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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Y09
管理番号 1375049 
審判番号 取消2019-300254 
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2019-04-01 
確定日 2021-05-17 
事件の表示 上記当事者間の登録第4872486号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4872486号商標(以下「本件商標」という。)は、「APOLLO」の欧文字を標準文字で表してなるものであり、平成16年8月20日登録出願、第9類「電子応用機械器具及びその部品」を指定商品として、同17年6月17日に設定登録されたものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、平成31年4月18日である。
なお、本件審判において、商標法第50条第2項に規定する「その審判の請求の登録前3年以内」とは、平成28年4月18日ないし同31年4月17日である(以下「要証期間」という場合がある。)。

第2 請求人の主張
請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の指定商品である第9類「電子応用機械器具及びその部品」(以下「請求に係る指定商品」という場合がある。)についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第4号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その請求に係る指定商品について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。
2 答弁に対する弁駁
(1)被請求人について
被請求人「ヒューレット パッカード エンタープライズ デペロップメント エル ピー」は、1939年創業した「ヒューレット・パッカード」よりエンタープライズ事業を中心として分割されて設立された会社である(甲1)。
(2)本件商標の使用態様について
被請求人は、乙第1号証ないし乙第12号証を提出しながら、本件商標は、通常使用権者である日本HPE社が「Apollo 4000」、「Apollo sx40」、「Apollo 4200 Gen9」がコンピュータサーバーに使用された旨主張している。しかしながら、被請求人が提出した証拠を見る限り、請求人が主張するとおりの商標は使用された状況は発見できず、かつ、そのような商標が使用されたとしても、本件商標とは社会的に同一という主張は失当である。
ア 「Apollo 4000」について
被請求人は、[Apollo 4000]の商標の使用を証明するため、乙第5号証ないし乙第7号証を提出している。乙第5号証が要証期間内である2018年12月21日時点で存在していた日本HPE社のウェブサイトであることには疑問がない。しかしながら、被請求人が提出した乙第5号証を見る限り、「Apollo」が単独で商標として使用された事実は見当たらない。
まず、乙第5号証は、「HPE Apollo 4000 System」を紹介するウェブページであり、冒頭に他の商品説明とは明確に区別されるように、商標説明より大きいサイズで、しかも太い書体で一連に記載された態様で「HPE Apollo 4000 System」が表示されており、「ソフトウェア デファインド オブジェクト及びクラスター化されたストレージ、分析、またはアクティブアーカイブの大規模展開向けに専用設計されたシステム」と紹介されている。さらに、具体的な商品において「HPE Apollo 4200サーバー」、「HPE Apollo 4510 System」が他の要素とは区別されるように、同じ書体でまとまりよく商品名として使用されている。また、当該ウェブサイトの出力物のヘッドに記載されたタイトル名を見てみると「HPE Apollo System | HPE 日本」と表示されている。
以上からすると、「HPE Apollo 4000 SYSTEM」(使用態様1)、「HPE Apollo 4200サーバー」(使用態様2)、「HPE Apollo 4510 System」(使用態様3)という表記が使用されていることは明らかである。
これらの表記の構成要素中、「SYSTEM」や「サーバー」との表記が使用商品を示す商品名にすぎないことを考慮すると、省略されることが一般的に考えられる。また、「4000」、「4200」、「4510」という数字そのものは、識別力が弱く単独で登録されにくい標章であるが、他の要素と結合し、全体として一体不可分に充分識別力を果たす可能性がある。
そうすると、「HPE Apollo 4000」、「HPE Apollo 4200」、「HPE Apollo 4510」として認識されるか、あるいは、全体が長々であるため、「HPE Apollo」として認識されると思われる。いずれも識別力の高い「HPE」が省略されることはなく、常に「HPE Apollo」等が被請求人の商品の出所を表示する商標的機能を発揮していることが自明である。
一方、被請求人は、「Apollo 4000ポートフォリオのご紹介」、「HPEのお客様が、Apollo 4000サーバーの機能をどのように活用してビジネス目標を達成しているかをご覧ください。」、「Apolloシステムの活用事例」、「Apollo4000サーバーの価値を最大に引き出す」という記載をもって、「Apollo」の語が単独で、またはシリーズを示す付記的な数字「4000」とともに記載されていると主張しているが、その主張は失当である。
被請求人は、これらの使用行為は、商標法第2条第3項第8号が規定する「商品・・・に関する広告・・・を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」に該当すると主張している。本規定が定義する商標の使用に該当するためには、商標法第2条第3項第8号が規定する使用の定義に形式的に該当することでは足りず、実質的に商標として使用しなければならない。しかし、被請求人が主張する使用は、いずれもウェブサイト上、商品の出所又はシリーズ商品の出所を示すため、商品又は同種商品群との関係で直接的に使用されておらず、ウェブサイトに商品説明の一部として使用されている。
例えば、乙第5号証のタイトル「HPE Apollo 4000 System | HPE 日本」から、乙第5号証は、「HPE Apollo 4000 System」の商品群に関するウェブページであり、そのページの上段に大きい文字で表されている使用態様1は、「HPE Apollo 4000 System」の商品群を総括する標章であり、出所表示機能を果たすといえる。
さらに、乙第5号証には、ウェブサイトに掲載商品全体の識別表記として左上段の緑色の長方形の枠図形と「Hewelett Packard/Enterprise」の文字及び最後に表記されている緑色の長方形の枠図形のような標章が記載されており、これらの商標は、商標法第2条第3項第8号が規定する商標の使用に該当する。
しかしながら、被請求人が主張する記載は、いずれも商品との関係で直接的に出所表示として使用されていないので、商標的な機能を果たしているとはいい難いものである。
上述のとおり、被請求人が提出した乙第6号証及び乙第7号証からは、少なくとも「HPE Apollo」が被請求人の商品の出所を表示する商標的機能を発揮していることが自明であり、被請求人が主張するとおり、「Apollo」が使用されたという主張は失当である。
イ 「Apollo sx40」について
被請求人は、「Apollo sx40」の使用を証明するために、乙第8号証ないし乙第10号証を提出している。しかしながら、被請求人が主張するように、本件商標「Apollo」が使用されている事実は見受けられない。
乙第8号証には、被請求人が主張するとおり、「HPE Apollo sx 40 System」が紹介されている。この標識は、具体的な商標名として表記されており、「HPE Apollo sx40 System」が全体としてまとまりよく一連に表示されている。つまり、本件商標が単独で使用されたり、書体や文字サイズなどが他の要素と異なり本件商標が区別されるような特殊な態様で使用されたりしたものではない。
乙第9号証には、「HPE Apollo sx40」が商品名として大きく記載されており、商品の説明にも「HPE Apollo sx40」という表現が3回も記載されている。いずれも本件商標のみ特殊な書体で表されることはなく、全体が同書体、同サイズで表されている。
被請求人は、乙第10号証をもって、商品の正面に緑色の枠図形とともに「Apollo sx40」を付したと主張しているが、いずれの提出された写真から被請求人が主張する使用を裸眼で識別することは不可能である。標識が認識されない商品の写真のみもって、被請求人の主張を受け入れることは難しいため、被請求人は、当該商標が視認されるような実際商品の写真及びその商品が継続的な商取引の対象となり得ることを証明する追加証拠を提出する必要がある。
上述のとおり、被請求人が提出した乙第8号証及び乙第10号証からは、少なくとも「HPE Apollo sx40 SYSTEM」(使用態様4)及び「HPE Apollo sx40」(使用態様5)が使用されている事実があり、「HPE」の高い周知度や商標の構成から「HPE」が省略される事情は見受けられないため、少なくとも「HPE Apollo」が被請求人の商品の出所を表示する商標的機能を発揮していることが自明であり、被請求人が主張するとおり、「Apollo」が使用されたとの主張は妥当ではない。
ウ 「Apollo 4200 Gen9」について
被請求人は、「Apollo 4200 Gen9」の使用を証明するために、乙第11号証及び乙第12号証を提出している。しかしながら、被請求人が主張するとおり、本件商標が単独で使用された事情は見受けらない。
乙第11号証は、「HPE Apollo 4200 Gen9サーバーユーザーガイド」であるが、12項にわたり、本件商標に係るものは、表紙に記載されたもののみである。表紙に記載された表示からすると、「HPE Apollo 4200 Gen9」が同書体・同サイズでまとまりよく表示されており、本件商標が単独で認識されるような事情は確認できない。
被請求人は、乙第12号証をもって、商品の正面に「Apollo 4200 Gen9」を付したと主張しているが、提出された写真から被請求人が主張する使用を裸眼で識別することは不可能である。標識が認識されない商品の写真のみをもって、被請求人の主張を受け入れることは難しいため、被請求人は、当該商標が視認されるような実際商品の写真及びその商品が継続的な商取引の対象となり得ることを証明する追加証拠を提出する必要がある。
万一、「Apollo 4200 Gen9」が使用されたとしても、被請求人は、「4200 Gen9」は、Apolloシステムのシリーズを表す付記的な文字にすぎないため、本件商標が使用された旨主張しているが、そのような主張は失当である。
特許庁の審査基準によると数字は、原則として商標法第3条第1項第5号に該当すると規定しており、「4200」は単独では識別力がないと判断されるのが自然と思われる。しかしながら、「Gen9」は、特許庁の審査基準に識別力がない商標の類型として例示されていない。そうすると、「4200 Gen9」が被請求人の商品のシリーズを表す付記的な文字にすぎないとは、安易に考えられず、「Apollo 4200 Gen9」が同じ書体、同じ大きさで一連に書してなるから、全体として認識されるものである。
以上のとおり、乙第11号証及び乙第12号証より、被請求人が「HPE Apollo 4200 Gen9」(使用態様6)を使用したことが明確であり、「HPE」部分の知名度を考慮すると、「HPE」が省略され、本件商標のみが抽出されて認識されることはない。
エ その他の標識について
被請求人は、答弁書において、主張していないが、乙第8号証によると「HPE Apollo 6000 Gen10」(使用態様7)、「HPE Apollo 6500 Gen10」(使用態様8)、「HPE Apollo 2000 System」(使用態様9)をサーバーに商品名として表記していることが発見される。いずれの表記も「HPE」と共に記載されており、「Apollo」のみが抽出され、単独で認識されるような構成ではない。
上記のとおり、本件商標に係る商品群に関して、この種のシリーズ商品の出所を示す商標は、被請求人が提出した証拠に示されているとおり、「Apollo」単独ではなく「HPE Apollo」であることが自然と思われる。
(3)まとめ
上述のとおり、被請求人が提出した証拠からすると、使用態様1ないし使用態様9が認められるが、いずれも本件商標が単独で使用されておらず、また、本件商標のみが抽出されて認識される特段の状況がなく「HPE Apollo」が使用されている。つまり、本件商標は使用されていない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を審判事件答弁書及び審尋回答書において、要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第32号証(枝番号を含む。以下、枝番号の全てを引用するときは、枝番号を省略して記載する。)を提出した。
1 審判事件答弁書の要旨
(1)本件商標の通常使用権
被請求人は、米国法人「ヒューレット・パッカード・エンタープライズ・カンパニー」(以下「米HPE社」という。)、及び米HPE社の日本子会社である「日本ヒューレット・パッカード株式会社」(以下、「日本HPE社」という。)と同じ企業グループ内の会社である。このことを示すべく、例えば、米HPE社及び日本HPE社のウェブサイト(乙1、乙2)の左上に表示される商標(緑色の長方形の枠図形)については、被請求人が米国及び日本においてその商標登録の権利者となっており(乙3、乙4)、被請求人が、日本国内での同商標の使用を日本HPE社に対して黙示的に(ないしは口頭により)許諾している。また、米HPE社及び日本HPE社のウェブサイト(乙1、乙2)の末尾の著作権表示には、「Copyright 2019 Hewlett Packard Enterprise Development LP」と被請求人の名称が記載されている。
被請求人は、本件商標についても、黙示的に(ないしは口頭により)日本HPE社に対して、その使用を許諾しており、日本HPE社(通常使用権者)は、本件商標を請求に係る指定商品について、日本国内において使用している。
(2)本件商標の使用の態様
日本HPE社は、本件商標「APOLLO」を、自社が販売するコンピュータサーバー製品について使用している。
ア Apollo 4000について
乙第5号証のウェブページは、要証期間内である2018年12月21日時点において存在していた日本HPE社のウェブページであり、日本HPE社が販売する「Apollo 4000」シリーズのコンピュータサーバー製品についての情報を掲載しているものである。同ウェブページは、Internet ArchiveのWayback Machine(乙6)を利用して、被請求人において取得したものである(乙7)。乙第5号証のウェブページには、乙第2号証と同様に、末尾の著作権表示に、「Copyright 2018 Hewlett Packard Enterprise Development LP」と被請求人の名称が記載されており、被請求人が、乙第5号証において「Apollo」の語を使用することを了承していることは明らかである。
乙第5号証のウェブページの中身を見ると、「Apollo 4000ポートフォリオのご紹介」、「HPEのお客様が、Apollo 4000サーバーの機能をどのように活用してビジネス目標を達成しているかをご覧ください。」、「Apolloシステムの活用事例」、「Apollo 4000サーバーの価値を最大限に引き出す」のように、「Apollo」の語が単独で、又はシリーズを示す付記的な数字「4000」と共に記載されていることが分かる。
日本HPE社による「Apollo」標章のウェブサイトにおける表示行為は、「商品・・・に関する広告・・・を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」(商標法第2条第3項第8号)に該当するものである。
イ Apollo sx40について
乙第8号証のカタログは、最終頁の末尾に記載されているとおり、2018年3月現在の日本HPE社の販売製品に係る情報を記載したものである。乙第8号証においても、末尾の著作権表示に、「Copyright 2018 Hewlett Packard Enterprise Development LP」と被請求人の名称が記載されている。
乙第8号証の7頁目中段には、コンピュータサーバー製品である「HPE Apollo sx40 System」についての紹介があり、その左横には、同サーバーの写真が掲載されている。同サーバーは、現在も日本HPE社において販売されているところ、日本HPE社のウェブページ(乙9)には、「HPE Apollo sx40」との見出しとともに、右側に乙第8号証7頁目の上記写真と同一の写真が掲載されている。乙第9号証のサーバーの写真(正面斜視図及び正面図)を拡大すると、製品の正面右上に、被請求人が保有する前述の商標「緑色の長方形の枠図」と共に「Apollo sx40」との記載があるのが分かる(乙10)。「Apollo sx40」の「sx40」も、上記アにおける「Apollo 4000」の「4000」と同様、Apolloシステムのシリーズを示す付記的な数字にすぎない。
これらの証拠から明らかなように、日本HPE社は、要証期間内である2018年3月時点において、「Apollo」との標章が正面に直接付されたサーバー製品を販売していたものであり、かかる行為は、「商品・・・に標章を付したものを・・・譲渡・・・する行為」(商標法第2条第3項第2号)に該当するものである。
ウ Apollo 4200 Gen9について
乙第11号証の「HPE Apollo 4200 Gen9 サーバーユーザーガイド」は、表紙の左下に記載されているとおり、2017年3月に発行されたものである。2頁目の上部には著作権表示があり、「2015、2017 Hewlett Packard Enterprise Development LP」と被請求人の名称が記載されている。8頁目には、「Apollo 4200 Gen9」サーバーの正面図が記載されている。
乙第12号証は、乙第11号証のサーバー製品の実物写真であり、製品の正面右下には「Apollo 4200 Gen9」と付されている。「Apollo 4200 Gen9」の「4200 Gen9」も、Apolloシステムのシリーズを示す付記的な文字(Gen9は、第9世代を意味する「Generation 9」の略語である。)にすぎない。
このように、日本HPE社は、要証期間内である2017年3月時点においても、「Apollo」との標章が正面に直接付されたサーバー製品を販売していたものであり、かかる行為は、「商品・・・に標章を付したものを・・・譲渡・・・する行為」(商標法第2条第3項第2号)に該当するものである。
(3)結論
以上のとおり、本件商標は、通常使用権者である日本HPE社により、日本国内において、要証期間内に、「電子応用機械器具」であるコンピュータサーバーについて使用されていたものである。
2 審尋回答書の要旨
(1)「Apollo」商標を付したコンピュータサーバーの譲渡による「使用」についての補充的主張
請求人は、乙第10号証及び乙第12号証の写真からは、本件商標の使用を裸眼で識別することができない等と述べて、この点を争っているので、より鮮明な写真その他の補充証拠(乙13?乙32)を追加した上で、以下において、改めて被請求人の主張を述べる。
ア 「Apollo」商標を付したコンピュータサーバーの譲渡の事実
日本HPE社は、「Apollo 4200 Gen9」及び「Apollo sx40」と付されたコンピュータサーバーを、要証期間内に日本国内で譲渡している。
(ア)Apollo 4200 Gen9サーバーについて
乙第13号証は、「Apollo」と「4200 Gen9」の文字が商品の右側に二段書きで付されたコンピュータサーバーの鮮明な写真及び商標部分の拡大写真(乙13)である。
乙第12号証の写真が不鮮明であると請求人が主張したことから、より鮮明な写真を用意した。
なお、「Apollo 4200 Gen9」の「4200 Gen9」の部分は、サーバーのシリーズ又はモデルを表す付記的な文字にすぎず、商標としての商品の出所表示機能・自他識別機能を発揮するのは、「Apollo」の文字部分である。
乙第14号証ないし乙第17号証は、「Apollo 4200 Gen9」と商品に付された乙第13号証のコンピュータサーバーが、要証期間内に、日本国内において実際に譲渡されたことを示す商品注文書・受領書・請求書の写しである。乙第14号証ないし乙第17号証の商品注文書及び請求書には、それぞれ取引の品名として「Apollo 4200 Gen9」と記載されている。
なお、個人の担当者名や連絡先等の個人情報、顧客毎に定めている値引き額とそれを反映した合計額・消費税額等、及び振込口座情報は、営業秘密であるため、黒塗りしている。
a 乙第14号証の1の「商品注文書」に記載の発注日は「2018年10月22日」、発注者は「ダイワボウ情報システム株式会社」、納品先は「伊藤忠テクノソリューションズ株式会社」、注文番号は「10786127-01?10」となっている。
b 乙第14号証の2の「物品受領書」は、一見すると日本HPE社が作成した書類であるかのように見えるが、実際には日本HPE社は「物品受領書」のフォームを作成しているだけであり、商品と共にこの「物品受領書」を受領した顧客は、「物品受領書」の右下に受領日を記入及び受領印を捺印し、日本HPE社に返送することとなっている。
乙第14号証の2に記載の出荷年月日は「2018年10月29日」、右下に押された受領印「吉田」の横にスタンプされている受領日付は「2018年10月30日」、契約先は上記発注者「ダイワボウ情報システム株式会社」、納入先は上記納品先「伊藤忠テクノソリューションズ株式会社」となっており、注文番号は「10786127-01-10」となっている。品名の明細及び数量を含め、これらの記載はいずれも、乙第14号証の1の「商品注文書」の記載と整合している。
なお、物品受領書が複数枚にわたっているのは、出荷を複数に分けて行う必要があったためである。
c 乙第14号証の3の「請求書」に記載の請求年月日は、上記「物品受領書」に記載の出荷年月日と同じ「2018年10月29日」であり、契約先・納入先・注文番号・品名及び数量は、いずれも乙第14号証の1及び乙第14号証の2と整合している。
次に、乙第15号証ないし乙第17号証の商品注文書・受領書・請求書について説明する。
なお、個人の担当者名や連絡先等の個人情報、顧客毎に定めている値引き額とそれを反映した合計額・消費税額等、及び振込口座情報は、営業秘密であるため、黒塗りしている。
d 「商品注文書」と「請求書」は、乙第14号証の1の「商品注文書」及び乙第14号証の3の「請求書」と同じ体裁となっている。
e 「受領書」については、日本HPE社は、通常の宅配便により株式会社近鉄ロジスティクス・システムズ(以下「近鉄ロジスティクス社」という。)に商品の配送を依頼する場合、乙第14号証の2のような「物品受領書」ではなく、乙第15号証の2、乙第16号証の2、乙第17号証の2のような「配送伝票(着店控)」によって、商品受領の確認を行っている。近鉄ロジスティクス社は、商品を配達する際に、顧客に配送伝票の右下に受領日及び受領印を記入・捺印してもらい、それを日本HPE社にファックス等により送付することとなっている。
乙第15号証を例にとってみると、乙第15号証の2の「受領書」のお届け先情報(ドコモ・システムズ(株))、及び左上の発送日付(2019年(平成31年)1月17日)と右下の受領日(平成31年1月18日)は、乙第15号証の1の「商品注文書」及び乙第15号証の3の「請求書」の納品先・発注日・請求年月日と整合的であり、同「受領書」の左下の記事欄に記載の「89FC80405003」との文字数列は、同「請求書」の右上に記載の「弊社手配番号:89FC-80405-003」と一致している。よって、乙第15号証は、同一の取引についての書類であることが分かる。
f 乙第11号証は、乙第13号証に示されたコンピュータサーバーが要証期間内に、日本国内において販売されていた事実を示すユーザーガイドである。乙第11号証の8頁の上部及び下部に示されたコンピュータサーバーと、乙第13号証のコンピュータサーバーは、機器の外観が同一であることから明らかなとおり、同一のコンピュータサーバーである。
乙第11号証の表紙には、「HPE Apollo 4200 Gen9 サーバーユーザーガイド」と記載されているが、被請求人及び日本HPE社は、「HPE Apollo」と「Apollo」を同じコンピュータサーバー群について併用しており、当該「HPE Apollo 4200 Gen9」との記載が、「Apollo 4200 Gen9」と付された乙第13号証のコンピュータサーバーを指していることは、「4200 Gen9」の文字の共通性からして明らかである。
よって、乙第11号証は、「Apollo 4200 Gen9」と付された乙第13号証のコンピュータサーバーが日本国内において販売されていたという事実を証するものであることに、相違ない。
(イ)Apollo sx40サーバーについて
乙第18号証は、「Apollo sx40」と商品の右側に付されたコンピュータサーバーの鮮明な写真及び商標部分の拡大写真(乙18)である。乙第10号証の写真が不鮮明であると請求人が主張したことから、より鮮明な写真を用意した。
なお、乙第18号証の商品に付された「Apollo sx40」の「sx40」の部分は、商品モデルを表す付記的な文字にすぎず、商標としての商品の出所表示機能・自他識別機能を発揮するのは、「Apollo」の文字部分である。
乙第19号証は、「Apollo sx40」と商品に付された乙第18号証のコンピュータサーバーが、要証期間内に、日本国内において実際に譲渡されたことを示す商品注文書・物品受領書・請求書の写しである。これらの書類の体裁については、乙第14号証と同一である。
乙第19号証の2の受領印欄には「SCSK」との手書きの記載があるが、これは、日本HPE社の販売店であるSCSK株式会社の従業員が、新日鐵住金株式会社への商品納品時に立会い、代わりに受取サインをしたためである。受領日付が2通りあるが、出荷年月日が「2018年6月22日」であることからして手書きの「2018年6月22日」は誤りであり、訂正のために「18.6.25」とのハンコが捺印されたと考えられる。
なお、個人の担当者名や連絡先等の個人情報、顧客毎に定めている値引き額とそれを反映した合計額・消費税額等、及び振込口座情報は、営業秘密であるため、黒塗りしている。
乙第19号証の書類には、品名として「HPE Apollo sx40」と記載されているが、被請求人及び日本HPE社は、「HPE Apollo」と「Apollo」を同じコンピュータサーバー群について併用しており、当該「HPE Apollo sx40」との記載が、「Apollo sx40」と付された乙第18号証のコンピュータサーバーを指していることは、「sx40」の文字の共通性からして明らかである。
よって、乙第19号証は、「Apollo sx40」と付された乙第18号証のコンピュータサーバーが日本国内において譲渡されたという事実を証するものであることに相違ない。
乙第8号証は、乙第18号証に示されたコンピュータサーバーが、要証期間内に日本国内において販売されていた事実を示すカタログである。
乙第8号証の7頁の赤い矢印で示されたコンピュータサーバーと、乙第18号証のコンピュータサーバーは、機器の外観が同一であることから明らかなとおり、同一のコンピュータサーバーである。
乙第8号証の7頁には、「HPE Apollo sx40 System」と記載されているが、被請求人及び日本HPE社は、「HPE Apollo」と「Apollo」を同じコンピュータサーバー群について併用しており、「HPE Apollo sx40」との記載が、「Apollo sx40」と付された乙第18号証のコンピュータサーバーを指していることは、「sx40」の文字の共通性からしても明らかである。
よって、乙第8号証は、「Apollo sx40」と付された乙第18号証のコンピュータサーバーが日本国内において販売されていたという事実を証するものであることに相違ない。
以上の証拠より、被請求人の通常使用権者である日本HPE社が、「Apollo」商標が直接付されたコンピュータサーバーを、要証期間内に日本国内で譲渡(商標法第2条第3項第2号)することにより、本件商標と社会通念上同一の商標を使用していたことは明らかである。
イ 「sx40」及び「4200 Gen9」は付記的な文字と認識されること
乙第20号証ないし乙第31号証が示すとおり、コンピュータ関連の商品の分野においては、商標名の後に「Gen」や「Generation」を付記して、商品が「第何世代」のシリーズ又はモデルであるかを示すことが、取引上一般に行われている。したがって、商標名の後に付記された「Gen」の文字は、「Generation(世代)」の略称として認識されるものであり、乙第13号証のコンピュータサーバーに付されている「Apollo 4200 Gen9」の「Gen9」も、「第9世代」を表す付記的な文字であると認識されることが明らかである。
ウ まとめ
(ア)日本HPE社が、要証期間内に日本国内において譲渡した商品である被請求人及び日本HPE社のコンピュータサーバーの正面には、「Apollo sx40」及び「Apollo 4200 Gen9」との文字が付されている。
(イ)当該サーバーに付された「Apollo sx40」及び「Apollo 4200 Gen9」の文字のうち、末尾の「sx40」及び「4200 Gen9」はモデルを表す付記的なものと認識されることから、識別力を有する部分は「Apollo」のみである。
(ウ)このように使用されている商標「Apollo」は、本件商標「APOLLO」と社会通念上同一の商標である。
(エ)被請求人の通常使用権者たる日本HPE社が、要証期間内に日本国内において、本件商標と社会通念上同一の商標「Apollo」を付したコンピュータサーバーを譲渡したこと、すなわち、商標法第2条第3項第2号の「使用」(「商品・・・に標章を付したものを譲渡・・・する行為」)をしたことは、明らかである。
(2)結論
よって、被請求人は、本件審判の請求は成り立たない。

第4 当審の判断
1 事実認定
(1)被請求人の提出した証拠及びその主張によれば、次のとおりである。
ア 被請求人の主張によれば、乙第1号証及び乙第2号証は、被請求人及び日本HPE社のウェブサイトの写しであり、両ウェブサイトの1頁の左上には、「緑色の長方形の枠図/Hewlett Packard/Enterprise」の表示、最後の頁には、「Copyright 2019 Hewlett Packard Enterprise Development LP」及び緑色の長方形の枠図が表示されている。また、乙第3号証及び乙第4号証は、米国及び日本における商標出願・登録情報の写しであり、被請求人が、米国及び日本において、緑色の長方形の枠図を商標出願し、米国においては、2017年(平成29年)11月7日、日本においては、平成29年7月14日に設定登録され、商標権者となっているものであるから、日本HPE社は、被請求人とグループ会社の関係であることがうかがえる。
イ 乙第8号証は、日本HPE社が作成した「HPEハイパフォーマンス/コンピューティングソリューション」と題するソフトウェア製品、スーパーコンピューター、コンピュータサーバー等を掲載したカタログの写しであり、このカタログの7頁には、「HPE Apollo sx40 System」の項目の下に、「NVLink対応GPUを4基搭載可能な1Uサーバー」の記載とともに、その特徴、効果等の表す記載及びその左側部分に上蓋を取った状態の商品の画像が掲載されている。また、このカタログの最後の頁には、「(C)Copyright 2018 Hewlett Packard Enterprise Development LP」及び「記載事項は個別に明記された場合を除き2018年3月現在のものです。」等の記載があるから、このカタログが、2018年(平成30年)3月に作成されたものであることがうかがえる。
ウ 乙第9号証は、2019年(令和元年)7月12日に出力された日本HPE社のウェブページの写しであるが、「HPE Apollo sx40」と題する項目の下に、「仕様」として「・・・HPE Apollo sx40は、ディープラーニングとHPCワークロードに最適化された業界標準サーバーであり、・・・」及び「機能」として「HPCやディープラーニングに最適化された、柔軟なサーバー構成」の記載があり、上蓋を取った状態の商品の画像が掲載されている。また、このウェブページの最後の方には、「(C)Copyright 2019 Hewlett Packard Enterprise Development LP」の記載がある。
エ 乙第10号証の1葉目は、被請求人の主張によれば、乙第8号証及び乙第9号証に掲載されている商品の拡大画像である。
オ 乙第18号証の1葉目には、乙第8号証、乙第9号証及び乙第10号証の1葉目と同様の商品の拡大画像が掲載され、乙第18号証の2葉目には、当該商品の右端部分を更に拡大した画像が掲載されている。なお、当該右端部分の拡大画像には、「Apollo sx40」の文字が付されている。
カ 乙第19号証の1は、ダイワボウ情報システム株式会社(以下「ダイワボウ社」という。)が日本HPE社へ2018年(平成30年)3月14日に発注した商品注文書の写しであり、これには、「注文番号」が「FL814220?1」、「商品コード/商品名」が「#Q5S69A/HPE Apollo sx40 4xP100 CTO Server」、「数量/単位」が「2台」の記載がある。
キ 乙第19号証の2は、日本HPE社からダイワボウ社宛ての2018年(平成30年)6月25日に商品を受領した旨記載がある物品受領書の写しであり、これには、「貴注文番号:FL814220?1-5」、「出荷年月日:2018年6月22日」、「弊社手配番号:89FC-732226-001」の記載があり、「下記の通り納品いたします。」の下、「品番」欄に「Q5S69A」、「品名」欄に「HPE Apollo sx40 4xP100 CTO Server」、「数量」欄に「2」の記載がある。
ク 乙第19号証の3は、日本HPE社からダイワボウ社へ2018年(平成30年)6月22日を請求日とする請求書の写しであり、これには、「弊社手配番号:89FC-732226-001」、「貴注文番号:FL814220?1-5」の記載があり、「下記の通り御請求申し上げます。」の下、「品番」欄に「Q5S69A」、「品名」欄に「HPE Apollo sx40 4xP100 CTO Server」、「数量」欄に「2」の記載がある。
(2)上記(1)によれば、次の事実を認めることができる。
ア 上記(1)アないしオによれば、被請求人のグループ会社である日本HPE社は、2018年(平成30年)3月頃には、自社作成のカタログにおいて、「HPE Apollo sx40 System」と題する項目のもと、「NVLink対応GPUを4基搭載可能な1Uサーバー」といった商品紹介とともに、上蓋を取った状態の商品の画像を掲載した。また、日付は特定できないものの、2019年頃、自社のウェブページにおいて、「HPE Apollo sx40」と題する項目のもと、「業界標準サーバー」や「柔軟なサーバー構成」などといった商品紹介とともに、上蓋を取った状態の商品の画像を掲載した。さらに、上記カタログ及び上記ウェブページに掲載している商品の画像と同一視できる画像(拡大図)及びその右端部分の拡大画像から、当該商品に「Apollo sx40」(以下「使用商標」という場合がある。)が付されていることを確認することができる。
イ 上記(1)カないしクによれば、上記カタログ及びウェブページに掲載された「Apollo sx40」の文字が付された商品と上記取引書類において取引された商品は、商品名が一致することから、同一のものと推認でき、2018年(平成30年)3月から6月にかけて、日本HPE社とダイワボウ社との間において当該商品についての取引が行われたといえる。
2 判断
(1)使用商標
本件商標は、上記第1のとおり、「APOLLO」の欧文字を標準文字で表してなり、使用商標は、「Apollo sx40」と欧文字及び数字の組み合わせを横書きしてなるものであり、その構成中の「sx40」の文字部分は、商品の品番、型番を表す際に使用される記号、符号の一類型を認識させるもので、それ自体では自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものであるから、使用商標の「Apollo」の文字部分が自他商品の識別標識たる要部というべきである。
そうすると、本件商標と使用商標の要部である「Apollo」とは、語頭「A」以外の文字の大文字又は小文字といった違いはあるものの、本件商標と使用商標とは、社会通念上同一と認められる商標である。
(2)使用商品
カタログ(乙8)における「NVLink対応GPUを4基搭載可能な1Uサーバー」、ウェブページ(乙9)における「業界標準サーバー」や「柔軟なサーバー構成」の記載から、使用商品は「コンピュータサーバー」であって、これは、本件審判の請求に係る指定商品中の「電子応用機械器具」の範ちゅうに属する商品である。
(3)使用者
使用商標の使用者である日本HPE社は、上記1(1)アのとおり、商標権者のグループ会社であるから、両者の間には、本件商標を使用することについて、黙示の許諾があったものと推認でき、日本HPE社は、本件商標に係る通常使用権者といえる。
(4)使用時期
使用商品は、取引先から通常使用権者へ2018年(平成30年)3月14日に発注され、その後取引先に同年6月25日に納品されていたことから、要証期間内に取引されていたといえる。
(5)小括
以上によれば、本件商標の通常使用権者は、要証期間に、日本国内において本件審判の請求に係る指定商品中の「電子応用機械器具」の範ちゅうに含まれる商品「コンピュータサーバー」に本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付したものを譲渡した(商標法第2条第3項第2号に該当。)と認められる。
3 まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において本件商標の通常使用権者がその請求に係る指定商品について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用をしていたことを証明したということができる。
したがって、本件商標の登録は、その請求に係る指定商品について、商標法第50条の規定により、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲

審理終結日 2020-12-11 
結審通知日 2020-12-15 
審決日 2021-01-06 
出願番号 商願2004-77082(T2004-77082) 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (Y09)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 榎本 政実
特許庁審判官 齋藤 貴博
小松 里美
登録日 2005-06-17 
登録番号 商標登録第4872486号(T4872486) 
商標の称呼 アポロ 
代理人 瀧澤 文 
代理人 鈴木 康仁 
代理人 小林 浩 
代理人 庄司 隆 
代理人 魯 佳瑛 
代理人 村井 康司 

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