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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W03
審判 全部申立て  登録を維持 W03
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審判 全部申立て  登録を維持 W03
審判 全部申立て  登録を維持 W03
審判 全部申立て  登録を維持 W03
管理番号 1376997 
異議申立番号 異議2021-900015 
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2021-09-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-01-12 
確定日 2021-08-13 
異議申立件数
事件の表示 登録第6318183号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6318183号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6318183号商標(以下「本件商標」という。)は、「ccerurupro」の文字を標準文字で表してなり、令和元年11月11日に登録出願、第3類「化粧品,せっけん類,歯磨き,香料,薫料」を指定商品として、同2年10月16日に登録査定、同年11月18日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において引用する商標は、次のとおりである(以下、これらをまとめていうときは、「引用商標」という。)。
ア 登録第5919036号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成28年8月10日登録出願、第3類「化粧品,せっけん類,歯磨き,香料,薫料」及び第5類「サプリメント,食餌療法用飲料,食餌療法用食品」を指定商品として、同29年2月3日に設定登録されたものであり、現に有効に存続しているものである。
イ 別掲2のとおりの構成からなる商標(以下「引用商標2」という。)は、申立人が化粧品について使用し、日本及び中国において、需要者・取引者の間に広く知られていると主張するものである。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第56号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)申立人について
申立人は、2016年2月18日に設立された法人で(甲4)、主に化粧品の製造・販売を行っており、2016年9月6日から、引用商標を使用したブランドで、「化粧品」を製造・販売している(甲5)。
(2)引用商標について
引用商標は、辞書等に掲載されている既成の単語ではなく、申立人が独自に考案した造語であり、その称呼は、単に「セルル」と発音する(甲6)。
現在、引用商標に係る化粧品(以下「申立人商品」という。)は、例えば、申立人が運営するネットショップ(甲6)、生活雑貨の専門店やドラッグストアなど全国265か所の店舗(甲7)、皮膚科などの美容クリニック(甲8)、ECサイトなど(甲9)で購入することができる。また申立人商品は、中国においても販売されており、中国のネットショップなどで購入することができる(甲10)。
引用商標について、インターネット検索エンジンで検索すると、その検索結果の全て(悪質な模倣品を除く。)が申立人商品である。またその称呼である「セルル」で検索した場合、申立人商品が上位を占めている(甲11)。
申立人商品の売上総数は、2016年9月6日の販売当初より2021年1月13日に至るまで約100万個であり、売上高は約10億円である(甲12)。販売開始から4年余りの短期間で、ここまでの売上数に至ったのは、申立人が申立人商品の宣伝広告に力を入れているからである。
申立人が2016年2月1日から2021年1月12日までに費やした宣伝広告費は、約1億2千万円にも及ぶ(甲13)。また申立人商品は、販売当初から多数の雑誌・ネット記事などに取り上げられるなど注目を集めている(甲14?甲17)。
また、申立人は、2019年及び2020年と2年連続で、中国最大の映画授賞式である「中国金鶏百花映画祭」のスポンサーになるなど、中国においても宣伝広告に力を入れている(甲18)。「CNR(中央人民広播電台)」など様々な媒体に取り上げられ(甲19)、日本製の高品質な化粧品ということで人気を博している。
このような積極的な宣伝活動の成果及び品質の優秀性により、引用商標は、申立人商品を示すものとして、日本国内及び中国において注目される人気商品となり、需要者、取引者の間に広く認識されているものである。
(3)引用商標2について
申立人商品のパッケージには、引用商標2のとおりの「ceruru.b」の左に「c」のロゴが置かれており、アルファベットの並びが「ccerurupro」(決定注:「ccerurub」の誤記と認められる。)である商標が付されている(甲20)。引用商標2は、全ての申立人商品に付されており、これに接した需要者、取引者は、難なく申立人商品であることを認識する。
(4)悪質な模倣品について
上述のとおり、申立人商品は、日本国内及び中国において、需要者、取引者に広く認識されている。そのため、近年、申立人商品の悪質な模倣品が後を絶たない。これに対して申立人は、ホームページ上で注意喚起している(甲21)。
また悪質な模倣品の一つに、本件商標と同一の商標名である「ccerurupro」というフェイスマスクの商品がある(甲22)。これは申立人商品のパッケージのデットコピーといえるものであって、両商品を比較すると、語頭にあるロゴの「c」、その後に続く「ceruru.」の書体、パッケージの構成、色、デザイン、商品説明がほぼ同一であり、「b」と「pro」の違い以外は、ほぼ同一である。この点、「b」や「pro」は、その品質グレードを表示する言葉として認識され得るものであり、ブランド名の後ろにグレードを記載することは一般的によく見られるものである(甲24?甲27)。該模倣品は、引用商標の構成中の「b」の部分に対して「pro」となっており、申立人商品の上位互換(ハイグレード商品、プロ仕様の商品)であると誤認させるおそれがある。
申立人商品は、美容皮膚科医監修のもと製造され、その品質の高さ、安全性が認められているからこそ、皮膚科などのクリニックでも販売されている。しかしながら「ccerurupro」の名称の商品は、日本製と記載されているが、申立人の調査によると日本での認可を取得していない(甲28)。このような粗悪な模倣品が、あたかも申立人商品のハイグレード商品であるかのごとく市場に出回ることは、申立人の引用商標に係るブランドの信用を毀損させる可能性がある。
申立人は、該模倣品の販売元である会社宛に「警告書」を送るなどの対応をしており(甲29)、神奈川県誓にも相談しているが、会社住所には該会社は存在しておらず、「警告書」も戻ってきている。
さらに、中国においては、ネット上で「ceruru.pro」という商標を付した商品が販売されている(甲30)。申立人商品は、化粧品など人の肌や人体に影響を与える商品であり、悪質で粗悪な模倣品が出回ることにより、申立人の引用商標に化体した信用が害され、これまで申立人が費やしてきた宣伝活動や費用が水の泡になってしまう可能性がある。
(5)悪意のある出願・登録について
ア 中国において
申立人は、中国において、引用商標に関する商標登録を10件行っている(甲31)。一方、他者による引用商標に関連する悪意ある商標出願・登録が後を絶たず、2021年1月26日時点で50件以上あり、本件商標と同一の商標である「ccerurupro」の出願・登録もある(甲32)。これらの権利者は、日本語の片仮名での「セルル」も登録しており、明らかに申立人の引用商標を意識し、模倣しているものと考えられる(甲32)。申立人は、これらの悪質な登録について異議申立をして対応している(甲33?甲54)。
イ 日本において
申立人は、日本において、引用商標に関する商標出願・登録を6件行っている(甲55)。しかし、模倣品の商標名である本件商標及び「ceruru.pro(商標登録第6318181号)」が商標登録されてしまい(同一権利者)、その商標登録について異議を申し立てる所存である。
(6)商標法第4条第1項第7号について
引用商標は、申立人の商標として需要者、取引者の間に広く認識されているところ、本件商標は、引用商標2を意図的に模倣したものである。両商標を比較すると、語頭の7文字「cceruru」が共通しており、また「ceruru」が申立人の造語であることを考えても、偶然の一致とは考えられない。本件商標は、引用商標2のうち極めて識別力が低い部分である「b」を除いた「cceruru」をそのまま使用して「b」を「pro」に変えたにすぎない。
本件商標の権利者は、本件商標の出願と同日に「ceruru.pro(登録第6318181号)」についても出願しているところ、該商標に係る書体は、引用商標2の書体と完全に一致する(甲23)。特に珍しい「r」の書体が完全に一致しており、「ceruru」の後に「.」を置くという特徴的な構成までもが同じというのは、偶然の一致とは考えられず、明らかに、引用商標を模倣したものである。
このような悪意ある登録「ceruru.pro(登録第6318181号)」の権利者は、該商標から「.」を削除し、語頭に「c」をつけた本件商標を登録している。この語頭の「c」は、引用商標2の語頭にある「c」のロゴであることは明らかである(甲23)。本件商標は、悪質かつ巧妙なものであり、本件商標のような商標は、中国においても申立人の業務を妨害する目的で出願、登録されている。
これまで申立人は、引用商標について日本国内及び中国において、重畳的かつ複合的に商標出願・登録しており(甲31、甲55)、そのブランド価値を高めるよう努めてきた。これに対して本件商標の権利者は、引用商標に化体した信用・名声及び顧客吸引力にただ乗りする不正な目的で本件商標を採択・出願し登録を受けたものであることは明らかであり、公序良俗違反となる商標である。また、商標法の法目的を阻害し、公正な取引秩序を乱し、社会の一般的道徳観念に反するものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
(7)商標法第4条第1項第10号について
引用商標2は、申立人商品を表示するものとして需要者、取引者の間に広く認識されているところ、本件商標と引用商標2は類似する。
両商標を比較すると、引用商標2の称呼が「シーセルルビー」の5音であるのに対して本件商標は「シーセルルプロ」の6音であり、語頭の称呼「シーセルル」が一致している。比較的短い称呼のうち、はっきりと発音される語頭の「4音」が一致しており、両商標の称呼は、非常に紛らわしい。外観上は、「c」の後に「ceruru」があるという文字列が一致しており、語頭の「cceruru」の共通点が強く印象に残るものであり、非常に紛らわしい。観念においても、引用商標2は申立人の商標として需要者、取引者の間に広く認識されているところ、「ceruru」は申立人の造語であり「申立人のセルル」以外の意味を持たないことから、該語を語頭におく本件商標からも、「申立人のセルル」との観念を生じ、相紛らわしい。よって、本件商標と引用商標2は、類似する相紛らわしい商標である。また本件商標の指定商品と引用商標2の使用に係る商品は、同一又は類似である。
申立人は、申立人商品の宣伝広告に多大な費用・労力を費やしており、その結果、引用商標は申立人の商標として需要者、取引者の間に広く知られており、該商標に信用が化体している。また、申立人商品を購入する需要者も、その品質の良さを信頼して商品を購入している。それにも関わらず、あえて「セルル」のバージョンアップ商品であるかのように誤認させる本件商標の登録は、商品の出所混同が生ずるばかりでなく、これまで蓄積した引用商標のイメージが害され、さらには申立人の信用を毀損させる可能性がある。そうなると申立人が、これまで費やした宣伝広告等の努力、費用が無駄になってしまう可能性もあり、長年かけて蓄積してきた引用商標に化体した信用が害されるばかりでなく、商品を購入した需要者にとっても相当な不利益を生じさせることになりかねない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。
(8)商標法第4条第1項第15号について
本件商標は引用商標との関係において商標法第4条第1項第7号、同項第10号及び同項第11号に違反して登録されたと確信する。
仮に、そうでない場合であっても、申立人の商標として知られている引用商標の構成中、強い識別力を有する部分である「cceruru」を使用している本件商標は、需要者、取引者をして、申立人に係る商品であるか、又は申立人と経済的・組織的に何らかの関連を有するものの提供に係る商品であると、その出所について誤認混同を招くことは明らかである。両商標は、「b」と「pro」の違いのみで、あたかもバージョンアップ商品であるかのように需要者を混同させるものである。
したがって、仮に、本件商標が、商標法第4条第1項第10号及び同項第11号に該当しないとした場合であっても、本件商標は同項15号に該当する。
(9)商標法第4条第1項第19号について
本件商標は、申立人の商標として日本国内及び中国における需要者の間に広く認識されている引用商標と類似しており、申立人に不利益を及ぼし損害を加えるという不正の目的をもつて出願されたものである。
本件商標は、これまで申立人が培ってきた引用商標1に化体した「セルル」ブランドの信用にフリーライドするものであり、またその信用を希釈化するものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
(10)商標法第4条第1項第11号について
引用商標1は、申立人の商標として需要者、取引者の間に広く認識されているところ、実際に「セルル」と称呼される「Ceruru」の部分は申立人の造語であり、強い識別力を有するものである。
この点、本件商標は、申立人の造語である「ceruru」を含んでおり、両商標は外観上、「ceruru」の共通部分が強く脳裏に刻まれるものであり、相紛らわしい類似商標と認識されるものである。
また観念においても、「ceruru」は申立人の造語であり、「申立人のセルル」以外の意味を持たないため、本件商標からも「申立人のセルル」との観念を生じ、相紛らわしいものである。
よって両商標は互いに相紛らわしい商標であり、かつ、本件商標の指定商品と引用商標1の指定商品は同一であることから、本件商標は引用商標1が存在するにも関わらず登録されたものである。
したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。

4 当審の判断
(1)引用商標の周知性について
申立人は、引用商標は、申立人商品を表示するものとして、我が国又は中国の需要者の間に広く認識されている商標である旨主張するところ、申立人提出の甲各号証によれば、申立人の使用に係る商標は、引用商標2であることから、まず引用商標2の周知性について検討し、その上で、引用商標1の周知性についても検討する。
ア 引用商標2の周知性について
申立人の提出に係る証拠及び主張によれば、以下のとおりである。
(ア)申立人は、化粧品の製造及び販売を主な業務として、2016年2月に設立された法人であって(甲4)、2016年10月から、引用商標2を包装に付したスキンケア化粧品(以下「使用商品」という。)の販売を開始した(甲6、甲21)。現在、使用商品は、申立人の運営するオンラインショップにおいて販売されている(甲6)。なお、使用商品が、全国の雑貨店やドラッグストア等で販売されていることはうかがえるが、具体的な取引状況を確認することはできない(甲7)。また、使用商品が、我が国及び中国のECサイトにおいて販売されていることはうかがえるものの、使用商品に係るECサイトへの出品者と申立人との関係は不明であり、その掲載日も明らかでない(甲9、甲10)。
(イ)申立人は、使用商品の販売を開始した2016年ないし2021年1月13日の売上について、累計売上数は約100万個であり、累計売上金額は約10億円であると主張している(甲12)。
しかしながら、上記内容が事実であることを裏付ける客観的な資料の提出はなく、市場占有率(販売シェア)等の量的規模を示す証拠も見いだせないことに加え、申立人は、中国においても使用商品の販売を行っているとするところ、上述の売上数等に関する日本及び中国の内訳は明らかでないことから、提出された証拠によっては、使用商品の我が国又は中国における販売実績を、客観的な使用事実に基づいて把握することができない。
(ウ)申立人による広告費は、平成28年(2016年)2月1日から令和3年(2021年)1月12日までの累計で約1億2千万円と主張している(甲13)。
そして、申立人は、「家庭画報 Beauty&Wellness」(2018年春号、甲16)、「ar」(2018年9月号、甲15)、「美ST」(掲載日不明、甲14)のほか、業界専門誌「エステティック通信」等(甲17)に、使用商品に係る広告掲載を行ったことがうかがえるが、大半の広告ページについては、掲載雑誌名及び発行年月を確認することができる証左は何ら提出されていない。
また、申立人は、2018年5月に東京ビッグサイトで開催された見本市に出展したことがうかがえるものの、出展ブースへの来場者数等は明らかでない(甲17)。
さらに、「UpPLUSonline」のウェブサイトにおいて、2020年11月20日付けで、使用商品の特集記事が掲載された他にも、いくつかのウェブサイトにおいて使用商品に関する記事が掲載されたことがうかがえるものの、これらは、本件商標の登録査定日以降のものである(甲17)。
そして、中国においても、使用商品に関する記事がウェブサイトに掲載されたことがうかがえるものの、本件商標の登録査定前の記事は3件ほどである(甲19)。
(エ)申立人は、2020年11月25日ないし同月28日に、中国において開催された「中国金鶏百花映画祭」の公式スポンサーとして、使用商品を提供したことがうかがえるが、該映画祭は、本件商標の登録査定日以降に行われたものである(甲17、甲18)。
その他、使用商品の我が国又は中国における宣伝広告の回数や方法等、周知性を数量的に判断し得る客観的かつ具体的な証拠は提出されていない。
(オ)上記(ア)ないし(エ)のとおり、申立人は、2016年から使用商品の販売を開始し、現在も販売していること、少なくとも2018年には雑誌に広告を掲載したことなどは認められるが、申立人提出の上記証拠によっては、使用商品に係る販売実績及び広告宣伝活動を客観的に把握することができず、引用商標2の周知性の程度を推し量ることができない。
その他、申立人の提出に係る甲各号証を総合してみても、引用商標2が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国又は中国の需要者の間で、申立人の業務に係る商品を表示するものとして広く認識されていたと認めるに足る事実は見いだせない。
以上を踏まえると、申立人提出の証拠によっては、引用商標2が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国又は中国を含む外国の需要者の間に広く認識されていたと認めることはできない。
イ 引用商標1の周知性について
引用商標1は、引用商標2の語頭に配されたロゴマーク(図形部分)がなく、引用商標2と書体が異なるものの、同じつづりからなるものであるから、引用商標1が使用商品を表示するものとして使用されているとしても、引用商標2と同様に、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国及び外国の需要者に広く認識されていたと認めることはできない。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標
本件商標は、前記1のとおり、「ccerurupro」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成文字は、同じ書体、同じ大きさ及び同間隔をもって表され、視覚上、まとまりある一体的なものとして看取される外観を有しており、その構成全体から生じる「シーセルルプロ」の称呼も、よどみなく一連に称呼し得るものである。
そして、該文字は、辞典類に載録されている既成の語ではなく、特定の意味合いを想起させる語として知られているものともいえないことからすれば、特定の観念を生じない造語として看取、把握されるといえる。
そうすると、本件商標は、その構成全体に相応して、「シーセルルプロ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
イ 引用商標1
引用商標1は、別掲1のとおり、「Ceruru.b」の文字を横書きしてなるところ、その構成文字は、同じ書体、同じ大きさ及び同間隔をもって表され、視覚上、まとまりある一体的なものとして看取される外観を有しており、その構成全体から生じる「セルルビー」の称呼も、よどみなく一連に称呼し得るものである。
そして、該文字は、辞典類に載録されている既成の語ではなく、特定の意味合いを想起させる語として知られているものともいえないことからすれば、特定の観念を生じない造語として看取、把握されるといえる。
そうすると、引用商標1は、その構成全体に相応して、「セルルビー」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
ウ 本件商標と引用商標1との類否
本件商標と引用商標1とは、それぞれ、上記ア及びイのとおりの構成からなり、書体及び構成文字の相違のほか、語頭の「c」の小文字と「C」の大文字及び「.(ピリオド)」の有無といった差異を有することからすれば、両商標は、外観上、明確に区別し得るものである。
また、本件商標から生じる「シーセルルプロ」の称呼と引用商標1から生じる「セルルビー」の称呼とは、語頭の「シー」の有無及び語尾の「プロ」と「ビー」の差異を有することからすれば、両商標は、称呼上、明確に区別し得るものである。
さらに、観念においては、本件商標と引用商標1は、いずれも観念を生じないものであるから、比較することができない。
したがって、本件商標と引用商標1とは、観念においては比較することができないとしても、その外観及び称呼において相紛れるおそれはないから、非類似の商標というべきである。
なお、申立人は、本件商標と引用商標1とは、両商標から構成中の「c(C)eruru」の文字部分を抽出し、「セルル」の称呼を生じること及び引用商標1が我が国の需要者の間に広く認識されているとして、共に「申立人のセルル」との観念を生じ、さらに本件商標の構成全体から「申立人のセルルのバージョンアップ商品」の観念が生じるから、本件商標と引用商標1とは称呼及び観念において同一又は類似であると主張している。
しかしながら、本件商標及び引用商標1は、上記ア及びイのとおり、まとまりある一体的なものとして認識、把握されるものであり、「c(C)eruru」の文字部分からのみ称呼が生じ、本件商標の語頭の「c」の文字部分並びに両商標の語尾の「pro」及び「.b」の文字部分からは称呼が生じないとすべき理由は見当たらないことに加えて、上記(1)イのとおり、引用商標1は、我が国の需要者の間に広く認識されていたと認めることはできないから、両商標から「セルル」の称呼、及び「申立人のセルル」との観念を生じるとはいえず、申立人の主張を採用することはできない。
エ 小括
以上のとおり、本件商標と引用商標1とは非類似の商標であるから、本件商標の指定商品と引用商標1の指定商品が同一又は類似するものであるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第10号該当性について
上記(1)アのとおり、引用商標2は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたと認められないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号所定の他の要件を判断するまでもなく、同号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 上記(1)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたと認められないものである。
イ 上記(2)のとおり、本件商標と引用商標1とは非類似の商標である。
また、本件商標は上記(2)アのとおり「シーセルルプロ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
これに対して、引用商標2は、別掲2のとおり、円輪郭(該輪郭上には4つの小円が配されている。)の内側に「C」と思しき図形を表し、その右横に、ややデザイン化された「ceruru.b」の文字を横書きしてなる(なお、いずれもピンク色で表されている。)結合商標と認められる。
そして、引用商標2の構成中の図形部分は、我が国において特定の事物を表したもの、又は何らかの意味合いを表すものとして認識され、親しまれているというべき事情は認められないことから、特定の称呼及び観念は生じない。
したがって、引用商標2は、書体が相違するものの引用商標1と同じつづりからなる文字部分から、「セルルビー」の称呼を生じるところ、当該文字部分も上記(2)イと同様に特定の観念は生じないから、構成全体を見ても、特定の観念を生じない。
そうすると、本件商標と引用商標2とは、観念は比較することができないとしても、その外観においては図形の有無等の顕著な相違があり、称呼においても上記(2)ウのとおり、相紛れるおそれはない。また、本件商標と、引用商標2の図形部分又は文字部分との比較においても、相紛れるおそれはないから、本件商標と引用商標2とは、非類似の商標というべきである。
ウ 上記ア及びイよりすれば、本件商標の指定商品並びに引用商標1の指定商品及び引用商標2の使用に係る商品は、いずれも化粧品であり、その需要者、取引者において共通性があるものの、本件商標は、これを本件商標権者がその指定商品に使用しても、需要者、取引者が引用商標を想起して、その商品が申立人又は同人と親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品等であると、その商品の出所について混同を生じるおそれもないというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(5)商標法第4条第1項第19号該当性について
本件商標と引用商標とは、上記(4)イのとおり、非類似の商標であり、また、上記(1)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国又は外国の需要者の間に広く認識されていたと認められないものであることから、引用商標が需要者の間に広く認識されていた商標であることを前提に、本件商標は不正の目的をもって使用するものであるとする申立人の主張は、その前提を欠くものである。
また、申立人が提出した証拠からは、本件商標権者が、不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的、その他の不正の目的をもって本件商標を出願し、登録を受けたと認めるに足る具体的事実を見いだすこともできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
(6)商標法第4条第1項第7号該当性について
申立人は、申立人商品が我が国及び中国において周知であることを前提に、明らかに引用商標を模倣した本件商標と同一名称の粗悪な模倣品が流通することは、申立人の引用商標に係るブランドの信用を毀損させる可能性がある旨、また、本件商標権者は、引用商標に化体した信用、名声及び顧客吸引力にただ乗りする不正な目的で本件商標を採択、出願し登録を受けたものであることは明らかであり、公の秩序及び善良の風俗を害するものである旨主張する。
しかし、上記(1)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたと認められないものである。
そして、申立人提出の証拠からは、本件商標を包装に付したスキンケア化粧品が存在することはうかがえる(甲22)ものの、該商品の製造販売者と本件商標権者とのつながりは明らかでなく、その他、本件商標権者が本件商標を不正の目的をもって使用し、引用商標が持つ顧客吸引力等にただ乗りしようとする等の事実や本件商標をその指定商品について使用することが、公正な取引秩序を乱し国際信義に反するものとすべき事情も見当たらない。
さらに、本件商標は、前記1のとおりの構成からなるものであって、それ自体何らきょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるものでなく、また、本件商標をその指定商品について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するものとすべき事由もないことに加え、他の法律によってその使用が禁止されているものとも認められない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
(7)まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも該当するものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
別掲1(引用商標1)


別掲2(甲第3号証に掲載の引用商標2。色彩は甲第3号証を参照のこと。)



異議決定日 2021-08-03 
出願番号 商願2019-143170(T2019-143170) 
審決分類 T 1 651・ 261- Y (W03)
T 1 651・ 263- Y (W03)
T 1 651・ 222- Y (W03)
T 1 651・ 25- Y (W03)
T 1 651・ 22- Y (W03)
T 1 651・ 262- Y (W03)
T 1 651・ 271- Y (W03)
最終処分 維持  
前審関与審査官 日向野 浩志 
特許庁審判長 佐藤 松江
特許庁審判官 大森 友子
石塚 利恵
登録日 2020-11-18 
登録番号 商標登録第6318183号(T6318183) 
権利者 株式会社ゼンシン
商標の称呼 シイセルルプロ、セルルプロ 
代理人 富樫 竜一 
代理人 松尾 憲一郎 
代理人 市川 泰央 

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