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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X44
管理番号 1375006 
審判番号 取消2018-300783 
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2018-10-17 
確定日 2021-05-10 
事件の表示 上記当事者間の登録第5227789号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5227789号商標の指定役務中、第44類「入浴施設の提供」についての商標登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5227789号商標(以下「本件商標」という。)は、「インフィニティ」の文字を標準文字で表してなり、平成19年年10月9日登録出願、第44類「美容又は理容に関するカウンセリング,美容,理容,爪の美容,着付け,あん摩・マッサージ及び指圧,カイロプラクティック,きゅう,はり,美容・理容に関する情報の提供,美容院用又は理髪店用の機械器具の貸与,入浴施設の提供」を指定役務として、同21年5月1日に設定登録されたものであって、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、平成30年10月31日であり、その請求の登録前3年以内の平成27年10月31日から同30年10月30日までの期間を以下「要証期間」という。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第4号証を提出している。
1 請求の理由
本件商標は、その指定役務中、第44類「入浴施設の提供」(以下「本件指定役務」という。)について、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者、通常使用権者のいずれによっても使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定に基づき取り消されるべきである。
2 答弁に対する弁駁
(1)被請求人は本件商標と社会通念上同一の商標を本件指定役務について使用している旨を主張しているが、乙第1号証及び乙第2号証によれば、「ウェスティンホテル仙台店」内のサロン「flowspa(フロースパ)」のトリートメントメニューの名称として本件商標を含む「アンチエイジング インフィニティケア」を使用しているにすぎない。
(2)乙各号証及び答弁の内容から、本件商標と社会通念上同一の商標の使用は確認できない。
被請求人は、「インフィニティケア」のうち「ケア」の文字部分は識別力を有するものでないと主張するが、その根拠は示されていない。また、被請求人が使用しているトリートメントメニューの名称は、「アンチエイジング インフィニティケア」であり、この名称の語頭の「アンチエイジング」部分を省略した事情については、全く説明がされていない。この名称の語頭の「アンチエイジング」と末尾の「ケア」は、「美容」役務に対してはその内容を表す語として識別力が弱めであるが、本件指定役務に対しては識別力を発揮する部分であり省略される事情がない。
被請求人からは本件商標を単独で使用している証拠は提出されていない。
(3)「トリートメント(treatment)」は、「髪や肌の手入れ」を意味する言葉であり、一般的にもそのような意味で用いられている。特許庁でも「beauty treatment service」は、「美容」(類似群コード42C01)として把握されている。乙第1号証及び乙第2号証では、「アンチエイジング インフィニティケア」は、「陰陽の思想に基づく2種類の異なったオイルとトリートメント技法が心と体のストレスを洗い流します。」と説明されており、需要者が「入浴施設の提供」の役務を想起することはないし、「スパジャグジーのご入浴後トリートメントを行う女性限定のメニューです。」との記載からも、入浴完了後に選択される役務であることが示されている。乙第1号証では、メニューの最初に「SALON MENU」と書かれており、入浴施設でサロンという言葉は不適切である。
また、入浴施設であれば浴室や脱衣場があるところ、被請求人はこれらを示していない。乙第1号証及び乙第2号証の写真は実物なのか単なるイメージ写真なのかが不明であり、被請求人提出の証拠からは入浴施設の提供が物理的に存在していることは確認できない。
さらに、「入浴施設の提供」は、公衆浴場法によって規制されており、業として公衆浴場を経営しようとする者は、都道府県知事の許可を受けなければならないところ、被請求人に対する係る許可は確認できない。
(4)被請求人は、要証期間内の本件商標の使用を確認できる証拠を示していない。乙第1号証の「2018/12/07」は、本件審判の請求の登録日後の日付であり、予告登録前の使用を立証していない。乙第2号証のパンフレットは、いつどこで配布されたか不明である。乙第3号証は、印鑑のないものであり、乙第2号証のパンフレットに係る明細請求書であることが確認できない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由及び弁駁に対する回答等を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第9号証(枝番を含む。)を提出している。
1 令和2年4月28日提出の答弁書
(1)被請求人は、同人が直営するウェスティンホテル仙台店「flow spa」において、同店が顧客に提供するメニューの1つに、本件商標と社会通念上同一の商標を使用している(乙1、乙2)。
乙第2号証は、被請求人が頒布したパンフレットであって、巻き三つ折りにして配布されたものであり、乙第3号証は、このパンフレットの印刷業者から被請求人に請求された印刷代金の請求明細書である。乙第2号証の「2018.5」の記載及び乙第3号証の2018年5月26日付けで発行された旨の記載から、被請求人が遅くとも2018年5月頃から、本件商標と社会通念上同一の商標をパンフレットに付して使用していることは明らかである。
(2)被請求人が頒布したパンフレット(乙2)の中面(裏面)に、同店で顧客に提供されるサービスの各種コースのメニューが記載されており、その左欄「flow spaオリジナルメニュー」の中段に「インフィニティケア」と表示されている。コース名「インフィニティケア」中の「ケア」の文字部分は識別力を有するものでなく、識別標識として機能を発揮する文字部分は「インフィニティ」であることが明らかであって、「インフィニティケア」に接した需要者は、「『インフィニティ』という名称で提供されるコース」と認識する。
よって、パンフレット(乙2)に表示された「インフィニティケア」は、本件商標と社会通念上同一の商標である。
(3)パンフレット(乙2)には、「flow spaオリジナルメニュー」の説明として、「スパジャグジーのご入浴の後トリートメントを行う女性限定のメニューです。」とあり、「インフィニティケア」等のコース名と、所要時間及び料金の表示と共に各コースの内容を示す説明文が記載され、各コースの説明文には、末尾の行に「*スパジャグジー付き」の記載がある。
被請求人の仙台店は、スパ施設である(乙1、乙2)。日本において一般にスパとは、「美と健康の維持・回復・増進を目的として、温浴・水浴をベースに、くつろぎと癒しの環境と様々な施術や療法などを総合的に提供する施設」と定義されている(乙4)。仙台店は、この定義に適合し、ジャグジー風呂とジャグジー風呂利用後のトリートメントとをセットとして提供するスパ施設に該当することが明らかである。また、入浴施設における取引の事情を見ると、「入浴施設」を提供する者には、スパ施設のように一般的な浴場に併せて各種トリートメントなどのケアサービスを提供している場合が多く存在する。かかる取引の事情も総合すれば、被請求人が仙台店において本件指定役務を行っていることは明らかである。
2 令和2年12月25日提出の回答書
(1)被請求人は、要証期間以前から現在に至るまで(少なくとも2018年12月7日まで)仙台店においてスパ施設の営業を行っている(乙5?乙7)。また、仙台店内にスパ施設の一部として「女性ウェットエリア」の浴槽が設けられている(乙5、乙6)。
乙第1号証と乙第2号証の写真が合成写真や他の場所で撮影されたものでないことは、仙台店内に設けられた浴槽の現在の様子を撮影した写真(乙8)から明らかである。
(2)請求人は、被請求人が公衆浴場法に基づく許可を受けてない旨を主張しているが、公衆浴場法に基づく許可を受ける義務を負っているのは、被請求人ではなく、スパ施設使用契約の相手方である森観光トラスト株式会社ウェスティンホテル仙台であり、請求人の主張は当たらない。
(3)一般の商取引では、請求書、納品書の全部の紙葉に印鑑が押印されていないのが実情であるが、乙第3号証で証拠能力が不十分であるなら、印鑑のある請求書等を提出する用意がある。
3 令和3年1月28日提出の上申書
印刷会社が被請求人の依頼により乙第2号証のパンフレットを作成し、2018年5月30日付けで被請求人に納品したこと等を証明する証拠である乙第9号証とその添付書類である乙第9号証の1ないし乙第9号証の4を提出する。

第4 当審の判断
1 被請求人の提出に係る乙各号証及び同人の主張等によれば、以下のとおりである。
(1)本件商標権者は、国内の複数の店舗において、ヘア・ヘッドスパ、エステ、メイク・ネイル等のサービスを提供する事業を行っており、平成22年頃から現在に至るまで、ウェスティンホテル仙台(以下「ホテル」という。)において、ホテルの25階及び26階の一部である「スパ施設」を本件商標権者の営業店舗として営業を行っている(乙5?乙7)。
この「スパ施設」は、25階に、「受付」、「スパホール」、「マッサージ」、「ネイル」等の各室を備え、26階に、「キャビン(男性専用)」と、「リラクゼーションルーム」、「女性用ウェットエリア」を備えたものであり(乙5)、さらに、「女性用ウェットエリア」は、浴槽が設置されたものである(乙5、乙8)。
なお、この営業店舗、すなわち、「スパ施設」は、本件商標権者において「ウェスティンホテル仙台店」、「flow spa」、「ウェスティンホテル仙台 flow spa」等と呼称されている。(乙1。以下、この営業店舗を「フロースパ」という。)
(2)フロースパにおいては、「レギュラーメニュー」と「flow spaオリジナルメニュー」の各サービスが提供されている(乙1、乙2)。
このうち、「flow spaオリジナルメニュー」のサービスは、「アンチエイジング マトリックスケア」、「アンチエイジング インフィニティケア」等のサービスである(乙1、乙2)。
(3)本件商標権者のウェブサイトにおいて提供される「サロン検索」の「ウェスティンホテル仙台店」のページは、フロースパが提供するサービスの概要等を表示するものである(乙1)。
もっとも、提出された証拠からは、このページが要証期間内に存在したことは、認められない。
(4)本件商標権者は、株式会社グラフィックに対し、乙第3号証の摘要欄の「flow spa 巻き三つ折りパンフ」が示す巻き三つ折りパンフレット500部を発注し、2018年5月頃までにその納品がなされ、同月26日付けでその代金が請求された(乙3、乙9)。
この巻き三つ折りパンフレット(乙2。以下「乙2パンフレット」という。)の表紙になる面には「フロースパ FLOW SPA ウェスティンホテル仙台」と表示されており、また、その内側になる面には、フロースパにおけるサービスの具体的な内容の説明が表示されている。上記内側になる面の末尾には、「2018.5」と表示されている。
乙2パンフレットの外観とその代金の請求日からみて、乙2パンフレットは、2018年5月当時のフロースパにおけるサービスの具体的な内容を説明し広告するために、ホテルのロビーやフロント等において配布されるパンフレットとして作成され、乙2パンフレットの納品及びその代金の請求と前後してホテルのロビーやフロント等において配布され得たものと推認されるものである。
(5)乙2パンフレットの内側になる面には、フロースパの提供する「flow spaオリジナルメニュー」について、「スパジャグジーのご入浴の後トリートメントを行う女性限定のメニュー」である旨が表示されており、「アンチエイジング インフィニティケア」を含む「flow spaオリジナルメニュー」について、「※スパジャグジー付」との説明が表示されている(乙2)。
(6)以上によれば、遅くとも要証期間内である2018年5月頃より、本件商標権者は、その営業店舗である「フロースパ」において「flow spaオリジナルメニュー」の一つである「アンチエイジング インフィニティケア」というサービス(以下、「使用役務」という場合がある。)を提供するとともに、2018年5月頃、このサービスが提供されている旨の広告である乙2パンフレットにおいて、メニューの名称として「アンチエイジング インフィニティケア」の文字(以下、「使用商標」という場合がある。)を使用したものと認められる。
2 判断
(1)本件商標と社会通念上同一の商標の使用について
ア 本件商標は、「インフィニティ」であるのに対し、被請求人が提出した証拠における使用商標は、1で上述したとおり、「アンチエイジング インフィニティケア」である。そして、その構成中の「アンチエイジング」は、「年をとること。加齢。」を意味する「エイジング(エージング、aging)」を「『反』『反対』の意の接頭辞」である「アンチ(anti)」と組み合わせて「医療・美容など」において「老化防止」や「抗老化」を意味する用語としたものであり、また、「ケア」の文字は「介護。世話。」や「手入れ」の意味を有するものであって、共に「トリートメント」に類する用語として「美容」について識別力がない又は弱いとしても、本件指定役務である「入浴施設の提供」との関係においては、識別力を発揮しないとみなければならない事情はない。このことからすれば、「アンチエイジング インフィニティケア」は、全体としてまとまりのある一体不可分のものと理解されるというべきである。そうすると、本件商標と使用商標とは、「アンチエイジング」及び「ケア」の文字を含むか否かにおいて明らかに異なるものであるから、両者は、社会通念上同一の商標と認めることはできない。
よって、要証期間内に本件商標権者が本件商標と社会通念上同一の商標を使用していたとは認められない。
イ 被請求人の主張について
被請求人は、ウェブサイトのページや乙2パンフレットにおいて「インフィニティケア」の商標を使用していると主張している。
しかしながら、仮に本件商標権者が「インフィニティケア」と使用していたとしても、その構成中の「ケア」の文字は、上記アのとおり本件指定役務との関係では、識別力を発揮しないとみるべき事情はないことから、「インフィニティケア」全体として把握されることはあるとしても、「インフィニティ」の文字部分が要部として把握されることはないというべきである。
(2)使用役務が本件指定役務の範ちゅうに含まれるか
ア 使用役務には、「スパジャグジーの入浴」、つまり、ホテルのスパ施設の「女性用ウェットエリア」に設置された浴槽を用いた「入浴」を含むものである。
しかし、使用役務は、「スパジャグジーのご入浴の後トリートメント」や「アロマ全身トリートメント」を行うことである(乙2)。このことを踏まえれば、使用役務に含まれる「スパジャグジーの入浴」は、「トリートメント」の一環ないしその準備として行われるものであって、「トリートメント」から独立して提供される役務ではないことが明らかである。
また、「女性用ウェットエリア」に設置された浴槽を、本件指定役務である「入浴施設の提供」として用いるための脱衣場や洗い場等もないから、本件商標権者の営業店舗となっているホテルのスパ施設が入浴施設の提供という役務のための施設であるということもできない。
加えて、「flow spaオリジナルメニュー」の「アンチエイジング インフィニティケア」以外のサービスにも、「スパジャグジーの入浴」を含む(乙2)ものであるが、いずれも、「トリートメント」から独立して提供される役務と認めるに足る証拠はない。
してみると、使用役務は、全身に対するトリートメント等を行うことであり、いわば、本件指定役務と異なる「美容」等の役務であり、使用役務に含まれる「スパジャグジーの入浴」は、「美容」等の役務に付随するものにすぎないというべきである。
よって、使用役務は本件指定役務の範ちゅうに含まれると認めることはできない。
イ 被請求人の主張について
被請求人は、「フロースパ」は、「スパ施設」に該当し、入浴施設における取引の事情としてスパ施設では浴場に併せてトリートメントなどのケアサービスを提供する場合が多い等と主張している。
しかし、「スパ」の名称を用いて入浴施設の提供と美容等のサービスを行う施設が多く存在するか否かは、本件審判における要証事実とは無関係の事情である。上述したとおり、「アンチエイジング インフィニティケア」(使用役務)を含む「flow spaオリジナルメニュー」のサービスは、「トリートメント」から独立してスパ施設の「女性用ウェットエリア」に設置された浴槽を用いた入浴施設を提供するものでないし、スパ施設が入浴施設の提供のための施設であるということもできないから、「フロースパ」が「スパ施設」に該当するとしても、本件商標権者が本件指定役務を提供していたと認めることはできない。

3 まとめ
以上のとおり、被請求人が提出した証拠における使用商標は、本件商標と社会通念上同一のものと認められないし、本件商標権者が当該使用商標を要証期間内に本件指定役務について使用したものとも認められないから、本件商標は、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者、通常使用権者のいずれかによって本件指定役務について使用したものと認められない。
また、本件商標を本件指定役務について使用していないことについて正当な理由があるものとも認められない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、結論掲記の役務についてその登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2021-03-11 
結審通知日 2021-03-16 
審決日 2021-03-29 
出願番号 商願2007-104206(T2007-104206) 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (X44)
最終処分 成立  
前審関与審査官 大島 勉板谷 玲子 
特許庁審判長 齋藤 貴博
特許庁審判官 相崎 裕恒
岩崎 安子
登録日 2009-05-01 
登録番号 商標登録第5227789号(T5227789) 
商標の称呼 インフィニティ 
代理人 西山 善章 
代理人 特許業務法人大島・西村・宮永商標特許事務所 

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