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審決分類 |
審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない W36 |
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管理番号 | 1377870 |
審判番号 | 取消2020-300265 |
総通号数 | 262 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2021-10-29 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2020-04-15 |
確定日 | 2021-08-10 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第5934834号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5934834号商標(以下「本件商標」という。)は、「LOGOS」の文字をサンセリフ体の書体で表してなり、平成28年4月8日に登録出願、第36類「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,保険業務,財政業務及び財務に関する情報の提供,不動産業務及び建物又は土地の情報の提供」を含む、第36類及び第39類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同29年3月24日に設定登録されたものである。 そして、本件審判の請求の登録日は、令和2年5月7日であり、商標法第50条第2項に規定する「審判の請求の登録前3年以内」とは、平成29年5月7日から令和2年5月6日までの期間(以下「要証期間」という。)である。 第2 請求人の主張 請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の指定役務中、第36類「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,保険業務,財政業務及び財務に関する情報の提供,不動産業務及び建物又は土地の情報の提供」についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第11号証(枝番号を含む。なお、枝番号を有する証拠において、枝番号のすべてを引用する場合は、枝番号の記載を省略する。)を提出した。 1 請求の理由 本件商標は、その指定役務中、第36類「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,保険業務,財政業務及び財務に関する情報の提供,不動産業務及び建物又は土地の情報の提供」(以下「請求に係る役務」という場合がある。)について、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により、取り消されるべきである。 2 答弁に対する弁駁 (1)各論 ア 日本国内での使用に該当しない点について 商標権は、国ごとに出願及び登録を経て権利として認められるものであり、属地主義の原則に支配され、その効力は当該国の領域内においてのみ認められるものである。 外国法人である被請求人が商標を付して日本国外において、「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,不動産業務及び建物又は土地の情報の提供」(以下「被請求人の主張に係る役務」という。)の各役務の提供をしている限り、日本の商標法の効力は及ばない結果、日本の商標法の「使用」として認めることはできない。 イ 当該役務の提供の条件について 被請求人の主張に係る役務を、外国法人である被請求人が日本国内で提供することは、その性質上、困難である。 なぜならば、被請求人の主張に係る役務のうち、「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,不動産業務及び建物又は土地の情報の提供」は、役務提供地である日本国内において宅地建物取引業免許を受けなければ提供できない役務であり、事務所には、所定の専任の宅地建物取引士を配置し、代表者及び政令で定められた使用人を常駐させ、当該免許を国土交通大臣又は都道府県知事から受けた上で、営業保証金の供託または保証協会への加入をすることが条件であり(甲3)、また、被請求人の主張に係る役務のうち、「建物又は土地の鑑定評価」は、不動産鑑定士の国家資格を有する者の独占業務だからである(甲4)。 ウ 被請求人の日本国内における営業行為について 被請求人は、オーストラリアの法人であり、日本国内に事務所を設置しておらず(甲5)、上述の宅地建物取引業を行う条件及び不動産の鑑定評価を行う条件を備えていない。 すなわち、広告及び取引書類に本件商標をいくら付しても、日本国内で当該役務の提供をする前提を欠く行為であり、仮に、被請求人が日本国内での商標の使用を主張するのであれば、これは同時に、自ら宅地建物取引業法違反ないし不動産の鑑定評価に関する法律違反をしていることを自白しているに等しいものである。 また、被請求人の主張に係る役務のうち、「不動産業務及び建物又は土地の情報の提供」の「建物又は土地の情報の提供」を被請求人が行ったものと仮に把握したとしても、商標法において「役務」が「他人のためにする労務又は便益であって独立して商取引の目的たりうべきもの」と解されている以上、「建物又は土地の情報の提供」以外の役務は独立して商取引の目的たりうるけれども、「建物又は土地の情報の提供」は独立して商取引の目的たりえないことは明らかであり、被請求人の行為は、「建物又は土地の情報の提供」に関しての商標法上の使用行為に該当するものとはいえない。 以上より、被請求人の営業行為は、日本の商標法の使用に該当しないものである。 エ 被請求人のウェブサイトについて 同サイトは、全体が英語で構成され、被請求人の所在地であるオーストラリアにて開設されているものであり、たとえ日本語表示ページが1ページのみ用意されていても(甲6)、インターネットの性格上、世界各地から現地のウェブサイトにアクセスが可能であり、かつ、オーストラリア、ニュージーランド、中国、インド、インドネシア及びシンガポールのみにおける不動産資産に関する役務の提供に係るものであるから(甲7)、これをもって、被請求人が被請求人の主張に係る役務自体に包含される行為を日本国内において行ったとすることには全くならない。 (2)被請求人提出の各証拠について ア 日本郵政株式会社への営業行為について 日本郵政株式会社(以下「日本郵政社」という。)への営業行為は、日本国内での各役務の提供を伴った行為ではないことは明らかである。 まず、乙第10号証に沿って具体的に行った説明や提案内容のうち、投資サービス及び資金運用事業は、被請求人の主張に係る役務には該当しないものであり、被請求人の中国物件チーム構成の説明を行ったところで、日本国内における被請求人の主張に係る役務の提供にはならないことは明らかである。 また、被請求人を介した土地や資産を取得、それを開発して賃貸し、その後の資産管理を行うことは、被請求人が日本国内における宅地建物取引業免許を有していないことから日本国内での資産管理に関する説明にはなり得ず、中国におけるテナントの管理の説明は、日本国内での役務の提供とは全く異なるものであり、資産管理の実績も日本国外での実績にすぎないため、日本国内での役務の提供とは全く関係のないものである。 この商談において、本件商標が付された名刺を手渡したとしても、前提として、日本国内での役務の提供とは全く関係のない商談であるから、本件商標の日本国内での使用行為には全くならない。 メールの内容(乙12)も、中国における土地買収開発に関する内容であり、日本国内での役務の提供とは全く関係がない。 イ 大和ハウス工業株式会社への営業行為について 大和ハウス工業株式会社(以下「大和ハウス社」という。)への営業行為は、日本国内での各役務の提供を伴った行為ではないことは明らかである。 まず、この商談は、オーストラリアで新たにオープンする新店舗及び倉庫の建設予定地の賃貸及び施設開発に関するものであり、被請求人の日本国内における被請求人の主張に係る役務の提供に関しての商談ではない。 そうである以上、この商談内容に関連する各種書類(乙18、20、22?24)や、Eメール(乙17、19、21)は、日本国内における役務の提供を示す証拠ではない。 (3)過去の判断について ア 乙第25号証及び同26号証について これらの審決例は、被請求人が日本国内において本件商標を付して、被請求人の主張に係る役務の提供に該当する行為をしていることを裏付けるものでは全くない。 イ 取消2008-300339号等(甲8?10) 本審決は、国際列車の運営会社が保有する商標について、日本国内での役務「鉄道による輸送」の提供には該当せず使用と認められないとして、登録が取り消された事件である。 当該審決の判断に鑑みて、被請求人の2件の日本国内での商談事実及びウェブサイトの存在は、単に、被請求人の行為は実質的に日本国外での商標法上の商標の使用を前提とした行為で、かつ、被請求人は日本国内で各役務の提供の前提となる宅地建物取引業免許を有していない以上、属地主義の原則から、日本国内での商標法上の「使用」として認められるべきではないことは明らかである。 ウ 取消2004-30952号(甲11) 本審決は、有価証券の売買・有価証券指数等先物取引・有価証券オプション取引及び外国市場証券先物取引の媒介・取次ぎ又は代理等の役務を提供するイギリスの法人が保有する商標について、日本国内で、当該役務の提供行為は行われておらず、日本における商標の使用と認められないとして、登録が取り消された事件である。 当該審決の判断に鑑みて、被請求人のウェブサイトは、単に日本国外での商取引を前提とした内容であって、日本国内で各役務の提供の前提となる宅地建物取引業免許を有していない以上、属地主義の原則から、日本国内で2件の商談をしたからといって、被請求人の各行為及びウェブサイトの存在が日本国内での商標法上の「使用」として認められるべきではないことは明らかである。 第3 被請求人の答弁 被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、答弁書において、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第31号証を提出した。 1 被請求人について 被請求人は、2010年に設立され、主としてアジア・太平洋地域を中心に、物流施設の開発や開発用地の売買・賃貸、物流インフラの構築・企業の買収や出資等を業とする物流不動産開発会社である(乙1、2)。 2 本件商標について 本件商標は、被請求人のハウスマークであり、被請求人が提供するサービスの出所を表示するものとして、継続的に使用されている。 3 本件使用役務について 本件商標は、その指定役務のうち、被請求人が提供するサービス、すなわち、「不動産資産に対する投資,投資管理,不動産の鑑定評価・取得及び管理,物流資産に関する機会開拓や資産運用管理,取得・開発した不動産資産の賃貸,不動産の賃貸及び売買の代理又は媒介,不動産に関する情報の提供(以下「本件使用役務」という。)等」に使用されている(乙1、3)。資産運用管理とは、被請求人が管理する建物の質や価値を向上させ、利用者にとって良好で持続的な環境を作り出せるように建物を管理する業務を指し(乙1、4、5)、物流資産に関する機会開拓業務とは、物流不動産開発において、建物又は土地を鑑定評価し、投資家と企業の双方の要求を満たすような新しい機会を開拓し、必要な情報を提供しつつ、両者の媒介を行う業務である(乙6)。 4 本件商標の本件使用役務への使用行為について (1)日本郵政社への営業行為 被請求人は、要証期間内である2019年12月11日に、日本郵政社に対して、本件使用役務についての営業活動を行った。 被請求人のCEOであるJ氏は、同社の北アジアの物件を担当するS氏、中国の物件を担当するD氏、及び香港に拠点を置くM社のC氏と共に、日本郵政社のH氏に対して被請求人の提供する本件使用役務の営業を目的とする商談を行った(乙9)。 商談では、本件商標が付された会社案内及び本件使用役務に関する広告資料(販売促進資料)(乙10)を提示した上で、被請求人の紹介、不動産業界の見通しについての概要、中国の政府機関より土地を買収する具体的な方法と戦略、本件使用役務の提供条件等について、被請求人のCEOであるJ氏が説明し提案を行った(乙9)。 商談において具体的に行った説明、提案内容は、広告資料(乙10)の内容に従い、被請求人が提供する投資サービス、被請求人が提供する資金運用事業、及び被請求人の中国物件のチーム構成(当該資料には商談の参加者であるD氏やS氏の名前も記載されている)についてである。また、被請求人を介して土地や資産を獲得し、それを開発して賃貸し、その後の資産管理を行うプロセスを、過去の実績を示す具体的な数字と共に説明し、土地や資産の取得・買収についての被請求人の戦略と実績も説明した。さらに、被請求人のテナント管理や資産管理、被請求人が提案する投資戦略や投資や対象地域等を説明した。 なお、商談では、J氏とS氏がH氏に対して名刺を手渡したが、当該名刺の裏面にも、本件商標が表れている(乙11)。 被請求人は、商談後の2019年12月27日に、C氏を介して、H氏にメール(乙12)を送付し、中国政府から土地を買収し開発を進めるにあたり、被請求人が担う役割やプロセスを説明した追加資料(乙13)を送付している。当該資料にも、本件商標が付されている。 当該メールには、中国政府から土地を買収する場合、経験豊富なシニアマネージメントチームが当初より交渉に積極的に関与して、必要なアドバイスを提供して管理を行うこと、プロジェクトや買収の条件が投資家達の要求に合致するよう努めること、などが記載されており、商談中にH氏から提起された具体的な質問(投資家に対する配当や資本の返還)に対する回答も示されている(乙12)。 上述のとおり、被請求人がH氏に提示した一連の資料は、本件使用役務の営業目的で提示されたものであり、本件商標の本件使用役務についての広告的使用(商標法第2条第3項第8号)というべきものである。 (2)大和ハウス社への営業行為 被請求人は、要証期間内である2019年6月13日に、大和ハウス社に対して本件使用役務についての営業活動を行った。 被請求人のCEOであるJ氏と取締役のT氏は、大和ハウス社において、同社の取締役常務執行役員兼建築事業推進部長(乙15)及び副部長に対する営業及び進行中の案件について協議する目的で商談を行った(乙14)。 商談では、本件商標が付された販売促進資料(乙16)を用いて、被請求人の紹介をし、土地や建物の賃貸・土地の買収及び開発に関する被請求人の営業能力についての説明を行った(乙14、16)。また、メルボルンで新たにオープンする新店舗及び倉庫の建設予定地の賃貸及び施設開発(以下「本プロジェクト」という。)について、メルボルンに所在する建設用地の説明と、賃貸や資金繰りに関する具体的な取引条件を提案・協議した(乙14)。商談ではさらに、被請求人と大和ハウス社との日本及び東南アジアにおける物流分野における協力関係の構築、パンアジア基金の設立に関する具体的なタイムラインや手続きについても協議した(乙14)。 商談で提示した資料(乙16)には、被請求人のグループ会社の2018年度の実績が示され、被請求人の専門分野として「賃貸」や「資産管理」が実績と共に記載され、商談の参加者であるJ氏の名前も記載されており、また、被請求人が手掛けたプロジェクトが紹介されている。 なお、本プロジェクトについては、当該商談に先立って、2019年4月1日付で、被請求人のF氏と大和ハウス社のY氏との間でEメールのやりとりがなされており、本プロジェクトに関する具体的な契約条件が協議されている(乙17)。 協議内容と合わせて被請求人が送付するメールの署名欄には、常に本件商標が表示されている。 メールには、「Development proposal(開発提案)」と題する資料(乙18)が添付されている。当該資料の全頁には、本件商標が付されており、メールの宛先には、前述の商談の参加者の名前も入っている。 同日付で送られた別メールには、当該資料の記載内容として、Palmers Roadに所在する施設の建設費用見積もり、要望を加味した設計概要、実現可能性の分析と開発利潤分配スキームが記載されており、資料(乙18)には、本プロジェクトの対象である用地の土地の詳細、施設の詳細、及び土地の賃貸契約の締結から施設の開発までのスケジュールが記載されており、また、賃貸期間や費用、本プロジェクトによる収益等の取引条件について、具体的な数字が示されている。 さらに、翌2019年4月2日付で被請求人のF氏が大和ハウス社のY氏に送ったEメール(乙19)には、電話会議の予定が示されており、本件商標が付された資料(乙20)が送付されている。Eメールの署名欄には、本件商標が表示されている。また、メールで送付された資料には、本プロジェクトの当事者や進め方の要約が示されており、本プロジェクトの第一ステップとして、被請求人は、大和ハウス社等と土地の賃借契約を締結する旨が記載されている(乙20)。 2019年4月17日に被請求人のF氏がY氏に送付したEメール(乙21)には、これまで協議してきた土地についての契約書を添付する旨の文言と合わせて、用地の賃借に関する契約書のドラフト(乙22)と、施設の設計概要(乙23)、施設の開発管理に関するサービスの概要(乙24)が添付されている。 これらの資料には全て、本件商標が付されている。 上述のとおり、被請求人が商談中に大和ハウス社に提示した資料(乙16)は、本件使用役務の営業目的で提示され、本件使用役務の広告的使用(商標法第2条第3項第8号)というべきものである。 また、商談における本プロジェクトについての協議は、それに先立って被請求人がEメールや電話会議で協議してきた内容(乙17、19、21)及び提示した契約書や資料(乙18、20、22?24)に基づくものであり、商談ではこれらの資料に示された内容について、具体的な協議がなされたことは明らかである。 そして、本プロジェクトは実際に現在進行中の案件であり、特定の土地についての具体的な賃貸条件が提示されていることからすれば、これらの資料が本件使用役務についての取引書類(商標法第2条第3項第8号)に該当することも明らかである。 (3)以上のとおり、本件商標は、本件使用役務の広告及び取引書類に表示され、当該広告及び取引書類は要証期間内に日本国内において顧客に提示されたものである。 そして、本件使用役務は、指定役務中のうち、少なくとも「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,不動産業務及び建物又は土地の情報の提供」(被請求人の主張に係る役務)に含まれるものである。したがって、当該行為は、指定役務に関する広告又は取引書類に、本件商標を付したものを展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為(商標法第2条第3項第8号)に該当する。 (4)過去の審決について 特許庁審判部においても、商標が付された説明資料を用いて行う商品及び役務の営業提案行為を、「商標の使用」と認定している(乙25、26)。 (5)被請求人のウェブサイトにおける本件商標の使用 被請求人は自己のウェブサイト(以下「本件ウェブサイト」という。)において、本件商標を継続的に使用している。本件ウェブサイトでは、被請求人の会社概要に加え、具体的な業務として不動産資産に対する投資、顧客のための投資管理、土地や施設の調達、物流資産に関する機会開拓や資産運用管理が紹介されている。また、これに関連して、調達・開発した資産を顧客に貸与及び提供する業務が記載されている(乙3)。 また、本件ウェブサイト上の項目(乙7)をクリックすると、被請求人が賃貸している物件の情報を検索できる画面に移動し、具体的な物件をさらにクリックすると、その物件の詳細な情報が示され(乙27)、同頁上の項目をクリックすると、その物件に係る具体的な賃貸条件等を被請求人の担当者に問い合わせができることになっている(乙27、28)。被請求人は、このような形で土地や物件の賃貸やこれに関する情報も提供している。 本件ウェブサイトは、少なくとも要証期間内の2019年9月4日時点で一般に公開されていた(乙29)。また、「Latest News」の項目では、2012年3月1日以降現在に至るまで、継続して情報がアップデートされていることからも、要証期間内に本件ウェブサイトが存在していたことは明らかである(乙30)。 さらに、本件ウェブサイトは全て英語で記載されているが、「Contact Us」なる項目をクリックすると、「Japan」なる項目が特設されており、日本の需要者向けのemailアドレスが記載されていることから(乙31)、本件ウェブサイトが日本の需要者をも対象としたものであることは明らかである。 本件ウェブサイトが英語のみで表示されているのは、インターフェイスを世界共通語である英語に統一することによってサイトの効率化を図ることを目的としたものであるが、具体的な問い合わせについてはその地域の担当者に繋ぐことで、きめ細かなサービスを提供できるよう配慮したものである。 これらの行為は、本件使用役務を一般公衆に広告する行為(商標法第2条第3項第8号)に該当する。 そして、本件ウェブサイトには、本件使用商標が表れている。 以上のとおり、被請求人は、要証期間内に日本国内において、少なくとも、「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,不動産業務及び建物又は土地の情報の提供」(被請求人の主張に係る役務)に関する広告に、本件商標を付したものを展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為(商標法第2条第3項第8号)を行っている。 第4 当審の判断 1 被請求人の提出に係る証拠及び同人の主張(当事者間に争いのない事実)によれば、以下の事実が認められる。 (1)「LOGOSは、投資管理、土地や施設の調達、開発や資産管理の実施等、世界の主要な不動産投資家に代わって、物流不動産のあらゆる側面を管理しています。」の記載があり(乙1)、連絡先として、被請求人の電話番号及びURLアドレス(乙31)と同一の記載がある(乙1)。 (2)ア(ア)被請求人(本件商標権者)は、令和元年(2019年)12月に日本郵政社に対し、同年6月に大和ハウス社に対し、それぞれ、被請求人が提供する役務に関する営業活動を行った(乙9、12、14、及び被請求人の主張)。 (イ)上記営業活動において、被請求人から日本郵政社又は大和ハウス社に対して、冒頭や頁の右上に「LOGOS」の文字(以下「使用商標」という。)が表示された資料を提示した(乙10、16、及び被請求人の主張)。 (ウ)被請求人は、日本郵政社との上記営業活動後の令和元年(2019年)12月27日に、C氏を通じて追加資料(乙13)を送付した(乙12、及び被請求人の主張)。また、被請求人は、大和ハウス社との上記営業活動に先立ち、平成31年(2019年)4月1日から同月17日にかけて、資料(乙18、20、22?24)を送付した(乙17、19、21、及び被請求人の主張)。 イ 被請求人から日本郵政社又は大和ハウス社に対して提示又は送付した資料(乙10、13、16、18、20、22?24。以下、これらをまとめて「本件資料」という。)には、乙第22号証を除き、資料冒頭や頁の右上に使用商標が表示され(なお、乙第22号証には使用商標とは異なる書体で表された「LOGOS」の文字が表示されている。)、被請求人に係る業務について、例えば〈a〉スペースを顧客に賃貸していること及び需要や価格を含む市場洞察力を提供していること(乙10の14頁(7葉目))、〈b〉過去5年間で18件の土地買収取引を完了したこと(乙10の18頁(9葉目))、〈c〉物流に従事する顧客に対して、不動産についての解決策を提案すること(乙16の3頁)などが記載されている。 ウ(ア)被請求人は、平成31年(2019年)4月に、大和ハウス社との間で、オーストラリアのメルボルンにオープン予定の新店舗及び倉庫の建設予定地の賃貸及び施設開発について、電子メールを通じ協議を行った(乙17、19、21)。 (イ)乙第17号証は、平成31年(2019年)4月1日に、被請求人と大和ハウス社との間でやりとりされた電子メール(写し)(以下「本件メール」という。)であり、この中で、被請求人が差し出す電子メールの末尾に、使用商標が表示されている。また、本件メールには、施設の建設費用見積もり、設計概要及び実現可能性の分析と開発利潤分配スキーム等を記載した資料を送付(添付)する旨が記載され、また、用地効率レベルの現在の値に関しては開発承認の障害とはならないであろうことなどが記載されている(乙17)。 (ウ)乙第18号証は、本件メールに添付された「開発提案」と題する、本件資料の一つであって、用地に関する土地の詳細情報(立地など)が記載されている(乙18の3?7頁(2?4葉目))。 2 前記1において認定した事実によれば、以下のとおり判断できる。 (1)使用商標について 本件商標は、前記第1のとおり、「LOGOS」の文字をサンセリフ体の書体で表してなる商標である。 これに対し、使用商標は、「LOGOS」の文字をサンセリフ体の書体の範ちゅうのものと自然に認識し得る書体で表してなる商標である。 そうすると、本件商標と使用商標とは、「書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標」であるから、使用商標は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標である。 (2)使用役務について 前記1(1)及び(2)イの認定事実からすれば、被請求人は、土地や施設の調達、開発や資産管理の実施等、及び土地又は建物に関する市場分析など、不動産取引における様々な業務を取り扱っていることが認められる。 そして、前記1(2)ウ(イ)及び(ウ)の認定事実からすれば、被請求人は、施設を建設するための用地について、その立地といった土地の情報を日本国内において提供していることが認められる。 そうすると、使用に係る役務は、「土地の情報の提供」(以下「使用役務」という。)というのが相当であるところ、使用役務は、請求に係る役務に含まれる役務である。 (3)使用時期及び使用者について 前記1(2)イ及びウの認定事実からすれば、本件商標権者から平成31年4月1日に、大和ハウス社に対して使用商標(「LOGOS」)を表示した本件メールが送信されたものと認められ、また、同日、本件資料の一つ(乙18)が、本件商標権者から大和ハウス社に対して送付されたものと推認することができる。これに、前記1(2)の認定事実を全体としてあわせ鑑みれば、使用役務の提供にあたり、使用役務の営業活動のための電子メール及び資料に使用商標が付されていたものとみるのが相当であって、これは広告又は取引書類に当たるものである。 そうすると、使用商標の使用者は、本件商標権者であり、同人が本件メールと共に本件資料の一つ(乙18)を送付した日は、要証期間内である。 (4)小括 以上によれば、本件商標権者は、請求に係る役務に含まれる「土地の情報の提供」に関する広告又は取引書類を内容とする情報に本件商標と社会通念上同一と認められる使用商標を付したものを、要証期間内である平成31年4月1日に電磁的方法により提供したと認めることができる。 そして、この行為は、商標法第2条第3項第8号にいう「役務に関する広告・・・若しくは取引書類・・・を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」に該当する。 3 請求人の主張について 請求人は、被請求人の主張に係る役務は、日本国内において提供するためには資格等の条件を備える必要がある役務であるところ、外国法人である同人がそれら条件を備えていないから、その使用行為は前提を欠く行為である旨を述べた上で、「建物又は土地の情報の提供」を被請求人が行ったものと仮に把握したとしても、商標法において「役務」が「他人のためにする労務又は便益であって独立して商取引の目的たりうべきもの」と解されている以上、「建物又は土地の情報の提供」は独立して商取引の目的たりえないことは明らかであり、被請求人の行為は、商標法上の使用行為に該当するものとはいえない旨主張する。 しかしながら、被請求人の主張に係る役務のうち、少なくとも「建物又は土地の情報の提供」については、被請求人が日本国内で提供することができない役務であるというに足る証左は見いだせない。そして、一般に「建物又は土地の情報の提供」は独立して商取引の目的たりえるものであるところ、これを被請求人が行ったものと把握した場合に、独立して商取引の目的たりえないというべき事情は見いだせず、また、当該役務が独立して商取引の目的たりえることに疑義が生じるというべき合理的理由や証左も見いだせない。なお、請求人は上記の「建物又は土地の情報の提供」は独立して商取引の目的たりえないことについて主張するのみであって、その具体的な理由及び根拠を立証していない。 加えて、請求人は、過去の審決例を挙げ、本件も当該審決例と同様に判断されるべきである旨も主張しているが、本件に関しては、上記のとおり、少なくとも「建物又は土地の情報の提供」については日本国内での役務の提供ができないものということはできず、前記認定のとおり、被請求人によって日本国内において土地の情報の提供を伴った行為が行われたものというのが相当であるから、当該審決例とは事案を異にするものである。 したがって、請求人の上記主張は採用することができない。 4 まとめ 以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者が、本件審判の請求に係る指定役務に含まれる役務について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用をしていることを証明したということができる。 したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2021-06-04 |
結審通知日 | 2021-06-11 |
審決日 | 2021-07-01 |
出願番号 | 商願2016-40967(T2016-40967) |
審決分類 |
T
1
32・
1-
Y
(W36)
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最終処分 | 不成立 |
特許庁審判長 |
齋藤 貴博 |
特許庁審判官 |
板谷 玲子 小田 昌子 |
登録日 | 2017-03-24 |
登録番号 | 商標登録第5934834号(T5934834) |
商標の称呼 | ロゴス |
代理人 | 飯田 遥 |
代理人 | 稲葉 良幸 |
代理人 | 田中 克郎 |
代理人 | 中山 俊彦 |
代理人 | 佐藤 俊司 |