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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W14
審判 全部申立て  登録を維持 W14
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審判 全部申立て  登録を維持 W14
審判 全部申立て  登録を維持 W14
審判 全部申立て  登録を維持 W14
管理番号 1376069 
異議申立番号 異議2019-900301 
総通号数 260 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2021-08-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-10-18 
確定日 2021-05-24 
異議申立件数
事件の表示 登録第6165986号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第6165986号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6165986号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、平成30年7月11日に登録出願、第14類「宝石箱,宝飾品,帽子用宝飾品,指輪,時計,腕時計,クロノメーター,ストップウォッチ,電気時計,時計の部品及び附属品,時計のガラス,時計の針,時計バンド,時計用化粧箱,時計用ムーブメント」を指定商品として、令和元年6月20日に登録査定され、同年7月26日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件登録異議の申立ての理由において、引用する商標及び標章は、次の1ないし3のとおりである。
1 国際登録第1174907号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:別掲2のとおりの構成よりなる商標
国際商標登録出願日:2013年(平成25年)7月8日(優先日:2013年4月10日)
設定登録日:平成26年11月7日
指定商品:第14類に属する国際商標登録原簿記載のとおりの商品
2 登録第2521980号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:別掲3のとおりの構成よりなる商標
登録出願日:平成2年3月7日
設定登録日:平成5年3月31日(書換登録日:平成15年6月18日)
指定商品:第14類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品
3 引用標章
標章の構成:別掲4のとおりの構成よりなる標章
使用商品:腕時計等
なお、引用商標1及び引用商標2は、現に有効に存続しているものである。
そして、引用商標1及び引用商標2をまとめていうときは、11号引用商標といい、11号引用商標と引用標章をまとめていうときは、「引用商標」という。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第11号及び同項第19号に違反して登録されたものであるから、商標法第43条の2第1号によって取り消されるべきものであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第11号証(枝番を含む。)を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標について
ア 外観上の特徴
本件商標は、大きく、左右均等に広げた翼を有する、人型のような図形からなる。
イ 称呼上の特徴
本件商標は、図形よりなるところ、この図形の左右に描かれているのが、大きく、均等に広げた「翼」であるとは容易に認識することができ、また、この翼部分は商標全体のうち大部分を占めるものであり、その特殊な構成から、看者に顕著な印象を与えるものである。
したがって、本件商標からは、例えば、「ヒロゲタツバサ」や「ツバサ」のような称呼が生じ得るものといえる。
ウ 観念上の特徴
上述のように、本件商標中、大きな部分を占めるのが、左右均等に大きく広げた「翼」であり、看者に顕著な印象を与えるものであるから、本件商標からは、「広げた翼」や「翼」のような観念が想起され得るものといえる。
(2)11号引用商標について
ア 外観上の特徴
11号引用商標は、大きく、左右均等に広げた翼を有する図形からなる。
イ 称呼上の特徴
11号引用商標は、図形よりなるところ、この図形の左右に描かれているのが、大きく、均等に広げた「翼」であるとは容易に認識するこができ、また、商標全体のうち大部分を占めるものであり、その特殊な構成から、看者に顕著な印象を与えるものである。
したがって、本件商標からは、例えば、「ヒロゲタツバサ」や「ツバサ」のような称呼が生じ得るものといえる。
ウ 観念上の特徴
11号引用商標中、大きな部分を占めるのが、左右均等に大きく広げた「翼」であり、これが、看者に顕著な印象を与えるものであるから、申立人商標からは、「広げた翼」や「翼」のような観念が想起され得るものといえる。
(3)両商標の対比
ア 外観上の類似性
本件商標、11号引用商標は、いずれも左右均等に大きく広げた翼をもつ図形からなるものであり、この点において、両商標は共通している。
さらに、両商標においては、それぞれの構成部分(中心図形部分、翼部分)のバランスやデザインが近似している。
すなわち、いずれの商標も、正面方向から見た、横長の図形である点で共通しており、また、この横長の図形商標において、中心に配された図形と、翼部分(片方)との横方向の長さの比率も、本件商標が、1対2.5程度であるのに対し、申立人商標は1対3程度であり、構成のバランスが近似している。
また、いずれの商標においても、翼の中に、羽の筋のような模様が、線状に描かれており、デザインにおいても共通する部分がある。
本件商標及び11号引用商標の間には、中心の図形の形状に差異がある。
しかし、いずれの商標についても、左右均等に大きく広げた翼のある図形である点で構成の軌を一にするものであり、また、各商標を構成する図形のバランスやデザインが類似するものであり、これらの共通する部分こそが看者の印象に強く残るものといえる。
両商標を直接対比して観察するとすれば、上述したような細かい差異を認識するものの、これらの差異は、時と場所を異にして、離隔的にそれぞれの商標に接した場合には、明瞭に把握できない程度の差異であり、それぞれの商標の印象としてはほとんど残らないものといえる。
加えて、腕時計の分野においては、商標が、文字盤等の中で、比較的小さく表示される場合が多いことからして、細部の差異にまで注意が及ばないことも多い。
また、簡易迅速を重んじる取引の実際においては、常に、このような構成上の差異を明瞭に意識するとはいえない。
以下にて、商標権者が運営に携わっていると推測される英語ウェブサイト(http://www.olmecawatch.com/)の中で紹介されている、本件商標を付した腕時計(http://www.olmecawatch.com/html/2017/soxl_1213/19.html)と、11号引用商標を付した腕時計(https://www.longines.jp/watches/grande-classique/14-209-4-72-6?gclid=EAia1QobChMivP7vsOP15gIVSXRgChlcNQOKEAAYASAAEgKTFPD_BwE)とを、比較する。
これらの腕時計において、本件商標、11号引用商標は、いずれも文字盤の中央上部に付されている。いずれの腕時計においても、本件商標、11号引用商標に加えて、それぞれに異なる欧文字が付されているものの、左右均等に大きく広げた翼からなる図形については、腕時計全体に対して、同様の大きさ、バランスで配置されており、また、実際の腕時計において確認すると、上述した共通点、すなわち、いずれの商標も正面方向から見た横長の図形である点や、中心の図形と翼部分との長さの比率が近似している点、翼の模様等により、非常に似た印象を与えることが分かる。
また、現実に、時と場所を異にして、離隔的にそれぞれの商標に接した場合には、文字の差異、図形の中心部における差異については、それぞれの商標の印象としてはほとんど残らず、共通点についての印象がよりいっそう強調されるものといえる。
このように、本件商標と11号引用商標は、全体として、相紛れるおそれのある、外観において類似する商標である。
イ 称呼上の類似性
本件商標及び11号引用商標からは、それぞれの商標における大部分を構成する、左右均等に大きく広げた「翼」のある図形に相応して、例えば、「ヒロゲタツバサ」や「ツバサ」のような称呼が生じ得るものといえる。
以上のことを考慮すれば、本件商標と11号引用商標とは、「ヒロゲタツバサ」、「ツバサ」の称呼において共通しており、称呼上、相紛れるおそれがある。
ウ 観念上の類似性
本件商標と11号引用商標からは、それぞれの商標における大部分を構成する、左右均等に大きく広げた「翼」のある図形に相応して、例えば、「ヒロゲタツバサ」や「ツバサ」のような観念が想起され得るものといえる。
以上のことを考慮すれば、本件商標と11号引用商標とは、「ヒロゲタッバサ」、「ツバサ」の観念において共通しており、観念上、相紛れるおそれがある。
エ 商標全体の類似性
商標の類否については、対象となる商標の外観、称呼、観念等によって需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に観察し、当該商標を指定商品等に使用した場合に引用商標と出所混同のおそれがあるか否かにより判断すべきであるところ、上述のように、本件商標は、外観、称呼、観念の3要素のいずれにおいても相紛れるおそれがあるから、本件商標と11号引用商標は、類似の商品に使用した場合、商品の出所に誤認混同を生じるおそれのある類似の商標であるといえる。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
2 商標法第4条第1項第7号について
本件商標は、引用商標と近似するものであり、このような本件商標を、申立人とは何ら関係を有しない他人である本件商標権者が使用することは、本来自らの営業努力によって得るべき業務上の信用を、引用商標の外国における周知著名性にただ乗り(フリーライド)することにより得ようとすることにほかならず、引用商標に化体した莫大な価値を希釈化させるおそれががある。
このような行為は、社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
3 商標法第4条第1項第10号について
使用標章は、「腕時計」との関係において、申立人の業務に係るものを示すものとして、本件商標の出願時には我が国の需要者の間に広く認識されており、その周知著名性は現在も継続している。
そして、本件商標は、引用標章との関係において、外観、称呼、観念において相紛らわしいものである。
すなわち、本件商標は、引用標章と類似する商標であって、その商品又はこれに類似する商品について使用をするものである。
以上の点から、本件商標が、「腕時計」について使用され、日本市場において取引に資される場合には、需要者、取引者に出所の混同を生じせしめるおそれが極めて高い。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。
4 商標法第4条第1項第19号について
引用商標は、申立人の提供する「腕時計」を表示するものとして、世界各国で広く知られており、本件商標権者は、本件商標の出願前より、引用商標を知っていたことは明らかである。
そして、本件商標権者が、引用商標のもつ顧客吸引力を利用し、申立人が継続して使用する商標と酷似する商標を、自己の商品について使用する行為は、引用商標の顧客吸引力(フリーライド)したブランド商品を市場に蔓延させることになり、その結果として、申立人が長年の営業努力によって築いた引用商標に化体した信用、名声、顧客吸引力等の毀損を招来させる。
すなわち、本件商標権者は、引用商標の顧客吸引力を利用(フリーライド)することを意図して、本件商標を取得したことは明らかであって、不正の目的をもって使用をするものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。

第4 当審の判断
1 引用商標の周知性について
(1)申立人の提出に係る証拠によれば、次の事実が認められる。
ア 申立人は、1832年に創業し、スイスのサンティミエに拠点を置く時計メーカーである。140以上の国でビジネスを展開しており、30年以上に亘り、国際体操連盟が開催する体操競技や新体操競技の大会において(甲5の2)、2008年(平成20年)からアーチェリー世界選手権大会(甲5の3)など、数多くの世界的なスポーツイベントの公式スポンサー、公式パートナー、公式タイムキーパーを務めている(甲5、申立人の主張)。2019年(平成31年)1月の、我が国のニュースサイトにおいて、「2018年末に通算製造数5000万本に達した。5000万本の記念として、“ロンジンマスターコレクション”を制作した。・・・日本での展示は未定。」旨の記事が掲載された(甲8の14)。
イ 申立人は、2018年(平成30年)の第36回世界新体操選手権、第48回世界体操競技選手権大会、アーチェリー世界選手権大会2018において、申立人に係る賞の受賞者に、申立人に係る腕時計とその包装箱等を授与し、写真撮影を行い、申立人の日本のウェブサイトにおいて関連記事を掲載した。当該腕時計の包装箱と、写真の背景にある壁紙には、引用商標の図形と、その直上に、申立人の略称である「LONGINES」の文字が写っていた(甲5)。
ウ 我が国で発行されている雑誌のオンライン版ウェブサイトにおいて、2017年(平成29年)6月及び8月、2018年(平成30年)1月、3月、8月及び9月、2019年(平成31年)1月に、申立人に係る腕時計が、限定数において販売されることが紹介され(例えば、甲8の1及び甲8の2においては「限定500本」との記載、甲8の3においては「限定300本」との記載がある。)、腕時計の写真(文字盤に引用商標の図形と、その直上に、申立人の略称である「LONGINES」の文字が刻印されている)が掲載された(甲8)。
エ 我が国の個人や時計専門店が運営するウェブログにおいて、2008年(平成20年)10月、2011年(平成23年)7月、2012年(平成24年)10月及び2015年(平成27年)7月に、申立人に係る腕時計が紹介され、腕時計の写真(文字盤に引用商標の図形と、その直上に、申立人の略称である「LONGINES」の文字が刻印されている)が掲載された(甲9)。
オ 申立人は、テレビ、雑誌、新聞等のマスメディアを通じて自社の提供する腕時計の広告宣伝を行っており(申立人の主張)、我が国で発行されたファッション雑誌に、2012年(平成24年)7月及び8月、2013年(平成25年)4月、2014年(平成26年)11月、2016年(平成28年)7月、2017年(平成29年)4月及び2018年(平成30年)3月に、申立人に係る腕時計の写真(文字盤に引用商標の図形と、その直上に、申立人の略称である「LONGINES」の文字が刻印されている)からなる広告を掲載した(甲10)。
カ 申立人の店舗、例えば、2018年(平成30年)12月に、大分県のトキハ百貨店の時計売り場において、申立人に係る腕時計の専用スペースを設けられ、ショーケースの近くに、申立人に係る腕時計の広告写真が大きく掲示され、引用商標の図形と、その直上に、申立人の略称である「LONGINES」の文字が表された(甲11)。
(2)前記(1)で認定した事実によれば、申立人は、1832年に創業し、スイスのサンティミエに拠点を置く時計メーカーであり、140以上の国でビジネスを展開しており、数多くの世界的なスポーツイベントの公式スポンサー、公式パートナー、公式タイムキーパーを長年務めており、優秀な選手に対し、積極的に申立人に係る賞を授与し、申立人に係る腕時計を進呈した模様が世界に配信されたこと、2018年末に通算製造数5000万本に達し記念モデルの腕時計が制作された旨の記事掲載がなされたことから、申立人の略称である「LONGINES」や、申立人が歴史ある時計メーカーであることがある程度知られていることがうかがえる。
そして、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、我が国においても、引用商標を付した腕時計を販売し、広告宣伝を行っていた。
しかしながら、その使用態様は、引用商標(図形のみからなる商標)と、その直上に、申立人の略称である「LONGINES」の文字を配してなる組み合わせにおいて使用されているものであり、引用商標のみをもって、我が国及び外国においてどの程度知られているのか客観的に把握することができず、需要者の間に広く認識されている状態にあったと判断することはできない。
よって、申立人の提出に係る甲各号証を総合してみても、本件商標の登録出願時及び登録査定時における引用商標の周知性を推し量ることはできない。
(3)そうすると、申立人が提出した証拠からは、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標が、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国及び外国の需要者の間に広く認識されていたということはできない。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
ア 本件商標は、別掲1のとおり、図形のみからなる商標であり、その構成は、左右対称である。
イ 本件商標の構成中、中央部分は、上部に円と、その下に台形とその台形の左右の脚に、丸みを帯びた三角形をそれぞれ接し、台形の下底に逆三角形を組み合わせてなるものであり、これは、円部分が頭、台形部分が上半身、左右の三角形部分が肩の部分、逆三角形部分が下半身と、人間の形を様式化したように看取され得るものである。
ウ 本件商標の構成中、中央部分に接する左右対称の左部分又は右部分の図形は、内側から外側に向けて、丸みを帯びて、放射状に下から上へはねあげた蝶の羽のような、約4分の1の円をデフォルメしたようなデザインである。
エ 本件商標を構成する線は、太い部分と細い部分が混在しており、わずかに直線部分があるものの、おおむね曲線からなり、途中で止まる部分はなく、構成中の各形状に互いに全て接している。
オ 本件商標は、図形のみからなるものであるところ、一見して特定の事物を表したものと認識することは困難であり、特定の称呼及び観念を生じるものとは直ちにいい難いから、出所識別標識としての称呼及び観念は生じないものと判断すべきである。
(2)11号引用商標について
ア 11号引用商標は、別掲2及び別掲3のとおり、いずれも図形のみからなる商標であり、その構成は、左右対称である。
イ 11号引用商標の構成中、中央部分は、縦長の長方形の内側に対角線や横線を配した無機質なデザインからなり、何等かの形状を様式化したものと自然に想起させるものではない。
ウ 11号引用商標の構成中、中央部分に接する左右対称の左部分又は右部分の図形は、内側から外側に向けて、四段にわたって、線を段階的に長く伸ばし、銃を模したような鋭角的な連続した形状である。
エ 11号引用商標を構成する線は、同じ太さからなり、すべて直線からなる。左部分又は右部分の図形部分は、四段階の長さからなる鋭角的なデザインであるが、各段階で、構成される横線は、途中でそれぞれ止まり、互いに接していない。
オ 11号引用商標は、図形のみからなるものであるところ、一見して特定の事物を表したものと認識することは困難であり、それ自体から、特定の称呼及び観念を生じるものとは直ちにいい難いから、出所識別標識としての称呼及び観念は生じないものと判断すべきである。
(3)本件商標と11号引用商標の類否について
本件商標と11号引用商標とを比較すると、称呼及び観念において、いずれも特定の称呼及び観念は生じないものであるから、称呼及び観念については、比較できないものである。
次に、外観においては、本件商標と11号引用商標の外観の構成は、別掲1、別掲2及び別掲3のとおり、いずれも図形のみからなる商標であり、その構成が、左右対称であり、左右の部分が、内側から外側に向けて横長に構成されている点は共通するものの、それぞれの中央部分は、本件商標が、前記(1)イのとおり、円と台形と複数の三角形を組み合わせた人間の形を様式化したような形状であるのに対し、11号引用商標は、前記(2)イのとおり、縦長の長方形の内側に対角線や横線を配した無機質なデザインからなり、何等かの形状を様式化したものと自然に想起させるものではなく、両者は、明らかに相違するものである。
そして、それぞれの左部分又は右部分の図形部分について、本件商標は、前記(1)ウのとおり、内側から外側に向けて、丸みを帯びて、放射状に下から上にはねあげた蝶の羽のような約4分の1の円をデフォルメしたデザインであるのに対し、11号引用商標は、前記(2)ウのとおり、四段にわたって、線を段階的に長く伸ばし、銃を模したような鋭角的な連続した形状であり、両者は、明らかに相違するものである。
また、本件商標を構成する線は、前記(1)エのとおり、太い部分と細い部分が混在しており、構成中の各形状に互いに全て接しており、わずかに直線部分があるものの、おおむね曲線からなり、途中で止まる部分はないのに対し、11号引用商標を構成する線は、前記(2)エのとおり、すべて同じ太さの直線からなり、四段階の長さからなる鋭角的なデザインであるが、各段階で、構成される横線は、途中でそれぞれ止まり、互いに接していないことから、両者は、明らかに相違するものである。
以上より、本件商標と11号引用商標の外観は、それぞれの構成態様において明らかに相違するものであるから、両者は、視覚的な印象が異なり、外観上相紛れるおそれはないものである。
そうすると、本件商標と11号引用商標とは、観念及び称呼において比較できないものであるとしても、外観において相紛れるおそれのないものであるから、これらが需要者に与える印象、記憶、連想等を総合してみれば、両者は、非類似の商標というのが相当である。
(4)本件商標の指定商品と11号引用商標の指定商品との類否
本件商標の指定商品と、11号引用商標の指定商品は同一又は類似する商品である。
(5)小括
以上によれば、本件商標の指定商品が、11号引用商標の指定商品と同一又は類似するとしても、本件商標と11号引用商標は非類似の商標であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標は、上記2(1)のとおり、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激又は他人に不快な印象を与えるような文字からなるものではない。
また、本件商標は、これをその指定商品に使用することが、社会公共の利益や社会の一般的道徳観念に反するものではなく、さらに、その使用が他の法律によって禁止されているもの、外国の権威や尊厳を損なうおそれがあって、国際信義に反するものでもない。
加えて、申立人の主張及び同人の提出に係る甲各号証を総合してみても、本件商標の登録出願の経緯に社会的妥当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に該当すると認めるに足る具体的事実も見いだせず、その他、本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標であると認めるに足りる証拠の提出はない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第10号該当性について
前記2のとおり、引用標章は、本件商標と類似するとはいえないものであり、かつ、前記1のとおり、引用標章は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、需要者の間に広く認識されていたということはできないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
5 商標法第4条第1項第19号について
前記2のとおり、引用商標は、本件商標と類似するとはいえないものであり、かつ、前記1のとおり、引用商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国及び外国における需要者の間に広く認識されていたということはできないものであるから、引用商標が需要者の間に広く認識されていた商標であることを前提に、本件商標は不正の目的をもって使用するものであるとする申立人の主張は、その前提を欠くものである。
また、申立人が提出した証拠からは、本件商標権者が、不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的、その他の不正の目的を持って本件商標を出願し、登録を受けたと認めるに足る具体的事実を見いだすこともできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
6 まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第11号及び同項第19号のいずれにも該当するものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するという事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。


別掲

別掲1 本件商標



別掲2 引用商標1




別掲3 引用商標2



別掲4 引用標章





異議決定日 2020-12-16 
出願番号 商願2018-89560(T2018-89560) 
審決分類 T 1 651・ 263- Y (W14)
T 1 651・ 22- Y (W14)
T 1 651・ 261- Y (W14)
T 1 651・ 222- Y (W14)
T 1 651・ 262- Y (W14)
T 1 651・ 25- Y (W14)
最終処分 維持  
前審関与審査官 松田 訓子 
特許庁審判長 齋藤 貴博
特許庁審判官 豊田 純一
山根 まり子
登録日 2019-07-26 
登録番号 商標登録第6165986号(T6165986) 
権利者 深▲セン▼市茂達鐘表有限公司
代理人 門田 尚也 
代理人 杉村 光嗣 
代理人 西尾 隆弘 
代理人 杉村 憲司 
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