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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2020890074 審決 商標
無効2017890011 審決 商標
無効2020890039 審決 商標
無効2017890071 審決 商標
無効2019890040 審決 商標

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審決分類 審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W30
審判 全部無効 外観類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W30
審判 全部無効 称呼類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W30
審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W30
審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W30
審判 全部無効 観念類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W30
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W30
管理番号 1378931 
審判番号 無効2018-890005 
総通号数 263 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-11-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2018-02-01 
確定日 2021-10-22 
事件の表示 上記当事者間の登録第5556223号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5556223号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5556223号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおり、「ざんまい」の文字を横書きした構成よりなり、平成24年9月13日に登録出願、第30類「すし」を指定商品として、同年12月26日に登録査定、同25年2月8日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が本件商標の無効の理由において引用する商標は、以下の2件であり、いずれも現に有効に存続しているものである。
1 登録第5003675号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲2のとおりの構成よりなり、平成14年6月19日に登録出願、第30類「すし」及び第43類「すしを主とする飲食物の提供」を指定商品及び指定役務として、同18年11月17日に設定登録されたものである。
2 登録第5511447号商標(以下「引用商標2」という。)は、「すしざんまい」の文字を標準文字で表してなり、平成22年4月9日に登録出願、第30類「すし,すしを主とするべんとう」及び第43類「すしを主とする飲食物の提供」を指定商品及び指定役務として、同24年8月3日に設定登録されたものである。
以下、これらをまとめて「引用商標」という。

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第18号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第10号、同第11号、同第15号及び同第19号に該当するものであるから、同法第46条第1項第1号により、その登録を無効にすべきものである。
2 無効原因
(1)請求人の登録商標について
請求人は、本件商標の先願となる引用商標の商標権者である。
(2)引用商標が周知・著名であることについて
ア 本件商標は、平成24年9月13日に登録出願されたものであるところ、引用商標は、請求人が展開するすし店を表すものとして、「すし」や「すしを主とする飲食物の提供」について継続して使用されてきており、遅くとも、本件商標の登録出願前から、登録査定時、さらには、本件商標の審判請求時に至るまで、請求人の業務に係る商品及び役務を表示する商標として、我が国において周知・著名となっている(甲4?甲8)。
イ テレビ放送
テレビ放送の番組において、古くは1989年の放送のものから、2016年に放送されたものまで、継続的に、請求人の「すしざんまい」が取り上げられていることが分かる。請求人の「すしざんまい」は、報道番組を始め、いわゆるワイドショーや情報番組、バラエティー番組など、多種多様な番組で取り上げられており、その放送局は、全国放送局である(甲4)。
加えて、(株)エム・データが放送番組を視聴し記録したデータである「エムデータTVウォッチ」において、請求人の「すしざんまい」が、本件商標の登録出願前から本件審判請求時に至るまで、報道番組を始め、いわゆるワイドショーや情報番組、バラエティー番組など、多種多様な番組で取り上げられて、全国的に放送されたことがうかがえる(甲5)。
ウ 新聞、雑誌、ウェブサイトによる報道
新聞、雑誌、ウェブサイトによる報道において、2001年発行のものから、2016年に発行されたものまで、継続的に、請求人の「すしざんまい」が取り上げられている。請求人の「すしざんまい」は、いわゆる業界誌やビジネス雑誌のほか、異業種の雑誌等においても取り上げられており、その名称は、様々な分野に浸透している(甲6)。
また、新聞記事によれば、すし店の24時間営業の開始、マグロの初セリにおける落札、北海道、北陸等各地への店舗の進出など、本件商標の登録出願前の平成13年(2001年)発行のものから、同30年(2018年)に発行されたものまで、継続的に、請求人の「すしざんまい」が取り上げられている(甲7)。
エ 請求人の引用商標の使用状況と業績
請求人のウェブサイトをみるに、引用商標1が請求人のホームページに大きく表示されているとともに、そこに掲載されている店舗の写真等によれば、店舗の看板などにも、引用商標1が表示されている。また、引用商標2は店舗の名称として表示され、「すしざんまい」の文字の後に、地名に相当する文字に「店」の文字を付加して、「すしざんまい○○店」のように表示している(甲8)。
また、請求人の「すしざんまい」の業績をみるに、請求人のウェブサイトによれば、北海道から九州まで54店舗を展開している。本件商標の登録出願時(平成24年9月13日)である2012年度の飲食業ランキング(甲8の8:日経MJ第39回飲食業調査(2012年度))によれば、全飲食店の中にあって、店舗売上高伸び率ランキングでは第6位、売上高経常利益率ランキングでは第5位となっている。さらに、すし店に限ってみれば、同じく2012年度の「外食産業マーケティング便覧2012 No.2(富士経済 2012年7月25日刊)」によれば、その売上高は2位以下を大きく引き離し、首位となっている(甲8の9)。そして、売上高が2位以下を大きく引き離しての首位という状況は、2015年度の同便覧においても、全く変わっていない(甲8の10)。
オ 小括
請求人は、以上のとおり、自身のウェブサイトや店舗の看板等に引用商標を表示しているばかりでなく、テレビ、新聞、雑誌などのいわゆるマスメディアにも、本件商標の登録出願前から、登録査定時、さらには、本件審判請求時に至るまで、引用商標とともに、継続的に取り上げられ、その業績も、「すし店」の分野においては、2位以下を大きく引き離して売上高首位に至っているものであるから、引用商標は、請求人の店舗の名称として、日本全国において周知・著名といえる。
(3)本件商標と引用商標とは類似することについて
ア 本件商標
本件商標は、別掲1のとおり、「ざんまい」の文字よりなるところ、漢字の「三昧」を平仮名で表したものであり、その構成文字である「ざんまい」の文字に相応して「ザンマイ」の称呼が生じるとともに、「一心不乱に事をするさま。むやみやたらにするさま。」(広辞苑)の観念を生じる。
イ 引用商標
(ア)引用商標1
引用商標1は、別掲2のとおり、「つきじ喜代村]、「すしざんまい」及び「SUSHIZANMAI」の文字を異なる書体と大きさで3段に横書きしてなる構成よりなるものであり、その中でも、中段の「すしざんまい」の文字部分が圧倒的に大きく顕著に表示されているものである。
そして、その中段の文字部分をみるに、通常、横書きが左から右方向に流れるように文字が配置されるのと異なり、「し」の文字が「す」の文字のやや前方となる左下の方向に配置され、その右側に多少小さめに「ざんまい」の文字を配置してなるものである。
引用商標1は、このように、中段が「すし」と「ざんまい」に分かれて看取される構成となっており、そのうちの語頭の「すし」の2文字は、その指定商品の普通名称に当たるものであって、独立して自他商品の識別標識としては機能し得ない部分である。
そうすると、引用商標1は、中段の文字部分のうち、「すし」の文字部分を捨象した「ざんまい」の文字も独立して自他商品の識別標識として機能し得るということができ、当該文字部分に相応して、「ザンマイ」の称呼、「一心不乱に事をするさま。むやみやたらにするさま。」(広辞苑)の観念を生じる。
(イ)引用商標2
引用商標2は、上記第2の2のとおり、「すしざんまい」の文字を標準文字によって横書きした構成よりなるところ、その構成中の「すし」の2文字は指定商品の普通名称として、また、「ざんまい」の2文字は「一心不乱に事をするさま。むやみやたらにするさま。」(広辞苑)を意味する語として、それぞれ親しまれたものであるから、取引者、需要者をして、容易に「すし」の語と「ざんまい」の語からなるものと把握、認識し得るものである。
そして、そのうちの「すし」の文字は、指定商品の普通名称であって、自他商品の識別力がないものである。
そうすると、引用商標2は、「すし」の文字部分を捨象した「ざんまい」の文字も独立して自他商品の識別標識として機能し得るということができ、当該文字部分に相応して、「ザンマイ」の称呼、「一心不乱に事をするさま。むやみやたらにするさま。」(広辞苑)の観念を生じる。
ウ 本件商標と引用商標の対比
本件商標は、上記アのとおり、「ざんまい」の文字よりなり、その構成文字に相応して「ザンマイ」の称呼、「一心不乱に事をするさま。むやみやたらにするさま。」(広辞苑)の観念を生じるものである。
一方、引用商標は、「ざんまい」の文字も独立して自他商品の識別標識として機能し得るということができるのであり、当該文字部分に相応して、「ザンマイ」の称呼、「一心不乱に事をするさま。むやみやたらにするさま。」(広辞苑)の観念を生じる。
そうすると、引用商標は、いずれも、「ざんまい」の文字部分が要部として、独立して自他商品の識別標識として機能するところ、本件商標は、その引用商標の要部と同じ「ざんまい」の文字をもって構成されている。
エ 小括
以上のとおり、本件商標の構成文字と引用商標の要部の文字は、ともに「ざんまい」の文字であるから、両者の外観、称呼及び観念を総合的に考察すると、本件商標と引用商標は、相紛れるおそれがある類似の商標であり、本件商標は請求人の業務に係る商品と混同させるおそれがあるといわざるを得ない。
(4)本件商標は、不正の目的によって出願・登録されたものであること
被請求人は、引用商標が周知、著名であったことに加え、過去の審査経緯から、その存在を十分に知っていたものといえる。そして、被請求人は、引用商標の要部の文字又は構成文字が「ざんまい」の文字に商品の普通名称である「すし」の平仮名を冠した「すしざんまい」であるにもかかわらず、請求人とは異なる会社名(商号)をほとんど表示することなく、本件商標に商品の普通名称である「寿司」の漢字を冠して、「寿司ざんまい」の文字を独立して表示している。加えて、被請求人の登録第5607230号商標や登録第5591490号商標と引用商標との差異である「魚」の図形や「宅配専門」の文字も表示しなかったり、または、「魚」の図形を分離したうえで、「寿司ざんまい」の文字を独立して表示しているのである。そうすると、請求人も、店舗名として「すしざんまい」を使用しており、両者は、「寿司」と「すし」という漢字と平仮名の違いだけであるから、混同を生じるおそれがあること明らかである。しかも、被請求人は、その店舗名の表示の下で、ウェブサイト上、自社のTV広告として、請求人に係る動画を自社の広告と一緒に掲載したり、マグロ解体ショーや社員のジャンパーに至るまで、請求人の態様と同様の態様で事業展開をしており、これらの点を勘案すると、本件商標は請求人に係る商品と混同を生じさせるおそれがあることは明らかである。
そうすると、本件商標は、不正の目的によるものであったとしか考えられない。
(5)商標法第4条第1項第11号該当性について
本件商標と引用商標とは、上記(3)のとおり、類似の商標である。
本件商標の指定商品は、第30類「すし」であるところ、当該指定商品は、引用商標の指定商品に包含されているから、本件商標と引用商標は、その指定商品においても、同一又は類似する。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(6)商標法第4第1項第10号又は同第15号該当性について
引用商標は、請求人が展開する「すし」に関する店舗の名称であって、遅くとも、本件商標の登録出願前から、登録査定時、さらには、本件審判請求時に至るまで、請求人の業務に係る「すし」を表示するものとして広く認識されている。
そして、本件商標と引用商標とは、上記(3)のとおり、類似の商標である。
しかも、本件商標の指定商品は、第30類「すし」であるところ、引用商標も「すし」に係る商標であるから、本件商標の指定商品と引用商標の使用に係る商品は、同一又は類似する。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。
また、仮に、本件商標が商標法第4条第1項第10号及び同第11号に該当しないとしても、引用商標の我が国における周知・著名性や、本件商標と引用商標の近似性(類似性)を勘案するならば、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(7)商標法第4条第1項第19号又は同第7号該当性について
本件商標は、上記第1のとおり、平成24年(2012年)9月13日に登録出願された。
一方、引用商標は、請求人が展開するすしに関する店舗の名称であって、遅くとも、本件商標の登録出願前から、登録査定時、さらには、本件審判請求時に至るまで、請求人の業務に係る「すし」を表示するものとして広く認識されている。
そして、本件商標と引用商標とは、上記(3)のとおり、類似の商標である。
しかも、本件商標は、上記(4)のとおり、不正の目的により商標登録したものである。
したがって、本件商標は、我が国において周知・著名な引用商標と類似するものであって、不正の目的をもって商標登録したこと明らかであるから、商標法第4条第1項第19号に該当する。
また、商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがある等、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合は、商標法第4条第1項第7号に含まれる(商標審査基準参照)とされているところ、上記(4)のとおり、本件商標が不正の目的により商標登録したものであることを踏まえるならば、本件商標も、出願の経緯に社会的相当性を欠くといえるから、商標法第4条第1項第7号にも該当する。
3 請求人の店舗「すしざんまい」の売上高、シェア率等について
(1)「すしざんまい」の店舗と所在地
甲第8号証の9及び甲第8号証の10をみると、「すし店は、回転ずし/宅配ずし/テイクアウトずしを除いたすし業態を対象とする」との記載があり、さらに、甲第8号証の10には「回転ずしやカットステーキ、牛たん等肉料理を提供する『肉ざんまい』(本稿対象外)」の記載があることから、甲第8号証の9及び甲第8号証の10の内容は、回転ずし、宅配ずし、テイクアウトずしや「肉ざんまい」を除外した「すし店」の業績を対象にしていることが分かる。その上で、甲第8号証の9には、「『すしざんまい』を展開する喜代村は、2011年に12店オープンし、総店舗数は46と積極的な出店を続けたこと」の記載があることから、甲第8号証の9及び甲第8号証の10は、46店舗を前提としたものと考えられる。
そして、回転ずしの店舗の追加や、2012年以降にオープンした店舗の追加もあって、「すしざんまい」(「廻るすしざんまい」、「すしざんまい匠」及び「すしざんまい得得」を含む。)の店舗は2012年末で48店舗、2013年末で51店舗にのぼり、店舗数をみると、甲第8号証の9及び甲8号証の10が前提としていた店舗数よりも、多数の「すしざんまい」のすし店が展開、運営されていることが分かる。
(2)「すしざんまい」の店舗の売上高と周知・著名性
「すしざんまい」の店舗の売上高については、2010年が約99億円、2011年が約107億円、2012年が約142億円であり(甲16)、甲第8号証の9及び甲第8号証の10に掲載されている他社の売上高と比較しても、2位以下を大きく引き離している。
加えて、「すしざんまい」は、テレビ放送や、新聞、雑誌、ウェブサイトの報道などにおいて、請求人のすし店の名称として全国的に取り上げられていることからしても、「すしざんまい」は、本件商標の登録出願前から登録査定時に至るまで、請求人のすし店の名称として全国的に周知・著名となっていた(甲4?甲8)。
4 令和元年10月28日付け上申書における主張
(1)「本件商標とこれに関連する商標の審査・審決の経緯」に関する被請求人の主張について
ア 本件審判は、無効審判であり、無効審判を定める商標法第46条の趣旨は、「本条の立法趣旨は、過誤による商標登録を存続させておくことは本来権利として存在することができないものに排他独占的な権利の行使を認める結果となるので妥当ではないからという点にある。」(工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第20版〕)。すなわち、本件審判は、過去の商標の審査・審決による過誤登録を是正するための審判であり、その過去の審査・審決による結論を前提にした主張は、合理的根拠にならない。
イ 本件審判請求において、請求人は、本件商標が商標法第4条第1項第11号、同第10号、同第15号、同第19号、同第7号等に該当する旨を主張しているが、本件商標がこれら無効理由に該当するか否かの判断の基準時は、同第11号及び同第7号が本件商標の登録査定時、同第10号、同第15号及び同第19号が本件商標の登録出願時(平成24年9月13日)及び登録査定時(平成24年12月26日)である。このため、各無効理由の適用における本件商標と引用商標の類否や、出所の混同のおそれの有無の判断も、本件商標の登録出願時又は登録査定時を基準に行われる。
そして、本件商標の登録出願時又は登録査定時において、引用商標は、請求人の業務に係る商品及び役務を表示する商標として、我が国において周知・著名となっていたのであるから、その周知・著名性を勘案した上で、本件商標と引用商標の類否や、出所の混同のおそれの有無も判断されなければならない。
加えて、本件商標の登録出願時又は登録査定時には、既に、「すしざんまい」の文字のみで構成される引用商標2は、自他商品及び役務の出所識別標識として機能し得ると認められ、商標登録されたのであり、しかも、その登録すべきとした審決の時期は、本件商標の登録出願の少し前の平成24年(2012年)7月10日であって、本件商標の判断の基準時である登録出願時に極めて近い時期といえる。
そうすると、「すしざんまい」の文字は、自他商品及び役務の出所識別標識として十分に機能し得る。
ウ したがって、本件商標が引用商標とは類似しないとか、請求人の業務に係る役務と混同を生じさせるおそれがないとした主張は、合理的な根拠とはならないものであり、失当といわざるを得ない。
(2)「不正の目的」に関する被請求人の主張について
ア 本件審判請求において、不正の目的に関連して本件商標が無効理由に該当すると主張しているのは、商標法第4条第1項第19号及び同第7号であるところ、本件商標がこれら無効理由に該当するか否かの判断の基準時は、同第19号が本件商標の登録出願時(平成24年9月13日)及び登録査定時(平成24年12月26日)、同第7号が本件商標の登録査定時である。すなわち、本件審判において判断すべきなのは、「寿司ざんまい」の商標を不正の目的で使用開始したか否かでなく、本件商標の登録出願及び商標登録が不正の目的によるものであったか否かであるから、被請求人の主張は、不正の目的がなかった根拠にはならない。
イ 被請求人が不正の目的でない根拠として挙げている点は、「寿しざんまい」の文字の自他商品及び役務の識別性や、請求人の登録商標を始めとした他人の登録商標の存在、それらの登録商標と本件商標や「寿しざんまい」の文字の商標の近似性を十分に認識していながら、本件商標を登録出願し、しかも、請求人の登録商標を始めとした他人の登録商標との近似する部分である「寿しざんまい」の文字の商標の使用をしていたことをうかがわせるものであり、被請求人に不正の目的がなかったことの根拠にはならない。
(3)「各無効理由」に関する被請求人の主張について
被請求人は、商標法第4条第1項第11号、同第10号及び同第15号に対しては、商標が非類似であるから該当しない旨を、同第19号及び同第7号については、商標が非類似であることに加え、「寿しざんまい」の使用開始時期や商願平11-52025号の出願を挙げて不正の目的でない旨や、社会的相当性を欠くものでない旨を主張している。
しかし、被請求人のそれら主張は、上記(1)及び(2)のとおり、失当といわざるを得ないものであるから、本件商標は、これらの無効理由に該当する。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第21号証を提出した。
1 本件商標とこれに関連する商標の審査・審決の経緯
本件審判の理由では、本件商標が、商標法第4条第1項第7号、同第10号、同第11号、同第15号及び同第19号に該当する旨述べられているが、かかる理由は、本件商標が引用商標に類似することを根拠としていることに尽きる。
(1)本件商標の構成
本件商標は、別掲1のとおり、平仮名「ざんまい」を横書きしたものである。
(2)関連商標群
本件商標に関連する一連の商標群(以下「関連商標群」という。:乙2)の審査・審理結果の解析をすることにより、本件商標と引用商標との類否判断が自ずと理解できる。
なお、関連商標群は、全て、その指定商品又は指定役務に第30類「すし」、あるいは第35類「すしの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を含むものである。
ア 登録第4361034号商標(以下「第1商標」という。)
第1商標は、「すし三昧」の表示があり、構成の主要部は図案化した「魚坐」の漢字と「ととざ」の平仮名部分及び「すし三昧」の文字部分との2箇所である。
指定商品「すし」に関して「すし三昧」の表記は、「すしを一心不乱に食する」ことを指称する観念を有し、この限りでは、特別顕著性を認め難いようにも思われる。
イ 商願平11-52025号商標(以下「第2商標」という。)
第2商標は、「寿司」及び「ざんまい」の各文字を横書きに表し、それらの間に鉢巻きの鯛のイラストを配したものである。
ウ 登録第5003675号商標(以下「第3商標」という。)
本件審判における引用商標1である第3商標は、構成中の「すしざんまい」を、平仮名で「すし」を縦書き、「ざんまい」を横書きしたものである。
そして、その上部には横書きで「つきじ喜代村」の文字が、下部には横書きの英文字「SUSHIZANMAI」が配されている。
エ 商願2007-074570(以下「第4商標」という。)
第4商標は、漢字二行縦書きで「寿司三昧」と表示したものである。
オ 登録第5511447号商標(以下「第5商標」という。)
本件審判における引用商標2である第5商標は、「すしざんまい」の平仮名を標準文字で表したものである。
カ 登録第5607230商標(以下「第6商標」という。)
第6商標は、漢字縦書きの「寿司」と、大きめの横書きの平仮名「ざんまい」との組み合わせに加えて、鉢巻きの鯛のイラストと、横書きの漢字表記「宅配専門」とからなるものである。
キ 登録第5556223号商標(以下「第7商標」という。)
第7商標は本件商標であり、平仮名「ざんまい」を横書きしたものである。
ク 登録第5586456号商標(以下「第8商標」という。)(審決注:登録抹消済み)
第8商標は、大きめの横書きの平仮名「ざんまい」と、鉢巻きの鯛のイラストと、横書きの漢字表記「宅配専門」とからなるものである。
ケ 登録第5758937号商標(以下「第9商標」という。)
第9商標は、「SUSHI ZANMAI」の欧文字を標準文字で表したものである。
コ 商願2017-92336号(以下「第10商標」という。)
第10商標は、構成中の「すしざんまい」を平仮名で「すし」を縦書き、「ざんまい」を横書きしたものであり、その上部に小文字で「つきじ喜代村」と、右下に落款らしき図を表記したものである。
サ 小括
第3商標及び第5商標の平仮名の「すしざんまい」は、平仮名故に「すし三味」「寿司ざんまい」等のように漢字を含んだ「スシザンマイ」とは非類似であり、その理由は、「該文字(すしざんまい)は、その指定商品(すし)についてキャッチフレーズの一種を表示したものと認識されるとはいい難く、また、当該指定商品を取り扱う業界においてキャッチフレーズとして取引上普通に使用されている事実及び需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標というべき事情はみいだすことができない」ということに尽きる(第5商標に関する審決理由:乙11)。
この論拠を基にすると、漢字を含んだ第1商標、第2商標、第4商標及び第6商標などは、平仮名の「すしざんまい」に類似することにはならず、専ら漢字表記の観念を考えると全体的に記述的商標と判断し、特別顕著性を認めない方向にある。
この論理からすれば、第6商標は、その特別顕著性を鉢巻き鯛のイラストに求めざるを得ない。そうでなければ、第6商標は第3商標及び第5商標の平仮名の「すしざんまい」に類似するとして登録されなかったはずである。
そして、本件商標(第7商標)「ざんまい」のみの登録商標も、第3商標(引用商標1)及び第5商標(引用商標2)の平仮名表記の「すしざんまい」とは基本的に称呼、観念、外観共に非類似であり、別異の商標として登録適格性を有することはいうまでもない。
(3)関連商標群の類否判断
第1商標ないし第10商標の一連の関連商標群に関する審査、審判等における判断の状況からすれば、当該審査、審判における類否判断の理論は、一貫性をやや欠くところもあり、明確に「スシザンマイ」の関連商標群についての論理解析は行われていない。
そこで、これらの商標群の相互の類否判断の結論(審査・審判の結論)を以下に順次説明することにより、「スシザンマイ」に関連する商標の類否判断に一定の論理的基準を結論したい。
ア 第1対比
第2商標と第1商標とは「類似」。
イ 第2対比
第3商標と第1商標とは「非類似」。
ウ 第3対比
第4商標と第3商標とは「類似」。
エ 第4対比
第5商標と第1商標とは「非類似」。
オ 第5対比
第6商標と第5商標とは「非類似」。
カ 第6対比
第7商標と、第1商標、第3商標及び第5商標とは「非類似」。
キ 第7対比
第8商標と、第1商標、第3商標及び第5商標とは「非類似」。
ク 第8対比
第9商標と、第1商標、第6商標、第7商標及び第8商標とは「非類似」。
ケ 第9対比
第10商標と第6商標とは「類似」の可能性(拒絶理由が発せられた段階である(乙21))。
(4)不正の目的について
請求人は、本件商標の登録に関し、公序良俗違反を主張し、その理由として出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあると主張するが、この社会的相当性が何を意味しているかは不明である。
仮に、本件商標が請求人の使用商標を模倣して出願したものとの意であるならば全くの事実誤認である。
そもそも、本件商標は、被請求人が請求人よりも先に「寿司ざんまい」を用いてすしの宅配業務を開始し、使用していたものである。
「寿司ざんまい」の使用開始は、請求人が開始した平成13年(2001年)より2年前の平成11年(1999年)である(乙12、乙13)。
また、それを証する事実として、被請求人の旧商号による登録出願(第2商標)を行っていた(乙14)。
しかし、当該出願は、第1商標を引用として拒絶され、権利化には至らなかった。
かかる経緯によると、「寿司ざんまい」については、請求人より2年前に使用の実績を有していたのであり、請求人が主張する「出願の経緯に社会的相当性を欠く」理由など全く存在しない。この間の経緯は、以前、被請求人の代理人弁護士が当時の請求人宛に不正競争防止法上の不正使用として注意を喚起し、請求人側の代理人弁護士と折衝した事実の経緯が存在していることからも明らかである(乙15)。
そもそも、本件商標と、請求人が周知と主張する引用商標とは、外観・称呼・観念のいずれにおいても異なり、非類似の商標である。
請求人は、本件商標が不正の目的で出願されたものと主張するが、被請求人の方が先に使用してきた経緯、旧商号で第2商標を出願していた事実、及び当該出願が第1商標(登録第4361034号)により「スシザンマイ」の称呼類似で拒絶された理由を踏まえて、「寿司」と「ざんまい」とを連記して新たに「寿司ざんまい」とし、より記述的商標として把握可能にした事実、並びに専ら商標の要部を鉢巻き鯛のイラストに焦点を絞った第6商標(登録第5607230号)を権利化した事実等を勘案すると、本件商標の登録には不正の目的を考慮する余地など皆無である。
(5)各無効理由について
ア 商標法第4条第1項第11号について
本件商標「ざんまい」は、「三昧」の意を平仮名表記し、それから生じる称呼は「ザンマイ」である。
本件商標は、「三昧」の意に通じるものであり、「三昧」の意を有するとしても、「何に関して」三昧であるかの「三昧」の対象を特定しているものではない。
一方、引用商標は、特別顕著性を有する平仮名「すしざんまい」を含むため、「ツキジキヨムラ」あるいは「スシザンマイ」の称呼が生じる。引用商標中の「すしざんまい」は、「寿司三昧」を平仮名表記したものと考えられるところ、「すしざんまい」を一体的に捉えるからこそ「三昧(さんまい)」が「ザンマイ」と濁るのであり、すなわち、引用商標から「ざんまい」が独立して識別標識として機能するとは考え難い。
以上をもとに、本件商標と引用商標の類否について判断すると、本件商標の称呼は「ザンマイ」であり、「ツキジキヨムラ」あるいは「スシザンマイ」の称呼が生じる引用商標とは称呼非類似である。
また、本件商標からは「一心不乱に事をするさま」という観念が生じるのに対し、引用商標からは「一心不乱にすしを食するさま」という観念が生じ、両者は観念においても非類似であり、両者の外観が異なることは明らかである。
したがって、本件商標と引用商標とは、同一又は類似の商品に使用をしたとしても、需要者が出所の混同を生じることのない非類似の商標である。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
イ 商標法第4条第1項第10号及び同第15号について
需要者が混同を生じるには、商標が類似していることが前提であるが、本件商標と引用商標とは、称呼・観念・外観のいずれにおいても相紛らわしいものではなく、非類似の商標である。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第15号に該当しない。
ウ 商標法第4条第1項第19号について
本号の要件としては、まず第1に、請求人が周知商標とする引用商標と本件商標とが同一又は類似であること(要件1)、第2に、本件商標が不正の目的で使用されるものであること(要件2)が必要である。
しかし、要件1の類否判断、すなわち、本件商標と引用商標との類否判断では、前述した第1商標から第10商標の関連商標群の対比、及び対比の結論における理由を勘案すると全く非類似である。
このことは、関連商標群第1商標から第10商標に係る類否判断の論理分析における結論で明確である。
次に、要件2の「不正の目的」においては、そもそも「寿司ざんまい」の使用開始時期は被請求人の方が請求人よりも早い。
しかも、被請求人の宅配寿司事業の開始も、請求人が周知と主張する引用商標が用いられる事業の開始よりも早いという事実がある。
さらに、第2商標は、請求人が周知と主張する引用商標よりも先願である。
以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
エ 商標法第4条第1項第7号について
本件商標には関連商標群と対比して、出願の経緯に全く社会的相当性を欠如する理由はない。すなわち、「寿司ざんまい」に関する第2商標が、請求人が周知と主張する引用商標よりも「先願」であり、かつ事業自体も「先行」していたことを考えると、社会的相当性を欠く理由など見いだせない。かえって、請求人の引用商標の方が後願であり、「すしざんまい」の事業も遅れてスタートしたことを勘案すれば、よっぽど社会的相当性を欠くものであり、後遅れ出願及び事業でありながら、周知であることを理由にして、先行使用・先行事業開始に係る本件商標に対して無効審判請求を行うことこそ、商標法の予定する秩序に反するといわねばならない。
なお、請求人は被請求人が、宅配事業において看板やチラシ、ホームページ等において、本件商標に「寿司」の漢字を冠した「寿司ざんまい」を使用していると指摘して、請求人が周知を主張する引用商標と故意に混同を生じさせていると主張する。
しかし、既に「寿司ざんまい」の識別性に関する問題は論理的に自他商品識別力なしとして結論されていることであり、「寿司ざんまい」のみを使用することに違法性はなく、請求人の主張は「すしざんまい」の一連の商標の類否判断に関する論理的分析を全く無視したものである。
以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
(6)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第10号、同第11号、同第15号及び同第19号のいずれにも該当しない。
2 令和2年7月6日付け上申書における主張
(1)請求人は、「すしざんまい」が請求人のすし店の名称として全国的に周知・著名となっていると主張する。しかし、請求人のかかる主張は、本件商標の指定商品が「すし」であることを看過したものであり、基本的に主張が間違っている。本件無効審判の対象は「すし」であるから商品「すし」の販売店や店舗数において周知・著名を立証しない限り請求人の主張する無効理由は成り立たない。
(2)「すしざんまい」商標の審査判断(乙2)からすれば、平仮名表記「すしざんまい」は、自他商品識別力が認められるものの漢字表記を含む「寿司ざんまい」「寿司三昧」「すし三昧」等の商標は、指定商品第30類「すし」に関しては、自他商品識別力を有しない商標と解される。
請求人は、審決を援用して「『寿司ざんまい』『すし三昧』などの文字が指定商品との関係において自他商品識別力を有しないとはいえないと結論づけている。」などと述べているが、かかる主張は、「寿し三昧」「寿しざんまい」の登録商標に関する審判事件の審決の変遷を全く理解していない証拠である。
(3)本件商標「ざんまい」(指定商品第30類「すし」)は、「すしざんまい」とは非類似であり、請求人の主張は的外れの主張といわざるを得ない。
(4)請求人は、被請求人が不正使用をしていたと説明しているが、請求人の「すしざんまい」出願時には10店舗以上の宅配すし店の業務を開始していた。請求人が主張する不正使用どころか、請求人が商標「すしざんまい」を商標登録出願した当時には、被請求人には指定商品(第30類「すし」)について先使用権が発生していたものであり、この一事だけでも被請求人の本件商標の使用に関して不正使用の事実があるはずがない。
(5)請求人による「すしざんまい」の周知性の主張は、「すし店」という飲食業における周知性を前面に出して周知性を主張しているが、「すし」そのものの製造、販売に係る業種についての周知性の説明や主張は一切なく、請求人は、本件商標の指定商品が第30類「すし」であることを完全に忘却しているとしか思われない。単に、店舗で食させる「すしざんまい」の名称の周知性の主張事実を「すし(すし宅配業)」にそのまま横滑りさせて「すし」そのものの販売や宅配があたかも周知であるかのごとく主張して本件無効審判請求の理由としている。このように、本件無効審判では本件商標の指定商品「すし」に関して無効とする正当な理由がない。

第5 当審の判断
1 引用商標の周知著名性について
(1)請求人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、次の事実を認めることができる。
ア 請求人のウェブサイトにおいて、「会社沿革」の見出しの下、「昭和60年9月 喜代村創業」、「平成13年4月 寿司事業部展開開始」等の記載と共に、「平成13年 4月/18 すしざんまい本店オープン」、「12月 すしざんまい別館オープン」と記載され、平成14年以降も「平成○年○月 すしざんまい○○店オープン」のようにオープンした店舗名が記載されている(甲13の1)。
イ 「2013年までにオープンした『すしざんまい』の店舗の一覧」において、「店舗」の欄及び「オープン時期」の欄に、「すしざんまい本店」及び「2001年4月」、「すしざんまい天神店」及び「2010年4月」、「すしざんまい小樽店」及び「2010年6月」、「すしざんまい横浜中華街東門店」及び「2011年3月」、「すしざんまい宇都宮駅店」及び「2012年3月」並びに「すしざんまい道頓堀店」及び「2012年9月」等のように記載されており、本件商標の登録出願時(平成24年9月13日)以前の平成24年(2012年)8月までにオープンした「すしざんまい」の店舗について、合計37件記載され、さらに、本件商標の登録査定時(平成24年12月26日)までにオープンした店舗は合計38件記載されている(甲13の2)。
ウ 請求人に係るすし店「すしざんまい」(以下「請求人すし店」という。)は、24時間営業のすし店、マグロの解体ショーを行うすし店、そして、平成24年(2012年)から6年連続してマグロの初競りにおいて高級マグロを競り落としたすし店(甲7の58?甲7の101、甲7の124?甲7の176、甲7の206?甲7の246、甲7の295?甲7の339、甲7の413?甲7の467、甲7の502?甲7の551)として、話題を集めており、特に、平成24年(2012年)、平成25年(2013年)と続けてマグロの初競りにおいて史上最高値で競り落とし、平成25年(2013年)の初競りにおける1億5540万円の史上最高値は大きな話題となった。
エ 請求人すし店は、ニュース番組、情報系番組(以下「テレビ番組」という。)において広く取り上げられるようになり、当該テレビ番組で、請求人すし店を紹介するときに、請求人すし店の入口上部に、引用商標1が表示された請求人すし店の看板(甲4の47等)の画像が表示されている。
また、テレビ番組において、請求人すし店が紹介されるときに、請求人すし店の看板の画像のほか、「すしざんまい○○店」(甲4の62)、「すしざんまい ○○社長」(甲4の49)のように、「すしざんまい」の文字が表示されている。
オ 請求人すし店は、スポーツ新聞、雑誌等のメディアにおいて、例えば、2001年(平成13年)6月4日付けの日刊スポーツ(甲6の1)に「築地場外市場だからこそ!!ネタ新鮮『すしざんまい』」、「東京の台所、築地場外市場に24時間営業の寿司(すし)店『すしざんまい』が4月にオープンし、評判を呼んでいる」等のように記載されており、本件商標の登録出願前から「すしざんまい」の名称と共に多数紹介されている(甲6の1?甲6の159)。
カ 請求人すし店は、新聞記事情報において、例えば、2001年(平成13年)5月25日付け「朝日新聞朝刊」(甲7の1)に「すし店 24時間営業(東京ストマック 築地魚河岸:9)」の見出しの下、「4月20日に開店した24時間営業の『すしざんまい』だ。・・・母体の『喜代村』(本社・築地3丁目)はマグロの卸売りのほか、弁当、すし、うどん・そば店などを幅広く展開している。」との記事、2012年(平成24年)1月5日付け「日本経済新聞夕刊」(甲7の58)に「5694万円也、マグロ最高値、築地で初セリ。」の見出しの下、「新年恒例の初セリが5日、全国の主な卸売市場で開かれた。東京・築地市場では青森県の大間産クロマグロが過去最高の1匹5649万円で競り落とされた。これまでの最高値は昨年の3249万円だった。・・・すし専門店『すしざんまい』を展開する喜代村(東京・中央)が単独で競り落とした。」との記事、2013年(平成25年)1月5日付け「日本経済新聞夕刊」(甲7の124)に「マグロ1億5540万円、初セリ最高値。」の見出しの下、「新春恒例の初セリが5日、東京・築地市場で開かれ、青森県大間産のクロマグロが1匹1億5540万円の史上最高値で競り落とされた。・・・落札者は、すしチェーン『すしざんまい』を展開する喜代村(東京・中央)だった。」との記事のように、本件商標の登録出願前から登録査定時、及びそれ以降においても、「すしざんまい」というすし店の名称と共に多数紹介されている(甲7の1?甲7の177)。
キ 2013年(平成25年)5月22日付け「日経MJ(流通新聞)」において、「飲食業12年度ランキング/第39回」の見出しの下、「東京・築地市場の今年の初セリで、青森県大間産のクロマグロを過去最高値の1匹1億5千万円余りで落札した『すしざんまい』の喜代村(東京・中央)。店舗売上高伸び率ランキングで昨年の21位から6位に躍進し、経常利益率でも5位に入った。」の記事がある(甲8の8)。
ク 「出典:富士経済『外食産業マーケティング便覧 2012 No.2』2012年7月25日刊」の記載のある記事によれば、「すし店/2012年 9,700億円(国内市場)」の見出しの下、「2011年は、『すしざんまい』(喜代村)が出店を拡大させるなど」、「2012年は、『すしざんまい』既存店舗売上が大幅に拡大」及び「『すしざんまい』を展開する喜代村は、2011年に12店オープンし、総店舗数は46と積極的な出店を続けたこと、24時間営業が奏功したこと等で、実績は大幅に拡大した。2012年は、既存店の売上が年初から好調を続け、新規オープンは3?4店舗と低調になると見ているが、前年比176%での着地を計画している。」とされている(甲8の9)。
ケ 「出典:富士経済『外食産業マーケティング便覧 2015 No.2』2015年8月25日刊」の記載のある記事によれば、「すし店/2015年 9,610億円(国内市場)」の見出しの下、「喜代村は、『すしざんまい』『まぐろざんまい』、低価格業態の『すしざんまい得得』を展開している他、回転ずしやカットステーキ、牛たん等肉料理を提供する『肉ざんまい』(本稿対象外)等、幅広い業態を持っている。立ちずしは、リーズナブルな価格で上質なすしを提供する業態コンセプトが支持されている。2014年は消費増税が実施されたが、影響は小さく、堅調な需要に支えられたことから、売上高は伸長した。」とされている(甲8の10)。
(2)判断
ア 請求人について
請求人は、昭和60年(1985年)に創業後、平成13年(2001年)に寿司事業を開始し、「すしざんまい」の名称のすし店(本店)をオープンした。
イ 引用商標について
請求人は、引用商標1をすし店の看板に使用している。
引用商標2(「すしざんまい」の文字)は、テレビ番組や新聞、雑誌で請求人すし店を紹介するときに使用されている。
ウ 「すしざんまい」の店舗数
本件商標の登録出願前から登録査定時に至るまでにオープンした請求人すし店「すしざんまい」は、北海道、栃木県、東京都、神奈川県、大阪府、福岡県において、38店舗と認められる。
エ 「すしざんまい」の国内のすし店における売上高及びシェア
請求人の平成24年(2012年)の売上高見込みは、257億円、シェアは2.5%であって、全国のすし店において、いずれも第1位であり、第2位の企業の売上高見込みは、46億円、シェアは0.5%である(甲8の9)。また、請求人の平成27年(2015年)の売上高見込みは、248億円、シェアは2.6%であって、全国のすし店において、いずれも第1位であり、第2位の企業の売上高見込みは、43億5000万円、シェアは0.5%である(甲8の10)
してみれば、平成24年における請求人の売上高見込みは、第2位の企業の売上高見込みに比して、5倍以上の金額となっており、上記の請求人の売上高見込みに「廻るすしざんまい」、「すしざんまい 匠」及び「すしざんまい得得」が含まれているとしても、これら店舗の数は7件と、請求人すし店全体の数と比べて少ないものである。
以上のことを勘案すれば、国内のすし店における売上高及びシェアにおいて、請求人すし店の占める割合は、相当程度あったものと推認できる。
オ テレビ番組、新聞、雑誌等のメディアによる紹介
請求人すし店は、テレビ番組、雑誌、新聞等のメディアにおいて、例えば「東京の築地場外市場にあって、すしネタが新鮮である」、「24時間営業のすし店であり評判を呼んでいる」、「新年恒例の初セリで、クロマグロを史上最高値で競り落とした請求人が展開している店舗である」等のように紹介されたり、特集記事が組まれたりして、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、請求人すし店の記事が多数掲載されるようになると共に、当該記事には、請求人が引用商標1を請求人すし店の看板として使用している写真等が掲載されている。
また、テレビ番組、雑誌、新聞等のメディアが、請求人すし店を紹介するときには、「すしざんまい」の文字が使用されている。
カ 上記アないしオからすれば、請求人は、平成13年(2001年)に「すしざんまい」という名称のすし店をオープンし、本件商標の登録出願前から登録査定時に至るまでに38店舗を、東京都をはじめ、北海道、栃木県、神奈川県、大阪府、福岡県において展開していたということができる。
そして、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、請求人ないし請求人すし店は、「24時間営業のすし店」であることや「新年恒例の初セリでクロマグロを例年最高値で競り落とした請求人が展開している店舗」であること等の話題でテレビ番組、雑誌、新聞等のメディアで広く取り上げられるようになり、その売上高も、他社を大きく引き離している。
また、請求人すし店が当該メディアで取り上げられる際には、引用商標1が付された請求人すし店の看板も多数掲載されており、加えて、請求人のウェブサイトからも、請求人すし店における引用商標1が付された請求人すし店の看板等の使用状況をうかがうことができる。
そして、それらのテレビ番組、雑誌、新聞等のメディアでの掲載状況からすれば、請求人の業務に係る「寿司を主とする飲食物の提供」の需要者である一般消費者において、請求人すし店が、その名称である「すしざんまい」(引用商標2)及び看板に使用されている引用商標1と共に、広く知られていたといい得るものである。
そうすると、請求人すし店の看板に使用されている引用商標1及び請求人すし店の名称を表す引用商標2は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る「寿司を主とする飲食物の提供」を表す商標として、需要者間に広く認識されていたというのが相当である。
しかしながら、請求人が提出した証拠から、請求人の取扱いに係る商品「すし」の売上高や市場シェア等を具体的に示す販売実績を確認することはできないから、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の取扱いに係る商品「すし」を表す商標として、需要者間に広く認識されていたということはできない。
なお、当合議体は、請求人に対する審尋において、商品「すし」に関する販売実績等を客観的に示す証拠を提出するように求めたが、請求人からは何ら提出されなかった。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標の指定商品と引用商標の指定商品
本件商標の指定商品「すし」と引用商標1の指定商品中「すし」及び引用商標2の「すし,すしを主とするべんとう」は、同一又は類似の商品である。
以下、本件商標と引用商標の指定商品が同一又は類似の商品の範囲において、両商標の類否について検討する。
(2)本件商標について
本件商標は、別掲1のとおり、「ざんまい」の文字を横書きしてなることから、これより「ザンマイ」の称呼を生じること明らかであり、かつ、「一心不乱に事をするさま」(広辞苑)の観念が生じるものである。
(3)引用商標1について
引用商標1は、別掲2のとおり、上段に記載された筆文字風の「つきじ喜代村」の文字、中段に大きく筆文字風に記載された「すしざんまい」の文字、下段に小さくゴシック体で記載された「SUSHIZANMAI」の欧文字よりなるものであり、「すしざんまい」の文字部分においては、「すし」の文字をやや斜めに縦書きし、その右に、「ざんまい」の文字を横書きしており、「す」の文字と「ざ」の文字は一部重なっているものである。
そして、引用商標1の構成において、「すしざんまい」の文字部分は、看者の注意を惹きやすい構成中の中央に、他の文字よりも大きく顕著に表されていることからすると、引用商標1の構成中「すしざんまい」の文字部分は、需要者に対し、商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものということができ、当該文字部分だけを要部として抽出し、本件商標と比較して商標の類否を判断することも許されるというべきである。
そうすると、引用商標1からは、その構成全体に相応して生じる「ツキジキヨムラスシザンマイ」の称呼のほかに、「すしざんまい」の文字に相応した「スシザンマイ」の称呼も生じるものである。
そして、上記1のとおり、当該文字部分は請求人の業務に係る「すし」を表す商標として、需要者間に広く認識されていたということはできないから、その構成は、「すし」と「一心不乱に事をするさま」の意味を有する「ざんまい」を結合させたものと理解されて、当該文字部分に相応して「一心不乱にすしを食する」ほどの観念を生じるものである。
(4)引用商標2について
引用商標2は、上記第2の2のとおり、「すしざんまい」の文字よりなるものであるから、当該文字に相応して、「スシザンマイ」の称呼が生じるものであり、観念については、上記(3)と同様に、「一心不乱にすしを食する」ほどの観念を生じるものである。
(5)本件商標と引用商標との類否について
ア 外観について
本件商標と引用商標は、外観については、それぞれ上記(1)並びに(2)及び(3)のとおりであるから、「すし」の文字等の有無や書体の差異から互いに区別し得るものである。
イ 称呼について
本件商標からは、「ザンマイ」の称呼を生じ、引用商標からは、「スシザンマイ」の称呼が生じるものであり、両者は、語頭において「スシ」の音の有無という顕著な差異を有するから、称呼において明瞭に聴別し得るものである。
ウ 観念について
本件商標からは、「一心不乱に事をするさま」の観念を生じるのに対して、引用商標からは、「一心不乱にすしを食する」ほどの観念を生じるものであるから、両者は、区別できるものである。
エ まとめ
本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても明らかに異なるものといえるから、これらを同一又は類似の商品について使用する場合であっても、互いに誤認、混同するおそれのない非類似の商標というべきである。
(6)小括
したがって、本件商標の指定商品は、引用商標の指定商品と同一又は類似の商品であるとしても、本件商標は、引用商標とは非類似の商標であるから、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第10号該当性について
引用商標は、上記1(2)カのとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る「すしを主とする飲食物の提供」を表示するものとして、取引者、需要者の間に広く認識されていたものの、請求人の業務に係る「すし」を表示するものとして、取引者、需要者の間に広く認識されていたということはできない。
また、本件商標と引用商標とは、上記2(5)のとおり、非類似の商標である。
したがって、引用商標は、他人(請求人)の業務に係る商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されておらず、かつ、本件商標は、引用商標とは非類似であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)本件商標と引用商標との類似性の程度について
本件商標と引用商標とは、上記2(5)のとおり、非類似の商標ではあるものの、いずれも、外観において平仮名「ざんまい」の文字を横書きした構成である点、及び称呼において「ザンマイ」を含む点を共通にするものであるから、ある程度の類似性を有するものといわざるを得ない。
(2)引用商標の周知著名性について
引用商標は、上記1のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る「すし」を表す商標として、需要者間に広く認識されていたということはできないものの、請求人の業務に係る「すしを主とする飲食物の提供」を表す商標として、需要者間に広く認識されていたというのが相当である。
そして、請求人すし店による主要都市への出店、テレビ番組、雑誌、新聞等のメディアで取り上げられる頻度、他社を大きく引き離す売上高等を併せ考慮すれば、当該すし店の看板や名称に使用されている引用商標の周知著名性の程度は高いものといわざるを得ない。
(3)引用商標の独創性について
引用商標1の要部である「すしざんまい」及び引用商標2からは、既成語の「すし」と「一心不乱に事をするさま」の意味を有する「ざんまい(三昧)」の文字を結合させたものと理解され、これより「一心不乱にすしを食するさま」ほどの観念を生じるものであるから、独創性が高いものとはいえない。
(4)本件商標の指定商品と引用商標の指定商品及び指定役務との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに需要者の共通性その他取引の実情について
本件商標の指定商品「すし」と、引用商標の指定商品「すし,すしを主とするべんとう」とは、テイクアウト専門のすし店やスーパー等といった販売部門、流通経路を共通にするものであるから、両者はその性質、用途又は目的において密接な関連性を有し、その需要者層も共通にする。
また、本件商標の指定商品「すし」は、引用商標の指定役務である「すしを主とする飲食物の提供」における料理の内容(すし)であるうえに、「すしを主とする飲食物の提供」を行う、いわゆる回転ずしや着席スタイルのすし店等でも、テイクアウト用として一般に取引、販売されるものであるから、「すし」と「すしを主とする飲食物の提供」とは、その性質、用途又は目的において密接な関連性を有するということができ、その需要者層も一部共通にするというべきである。
(5)出所の混同のおそれについて
上記(1)ないし(4)を踏まえれば、本件商標の指定商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断すると、「すしざんまい」の文字の独創性の程度は高くはないものの、引用商標は請求人の業務に係る「すしを主とする飲食物の提供」を表す商標として需要者間に広く認識されていて、その周知著名性の程度は高いものである。さらに、本件商標の指定商品「すし」は、引用商標の指定商品「すし,すしを主とするべんとう」と密接な関連性を有し、かつ、その需要者層を共通にするばかりか、引用商標の指定役務「すしを主とする飲食物の提供」との関係においても、密接な関連性を有するうえに、需要者層を一部共通にすることからすれば、本件商標は、その登録出願時及び登録査定時において、商標権者が本件商標「ざんまい」をその指定商品「すし」に使用した場合、これに接する需要者をして、「すしざんまい」(引用商標2)又は、構成中に「すしざんまい」を含む引用商標1を想起、連想させることが少なくないものと判断するのが相当である。
そうすると、本件商標は、その登録出願時及び登録査定時において、商標権者がこれをその指定商品「すし」に使用した場合、これに接する需要者が引用商標を想起、連想し、当該商品を請求人あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同を生ずるおそれがあるものといわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
5 商標法第4条第1項第19号該当性について
商標法第4条第1項第19号は、「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であつて、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもつて使用をするもの(前各号に掲げるものを除く。)」と規定されている。
請求人は、本件商標と異なる被請求人による商標登録出願において、拒絶の理由として引用商標2が引用されている(甲9)ことからすれば、被請求人は引用商標の存在を知っており、被請求人のウェブサイトにおける「寿司ざんまい」の文字の使用状況(甲10の1?甲10の11)、被請求人の店舗の外観の写真(甲10の12?甲10の19)、被請求人の社用車の外観の写真(甲10の20)、被請求人のウェブサイトにおける請求人の関する動画の掲載(甲10の26?甲10の30)等によれば、被請求人は、引用商標に近似する「寿司ざんまい」の文字を独立して店舗名として表示し、その店舗名の表示の下、ウェブサイト上、自社のTV広告として、請求人に係る動画を自社の広告と一緒に掲載したり、請求人と同様の態様で事業展開しており、それらを勘案すると、本件商標は、不正の目的をもって登録出願されたものである旨主張している。
しかしながら、請求人が提出したこれらの証拠のうち、甲第10号証は、いずれも、本件商標の登録出願時及び登録査定時よりも後のものであるから、これらの証拠をもって、本件商標が、不正の目的をもって登録出願されたものであるとはいい難く、本件商標権者が、引用商標2の存在を知っていたとしても、そのことのみをもって、本件商標の登録出願が不正の目的をもってなされたということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
6 商標法第4条第1項第7号該当性について
請求人の主張及び同人の提出に係る甲各号証を総合してみても、本件商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に該当すると認めるに足りる具体的事実を見いだすこともできない。
さらに、本件商標を、その指定商品について使用することが、社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するということもできず、他の法律によってその使用が禁止されているものでもなく、本件商標の構成自体が、非道徳的、卑わい、差別的、きょう激若しくは他人に不快な印象を与えるような構成態様でもない。
その他、本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標と認めるに足りる証拠の提出はない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
7 被請求人の主張について
被請求人は、需要者が混同を生じるには、商標が類似していることが前提であるが、本件商標と引用商標とは、称呼・観念・外観のいずれにおいても相紛らわしいものではなく、非類似の商標である旨主張する。
しかしながら、商標法4条1項15号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」には、当該商標をその指定商品又は指定役務に使用したときに、当該商品又は役務が他人の業務に係る商品又は役務であると誤信されるおそれがある商標のみならず、当該商品又は役務が上記他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品又は役務であると誤信されるおそれがある商標が含まれる。そして、上記の「混同を生ずるおそれ」の有無は、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品又は指定役務と他人の業務に係る商品又は役務との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品又は役務の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品又は指定役務の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきものである(最高裁平成10年(行ヒ)第85号同12年7月11日)と判示されているところ、本件商標は、上記4のとおり、本件商標と引用商標との類似性の程度、引用商標の周知著名性及び独創性の程度、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品及び指定役務との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品又は役務の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、本件商標の指定商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断した結果、本件商標は、請求人の業務に係る役務とその出所の混同を生ずおそれがあるといわなければならない。
そうすると、本件商標は、上記2のとおり、引用商標と非類似であるとしても、本件商標をその指定商品に使用するときには、商標法第4条1項第15号に該当すると判断するのが相当である。
なお、被請求人は、請求人の業務である「すしを主とする飲食物の提供」(引用商標の指定役務)に使用する引用商標の周知性について何ら反論していない。
したがって、被請求人の主張は採用できない。
8 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第10号、同第11号及び同第19号に該当しないとしても、同第15号に該当するものであり、その登録は、同条第1項の規定に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。

別掲
別掲
1 本件商標


2 引用商標1


審理終結日 2020-07-28 
結審通知日 2020-07-31 
審決日 2020-08-13 
出願番号 商願2012-74240(T2012-74240) 
審決分類 T 1 11・ 25- Z (W30)
T 1 11・ 261- Z (W30)
T 1 11・ 263- Z (W30)
T 1 11・ 22- Z (W30)
T 1 11・ 262- Z (W30)
T 1 11・ 222- Z (W30)
T 1 11・ 271- Z (W30)
最終処分 成立  
前審関与審査官 安達 輝幸石井 亮 
特許庁審判長 半田 正人
特許庁審判官 岩崎 安子
平澤 芳行
登録日 2013-02-08 
登録番号 商標登録第5556223号(T5556223) 
商標の称呼 ザンマイ 
代理人 小菅 一弘 
代理人 鶴本 祥文 
代理人 市川 泰央 
代理人 松尾 憲一郎 
代理人 林 栄二 

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