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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W30 審判 全部申立て 登録を維持 W30 審判 全部申立て 登録を維持 W30 審判 全部申立て 登録を維持 W30 |
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管理番号 | 1376975 |
異議申立番号 | 異議2020-900257 |
総通号数 | 261 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2021-09-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2020-10-05 |
確定日 | 2021-07-26 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6283707号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6283707号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第6283707号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおりの構成からなり,平成31年2月5日に登録出願,第30類「カップ入りの即席中華そばのめん,中華そばのめん,穀物の加工品,調味料,香辛料,ぎょうざ,しゅうまい,すし,たこ焼き,弁当,ラビオリ,菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,茶,コーヒー,ココア,氷,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,コーヒー豆,チョコレートスプレッド,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,即席菓子のもと,パスタソース,食用酒かす,米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用グルテン,食用粉類」を指定商品として,令和2年7月28日に登録査定され,同年8月25日に設定登録されたものである。 2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は次のとおりであり(以下,これらをまとめて「引用商標」という。),これらの指定商品及び指定役務並びに登録出願日及び設定登録日はそれぞれの商標登録原簿に記載のとおりである。また,引用商標の商標権はいずれも現に有効に存続しているものである。 (1)本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する商標(以下,これらをまとめて「11号引用商標」という。) ・商標登録第401453号(以下「引用商標1」という。) 商標の態様 別掲2のとおり ・商標登録第1149884号(以下「引用商標2」という。) 商標の態様 別掲3のとおり ・商標登録第1535559号(以下「引用商標3」という。) 商標の態様 別掲4のとおり ・商標登録第1558517号(以下「引用商標4」という。) 商標の態様 TAKARA ・商標登録第1558518号(以下「引用商標5」という。) 商標の態様 別掲5のとおり ・商標登録第1648395号(以下「引用商標6」という。) 商標の態様 宝 ・商標登録第1648396号(以下「引用商標7」という。) 商標の態様 タカラ ・商標登録第1648397号(以下「引用商標8」という。) 商標の態様 TAKARA ・商標登録第2066598号(以下「引用商標9」という。) 商標の態様 「タカラ」と「宝」の文字を二段に横書きしてなるもの ・商標登録第2164234号(以下「引用商標10」という。) 商標の態様 別掲6のとおり ・商標登録第2312832号(以下「引用商標11」という。) 商標の態様 宝 ・商標登録第2312833号(以下「引用商標12」という。) 商標の態様 別掲7のとおり ・商標登録第2312834号(以下「引用商標13」という。) 商標の態様 TAKARA ・商標登録第2430759号(以下「引用商標14」という。) 商標の態様 TAKARA ・商標登録第2430761号(以下「引用商標15」という。) 商標の態様 宝 ・商標登録第2491034号(以下「引用商標16」という。) 商標の態様 タカラ ・商標登録第2566324号(以下「引用商標17」という。) 商標の態様 別掲8のとおり ・商標登録第4066233号(以下「引用商標18」という。) 商標の態様 別掲9のとおり ・商標登録第4278682号(以下「引用商標19」という。) 商標の態様 別掲6のとおり ・商標登録第4643150号(以下「引用商標20」という。) 商標の態様 「タカラ」と「宝」の文字を二段に横書きしてなるもの ・商標登録第5229915号(以下「引用商標21」という。) 商標の態様 TaKaRa(標準文字) ・商標登録第5229916号(以下「引用商標22」という。) 商標の態様 宝(標準文字) ・商標登録第5229917号(以下「引用商標23」という。) 商標の態様 タカラ(標準文字) ・商標登録第5790570号(以下「引用商標24」という。) 商標の態様 宝 ・商標登録第5896399号(以下「引用商標25」という。) 商標の態様 別掲10のとおり ・商標登録第5938244号(以下「引用商標26」という。) 商標の態様 別掲10のとおり ・商標登録第6084711号(以下「引用商標27」という。) 商標の態様 宝(標準文字) ・商標登録第120188号(以下「引用商標28」という。) 商標の態様 別掲11のとおり ・商標登録第120189号(以下「引用商標29」という。) 商標の態様 別掲12のとおり ・商標登録第384418号(以下「引用商標30」という。) 商標の態様 別掲13のとおり ・商標登録第802099号(以下「引用商標31」という。) 商標の態様 TAKARA ・商標登録第2722885号(以下「引用商標32」という。) 商標の態様 別掲14のとおり ・商標登録第4508344号(以下「引用商標33」という。) 商標の態様 「たから」と「宝」の文字を二段に横書きしてなるもの (2)本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するとして引用する商標(以下,これらをまとめて「15号引用商標」という。) ・商標登録第57800号(以下「引用商標34」という。) 商標の態様 別掲15のとおり ・商標登録第85292号(以下「引用商標35」という。) 商標の態様 別掲16のとおり ・商標登録第462127号(以下「引用商標36」という。) 商標の態様 タカラ(縦書き) ・商標登録第980690号(以下「引用商標37」という。) 商標の態様 別掲17のとおり 第30類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品について防護標章登録されている。 ・商標登録第1610421号(以下「引用商標38」という。) 商標の態様 宝 ・商標登録第3129606号(以下「引用商標39」という。) 商標の態様 別掲9のとおり ・商標登録第4348726号(以下「引用商標40」という。) 商標の態様 別掲7のとおり ・商標登録第5896400号(以下「引用商標41」という。) 商標の態様 別掲10のとおり 3 登録異議の申立ての理由 申立人は,本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当し,商標登録を受けることができないものであるから,その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきものであるとして,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第64号証(枝番号を含む。)を提出した。 (1)商標法第4条第1項第11号について ア 本件商標と11号引用商標の比較 (ア)本件商標は,下部にわずかな隙間を有する三重円状の輪郭内に「宝」の文字を配した構成よりなるところ,輪郭部分は,下部に隙間を有するとしてもほとんど円形を成して表されており,下部を始点・終点とする三重円のごとき単なる輪郭として看取されるものであって,輪郭部分自体は,自他商品識別力を有さず,特定の称呼・観念は生じない。 これに対し,輪郭内部に表された「宝」の文字は,その文字自体に強い識別力を有し,かつ,本件商標の構成にあっては,中央に大きく表され,著しく看者の目をひく。 (イ)そして,当該構成において「宝」の文字部分と輪郭部分を必ず一体不可分のものとして認識しなければならない格別の事情は存しない。 この点について,本件商標はその審査において,拒絶理由通知書により11号引用商標をはじめとする多数の登録商標と類似し商標法第4条第1項第11号に該当するとされたが,出願人(商標権者)は意見書において,「本願商標はそれに接する需要者,取引者に一種ののれん記号を表す商標として容易に認識,把握される」旨主張している。 しかしながら,文字が図形要素とともに表されていれば全て「のれん記号」でないことは自明であり,一般に「のれん記号」とされる記号には,伝統的に使用されているいくつかの類型が存在するのであって,例えば,J-PlatPatの「商標検索 利用上の注意」に示されている(甲62)ような,「イゲタ」,「カク」,「カネ」,「キッコウ」,「マル」等,特定の称呼を生じる記号の類型が,のれん記号を構成する図形要素として一般的に使用されている。 本件商標を構成する,下部にわずかな隙間を有する三重円状の輪郭は,こうした例にないから,本件商標は「のれん記号」に該当するものとはいえない。 (ウ)また,出願人(商標権者)は,同意見書において,「本願商標はそのうちの本件文字部分は『宝』の文字をモチーフとしているものの,『うかんむり』の下に位置する『玉』の部分が,漢数字の『五』と見えるように図案化されたものであり,需要者をして『宝』を表す文字とは直ちに看取し難い」旨主張している。 しかしながら,当該「宝」の文字のうち「玉」における点の部分を,他の部分と接するように縦方向に表す手法は,同様のフォントの例(甲63,甲64)がみられるように,さほど特殊な手法ではなく,この程度のレタリング技法にあっては,「宝」の文字を表したものの域を出ない。 したがって,本件商標の文字部分は,「宝」の文字を表したものと直ちに把握し得るものである。 (エ)以上より,本件商標は,商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与える「宝」の文字と,識別力を有しない輪郭状の図形よりなるものであって,これらは分離観察が取引上不自然であると思われるほど強く結合しているものとは認められないから,最高裁判決(平成19年(行ヒ)第223号)による判断基準に照らしてみても,その構成中「宝」の文字を抽出した分離観察も妥当といえ,また,本件商標に接する取引者・需要者は,単なる円状輪郭の部分を捨象し,顕著に表された「宝」の文字部分に着目して「宝」印の商標と把握して,「宝」の文字より生ずる称呼・観念をもって取引に当たる場合も,決して少なくない。 したがって,本件商標は,「宝」の文字に相応して「タカラ(宝)」の称呼及び観念を生じる。 (オ)他方,11号引用商標は,それぞれ「宝」,「タカラ」,「TAKARA」,「TaKaRa」,「寶」の文字よりなるか,これを要部とする構成よりなるものであるから,当該文字に相応して「タカラ(宝)」の称呼及び観念を生じる。 なお,11号引用商標のうち引用商標1ないし27は,申立人の所有に係る多数の「寶(宝/タカラ)」印と称呼・観念される商標のうちの,代表的な登録商標を挙げたものである。 また,引用商標2,3,5,10,19,25,26及び29を構成する「寶」の文字は,「宝」の旧字体の「寶」がてん書体で表されたものである。 (カ)してみれば,本件商標は,11号引用商標と,「タカラ(宝)」の称呼及び観念と「宝」の文字を共通にし,出所混同のおそれのある類似の商標であるといえ,かつ,その指定商品も,11号引用商標の指定商品・指定役務と抵触するから,商標法第4条第1項第11号に該当する。 イ 過去の審決・異議決定例 (ア)輪郭を有する文字よりなる商標と,これを有しない文字からなる商標は,互いに類似の商標であると判断している審決・異議決定がある(甲56?甲61)。 (イ)本件商標は,自他商品識別力を有しない輪郭と強い識別力を有する「宝」の文字を組み合わせた構成よりなり,これらの審決・異議決定(甲56?甲61)における判断と同様,分離観察による類否判断も許容されるべきものであり,11号引用商標と類似する。 ウ 以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当する。 (2)商標法第4条第1項第15号について 本件商標は,15号引用商標に代表される,周知・著名な申立人の「寶(宝)」,「タカラ」,「TaKaRa」商標と類似し,出所の混同を生じるものである。 なお,15号引用商標は,申立人の所有に係る多数の「寶(宝/タカラ)」印と称呼・観念される商標のうちの,代表的な登録商標を挙げたものである。 ア 15号引用商標の周知・著名性について (ア)申立人は,大正14年(1925年)9月に「寳酒造株式会社」として設立され,以来,我が国屈指の酒類及び調味料・飲料・食料品並びに醗酵・醸造技術に裏付けられたバイオ関連製品の総合メーカーとして成長を遂げ,平成14年(2002年)4月1日付けで,持株会社「宝ホールディングス株式会社」へと移行したものであって,子会社として新たに設立し国内の酒類・調味料事業を担う「宝酒造株式会社」や,海外で日本食材卸事業や酒類事業を展開する「宝酒造インターナショナル株式会社」,バイオ事業を担う「タカラバイオ株式会社」などを傘下に置き,宝グループ全体の経営を統括するものである(甲43?甲47)。 (イ)これらの宝グループの製品にはいずれも,15号引用商標に代表される「寶(宝/タカラ)」印と称呼・観念される,「寶(宝)」,「タカラ」,「TaKaRa」の文字からなる商標,あるいはこれらを要部とする商標が,ハウスマーク及びその業務に係る商品の商標として永年にわたって使用されており,これらの商標は,本件商標の登録出願前には既に,取引者・需要者において広く認識されるに至っていた。 (ウ)例えば,「寶(宝)」商標は,設立以前の前身の個人経営・合名会社の時代から現在に至るまで焼酎及びみりんについて使用されているものであって,著名性を獲得していることは,東京高裁昭和36年(行ナ)第65号判決及びその上告審である最高裁昭和38年(オ)第914号判決によって法律的判断が確立している(甲50,甲51)ところであり,さらにその後の東京高裁昭和55年(行ケ)第234号判決及びその上告審である最高裁昭和56年(行ツ)第141号判決においても確認されている(甲52?甲54)。 そして,これらの判決においては,焼酎・みりんについて,請求人の「寶(宝)」商標の著名性が認められているとともに,食料品及び加味品は,酒類とともに酒類食料品店において販売されていることが多いという顕著な事実があるとして,調味料や生鮮食料品,乾物類,加工食品の所属する,旧々第45類「他類に属せざる食料品及加味品」(または旧々第45類「他類に属しない食料品及び加味品」)の指定商品に使用する場合は,商品の出所について,誤認・混同を生ずるおそれがある旨認定されている。 (エ)また,片仮名の「タカラ」商標も,前記「寶(宝)」商標と並んで,みりん,焼酎,料理用清酒,チューハイ等のソフトアルコール飲料等について長年使用され,著名な商標となっている。 そして,同商標は,第30類「みりん風調味料」及び第30類「醗酵調味料,ウースターソース,ケチャップソース」などの指定商品について,防護標章登録を受けている(甲49の2,3)。 (オ)英文字の「TaKaRa」商標は,チューハイ等のソフトアルコール飲料や,タカラバイオ株式会社の業務に係る大多数の商品について,また,八稜鏡輪郭内に「寶」の文字を表した図形とともに,申立人や宝酒造インターナショナル株式会社,タカラバイオ株式会社等のハウスマークとして使用され,日本国内外に広く知られている。 (カ)八稜鏡輪郭内に「寶」の文字を表した構成よりなる商標は,申立人及び宝グループ各社のハウスマークとして,また,みりんや焼酎・チューハイ等の商品について,大々的に使用されている。 (キ)上記の「寶(宝/タカラ)」印と称呼・観念される「寶(宝)」,「タカラ」,「TaKaRa」商標は,J-PlatPatの「日本国周知・著名商標検索」データ(甲48,甲49の1)や,AIPPI・JAPAN発行「FAMOUS TRADEMARKS IN JAPAN/日本有名商標集」(甲55)にも収録されており,これらの商標が周知・著名なものであることは,特許庁においても顕著な事実として確立していると思料する。 (ク)以上のとおり,申立人の「寶(宝)」,「タカラ」,「TaKaRa」商標は,申立人及びその子会社の宝酒造株式会社をはじめとする宝グループ会社のハウスマークとして,また,その業務に係る商品の商標として,酒類,みりん・料理用清酒等の酒類調味料,加工食品の分野において,本件商標の登録出願前には既に,全国的に周知・著名なものとなっていた。 イ 特許庁の商標審査基準に照らして,本件商標と引用「寶(宝)」,「タカラ」,「TaKaRa」商標の混同のおそれについて検討する。 (ア)まず,「出願商標とその他人の標章との類似性の程度」については,前記のとおり,本件商標と引用「寶(宝)」,「タカラ」,「TaKaRa」商標は,「タカラ(宝)」の称呼及び観念と「宝」の文字を共通にし,類似性の高いものである。 「その他人の標章の周知度」については,前記のとおり,引用「寶(宝)」,「タカラ」,「TaKaRa」商標は,殊に,酒類や,みりん・料理用清酒等の酒類調味料,加工食品の分野において,本件商標の登録出願前には既に,全国的に周知・著名なものとなっていた。 「その他人の標章がハウスマークであるか」については,前記のとおり,引用「寶(宝)」,「タカラ」,「TaKaRa」商標は,申立人及びその子会社の宝酒造株式会社をはじめとする宝グループ会社のハウスマークであって,その業務に係るほとんどの商品について使用されるものである。 「企業における多角経営の可能性」については,殊に食品分野においては,企業の経営多角化により同一事業者によって多岐にわたる分野の商品が製造・販売されることも多く,実際に,申立人のグループ会社の業務範囲も,調味料の他,これまでに清涼飲料やキノコ,健康食品等の食品分野に広く及んで業務を行ってきた実績がある(甲43?甲47)。 「商品間,役務間又は商品と役務間の関連性」,「商品等の需要者の共通性その他取引の実情」については,本件商標の指定商品は,加工食品や調味料等であり,これらは,酒類や酒類調味料と,食品分野の商品である点において共通し,同一店舗・同一取引業者において取り扱われることが多く,需要者も共通にする。 してみれば,本件商標の指定商品は,酒類や酒類調味料と,販売部門・生産部門や用途,需要者・取引者の範囲が一致し,互いに密接な関連性を有する。 この点は,前記の判決・審決(甲50?甲54)においても判示されているとおりである。 また,前記の防護標章登録(甲49の2,3)は,第30類「みりん風調味料」及び第30類「醗酵調味料,ウースターソース,ケチャップソース」などを指定商品とするものであり,これらの商品については,「寶(宝)」,「タカラ」商標の著名性及び出所混同を生ずるおそれがあると認定されているところ,本件商標の指定商品には,これらの商品が含まれている。 これらの考慮事由を総合勘案すると,本件商標が本号に該当することは明らかである。 (イ)本件商標が文字と図形要素との結合商標である点については,審査基準において,「他人の著名な商標と他の文字又は図形等と結合した商標は,その外観構成がまとまりよく一体に表されているもの又は観念上の繋がりがあるものなどを含め,商品等の出所の混同を生ずるおそれがあるものと推認して取り扱うものとする。」とされているとおり,仮に,本件商標が三重円状の輪郭とともに表されているとしても,本号に該当する。 (ウ)さらに,引用「寶(宝)」,「タカラ」,「TaKaRa」商標の著名性については前記のとおり,J-PlatPatの「日本国周知・著名商標検索」及びAIPPI・JAPAN発行「FAMOUS TRADEMARKS IN JAPAN/日本有名商標集」に収録されており,著名商標として取り扱われるべきである。 ウ 以上より,本件商標が,その指定商品について使用された場合,これに接する取引者・需要者は,顕著に表された「宝」の文字部分から,周知・著名な申立人及び申立人グループ会社の「寶(宝/タカラ)」印と称呼・観念される引用「寶(宝)」,「タカラ」,「TaKaRa」商標を直ちに想起して,当該商品があたかも申立人及び申立人グループ会社の業務に係る商品であるかのごとく誤認して取引に当たる蓋然性が極めて高いといえ,商品の出所につき混同を生ずるおそれがある。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。 4 当審の判断 (1)商標法第4条第1項第11号該当性について ア 本件商標 本件商標は,別掲1のとおり,下部にわずかな隙間を有する三重円(以下「略三重円」という。)内に,やや図案化した「宝」の文字を配した構成よりなるところ,その構成中「宝」の文字と略三重円は同色で表されていることに加え,「宝」の文字は略三重円の中央に配されており,外観上まとまりよく一体的に表されているものである。 そして,本件商標の構成中「宝」の文字は,「貴重な品物。」等の意味を有する語(「広辞苑 第七版」株式会社岩波書店)であり,また,略三重円は,我が国において特定の事物を表したもの,又は意味合いを表すものとして認識され,親しまれているというべき事情は認められず,本件商標の指定商品との関係において,これが自他商品の識別機能を発揮し得ないとする特段の事情は見いだせない。 さらに,本件商標の構成中「宝」の文字部分のみが,取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認めるに足りる事情も見いだせない。 してみれば,本件商標は,その構成全体をもって一体不可分のものとして,取引者,需要者に認識されるというのが相当である。 そうすると,本件商標は,その構成中の「宝」の文字から「タカラ」の称呼を生じるものであり,特定の観念を生じないものである。 イ 11号引用商標 11号引用商標は,上記2(1)及び別掲2ないし14のとおりであり,いずれも,それらの構成中「宝」,「TAKARA」,「タカラ」などの文字に相応し「タカラ」の称呼を生じるものである。 また,観念については,一般的な書体で表された「宝」の文字からなるもの及び同文字を含むもの(引用商標1,6,9,11,15,20,22,24,27,33)は,当該文字が「貴重な品物。」等の意味を有する語(前掲書)であることから「貴重な品物。」の観念を生じ,それ以外のものは特定の観念を生じないものである。 ウ 本件商標と11号引用商標との類否 (ア)本件商標と11号引用商標を比較すると,両者の外観は,上記ア及びイのとおりであるから,両者の構成態様の差異により,両者は外観上,判然と区別し得るものである。 また,称呼については,本件商標は上記アのとおり「タカラ」の称呼を生じるものであるから,「タカラ」の称呼を生じる11号引用商標と,称呼を共通にする。 そして,観念については,本件商標は特定の観念を生じないものであるのに対し,11号引用商標は「貴重な品物。」の観念を生じるか,特定の観念を生じないものであるから,両者は相紛れるおそれがないか,比較できないものである。 そうすると,本件商標と11号引用商標とは,「タカラ」の称呼を共通にするものの,観念において相紛れるおそれがないか,比較することができないうえ,外観において判然と区別し得るものであるから,両者の外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すれば,両者は相紛れるおそれのない非類似の商標であって,別異の商標と判断するのが相当である。 (イ)なお,申立人は,過去の審決例を挙げ,本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当する旨を主張しているが,商標の類否の判断は,査定時又は審決時における取引の実情を勘案し,その指定商品及び指定役務の取引者・需要者の認識を基準に比較される商標について個別具体的に判断されるべきものであるから,それらをもって上記判断が左右されるものではない。 したがって,申立人の主張は採用できない。 エ 小括 以上のとおり,本件商標と11号引用商標とは非類似の商標であるから,両商標の指定商品が同一又は類似するとしても,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当しない。 (2)商標法第4条第1項第15号該当性について ア 15号引用商標の周知性について (ア)申立人提出の甲各号証,及び同人の主張によれば,以下のとおりである。 a 申立人は,大正14年(1925年)9月に「寳酒造株式会社」として設立された酒類,調味料,飲料,食料品,バイオ関連製品の総合メーカーであり,平成14年(2002年)4月に持株会社(宝ホールディングス株式会社)に移行したもので,申立人は子会社として「宝酒造株式会社」,「宝酒造インターナショナル株式会社」,「タカラバイオ株式会社」など(以下,申立人とこれらをあわせて「申立人等」という。)を傘下に置いている(甲43?甲47,申立人の主張)。 b 申立人等は,引用商標41を遅くとも1949年頃から「焼酎」に,引用商標40を遅くとも1969年頃から「みりん」に,引用商標39を遅くとも1990年頃から「チューハイ」に,それぞれ使用を開始し現在まで継続して使用している(甲43,甲47)。 c 申立人は,引用商標37について,第30類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として,防護標章登録を受けている(甲49の2,3)。 d 15号引用商標を使用した申立人の業務に係る商品の市場シェア,売上高,販売数及び広告費等については,客観的な証拠の提出がなく不明である。 (イ)以上によれば, 引用商標37は,第30類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品について防護標章登録されており,引用商標39ないし引用商標41は,それぞれ申立人の業務に係る商品「焼酎」,「みりん」又は「チューハイ」を表示するものとしてある程度需要者の間に認識されていることがうかがえるものの,これらの商品の市場シェア,売上高,販売数及び広告費等については,客観的な証拠の提出がなく不明である。 そうすると,提出された証拠によっては,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,引用商標37及び引用商標39ないし引用商標41が,申立人の業務に係る商品を表示するものとして,我が国において需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。 また,引用商標34ないし引用商標36及び引用商標38は,それらが申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていると認めるに足りる証拠は見いだせない。 したがって,15号引用商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,いずれも申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。 (ウ)なお,申立人は過去の審判決例などを挙げて,15号引用商標が周知著名である旨主張しているが,15号引用商標の周知著名性は,本件商標の登録出願時及び登録査定時又は審決時における実情を勘案し,その指定商品の取引者・需要者の認識を基準に比較される商標について個別具体的に判断されるべきものであるから,それらをもって上記(イ)の判断が左右されるものではない。 したがって,申立人の主張は採用できない。 イ 本件商標と15号引用商標との類似の程度 (ア)本件商標 本件商標は,上記(1)アのとおり,その構成中の「宝」の文字から「タカラ」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。 (イ)15号引用商標 15号引用商標は,上記2(2)及び別掲7,9,10,15ないし17のとおりであり, いずれも,それらの構成中「宝」,「TAKARA」,「タカラ」などの文字に相応し「タカラ」の称呼を生じるものである。 また,観念については,上記(1)イと同様に,一般的な書体で表された「宝」の文字からなるもの(引用商標38)は「貴重な品物。」の観念を生じ,それ以外のものは特定の観念を生じないものである。 (ウ)本件商標と15号引用商標との類否 本件商標と15号引用商標を比較すると,両者の外観は,上記(ア)及び(イ)のとおりであるから,両者の構成態様の差異により,両者は外観上,判然と区別し得るものである。 また,称呼については,本件商標は上記(ア)のとおり「タカラ」の称呼を生じるものであるから,「タカラ」の称呼を生じる15号引用商標と,称呼を共通にする。 そして,観念については,本件商標は特定の観念を生じないものであるのに対し,15号引用商標は「貴重な品物。」の観念を生じるか,特定の観念を生じないものであるから,両者は相紛れるおそれがないか,比較できないものである。 そうすると,本件商標と15号引用商標とは,「タカラ」の称呼を共通にするものの,観念において相紛れるおそれがないか,比較することができないうえ,外観において明瞭に区別し得るものであるから,両者の外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すれば,両者は相紛れるおそれのない非類似の商標であって,別異の商標と判断するのが相当である。 ウ 出所の混同のおそれ 上記アのとおり,15号引用商標は,いずれも申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり,また,上記イのとおり,本件商標と15号引用商標とは相紛れるおそれのない非類似の商標であって,別異の商標である。 そうすると,本件商標は,商標権者がこれをその指定商品について使用しても,取引者,需要者をして15号引用商標を連想又は想起させることはなく,その商品が申立人等あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように,その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。 その他,本件商標が出所の混同を生ずるおそれがあるというべき事情は見いだせない。 エ 小括 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。 (3)むすび 以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものとはいえず,他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから,同法第43条の3第4項の規定により,維持すべきである。 よって,結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲1(本件商標) 別掲2(引用商標1) 別掲3(引用商標2) 別掲4(引用商標3) 別掲5(引用商標5) 別掲6(引用商標10,引用商標19) 別掲7(引用商標12,引用商標40) 別掲8(引用商標17) 別掲9(引用商標18,引用商標39) 別掲10(引用商標25,引用商標26,引用商標41) 別掲11(引用商標28) 別掲12(引用商標29) 別掲13(引用商標30) 別掲14(引用商標32) 別掲15(引用商標34) 別掲16(引用商標35) 別掲17(引用商標37) |
異議決定日 | 2021-07-13 |
出願番号 | 商願2019-20976(T2019-20976) |
審決分類 |
T
1
651・
262-
Y
(W30)
T 1 651・ 271- Y (W30) T 1 651・ 261- Y (W30) T 1 651・ 263- Y (W30) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 吉野 晃弘、松浦 裕紀子、斉藤 康平 |
特許庁審判長 |
平澤 芳行 |
特許庁審判官 |
須田 亮一 鈴木 雅也 |
登録日 | 2020-08-25 |
登録番号 | 商標登録第6283707号(T6283707) |
権利者 | サンポー食品株式会社 |
商標の称呼 | タカラ、ホー |
代理人 | 特許業務法人みのり特許事務所 |