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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない W09
管理番号 1376944 
審判番号 取消2020-300160 
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-09-24 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2020-03-03 
確定日 2021-08-02 
事件の表示 上記当事者間の登録第5576883号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5576883号商標(以下「本件商標」という。)は、「翻訳コンニャク」の文字を標準文字で表してなり、平成24年11月20日に登録出願、第9類「電子翻訳機,電子計算機端末による通信を通じてダウンロード可能な電子応用機械器具用コンピュータプログラム,移動体電話による通信を通じてダウンロード可能な移動体電話機用コンピュータプログラム,携帯情報端末装置,携帯情報端末機用プログラム,電子計算機用プログラム,電子計算機及びその周辺機器,電子辞書,ダウンロード可能な家庭用テレビゲーム機用プログラム,家庭用テレビゲーム機用プログラム,携帯用液晶画面ゲーム機用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,インターネットを利用して受信し、及び保存することができる音楽ファイル,携帯用通信機械器具・電話機・携帯情報端末・電子計算機端末装置・カメラその他の写真機械器具・コンピュータプログラムに関する印刷物の文字データ・画像データ等を記録したフロッピーディスク・CD-ROM等の記録媒体,携帯用通信機械器具・電話機・携帯情報端末・電子計算機端末装置・カメラその他の写真機械器具・コンピュータプログラム等の技術に関する印刷物の文字データ・画像データ等を記録したフロッピーディスク・CD-ROM等の記録媒体,インターネットを利用して受信し、及び保存することができる画像ファイル,録画済みDVD・ビデオテープ・ビデオディスク及びCD-ROM,ダウンロード可能な画像(動画・静止画を含む)・音楽・音声、ダウンロード可能な文字データ,ダウンロード可能な電子出版物,電子応用機械器具及びその部品,電気通信機械器具,電子出版物表示用携帯端末」を指定商品として、同25年4月19日に設定登録がされたものであり、その後、本件商標について放棄による商標権の登録の抹消(令和3年3月15日受付)がされたものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、令和2年3月16日である。
また、本件審判の請求の登録前3年以内の期間である平成29年3月16日から令和2年3月15日までの期間を、以下「要証期間」という。
なお、本件商標の商標権は、令和元年10月1日を受付日として特定承継により、「株式会社ジガー」(本件商標権者(被請求人))に移転されている。

第2 請求人の主張
請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の第9類「全指定商品」(以下「本件審判の請求に係る商品」という。)についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する審判事件弁駁書等を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証及び甲第2号証を提出した(審決注:審判請求書に添付して提出した証拠方法「商標登録第5576883号公報」には、甲第1号証の表示はないが、審判請求書において「7.証拠方法」として「甲第1号証 商標登録第5576883号公報」と記載があることから、当該公報を甲第1号証として扱うものとする。)。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用した事実が存在しないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)本件審判に至る経緯
ア 「ほんやくコンニャク」(「ほん訳コンニャク」又は「翻訳コンニャク」とも表記される。)は、漫画・アニメーション「ドラえもん」のひみつ道具として著名である。
イ 本件商標は、2012年(平成24年)11月20日に登録出願され、2013年(平成25年)4月19日に設定登録された。
ウ 被請求人は、本件商標を譲り受けた(表示変更登録申請書2019年(令和元年)10月1日/移転登録済通知書同年11月1日)。
エ 請求人は、「ドラえもん」の著作権者からライセンスを得て、翻訳機ポケトーク専用「ほんやくコンニャク」ケースを2020年(令和2年)1月23日に発売した。
オ 本件商標の商標権者(以下「本件商標権者」という。)は、2020年(令和2年)2月20日付けの内容証明郵便(甲2)で、請求人に対して「ほんやくコンニャク」の使用中止又はライセンス料の支払いを要求してきた。
カ 請求人は、2020年(令和2年)2月26日にウェブサイトで「ほんやくコンニャク」の文字を削除し、同年3月12日に、ケースの正式名称を「コンニャクケース」に変更した。
キ 請求人は、翻訳機ポケトークのドラえもんEdition特別セットの広告で、「21世紀のほんやくコンニャク!?」の文字を使用している。
(2)本件商標権者による本件商標の使用
本件商標権者は、審判事件答弁書において、「被請求人は、Androidスマートフォン/タブレット向けの本件商標を使用したいわゆるアプリを開発し、令和2年2月14日より販売をしている。」と述べている。
(3)駆け込み使用
商標法第50条第3項の規定においては、いわゆる「駆け込み使用」を登録商標の使用から排除している。
本件商標権者は、2020年(令和2年)2月14日にアプリの販売を開始し、同20日に請求人に内容証明郵便を発送しているが、その間、わずかに6日しかない。
また、本件商標権者の住所は東京都渋谷区にあり、内容証明郵便を代理する弁護士の事務所は、遠く離れた愛知県一宮市にある(甲2)。
本件商標権者が、翻訳機ポケトーク専用「ほんやくコンニャク」ケースを知らずに、2020年(令和2年)2月14日に本件商標の使用を開始し、その直後に発見し、直ちに遠方の弁護士に連絡を取り、わずか数日後の同月20日に内容証明郵便を発送したというのは、あまりにも不自然であり、あらかじめ翻訳機ポケトーク専用「ほんやくコンニャク」ケースを知って、請求人への内容証明郵便の送付を企図し、大急ぎで本件商標の使用を開始したものとみられる。
そうであれば、本件商標権者は、請求人が本件審判請求を行うことを、本件商標の使用日には知っていたはずである。
したがって、本件商標権者による本件商標の使用は、「駆け込み使用」に該当するので、本件商標の取り消しは免れない。
(4)駆け込み使用の証明
請求人は、「駆け込み使用」であることを証明するため、令和2年6月17日付けで尋問事項書を提出した。
(5)被請求人の住所相違
被請求人は、令和2年4月13日に「東京都渋谷区松濤・・・」に移転している。令和2年4月30日付けで提出された答弁書には、被請求人の住所(居所)に「東京都渋谷区渋谷・・・」と記載されているが、同月30日には、その住所に「株式会社ジガー」は存在しない。
したがって、答弁書は、被請求人(居所)の記載に不備があり、補正すべき命令の後に却下すべきものである。
3 令和2年12月17日付け及び同3年2月2日付け上申書における主張
本件商標権について、本件商標権者より、譲渡の申出があったことから、審理の猶予を願う。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を審判事件答弁書(以下「答弁書」という。)及び上申書において要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第5号証を提出した。
1 答弁書における主張
本件商標権者は、要証期間に我が国において本件審判の請求に係る商品中「移動体電話による通信を通じてダウンロード可能な移動体電話機用コンピュータプログラム、携帯情報端末機用プログラム、電子応用機械器具及びその部品」について、本件商標を使用している。
本件商標については、2019年(令和元年)10月1日を受付日として、本件商標権者に移転登録されたものである。その後、本件商標権者は、Androidスマートフォン/タブレット向けの本件商標を使用したいわゆるアプリを開発し、同2年2月14日より販売をしている。
このような携帯端末向けのアプリは、上述の「移動体電話による通信を通じてダウンロード可能な移動体電話機用コンピュータプログラム,携帯情報端末機用プログラム」であるし、「電子応用機械器具及びその部品」の概念に含まれることは明らかである。
乙第1号証は、Android端末向けのアプリの販売サイトである「Google playストア」において、「翻訳コンニャク」と有料アプリを検索した場合の画面を出力した書面の写しである。これによると、「翻訳コンニャク」と商標が使用されたアプリが100円の販売価格で提供されていることが分かる。
乙第2号証は、上記「翻訳コンニャク」をクリックすると遷移する頁の出力写しであり、「翻訳コンニャク」アプリの詳細情報が記載された購入頁である。これによると、提供元「JIGGER」は本件商標権者の名称である株式会社ジガーの英語表記であり、開発元の住所が本件商標権者の住所であることから、本件商標権者による使用であることが分かる。また、更新日が「2020年2月14日」となっており、要証期間にすでに販売開始されていることが分かる。
乙第3号証は、乙第2号証のアプリ画面の左端にあるスタート画面を拡大し出力した書面の写しである。このような「Google playストア」でアプリを開発・販売するデベロッパーについては、「Google Play Console」と呼ばれるツールを使って、アプリやアカウントの管理をする。
乙第4号証は、「Google Play Console」におけるアプリに関する情報を表示した際の画面を出力した書面の写しであるが、最終更新日が「2020/02/15」とされており、要証期間にすでに販売開始されていることが確認される。
乙第5号証は、「Google Play Console」におけるデベロッパーのアカウントの詳細に関する情報を表示した際の画面を出力した書面の写しであるが、このデベロッパーが本件商標権者であることが確認される。
これら乙第1号証ないし乙第3号証に係る使用は、商標法第2条第3項第1号、同項第2号及び同項第8号の使用行為に該当する。
したがって、本件商標権者は、要証期間に、本件商標を日本国内で本件審判の請求に係る商品中の「移動体電話による通信を通じてダウンロード可能な移動体電話機用コンピュータプログラム,携帯情報端末機用プログラム,電子応用機械器具及びその部品」に使用していたことは明らかである。
2 令和3年4月26日付け上申書における主張
本件商標権の譲渡交渉は終了し、譲渡しないとの結論に至った。
なお、本件商標権については、令和3年3月12日付けで、放棄による抹消登録申請をしているが、本件審判の取下げに応じる予定はないため審理の進行を希望する。

第4 当審においてした審尋
審判長は、請求人及び被請求人に対し、令和3年4月19日付け審尋で、譲渡交渉の状況について審尋を行った。

第5 当審の判断
1 商標法第54条第2項は、「・・・第50条第1項の審判により商標登録を取り消すべき旨の審決が確定したときは、商標権は、同項の審判の請求の登録の日に消滅したものとみなす」と規定するところ、本件審判の請求の登録の日は、商標登録原簿の記載によれば、令和2年3月16日であるところ、前記第1のとおり、本件商標は、同3年3月15日受付で放棄による商標権の登録の抹消がなされているものである。
そうすると、商標権の放棄による抹消は、登録によりその効力を生じる(商標法第35条で準用する特許法第98条第1項第1号)ものであるから、本件審判の請求の登録日時点において、本件審判の請求は存在しており、このことは、当該登録日より後になされた放棄によって影響されるものではないから、以下のとおり判断する。
2 事実認定
(1)被請求人提出の乙各号証及び同人の主張によれば、以下のとおりである。
ア 乙第1号証は、そのURLから「Google playストア」のウェブサイトを出力した書面であり、出力日の記載はないものの、「Google Play」の表題の下、「検索」、「Androidアプリ」、「有料」の記載があり、その下に、犬のイラストとともに「翻訳コンニャク?」、「JIGGER」及び「¥100」の記載がある。
イ 乙第2号証は、「Google playストア」(乙1)のウェブサイトの「翻訳コンニャク?」の部分をクリックすると遷移するとされる「翻訳コンニャク」の詳細情報が記載された頁であるところ、「翻訳コンニャク?犬のしぐさで伝えたいこと?-Google Playのアプリ」の見出しの下、乙第1号証の犬のイラストとともに「翻訳コンニャク?犬のしぐさで伝えたいこと?」、「JIGGER」の記載があり、その下に上記と同様に犬のイラスト、「翻訳コンニャク」、「?犬のしぐさで伝えたいこと?」及び「TAP TO START」の記載がある。
また、「新機能」の項に「犬のしぐさから犬の気持ちを推し知るアプリにしました。」の記載、「追加情報」の項に「更新日 2020年2月14日」、「サイズ 17M」、「インストール 0+」、「現在のバージョン 1.0」、「Android要件 5.0以上」、「提供元 JIGGER」、「開発元 東京都渋谷区渋谷・・・」の記載がある。
ウ 乙第3号証は、乙第2号証の「TAP TO START」と記載されている部分の画面を拡大したものであり、「利用規約」の記載、「翻訳コンニャク」の記載、「?犬のしぐさで伝えたいこと?」の記載及び「TAP TO START」の記載がある。
(2)上記(1)からすれば、以下のとおりである。
「Google playストア」(以下「本件ウェブサイト」という。:乙2)には、2020年(令和2年)2月14日を更新日とする「翻訳コンニャク?犬のしぐさで伝えたいこと?」(以下「使用商標」という。)と表示された有料のAndroid端末用のアプリ(以下「使用商品」という。)が掲載された。本件使用商品の「提供元」及び「開発元」は「JIGGER」及び「東京都渋谷区渋谷・・・」であり、その住所は上記時期の本件商標権者の住所と一致する。
そうすると、本件商標権者と住所が一致する「JIGGER」の開発に係る本件使用商品は、本件ウェブページにおいて、少なくとも2020年2月14日には広告、販売されていたということができる。
3 判断
(1)使用商標について
本件商標は、上記第1のとおり「翻訳コンニャク」の文字を標準文字で表してなり、使用商標は「翻訳コンニャク?犬のしぐさで伝えたいこと?」であって、本件商標と使用商標を比較すると、「?犬のしぐさで伝えたいこと?」の文字の有無に差異を有するものである。
そして、乙第2号証には「新機能」として「犬のしぐさから犬の気持ちを推し知るアプリにしました。」の記載があることから、使用商標中の「?犬のしぐさで伝えたいこと?」の文字は、そのアプリの内容を表した部分にすぎないといえる。
そうすると、使用商標の要部は「翻訳コンニャク」の文字部分であり、本件商標と使用商標の「翻訳コンニャク」の文字部分とは、文字のつづりを同じくするものであるから、使用商標は、本件商標と社会通念上同一のものと認められる。
(2)使用商標の使用者について
使用商品の「提供元」である「JIGGER」は、その住所が「追加情報」の更新日である2020年(令和2年)2月14日時点において本件商標権者の住所と一致することとからすれば、「JIGGER」が、本件商標権者の名称の英語表記であるという被請求人の主張には不自然なところはないから、使用商標を表示した使用商品の使用者は本件商標権者と認められる。
(3)使用商標の使用商品について
使用商品は、「Androidアプリ」であって、乙第2号証の「追加情報」に「サイズ」、「インストール」、「現在のバージョン」、「Android要件」として、それぞれ「17M」、「0+」、「1.0」及び「5.0以上」と記載されていることからすれば、このウェブサイトで販売されているものは、「アンドロイド用の携帯電話機用アプリ」であることが認められ、この商品は、本件商標の指定商品中「移動体電話による通信を通じてダウンロード可能な移動体電話機用コンピュータプログラム」の範ちゅうに含まれるものである。
(4)使用商標の使用期間について
使用商品が本件ウェブサイトで広告、販売されていた2020年(令和2年)2月14日は、要証期間の日付である。
(5)小括
以上のことから、本件商標権者は、要証期間に本件審判の請求に係る商品中「移動体電話による通信を通じてダウンロード可能な移動体電話機用コンピュータプログラム」に、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付して電磁的方法により提供したものと認められる。
そして、上記行為は、商標法第2条第3項第8号にいう「商品に関する広告に標章を付して電磁的方法により提供する行為」に該当する。
4 請求人の主張について
(1)請求人は、「本件商標権者は、2020年2月14日にアプリの販売を開始し、同月20日に請求人に内容証明郵便を発送しているが、その間、わずかに6日しかなく、また、本件商標権者の住所は東京都渋谷区にあり、内容証明郵便を代理する弁護士の事務所は、遠く離れた愛知県一宮市にある(甲2)。本件商標権者が、翻訳機ポケトーク専用『ほんやくコンニャク』ケースを知らずに、同月14日に本件商標の使用を開始し、その直後に発見し、直ちに遠方の弁護士に連絡を取り、わずか数日後の同月20日に内容証明郵便を発送したというのは、あまりにも不自然であり、あらかじめ翻訳機ポケトーク専用『ほんやくコンニャク』ケースを知って、請求人への内容証明郵便の送付を企図し、大急ぎで本件商標の使用を開始したものとみられ、本件商標権者は、請求人が本件審判請求を行うことを、本件商標の使用日には知っていたはずであるから、本件商標権者による本件商標の使用は、駆け込み使用に該当する」旨を主張するので、以下、この点について検討する。
商標法第50条第3項は「その登録商標の使用がその審判の請求がされることを知った後であることを請求人が証明したとき」と規定しているのであって、審判請求人に対し、審判請求がされるであろうことを被請求人が知っていたことの証明を求めている。同条項のこのような文言に照らすと、『その審判の請求がされることを知った』とは、例えば、当該審判請求を行うことを交渉相手から書面等で通知されるなどの具体的な事実により、当該相手方が審判請求する意思を有していることを知ったか、あるいは、交渉の経緯その他諸々の状況から客観的にみて相手方が審判請求をする蓋然性が高く、かつ、被請求人がこれを認識していると認められる場合などをいうと解すべきであり、被請求人が単に審判請求を受ける一般的、抽象的な可能性を認識していたのみでは足りないというべきである(知財高裁平成18年(行ケ)第10183号、同年11月8日判決参照)。
しかしながら、請求人の提出した証拠からは、本件審判を請求する旨の連絡を本件商標権者にされた事実はなく、また、本件商標の譲渡について実質的な交渉を行った事実もなく、客観的にみて請求人が、審判請求をする蓋然性が高く、かつ、本件商標権者がこれを認識していると認められる証拠の提出はない。
そして、請求人は、本件商標権者が、翻訳機ポケトーク専用「ほんやくコンニャク」ケースを知らずに、令和2年2月14日に本件商標の使用を開始し、その直後に発見し、直ちに遠方の弁護士に連絡を取り、わずか数日後の同月20日に内容証明郵便を発送した旨主張しているが、これらの主張のみでは、客観的にみて請求人が審判請求をする蓋然姓が高く、かつ、本件商標権者がこれを認識していると認められる場合には、該当しない。
したがって、本件商標の使用は、商標法第50条第3項に規定する、いわゆる駆け込み使用に該当するものではない。
(2)請求人は、本件商標権者が本件審判を請求されることを知った後に、駆け込み的に使用商標を使用したと認めるに足りる具体的事実を明らかにする証拠として尋問事項書を提出した。
しかしながら、上記の記載のとおり、客観的にみて請求人が審判請求をする蓋然姓が高く、かつ、本件商標権者がこれを認識していると認められる場合には、該当しないものであり、かつ、請求人の求める尋問事項により、上記の認定を覆すに足りる証言を得られるものとは考え難い。
また、本件商標権者が作成した「ご通知」(甲2)と題する書面の記載内容に疑念があるとは認められないから、本件の審理において、請求人の主張する証人尋問の必要性は認められない。
さらに、審判廷において供述する第三者である証人を証拠方法とする場合は、証人尋問を申し出る書面(証人尋問申出書)と尋問事項書を特許庁等に提出する必要があるが、請求人は、尋問事項書のみを提出しているため、適正な手続を行っていない。
したがって、請求人の主張はいずれも採用することができない。
5 むすび
以上のとおりであるから、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標権者が、本件審判の請求に係る指定商品について、本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)を、使用していたことを証明したということができ、その使用が本件審判の請求がされることを知った後であるとは認められない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条第1項の規定により取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。

別掲
審理終結日 2021-05-31 
結審通知日 2021-06-04 
審決日 2021-06-23 
出願番号 商願2012-94066(T2012-94066) 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (W09)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中島 光 
特許庁審判長 小松 里美
特許庁審判官 榎本 政実
豊田 純一
登録日 2013-04-19 
登録番号 商標登録第5576883号(T5576883) 
商標の称呼 ホンヤクコンニャク、コンニャク 
代理人 木戸 一彦 
代理人 特許業務法人はるか国際特許事務所 
代理人 木戸 良彦 

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