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審決分類 |
審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W30 |
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管理番号 | 1377904 |
審判番号 | 取消2020-300890 |
総通号数 | 262 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2021-10-29 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2020-12-08 |
確定日 | 2021-08-16 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第5994606号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第5994606号商標の指定商品中、第30類「ウーロン茶,紅茶,コーヒー飲料,チョコレート飲料,ココア飲料,菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ」についての商標登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第5994606号商標(以下「本件商標」という。)は、「Sincerus」の文字を標準文字で表してなり、平成29年3月6日に登録出願、第30類「茶,コーヒー飲料,チョコレート飲料,ココア飲料,菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,オートフレーク,コーンフレーク,シリアルバー,その他の穀物の加工品,ゼリーのもと,ドーナツのもと,プリンのもと,ホットケーキのもと,水ようかんのもと,その他の即席菓子のもと,パスタソース」を指定商品として、同年11月10日に設定登録されたものである。 2 請求人の主張 請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証及び甲第2号証(枝番号を含む。)を提出した。 (1)請求の理由 本件商標は、その指定商品中、第30類「ウーロン茶,紅茶,コーヒー飲料,チョコレート飲料,ココア飲料,菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ」(以下「本件申立商品」という。)について、本件審判の請求の登録前3年以内(平成29年(2017年)12月22日から令和2年(2020年)12月21日まで。以下「要証期間」という。)に、日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者によって使用された事実がないから、本件申立商品に係る登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。 (2)被請求人の答弁に対する弁駁 ア 菓子包装用箱(乙1)について 被請求人は、乙第1号証の箱について、発注数量及び時期を具体的に裏付ける証拠を提出していない。なお、その箱の請求書の発行日(2017年3月24日)は、要証期間ではない。 また、乙第1号証は、単なるデザインデータの類にすぎず、箱に必要な六面が描かれていないため、箱のデザインとも断定し得ない。 さらに、その箱が菓子包装用のものであれば、通常、内包される商品が菓子であることを示す表示もあるはずであるが、それに関する記載は一切ない。 加えて、被請求人は、その箱を、焼き菓子以外の商品(眼鏡型拡大鏡など)を入れて使用した旨を述べているから、菓子専用のものではなく、汎用的な包装材である。そうすると、この箱は、商品「菓子」についての使用とはいえない。 イ 菓子包装用箱(乙2)について 請求書(乙3)に記載された「紙キャラメル箱No66/内寸100*60*180mm」が、乙第2号証に係る箱に相当するか明らかでなく、また、その請求書の宛先の住所は、本件商標権者のものとは異なる。さらに、その請求書の発行日(2017年4月27日)は、要証期間ではない。 加えて、その箱が菓子包装用のものであれば、通常、内包される商品が菓子であることを示す表示もあるはずであるが、それに関する記載は一切ない。 また、被請求人は、乙第1号証の箱について、焼き菓子以外の商品(眼鏡型拡大鏡など)を入れて販売した旨を述べており、その箱は乙第2号証の箱と同様の記載内容であるから、乙第2号証の箱についても同様に、菓子専用のものではなく、汎用的な包装材と推測できる。そうすると、この箱は、商品「菓子」についての使用とはいえない。 ウ ロゴデザインの制作(乙4、乙5) 本件商標に係るロゴデザインの発注書の写し(乙4)は、本件商標権者に係るものであるか明らかでなく、また、それが焼き菓子やその他の菓子のために制作されたことは示されていない。 そもそも、ロゴデザインが制作された事実をもって、商標の使用にはならない。 エ 本件商標を使用していない正当な理由 商標法第50条第2項にいう「正当な理由」は、例えば、その商標の使用をする予定の商品の生産の準備中に天災地変等によって工場等が損壊した結果その使用ができなかったような場合、時限立法によって一定期間(三年以上)その商標の使用が禁止されたような場合等である(甲2)。 しかしながら、被請求人主張の理由は、そのような事情ではなく、新型コロナウイルスの国内感染拡大の影響による緊急事態宣言により、外出自粛、営業時間の短縮(時短)といった制限が2020年4月以降に課せられたにすぎず、現に、焼き菓子をはじめとする菓子業界全体の営業(製造・販売)活動が禁止されるといった事態には至っていない。 したがって、新型コロナウイルスの国内感染により、直ちに不使用について「正当な理由」があるとはいえない。 3 被請求人の主張 被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第5号証を提出した。 (1)答弁の理由 ア 本件商標は、形式的には商標法第50条第1項の規定に該当するものの、その指定商品について使用していないことについて正当な理由がある。 (ア)菓子包装用箱について 本件商標権者は、箱正面の中央上部に本件商標を、下部に本件商標の読み及び意味などを印刷した菓子包装用箱(乙1)を500個発注し、その請求書が2017年3月24日に発行されている。 さらに、それに英語表記を追加した菓子包装用箱(乙2)を500個追加で発注し、その請求書が2017年4月27日に発行されている(乙3)。 (イ)菓子包装用箱の使用及び所持 本件商標権者は、上記箱に焼き菓子を入れて販売する予定であったが、焼き菓子の購買や製造準備などに時間を要していた。その間に、新型コロナウイルスの国内感染者が発見され、感染拡大となったため、上記箱での焼き菓子の販売は実施できず現在に至っている。しかしながら、新型コロナウイルスの感染沈静化時期を見定めた上で、上記箱及び後述するロゴデザインを使用して、焼き菓子をはじめ、その他の菓子も販売する予定である。 そして、本件商標、上記箱及び後述するロゴデザインは、新型コロナウイルス感染沈静化後の焼き菓子販売事業を担うものである。 なお、乙第1号証の箱は、焼き菓子以外の商品(眼鏡型拡大鏡など)を入れてすべて販売(使用、消費)したため、現在は乙第2号証の箱のみを所持している。 (ウ)制作、依頼(発注)をしたロゴデザインについて 本件商標権者は、上記箱に続き、焼き菓子や同梱可能なその他の菓子に使用するためのロゴデザインの制作を、2018年7月25日に、デザイナーに依頼(発注)をし(乙4)、当該ロゴデザインの納品が、2018年8月5日に、完了している(乙5)。 イ 以上のとおり、本件商標をその指定商品について使用していないことについて、正当な理由がある。 4 当審の判断 (1)本件商標の要証期間の使用について 被請求人は、本件商標は商標法第50条第1項の規定に該当する旨を述べ、要証期間に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、本件商標を本件申立商品について使用をしている旨の主張をせず、その使用を示す証拠も提出していない。 したがって、被請求人は、要証期間に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、本件商標を本件申立商品について使用をしていることを証明したものと認めることができない。 (2)不使用の正当な理由について ア 被請求人は、本件商標を本件申立商品について要証期間において使用していない理由として、新型コロナウイルス感染拡大の影響を挙げて、本件商標の不使用について正当な理由がある旨を主張するところ、被請求人の主張及び提出証拠によれば、以下の事実が認められる。 (ア)本件商標権者は、2017年4月27日近辺の時期に、「箔押し印刷」をした「紙キャラメル箱」(内寸100×60×180mm)500個の製造を外部業者に注文した(乙3)。 (イ)上記箱に相当するとされる箱は、シンプルな箱状の立方体よりなるもので、箱正面には、円状の模様で囲んだ「Sincerus」の文字が金色で表示されているものの、箱に入れる物やその用途を具体的に示す表示はない(乙2)。 (ウ)上記箱を使用した焼き菓子販売事業は、焼き菓子の購買や製造準備などに時間を要したため、実施できなかった(被請求人の主張)。 (エ)2020年4月以降にコロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言が発出されている(当審における顕著な事実)ものの、それが本件指定商品(焼き菓子を含む。)に係る事業の継続に与える法的効果を具体的に示す証拠はない。 イ 上記認定事実によれば、本件商標権者は、2017年4月辺りには、本件商標(Sincerus)に相当する文字を表示した箱を用いて何らかの事業活動をしていた又は事業開始予定があった実情はあるとしても、その後3年以上、当該箱を使用した本件申立商品(焼き菓子を含む。)に係る事業は、商品手配の遅滞などの自己都合から実施していなかったといえる。 そして、コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言が発出された2020年4月以降も、当該宣言が本件申立商品(焼き菓子を含む。)に係る事業実施に直接与える法的な影響は明らかではないから、緊急事態宣言前からの被請求人に係る事業状況を踏まえると、自己都合による事業不実施の状態が継続していたと解釈するのが自然である。 なお、被請求人は、2018年8月に本件商標に係るロゴ制作(乙5)をしており、将来的に当該ロゴを用いて本件申立商品に係る事業活動を行う予定である旨を述べるが、それは単なる漠然とした意思表明にすぎず、上記のような、要証期間における本件商標の不使用の理由とは具体的な関連は見いだせない。 ウ 以上のとおり、被請求人提出の証拠によっては、本件商標が本件申立商品について要証期間に使用されていないのは、本件商標権者などの自己都合を理由とすると理解できるから、法令による禁止等の公権力の発動に係る事由や、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者の責めに帰することができない事由などの事情の存在は確認できず、不使用について正当な理由があるとは認められない。 (3)結論 以上のとおり、被請求人は、要証期間に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、本件商標を本件申立商品について使用をしていることを証明したものと認めることができない。 また、被請求人は、本件商標を本件申立商品について要証期間に使用していないことについて、正当な理由があることも明らかにしていない。 したがって、本件商標の本件申立商品についての登録は、商標法第50条の規定により、取り消すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2021-06-21 |
結審通知日 | 2021-06-23 |
審決日 | 2021-07-06 |
出願番号 | 商願2017-28164(T2017-28164) |
審決分類 |
T
1
32・
1-
Z
(W30)
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最終処分 | 成立 |
特許庁審判長 |
佐藤 松江 |
特許庁審判官 |
鈴木 雅也 阿曾 裕樹 |
登録日 | 2017-11-10 |
登録番号 | 商標登録第5994606号(T5994606) |
商標の称呼 | シンケールス、シンセルス |
代理人 | 三上 真毅 |
代理人 | 森定 勇二 |