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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X25
管理番号 1376041 
審判番号 取消2020-300330 
総通号数 260 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-08-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2020-05-19 
確定日 2021-07-05 
事件の表示 上記当事者間の登録第5346440号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5346440号商標の指定商品中、第25類「運動用特殊衣服,運動用特殊靴」についての商標登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5346440号商標(以下「本件商標」という。)は、「MOJITO」の欧文字をセリフ体で表してなり、平成22年2月18日に登録出願、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」及び第18類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同年8月20日に設定登録がされ、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、令和2年6月4日であり、商標法第50条第2項に規定する「審判の請求の登録前3年以内」とは、平成29年6月4日から令和2年6月3日までの期間(以下「要証期間」という。)である。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、審判請求書及び弁駁書において、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第4号証を提出した。
以下、証拠の表記に当たっては、「甲(乙)第○号証」を「甲(乙)○」のように省略して記載する。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品中、第25類「運動用特殊衣服,運動用特殊靴」(以下「本件商品」という。)について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者、通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)「運動用特殊衣服」の該当性について
「商品及び役務の区分解説[国際分類第10版対応]」によれば、スポーツをする際に限って使用される特殊な衣服は「運動用特殊衣服」に該当し、スポーツ以外の日常生活でも使用されるものは「被服」に該当すると解説されている。
上記を踏まえ、乙1ないし乙5において示された商品が「運動用特殊衣服」ではなく、「被服」に該当するものであることを以下に述べる。
ア 乙1ないし乙3について
「ブッシュジャケット」は、現在では機能的な衣服として日常的に用いられているものであり、特許庁の類似商品・役務審査基準においても「狩猟用ジャケット」は「被服」に属する商品である。
イ 乙4について
乙4に示された商品は、「今では仕事の日も休みの日もほとんど毎日着用している」と記載されているとおり、機能的な衣服として日常的に用いられているものであり、特許庁の類似商品・役務審査基準においても「狩猟用ジャケット」「釣り用ジャケット」は「被服」に属する商品である。
ウ 乙5について
乙5に示された商品は、日常的に用いられる衣服であり、ハンティングなどに用いるための機能やディテールが備えられているとしても、上述のとおり、「狩猟用ジャケット」は「被服」に属する商品である。
エ 乙6について
被請求人の衣服がどのような認識でつくられたとしても、乙1ないし乙5に示される商品は、スポーツをする際に限って使用する特殊な衣服ではないことから、「被服」であって「運動用特殊衣服」には該当しない。
オ 審決例
審決においても、スポーツ以外の日常生活においても着用される半袖シャツ(ゴルフウェア)は、「運動用特殊衣服」の範ちゅうに属する商品ではなく、「被服」であると認めている(甲4)。
力 小括
以上より、乙1ないし乙5において示された商品は、ハンティングなどをする際に限って使用される特殊な衣服であるとはいえず、スポーツ以外の日常生活に用いられるものであることから、「被服」に属するものであって、「運動用特殊衣服」ではないといえる。
(2)本件商標の使用について
乙1ないし乙5は本件商標の使用を証明するものではない。
ア 乙1ないし乙4には、衣服の写真がいくつか掲載されているが、当該商品の販売の事実を裏付ける取引書類などは存在しない。また、本件商標に係る商標権者(以下「本件商標権者」という。)の名称も表示されていない。
したがって、これらは本件商標権者が実際に当該商品を販売していたことを証明するものではない。
イ 乙4及び乙5には、衣服の写真がいくつか掲載されているが、いずれの写真にも「MOJITO」の語が使用されていることは確認できない。加えて、上記と同様に、当該商品の販売の事実を裏付ける取引書類などは存在しないことから、本件商標権者が実際に当該商品を販売していたことを証明するものではない。
(3)要証期間の使用について
被請求人は、乙1ないし乙5において、ブログに商品を紹介する記事が掲載されているため、ブログの掲載日に本件商標が使用されていると主張する。
しかしながら、仮に要証期間に商品を紹介するブログ記事が掲載されているとしても、乙1ないし乙5には、写真の撮影日や撮影者などの記載もなく、ブログの掲載日において、実際に商品が販売されていたことを証明するものではない。
(4)結語
以上から、乙1ないし乙5に示される商品は、いずれも「運動用特殊衣服」ではないことが明らかであり、当然「運動用特殊靴」でもない。
加えて、乙1ないし乙5から本件商標権者が実際に当該商品を販売していた事実を確認することはできず、ブログの掲載日において、実際に商品が販売されていたことを証明するものでもない。
したがって、本件商標権者が、要証期間に日本国内において本件商標を「運動用特殊衣服」について使用しているということはできない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙1ないし乙6(枝番号を含む。)を提出した。
1 本件商標を付した商品の使用の事実
被請求人は、本件商標を付した以下の商品(以下、これらをまとめて「使用商品」という。)を販売している。
(1)「商品名 ブッシュジャケット」「販売時期 遅くとも令和2年4月3日?」「販売場所 BEAMS」(乙1?乙3)(以下「使用商品1」という。)
(2)「商品名 BIG GAME TOUR JACKET」「販売時期 遅くとも令和2年5月18日?」「販売場所 Arch」(乙4)(以下「使用商品2」という。)
(3)「商品名 Geroge’s Coat」「販売時期 遅くとも令和元年10月2日?」「販売場所 Arch」(乙5)(以下「使用商品3」という。)
2 使用商品の「運動用特殊衣服」該当性
(1)「運動用特殊衣服」の定義
第25類「運動用特殊衣服」とは、専らスポーツをする際に限って着用する特殊な衣服が該当し、例えば、「トレーニングパンツ」「ランニングシャツ」等は、スポーツ以外の日常生活でも使用され、スポーツをする際に限って使用する特殊な衣服でもないことから、「被服」に属するとされている。
(2)「運動用特殊衣服」の判断基準
商標法における商品区分は、市場に流通する膨大な種類の商品全てについて明確に区別されているわけではない。
特に、服装については、現代においては需要者の趣向が多様化しており、例えば、本来的には登山に用いるアウトドア商品をファッションとして街中で使用したり、スポーツ選手が着用するスポーツウェアをファッションとして街中で使用したりするのが普通となっている。
そのような現状において、「被服」「運動用特殊衣服」の区別について、その用途をいたずらに重視すべきではない。
したがって、仮に使用商品が「被服」に該当する場合であっても、「運動用特殊衣服」にも該当する可能性があることも考慮されなければならない。
(3)使用商品が「運動用特殊衣服」に該当すること
ア 使用商品の名称
使用商品1の「ブッシュジャケット」は、元来はサファリ(野生動物の鑑賞や狩猟等)のために考案された衣服であり、ハンティングやフィッシング等のスポーツを目的とする衣服である。
使用商品2の「ゲームジャケット」は、元来はハンティング、フィッシング、乗馬等において着用することを目的とする衣服である。
使用商品3の「Geroge’s Coat」は、乗馬やハンティングにおいて着用することを目的とする衣服である。
したがって、使用商品は、いずれも、ハンティング、フィッシング、乗馬といったスポーツを目的とする名称が付されている。
イ 使用商品の機能及びディテール
使用商品は、ハンティング、フィッシング、乗馬などといったスポーツに用いるための特殊な機能やディテールが備えられている。
ウ 使用商品の販売広告態様
使用商品は、主に衣料品を販売するセレクトショップにおいて販売されており、その販売広告においては、モチーフとなっているハンティングウェア、フィッシングウェア等の機能やディテールが詳細に説明されている(乙1?乙5)。
したがって、使用商品の用途について、ファッションとして街中で着用することがあったとしても、販売広告の態様として、サファリジャケット、ハンティングウェア、フィッシングウェア等の機能に着目して販売がなされている。
エ 被請求人の認識
被請求人のブランド「MOJITO」は、狩猟、釣り、ボクシングをこよなく愛した文豪である「ヘミングウェイ」に尊敬の念を込めて、ヘミングウェイが生前に着用していたブッシュジャケット、ハンティングウェア等を再現すると共に、それを「道具としての服」として展開している(乙6)。
したがって、被請求人としては、使用商品は、「道具としての服」なのであり、ハンティング及びフィッシング等に用いるための「道具」という認識である。
オ 小括
以上の事情を総合的に考慮すると、使用商品は、「運動用特殊衣服」に該当するというべきであって、仮に使用商品が「被服」に該当するとしても、「運動用特殊衣服」にも該当するというべきである。
3 要証期間の使用
使用商品1は、令和2年4月3日(審決注:「令和2年4月7日」の誤記と認める。)のブログに紹介記事が掲載(乙1)、使用商品2は、令和2年5月8日(審決注:「令和2年5月18日」の誤記と認める。)のブログに購入後の記事が掲載(乙4)、使用商品3は、令和元年10月2日付のブログに商品紹介記事が掲載(乙5)されており、同日時点又は遅くとも同日以降販売されていたことが明らかである。
したがって、本件商標が付された使用商品は、いずれも、審判請求の登録前3年以内に使用されていたといえる。
4 結語
以上のとおり、被請求人は、本件商標を使用しているから、登録を取り消されるべきものではない。

第4 被請求人に対する審尋及び被請求人による審尋への回答
1 審尋の要旨
審判長は、被請求人に対し、令和3年2月1日付けで、被請求人による主張及び提出された証拠によっては、被請求人が商標法第50条第2項に規定する証明をしたものと認めることはできない旨の合議体による暫定的見解を示した審尋を送付し、相当の期間を指定して、当該審尋への回答をする機会を与えた。
2 被請求人の回答
前記1の審尋に対して、被請求人は、何ら応答していない。

第5 当審の判断
1 被請求人が提出した証拠によれば、次の事実が認められる。
(1)使用商品1「ブッシュジャケット」の紹介記事が掲載された令和2年2月19日付け(乙2)及び同年4月7日付け(乙1)のファッション関連ブログ記事には、使用商品1及びその商品タグの写真、商品番号、価格が掲載され、当該商品タグにはセリフ体の「MOJITO」(以下「使用商標」という。)の欧文字が表示されているが、当該写真に係る商品はポケット数の多い「ジャケット」であり、「ジャケットの衿をなくし全体的なプロポーションはシューティングジャケットを彷彿とさせる雰囲気でまとめています。」の記載がある。また、使用商品1の商品タグ及び当該ブログ記事には、本件商標権者に係る記載はない。
さらに、乙3は、被請求人が使用商品1の紹介写真とするものであり、当該写真は、使用商品1を着用した人物の写真であるが、その撮影者及び撮影日は明らかではない。
(2)使用商品2「BIG GAME TOUR JACKET」の紹介記事が掲載された令和2年5月18日付け(乙4)のファッション関連ブログ記事には、使用商品2の写真、価格が掲載されているが、当該写真に係る商品は、ワークウェア風の「ジャケット」であり、「1940?1950年代にアメリカで流通していたFISH HUNT JACKET(フィッシングにも、ハンティングにも使えるジャケット)をデザインソースにしています。」の記載がある。また、本件商標権者に係る記載はない。
(3)使用商品3「Geroge’s Coat」の紹介記事が掲載された令和元年10月2日付け(乙5)のファッション関連ブログ記事には、使用商品3の写真、価格が掲載されているが、当該写真に係る商品は、ワークウェア風の「コート」であり、「PEA COATやDUFFLEと同じくGeroge’s Coatも定番と言われる普遍的なアイテムになっていくだろうと確信しました。」の記載がある。また、本件商標権者に係る記載はない。
(4)被請求人が「『MOJITO』のカタログ(抜粋)」とする乙6(乙6の1?乙6の5からなるもの。以下「本件カタログ」という。)には、手書きで2011年ないし2013年の記載、「MOJITO」の表題の文章及び本件商標権者の記載があり、このうち乙6の2には、使用商品3と同じ名称の商品の写真が掲載されているが、カタログ全体は不明である。
2 前記1において認定した事実によれば、以下のとおり判断できる。
(1)使用商品1について
前記1(1)によれば、使用商品1の商品タグには、「MOJITO」の文字からなる使用商標が表示されているところ、当該商標は、「MOJITO」の文字からなる本件商標とそのつづりを同一にするものであるから、使用商標は、本件商標と社会通念上同一の商標といえる。
しかしながら、使用商品1は「ブッシュジャケット」であって、当該商品に使用商標が使用されていることは認められるが、「ブッシュジャケット」は、「元来はサファリ(野生動物の鑑賞や狩猟等)のために考案された衣服」であるとしても、日常生活で使用されるポケット数の多い「ジャケット」であって、「被服」に含まれる商品というべきものであるから、使用商品1が「専らスポーツをする際に限って使用する特殊な衣服」と解される「運動用特殊衣服」に該当するものとはいえない。
また、使用商品1が、専らスポーツする際に限って使用される商品として取引されているといった実情も見いだすことができない。
さらに、使用商品1が、本件商標権者の製造、販売に係る商品であること及び、乙1ないし乙3が本件商標権者に係るものであることも認めることができない。
(2)使用商品2及び使用商品3について
前記1(2)及び前記1(3)のとおり、使用商品2及び使用商品3は、それぞれ「ジャケット」及び「コート」であるから「被服」に含まれる商品であって、「運動用特殊衣服」に該当するものとはいえず、当該使用商品が、本件商標権者の製造、販売に係る商品であることも認めることができない。
また、本件カタログには、使用商品3と同じ名称の商品の写真が掲載されているものの、使用商品1ないし使用商品3と同様に「運動用特殊衣服」に該当するものとはいえず、手書きで記載された日付は要証期間外である。
(3)前記(1)ないし(2)のとおり、被請求人が提出した全証拠によっては、要証期間において、本件商標権者により、本件商品の範ちゅうに含まれる第25類「運動用特殊衣服」について、本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)を使用していることを証明し得る事実を見いだせない。
3 まとめ
以上のとおり、被請求人は、要証期間に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、その請求に係る商品について、本件商標の使用をしていることを証明したとはいえず、また、当該使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにしたともいえない。
したがって、本件商標の登録は、その指定商品中、「結論掲記の指定商品」について、商標法第50条の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲

審理終結日 2021-04-28 
結審通知日 2021-05-06 
審決日 2021-05-26 
出願番号 商願2010-15586(T2010-15586) 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (X25)
最終処分 成立  
前審関与審査官 半田 正人佐藤 丈晴高橋 厚子 
特許庁審判長 中束 としえ
特許庁審判官 黒磯 裕子
馬場 秀敏
登録日 2010-08-20 
登録番号 商標登録第5346440号(T5346440) 
商標の称呼 モヒート、モジト 
代理人 特許業務法人R&C 
代理人 小川 和晃 

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