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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 042
管理番号 1375001 
審判番号 取消2019-300630 
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2019-08-14 
確定日 2021-05-12 
事件の表示 上記当事者間の登録第4011869号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4011869号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおり、「CRAY」の欧文字を横書きしてなり、平成5年8月12日に登録出願、第42類「電子計算機システムに関する助言,電子計算機のプログラムの作成に関する助言,電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」を指定役務として、同9年6月13日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、令和元年8月28日であり、商標法第50条第2項に規定する「審判の請求の登録前3年以内」とは、平成28年8月28日から令和元年8月27日までの期間(以下「要証期間」という。)である。

第2 請求人の主張
請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の登録を取消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証を提出している。
本件商標は、その指定役務について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないことから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
なお、請求人は、被請求人の答弁に対し、何ら弁駁していない。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第13号証を提出した。
以下、証拠の表記に当たっては、「乙第○号証」を「乙○」のように省略して記載する。
1 答弁の理由
本件商標は、被請求人から指定役務について通常使用権の許諾を受けた通常使用権者であり、被請求人の子会社である東京都千代田区所在のクレイ・ジャパン・インク(以下「クレイ・ジャパン」という。)によって、日本国内において本件審判請求の登録前3年以内のみならず現在も使用されている。
2 本件商標の使用の事実
(1)乙1及び乙8について
乙1は、クレイ・ジャパンが、K大学に提供した、対象システムを「スーパーコンピュータシステム」とする、「高分子分離膜シミュレーション」及び「都市システム自己組織化と秩序形成の一般均衡モデル」に係る「性能評価と並列実行パラメータ最適化の検討」一式に関する作業について、本件商標を付した「納品書」及び「御請求書」の写し(平成29年3月31日付)である。乙1には、本件商標「CRAY」の表示と役務「性能評価と並列実行パラメータの最適化の検討」(以下「使用役務1」という。)の対象システム「スーパーコンピュータシステム」及び対象プログラムの表示がなされている。
使用役務1とは、「対象となるスーパーコンピュータシステム及びプログラムの最適化の検証、問題点の指摘、最適化への助言」を内容とする役務であるから、「電子計算機システムに関する助言,電子計算機のプログラムの作成に関する助言」の範ちゅうの役務であり、当該取引書類の日付は要証期間内である。
乙8は、K大学が作成した、乙1に関する取引に係る、平成29年2月1日付け「発注書(納品書用)」の写しである。
そして、クレイ・ジャパンがK大学に渡した乙1の「納品書」及び「御請求書」の右上には、それぞれ「CRAY」商標が付されているところ、クレイ・ジャパンが、要証期間内に、使用役務1に関する取引書類に本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付して、それを取引先に頒布する行為を行ったことは明らかである。よって、当該行為は、商標法第2条第3項第8号の「使用」に該当する。
(2)乙2及び乙9について
乙2は、クレイ・ジャパンが、K大学に提供した、対象システムを「スーパーコンピュータシステム」とする、「大規模QM/MMシミュレーションVmo1」及び「磁気圏グローバルMHDシミュレーション」に係る「性能評価と並列実行パラメータ最適化の検討」(使用役務1)一式に関する作業について、本件商標を付した「納品書」及び「御請求書」の写し(平成29年3月31日付)である。当該取引書類の日付は要証期間内である。乙2には、乙1と同様に本件商標「CRAY」の表示と使用役務1の対象システム及び対象プログラムの表示がなされている。
乙9は、乙2に関する取引(「大規模QM/MMシミュレーションVmo1」、および「磁気圏グローバルMHDシミュレーション」に係る「性能評価と並列実行パラメータ最適化の検討」一式)について、K大学とクレイ・ジャパンが締結した平成29年1月26日付「請負契約書」の写しである。
そして、クレイ・ジャパンがK大学に渡した乙2の「納品書」及び「御請求書」の右上には、それぞれ「CRAY」商標が付されているところ、クレイ・ジャパンが、要証期間内に、上記役務に関する取引書類に本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付して、それを取引先に頒布する行為を行ったことは明らかである。よって、当該行為は、商標法第2条第3項第8号の「使用」に該当する。
(3)乙3及び乙10について
乙3は、クレイ・ジャパンが、K大学に提供した、対象システムを「スーパーコンピュータシステム」とする、「移動床水路数値シミュレーション」及び「乱流直接数値計算コードFDM10th・PSM」に係る「性能評価と並列実行パラメータ最適化の検討」(使用役務1)一式に関する作業について、本件商標を付した「納品書」及び「御請求書」の写し(平成29年3月31日付)である。当該取引書類の日付は要証期間内である。乙3には、乙1と同様に本件商標「CRAY」の表示と使用役務1の対象システム及び対象プログラムの表示がなされている。
乙10は、K大学が作成した、乙3に関する取引に係る、平成30年2月21日付け「発注書(納品書用)」の写しである。
そして、クレイ・ジャパンがK大学に渡した乙3の「納品書」及び「御請求書」の右上には、それぞれ「CRAY」商標が付されているところ、クレイ・ジャパンが、要証期間内に、上記役務に関する取引書類に本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付して、それを取引先に頒布する行為を行ったことは明らかである。よって、当該行為は、商標法第2条第3項第8号の「使用」に該当する。
(4)乙4及び乙11について
乙4は、クレイ・ジャパンが、K大学に提供した、対象システムを「スーパーコンピュータシステム」とする、「開口合成法プログラム」に係る「スレッド並列性能にかかる最適化手法の検討」に関する作業について、本件商標を付した「納品書」及び「御請求書」の写し(平成29年3月31日付)である。「プログラム高度化最適化手法検討」とは、「対象となるスーパーコンピュータシステム及びプログラムの高度化最適化の検証、問題点の指摘、高度化最適化への助言」を内容とする役務であるから、「電子計算機システムに関する助言,電子計算機のプログラムの作成に関する助言」の範ちゅうの役務であり、当該取引書類の日付は要証期間内である。乙4には、乙1と同様に本件商標「CRAY」の表示と使用役務1の対象システム及び対象プログラムの表示がなされている。
乙11は、K大学が作成した、乙4に関する取引に係る、平成30年6月27日付け「発注書(納品書用及び請求書用)」の写しである。
そして、クレイ・ジャパンがK大学に渡した乙4の「納品書」及び「御請求書」の右上には、それぞれ「CRAY」商標が付されているところ、クレイ・ジャパンが、要証期間内に、上記役務に関する取引書類に本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付して、それを取引先に頒布する行為を行ったことは明らかである。よって、当該行為は、商標法第2条第3項第8号の「使用」に該当する。
(5)乙5及び乙12について
乙5は、クレイ・ジャパンが、K大学に提供した「並列計算サーバー式ソフトウェア更新」の作業に係る、本件商標を付した「納品書」及び「御請求書」の写し(平成31年4月26日付)である。乙5には、本件商標「CRAY」の表示と「並列計算サーバー式ソフトウェア更新費用」の表示がなされている。「ソフトウェアの更新」は「電子計算機のプログラムの保守」の範ちゅうの役務であり、当該取引書類の日付は要証期間内である。
乙12は、K大学が作成した、乙5に関する取引に係る、平成31年4月5日付け「発注書(納品書用及び請求書用)」の写しである。
そして、クレイ・ジャパンがK大学に渡した乙5の「納品書」及び「御請求書」の右上には、それぞれ「CRAY」商標が付されているところ、クレイ・ジャパンが、要証期間内に、上記役務に関する取引書類に本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付して、それを取引先に頒布する行為を行ったことは明らかである。よって、当該行為は、商標法第2条第3項第8号の「使用」に該当する。
(6)乙7は、クレイ・ジャパンの会社概要及びニュースを掲載した同社のホームページの抜粋であり、クレイ・ジャパンが商標権者の子会社であって、我が国における商標権者の商品の販売元及び役務の提供元であることを証明するものである。
(7)商標法第2条第3項第8号の使用行為に該当すること
上記のとおり、通常使用権者であるクレイ・ジャパンが、取引書類に「CRAY」商標を付して、取引書類をその取引先であるK大学に提供する行為は、商標法第2条第3項第8号の「役務に関する・・・取引書類に標章を付して・・・頒布・・・する行為」に該当する。
(7)結論
以上のとおり、本件商標の通常使用権者であるクレイ・ジャパンにより、要証期間内に日本国内において、本件商標と社会通念上同一と認められる商標が「使用」(商標法第2条第3項第8号)されていたことは明らかである。

第4 当審の判断
1 事実認定
被請求人提出の乙各号証によれば、次の事実を認めることができる。
(1)クレイ・ジャパンは、K大学より、平成29年2月1日に発注を受け(乙8)、K大学に、対象システムを「スーパーコンピュータシステム」とする、「高分子分離膜シミュレーション」及び「都市システム自己組織化と秩序形成の一般均衡モデル」に係る「性能評価と並列実行パラメータ最適化の検討」(使用役務1)を提供し、別掲2のとおりの構成からなる、わずかにデザイン化した「CRAY」の欧文字を横書きしてなる商標(以下「本件使用商標」という。)を付した当該役務に関する、納品書及び請求書を、平成29年3月31日にK大学宛てに作成した(乙1)。
なお、使用役務1は、「対象となるスーパーコンピュータシステム及びプログラムの最適化の検証、問題点の指摘、最適化への助言を内容とする役務であるから、「電子計算機システムに関する助言,電子計算機のプログラムの作成に関する助言」の範ちゅうの役務と認められる。
(2)クレイ・ジャパンは、同社とK大学が交わした、平成29年1月26日付の請負契約書に基づき(乙9)、K大学に、対象システムを「スーパーコンピュータシステム」とする、「大規模QM/MMシミュレーションVmo1」及び「磁気圏グローバルMHDシミュレーション」に係る「性能評価と並列実行パラメータ最適化の検討」(使用役務1)を提供し、当該役務に関する、本件使用商標を付した、納品書及び請求書を、平成29年3月31日にK大学宛てに作成した(乙2)。
(3)クレイ・ジャパンは、K大学より、平成30年2月21日に発注を受け(乙10)、K大学に、対象システムを「スーパーコンピュータシステム」とする、「移動床水路数値シミュレーション」及び「乱流直接数値計算コードFDM10th・PSM」に係る「性能評価と並列実行パラメータ最適化の検討」(使用役務1)を提供し、当該役務に関する、本件使用商標を付した、納品書及び請求書を、平成29年3月31日にK大学宛てに作成した(乙3)。
(4)クレイ・ジャパンは、K大学より、平成30年6月27日に発注を受け(乙11)、K大学に、対象システムを「スーパーコンピュータシステム」とする、「開口合成法プログラム」に係る「スレッドの並列性能にかかる最適化手法の検討」(以下「使用役務2」という。)を提供し、当該役務に関する、本件使用商標を付した、納品書及び請求書を、平成29年8月31日にK大学宛てに作成した(乙4)。
なお、使用役務2は、「対象となるスーパーコンピュータシステム及びプログラムの高度化最適化の検証、問題点の指摘、高度化最適化への助言」を内容とする役務であるから、役務「電子計算機システムに関する助言,電子計算機のプログラムの作成に関する助言」の範ちゅうの役務と認められる。
(5)クレイ・ジャパンは、K大学より、平成31年4月5日に発注を受け(乙12)、K大学に、「並列計算サーバー式ソフトウェア更新」(以下「使用役務3」という。また、使用役務1ないし使用役務3を合わせて「使用役務」ということがある。)の役務を提供し、当該役務に関する、本件使用商標を付した、納品書及び請求書を、平成31年4月26日にK大学宛てに作成した(乙5)。
なお、使用役務3は、「電子計算機のプログラムの保守」の属する役務の範ちゅうの役務と認められる。
(6)クレイ・ジャパンは、本件商標に係る商標権者の日本子会社であり、クレイ製のスーパーコンピュータの販売、保守、運用コンサルテーション、応用ソフトウェア開発を行っている(乙7及び被請求人の主張)。
2 判断
上記1の認定事実によれば、次のとおり認めることができる。
(1)上記1(1)ないし(3)の事実からすれば、クレイ・ジャパンが、K大学に使用役務1を提供し、当該役務に関する、本件使用商標を付した納品書及び請求書の写しを、平成29年3月31日にK大学宛てに作成した(乙1ないし乙3)ことから、クレイ・ジャパンは、K大学に上記取引書類を渡したものと推認することができる。
また、上記1(4)の事実からすれば、クレイ・ジャパンが、K大学に使用役務2を提供し、当該役務に関する、本件使用商標を付した納品書及び請求書の写しを、平成29年8月31日にK大学宛てに作成した(乙4)ことから、クレイ・ジャパンは、K大学に上記取引書類を渡したものと推認することができる。
また、上記1(5)の事実からすれば、クレイ・ジャパンが、K大学に、使用役務3を提供し、当該役務に関する、本件使用商標を付した納品書及び請求書の写しを、平成31年4月26日にK大学宛てに作成した(乙4)ことから、クレイ・ジャパンは、K大学に上記取引書類を渡したものと推認することができる。
(2)使用役務について
上記第2のとおり、本件審判の請求に係る指定役務は、第42類「電子計算機システムに関する助言,電子計算機のプログラムの作成に関する助言,電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」であるところ、使用役務1「性能評価と並列実行パラメータ最適化の検討」及び使用役務2「スレッド並列性能に係る最適化手法の検討」は「電子計算機システムに関する助言,電子計算機のプログラムの作成に関する助言」に含まれるものであり、使用役務3「並列計算サーバー式ソフトウェア更新」は「電子計算機のプログラムの保守」にそれぞれ含まれるものといえる。
(3)使用商標について
使用商標は、別掲2のとおり、わずかにデザイン化した「CRAY」の欧文字を横書きしてなるものであり、本件商標は、上記第1のとおり「CRAY」の欧文字からなるものである。
そうすると、両商標は、書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標であるから、使用商標は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標といえる。
(4)使用役務を引き渡した時期について
クレイ・ジャパンが、K大学に、使用役務に関する、本件使用商標を付した納品書及び請求書を、平成29年3月31日(乙1ないし乙3)、平成29年8月31日(乙4)及び平成31年4月26日(乙5)に渡した(頒布した)ものと認められ、これらのいずれの日付けも要証期間内である。
(5)使用者について
使用役務を提供したクレイ・ジャパンは、上記1(6)のとおり、商標権者の日本子会社であるから、両者の間には、本件商標を使用することについて黙示の許諾があったものと推認でき、クレイ・ジャパンは、本件商標に係る通常使用権者といえる。
(6)小括
上記(1)ないし(5)からすれば、通常使用権者であるクレイ・ジャパンは、本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において本件審判の請求に係る指定役務に関する取引書類に本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付して頒布したものと認められ、この行為は、商標法第2条第3項第8号にいう「役務に関する・・・取引書類に標章を付して・・・頒布・・・する行為」に該当する。
3 まとめ
以上のとおりであるから、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、通常使用権者が、本件審判の請求に係る指定役務について、本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)の使用をしていることを証明したといわなければならない。
したがって、本件商標の登録は、本件審判の請求に係る指定役務について、商標法第50条の規定により取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
別掲1 本件商標

別掲2 使用商標



審理終結日 2020-12-07 
結審通知日 2020-12-10 
審決日 2020-12-25 
出願番号 商願平5-84202 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (042)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 木村 一弘
特許庁審判官 中束 としえ
庄司 美和
登録日 1997-06-13 
登録番号 商標登録第4011869号(T4011869) 
商標の称呼 クレイ 
代理人 鈴木 康仁 
代理人 岡田 貴子 
代理人 小林 浩 
代理人 瀧澤 文 
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK 

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