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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W43
審判 全部申立て  登録を維持 W43
管理番号 1378061 
異議申立番号 異議2020-900287 
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2021-10-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-11-02 
確定日 2021-09-17 
異議申立件数
事件の表示 登録第6280191号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6280191号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6280191号商標(以下「本件商標」という。)は、「THE PUBLIC」の欧文字を標準文字で表してなり、令和元年7月5日に登録出願、第43類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,会議室の貸与,展示施設の貸与」を指定役務として、同2年7月27日に登録査定、同年8月13日に設定登録されたものである。

2 異議申立人が使用する商標
異議申立人(以下「申立人」という。)が使用する商標は、「PUBLIC」の欧文字(以下「引用商標」という。)からなり、「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,会議室の貸与,展示施設の貸与,飲食物の提供」等に使用しているとされるものである。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第28号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第15号について
ア 引用商標の著名性
引用商標は、2017年に米国ニューヨークのマンハッタンにオープンしたイアン・シュレーガー(Ian Schrager)氏(以下「イアン氏」という。)がプロデュースしたデザインホテルである。
イアン氏は、デザインホテルの生みの親、またはその仕掛け人とも称され、1970年代のディスコブームを作り出したことでも有名で、伝説のニューヨークのディスコ「スタジオ54」を成功させて一躍時の人となった。その後、80年代には、デザインホテルの先駆けであるモーガンズ・ニューヨークをはじめ、数々のブティックホテルをオープンさせ、グラマシーパーク・ホテルの成功でブティックホテルというジャンルを確固たるものにした。 近年では、マリオットのラグジュアリーブランド「エディション」を始めとする、ライフスタイルホテルというカテゴリーをも生み出した。エディションホテルは、東京の虎ノ門に2020年にオープンし、2021年には銀座にもオープン予定である。そんな彼が、新世代ホテルとして新たな試みを体現したのが引用商標である「PUBLIC」ホテルである。
近年、Airbnbのような格安の新しい宿泊スタイルが登場し、簡単に予約することができ、安価に宿泊することができるので、ホテル業界には真似することのできない方法で顧客を勝ち取っているところ、イアン氏は、顧客を取り戻すためには、Airbnbにはできないサービスを提供することだと考え、これがPUBLICホテル経営の構想へと繋がった。
PUBLICホテルは、スタイリッシュなラグジュアリーホテルにも関わらず、Airbnbと変わらない価格設定にすることで顧客を再びホテル側に取り戻すことを目的とした新しいコンセプトのホテルを生みだした(甲3)。
PUBLICホテルに訪れた日本人は、2017年度135人、2018年度165人、2019年度282人、2020年度33人である。ただし、この数値は、ホテル予約サイトを除いたデータのため、実際の人数はさらに多くなる。
また、2017年1月から2021年1月までのPUBLICホテルのウェブサイトに日本からアクセスした回数をまとめたものには、日本から当該ウェブサイトを訪れた回数は25,481回であり、我が国の需要者の当該ホテル、引用商標への興味の高さがうかがえる(甲4)。
このような申立人の営業努力の甲斐あって、引用商標は、需要者の間で相当程度知られるに至っており、事実、引用商標を紹介するような記事は多数見受けられる(甲5?甲25)。
以上の事実より、引用商標は、イアン氏の名声と功績に相まって、世界的にはもちろん、我が国においても、ホテルを取り巻く業界やその周辺において、著名性を獲得していたことは優に推認できる。
イ 本件商標と引用商標の比較
引用商標は、「PUBLIC」の欧文字からなるところ、この語は、我が国の一般的な需要者には親しまれた平易な英単語であることから、直ちに「公の、公共の、公衆の」の観念が生じる(甲26)。
一方、本件商標は、「THE PUBLIC」の欧文字からなるところ、「THE」は定冠詞であるため、我が国の需要者にとっては特段の意味を有さず、よって本件商標からも「公の、公共の、公衆の」の観念が生じる。
すると、引用商標と本件商標とは、「THE」の文字の有無の差異に過ぎないところ、申立人のものとして周知な引用商標をそっくり含んだ本件商標の態様は、外観上も極めて類似するものであり、両者を付した役務について出所の混同を生ずるおそれが免れない。
一方、本件商標の指定役務は、引用商標の使用に係る役務と抵触するものである。
すると、本件商標と引用商標は類似の商標であって、例え、本件商標が「THE」の文字を伴うとしても、引用商標が、指定役務の分野においてすでに広く周知性を獲得している点を考慮すれば、本件商標中の「THE」の文字が「PUBLIC」の語の同一性を凌駕するほど強く印象の強いものとはいうことができず、むしろ、需要者は、本件商標から申立人の業務を表すものとして広く知られている周知な出所表示標識を認識し、申立人の役務を想起して混同が生じることを危惧する。
上述のとおり、引用商標は、申立人により継続的に使用された結果「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ」等の分野において、申立人の業務を表すものとして需要者に広く知られたものといえ、本件商標と引用商標の類似性の程度は決して低いものとはいえない。そして、このような商標の登録を認めることは、申立人が永年多大な努力を払って築きあげてきた引用商標に化体した業務上の信用にただ乗り行為を許すことになり、商標法の精神に反する。
ウ 小括
したがって、本件商標は、その指定役務に使用された場合、出所の混同を生じるおそれがあり、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第19号について
引用商標は、上述のとおり2017年から今日に至るまで、「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ」等に継続して使用してきた結果、その商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る役務を表すものとして、一定の周知性を獲得している。
また、本件商標は、「THE」の文字を伴うところ、「THE」が日本人には特段意味を持たない語であって、「PUBLIC」の部分が看者の目を惹く要部であるといえる点で、申立人の商標を想起させるような構成からなっており、申立人の商標を意識した悪質な行為といえる。
すなわち、我が国の一般需要者が本件商標に接したときには、引用商標が周知・著名であることから、日常頻繁に広告を見聞きし、その周知性により記憶に強く定着している「PUBLIC」の部分を本件商標から抽出して認識することになるから、引用商標と本件商標は類似するものといえ、また、指定役務も類似する。
そもそも、商標権者は、飲食業を営む者でありながら(甲27、甲28)、本件商標では、その主なビジネスである「飲食物の提供」を指定役務としていないところには、申立人及び著名な引用商標の存在を意識し、引用商標が商標登録されていないことを奇貨として、申立人に無断で、引用商標に化体された信用、顧客吸引力等にただ乗りし、構成上顕著な特徴を有する引用商標とほぼ同一の構成からなり引用商標の使用に係る役務を指定役務とする本件商標を剽窃的に出願し、登録を受けた不正な意図を感じざるを得ない。
よって、本件商標は商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものである。

4 当審の判断
(1)引用商標の周知性について
ア 申立人の主張及び提出した証拠(本件商標の登録査定時前のものに限る。)によれば、以下のとおりである。
(ア)「Glalabo」のウェブサイトには、「ニューヨークにオープンした『Public hotel』」(2018年1月24日付け)の見出しの下、「2017年6月にニューヨーク・マンハッタンのローワー・イーストサイドに新しくオープンした『PUBLIC,an IanSchrager hotel(パブリック イアン シュレーガー ホテル)』。」の記載がある(甲7)。
(イ)「Travel in Style」のウェブサイトには、「Ian Schragerプロデュース!NYで話題のブティックホテル【PUBLIC Hotel】」(2020年1月7日付け)の記載がある(甲8)。
(ウ)「NewYorkでおひるね」のウェブサイトには、「【ニューヨークおすすめホテル】パブリックホテル PUBLIC Hotel」(2018年6月29日付け)の見出しの下、「マンハッタンのロウアーイーストサイドに2017年夏オープンしたパブリックホテル(PUBLIC Hotel)をご紹介します。」の記載、また「パブリック イアン シュレーガーホテル(PUBLIC AN IAN SCHRAGER HOTEL)」の項に「創業者はブティックホテルの先駆者と言われるイアン・シュレーガー(Ian Schrager)氏です。」の記載がある(甲11)。
(エ)「GINGER」誌(2018年4月2日付け)を掲載したウェブサイトには、「タビジョにおすすめ!インスタ映えも狙えるNYのおしゃれホテル」の見出しの下、「PUBLIC(パブリック)」の紹介がある(甲15)。
(オ)「NY Gourmet Guide Book」誌(2019年5月14日付け)を掲載したウェブサイトには、「The Roof at Public Hotel」の記載がある(甲16)。
(カ)「pen」誌(2017年9月1日付け)を掲載したウェブサイトには、「WORLD SCOPE」のページのニューヨークの欄に「PUBLIC」が表示され、「数々の高級ホテルをプロデュースしてきた、イアン・シュレーガーによる『パブリック』が今年6月に開業した。」の記載がある(甲17)。
(キ)上記(ア)ないし(カ)のほかにも、「PUBLIC Hotel(パブリック・ホテル)」について記載又は掲載したウェブサイトがある(甲12、甲14、甲18?甲20、甲22?甲25)ものの、申立人と「PUBLIC Hotel(パブリック・ホテル)」との関係をうかがわせる記載はない。
イ 上記アからすれば、イアン氏のプロデュースによる「PUBLIC Hotel(パブリックホテル)」が2017年6月にニューヨークにオープンしたことは認められるものの、申立人と「PUBLIC Hotel(パブリック・ホテル)」との関係が明らかではなく、当該ホテルが申立人の業務に係るものとして紹介されている事実は確認できない。
また、仮に申立人と「PUBLIC Hotel(パブリックホテル)」とが何らかの関係を有するとしても、当該ホテルを訪れた日本人は、2017年度135人、2018年度165人、2019年度282人とされ、また、当該ホテルのウェブサイトに2017年1月から2021年1月までの間に日本からアクセスした回数は25,481回(甲4)とされるが、いずれの数値もそれを裏付ける証拠がないことから客観性に欠けることに加え、当該ホテルを訪れた日本人の数は決して多いとはいい難く、ウェブサイトへのアクセス数についても比較の対象となる数値がないため評価のしようがない。
さらに、当該ホテルに関する記事は、ニューヨークにオープンしたホテルの紹介やイアン氏にまつわる内容のものでしかなく、引用商標を使用しているとされる当該ホテルについての営業及び広告宣伝(内容、手法、期間、範囲)に関する実績を客観的に示す証拠の提出はないことからすれば、申立人から提出された証拠をもって引用商標の周知性を推し量ることはできない。
そうすると、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国又は外国の需要者の間に、引用商標が他人の業務に係る役務を表示するものとして、広く認識されていたと認めることはできない。
(2)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 引用商標の周知性
引用商標は、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、他人の業務に係る役務を表すものとして、需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
イ 本件商標と引用商標の類似性の程度
本件商標は、前記1のとおり、「THE PUBLIC」の欧文字を標準文字で表してなるところ、その構成中の「THE」の文字は、英語の定冠詞であって、名詞の前に付される場合は、その名詞を強調、限定する働きをすることからすれば、役務の出所識別標識としての機能がないか又は極めて弱いものとして認識されるものというべきである。
そうすると、本件商標からは、全体の構成文字に相応して生じる「ザパブリック」の称呼のほかに、「PUBLIC」の文字に相応して「パブリック」の称呼をも生じ、当該文字から「公衆、大衆」(甲26)の観念を生じるものである。
他方、引用商標は、「PUBLIC」の文字からなるところ、該文字に相応して「パブリック」の称呼を生じ、「公衆、大衆」の観念を生じるものである。
そうすると、本件商標と引用商標は、全体の外観は異なるものの「PUBLIC」の文字を共通にするものであるから似かよった印象を与えるものであり、また、「パブリック」の称呼及び「公衆、大衆」の観念を共通にすることから、これらを総合して勘案すれば、両商標は類似の商標であって、類似性の程度は低くはないものである。
ウ 本件商標の指定役務と引用商標の役務との関連性、需要者の共通性
本件商標の指定役務は、前記1のとおり、「宿泊施設の提供」等であり、引用商標を使用する役務は、これと同一又は類似の役務を含むものであって、その需要者も共通するから、両者の関連性はあるものといえる。
エ 独創性
引用商標は、一般の辞書等に載録されて、一般に広く知られている英単語であるから、独創性があるとはいえない。
オ 出所の混同のおそれについて
上記アないしエのとおり、本件商標の指定役務は、引用商標を使用する役務と関連性があるとともに、その需要者の範囲を共通にし、本件商標と引用商標との類似性の程度は低くはないとしても、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、他人の業務に係る役務を表示するものとして、需要者の間に広く認識されているものではなく、独創性もないものである。
そうすると、本件商標は、商標権者がこれをその指定役務について使用しても、取引者、需要者が、引用商標を連想又は想起することはなく、その役務が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれはないと判断するのが相当である。
その他、本件商標が引用商標と出所の混同を生ずるおそれがあるとみるべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第19号該当性について
本件商標は、上記(2)イのとおり、引用商標と類似の商標であるとしても、上記(1)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国又は外国の需要者の間で、他人の業務に係る役務を表示するものとして、広く認識されていたとは認められないものであるから、同項第19号の適用要件を欠くものである。
したがって、商標権者の不正の目的について検討するまでもなく、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
(4)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同項第19号のいずれにも該当するものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

異議決定日 2021-09-09 
出願番号 商願2019-93570(T2019-93570) 
審決分類 T 1 651・ 222- Y (W43)
T 1 651・ 271- Y (W43)
最終処分 維持  
前審関与審査官 林 亜輝菜駒井 芳子 
特許庁審判長 齋藤 貴博
特許庁審判官 岩崎 安子
板谷 玲子
登録日 2020-08-13 
登録番号 商標登録第6280191号(T6280191) 
権利者 有限会社PUBLIC DINER
商標の称呼 ザパブリック、パブリック 
代理人 古岩 信嗣 
代理人 川本 真由美 
代理人 佐々木 美紀 
代理人 山尾 憲人 

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