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審決分類 |
審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない W0942 |
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管理番号 | 1376897 |
審判番号 | 取消2020-300595 |
総通号数 | 261 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2021-09-24 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2020-08-27 |
確定日 | 2021-07-28 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第5607609号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5607609号商標(以下「本件商標」という。)は、「エイル」の片仮名を標準文字で表してなり、平成24年11月9日に登録出願、第9類「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」及び第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供」を指定商品及び指定役務として、同25年8月16日に設定登録されたものである。 そして、本件審判の請求の登録日は、令和2年9月17日である。 なお、本件審判において商標法第50条第2項に規定する「その審判の請求の登録前3年以内」とは、平成29年9月17日ないし令和2年9月16日である(以下「要証期間」という場合がある。)。 第2 請求人の主張 請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証及び甲第2号証を提出した。 本件商標は、その指定商品(役務)について継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存在しないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。 なお、請求人は、被請求人提出の審判事件答弁書に対して、何ら弁駁していない。 第3 被請求人の答弁 被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第5号証を提出した。 本件商標は、その指定商品(役務)について、日本国内において平成23年より現在に至るまで継続して役務提供を行っており、取消事由における商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないという主張は事実に反する。よって本件審判請求は成り立たない。 第4 当審の判断 1 被請求人の主張及びその提出に係る乙各号証によれば、以下の事実が認められる。 (1)被請求人のウェブサイト「EIR(エイル)|iPhone・スマフォで地域医療・介護を繋ぐ地域医療連携支援システム」(乙2。以下「本件ウェブサイト」という。)において、「エイルとは?」の項に、「『エイル』は、在宅医療・居宅介護などの専門ネットワークとして、機密性を維持しながら多職種・多事業所にわたる従事者間で患者情報を安全に共有するためのアプリケーションです。」の記載がある。 そして、その項目名「エイルとは?」のうち、「エイル」の文字部分は、「エイル」の片仮名を明朝体風の書体で横書きしてなる商標である(以下「使用商標」という。)。 (2)本件ウェブサイトの「地域包括ケアシステムのICTインフラ」の項には、中心に使用商標と「クラウド環境」の文字を上下に表示し、たとえば、薬局薬剤師との間では処方データの自動送信を、介護事業所ケアマネージャー・ヘルパーとの間では「介護記録情報登録参照」を、主治医との間では処置内容と注意事項の共有・周知を可能とするなど、そのシステムの各使用者(薬局薬剤師、患者、介護事業所ケアマネージャー・ヘルパー、医療機関医師、医師会・自治体地域包括支援センター、訪問看護ST訪問看護師)が、どのように、そのケアシステムを利用し、各患者情報をクラウド環境上で共有又は利用するのかを説明する文章及び各利用者の相関関係図を掲載している。 (3)本件ウェブサイトには、「エイルはiPhone・iPad・Android専用アプリを用意しております/いつでもどこでも日々の記録を確認できます。」(審決注:「/」は改行を表す。)の記載がある。 (4)本件ウェブサイトの「エイルからのお知らせ」の項に、2020年(令和2年)2月16日付けにて「事務所移転のお知らせ」の記載、2018年(平成30年)10月12日付けにて「ケアビジョンVol.1創刊号にエイルが掲載されました!」の記載、同年3月14日付けにて「『安診ネット』の連携協力メンバーとなりました」の記載がある。 2 上記1において認定した事実によれば、以下のとおり判断できる。 (1)使用商標について 本件商標は、上記第1のとおり、「エイル」の片仮名を標準文字で表してなるものである。 これに対し、使用商標は、上記1(1)のとおり、「エイル」の片仮名を明朝体風の書体で横書きしてなる商標である。 そうすると、本件商標と使用商標とは、書体のみに変更を加えた同一の文字からなるものといえるから、使用商標は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標である。 (2)使用商品又は使用役務について 上記1(1)の認定事実から、使用商標は、在宅医療・居宅介護の従事者間で患者情報を共有するためのアプリケーション(以下「本件アプリケーション」という。)の名称として使用されているといえる。 そして、本件アプリケーションは、上記1(2)の認定事実から、「インターネットを経由して、ソフトウエア、ハードウエア、データベース、サーバーなどの各種リソースを利用するサービスの総称」を意味する「クラウドコンピューティング」の略称であるクラウド(大辞泉 第二版 株式会社小学館)の手段を用いて、コンピュータサーバー上で利用させるアプリケーションであり、アプリケーションは、「特定の用途や目的のために作られた、コンピューターのソフトウエア」を意味する「アプリケーションプログラム」の略(前掲書)であることから、本件アプリケーションは、クラウドの手段を用いてコンピュータサーバー上で利用させるものであって、当該コンピュータプログラムの提供(以下「使用役務」という。)といえる。 また、本件アプリケーションは、上記1(3)の認定事実から、iPhone・iPad・Androidなど、スマートフォンやタブレット型端末にダウンロードして使用させる専用アプリケーションでもあり、これは、ダウンロードして使用させる専用のコンピュータプログラム(以下「使用商品」という。)といえる。 そうすると、使用商品又は使用役務は、本件審判の取消請求に係る指定商品及び指定役務中、第9類「電子応用機械器具及びその部品」中の「電子計算機用プログラム」又は第42類「電子計算機用プログラムの提供」の範ちゅうに属する商品又は役務である。 (3)使用時期について 上記1(1)ないし(3)の認定事実から、本件ウェブサイトにおいて、本件アプリケーションが、在宅医療・居宅介護の患者情報をクラウド環境上で共有又は利用するものであることを説明する文章及び各利用者の相関関係図を掲載し、iPhone・iPad・Android専用アプリケーションにて利用可能であることを示しているから、本件ウェブサイトは、使用商標を付した使用商品又は使用役務に関する広告を内容とする情報といえる。 そして、上記1(4)の認定事実から、少なくとも2018年(平成30年)3月ないし同年10月頃には上記広告を内容とする情報が、本件ウェブサイトに掲載されていたと認めて差し支えない。 そうすると、被請求人は、使用商品又は使用役務に関する広告を内容とする情報に、使用商標を付して、本件審判の請求の登録前3年以内の期間(要証期間)内に、電磁的方法により提供したということができる。 (4)小括 以上によれば、商標権者である被請求人が、本件要証期間内に、日本国内において、本件審判の請求に係る指定商品及び指定役務中、第9類「電子応用機械器具及びその部品」中の「電子計算機用プログラム」又は第42類「電子計算機用プログラムの提供」に含まれる使用商品又は使用役務に関する広告を内容とする情報に、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付して、電磁的方法により提供したと認めることができる。 そして、この行為は、商標法第2条第3項第8号にいう「商品若しくは役務に関する広告を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」に該当する。 3 まとめ 以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者が、その請求に係る指定商品及び指定役務に含まれる商品又は役務について、本件商標の使用をしていることを証明したというべきである。 したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2021-05-27 |
結審通知日 | 2021-05-31 |
審決日 | 2021-06-17 |
出願番号 | 商願2012-91264(T2012-91264) |
審決分類 |
T
1
31・
1-
Y
(W0942)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 堀内 真一 |
特許庁審判長 |
齋藤 貴博 |
特許庁審判官 |
板谷 玲子 山根 まり子 |
登録日 | 2013-08-16 |
登録番号 | 商標登録第5607609号(T5607609) |
商標の称呼 | エイル、エール |
代理人 | 洲崎 竜弥 |