国における著名商標と同一又は類似する商標を出願・登録した商標権者の不正の目的を認定している。 前述のとおり、申立人商標が他に類例を見ないほど周知著名な商標である事実に鑑みれば、本件商標の商標権者が、申立人の周知著名な造語商標である「CASPER」の存在を知らずに、偶然にそれと同一の文字綴りからなる本件商標を出願したとは到底考えられない。 (5)小括 以上のとおり、申立人商標は、本件商標の出願時及び登録査定時において、申立人の保有する映像作品の題名及び作品中に登場する主人公であるお化けのキャラクターの名称として、また映像作品から派生した様々な関連商品及び役務について一貫して使用された結果、申立人の業務に係る商品及び役務を表す商標として、我が国及び外国における需要者の間で周知著名な商標となっていたものであり、本件商標は、本件商標権者がそのような「CASPER」の周知著名性に便乗し、申立人商標と同一の文字からなる本件商標の独占排他的使用を得ようとする不正の目的に基づいて出願・登録されたものであることは明らかである。 したがって、本件商標は、その出願時及び登録査定時において我が国及び外国で周知著名性を獲得していた申立人商標と同一の文字からなる商標であり、本件商標権者の不正の目的によって出願されたものであるから、出所混同のおそれがあるか否かにかかわらず、商標法第4条第1項第19号に該当するものとして、その登録は排除されなければならない。 4 結び 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、同法第43条の3第2項の規定により取り消されるべきものである。 第4 当審の判断 1 申立人商標及び引用商標の周知性について (1)申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、「CASPER」の文字は、昭和20年(1945年)に米国で制作された映像作品の題名及び作品中に登場する主人公のおばけのキャラクターの名称を表すものとして使用されており、我が国においても、「CASPER」に関する作品が、同37年(1962年)からテレビで放映され、いくつかの作品についてはビデオ化され、平成7年(1995年)に映画が公開されたこと(甲4:フリー百科事典ウィキペディア「出てこいキャスパー」の項及び申立人の主張)、また、申立人は、米国のアニメーション・キャラクターの大手企業であって、「ウォーリーをさがせ!」や「出てこいキャスパー」など多数の有力キャラクター・アニメーション番組を保有し、コミックブックの権利も多く保有しており、その累計販売が20億部を超えること(甲5:ウェブニュースサイト)などがうかがえる。 しかしながら、上記テレビ放映の視聴者数や視聴率などの視聴実績、ビデオやDVDの販売実績及びレンタル実績、コミックブックの累計販売における「CASPER」関連作品の販売数などは確認できず、申立人の主張に係る近年のテレビ放映は、受信契約者のみが視聴可能な2014年の有料放送によるものであって、映画の公開は約26年前のことである。 そうすると、上記映画の公開時において、「CASPER」の文字からなる申立人商標が、我が国においてある程度知られていたことがうかがえるとしても、申立人の提出に係る証拠をもってしては、申立人商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできず、さらに、当審における職権に基づく調査によっても、申立人商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時に広く認識されていたと認め得る事実を見いだすことはできない。 (2)したがって、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人商標が申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、我が国又は外国における需要者に広く認識されているものとは認めることができないものである。 してみると、申立人商標と同じ「CASPER」の文字からなる引用商標1及び「CASPER」の欧文字をその構成中に含む引用商標2もまた、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないものである。 2 商標法第4条第1項第15号該当性について 申立人商標ないし引用商標(以下、これらをまとめていうときは、「申立人商標等」という。)は、前記1(2)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、他人(申立人)の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されているものということはできないものである。 また、申立人は、「CASPER」の文字は、造語である旨主張しているところ、当該文字は、「米国Wyoming州中部の都市」「男子の名」の意味を有する英語(「ランダムハウス英和大辞典第2版」株式会社小学館)であるから、申立人商標等の独創性は、高いとはいえない。 さらに、本件商標の登録異議申立てに係る指定役務(以下「申立役務」という。)は、前記第1のとおりの第35類の指定役務であって、「コンピュータハードウェアの小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,オンライン上の音声及び映像の記録・閲覧・記憶・共有及び分析に用いる携帯電話機・タブレット及びその他の無線装置用コンピュータソフトウェアの小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,睡眠データ(動作・位置・呼吸・心拍数・睡眠の質及び睡眠時間を含む)に関する情報の表示・測定及びインターネットへのアップロード用の電気通信機械器具又は電子応用機械器具の小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」等であるのに対し、申立人商標は米国で制作された映像作品の題名及び作品中に登場する主人公のおばけのキャラクターの名称を表すものであり、引用商標の指定商品は前記第2のとおりの第24類「布製身の回り品」等、又は第28類「遊戯用器具」等であるから、両者の直接的な関連性は見いだせない。 また、申立人は、おばけのキャラクター「CASPER」が「様々な関連商品及び役務について使用されてきた」旨主張しているものの、申立人商標をいかなる商品及び役務に使用しているかについての主張及び証拠はなく、申立人の業務に係る商品又は役務がどのようなものであるのかが明らかでないから、商品及び役務の関連性、取引者、需要者の共通性について判断することができない。 そうすると、たとえ、「CASPER」の文字からなる本件商標と申立人商標及び引用商標1との類似性の程度が高いものであったとしても、前記のとおり、「CASPER」の文字は、「米国Wyoming州中部の都市」「男子の名」の意味を有する英語であって、申立人に係る造語ともいえない上、申立人商標等は、前記1(2)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品及び役務であることを表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されているものということはできないことからすれば、商標権者が、本件商標をその申立役務について使用しても、取引者、需要者をして申立人商標等を連想又は想起させることはなく、その役務が、申立人又は申立人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように、その出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。 その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものとはいえない。 3 商標法第4条第1項第19号該当性について 商標法第4条第1項第19号は、「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもって使用をするもの」に該当する商標について、商標登録を受けることができないと規定している。 しかしながら、申立人商標等は、前記1(2)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、他人(申立人)の業務に係る商品又は役務を表すものとして、我が国又は外国における需要者の間に広く認識されていたものとはいえないものである。 また、申立人は、商標権者が不正の目的をもって本件商標を使用していることについての具体的な主張や証拠の提出をしていない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものとはいえない。 4 むすび 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
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異議決定日 | 2021-10-05 |
出願番号 | 商願2020-71557(T2020-71557) |
審決分類 |
T
1
651・
222-
Y
(W35)
T 1 651・ 271- Y (W35) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 田崎 麻理恵 |
特許庁審判長 |
森山 啓 |
特許庁審判官 |
小田 昌子 板谷 玲子 |
登録日 | 2020-10-21 |
登録番号 | 商標登録第6306665号(T6306665) |
権利者 | キャスパー スリープ インコーポレイテッド |
商標の称呼 | キャスパー、カスパー |
代理人 | 飯田 貴敏 |
代理人 | 森下 夏樹 |
代理人 | 山本 秀策 |
代理人 | 佐藤 俊司 |
代理人 | 田中 克郎 |
代理人 | 井▲高▼ 将斗 |
代理人 | 伊藤 亮介 |
代理人 | 山本 健策 |
代理人 | 石川 大輔 |
代理人 | 稲葉 良幸 |