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審決分類 |
審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない X29 審判 全部取消 商標の同一性 無効としない X29 |
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管理番号 | 1378933 |
審判番号 | 取消2018-300666 |
総通号数 | 263 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2021-11-26 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2018-08-23 |
確定日 | 2021-10-08 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第5334868号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5334868号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおり「Feel the Difference」の欧文字と「フィール ザ ディファレンス」の片仮名を2段に書してなり,平成21年11月25日に登録出願,第29類「ビタミン・ミネラルを主成分とする錠剤状・粒状・顆粒状・粉末状・カプセル状・ゼリー状・液状の加工食品」を指定商品として,同22年7月2日に設定登録がされ,現に有効に存続しているものである。 そして,本件審判の請求の登録日は,平成30年9月5日である。 なお,本件審判において,商標法第50条第2項に規定する「その審判の請求の登録前3年以内」とは,平成27年(2015年)9月5日ないし同30年(2018年)9月4日である(以下「要証期間」という場合がある。)。 第2 請求人の主張 請求人は,本件商標の登録を取り消す。審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第19号証を提出した。 1 請求の理由 本件商標は,その指定商品について,継続して3年以上日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから,その登録は商標法第50条第1項の規定により取消されるべきものである。 2 答弁に対する弁駁 (1)本件商標及び本件商標権者が使用している標章について 被請求人の提出した証拠によると,要証期間内に日本国内において,本件商標がその指定商品について,商標として使用されている事実は認められない。 本件商標は,別掲1のとおりの構成であり,本件商標からは,その構成中の片仮名の発音に従い「フィールザディファレンス」の称呼が生じる。 しかしながら,「ウィラード・ゼリー」又は「Dr.ウィラード・ゼリー」と称するゼリー状の美容補助加工食品(以下「本件商品」という。)に実際に使用している標章は「Dr.Willard’s Water」である。 (2)各証拠についての考察 ア 商品の包装箱(乙5) 「商標の使用」の本来的意義は,商標を商品や役務との関係において,その機能(自他商品識別機能など)を発揮し得る状態に置くことであり,単に,形式的に包装容器などに表示されることではない。 本件商標権者が使用している商標と主張する「Feel the Difference」の文字は,「Dr.Willard’s Water(R)(『(R)』は『R』の丸囲み文字,以下同じ。)」の文字と比較して細く小さいサイズの文字で記載されており,包装箱の側面に表示されているため,商品陳列棚に並べられた状態では,一般需要者はその文字を視覚的に認識することができない。 商品の出所を認識するための目印である商標は,商品本体又は包装箱の正面に表示されるのが一般的であり,需要者,取引者においても,その正面に付された標章を商標と認識している。商品の出所の認識のために,商品の容器の背面や側面あるいは底面を確認する慣習はないものと考えられる。 コラーゲン配合の美容補助加工食品の分野でも例外ではなく,ほぼ全ての商品において商標は商品の前面に目立つように表示されており(甲2),本件商品についても,需要者,取引者は,正面に付された「Dr.Willard’s Water(R)」を本件商品の商標であると認識するのが自然である。 また,本件商標権者も登録商標であることを示す「(R)」マークが付された「Dr.Willard’s Water」に自他商品の識別標識としてその機能を発揮させようとしている。 一方,側面に記載された「Feel the Difference」の文字は,そのセンテンスの,「違いを感じてください」,あるいは「違いを感じて」といった程度の意味合い,表現の仕方などを考慮しても出所を表示するための記載ではなく,キャッチフレーズとして商品に関するコンセプト等を表しているものと考えられ(甲4),需要者,取引者ばかりでなく,当該標章の使用者においても,自他商品の識別機能を果たしていない態様の表示であり,商標的使用には当たらない。 なお,大手インターネット通販サイトにおいて,「Feel the Difference」と「Dr.Willard’s」のワードを使って商品検索を行ってみたところ,「Feel the Difference」の文字では本件商品はヒットせず,「Dr.Willard’s」の文字により,本件商標権者の化粧品がヒットした(甲8?甲13)。 イ ウィラード博士とDr.ウィラード・ウォーターの歴史(乙3) ウィラード博士とDr.ウィラード・ウォーターの歴史に関する資料であり,本件商標の使用の事実を証明するものではない。 ウ 本件商標権者のホームページ(乙4) 本件商標である「Feel the Difference」の表示が第6頁に確認できるが,極めて小さい文字で記載されており,本件商品との関係性は何ら示されておらず,よって当該表示が本件商品の出所を表示しているものということはできないことから,本件商標の使用とは認められない。 エ ネット情報(乙6) 本件商品が2010年2月25日から販売されていたということは確認できるが,本件商標がどこにも表示されていない。 オ ウィラード・ゼリーの案内書及び旧パッケージの写真(乙7,乙8) 案内書及び旧パッケージは共に,要証期間外のものであり,本件商標の使用の事実を証明するものではない。 カ ネット情報(乙9) 掲載日及び使用時期が不明であるため,要証期間内のものであるか確認できない。 また,実際にWeb上で拡大画像を確認しても,アルファベットらしき文字が記載されていると認識する程度であり,判読すること,ましてや意味を捉えることは難しい(甲14)。 キ ネット情報(乙10?乙12) 本件商標の表示は,どこにも確認することができない。 また,表示されている日付は正確には投稿日又はコメントの掲載日であり,購入日ではないので,客観的に使用時期を証明するものではない。 ク 発注書及び納品書(乙13?乙20) 本件商標の表示は,どこにも確認することができない。 ケ 店舗の写真(乙31) 本件商品がショールームに並べられ販売されていることが確認できるが,当該写真は2020年(令和2年)6月22日に被請求人によって撮影されたものであり,要証期間内における本件商標の使用の事実を何ら証明するものではない。 コ 「受注管理」一覧表及び「お買い上げ明細書」(乙32,乙33) 本件商品が要証期間内に販売・購入されたことが確認できるが,当該証拠をもって本件商標が,商標としての機能を果たしていたとは認められない。 「お買い上げ明細書」(乙33)にも,「Feel the Difference」の表記はない。 また,本件商標権者の商品のユーザーによって書き込まれたロコミや体験談(甲15?甲19)によれば,その掲載内容中に「Feel the Difference」の名称は確認できない。 上記事実からも,「Feel the Difference」の名称は本件商標権者のユーザーにとって本件商品の出所表示機能を有する文字としては認知されていない。 また,本件商品の個包装においても「Feel the Difference」の使用はなく,この文字を商標として使用するという認識が,そもそも存在していない(乙33の3,7,10,14,25,27,28,乙37)。 サ 会報誌,会報誌の印刷費請求書,会報誌の発送作業費請求書及び会報誌の送付先リスト(乙21?乙30,乙34?乙46) 会報誌が要証期間内に頒布されたことが確認できるが,会報誌表紙のタイトルの下に小さく表示された「Feel the Difference」の文字は,単に商品戦略の理念を示す為の記載であり,出所表示機能を発揮させるような使用態様ではない。 また,当該文字が「取扱商品のイメージアップのための宣伝」に使われる言葉であることと,それが商標的使用態様で使用されているか否かとは異なる事柄であり,具体的な商品の自他商品識別力を発揮する状況として捉えられない。 そして,被請求人は,当該文字がサブブランドとして位置付けられていると主張しているが,本来,サブブランドとは同一会社がメインブランドとは異なるコンセプトのもとに商品の販売やサービスの提供を行う際に設けるブランドであると考えられる。そのサブブランドの名称が商品の垣根を越えて,取扱商品全体のイメージアップを目的に利用されるのであれば,その使用態様はもはやサブブランドとしてのものではなく,本件商標権者に係る事業全体の促進を企図したキャッチフレーズもしくはキャッチコピーとしての使用に他ならず,当該文字についての商標的使用の証明には寄与しないものである。 さらに,本件商品の掲載頁に,「Feel the Difference」は一切表示されておらず,掲載された写真からは当該文字は判読不可能である。 シ 本件商標権者のホームページ(乙47,乙48) 掲載日や更新日が不明であるため,要証期間内のものであるか否かが確認できない。 3 小括 以上より,被請求人によって提出された各号証によっては,本件請求に係る商品について,要証期間内に日本国内において,本件商標権者が使用した事実は証明されていない。 第3 被請求人の主張 被請求人は,結論同旨の審決を求め,答弁書及び審尋に対する回答書において,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第48号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 本件商標権者の概要 本件商標権者は,米国の鉱物学者ウィラード博士によって発見された,独特のミネラル成分を有し,一般的な水とは分子構造の異なる,水本来の働きを最大限に引き出した新しいタイプの水「Dr.ウィラード・ウォーター」をベースとして各種の化粧品(化粧水)を開発し,販売活動を行っている(乙3,乙4)。本件商標を使用する本件商品は,「食べる化粧品」ともいえる美容補助加工食品「ウィラード・ゼリー(Willard’s Jelly)」である。 2 本件商標権者が使用している商標 (1)本件商品のパッケージに付す商標 本件商標権者が本件商品のパッケージに付すことにより使用している商標は,「Feel the Difference」である(乙5)。 「Feel the Difference」の文字は,本件商品の包装容器の左側面と右側面の両方に独立して目に留まるように横書き白抜き文字で表示されている(乙5の1?3,5,6)。 当該文字は,当該容器の正面には表示されていないが,メインブランドとしての商号商標「Dr.Willard Water」に対するサブブランドとしての位置付けになっている。 また,本件商標権者の顧客の多くが登録会員やロコミで顧客となった固定客であり当該顧客は,商品の購入後,使用する際に,容器右側面の「Feel the Difference」の表示の下に「お召し上がり方」や「お取り扱いのご注意」が記載されているため,自ずと使用者の視線は,これらの注意書きに行くと同時に,注意書きよりも文字が大きくて目立つ当該表示にも視線は向かい,知らず知らずのうちに当該文字が本件商品の出所表示として脳裏に残るものと考えられる。 したがって,「Feel the Difference」の文字が商品容器の側面に表示されていても,それは商標的使用と考えられ,愛用者が,それ以降後継続して本件商品を購入する際の商品出所表示機能を十分果たし得るものである。 さらに,商標の使用が単なるキャッチフレーズとしての使用となるかどうかは,その商標がもつ意味合いのみでは判断できない。 ましてや,「Feel the Difference」は,指定商品との関係で自他商品識別力が認められ登録された商標であり,美容補助加工食品の分野のみならず,他の商品・役務分野においても「Feel the Difference」と同一の商標が登録になっている。 このことからも,「Feel the Difference」は,本来的に自他商品・役務識別機能をもち得る商標なのである。 加えて,本件商標の使用態様は,形式的な使用ではなく,商標としての機能を発揮できる使用態様となっている。 この使用態様について,「Feel the Difference」のもつ意味合いのみを捉えて,単にキャッチフレーズとして出所表示機能を発揮できないと決め付けることはできない。 請求人が挙げたキャッチフレーズに関する審決例は,いずれも誰が見ても明らかにキャッチフレーズとしての使用態様と認識できるもの,あるいは純粋にキャッチフレーズの中に商標が組み込まれた状態での使用であり,自他商品識別標識としての商標の使用とは認め難い使用態様ばかりといえる。 (2)本件商標と「Feel the Difference」について 本件商標は,上段に欧文字「Feel the Difference」を横書きにし,下段に片仮名「フィール ザ ディファレンス」を配したものからなるが,欧文字表記と片仮名表記は,称呼は同一であり,観念についても,「違いを感じてください」,あるいは「違いを感じて」といった程度の意味合いが生じることは中学生の英語レベルでも認識可能であって,欧文字と片仮名の間に一対一の対応関係があるため,欧文字一方の使用であっても登録商標と社会的通念上同一と認められる商標の使用といえる。 3 本件商品 本件商品は,「ウィラード・ゼリー」又は「Dr.ウィラード・ゼリー」と称するゼリー状の美容補助加工食品であり,ヒアルロン酸,ビタミンC,コラーゲンが手軽に摂れるスティックタイプの美容ゼリーである(乙5)。また,当該美容ゼリーは,主成分として,ビタミン(ビタミンC)やミネラル(ナトリウム等)が含まれており(乙5の7,乙10,乙11),グレープフルーツ味とマンゴーカシス味の2種類がある(乙5の7)。 なお,同パッケージの「販売者」の住所は「東京都渋谷区恵比寿西1-33-36 代官山MBビル1F」となっているが,本件商標権者の主たる事業所を示しており,平成30年3月には同人のショールームがオープンしている(乙30)。 本件商品は,平成22年(2010年)2月25日から発売開始され(乙6?乙8),その後,平成13年(2001年)(審決注:平成25年(2013年)の誤記と認める。)5月24日から,Amazon co.jpでの取り扱いが開始され,パッケージも現在のパッケージに変更され,現在に至っている(乙9)。 また,請求人は,当該Amazon co.jpのWeb上の拡大画像からは,文字を判読することや意味を捉えることは難しい旨主張するが,当該拡大画像を目にすれば,「Feel the Difference」の文字が看取できる(甲14)。 4 本件商標の使用時期 本件商標権者は,要証期間に本件商標を本件商品について使用している。 (1)ネット情報(乙10,乙11) 「Dr.ウィラード・ウォーターホームページ商品ラインナップ」の「Dr.ウィラード・ゼリー 1箱」の2015年10月21日ないし同月23日及び2016年12月10日の投稿者の書き込みより本件商品の販売・購入行為がされていた。 (2)ネット情報(乙12) 2016年1月27日付けのネット情報「Ninja Analyze 忍者ブログ 唇トラブル記」に本件商品の写真が掲載されており,本件商品購入者の使用感とお勧めコメントが記載されている。 (3)発注書及び納品書(乙13?乙20) 当該発注書及び納品書は,要証期間内(2016年7月26日?2018年8月20日)における本件商品の製造,あるいは本件商品に使用する容器(箱)等を他社に製造委託していた事実を示す取引書類であり,本件商品を顧客(エンドユーザー)に販売するための予備的取引行為に当たり,本件商品の取引が実際に為されていたことの傍証となるものである。 (4)会報誌(乙21?乙30) 本件商標権者は,会報誌を月刊で顧客へ配布しており,当該会報誌には,本件商品の宣伝広告や紹介も毎号掲載されている。 また,当該会報誌の奥付のページには,商品の「ご注文方法」が記載され,「ホームページ」アドレス,「ポイントサービス」等について詳細な説明がされている。 そして,要証期間内に頒布した当該会報誌表紙(2018年5月号を除く)のタイトルの下にも商標「Feel the Difference」が掲記されている。 この「Feel the Difference」の表示は,本件商標権者が取り扱っている商品,本件商品,その他化粧品全体をカバーしており,本件商標権者の取扱商品のイメージアップのための宣伝広告機能を果たしているといえる。 また,当該会報誌には本件商品の写真も掲載されていて,「Dr.ウィラード・ゼリー」等の表示がある。 5 回答書における主張 商標法第2条第3項に規定する標章(商標)の使用について (1)商品の容器に商標を付したものを譲渡のために展示する行為(第2号) 本件商標権者は,2018年3月17日の代官山直営店ショールームのオープン以来,現在も本件商品を当該ショールームの店頭に展示し販売している(乙30?乙32)。 そして,来店した顧客は,本件商品を手に取って眺めることができ,容器側面の「Feel the Difference」の表示が目に入るので,当該文字が商標としての機能を十分果たし得るものであり,これは,商標法第2条第3項第2号の「商品の包装に標章を付したものを譲渡のために展示する行為」に該当する。 また,2018年3月17日に代官山直営店がオープンしてから現在まで継続しての使用であるから,要証期間内の使用に該当する。 (2)商品の包装容器に標章を付したものを譲渡する行為(第2号) 本件商品の取引において「ウィラード・ゼリー」,「Dr.ウィラード・ゼリー」あるいは「ウィラード・ウォーターゼリー」の品名が表示されているものは,すべて「Feel the Difference」が容器の両側面に表示された本件商品を指称している(乙5)。 本件商品の「受注管理」の一覧表(乙32)には,検索条件として「受注日」を要証期間に相当する2015年9月5日ないし2018年9月5日と指定し,「商品コード(番号)」を「A001」と指定した検索結果が219件検出されたものである。なお,商品コード「A001」とはDr.ウィラード・ゼリー(グレープフルーツ味)のことである(乙21?乙30,乙34?乙43)。 また,当該一覧表において,本件商品「A001」の受注日,注文番号,顧客(会員)番号,顧客氏名,販路経路,支払方法,請求金額,出荷予定日,出荷日,対応状況,入金ステータス,出荷ステータスの事項について全て確認することができる(乙32)。 さらに,当該一覧表から個別の取引内容の詳細を確認する場合には,「注文番号」を指定することで「お買い上げ明細書」を取り出すことができる。 納品書に相当する「お買い上げ明細書」には,顧客氏名,顧客(会員)番号,注文番号,注文日,支払方法,商品番号,商品名,数量,請求金額など表示されている(乙33)。 以上によって,本件商品の容器に本件商標を付したものが実際に注文を受け納品されているので,商標法第2条第3項第2号の使用に該当し,しかも2015年9月5日から2018年9月5日(審決注:4日の誤記と認める。)までの要証期間の使用である。 (3)商品に関する広告に標章(商標)を付して頒布する行為(第8号) 本件商標権者の発行する会報誌には発行日を記載した奥付がないため(乙21?乙30,乙34?乙43),印刷会社との取引書類,各年各月号の印刷に関する請求書の写し(乙44)によって会報誌を印刷した日を示す。 また,配送会社との取引書類(請求書)の写し(乙44の30?36,乙45)によって会報誌の頒布を示し,登録会員の送付先リスト抜粋(乙46)によって配布先を示す。 6 小括 以上により,本件商標と社会通念上同一と認められる「Feel the Difference」は,要証期間において本件商品についての使用が立証されている。 第4 当審の判断 1 被請求人が提出した証拠及び同人の主張によれば,以下の事実が認められる。 (1)本件商標権者の登記上の住所は,本件商標の商標登録原簿の商標権者の住所と同じであるところ,本件商標権者は,2018年(平成30年)3月17日に東京都渋谷区恵比寿西1-33-36オクターヴコート代官山1Fにあった店舗をショールームとしてリニューアルオープンした(乙1,乙2,乙43)。 (2)「商品名:ウィラード・ゼリー(グレープフルーツ味)」とする商品の包装箱(以下「本件包装箱」という。)の左右の側面には「Feel the Difference」の文字が赤地に白抜き文字で表示されている。 また,当該包装箱には「名称 コラーゲン加工食品」,「栄養成分表示(1袋12gあたり) ナトリウム 7mg」の表示及び販売者として「株式会社Dr.ウィラード・ウォーター MK」の文字及び上記ショールームの住所のうち建物名の記載がない住所が表示されている(乙5)。 (3)本件商標権者は,同人のウェブサイト上で,本件包装箱と同様のものと認識できる包装箱を表示し,「(グレープフルーツ味)Dr.ウィラード・ゼリー」として販売しているところ,当該商品の説明として「安定持続性ビタミンC誘導体 185mg配合」の表示がある(乙11)。 (4)本件商標権者は,2018年(平成30年)4月24日発行の会報誌「ウィラード通信」2018年5月号15頁において,本件包装箱と同様のものと認識できる包装箱を表示し「美容ゼリー」として「Dr.ウィラード・ゼリー グレープフルーツ味」の商品名で販売していることが認められる。また,当該会報誌の裏表紙には,本件商標権者のショールームの住所が表示されている(乙43,乙44の31)。 なお,当該会報誌は,日本国内の顧客(会員)に頒布されている(乙46)。 (5)本件商標権者の顧客Aは2018年(平成30年)5月14日に「(グレープフルーツ味)Dr.ウィラード・ゼリー1箱」を含む本件商標権者の製造に係る商品を電話注文し,本件商標権者は,同人のショールームの住所より,当該商品を同月17日に発送した(乙32,乙33の32)。 2 上記1の認定事項に基づき,以下判断する。 (1)本件商標の使用者について 「ウィラード・ゼリー(グレープフルーツ味)」を商品名とする商品(以下「使用商品」ということがある。)の包装箱(本件包装箱)の左右の側面には,「Feel the Difference」の欧文字(別掲2 以下「使用商標」ということがある。)が,背面には販売者として本件商標権者の名称と「MK」の文字及び住所が記載されているところ,当該「MK」の文字は,何らかの記号又は符号であって本件商標権者の名称とは関連のないものと認められる。また,当該住所は,本件商標の商標登録原簿に表示されている住所と異なるが,本件商標権者のショールームの住所のうち建物名の記載がない住所と認められる。 そうすると,使用商品は,本件商標権者の販売に係るものであるから,使用商品に使用商標を付したのは本件商標権者とみて差し支えない。 (2)本件商標と使用商標の社会通念上の同一性について 本件商標は,別掲1のとおり,「Feel the Difference」の欧文字と「フィール ザ ディファレンス」の片仮名を2段に書してなるところ,下段の片仮名は上段の欧文字の読みを表したものと,無理なく認識できるものである。 他方,本件包装箱の側面に表示されている「Feel the Difference」の欧文字(使用商標)は,本件商標の上段の欧文字と同じつづりである。また,使用商標からも本件商標の読みである「フィールザディファレンス」の称呼が生じるものと認められる。 そうすると,使用商標は,本件商標と称呼を同一にし,また本件商標の上段の欧文字とつづりを同一にするものであるから,本件商標と社会通念上同一の商標と認められる。 (3)使用商品について 本件商標の指定商品(本件審判の請求に係る商品)は,上記第1のとおり, 第29類「ビタミン・ミネラルを主成分とする錠剤状・粒状・顆粒状・粉末状・カプセル状・ゼリー状・液状の加工食品」である。 そして,本件包装箱の背面には「名称 コラーゲン加工食品」,「栄養成分表示(1袋12gあたり) ナトリウム 7mg」の表示がある。 また,本件商標権者がウェブサイト上で販売している商品名「(グレープフルーツ味)Dr.ウィラード・ゼリー」は,使用商品と商品名が異なるが,「グレープフルーツ味」及び「ウィラード・ゼリー」の文字を共通にし,本件商標権者の名称の一部である「Dr.ウィラード」の文字を含むものである。また,当該商品の販売に際し,本件包装箱と同様のものと認識できる包装箱を表示していることから,本件商標権者が販売する「(グレープフルーツ味)Dr.ウィラード・ゼリー」は,使用商品「ウィラード・ゼリー(グレープフルーツ味)」と同一の商品であると認められる。そして,当該ウェブサイトには,使用商品の説明に「安定持続性ビタミンC誘導体 185mg配合」の表示がある。 そうすると,使用商品は,ナトリウムとビタミンC誘導体を主成分としている商品であると認められ,ナトリウムはミネラルの一種でありビタミンC誘導体はビタミンに含まれるものであるから,使用商品はミネラルとビタミンを主成分とする加工食品であるということができる。 また,本件商標権者は,2018年(平成30年)4月24日発行の会報誌「ウィラード通信」(乙43)において,本件包装箱と同様のものと認識できる包装箱を表示して「Dr.ウィラード・ゼリー グレープフルーツ味」とする商品を「美容ゼリー」として販売しているところ,当該商品は,上記と同じ理由より,使用商品と認められるから,その形状は,ゼリー状であると認められる。 したがって,使用商品は,「ナトリウムとビタミンC誘導体を主成分とするゼリー状の加工食品」であり,本件商標の指定商品の範ちゅうの商品であると認められる。 (4)商標の使用及び使用時期について 本件商標権者は,上記(1)のとおり,本件包装箱の側面に使用商標を表示している。 また,本件商標権者は,上記1(4)のとおり,2018年(平成30年)4月24日発行の会報誌「ウィラード通信」において,使用商品を販売している。 そして,本件商標権者は,上記会報発行後の2018年(平成30年)5月14日に「(グレープフルーツ味)Dr.ウィラード・ゼリー1箱」を含む本件商標権者の製造に係る商品の注文をその顧客Aより受けて,同月17日にショールームの住所より,発送したことが認められるところ,当該「(グレープフルーツ味)Dr.ウィラード・ゼリー」とする商品は,上記(3)のとおり,使用商品と認められるものである。 上記のとおり,顧客Aは,会報誌「ウィラード通信」が2018年(平成30年)4月24日に発行された後,同誌に掲載された使用商品を同年5月14日に注文し,本件商標権者は,当該注文を受けた後,同月17日に当該商品を顧客Aに販売していたことが認められるから,この取引に不自然なところはない。 また,上記会報誌の頒布先は日本国内であることに加え,本件商標権者のウェブサイトが日本語で表示されていることからすると,使用商品は日本国内より注文され,その発送先も日本国内であるとするのが自然である。 そうすると,本件商標権者は,平成30年5月17日に,当該使用商品を日本国内の顧客に譲渡又は引き渡したものと認められ,当該日付は要証期間内である。 (5)小括 以上によれば,本件商標権者は,要証期間内に日本国内において,本件審判の請求に係る商品に含まれる「ビタミンとミネラルを主成分とするゼリー状の加工食品」の包装箱に本件商標と社会通念上同一と認められる使用商標を付して譲渡又は引き渡したものであって,上記使用行為は,商標法第2条第3項第2号にいう「商品の包装に標章を付したものを譲渡し,または引き渡した行為」に該当する。 3 請求人の主張について 請求人は,使用商標が箱の側面に表示されていること及び使用商標を構成する「Feel the Difference」の文字が,「違いを感じてください」,あるいは「違いを感じて」といった程度の意味合いであり,キャッチフレーズとして商品に関するコンセプト等を表しているものと考えられるから,使用商標は,自他商品の識別機能を果たしていない態様の表示であり,商標的使用には当たらない旨主張している。 しかしながら,商品又はその包装には複数の商標を付すことは一般的に行われているうえに,その中で,自他商品の識別標識としての機能を有し,出所表示機能を果たす商標は,必ずしも1つであるとは限らないことから,使用商標が商品の出所表示機能を果たしていないとはいえないものであり,また使用商標を構成する「Feel the Difference」の文字が直ちにキャッチフレーズを表示しているとも認められない。 また,請求人が提出する証拠は,本件と事案が異なるものである。 したがって,請求人の主張は採用できない。 4 まとめ 以上のとおり,被請求人は,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,本件商標権者が本件審判の請求に係る指定商品に含まれる「ビタミンとミネラルを主成分とするゼリー状の加工食品」について,本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していたことを証明したというべきである。 したがって,本件商標の登録は,商標法第50条の規定により,取り消すことはできない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲1(本件商標) ![]() 別掲2(使用商標 色彩は原本参照。) ![]() |
審理終結日 | 2021-04-27 |
結審通知日 | 2021-05-06 |
審決日 | 2021-06-01 |
出願番号 | 商願2009-89050(T2009-89050) |
審決分類 |
T
1
31・
11-
Y
(X29)
T 1 31・ 1- Y (X29) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 薩摩 純一 |
特許庁審判長 |
半田 正人 |
特許庁審判官 |
大森 友子 平澤 芳行 |
登録日 | 2010-07-02 |
登録番号 | 商標登録第5334868号(T5334868) |
商標の称呼 | フィールザディファレンス |
代理人 | 高柴 忠夫 |
代理人 | 恩田 俊郎 |
代理人 | 眞島 竜一郎 |
代理人 | 村山 靖彦 |
代理人 | 江藤 聡明 |