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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない W25
管理番号 1376886 
審判番号 取消2020-300098 
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-09-24 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2020-02-06 
確定日 2021-07-19 
事件の表示 上記当事者間の登録第5913819号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5913819号商標(以下「本件商標」という。)は、「Nクール」の文字を標準文字で表してなり、平成28年6月20日に登録出願、第11類「化学物質を充てんした保温保冷具」及び第25類「ベスト,洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,ティーシャツ」を指定商品として、同29年1月13日に設定登録され、その後、本件商標の指定商品中、第25類「コート」、同「セーター類」、同「ワイシャツ類」、同「ティーシャツ」について、令和2年2月6日に商標権の一部取消し審判(取消2020-300099、同2020-300100、同2020-300101及び同2020-300102)が請求され、それぞれ、その登録を取り消す旨の審決がされ、同年8月7日、同月20日及び同年9月3日に審判の確定登録がなされたものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、令和2年2月19日である。
なお、本件審判において、商標法第50条第2項に規定する「その審判の請求の登録前3年以内」とは、平成29年(2017年)2月19日ないし令和2年(2020年)2月18日である(以下「要証期間」という場合がある。)。

第2 請求人の主張
請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の指定商品中、第25類「洋服」についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証及び甲第2号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品中、第25類「洋服」について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により取消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)各証拠の記載について
ア 乙第1号証
乙第1号証の1は、要証期間前の文書であり、乙第1号証の2の1葉目には、「Nクールシリーズ」「Nクールベスト」との表記があるが、2葉目の商品には本件商標は使用されていない。
イ 乙2号証
乙第2号証の1には、「NクールシリーズII」「NクールベストII」との記載があるのみであり、乙第2号証の2の1葉目には、「Nクールシリーズ」「NクールベストII」との表記があるが、2葉目の商品には本件商標は使用されていない。また、乙第2号証の3は、要証期間後の文書である。
ウ 乙第3号証
乙第3号証の1には、「NクールベストII」との表記があるのみであり、乙第3号証の2には、「NクールベストII」との表記があるのみである。乙第3号証の3の1葉目には、「Nクールシリーズ」「NクールベストII」との表記があるが、2葉目の商品には本件商標は使用されていない。
エ 乙第4号証
乙第4号証の1は、単なる内部文書である。乙第4号証の2は、「Nクールウェア」との記載があるのみであり、乙第4号証の3には、「Nクールウェア」との表記があるのみである。また、乙第4号証の4は、単なる内部文書である。
オ 以上のことから、乙第1号証には「Nクールシリーズ」、「Nクールベスト」、乙第2号証、乙第3号証には「Nクールシリーズ」、「NクールベストII」、乙第4号証には「Nクールウェア」との記載のみがあることになる。
(2)使用期間について
被請求人は、その提出証拠(乙1?乙4)について、これらの証拠で「電磁的方法により提供する行為」(商標法第2条第3項第8号)を行ったと主張しているが、それ等が要証期間中に行われたことを確実に示す証拠にはなっていない。もともと「電磁的方法により提供する行為」は、雑誌や広告のような物的なものとは異なり、バージョンアップなどが日常的に行われるものであるから、間接事実による推測程度では足りず、確実に示す証拠でなければ証明力として十分ではなく「使用の認定」はできないはずである。
その意味で、被請求人が答弁書に添付して提出した証拠は、本件商標の要証期間中における「電磁的方法による提供」の証明に足るものではない。
ア 乙第1号証について
乙第1号証の1の日付は、「2016年7月4日」であり、要証期間内の証拠ではない。また、これは掲載を依頼するものにすぎず、掲載された事実を証明するものではない。
乙第1号証の2には、日付自体がないから、要証期間であることは証明できていない。
乙第1号証の1の記載には、「+Nクールパック・ベスト.pdf」「1件追加して頂きたい」との記載はあるが、具体的に何が追加されたのかは不明である。のみならず、これが果たして本当に追加されたのか、またそれはいつまで継続されたのか等の記載も全くない。
以上のことから、乙第1号証は、本件商標が要証期間内に使用されたという証拠に足るものとはいえない。
イ 乙第2号証について
乙第2号証の1の日付は、「2018年4月11日」となっているが、これは内部的な依頼書の依頼文であり、公衆への公開を前提とする商標法上の使用とはいえない。
乙第2号証の2には、日付自体がないから、要証期間であることは証明できていない。
乙第2号証の1の記載には、「+NクールシリーズII.pdf」「チラシ追加 NクールシリーズII.pdf 添付のPDFを追加して下さい。」とあるが、具体的に何が追加されたのかは不明である。のみならず、これが果たして本当に追加されたのか、またそれはいつまで継続されたのか等の記載も全くない。それどころか、「3月29日に更新依頼のメールを2件送信していますが、更新はいつ頃になりますか??」とあり、依頼が掲載に結びついていないことが明らかである。即ち、単なる依頼でもって掲載の事実を認定することは、証明力としては到底足りない。
乙第2号証の3の文書の出力の日付は、2020年4月2日であるから、要証期間後のものにすぎないし、その中に記載された映像の順番がどのような意味を持つのかも何ら特定することはできない。
以上のことから、乙第2号証は、本件商標が要証期間内に使用されたという証拠に足るものとはいえない。
ウ 乙第3号証について
乙第3号証の1の日付は、「2018年6月27日」となっているが、これは内部的な依頼書の依頼文であり、公衆への公開を前提とする商標法上の使用とはいえない。
乙第3号証の2の出力の日付は、2020年4月2日であるから、要証期間後のものにすぎない。なお、この中に「NクールベストII 販売開始しました」とあり、「最終更新日2018年6月27日」とあるものの、この日付は、単なる記載者の任意の記載であり、客観性はなく、証明力として十分とはいえない。
乙第3号証の3には、日付自体がないから、要証期間であることは証明できていない。
エ 乙第4号証について
乙第4号証の1の日付は、「希望納期:2020年1月31日」となっているが、内部文書であるので、公衆への公開を前提とする商標法上の使用とはいえない。
乙第4号証の2の出力の日付は、2020年4月2日であるから、要証期間後のものにすぎないし、「最終更新日:2020年2月27日」とある以上、要証期間内に存在した証拠にはならない。
乙第4号証の3には、日付自体がないから、要証期間であることは証明できない。
乙第4号証の4は、作成日が「2020年1月10日」になっているが、これはデータの作成日であって、提供した日ではない。
以上のことから、乙第4号証は、本件商標が要証期間内に使用されたという証拠に足るものとはいえない。
(3)使用商品について
現在の「新商品区分は、国際分類を主たる体系として採用しているために、その基準が主として機能又は用途主義、材料主義を強調したものとなっている(国際分類の「一般的注釈」参照)」(類似商品・役務審査基準(令和2年1月1日適用版(1-2頁))とされている。
したがって、機能、用途などが異なれば、外観的な形が類似していても、分類上は異なった商品とされているのである。
例えば、第25類中で、「仮装用衣装」、「運動用特殊衣装」は、「被服」と同じ形になっていても、「被服」とは、別の細区分とされている。また、被服の中でも「洋服」は、「コート、セーター類、ワイシャツ類」とは、区分して記載されている。そして「洋服」の例としては、「イブニングドレス、学生服、子供服、作業服、ジャケット、ジョギングパンツ、スウェットシャツ、スウェットパンツ、スーツ、スカート、スキージャケット、スキーズボン、ズボン、スモック、礼服」が記載されている。
このように「洋服」が、他と区分されているのは、その主たる機能又は用途が「洋装のための服」であるからである。その意味で、「和装のための服」とはもちろん、「外装のためのコート」や「防寒のためのセーター類」「内着のためのワイシャツ類」とも異なる。
したがって、その主たる目的が「洋装のための服」でないものを、形が似ているからといって、同じ細分類にしてしまったら、国際分類の基本思想に反することになる。
ア 乙第1号証ないし乙第3号証中の「Nクールベスト」「NクールベストII」等について
乙第1号証ないし乙第3号証において、被請求人が提示した商品は、すべて「高性能保冷剤」を保持するための「専用メッシュベスト」である。したがって、その機能または用途は、あくまで「高性能保冷剤を保持するためのもの」であって、上記「洋服」の例示のような「洋装のための服」とは機能又は用途が全く異なる。端的にいえば、被請求人の「専用メッシュベスト」は、「高性能保冷剤を保持する機能又は用途」を有すれば足り、それがたまたまベストの形をとったのみのものといえる。
したがって、これが、国際分類に従った指定商品分類上の「洋服」にあたらないことは明らかである。
なお、類似商品・役務審査基準において、「ベスト」は、「参考」には記載されているものの、「洋服」の中には入れられていない。
したがって、ここでも「ベスト」は「洋服」とは別の概念として分類されているものと推察される。被請求人も、その指定商品の記載において、わざわざ「ベスト、洋服、コート、セーター類、ワイシャツ類、ティーシャツ」として、「ベスト」を「洋服」と区別して記載している。そして、不使用取消が、「ベスト、洋服、コート、セーター類、ワイシャツ類、ティーシャツ」のそれぞれについて取消の対象としている趣旨からすれば、上記を考えるまでもなく「ベスト」での使用の証拠を出しても、「洋服」での使用の証拠とならない。
イ 乙第4号証中の「Nクールウェア」について
乙第4号証の3のカタログ2頁によると「Nクール(R)ウェアとは?NSPオリジナル仕様の空調服(TM)です。」(審決注:「(R)」は右上部に小さく円で囲った「R」の記号、(TM)は右上部に小さく「TM」と表記されていることを示す。以下同じ。)と記載されている。そして同1頁には「空調服(TM)とは?」とあり「空調服(TM)を着用することで、体の近くを強制的に風が駆け巡ります。」とあるように、その機能、用途は、ポケット部分に取り付けられた扇風機による通風であって、「服」は単なる形にすぎない。
端的にいえば、被請求人の「Nクールウェア」は、「扇風機による通風を確保する服」であって、「洋装のための服」ではない。即ち、被請求人の「Nクールウェア」を「洋服」に分類するのは、「主として機能又は用途主義、材料主義を強調した」国際分類の思想に反することになる。
したがって、これが、指定商品分類上の第25類の「洋服」にあたらないことは明らかである。
(4)まとめ
以上のことから、乙第1号証ないし乙第4号証は、いずれも、商標法第2条第3項第8号の要証期間中の「電磁的方法により提供する行為」の立証に足りないものであり、かつ、指定商品分類上の第25類の「洋服」にはあたらない証拠である。
3 令和3年4月5日付け上申書
(1)乙第4号証の2について
乙第4号証の2には「2020年1月23日/最終更新日:2020年2月27日」とあるから、乙第4号証の2の内容は、2020年2月27日に更新された内容であり、2020年1月23日の内容のものではあり得ない。すなわち、この内容のカタログデータが「電磁的方法により提供」されたのは、「最終更新日:2020年2月27日」の記載からいって、どんなに早くとも「最終更新日」である2020年2月27日以降であるはずである。
そして、2020年2月27日は要証期間の後であり、乙第4号証の2は使用証明の証拠にはなり得ないものである。
(2)指定商品について
請求人は、弁駁書において、「専用メッシュベスト」は「洋服」にはあたらないと主張したが、仮に「専用メッシュベスト」が第25類の「ベスト」の範ちゅうに属するものと判断されるなら、それは、「類似商品・役務審査基準」の「洋服」の中には入っておらず、あえていえば、「セーター類」の「チョッキ」(「vests and waistcoats」)に入るか、または「ベスト」(「vests」「wastcoats」)にあたり、いずれにしても「洋服」にはあたらない。
また、被請求人が提出した他の証拠(乙1?乙3)では、「専用メッシュベスト」のみ記載されていて「洋服」に関する証拠はない。
したがって、被請求人が「洋服」について、使用した証拠はない。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第6号証(枝番号を含む。)を提出した。
被請求人は、商標権者(被請求人)が、審判の請求の登録前3年以内に、指定商品中、第25類「洋服」について本件商標を使用していることから、商標法第50条第2項の規定により、本請求は成り立たないことを、以下のとおり主張する。
1 カタログデータの被請求人会社HPへの掲出
(1)被請求人は、平成28年7月4日頃から平成30年4月11日頃までの間、被請求人が製造販売するメッシュベスト(商品名「Nクールベスト」)等に関するカタログデータに「Nクールシリーズ」及び「Nクールベスト」の文字よりなる商標を付して、これを被請求人会社ウェブサイト上に掲出して電磁的方法により提供し、当該商標を使用していた。
乙第1号証の1は、被請求人従業員が、当時被請求人会社ウェブサイトの保守管理を担当していたリップルネット株式会社に対して、上記カタログのデータ掲出を依頼したメールであり、乙第1号証の2は、乙第1号証の1の添付ファイル(カタログデータ)である。
(2)被請求人は、平成30年4月11日頃から現在に至るまで、被請求人が製造販売するメッシュベスト(商品名「NクールベストII」)等に関するカタログデータに「Nクールシリーズ」及び「NクールベストII」の文字よりなる商標を付して、これを被請求人会社ウェブサイト上に掲出して電磁的方法により提供し、以て、当該商標を使用している。
乙第2号証の1は、被請求人従業員が、当時被請求人会社ウェブサイトの保守管理を担当していたリップルネット株式会社に対して、上記カタログのデータ掲出を依頼したメールである。
乙第2号証の2は、乙第2号証の1の添付ファイル(カタログデータ)である。
乙第2号証の3は、乙第2号証の2のカタログデータを掲載した被請求人会社ウェブサイトである(令和2年4月2日に出力したもの。同ウェブサイトには、平成30年4月以後、新たなカタログが追加して掲載されていて、乙第2号証の3は、同月当時のものと同一ではない。しかし、同ウェブサイトにおいて、カタログ・在庫表は、掲載順に配置されていて、乙第2号証の2のカタログ(「NクールシリーズII」)が「空調服農業用(2018年Ver)」の次に配置されていることから、これが平成30年当時に掲載されたものであることは明らかである。)。
(3)被請求人は、平成30年6月27日、上記イに係る製品「NクールベストII」等の販売を開始したことから、被請求人会社ウェブサイト(「TOPICS」「製品情報」「NクールベストII 販売開始しました」のページ)において、その旨掲示した。
乙第3号証の1は、被請求人従業員が、当時被請求人会社ウェブサイトの保守管理を担当していたリップルネット株式会社に対して、被請求人会社ウェブサイトの「TOPICS」「製品情報」「NクールベストII 販売開始しました」のページに、NクールベストIIの販売を開始した旨表示するよう依頼したメールである。
乙第3号証の2は、被請求人会社ウェブサイトの「TOPICS」「製品情報」「NクールベストII 販売開始しました」のページである(平成30年6月27日アップ、同日が最終更新日)である。
乙第3号証の3は、NクールベストIIのカタログデータである(乙第3号証の2の「カタログダウンロード」をクリックして開いたページの出力物)。
(4)被請求人は、令和2年1月23日から現在に至るまで、被請求人が製造販売する空調機能付き作業服(シリーズ名「Nクールウェア」)に関するカタログデータに「Nクール(R)ウェア」の文字よりなる商標を付して、これを被請求人会社ウェブサイト上に掲出して電磁的方法により提供し、以て、当該商標を使用している。
また、被請求人は、令和2年1月23日から現在まで、被請求人が製造販売するメッシュベスト(商品名「NクールベストII」)について、上記カタログデータに「Nクール(R)シリーズ」、「Nクール(R)ベストII」の文字よりなる商標を付して、これを被請求人会社ウェブサイト上に掲出して、電磁的方法により提供し、以て、当該商標を使用している。
乙第4号証の1は、被請求人従業員が、被請求人会社ウェブサイトのカタログデータ更新について作業を完了させた旨の報告文書である(「完了」の欄に令和2年1月23日付け従業員の印が押印されている。なお、このころは、被請求人会社ウェブサイトの更新は、リップルネット株式会社に依頼せず、社内電算室で行うようになっていた。)。
乙第4号証の2は、被請求人会社WEBサイトの「TOPICS」「製品情報」「2020年版Nクールウェアカタログを掲載しました」のページである(令和2年1月23日アップ、なお、最終更新日が令和2年2月27日となっているが、掲載しているカタログデータの差替えは行われていない(乙第4号証の3のカタログデータのプロパティ(乙4の4)においてデータの最終更新日は令和2年1月10日である。)。
乙第4号証の3は、Nクールウェアのカタログデータである(乙第4号証の2の「カタログダウンロード」をクリックして開いたページの出力物、29頁には「Nクール(R)シリーズ」及び「Nクール(R)ベストII」の記載がなされている。)。
2 「指定商品」についての「使用」であること
上記カタログデータの掲出が、各商標の「使用」にあたること(商標法第2条第3項第8号)、及びその使用に係る商品「メッシュベスト」及び「空調機能付き作業服」が本件審判の請求に係る指定商品「洋服」に属することは明らかである。
3 本件商標と使用商標との社会通念上の同一性
(1)使用商標「Nクールシリーズ」、「Nクール(R)シリーズ」、「Nクールベスト」、「NクールベストII」、「Nクール(R)ベストII」及び「Nクール(R)ウェア」は、本件商標「Nクール」にそれぞれ文字を付加したものであることから、これらの文字を付加しても、本件商標と使用商標とは社会通念上同一である。
登録商標に何らかの文字を付加して使用した場合については、使用商標のうち自他商品等識別標識として機能する部分を特定したうえで、当該部分について登録商標との社会通念上の同一性が判断される。使用商標についてみるに、本件商標「Nクール」に付加された以下の文字は、いずれも自他商品等識別標識として機能するものではない。
ア 「ベスト」及び「ウェア」について
「ベスト」という文字は「袖のない胴衣」という観念を生じ、「ウェア」という文字は「衣服」という観念を生じる。これらの文字は、本件審判請求に係る指定商品「洋服」に使用される限りにおいて、商品内容を説明する機能しか有さず、需要者・取引者が当該文字に自他商品等識別標識としての機能を見出すことはない。
イ 「シリーズ」及び「II」について
「シリーズ」という文字は「連続性を持つ一連のもの」という観念を生じ、「II」という文字は「連続性を持つ一連のもののうち2番目」という観念を生じる。これらの文字は、それ自体固有の意味を生じるものではなく、付加される文字部分によって表象される商品の一連性を表す機能しか有さず、需要者・取引者が当該文字に自他商品等識別標識としての機能を見出すことはない。
ウ 「(R)」について
「(R)」という文字は「使用商標全体のうち、付記された文字部分が登録商標である」という観念を生じ、称呼を生じない。また、「Nクールシリーズ」、「NクールベストII」、「Nクールウェア」の間に、「(R)」の文字が差し挟まれることで、使用商標全体を淀みなく一気一連に称呼し得る可能性を排除している。その上、「(R)」の文字が差し挟まれることで、「(R)」の前に記載されている「Nクール」が登録商標であると認識させる。
したがって、これに接した需要者、取引者は、「(R)」の前後で使用商標を分離して、「(R)」の前に記載されている「Nクール」が自他商品等を識別する標識であると認識する。
(2)上記の使用商標「Nクールシリーズ」、「Nクール(R)シリーズ」、「Nクールベスト」、「NクールベストII」、「Nクール(R)ベストII」、及び「Nクール(R)ウェア」は、いずれも「Nクール」という文字に上記「ベスト」、「ウェア」、「シリーズ」、「II」及び「(R)」という文字を組み合わせたものにすぎない。
また、各カタログデータでは、それぞれ、被請求人が販売する洋服について、「Nクールシリーズ」及び「Nクールベスト」、「Nクールシリーズ」及び「NクールベストII」、「Nクールシリーズ」及び「NクールベストII」の双方の表記がなされていて、「Nクール」が共通の表示として使用されている。
したがって、これらの使用商標が本件審判請求に係る指定商品「洋服」に使用される上において、自他商品等識別標識として機能するのは、「Nクール」である。
(3)本件商標と、上記の各使用商標のうち自他商品等識別標識として機能する「Nクール」とは、外観、称呼及び観念のいずれの点も同一である。以上より、本件商標と各使用商標は社会通念上同一である。

第4 当審の判断
1 事実認定
(1)被請求人提出の乙各号証及び同人の主張によれば、次のとおりである。
ア 乙第4号証の1は、被請求人によれば商標権者の従業員が作成した報告文書であるところ、表題は「ホームページ追加・変更・削除申請書」であり、ホームページの内容変更について2020年1月23日に作業が完了したことが記載され、担当者及び決裁者の押印がされている。
その掲載場所は、「TOPICS、カタログダウンロード」であり、掲載内容は、「2020年Nクールウェア総合カタログへの差し替えとTOPICSへの案内」である。
イ 乙第4号証の2は、2020年4月2日に出力された商標権者のウェブサイトの「製品情報」のページであり、「2020年1月23日 最終更新日:2020年2月27日」及び「2020年版Nクールウェアカタログを掲載しました」の記載とともに、乙第4号証の3の表紙と同様のカタログの表紙が掲載され、その下には「(画像をクリックするとPDFファイルが開きます)」の記載がある。
ウ 乙第4号証の3は、商標権者による「Nクール(R)ウェア」の全36葉からなる2020年版カタログであり、表紙(1葉目)には、左上部に「2020 CATALOG」、中央上部に大きく「Nクール(R)ウェア」の文字、その下に商品「ジャンパー」の画像が掲載され、さらに、中央下部に「株式会社 エヌ・エス・ピー」の記載がある。
そして、上記カタログの3頁(4葉目)には、「Nクール(R)ウェア 基本形状」の表題の下、「首元を抜ける風量が大幅に増え、ハードな作業にも耐えられるように、さらに進化したNクール(R)ウェアの驚きの涼しさを体感してください。」の記載及び商品「ジャンパー」の画像が掲載されている。
また、同17頁(18葉目)には、「Nクール(R)ウェア」「型式名NA-101 チタン加工(素材:ポリエステル) サイズS?5L」の表題の下、ジャンパーの画像(シルバー、ラベンダー、ブルー、キャメル、モスグリーンの5色)とともに「チタン加工、肩・袖補強等、炎天下のハードな作業を想定した充実の機能を装備しております。」の記載がある。
さらに、同19頁(20葉目)には、「Nクール(R)ウェア」「型式名NA-113 チタン加工(素材:ポリエステル) サイズS?5L フルハーネス仕様」の表題の下、商品「ジャンパー」の画像(シルバー等6色)とともに「安全性と快適性で炎天下での高所作業をサポートするフルハーネス仕様です。チタン加工仕様の為、屋外作業におすすめです。」の記載がある。
加えて、上記カタログの奥付(36葉目)には、「Nクール(R)ウェア」の専用注文書、使用上の注意及び「『Nクール』は(株)エヌ・エス・ピーの登録商標です。」の記載、また、商標権者の名称、住所及び「20.01.」の記載がある。
エ 乙第4号証の4は、被請求人によれば「Nクール(R)ウェア」の2020年版カタログ(乙4の3)データのプロパティ画面であり、作成日の欄に「2020/01/10 10:47:03」、更新日の欄に「2020/01/10 10:58:03」と表示されている。
(2)上記(1)からすれば、商標権者は、2020年(令和2年)1月に、「Nクール(R)ウェア」(以下「使用商標」という。)の表示とともに、商品「ジャンパー」の画像、型式、素材、サイズ、色及び特長、また、専用注文書、使用上の注意などが掲載されている2020年版カタログを制作し、商標権者のウェブサイトに同月23日から掲載したと推認できる。
2 判断
(1)使用商標について
本件商標は、「Nクール」の文字を標準文字で表してなるものである。
一方、商標権者の2020年版カタログ(乙4の3)に使用された使用商標は、「Nクール(R)ウェア」であるところ、使用商標中の「(R)」の部分は、登録商標であることを表示する記号であり、また「ウェア」の部分は、商品の普通名称を表示したものとして看取、理解されるとみるのが相当であって、使用商標について自他商品識別標識として強く支配的な印象を与えるのは、「Nクール」の文字部分であるといえ、加えて、上記カタログにおいて、「Nクール」が商標権者の登録商標であることを表示している。
そうすると、使用商標の要部は「Nクール」の文字部分であり、本件商標と使用商標における「Nクール」の文字とは、そのつづりを同じくし、かつ、「エヌクール」の称呼を共通にするものであるから、使用商標は、本件商標と社会通念上同一のものと認められる。
(2)使用商品について
商標権者の2020年版カタログ(乙4の3)には、使用商標とともに商品「ジャンパー」の画像が掲載され、その説明として「チタン加工、肩・袖補強等、炎天下のハードな作業を想定した充実の機能を装備しております。」及び「安全性と快適性で炎天下での高所作業をサポートするフルハーネス仕様です。チタン加工仕様の為、屋外作業におすすめです。」と記載されていることに照らせば、商標権者のカタログに掲載された商品は、建設、土木、流通、農業等屋外の作業時に着用される「作業服」と認められる。
そうすると、使用商品は「作業服」であり、本件審判の請求に係る指定商品中の「洋服」の範ちゅうに含まれるものである。
(3)使用者及び使用時期について
商標権者は、使用商標及び使用商品が掲載された2020年版カタログ(乙4の3)を2020年(令和2年)1月に制作し、商標権者のウェブサイトに掲載したといえるから、使用者は商標権者である。
また、「ホームページ追加・変更・削除申請書」(乙4の1)に記載された作業完了日及び商標権者のウェブサイトに掲載された上記カタログに併記されている日は、いずれも2020年(令和2年)1月23日であることから、上記カタログは、2020年(令和2年)1月23日に公開されたものと推認できる。
そして、上記カタログを公開した2020年(令和2年)1月23日は、要証期間内といえる。
(4) 小括
上記(1)ないし(3)によれば、本件商標の商標権者は、要証期間内に日本国内において本件審判の請求に係る指定商品中の「洋服」の範ちゅうに含まれる商品「作業服」に関する広告を内容とする情報に本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付して電磁的方法により提供した(商標法第2条第3項第8号)ということができる。
3 請求人の主張について
請求人は、被請求人の「Nクールウェア」は「扇風機による通風を確保する服」であって、「洋装のための服」ではないものであり、これを「洋服」に分類するのは「主として機能又は用途主義、材料主義を強調した」国際分類の思想に反することになるから、第25類の「洋服」にあたらないことは明らかである旨主張している。
しかしながら、上記2(2)のとおり、使用商品は「作業服」であって、商標法施行規則別表第25類の「洋服」の範ちゅうに含まれる商品として、「子供服、作業服、ジャケット」等が例示されていることからすれば、使用商品は、「洋服」の範ちゅうに含まれる商品とみるのが相当である。
したがって、請求人の主張は採用することができない。
4 むすび
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標の商標権者が、その請求に係る指定商品について、本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)の使用をしていたことを証明したということができる。
したがって、本件商標は、本件審判の請求に係る指定商品について、商標法第50条の規定により、その登録を取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲

審理終結日 2021-05-13 
結審通知日 2021-05-18 
審決日 2021-06-10 
出願番号 商願2016-66584(T2016-66584) 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (W25)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 太野垣 卓高橋 幸志 
特許庁審判長 齋藤 貴博
特許庁審判官 小俣 克巳
小松 里美
登録日 2017-01-13 
登録番号 商標登録第5913819号(T5913819) 
商標の称呼 エヌクール 
代理人 加藤 卓 
代理人 名越 秀夫 
代理人 森本 純 
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