• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W1825
管理番号 1375213 
異議申立番号 異議2019-900371 
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2021-07-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-12-26 
確定日 2021-06-11 
異議申立件数
事件の表示 登録第6185008号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6185008号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6185008号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、平成30年6月29日に登録出願され、第18類「バッグ」及び第25類「ソックス,サンダル靴及びサンダルげた,履物及び運動用特殊靴,防寒用下着,下着,パジャマ,被服」を指定商品として、令和元年6月12日に登録査定、同年10月4日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するとして、登録異議の申立ての理由として引用する国際登録第1002196号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲2のとおりの構成よりなり、2008年8月14日にアメリカ合衆国においてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条の規定による優先権を主張して、2009年(平成21年)1月16日に国際商標登録出願され、第14類「Watches of Swiss origin」並びに「business cases」を含む第18類、第8類、第9類、第11類、第12類、第16類、第20類、第22類、第25類及び第34類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成22年11月5日に設定登録され、その後、2018年(平成30年)10月12日付けで国際登録簿に記録された取消しの通報があった結果、第8類、第9類、第14類、第18類及び第25類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品とするものであり、平成31年2月5日に商標権の存続期間の更新登録がされ、現に有効に存続しているものである。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第52号証を提出した。
1 理由の要旨
引用商標は、申立人がその指定商品「Watches of Swiss origin; business cases」(参考訳:スイス製の時計、書類かばん)等に使用し、日本においても周知な商標である。
本件商標の指定商品は、引用商標の第18類及び第25類の指定商品と類似し、また、第14類の指定商品ともファッション関連商品として需要者層が共通するから、その出所について混同を生じさせるおそれがある。
2 商標法第4条第1項第15号について
(1)引用商標の著名性
申立人は、1893年にスイスのナイフ工場として設立され、スイス軍にも採用されたアーミーナイフにそのルーツをもつ老舗企業である(甲4)。
アーミーナイフとは、軍隊において戦闘以外の日用的な使用に供される多機能ナイフのことであり、現在でも、インターネット百科事典には、アーミーナイフの発祥企業として、申立人の名が記載されている(甲5)。
申立人は、1997年に腕時計を、その後バッグを発売(甲4)し、我が国においては、主に、これら商品に引用商標を冠して販売している。
申立人は、現在、Victorinox(ビクトリノックス)グループの一員である。
申立人の腕時計及びバッグは、ビクトリノックス・ジャパン株式会社により我が国に輸入されており、時計については、代理店であるマーサインターナショナル株式会社を通じて販売され(甲6、甲7)、また、バッグについては、店舗や、オンラインショッピングサイトを始めとする様々な卸売・小売チャネルを通じて需要者に販売されている(甲8?甲10)。
引用商標を付した申立人の腕時計は、興行収入が100億円を超えた大ヒット映画「踊る大捜査線」の劇場版2作品の中で主人公青島刑事が着用したことでも知られており(甲11、甲12)、当該映画は15年以上前に公開されたものであるが、現在でも根強い人気を誇っており、作中に登場した申立人の腕時計についても、着用した主人公の役名「青島」及び申立人の略称「ウェンガー」と共に、現在でも頻繁にSNSに投稿がある(甲13)。
また、引用商標を付した申立人腕時計は、著名な司会者・タレントが愛用することでも知られている(甲14、甲15)。
申立人の腕時計は、各種雑誌にも多数掲載されている。
その掲載雑誌は、時計に特化したもののみならず、若者向けカジュアル系ファッション誌「FINEBOYS」(甲24、甲38)や、中高年エグゼクティブ向けファッション誌「MEN’S EX」(甲20)、家電や雑貨等を紹介するいわゆる「モノ雑誌」であり、毎号充実した付録が話題となり男女問わず幅広い世代に購読されている「Mono Max」(甲30)など、幅広い需要者層を対象とする様々な雑誌に掲載されている。
また、2018年には、アパレル系を中心に250以上のブランドが出展する、2019年春夏商品の展示会「Spring Summer 2019 JUMBLE TOKYO」にも出展した(甲45)。
このように、引用商標は、申立人及びその業務に係る商品を表すものとして、本件商標の登録出願前から登録査定後にわたり、我が国においても広く知られた商標である。
(2)指定商品の比較
本件商標と引用商標の指定商品を比較すると、本件商標の指定商品は、引用商標の第18類及び第25類の指定商品と類似するものであることは明らかである。
さらに、これら第18類及び第25類の指定商品は、いずれもファッションに関連する商品であり、引用商標の第14類の指定商品とも密接な関連を有するものである。
服やバッグと時計は、たとえ互いに非類似の商品であっても、需要者に同一の出所を想起させ、また、これらの商品は同一のアパレル店で取り扱われることがあり、需要者層を共通とする。
(3)商標の比較
本件商標は、縁取りのある四角形の四隅に切り欠きが入ったものを背景に、十字の図形が表されてなる商標であるのに対し、引用商標は、縁取りのある丸みを帯びた四角形を背景に、十字の図形が表されてなる商標である。
両者の最たる差異は、本件商標は背景の四角形の四隅に切り欠きが入っている点である。
本件商標権者が過去に頒布したカタログにおいて、本件商標は商品にワンポイント的に比較的小さなサイズで付されており、本件商標と引用商標との最たる差異である背景の四隅の切り欠きは非常に視認しにくいものである。
バッグを始めとするアパレル製品では、本件商標のようなロゴタイプの商標は、商品に付される際にごく小さくワンポイントとして付されることは一般的である。そして、そのような商標について、需要者の目が商標の細部にはあまりいかず、一見した際の印象で判別される場合が多くある。その結果として需要者に「四角形で囲われた十字の図形」という印象を与えるものであり、本件商標が需要者に与えるこの印象は、引用商標と共通するから、本件商標が付された商品と、引用商標が付された商品とを、時と場所を異にし、いわゆる隔離観察を行った場合に、両者は混同を生ずるおそれの高いものである。

第4 当審の判断
1 引用商標の周知著名性について
(1)証拠及び申立人の主張によれば、以下のとおりである。
ア 申立人は、1893年にナイフ工場として設立され、アーミーナイフと呼ばれる軍隊において戦闘以外の日用的な使用に供される多機能ナイフの製造を初めて開始した企業としても知られるスイスの企業であり、現在は、Victorinox(ビクトリノックス)グループの一員であることがうかがわれる(甲4、甲5)。
イ 申立人は、1997年に腕時計の販売を開始、その後、バッグの発売を開始した(甲4)。
ウ 申立人の腕時計は、ビクトリノックス・ジャパン株式会社(以下「ビクトリノックスジャパン社」という。)により、遅くとも2017年8月から我が国に輸入され、代理店であるマーサインターナショナル株式会社(以下「マーサ社」という。)を通じて販売されていることがうかがわれる(甲6)。また、マーサ社のものとされる「Urban Metoropolitan(アーバンメトロポリタン)」の表題のウェブサイトには、その左上部に引用商標が表示され、さらに、引用商標が付された腕時計が掲載されている(甲7)。
エ 申立人のバッグは、ビクトリックスジャパン社により、遅くとも2017年8月頃から輸入されていることがうかがわれる。また、申立人は、上記商品は、オンラインショッピングサイトのアマゾン、コストコの店舗などを通じて販売されていると主張しているところ、アマゾンのウェブサイトに掲載されている申立人のバッグ及びコストコの店舗とされる写真の申立人のバッグには、引用商標が付されている(甲8?甲10)。
オ 「歴代ランキング-CINEMAランキング通信」のウェブサイトにおいて、2020年3月22日現在の歴代興収ランキングで、第8位(2003年7月19日公開)、及び第34位(1998年10月31日公開)の映画の主人公が、引用商標が付された申立人の腕時計を身につけ、また、テレビ出演等をする著名なタレントが身につけていたことがうかがわれる(甲11?甲15)。
カ 時計に特化した雑誌を始め、広い世代を対象とした複数のファッション誌や、家電や雑貨等を紹介する雑誌など2017年7月号から2019年7月号として発行された、「腕時計王」(甲16)、「FINEBOYS時計」(甲17、甲28)、「POWER Watch」(甲18、甲34、甲41)、「Men‘s JOKER WATCH」(甲19、甲29)、「MEN‘S EX」(甲20)、「Men‘s JOKER」(甲21)、「OCEANS」(甲22、甲35)、「TIME Gear」(甲23、甲26、甲31、甲36、甲40、甲42)、「FINEBOYS」(甲24、甲38)、「STREET JACK」(甲25)、「men‘s FUDGE」(甲27、甲32、甲33)、「MonoMax」(甲30)及び「Fine」(甲37、甲39)において、2017年に14回、2018年に10回及び2019年に3回、引用商標が付された申立人の腕時計が、単独で又は他の腕時計とともに紹介されている。
キ 申立人の腕時計の我が国における代理店とされる「マーサ社」は、2018年9月19日ないし21日に開催された、「Spring Summer 2019 JUMBLE TOKYO」に引用商標が付された申立人の腕時計を出展し、その展示ブースには、引用商標が表示されたパネルが置かれていたことがうかがえる(甲45)。
(2)引用商標の周知著名性について
ア 上記(1)によれば、引用商標が付された申立人の腕時計は、遅くとも2017年8月以降、我が国に輸入され、ウェブサイトを介して販売されていることがうかがわれ、2017年6月号から2019年7月号として発行された、時計に特化した雑誌を始めとする複数のファッション誌や家電や雑貨等を紹介する雑誌に引用商標が付された申立人の腕時計が紹介され、2018年9月19日ないし21日に開催された展示会に出展されたものといえる。
しかしながら、申立人は1997年から腕時計の販売を開始し、我が国において引用商標を冠して販売している旨主張しているところ、申立人の腕時計の輸入開始時期は明らかでなく、確認できるのは、上記のとおり、2017年以降にすぎず、また、当該商品がウェブサイトにおいて販売されていることはうかがえるものの、いつから、どの程度の数量が販売されているかを確認することができない。さらに、申立人の腕時計の雑誌への掲載も2017年以降にすぎず、かつ、その回数もさほど多いものとはいえない。加えて、展示会の出展は、2018年に3日間のみであり、当該展示会の具体的な規模を確認できる証拠も見いだせず、また、映画の主人公及び著名なタレントが申立人の腕時計を身につけていたことがうかがえるものの、これにより、申立人の腕時計の周知性を推し量ることはできない。
そうすると、提出された証拠によっては、引用商標が我が国において、申立人の業務に係る腕時計を表すものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、取引者、需要者の間で広く認識されていたと認めることができない。
イ 上記(1)によれば、引用商標を付したバッグが、遅くとも2017年8月頃から我が国に輸入され、販売されていることがうかがえる。
しかしながら、提出された証拠によっては、引用商標が我が国において、申立人の業務に係るバッグを表すものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、取引者、需要者の間で広く認識されていたといい得る客観的な証拠を見いだすことはできない。
そうすると、提出された証拠によっては、引用商標が我が国において、申立人の業務に係るバッグを表すものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、取引者、需要者の間で広く認識されていたと認めることができない。
ウ 小括
以上のとおり、引用商標は、申立人の業務に係る腕時計及びかばんを表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
2 本件商標と引用商標との類似性について
本件商標は、別掲1のとおり、四角形の四隅に切り欠きを入れた太線からなる図形の中央に、十字図形を配した構成からなるものである。
そして、当該図形が特定の称呼及び観念をもって親しまれているというような事情も見いだせないことから、本件商標は、特定の観念及び称呼を生じないものである。
これに対して、引用商標は、別掲2のとおり、細線の外枠を有する白抜きで縁取られた、丸みを帯びた黒色の四角形内の中央に、白抜きの十字図形を配した構成からなるものである。
そして、当該図形が特定の称呼及び観念をもって親しまれているというような事情も見いだせないことから、引用商標は、特定の観念及び称呼を生じないものである。
そこで、本件商標と引用商標とを比較してみると、両者は、外観において、いずれも、十字図形を含む点において共通するといい得るとしても、これらは黒色と白抜きの違いがあること並びにそれぞれの十字図形を縁取る図形の形状及び背景の違いという明らかな差異を有することから、これらの差異により両者の外観全体の視覚的印象は大きく異なり、外観上相紛れるおそれのないものと判断するのが相当である。
してみれば、本件商標と引用商標とは、いずれも特定の称呼及び観念を生じないものであるから、称呼及び観念において比較することができないとしても、両商標は、外観において、明らかに相違するものとして看取されるものであって、互いに紛れるおそれのない非類似の商標というべきものである。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
上記1のとおり、引用商標は、我が国において、申立人の業務に係る商品を表すものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、取引者、需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできず、かつ、上記2のとおり、本件商標と引用商標は非類似の商標であって別異の商標というべきものであるから、商標権者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者をして、引用商標を想記又は連想させることなく、その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
別掲1 本件商標(登録第6185008号商標)


別掲2 引用商標(国際登録第1002196号商標)



異議決定日 2021-06-02 
出願番号 商願2018-85351(T2018-85351) 
審決分類 T 1 651・ 271- Y (W1825)
最終処分 維持  
前審関与審査官 藤平 良二大岩 優士 
特許庁審判長 中束 としえ
特許庁審判官 馬場 秀敏
杉本 克治
登録日 2019-10-04 
登録番号 商標登録第6185008号(T6185008) 
権利者 スイス ブランド リミテッド,インコーポレイテッド
代理人 特許業務法人浅村特許事務所 
代理人 ▲吉▼川 俊雄 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ