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審決分類 審判 一部無効 称呼類似 無効としない W35
管理番号 1377880 
審判番号 無効2021-890002 
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2021-01-13 
確定日 2021-08-10 
事件の表示 上記当事者間の登録第6073022号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第6073022号商標(以下「本件商標」という。)は、「yui」の欧文字を標準文字で表してなり、平成29年10月18日に登録出願、第35類「ベルの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,ドアベルの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,楽器及びレコードの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,食器類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,愛玩動物用葬祭用具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,花瓶の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,水盤の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,風鈴の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,記念カップ・記念たての小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定役務として、同30年7月5日に登録査定、同年8月17日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が、本件商標の登録の無効の理由において、本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する登録第5220362号商標(以下「引用商標」という。)は、「結」の漢字を標準文字で表してなり、平成20年7月31日に登録出願、第21類「金属製真空二重カップ,金属製真空二重容器,その他の食器類,携帯用アイスボックス,米びつ,食品保存用ガラス瓶,水筒,魔法瓶,なべ類,コーヒー沸かし(電気式のものを除く。),鉄瓶,やかん,アイスペール,泡立て器,こし器,こしょう入れ,砂糖入れ,塩振り出し容器,卵立て,ナプキンホルダー,ナプキンリング,盆,ようじ入れ,ざる,シェーカー,しゃもじ,手動式のコーヒー豆ひき器及びこしょうひき,じょうご,すりこぎ,すりばち,ぜん,栓抜,大根卸し,タルト取り分け用へら,なべ敷き,はし,はし箱,ひしゃく,ふるい,まな板,麺棒,焼き網,ようじ,レモン絞り器,ワッフル焼き型(電気式のものを除く。),清掃用具及び洗濯用具」を指定商品として、同21年4月3日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

第3 請求人の主張
請求人は、「本件商標の指定役務中『食器類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供』についての登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第24号証を提出した。
1 請求の利益
請求人は、引用商標の商標権者であり、本件商標の指定役務「食器類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」と、引用商標の指定商品「金属製真空二重カップ,金属製真空二重容器,その他の食器類」とは類似し、本件商標と引用商標とは類似するから、請求人は、本件商標登録無効審判を請求することに利害関係を有し、請求人適格を有する。
2 無効理由
本件商標は、指定役務「食器類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」に関し、引用商標と類似するから商標法第4条第1項第11号に該当し、同法第46条第1項第1号により、無効にすべきものである。
(1)本件商標と引用商標との類否
ア 標章の類否
(ア)本件商標は、前記のとおり「yui」の文字よりなり、「yui」の文字からは「ユイ」の称呼を生ずることは明白である。これに対し、引用商標は、「結」の文字よりなるところ、「結」の文字は、小学館発行の「大辞泉」(甲5)には、「結」の見出しとともに、「[音]ケツ(漢) ケチ(呉) [訓]むすぶ ゆう ゆわえる [学習漢字]4年 1ひもなどでむすぶ。むすびつける。「結髪/直結・連結」 2組み立てる。構造物・組織体を造る。「結構・結社・結成・結党」 3ばらばらのものを一つにまとめる。まとまる。「結合/集結・妥結・団結」・・・[名のり]かた・ひとし・ゆい・・・」と記載されている。
したがって、「結」は、通常「ケツ」、「ケチ」と読むことは明らかである。
(イ)そこで、「結」に「名のり」(人名訓)に「ゆい」があることから、読みとして、「ユイ」という音が出るか否かが問題となる。なお、「結」からは、「むすぶ」,「まとめる」程度の観念が生じることは明らかである。
確かに、国語辞典、漢和辞典において、漢字「結」には「ユイ」という読みはない。しかし、「名のり」(人名訓)において「結」を「ユイ」と読むという事実は顕著である。
漢字の読み方には、音と訓とがあるが、それに加えて人名に限って慣習的に使われる「名のり」があり、結局、漢字には音、訓及び名のりの3つの読み方があることは常識である。たとえば、「夏美」という名前は、誰もが「ナツミ」と読むが、「美」を「ミ」と読むのは音でも訓でもなく、名のりである(甲23)。
したがって、名のりは日本人にとって古来からの第三の読みといって過言ではない。
名のりでも一般人が簡単に読めない名のりがあることは否定しない。しかし、「結」の名のり「ユイ」は、「美」の名のり「ミ」と同様、誰もが読める名のりであり、「結」の名のり「ユイ」を知らない日本人はいないといわざるを得ない。「結」は「結納」(「ユイノウ」)の「ユイ」である。
以下は、「結」を「ユイ」と読むことを示す事実である。
a 人名に使用される場合
「結(ゆい)」は、明治安田生命の「生まれ年別の名前調査」の名前ランキングにおいて、女の子の名前として、過去14年間で、11回100位以内にランクイン(直近6年は連続してランクイン)していることからも明らかなように(甲6)、人名として普通に用いられている。
よって、漢字一文字の「結」は、「ユイ」と読むことが多いことは明らかである。
b 会社名に使用される場合
国税庁の「法人番号公表サイト」において、「株式会社結」と「結株式会社」で部分一致検索すると、漢字一文字の「結」に「ユイ」とフリガナを振っている会社名を多数確認できる(甲7)。
c 店名に使用される場合
大手グルメサイト「食ベログ」において「ゆい」で検索すると、漢字一文字の「結」を店名とする飲食店が多数確認できる(甲8)。「結」(「ゆい」)という店名の飲食店は余りに多く、提出した証拠は一部に過ぎない。
以上から、「結」という漢字を「ユイ」と読むことが不適当であるという事実は存在せず、むしろ、「結」という漢字を現代において「ユイ」と読まないという認定はあり得ないといわざるを得ない。
(ウ)では「結」という漢字が商標となった場合、すなわち、商標「結」の称呼ならどうなるであろうか。
前述のように漢字「結」の正式な読みに「ユイ」はない。しかし、商標の類否の判断は、当該商標が使用される商品の需要者の平均的な注意力を基準にし、取引の実情を考慮して行われるべきであるから、類否の対象となる称呼は、取引の実情において、当該商標に接する上記需要者によってどのように称呼されるのが自然であるかにより判断されるべきである。
そうであるなら、漢字「結」を見た、平均的な注意力を有する需要者は、前記事実により「ユイ」と称呼しない者はいないはずである。「結果」の「ケツ」と称呼する者はいる可能性はあるが、漢字一文字の「結」であるなら、ほとんどの者が「ユイ」と称呼するはずである。
前述のとおり「結」の正式な読みとして「ユイ」がないことは事実である。しかし、商標の類否判断に際し、上記事実にこだわり、「結」の読みである「ユイ」が、これだけ需要者に定着している事実を無視することになる判断は妥当でないと考える。けだし、商標の類否は、平均的な需要者の自然的称呼を基準にするものだからである。
以上、漢字「結」を「ユイ」と読むことが普通に行われている以上、「ユイ」は「結」の正式な読みであることと等しく、商標の類否判断において需要者に定着している事実を考慮することは当然のことといえる。
漢字「結」の読みとして「ユイ」があることを忠実に採用した審査例が甲第9号証及び甲第10号証であり、甲第9号証は「結」と「yui」とを類似と判断した審査例、甲第10号証は「結」と「ゆい」とを類似と判断した審査例である。この漢字「結」と読み「ユイ」及び「ゆい」を類似とした審査例は、当該指定商品に限り、両者を類似とする特段の事情がある訳ではない。
また、引用商標の登録公報「称呼(参考情報)」欄には「ケツ,ユウ」と記載され、「ユイ」は記載されていないが、他の多数の商標「結」の登録公報の「称呼(参考情報)」欄には「ユイ」と記載されている(甲11?21)。「称呼(参考情報)」欄に「ユイ」と記載されているこれだけ多数の登録公報がある以上、引用商標の登録公報の「称呼(参考情報)」欄に「ユイ」がないのは「記載漏れ」といわざるを得ず、これにより本件商標の審査官が判断を誤った可能性がある。
イ 指定商品・役務の類否
本件商標の指定役務と引用商標の指定商品とは、それぞれ前記のとおりであって、本件商標の指定役務「食器類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」と、引用商標の指定商品「金属製真空二重カップ,金属製真空二重容器,その他の食器類」とが類似である点については、争いがない(甲22)。
なお、「食器類」は「台所用品」の下位概念である点も争いがない。
ウ 商標の類否
以上から、本件商標は、その指定役務中「食器類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」において、引用商標の指定商品「金属製真空二重カップ,金属製真空二重容器,その他の食器類」と類似するから、本件商標は、その指定役務「食器類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」について商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)まとめ
以上のとおり、本件商標は、その指定役務「食器類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」に関し、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号の規定に基づき、その登録を無効とすべきものである。
3 答弁に対する弁駁
現代において、「結」を見た一般人は、経験則上、「ケツ」若しくは「ユイ」と発音することは明らかであり、したがって、「結」が商標として商品に付されていれば、取引において一般人はその商品をほぼ間違いなく「ケツ」若しくは「ユイ」と称呼することは顕著な事実である。
漢字「結」を「ユイ」と読むことは、広辞苑(第7版)の95頁、297頁などにあるように明らかである(甲24)。一文字の「結」の読みとして「ユイ」は広辞苑に記載がないが、熟語としての記載がある以上、「結」から「ユイ」という称呼が生じることは明らかである。
請求人の主張は、この一点であり、この点の立証のため、甲各号証を提出している。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第4号証を提出した。
1 請求の利益
濫訴の防止の観点から、訴の提起ができる請求人適格を利害関係人のみに限定している。
本件商標を無効にする利益とは、請求人所有の引用商標と本件商標とが抵触関係にあるだけでは不十分であり、実質的な請求の利益がなければならないと解する。すなわち、請求人が無効対象である指定商品「食器類」について、当該商標を付して実際に製造・販売していることが必要である。
ところが請求人は、指定商品「食器類」の製造・販売の事実を何ら立証せず、請求人会社の事業の内容をホームページで確認しても前記事実について確認することができない(乙1)。
したがって、請求人は本件商標を無効にする実質的な利益がなく、請求人適格を有していない。
2 本件商標と引用商標との類否について
(1)本件商標「yui」の文字からは「ユイ」の称呼が生じることは疑いがない。
これに対して、「ユイ」は引用商標「結」の正式な読みであることと等しく、商標の類否判断において需要者に定着している旨の請求人の主張に異議を唱えざるを得ない。
まず、「結」一文字の称呼については、辞書の記載を最優先にすべきであり、なおかつ拠り所である。
請求人も国語辞典や漢和辞典において、漢字「結」には「ユイ」という読みがないことを認めている。
請求人は、あたかも「名のり」による読みが音及び訓と同じレベルで汎用されているかのように主張しているが、人名に限って、特に女性について使用されている「結(ユイ)」の「名のり」の称呼が、一般の需要者及び取引者を対象とする商品又は役務の標識である商標の読みにそのまま適用されるべきではない。
すなわち、商品や役務の標識である商標は、出所表示機能及び品質保証機能を果たすもので、外観とともに称呼は極めて重要な要素である。特に、漢字一文字の称呼はどのように称えるかも標識としての商標としては極めて重要である。請求人も主張しているように、取引の実情において、当該商標に接する需要者によってどのように称呼されるのが自然であるかにより判断されるべきである。
そうであるならば、人名、特に女の子の名前に使用されることが多い漢字一文字「結」の読みを、全く対象の異なる取引社会における商標について、その読みを人名と全く同一視して、振り仮名を振っていないにもかかわらずそのまま適用して「ユイ」と称呼することは具体的妥当性に欠け、違和感を感ぜざるを得ない。
請求人も認めているように「結」の正式な読みとして「ユイ」がないことは事実である。
したがって、漢字一文字「結」の読みを「ユイ」と称呼する場合は、人名に限って慣習的に使われている範囲内で行うのがむしろ自然であり、振り仮名を振っていないにもかかわらず「結」一文字の読みを、人名以外の他の分野にまで無条件で広めて「ユイ」と称呼することには慎重であるべきである。
よって、請求人の主張は、あまりにも独善的であり、辞書に記載されている通常の読みを全く無視して、正式でない読みがあたかも世の中に広く行き渡っている称呼であるごとき言い分は到底受け入れられるものではない。
(2)人名に「結」が使用されている場合の読み方に関して、「ゆい」以外にも多様なものが存在しているので、以下に挙げる。
・「ゆう」という読み方も女の子の名前にある(乙2、乙3)。
・さらには、「けい」や「むすび」という読み方も存在している(乙3)。
・また、男の子の名前の読み方には、「結」を「ひとし」や「ゆう」という読み方も存在している(乙3)。
このように、人名に一文字として「結」を使用するときの読み方には男女において「ゆい」以外にも多様な読み方が存在しており、人名に使用される場合においても「結」を「ゆい」という読み方にのみ使用されているものではない。
(3)会社名に「結」が使用されている場合の読み方に関して、甲第7号証を参考にして「株式会社結」と「結株式会社」において、漢字一文字の「結」に「ユイ」と振り仮名を振っている件数は、503件中40件であり、「結」に「ムスビ」と振り仮名を振っている件数は、16件であり、「結」に「ユウ」と振り仮名を振っている件数は、3件であり、何らの振り仮名を振っていない件数は、57件である。
このように漢字一文字の場合には、「結」に「ユイ」の振り仮名を振っているケースが他の場合に比し相対的に多いのは、多分、振り仮名を振らないと「結」を「ユイ」と読んでもらえないことを考慮したものと思料する。
(4)請求人は、大手グルメサイト「食ベログ」において、漢字一文字「結」を店名とする飲食店が多数確認できるとして「結」「ゆい」という店名の飲食店は余りにも多く、提出した証拠は一部に過ぎない旨、主張しているが、提示した店名の証拠は21件に過ぎず、しかも「結」一文字の店名の件数も7店に過ぎず、証拠のボリュウムとしては余りにも薄いものといわざるを得ない。
(5)漢字「結」と「yui」(多少図案化されている。)の審査例(乙4)において、両者は非類似と判断されている。
3 まとめ
以上のとおり、請求人適格に疑義があり、しかも商品及び役務の取引社会において需要者及び取引者は引用商標「結」からは必ずしも「ユイ」との称呼が生ずるものと認識されているとはいえないので、本件商標「yui」と類似しておらず、商標法第4条第1項第11号に該当していない。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されてものではなく、同法第46条第1項第1号の規定に該当せず、その登録を無効とすべきではない。

第5 当審の判断
1 本件審判の請求の利益について
本件審判の請求に関し、当事者間において、利害関係の有無につき争いがあることから、まず、この点について判断する。
商標法第46条に規定する商標登録の無効審判を請求できる者は、当該商標登録を無効とすることに関して利害関係を有する者であるところ、ある商標の登録の存在することによって、直接不利益を被る関係にある者は、それだけで同条にいう利害関係人としてのその商標の登録の無効審判を請求する利害関係を有すると解されている(東京高裁昭和35年(行ナ)第106号)。
そして、商標登録出願に係る商標が、当該商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の登録商標と同一又はこれに類似し、指定商品若しくは指定役務も同一又は類似するものとして、当該商標登録出願が拒絶され又は拒絶されるおそれがある場合、その商標登録出願に係る出願人は、上記他人の登録商標につき、商標登録の無効審判の請求をする法律上の利益があることは、明らかである。
しかるところ、職権調査によれば、請求人は、「結」の漢字と「ゆい」の平仮名を二段に書してなる商標について商標登録出願(商願2019-025413号)をしていることが認められ、その登録出願に係る商標について、本件商標を引用した拒絶理由(商標法第4条第1項第11号)を通知され、当該商標登録出願は現在審査に係属していることが認められる。
そうすると、請求人は、本件審判の請求をすることについて法律上の利益を有するものといわなければならない。
したがって、本件審判の請求は、その請求を不適法なものとして却下することはできない。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
本件商標は、「yui」の欧文字を標準文字で表してなるところ、これよりはその構成文字に相応して「ユイ」の称呼を生じるものであり、また、「yui」の文字は、辞書等に載録がない語である上に、本件の指定役務との関係において何らかの意味合いを認識させるものでもなく、直ちに特定の意味合いを看取できないものであるから、特定の観念は生じない。
(2)引用商標について
引用商標は、「結」の漢字を標準文字で表してなるところ、「結」の文字は、「ケツ」と読み、「むすぶ。」程の意味合いを有すること、名のりとして「ゆい」の読みがあることが一般的な国語辞典(小学館発行「大辞泉」)に掲載されている(甲5)。
さらに、「結」(読み方:ユイ)は、明治安田生命の「生まれ年別の名前調査」の名前ランキングにおいて、女の子の名前として、過去14年間(2006年から2019年まで)で、11回100位以内にランクイン(直近6年は連続してランクイン)している(甲6)。
そうすると、引用商標は、その構成文字に相応して、「ケツ」の称呼だけでなく、一般に親しまれた「ユイ」の称呼をも生じるものであり、「むすぶ。」程の観念を生じるものである。
(3)本件商標と引用商標の類否について
本件商標と引用商標とを比較すると、外観においては、両商標は上記(1)及び(2)のとおりであって、その構成文字において欧文字と漢字という文字種の明らかな差異を有するから、外観上明確に区別できるものである。
次に、称呼においては、本件商標と引用商標は、「ユイ」の称呼を共通にする場合がある。
また、観念においては、本件商標は、特定の観念を生じないものであるのに対し、引用商標は、「むすぶ。」程の観念を生じるものであるから、両者は観念上相紛れるおそれはないものである。
そうすると、本件商標と引用商標とは、称呼を共通にする場合があるとしても、観念において相紛れるおそれはなく、外観においては明らかな差異を有するものであって、称呼の一部の共通性が外観における差異を凌駕するものとはいい難く、外観、称呼及び観念を総合して考察すると、両商標は、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものである。
(4)本件商標の指定役務と引用商標の指定商品との類否について
本件商標に係る指定役務中、第35類「食器類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」と、引用商標の指定商品中、第21類「金属製真空二重カップ,金属製真空二重容器,その他の食器類」とは、「小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」の役務とその取扱商品の関係にあり、両者は類似するものである。
(5)小括
以上のとおり、本件商標と引用商標とは非類似の商標であるから、本件商標の指定役務と引用商標の指定商品が類似するものであるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、本件審判の請求に係る指定役務について、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲

審理終結日 2021-06-10 
結審通知日 2021-06-15 
審決日 2021-07-01 
出願番号 商願2017-137354(T2017-137354) 
審決分類 T 1 12・ 262- Y (W35)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 池田 光治柿本 涼馬 
特許庁審判長 岩崎 安子
特許庁審判官 板谷 玲子
森山 啓
登録日 2018-08-17 
登録番号 商標登録第6073022号(T6073022) 
商標の称呼 ユイ、ワイユウアイ 
代理人 吉井 剛 
代理人 特許業務法人宮田特許事務所 

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