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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W35 審判 全部申立て 登録を維持 W35 審判 全部申立て 登録を維持 W35 審判 全部申立て 登録を維持 W35 |
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管理番号 | 1378970 |
異議申立番号 | 異議2021-900059 |
総通号数 | 263 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2021-11-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2021-02-17 |
確定日 | 2021-10-08 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6322367号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6322367号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第6322367商標(以下「本件商標」という。)は、「SPORTSHOUSE」の欧文字を書してなり、平成31年4月15日に登録出願、第35類「被服・履物・帽子・運動着・水着・革製及び擬革製かばん・旅行かばん・かばん類・バックパック・財布・水筒・水差し・ケトルの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,インターネットウェブサイトを介して行われる被服・履物・帽子・運動着・水着・革製及び擬革製かばん・旅行かばん・かばん類・バックパック・財布・水筒・水差し・ケトルの小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,販売代理店における被服・履物・帽子・運動着・水着・革製及び擬革製かばん・旅行かばん・かばん類・バックパック・財布・水筒・水差し・ケトルの小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,広告業,事業の管理,事業の運営,一般事務処理」を指定役務として、令和2年11月13日に登録査定、同年11月30日に設定登録されたものである。 2 登録異議申立人が引用する商標 異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議申立ての理由において、引用する商標は、申立人の業務に係る「被服、履物、帽子、運動着、かばん類、運動用具等の小売等役務」に使用する別掲1の「スポーツハウス」の片仮名(以下「引用商標1」という。)及び別掲2の「SPORTS HOUSE」の欧文字(以下「引用商標2」という。)からなるものである(以下、これらをまとめて「引用商標」という。)。 3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第7号、同項第10号及び同項第15号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第38号証(枝番号を含む。以下、枝番号のすべてを示すときは、枝番号を省略する。)を提出した。 (1)商標法第4条第1項第10号について ア 本件商標について 本件商標は、「SPORTSHOUSE」のローマ字から構成された外観を呈し、英語の「SPORTS」と「HOUSE」を一体的に結合させて表示している。また、「SPORTS」及び「HOUSE」は、我が国では各々、「スポーツ、身体運動の総称」、「家、家屋」の意味合いを示すものとして良く知られた用語であることから、それらに相応して「スポーツハウス」の称呼及び「運動の家」の観念を生じるといえる。 イ 引用商標について 申立人は、被服、履物、帽子、運動着、水着、かばん類、運動用具等を販売する企業である(甲3?甲5)。 申立人が使用する商標は、片仮名の「スポーツハウス」をゴシック調に表示した引用商標1と、ローマ字「SPORTS HOUSE」をゴシック調に表示した引用商標2であって、被服、履物、帽子、運動着、水着、かばん類、運動用具等の小売役務に係る商標として使用しているものである。 引用商標1は、申立人の創業時の屋号であり、株式会社スポーツハウス法人設立後は商号の一部として営業表示されており、引用商標2は、その英語表記である。よって、いずれも申立人のハウスマークとして重要な商標である。 引用商標は、それぞれの構成文字に相応して、「スポーツハウス」の称呼及び「運動の家」の観念を生じる。 ウ 申立人の業務に係る役務について 申立人は、店舗及びインターネットウェブサイトを介したオンラインショップを通じて、被服、履物、帽子、運動着、水着、かばん類、運動用具等の小売業務を行っており、その店舗及びオンラインショップにて引用商標を使って顧客に対する便益の提供を行っている(甲3?甲7)。 また、申立人が企画・運営・開催するスポーツイベントにおいて、イベントプログラムやパンフレットの冊子中に協賛企業の広告を募って掲載するとともに、広告物としても配布することにより、広告業を行っている(甲8?甲10)。 エ 引用商標の周知著名性の程度について (ア)申立人について 申立人は、「スポーツハウス」を商号として北海道札幌市にて、昭和22年4月に運動具店を創業し、昭和25年9月に「株式会社スポーツハウス」を設立した(甲3?甲6の3の11)。 また、北海道外については、昭和46年、青森県八戸市に「八戸店」を出店した(甲6の26)。 以上のように、申立人は、創業から現在に至るまで74年もの永年にわたり、札幌市を中心に、北海道の主要な地方都市及び隣接県である青森県八戸市にまで店舗を進出させており、各店舗において、被服、履物、帽子、運動着、水着、かばん類、運動用具等を販売している。 よって、少なくとも北海道一円及び隣接県にまで店舗を出店した事実が認められる。 (イ)広告宣伝活動について 申立人は、本件商標の登録出願前から、北海道新聞(甲22の1?6、甲22の9?12、甲22の16、甲22の18・19、甲27)、北海道新聞折込みチラシ(甲22の7、甲22の14、)、ダイレクトメール(甲22の8・13・15・17、甲26)、札幌地下鉄東西線円山公園駅ジャック広告(甲22の20)、十勝毎日新聞(甲24)、住友生命経営情報誌オーナーズアイ(甲28)等の多数の広告において、引用商標を使用している。 (ウ)スポーツイベントの企画・運営を通じた引用商標の周知について 申立人の基本理念(甲3)の実現のための取り組みとして、種々のスポーツイベントを企画・運営し、引用商標が通常の顧客以外の多くの需要者・取引者に知られる機会を提供しており、周知性の獲得に寄与している。 その代表格である「スポーツハウスCUP」(甲8の1?4)は、1976年から始まった「YAMAHA CUP」を1994年から申立人が引継ぎ、実施しているスキー大会であり、2021年で開催回数は46回にのぼる。これは、アルペンスキーの大会であり、ジュニアレーサーの登竜門として位置づけられ、テレビ放映されるなど、スキー愛好家のみならず一般市民にも広く知られている。本大会中、コースの各所に設置された旗や選手のゼッケン、記念品の紙袋等に引用商標が使用されている(甲8の5)。 また、申立人は、「札幌スポーツ館杯 スノーマラソン大会in千歳」を毎年開催している。本大会は、雪上でのマラソン大会であり、募集人数は300名を超える(甲9の1・2)。本大会中、コースの各所には、引用商標が付された横断幕や旗が設置される(甲9の3)。 その他、申立人は、「札幌マラソン公認 ミズノ ランニングクリニック」、「札幌スポーツ館杯 バスケットボール フェスティバル」、「ランニング ナイト・ラン教室」、「マルヤマクラス ヨガ教室」、マラソン大会、中学生対象のソフトテニス大会、高校生向けのバスケットやバレーボール大会等、多数のスポーツイベントの企画・運営を行っており(甲3、甲28)、各大会のパンフレットやホームページ等で引用商標1が使用されている(甲10)。 (エ)被服等の小売役務での引用商標の使用について 申立人は、被服等の小売役務については、店舗での販売に加えて、官公庁や学校の体育・部活動向けの外商販売も行っている(甲29)。 (オ)売上高について 申立人の売上高は、2011年9月1日?2012年8月31日(26億2696万円)、2016年9月1日?2017年8月31日(27億1993万円)、2017年9月1日?2018年8月31日(21億6291万円)等である(甲30)。 また、申立人は、引用商標1を付したクレジットカード控え(甲31の1)、領収書(甲31の2)、封筒(甲32の1・2)、紙袋(甲32の3)、カタログ(甲33)等を継続して使用しており、上記売上高に鑑みると、これらは膨大な数の人の手に渡っていることになる。 以上の商取引において、引用商標が申立人のハウスマークとして使用されているため、各売上高は引用商標の周知性獲得に密接に関わる結果であると理解できる。 (カ)ポイントカードの発行について 申立人は、「SPORTS HOUSE MENBER’S CARD」との名称のポイントカードを発行し(甲34の1・2)、入会数は、約15万名にものぼる(甲34の3)。 (キ)インターネットウェブサイトを介したオンラインショップについて 申立人は、自社運営のオンラインショップの他、楽天市場店、YAHOO店、Amazon店においてもネット販売している(甲7)。 2010年5月?8月(全件数8,687 北海道外7,989)、2019年1月?6月(全件数15,615 北海道外14,396)等のように、オンラインショップでの全購入件数のうち、北海道外からの購入件数が8?9割を占め、購入履歴の詳細(甲35)によれば、各都道府県からの注文が多く、全国各地から購入されていることがわかる。 なお、オンラインショップでの売上が好調であることを反映して、2016年7月から2017年6月までの売上成績により、「YAHOO!JAPANショッピング」の「北海道エリア スポーツカテゴリー賞 第3位」を受賞した(甲36)。 このように、引用商標は、北海道のみならず、北海道以外の都道府県にも多数の購入者がおり、北海道一円のみならず、全国的に周知である。 (ク)まとめ 以上の事実によれば、申立人は、「スポーツハウス」ないし「SPORTS HOUSE」の文字を、昭和22年の創業以来、営業標識たるハウスマークとして、被服、履物等の小売又は卸売の業務において顧客に対する便益の提供をする際に使用しており、また、新聞、パンフレット、スポーツイベント等の広告媒体を通じて宣伝・広告活動が行われた結果、引用商標は、本件商標の登録出願時には既に、申立人の業務に係る役務を表示する商標として取引者、需要者の間に広く認識されて周知・著名な商標となっており、本件商標の登録査定時にも継続していた。 オ 本件商標と引用商標の類似性 本件商標と引用商標1は、外観上、本件商標が「SPORTSHOUSE」のローマ字であるのに対し、引用商標1が「スポーツハウス」の片仮名である点で異なるが、いずれも「スポーツハウス」の同一称呼及び「運動の家」の同一観念を生じる。よって、両商標は同一又は類似の関係にあるといえる。 本件商標と引用商標2は、外観上、ローマ字の太さに違いがあるものの、いずれも「SPORTSHOUSE」のローマ字で表記された共通性を有しており、しかもいずれも「スポーツハウス」の称呼及び「運動の家」の観念を生じ、同一の称呼及び観念を生じる。よって、両商標は同一又は類似の関係にあるといえる。 引用商標に係る使用役務は、「被服、履物等の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供、インターネットウェブサイトを介して行われる被服・履物等の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供、イベントの企画・運営・開催及びこれに伴う広告業」であるから、本件商標の指定役務と同一又は類似する役務である。 カ まとめ 以上より、本件商標は、申立人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であって、その役務又はこれに類似する役務について使用するものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。 (2)商標法第4条第1項第15号について 前記のとおり、引用商標は、申立人のハウスマークとして永年にわたり継続的に使用されており、本件商標の登録出願時には既に、申立人の業務に係る、「被服、履物等の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供、広告業等」を表示する商標として取引者、需要者の間に広く認識されて周知・著名な商標となっており、それは本件商標の登録査定時及びそれ以降も継続していた。 引用商標は、被服、履物等の小売業の提供の際に使用され、スポーツイベントを企画・運営・開催した際にはイベント開催プログラムやパンフレットの提供を通じて広告業に関わる役務も提供し、さらに多店舗展開及びオンラインショップを運営・管理し、個人消費者に加えて各市町村区の学校等にも上記各商品を販売してきたことが認められる。これらの事業においては当然に事業の管理、事業の運営、一般事務処理も行われてきていることが推認できる。 以上に鑑みれば、本件商標の指定役務は、小売等役務に加え「広告業、事業の管理、事業の運営、一般事務処理」の各役務についても、申立人の役務と、その性質、用途、目的において関連し、取引者、需要者にも共通性が認められる。 以上、前述のとおり、本件商標と引用商標との類似性の程度、指定役務と使用役務との類似性の程度に、これらの事情を総合考慮すると、本件商標の指定役務の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、本件商標を指定役務に使用したときに、当該役務が申立人又は申立人と一定の緊密な営業上の関係若しくは組織的・経済的に密接な関係がある者の業務に係る役務であるかのように、その出所について混同を生ずるおそれがある。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。 (3)商標法第4条第1項第7号について 本件商標権者は、香港の一企業である。 申立人の店舗における海外客の売上を表す「免税売上高」は、2015年9月1日?2016年8月31日で7,859万円、2016年9月1日?2017年8月31日で8,468万円、2017年9月1日?2018年8月31日で8,364万円(甲30の5?7)と、7?8千万円以上にのぼる。 また、例えば、2017年7月1日?同年7月31日の1か月間におけるスポーツハウス本店での免税対象219客中、中国籍(香港籍を含む)は、111客、同時期の千歳アウトレットモール店の免税対象87客中、中国籍は55客、2017年8月1日?同年8月31日の旭川店での免税対象66客中、中国籍は44客であって、香港籍を含む中国籍の多数の客が各店舗で買い物をしている実情がある(甲37)。 さらに、申立人のオンラインショップにおいて、香港からの購入者も少なからず見られる。 このように、香港を含む中国の多数の客が申立人の店舗やオンラインショップで商品を購入している状況にあり、また、引用商標は日本全国で広く使用されているため、インターネットやSNSが発達している状況に鑑みれば、香港でも引用商標が広く知られていたことは想像に難くない。 以上の事実によれば、本件商標は、引用商標と相紛らわしいところ、これが申立人の業務に係る商品を示すものとして日本国内において周知著名であることを承知の上で、本件指定役務が商標登録されていないことを奇貨として、自己の商標として出願・登録する剽窃的なものであり、また、引用商標に化体した信用・名声及び顧客吸引力に便乗し、不当な利益を得る目的をもって出願し登録を受けたものである。よって、公正な商取引の秩序を乱し、ひいては公の秩序を害するおそれがある。 したがって、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当する。 4 当審の判断 (1)引用商標の周知性について 申立人の主張及び同人の提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。 ア 申立人は、北海道札幌市にて、昭和22年4月に、「スポーツハウス」の商号で運動具店を創業し、昭和25年9月に「株式会社スポーツハウス」を設立し、店舗及びインターネットウェブサイトを介したオンラインショップを通じて、被服、履物等の小売等役務の業務を行っており(甲3?甲7)、官公庁や学校の体育・部活動向けの外商販売も行っている(甲29)。 そして、昭和44年の増築工事後の写真には、店舗正面に「スポーツハウス」と表示され(甲6の3の2、3)、現在の札幌市の本店には、「札幌スポーツ館」及び「スポーツハウス」と表示され(甲6の15の6)、同本店のエレベータのドアには、「札幌スポーツ館」及び「SPORTS HOUSE」と表示されている(甲6の15の1)。 また、釧路店、帯広店の店頭には、「スポーツハウス」及び「SPORTS HOUSE」と表示され(甲6の9?11)、千歳アウトレットモール・レラ店の店頭、及びマルヤマクラス店のフロアマップに「スポーツハウス/札幌スポーツ館」と表示されている(甲6の18・23)。 なお、現在の北見店(営業所から店へ変更:甲3)、伊達営業所及び北野店の外観(甲6の12・17・24)とする写真には、「スポーツハウス」の表示が認められるものの、北見店、伊達営業所及び北野店であることは確認できず、サツエキBridge店はフロアマップに「札幌スポーツ館」の表示が認められるが引用商標は見いだせない(甲6の21)。また、青森県八戸市の「八戸店」については、昭和46年当時の写真のみ(甲6の26)であり、さらに、申立人のウェブサイト(甲3)には、八戸店の表示がなく、本件商標の登録出願及び登録査定時における八戸店の存在は確認できない。 イ 広告宣伝活動について (ア)北海道新聞への広告は、「スポーツハウス旭川店」の表示で2013年1月2日、2014年1月2日、同年5月9日、同年10月17日、「スポーツハウス/札幌スポーツ館 本店」の表示で2010年2月11日、2015年1月1日、2016年1月1日、2017年1月1日、2019年1月2日、2020年1月1日、「スポーツハウス/札幌スポーツ館 イオンモール旭川駅前店」の表示で2015年3月27日、同年11月24日、同年11月26日、2016年1月1日に掲載している(甲22の1?6、甲22の9?12、甲22の16、甲22の18・19、甲27の2)。その他、「スポーツハウス/札幌スポーツ館」の表示のある広告(甲27の1、3及び4)を提出しているが、広告の掲載時期は確認できない。 (イ)北海道新聞折込みチラシには、「スポーツハウス/札幌スポーツ館」の表示の下、3店舗(本店、マルヤマクラス店、サツエキブリッジ店)周年祭として2015年4月25日、2016年4月23日のものがある(甲22の7、甲22の14)。 (ウ)申立人は、「15-16スキー新作展示会DMハガキ」を2015年6月22日に4000枚、2016年4月7日に「圧着DM」を18,620枚、2016年7月22日に「サマーセールDM」を18,153枚、2017年4月1日に春フレッシュキャンペーンDM」を19,555枚、それぞれ作成したことが認められ(甲22の8・13・15・17)、いずれのダイレクトメールにも「スポーツハウス」の文字を冠した表示がされ、また、スポーツハウス北見店からの2017年にメンバーズセールやメンバーズ3日間限定等とするダイレクトメール(甲26の6?8)を会員に送付したと推認できる。しかしながら、実際に配布した数は、不明である。 (エ)札幌スポーツ館マルヤマクラス店について、「スポーツハウス/札幌スポーツ館」の表示の下、平成26年4月18日から5月17日に地下鉄東西線円山公園駅のコンコース柱とコンコース壁面に駅ジャック広告がされた(甲22の20)。 (オ)十勝毎日新聞には、「旅やスポーツファン注目」の見出しの下、「スポーツ用品販売の『札幌スポーツ館』などを経営するスポーツハウス(札幌、O社長)が、このほど、旅とゴルフを中心としたスポーツが融合した『トラベルカフェ スポーツマイスターズスクエア札幌店』を・・・開店した。」旨の記載がある(甲24)が、掲載日は不明である。 (カ)住友生命経営情報誌オーナーズアイ(2018年9月号)には、株式会社スポーツハウスについて、代表取締役社長 O氏とともに紹介されている(甲28)が、当該情報誌の頒布先や頒布数等については不明である。 ウ スポーツイベントについて 「スポーツハウスCUP/全道ジュニアアルペン記録会」は、2014年(第39回)から2019年(44回)の大会プログラムにおいて、申立人主催とされ、「札幌スポーツ館」の文字とともに引用商標1が表示され(甲8の1?4)、YouTubeにおいて、第26回スポーツハウスカップのスタート地点の旗に引用商標1が表示されているが、コースの旗には、引用商標とは異なる「sport house cup」及び「札幌スポーツ館」の文字が表示されている。2019年の大会には選手のゼッケンに引用商標1が表示されている(甲8の5の4、5)。 「札幌スポーツ館杯 スノーマラソン大会」の2018年及び2019年の大会プログラム及び同2016年のウェブサイトには、「札幌スポーツ館」の文字とともに引用商標1が表示されている(甲9)。 また、申立人は、大会パンフレット広告(甲10)に引用商標が使用されていると主張するが、提出された証拠からは、それらが大会パンフレット広告とも確認できず、また開催日も記載されていないものである。 エ 売上高について 申立人の売上高は、平成23(2011)年9月1日?平成24(2012)年8月31日(26億2698万円)、平成28(2016)年9月1日?平成29(2017)年8月31日(27億1993万円)、平成29(2017)年9月1日?平成30(2018)年8月31日(21億6291万円)等である(甲30)とするが、会社全体の課税標準額であって、引用商標を使用した被服、履物との小売等役務に係る売上高であるかは確認できない。 オ ポイントカードの発行及びインターネットウェブサイトを介したオンラインショップについて 申立人は、「SPORTS HOUSE MENBER’S CARD」との名称のポイントカードを発行しており、2021年(令和3年)3月3日時点で、入会数は約15万名である(甲34)。また、申立人は、自社運営のオンラインショップの他、YAHOO店、楽天市場店、Amazon店においても、被服、履物等をネット販売している(甲7の1?甲7の4)。 また、「札幌スポーツ館Yahoo!店」は、「YAHOO!JAPANショッピング」の「北海道エリア スポーツカテゴリー賞 第3位」を受賞しているが、2016年(平成28年)7月から2017年(平成29年)6月を対象とするものであって(甲36)、本件商標の登録出願時及び登録査定時前のものである。 カ 上記アないしオからすれば、申立人は、北海道札幌市において、昭和22年4月に、「スポーツハウス」の商号で運動具店を創業し、昭和25年9月に「株式会社スポーツハウス」を設立し、店舗及びオンラインショップを通じて、被服、履物等の小売等役務を行っており、申立人主催の全道ジュニアアルペン記録会の「スポーツハウスカップ」が2014年より毎年開催されている。 そして、申立人店舗は、札幌市本店、釧路店、帯広店、千歳アウトレットモール・レラ店の店頭に引用商標1及び引用商標2を付している。 また、引用商標1を付した広告は、本店、旭川店、イオンモール旭川駅前店により、2010年に1回、2013年に1回、2014年に3回、2015年に4回、2016年に2回、2017年、2019年及び2020年にそれぞれ1回の北海道新聞への掲載、2015年と2016年にそれぞれ1回の北海道新聞折込みチラシであって、ほとんどが本件商標の登録出願時や登録査定時のものではなく、その広告回数も多いものともいい難い。ダイレクトメールによる広告については、2015年から2017年の間に作成し、送付されたことが推認できるものの、実際に配布した数は不明であり、また、地下鉄東西線円山公園駅ジャック広告については、平成26年4月18日からわずか1か月間のものであり、当該駅を利用する限られた者が目にするにすぎないものであって、いずれの広告も本件商標の登録出願時及び登録査定時前のものである。 さらに、「スポーツハウスCUP」や「札幌スポーツ館杯 スノーマラソン大会」の大会プログラムにおいて、引用商標1が使用されているものの、その大会の入場者数や規模については不明である。 そして、引用商標を使用した被服、履物等の小売等役務に関する売上高、市場シェア、宣伝広告費等については確認できない。 そうすると、申立人の提出に係る証拠からは、引用商標が、申立人の業務に係る被服、履物等の小売等役務について使用されていることは認められるものの、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る役務(被服、履物等の小売等)を表すものとして、取引者、需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。 (2)商標法第4条第1項第10号該当性について 引用商標は、上記(1)のとおり、申立人の業務に係る役務を表すものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、取引者、需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号を適用するための要件を欠くものであるから、同号に該当しない。 (3)商標法第4条第1項第15号該当性について ア 引用商標の周知性について 引用商標は、上記(1)のとおり、申立人の業務に係る役務を表すものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、取引者、需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないものである。 イ 本件商標と引用商標との類似性の程度について 本件商標は、「SPORTSHOUSE」の欧文字を書してなるところ、我が国で親しまれている英語の「SPORTS」と「HOUSE」の文字の結合と容易に認識されるものであって、その構成文字に相応して「スポーツハウス」の称呼を生じ、全体の文字は、辞書等に掲載が認められないから、特定の意味合いを有しない一種の造語といえ、特定の観念は生じない。 引用商標は、前記2のとおり、引用商標1は、「スポーツハウス」の片仮名、引用商標2は、「SPORTS HOUSE」の欧文字からなり、我が国で親しまれている英語の「SPORTS」と「HOUSE」の文字の結合及びその読みと容易に認識されるものであるところ、全体の文字は、辞書等に掲載が認められないから、特定の意味合いを有しない一種の造語といえ、特定の観念は生じない。 そうすると、本件商標と引用商標とは「スポーツハウス」の称呼又は「SPORTS HOUSE」の綴り字と「スポーツハウス」の称呼を共通にするものであり、類似性はあるというべきである。 ウ 引用商標の独創性について 引用商標は、我が国で親しまれている英語の「SPORTS」と「HOUSE」の文字の結合又はその読みを片仮名で表したものと容易に認識されるものであるから、独創性があるとはいえない。 エ 本件商標の指定役務と申立人の業務に係る役務の関連性、需要者の共通性について 本件商標の指定役務には、「被服・履物・帽子・運動着・水着・革製及び擬革製かばん・旅行かばん・かばん類・バックパック・財布・水筒・水差し・ケトルの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」等の役務が含まれており、引用商標が使用されている「被服、履物等の小売等役務」とは、その需要者を共通にし、両役務は関連性がある。 オ 出所の混同のおそれについて 上記アないしエのとおり、本件商標と引用商標は、類似性があり、本件商標の指定役務は、申立人の業務に係る役務を含みその需要者の範囲を共通にする場合があるとしても、引用商標は、独創性があるともいえず、申立人の業務に係る役務を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時に需要者の間に広く認識されているとはいえないものである。 そうすると、本件商標は、商標権者がこれをその指定役務について使用しても、取引者、需要者が、引用商標を連想又は想起することはなく、その役務が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれはないとするのが相当である。 その他、本件商標が引用商標と出所の混同を生ずるおそれがあるというべき事情は見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 (4)商標法第4条第1項第7号該当性について 申立人は、香港を含む中国の多数の客が申立人の店舗やオンラインショップで商品を購入している状況にあり、また、本件商標は、引用商標と相紛らわしいところ、これが申立人の業務に係る商品を示すものとして日本国内において周知著名であることを承知の上で、本件指定役務が商標登録されていないことを奇貨として、自己の商標として出願・登録する剽窃的なものであると主張している。 しかしながら、上記(1)のとおり、引用商標の周知性は認めることができず、申立人が提出した甲各号証を総合してみても、本件商標が不正の利益を得る目的等をもって剽窃的に登録出願したものと認めるに足りる具体的事実を見いだすことができない。 さらに、本件商標は、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激若しくは他人に不快な印象を与えるようなものでないこと明らかであり、さらに、社会の一般的道徳観念に反するなど、公序良俗に反するものというべき証左も見あたらない。 そして、本件商標は、他の法律によって、その商標の使用等が禁止されているものではないし、特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反するものでもない。 してみると、本件商標は、その登録を維持することが商標法の予定する秩序に反し、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標に該当するとまではいえないものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。 (5)むすび 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号及び同項第15号のいずれにも該当するものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲1(引用商標1) 別掲2(引用商標2) |
異議決定日 | 2021-09-30 |
出願番号 | 商願2019-52082(T2019-52082) |
審決分類 |
T
1
651・
255-
Y
(W35)
T 1 651・ 25- Y (W35) T 1 651・ 271- Y (W35) T 1 651・ 22- Y (W35) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 渡邉 潤、地主 雄利 |
特許庁審判長 |
岩崎 安子 |
特許庁審判官 |
小田 昌子 森山 啓 |
登録日 | 2020-11-30 |
登録番号 | 商標登録第6322367号(T6322367) |
権利者 | ミロック リミテッド |
商標の称呼 | スポーツハウス、ハウス |
代理人 | 太田 清子 |
代理人 | 佐川 慎悟 |
代理人 | 新保 斉 |