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審決分類 審判 一部無効 外観類似 無効としない W03
審判 一部無効 称呼類似 無効としない W03
審判 一部無効 観念類似 無効としない W03
管理番号 1376852 
審判番号 無効2020-890068 
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-09-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2020-09-17 
確定日 2021-07-12 
事件の表示 上記当事者間の登録第6071530号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第6071530号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成29年6月30日に登録出願、第3類「化粧品,せっけん類,歯磨き,香料,爪用化粧品,つめ用研磨紙,つめ用研磨布,つめ用つや出し紙,つめのつや出し用研磨布」を指定商品として、同30年6月22日に登録査定、同年8月17日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が引用する登録第5123812号商標(以下「引用商標」という。)は、「LUCHIA」の欧文字と「ルチア」の片仮名を上下二段に書してなり、平成19年1月31日に登録出願、第3類「せっけん類,化粧品」を指定商品として、同20年3月28日に設定登録されたものであり、その商標権は現に有効に存続しているものである。

第3 請求人の主張
1 請求の趣旨
請求人は、本件商標の指定商品中、第3類「化粧品,爪用化粧品,せっけん類」についての登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第9号証を提出した。
2 請求の理由
本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当し、登録を受けることができないものであるから、同法第46条第1項第1号の規定により、その登録を無効とすべきである。
(1)請求人の利害関係
請求人は、「LUCIA」(「C」の文字を大きく表している。)、「LUCIA」及び「ルチア」の文字を三段に横書きしてなる商標(商願2019-143106)を登録出願(甲1)したところ、本件商標を引用する拒絶査定(甲3)を受け、その査定を不服として審判請求をしている。
そのため、請求人は、本件審判請求について、利害関係を有する。
(2)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標は、「LUCIA」の文字を横書きしてなるものである。
そして、上記の商標登録出願に係る審査(甲3)のとおり、「LUCIA」の文字からは、「ルチア」の称呼が生じる。
さらに、事典や辞書には、「ルチア Lucia [イタリア]4世紀初め、ディオクレティアヌス帝の迫害で殉教したシチリア島シラクサの聖女。」、「ルチア Lucia ドニゼッティの代表的オペラ。」(甲6)、「サンタ-ルチア【Santa Lucia イタリア】ナポリ民謡。」(甲7)との記載があるように、「LUCIA」の文字は「ルチア」と称呼される。
イ 他方、引用商標は、「LUCHIA」及び「ルチア」の文字を二段に横書きしてなる(甲8、甲9)。
ウ 以上のとおり、本件商標は、引用商標とは、「ルチア」の称呼において類似する商標であり、本件商標の指定商品中「化粧品,爪用化粧品,せっけん類」と引用商標の指定商品「せっけん類,化粧品」は、同一又は類似する商品であるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
3 被請求人の答弁に対する弁駁
被請求人は、本件商標「LUCIA」は造語であり、「ルシア」の称呼しか生じないと主張するが、当該文字は辞書等に掲載された既成語であり、スマートフォンなどで意味や発音を検索するのも簡単だから、「女子の名」の観念及び「ルチア」の称呼を生じる。
また、本件商標から「ルシア」の称呼を生じるとしても、引用商標の「ルチア」の称呼とは、3音中2音を共通にし、異なる第2音も母音を共通にする近似した音であるばかりか、ともに中間音として強く発音されるから、全体の語調、語感が近似して相紛らわしく、称呼において類似する。

第4 被請求人の答弁
1 答弁の趣旨
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べた。
2 答弁の理由
(1)商標の類否について
ア 本件商標の称呼
本件商標からは、「LUCIA」の欧文字を容易に認識できる。当該欧文字は、多数の一般の辞書に記載されている既成語ではないので、特定の意味合いを有さない一種の造語と認識される。特定の意味合い又は特定の読みを想起しない欧文字は、我が国において広く親しまれているローマ字読みで称呼するのが一般的であるから、本件商標はローマ字読みすると「ルシア」になる。
もしくは、我が国によって親しまれている英語の読みにならって称呼することもある。「welcia」(ウエルシア)、「Spacia」(スペーシア)、「日本製紙クレシア(CRECIA)」など、「CIA」の欧文字を「シア」と称呼する例は世の中に溢れているから、本件商標に接する一般需要者は「ルシア」と称呼する。
イ 請求人の主張に対する反論
請求人は、他の商標登録出願に係る審査例を根拠に、本件商標から「ルチア」の称呼が生じる旨を主張するが、それは単に特許庁の審査官による1つの判断事例にすぎず、その判断には何の拘束力もなく、信頼性にも欠ける。
また、需要者が商品を選択する際は、英和辞書や百科事典に依拠せず、自身の有する英語の知識をもとに、欧文字を発音しようとする。「LUCIA」の語が、女性の名前の意味があったとしても、通常の学校教育において「LUCIA」の英単語を習うことはなく、「LUCIA」にそのような意味合いがあるとは、ほとんどの日本人は知らない。英和辞書や百科事典の内容を完全に記憶している人はほぼ皆無で、無数にある辞書・百科事典の中から、ほんの一部の「LUCIA」の記載を提示しただけでは、証拠として不十分である。
やはり「LUCIA」の語は一種の造語として認識するのが相当であり、本件商標を「ルシア」と称呼し、「ルチア」と称呼することはない。
ウ 称呼の比較
引用商標は、「LUCHIA」の欧文字と「ルチア」の片仮名の二段書きからなるところ、「ルチア」の片仮名が、欧文字「LUCHIA」の振り仮名と認識でき、また、「LUCHIA」のつづりからも「ルチア」の称呼が生じる。よって、引用商標から生じる称呼は「ルチア」になる。
本件商標から生じる「ルシア」の称呼と引用商標から生じる「ルチア」の称呼を比較すると、中間音の「シ」と「チ」が相違する。両称呼はともに3音から構成され、極めて短い音数からなるので、1音の相違が称呼全体に与える影響が大きい。また、両称呼の語調、語感も大きく相違する。よって、「ルシア」と「ルチア」の称呼を明確に聞き分けることができるので、称呼は非類似である。
エ 商標の類否判断
本件商標と引用商標の称呼は、非類似である。
そして、外観を比較すると、本件商標は欧文字の「LUCIA」からなるロゴに対して、引用商標は「LUCHIA」の欧文字と「ルチア」の片仮名の二段書きからなる。よって、本件商標は、外観上も、引用商標と類似しない。
また、観念を比較すると、「LUCIA」の語が女性の名前の意味があったとしても、ほとんどの日本人がそのような意味合いを認識することができず、両商標ともに一種の造語として認識される。よって、どちらの商標からも特定の観念は生じず、比較することができないので、本件商標は、観念上、引用商標と類似しない。
そうすると、本件商標と引用商標は、称呼、外観、観念のいずれも類似せず、出所混同のおそれがなく、非類似の商標である。
(2)まとめ
以上のとおり、本件商標は、引用商標とは非類似の商標であるから、商標法第4条第1項第11号に該当しない。

第5 当審の判断
1 利害関係
請求人が本件審判を請求することの利害関係の有無については、当事者間に争いがなく、当審は請求人が本件審判の請求について利害関係を有すると認める。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標と引用商標の類否
ア 本件商標は、別掲のとおり、「LUCIA」の欧文字を表してなるところ、「Lucia」の欧文字は「女子の名」を表す英語(甲5)、「ドニゼッティの代表的オペラ」(甲6)を指称する語であるとしても、いずれの意味合いにおいても、我が国において親しまれた語とはいえないから、通常は特定の意味合いを認識させない造語を表してなると理解されるものである。
そうすると、本件商標は、ローマ字風又は英語風の発音である「ルシア」又は「ルチア」の称呼を生じるが、特定の観念は生じない。
イ 引用商標は、上記第2のとおり、「LUCHIA」の欧文字と「ルチア」の片仮名を上下二段に表してなるところ、下段の片仮名部分は上段の欧文字部分の読み仮名を表示してなると認識、理解できるものの、「LUCHIA」(ルチア)の文字は、特定の意味を有する成語ではない。
そうすると、引用商標は、「ルチア」の称呼が生じるが、特定の観念は生じない。
ウ 本件商標と引用商標を比較すると、外観においては、「ルチア」の片仮名部分の有無に加えて、欧文字部分も、6文字という短い構成文字の中で4文字目の「H」の文字の有無という差異(当該文字の有無により称呼も変わり得る。)があり、互いに異なる語を表してなると認識、理解できるから、外観上の印象に差異がある。
また、称呼においては、本件商標から生じる複数の称呼のうちの1つ(ルチア)を共通にする場合があるとしても、「ルシア」と「ルチア」の称呼は、3音という短い構成音において、中間音の「シ」と「チ」の音の差異があるから、互いに聴別できる。
そして、観念においては、いずれも特定の観念を生じないから、比較できない。
以上を踏まえると、本件商標は、引用商標とは、「ルチア」の称呼を共通にする場合があるとしても、その他の称呼において相紛れるおそれはなく、外観上の印象には差異があり、観念において比較できないから、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、互いに紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
(2)請求人の主張に対し
請求人は、辞書の記載、機器を用いた検索可能性や過去の審査例などを挙げつつ、本件商標は「ルチア」の称呼及び「女子の名」の観念が生じる旨、さらに、本件商標から「ルシア」の称呼を生じるとしても、引用商標の「ルチア」の称呼とは、全体の語調、語感が近似して相紛らわしく、称呼において類似する旨を主張する。
しかしながら、本件商標である「LUCIA」の欧文字は、上記(1)アのとおり、我が国において親しまれた語とはいえないから、一般の需要者をして、特定の意味合いを認識させない造語を表してなると理解されるというのが相当である。そうすると、本件商標は、「ルチア」の称呼に加えて、「ルシア」の称呼をも生じるが、特定の観念は生じず、また、その当審の認定判断の内容は他の審査例に拘束されない。
さらに、本件商標は、上記(1)ウのとおり、引用商標とは、「ルチア」の称呼を共通にする場合があるとしても、その他の称呼(ルシア)において相紛れるおそれはなく、加えて、外観上の印象の差異をも踏まえると、観念において比較できないとしても、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、互いに紛れるおそれはない。
(3)小括
以上のとおり、本件商標は、引用商標とは、同一又は類似する商標ではないから、その指定商品が同一又は類似するかに関わらず、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 むすび
以上を踏まえると、本件商標は、その指定商品中、第3類「化粧品,爪用化粧品,せっけん類」についての登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものとはいえないから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効にすべきでない。
よって、結論のとおり審決する。


別掲

別掲(本件商標)



審理終結日 2021-05-17 
結審通知日 2021-05-19 
審決日 2021-06-01 
出願番号 商願2017-93932(T2017-93932) 
審決分類 T 1 12・ 261- Y (W03)
T 1 12・ 263- Y (W03)
T 1 12・ 262- Y (W03)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 旦 克昌大橋 良成 
特許庁審判長 佐藤 松江
特許庁審判官 鈴木 雅也
阿曾 裕樹
登録日 2018-08-17 
登録番号 商標登録第6071530号(T6071530) 
商標の称呼 ルシア、ルーシア、ルチア、ルーチア 
代理人 藤倉 大作 
代理人 角谷 健郎 
代理人 ▲吉▼田 和彦 
代理人 石戸 孝 
代理人 西山 聞一 
代理人 井滝 裕敬 
代理人 松尾 和子 
代理人 田中 伸一郎 
代理人 中村 稔 

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