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審決分類 審判 一部申立て  登録を維持 W0918353841
審判 一部申立て  登録を維持 W0918353841
管理番号 1375212 
異議申立番号 異議2020-900262 
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2021-07-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-10-09 
確定日 2021-06-17 
異議申立件数
事件の表示 登録第6271878号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6271878号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6271878号商標(以下「本件商標」という。)は、「CASPER」の欧文字を横書きした構成からなり、2018年(平成30年)9月24日に欧州連合知的財産庁においてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、平成30年10月23日に登録出願され、第9類、第11類、第16類、第18類、第25類、第35類、第37類、第38類、第41類及び第44類に属する別掲のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、令和2年7月1日に登録査定、同月21日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する登録商標は、以下の2件の商標であり、いずれも現に有効に存続しているものである。
1 登録第4176581号商標(以下「引用商標1」という。)は、「CASPER」の欧文字を横書きした構成からなり、平成6年11月30日に登録出願、第24類「布製身の回り品,ふきん,布団,毛布,カーテン,テーブル掛け,シャワーカーテン」を指定商品として、同10年8月14日に設定登録され、その後、商標登録の取消し審判により、指定商品中の第24類「布団,毛布」について取り消すべき旨の審決がされ、同28年7月8日にその確定審決の登録がされ、現に有効に存続しているものである。
2 登録第3210119号商標(以下「引用商標2」という。)は、「CASPER THE FRIENDLY GHOST」の文字を横書きした構成からなり、平成5年11月25日に登録出願、第28類「遊戯用器具,ダイヤモンドゲーム,おもちゃ,人形,運動用具」を指定商品として、同8年10月31日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
以下、上記の引用商標1及び引用商標2をまとめていうときは、「引用商標」という。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標はその指定商品及び指定役務中、第9類、第18類、第35類、第38類及び第41類の全指定商品及び全指定役務について、商標第4条第1項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号によって、その登録は取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第8号証(枝番号を含む。)を提出した。
以下、証拠の表記に当たっては、「甲第○号証」を「甲○」のように省略して記載する。
1 理由の要点
(1)商標法第4条第1項第15号該当性について
本件商標は、申立人の保有する映像作品の題名及び作品中に登場する主人公であるおばけのキャラクターの名称を表す商標として我が国で周知著名な「CASPER」と同一の文字からなる商標である。すなわち、「CASPER」は、申立人による造語商標であって、1945年に米国でアニメーション作品「Casper the Friendly Ghost」(邦題「出てこいキャスパー」)が初めて発表され、我が国でも1962年から同作品がテレビで放映されて以来、継続的にシリーズ作品となるアニメーション作品及び実写映画作品が発表され、我が国においてもテレビ放映及び映画公開並びにそれらの作品を収録したビデオ及びDVDが販売及びレンタルされ、また、おばけのキャラクター「CASPER」が様々な関連商品及び役務について使用されてきた結果、我が国において極めて高い周知著名性を獲得するに至ったものであり、その著名性は本件商標の登録出願前から現在に至るまで継続しているものである。
よって、本件商標をその指定商品及び指定役務に使用するときは、これに接する需要者、取引者は、本件商標と同一の文字からなり、申立人の保有する映像作品及び作品中に登場する主人公であるおばけのキャラクターである「CASPER」を連想、想起し、その商品及び役務があたかも申立人又は申立人と同一の営業主体の業務に係る商品及び役務、又は申立人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の取り扱う業務に係る商品及び役務であると錯覚して取引にあたると考えられるから、その商品及び役務の出所について混同を生ずるおそれがあるといわざるを得ない。
そして、本件商標の登録を認めた場合には、申立人の商標が持つ顧客吸引力ヘのただ乗り(いわゆるフリーライド)やその希釈化(いわゆるダイリューション)を招くという結果を免れない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号にいう「混同を生ずるおそれがある商標」に該当する。
(2)商標法第4条第1項第19号該当性について
申立人商標「CASPER」(以下「申立人商標」という。)は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の保有する映像作品の題名及び作品中に登場する主人公であるおばけのキャラクターの名称として、また映像作品から派生した様々な関連商品及び役務について一貫して使用された結果、申立人の業務に係る商品及び役務を表す商標として、我が国及び外国における需要者の間で周知著名な商標となっていたものであるから、本件商標は、本件商標権者がそのような「CASPER」の周知著名性に便乗し、申立人商標と同一の文字からなる本件商標の独占排他的使用を得ようとする不正の目的に基づいて出願されたものであることは明らかである。
したがって、本件商標は、その登録出願時及び登録査定時において世界的な周知著名性を獲得していた申立人商標と同一の商標であり、本件商標権者の不正の目的によって出願されたものであるから、出所混同のおそれがあるか否かにかかわらず、商標法第4条第1項第19号に該当する。
2 本件商標が取り消されるべき具体的理由
(1)申立人商標の周知著名性について
ア 商標「CASPER」の周知著名性
申立人商標は、1945年に米国で制作及び発表されたテレビアニメーション作品「Casper the Friendly Ghost」(邦題「出てこいキャスパー」)及び同作品をもとに実写映画化した1995年公開の「Casper」(邦題「キャスパー」)のほか、我が国において1962年より放映されたアニメーション作品「The New Casper Cartoon Show」(邦題「キャスパーと遊ぼう」)、「Casper and Friends」(邦題「おばけのキャスパー」)、「The Spooktacular New Adventures of Casper」、「Casper Meets Wendy」(邦題「キャスパー マジカル・ウェンディ」)、「Casper’s Haunted Christmas」(邦題「キャスパーのクリスマス」)、「Casper’s Scare School」(邦題「キャスパーのオバケ学園」)、「Casper’s First Christmas」(邦題「おばけのキャスパー キャスパーのクリスマス」)等の一連の映像作品の題名及び作品中に登場する主人公であるおばけのキャラクターの名称として、また映像作品から派生した様々な関連商品及び役務について、我が国及び世界中で長年にわたり一貫して使用されてきた結果、申立人の業務に係る商品及び役務を表す商標として、我が国を含む世界中の需要者、取引者の間において広く知られるに至っている周知著名商標である(甲4)。
申立人は、2000年に設立された米国のエンターテインメント企業であり、同社は、前記した「Casper the Friendly Ghost」(邦題「出てこいキャスパー」)のほか、我が国でも人気の高い「ウォーリーをさがせ!」や「名犬ラッシー」等、多数の有カキャラクター及びアニメーション番組を保有しているほか、コミックブックの権利も多く保有しており、その累計販売は20億部を超える(甲5)。なお、引用商標の商標権者は「ハーヴィー コミックス インコーポレーテッド」であるが、引用商標に係る商標権は、2001年にHarvey Entertainment,Inc.に譲渡され、2009年にHarvey Entertainment,Inc.が申立人に合併されることにより、現在は申立人が保有している。
イ 申立人商標に係る映像作品の日本での展開
申立人商標に係る映像作品は、以下に示すとおり、1962年以降現在に至るまで、我が国で継続的にテレビ放送や映画配給がされたほか、ビデオやDVD作品として販売及びレンタルがされている。
(ア)アニメーション作品「Casper the Friendly Ghost」(邦題「出てこいキャスパー」)(1945年発表)
1962年10月6日から1963年4月13日までフジテレビにて放送された。
(イ)アニメーション作品「The New Casper Cartoon Show」(邦題「キャスパーと遊ぼう」)(1963年発表)
1964年8月16日から1966年3月20日までフジテレビにて放送された。その後、1967年12月1日からは、東京12チャンネル(現:テレビ東京)にて放送された。その後、1975年6月1日から1978年にかけて、再びフジテレビにて放送された。
(ウ)アニメーション作品「Casper and Friends」(邦題「おばけのキャスパー」)(1990年発表)
1993年3月21日から6月13日までNHK BS2にて放送された。
(エ)実写映画作品「Casper」(邦題「キャスパー」)(1995年公開)
アニメーション作品「Casper」シリーズの実写版映画として1995年に我が国において公開された。
(オ)アニメーション作品「The Spooktacular New Adventures of Casper」(1996年発表)
前記(エ)の作品設定に基づき制作されたアニメーション作品で、我が国ではビデオ化された後にアニメ専門チャンネル「カートゥーン ネットワーク」にて放送された。
(カ)実写映像作品「キャスパー:誕生編」(1997年発表)
前記(エ)の作品の前日譚を描いたスピンオフ作品として制作された。
(キ)実写映像作品「Casper Meets Wendy」(邦題「キャスパー マジカル・ウェンディ」)(1998年発表)
(ク)アニメーション作品「Casper’s Haunted Christmas」(邦題「キャスパーのクリスマス」)(2000年発表)
我が国では2001年にDVD作品として発表された。
(ケ)アニメーション作品「Casper’s Scare School」(邦題「キャスパーのオバケ学園」)(2006年発表)
我が国では2014年からディズニー・チャンネルにて放送された。
(コ)アニメーション作品「Casper’s First Christmas」(邦題「おばけのキャスパー キャスパーのクリスマス」)(1979年発表)
我が国では「カートゥーン ネットワーク」でクリスマスの時期に放送されることがある。
以上の事実が示すとおり、申立人商標は、申立人の保有する映像作品の題名及び作品中に登場する主人公であるおばけのキャラクターの名称を表す商標であって、我が国では1962年以降現在に至るまで、継続的にテレビ放送や映画配給がされたほか、ビデオやDVD作品として販売及びレンタルがされ、また映像作品から派生した様々な関連商品及び役務について使用されてきた結果、我が国の需要者、取引者の間で広く知られるに至っている周知著名商標である。
ウ 小括
以上のとおり、申立人商標は、申立人の保有する映像作品の題名及び作品中に登場する主人公であるおばけのキャラクターの名称として継続的に使用された結果、申立人の業務に係る商品及び役務を表す商標として我が国を始め世界中で広く知られるに至ったものであり、本件商標の登録出願時である2018年10月23日及びその登録査定時である2020年7月3日(決定注:登録査定は令和2年7月1日)において、我が国の需要者、取引者の間に広く認識された申立人の周知著名商標であったことは明らかである。
(2)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 商標法第4条第1項第15号該当性
前記(1)で述べたとおり、申立人商標は、申立人の保有する映像作品の題名及び作品中に登場する主人公であるおばけのキャラクターの名称として、我が国及び世界中で長年にわたり一貫して使用されてきた結果、申立人の業務に係る商品及び役務を表す商標として、本件商標の登録出願時である2018年10月23日及びその登録査定時である2020年7月3日(決定注:登録査定は令和2年7月1日)において、我が国を含む世界中の需要者、取引者の間において広く知られるに至っている周知著名商標である。
本件商標は、「CASPER」の欧文字を横一列に書してなる商標であり、その構成文字に照応して「キャスパー」の称呼が生じる。そして、「CASPER」は、既述のとおり、申立人の保有する映像作品の題名及び作品中に登場する主人公であるおばけのキャラクターの名称として、また映像作品から派生した様々な関連商品及び役務について、我が国で一貫して使用されてきた結果、申立人の業務に係る商品及び役務を表す商標として、我が国の取引者及び需要者の間で周知著名となっている商標であるから、本件商標は、観念上、申立人の業務に係る映像作品及びその主人公のおばけのキャラクターとしての観念が明確に生じる。
一方、「CASPER」の欧文字からなる引用商標1及び「CASPER」の欧文字をその構成中に含む引用商標2は、既述のとおり、申立人の保有する映像作品の題名及び作品中に登場する主人公であるおばけのキャラクターを指称するものとして、我が国の取引者及び需要者の間で理解し認識されていることから、引用商標のいずれからも、「キャスパー」の称呼並びに申立人の業務に係る映像作品及びその主人公のおばけのキャラクターとしての観念が生じることは明らかである。
したがって、本件商標と引用商標が、その外観、称呼及び観念を共通にするものであることは明らかであり、その類似性の程度は極めて高いというべきである。
また、申立人の周知著名商標である「CASPER」は、1945年に米国で最初に発表されたアニメーション作品「Casper the Friendly Ghost」(邦題「出てこいキャスパー」)及びその後に多数制作及び発表されたシリーズ作品に一貫して登場する主人公であるおばけのキャラクターの名称であり、十分な独創性が認められる。「CASPER」の語は、辞書等に掲載されておらず、よって既成の語に相当するものではなく、申立人による造語であることから、このような文字を採択すること自体、高い顕著性を有しているといえる。したがって、引用商標の独創性は極めて高いものである。
しかして、申立人商標が、申立人の保有する映像作品の題名及び作品中に登場する主人公であるおばけのキャラクターの名称として我が国において周知著名性を獲得している商標であることからすれば、需要者において普通に払われる注意力としては、本件商標に接した需要者は、申立人の保有する映像作品及び作品中に登場する主人公であるおばけのキャラクターを連想、想起し、本件商標に係る指定商品及び指定役務が、申立人又はその関係会社の業務に係る商品及び役務ではないかと誤認して取引に当たるであろうことは容易に想像されるところである。
イ 我が国における判決及び特許庁の審決
平成12年7月11日最高裁第三小法廷判決(甲6)以降、他人の周知著名な商標と同一又は類似する商標あるいは他人の周知著名な商標を一部に含む商標について、当該他人の業務に係る商品等と混同を生じるおそれがあるとして、登録拒絶又は登録無効若しくは取消しの判断をした判決や特許庁の審決は多数存在する(甲7の1ないし10)。
ウ 小括
以上の事実並びに先行判決及び審決例に基づき総合的に勘案すれば、本件商標は、申立人の保有する映像作品の題名及び作品中に登場する主人公であるおばけのキャラクターの名称として我が国で周知著名な「CASPER」と同一の文字からなる商標であり、また「CASPER」は、申立人による造語商標であって、1945年に初めて米国でアニメーション作品「Casper the Friendly Ghost」(邦題「出てこいキャスパー」)が発表され、我が国でも1962年から同作品がテレビで放映されて以来、継続的にそのシリーズ作品となるアニメーション作品及び実写映画作品が多数制作及び発表され、我が国においてテレビ放映及び映画公開並びにそれらの作品を収録したビデオ及びDVDが販売及びレンタルされ、さらに映像作品から派生した様々な関連商品及び役務について使用されてきた結果、我が国において極めて高い周知著名性を獲得するに至ったものであり、その著名性は本件商標の登録出願前から現在に至るまで継続しているものである。
よって、本件商標をその指定商品及び指定役務に使用するときは、これに接する需要者、取引者は、本件商標と同一の文字からなり、申立人の保有する映像作品の題名及び作品中に登場する主人公であるおばけのキャラクターとしての「CASPER」を連想、想起し、その商品及び役務があたかも申立人又は申立人と同一の営業主体の業務に係る商品及び役務、又は申立人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の取り扱う業務に係る商品及び役務であると錯覚して取引にあたると考えられるから、その商品及び役務の出所について混同を生ずるおそれがあるといわざるを得ない。そして、本件商標の登録を認めた場合には、申立人商標が持つ顧客吸引力ヘのただ乗り(いわゆるフリーライド)やその希釈化(いわゆるダイリューション)を招くという結果を免れない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号にいう「混同を生ずるおそれがある商標」に該当するというべきである。
(3)商標法第4条第1項第19号該当性について
ア 申立人商標の周知著名性
前記(1)で述べたとおり、申立人商標は、申立人の保有する映像作品の題名及び作品中に登場する主人公であるおばけのキャラクターの名称として、また映像作品から派生した様々な関連商品及び役務について、我が国及び世界中で長年にわたり一貫して使用されてきた結果、申立人の業務に係る商品及び役務を表す商標として、我が国を含む世界中の需要者、取引者の間において高い周知著名性を獲得するに至った商標であることは明らかである。
したがって、申立人商標は、商標法第4条第1項第19号に規定されるとおり、他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、本件商標の登録出願時である2018年10月23日及びその登録査定時である2020年7月3日(決定注:登録査定は令和2年7月1日)において、我が国又は外国における需要者の間に広く認識されている商標に該当するものである。
イ 本件商標と申立人商標の同一性
本件商標は、「CASPER」の欧文字を横一列に書してなる商標であるが、これは「CASPER」の欧文字を横一列に書してなる申立人商標と同一である。また、本件商標及び申立人商標の文字からは、いずれも「キャスパー」の称呼が生じる。本件商標は既成語ではなく、特定の観念を生じるとはいえないものであるが、申立人の周知著名な商標と同一の「CASPER」の文字から構成されるものであることから、申立人の業務に係る映像作品及びその主人公のおばけのキャラクターとの観念が生じる点において、観念上も、引用商標(決定注:「申立人商標」の誤記と認める。)と共通する。
したがって、本件商標と申立人商標がその外観、称呼及び観念を共通にする同一の商標であることは明白である。
ウ 本件商標権者の「不正の目的
申立人商標は、前述のとおり申立人による長年にわたる努力の積み重ねの結果、需要者の間において広く知られ、高い名声、信用及び評判を獲得するに至っているものであり、本件商標の登録出願時には、申立人商標は、既に申立人の業務に係る商品及び役務を表す商標として、我が国及び外国における需要者の間に極めて広く認識されていた周知著名商標であったことに疑いを挟む余地はない。
本件商標は、そのような申立人の周知著名な商標である「CASPER」と同一の文字からなるものであって、「CASPER」の語は、辞書等に掲載されているような既成の語に相当するものではないことを考慮すれば、本件商標において、申立人の周知著名な商標である「CASPER」と同一の文字が偶然に採択されたものとは到底認め難く、本件商標権者は、一般に相当程度知られていた申立人商標を知りつつ、それが有する高い名声、信用及び評判にただ乗り(フリーライド)する目的、すなわち不正の目的をもって、本件商標の登録出願をし、本件商標を使用したものと推認される。
以上のことから、本件商標権者は、我が国及び外国において周知著名な申立人商標「CASPER」について、その存在を知りつつ、それに化体した信用や名声等に対してただ乗り(フリーライド)する目的で、本件商標の登録出願をしたものと優に推認されるものである。
したがって、本件商標は、他人である申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして我が国及び外国における需要者の間に広く認識されている商標「CASPER」と同一の商標であって、不正の目的をもって使用するものであることは明らかであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するというべきである。
エ 我が国における判決及び特許庁の審決
商標法第4条第1項第19号該当性について判断した裁判例や審決例は、多数存在し(甲8の1ないし12)、いずれも、我が国又は外国における著名商標と同一又は類似する商標を出願した商標権者の不正の目的を認定している。
前述のとおり、申立人商標が他に類例を見ないほど周知著名な商標である事実に鑑みれば、本件商標権者が、申立人の周知著名な造語商標である「CASPER」の存在を知らずに、偶然にそれと同一の文字つづりからなる本件商標を出願したとは到底考えられない。
オ 小括
以上のとおり、申立人商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の保有する映像作品の題名及び作品中に登場する主人公であるおばけのキャラクターの名称として、また映像作品から派生した様々な関連商品及び役務について一貫して使用された結果、申立人の業務に係る商品及び役務を表す商標として、我が国及び外国における需要者の間で周知著名な商標となっていたものであり、本件商標は、本件商標権者がそのような「CASPER」の周知著名性に便乗し、申立人商標と同一の文字からなる本件商標の独占排他的使用を得ようとする不正の目的に基づいて出願し登録がなされたものであることは明らかである。
したがって、本件商標は、その登録出願時及び登録査定時において我が国及び外国で周知著名性を獲得していた申立人商標と同一の文字からなる商標であり、本件商標権者の不正の目的によって出願されたものであるから、出所混同のおそれがあるか否かにかかわらず、商標法第4条第1項第19号に該当するものとして、その登録は排除されなければならない。
3 結び
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、同法第43条の3第2項の規定により取り消されるべきものである。

第4 当審の判断
1 申立人商標の周知性について
(1)申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、「CASPER」の文字は、昭和20年(1945年)に米国で制作された映像作品の題名及び作品中に登場する主人公のおばけのキャラクターの名称を表すものとして使用されており、我が国においても、「CASPER」に関する作品が、同37年(1962年)からテレビで放映され、いくつかの作品についてはビデオ化され、平成7年(1995年)に映画が公開されたこと(甲4:フリー百科事典ウィキペディア「出てこいキャスパー」の項及び申立人の主張)、また、申立人は、米国のアニメーション・キャラクターの大手企業であって、「ウォーリーをさがせ!」や「出てこいキャスパー」など多数の有力キャラクター・アニメーション番組を保有し、コミックブックの権利も多く保有しており、その累計販売が20億部を超えること(甲5:ウェブニュースサイト)などがうかがえる。
しかしながら、上記テレビ放映の視聴者数や視聴率などの視聴実績、ビデオやDVDの販売実績及びレンタル実績、コミックブックスの累計販売における「CASPER」関連作品の販売数などは確認できず、近年のテレビ放映は、2014年の有料放送によるものであって、映画の公開は約25年前である。
そうすると、上記映画の公開時において、「CASPER」の文字からなる申立人商標が、我が国においてある程度知られていたことがうかがえるとしても、提出に係る証拠をもってしては、申立人商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできず、さらに、当審における職権に基づく調査によっても、申立人商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時に広く認識されていたと認め得る事実を見いだすことはできない。
(2)したがって、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人商標が申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、我が国又は外国における需要者に広く認識されているものとは認めることができない。
2 商標法第4条第1項第15号該当性について
申立人商標は、前記1(2)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、他人(申立人)の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されているものということはできないものである。
また、申立人は、申立人商標を構成する「CASPER」の文字は、造語である旨主張しているところ、当該文字は、「米国Wyoming州中部の都市」「男子の名」の意味を有する英語(「ランダムハウス英和大辞典第2版」株式会社小学館)であるから、申立人商標の独創性は、高いとはいえない。
さらに、本件商標の登録異議申立てに係る指定商品及び指定役務(以下「申立商品役務」という。)は、第9類、第18類、第35類、第38類及び第41類の全指定商品及び全指定役務であるところ、申立人商標は米国で制作された映像作品の題名及び作品中に登場する主人公のおばけのキャラクターの名称を表すものであるから、申立商品役務中の「映画の上映・制作又は配給,放送番組の制作」とは関連性があり、取引者、需要者の一部が一致する場合があるとしても、その他の申立商品役務については、申立人は、おばけのキャラクター「CASPER」が「様々な関連商品及び役務について使用されてきた」旨主張しているものの、申立人商標をいかなる商品及び役務に使用しているかについての主張及び証拠はなく、申立人の業務に係る商品又は役務がどのようなものであるのかが明らかでないから、商品及び役務の関連性、取引者、需要者の共通性について判断することができない。
そうすると、「CASPER」の文字からなる本件商標と申立人商標とが類似し、役務の一部において関連性を有し、取引者、需要者の一部が一致する場合があるとしても、「CASPER」の文字は、「米国Wyoming州中部の都市」「男子の名」の意味を有する英語であって、申立人に係る造語ともいえない上、申立人商標は、前記1(2)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、他人(申立人)の業務に係る商品及び役務であることを表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されているものということはできないことからすれば、本件商標権者が、本件商標をその申立商品役務について使用しても、取引者、需要者をして申立人商標を連想又は想起させることはなく、その商品及び役務が、他人(申立人)の業務と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、商品及び役務の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標と申立人商標とが取引者、需要者において出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものとはいえない。
3 商標法第4条第1項第19号該当性について
商標法第4条第1項第19号は、「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもって使用するもの」に該当する商標について、商標登録を受けることができないと規定している。
しかしながら、申立人商標は、前記1(2)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、他人(申立人)の業務に係る商品又は役務を表すものとして、我が国又は外国における需要者の間に広く認識されていたものとはいえないものである。
また、申立人は、商標権者が不正の目的をもって本件商標を使用していることについての具体的な主張や証拠を提出していない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものとはいえない。
4 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、その指定商品及び指定役務中、登録異議の申立てに係る指定商品及び指定役務について、商標法第4条第1項第15号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものとはいえないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲

別掲(本件商標の指定商品及び指定役務)
第9類「コンピュータハードウェア,コンピュータネットワーク用ハードウェア,オンライン上の音声及び映像の記録・閲覧・記憶・共有及び分析に用いる携帯電話機・タブレット及びその他の無線装置用コンピュータソフトウェア,アプリケーションプログラミングインタフェース(API)として使用されるコンピュータソフトウェア,動作・湿度・温度及び光用の電気又は電子センサー,ホームオートメーション用及び家庭用装置の統合用コンピュータソフトウェア,音声・音響・映像及びデータ送信のための無線通信用のコンピュータソフトウェア,個人情報管理用コンピュータソフトウェア,ネットワーク化された家庭用電化製品・家庭用装置及び照明製品を無線ネットワーク経由で接続・操作・統合・制御及び管理するためのコンピュータソフトウェア,睡眠の監視及び睡眠環境の管理用コンピュータハードウェア及びソフトウェア,睡眠データ(動作・位置・呼吸・心拍数・睡眠の質・睡眠時間等を含む)に関する情報の受信・処理・送信及び表示用コンピュータソフトウェア,睡眠スケジュールの追跡・順守及び動機付けに関する情報の管理用コンピュータソフトウェア,睡眠データ(動作・位置・呼吸・心拍数・睡眠の質及び睡眠時間を含む)に関する情報の表示・測定及びインターネットへのアップロード用の電気通信機械器具又は電子応用機械器具,睡眠中のパターン及び出来事(睡眠の質に影響するもの)の監視及び記録用・睡眠に役立つ心地よい音及びメロディーの再生用並びに目覚まし時計機能の提供に用いる睡眠管理用のダウンロード可能なモバイルアプリケーションソフトウェア,測定機械器具,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」
第11類「照明装置,作りつけの電気式照明装置,ランプ,電気式常夜灯,作りつけの電気式照明装置用のスタンド,電球類及び照明用器具」
第16類「小切手帳ホルダー」
第18類「旅行かばん,旅行用ケース,グルーミング用品用のトラベルオーガナイザー,ハンドバッグ,化粧品用ケース(中身なし),革製及び布製の買物袋,汎用スポーツバッグ,トートバッグ,アタッシェケース,ブリーフケースタイプの書類入れ,ブリーフケース,財布,女性用ハンドバッグ,クラッチ型財布,肩掛けかばん,化粧品用バック(中味なし),スーツケース,機内持ち込みの旅行かばん,旅行用の化粧品用バッグ(中味なし),バックパック,書類入れかばん,ウエストパック,キーケース,札入れ及び通学用かばん,旅行用トランク,旅行用衣服かばん,旅行用帽子箱(紙製のもの又は厚紙製のものを除く。),旅行用靴袋,傘,動物運搬用かばん,クレジットカード入れ,名刺入れ,札及びカード入れ,キャンプ用バッグ,登山用バッグ,リュックサック,雑のう,ビーチバッグ,狩猟用獲物袋,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ」
第25類「ワイシャツ類及びシャツ,スウェットシャツ,ポロシャツ,ティーシャツ,帽子,ジャケット,ネクタイ,ベルト,ショール,スカーフ,旅行用スリッパ,スリッパソックス,被服,履物」
第35類「旅行かばんの小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,旅行用ケースの小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,グルーミング用品用のトラベルオーガナイザーの小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,ハンドバッグ・化粧品用ケース(中身なし)・革製及び布製の買物袋の小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,汎用スポーツバッグの小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,トートバッグの小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,アタッシェケースの小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,ブリーフケースタイプの書類入れの小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,ブリーフケースの小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,化粧品用バック(中味なし)の小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,スーツケースの小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,機内持ち込みの旅行かばんの小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,旅行用の化粧品用バッグ(中味なし)の小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,バックパックの小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,書類入れかばんの小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,ウエストパックの小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,キーケースの小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,札入れ及び通学用かばんの小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,旅行用トランクの小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,旅行用衣服かばんの小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,旅行用帽子箱の小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,旅行用靴袋の小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,傘の小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,動物運搬用かばんの小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,クレジットカード入れの小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,名刺入れの小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,札及びカード入れの小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,小切手帳ホルダーの小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,キャンプ用バッグの小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,登山用バッグの小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,リュックサックの小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,雑のうの小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,ビーチバッグの小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,狩猟用獲物袋の小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」
第37類「コンピュータネットワーク・無線ネットワーク又はインターネット経由での電気通信機械器具又は電子応用機械器具の運転状況の遠隔監視・遠隔制御」
第38類「音声・映像・メッセージ及びデータの電子通信(電気通信),電気通信手段経由のデータの送信及び受信,電気通信(「放送」を除く。)」
第41類「オーディオ及び映像の記録,映画の上映・制作又は配給,放送番組の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。)」
第44類「睡眠管理の分野における健康に関する情報の提供及び助言,医療情報の提供,栄養の指導」


異議決定日 2021-06-09 
出願番号 商願2018-131860(T2018-131860) 
審決分類 T 1 652・ 222- Y (W0918353841)
T 1 652・ 271- Y (W0918353841)
最終処分 維持  
前審関与審査官 白鳥 幹周 
特許庁審判長 中束 としえ
特許庁審判官 黒磯 裕子
杉本 克治
登録日 2020-07-21 
登録番号 商標登録第6271878号(T6271878) 
権利者 キャスパー スリープ インコーポレイテッド
商標の称呼 キャスパー、カスパー 
代理人 佐藤 俊司 
代理人 山本 健策 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 井▲高▼ 将斗 
代理人 伊藤 亮介 
代理人 田中 克郎 
代理人 山本 秀策 
代理人 森下 夏樹 
代理人 石川 大輔 
代理人 小林 奈央 
代理人 飯田 貴敏 

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