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審決分類 |
審判 判定 その他 属する(申立て成立) 132 |
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管理番号 | 1374096 |
判定請求番号 | 判定2020-600036 |
総通号数 | 258 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標判定公報 |
発行日 | 2021-06-25 |
種別 | 判定 |
2020-11-12 | |
確定日 | 2021-04-23 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第2604498号商標の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | 商品「発泡酒」に使用するイ号標章は、登録第2604498号商標の商標権の効力の範囲に属する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第2604498号商標(以下「本件商標」という。)は、「フランシスコ」の片仮名を表してなり、平成3年10月2日に登録出願、第28類「酒類(薬用酒を除く)」を指定商品として、同5年11月30日に設定登録され、その後、同16年10月13日に指定商品を第32類「ビール」及び第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」とする指定商品の書換登録がされ、現に有効に存続しているものである。 第2 イ号標章 請求人が判定を求める標章は、別掲のとおりの構成からなるものであり(以下「イ号標章」という。)、請求人が「ビール」に使用すると主張し、被請求人が「発泡酒」に使用すると主張するものである。 第3 請求人の主張 請求人は、結論同旨の判定を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第4号証を提出した。 1 判定請求の必要性 本件商標の商標権者である請求人は、被請求人が、商品「ビール」にイ号標章を付して販売活動を行っていることから(甲1、甲2)、令和2年9月1日付けで、被請求人に対し、イ号標章の商品「ビール」への使用は、本件商標の商標権を侵害するものである旨の催告を発した(甲3)。その後、請求人は、被請求人から令和2年9月25日付にて、イ号標章は本件商標に類似するものではなく、イ号標章の商品「発泡酒」への使用は、本件商標の商標権を侵害しない旨の回答を受領した(甲4)。 2 イ号標章の説明 イ号標章は、別掲のとおり、帆船の後方操舵甲板上に舵輪、擬人化された骸骨、宝物箱を配し、これらをロープで縁取りした横長四角形の図形の上方に赤色ローマ字で「FRANCISCO」と大きく書し、その右斜め下方に黄色ローマ字で「HAZY STYLE TDE」(合議体注:「TDE」は「TDH」の誤記と認める。以下同じ。)を小さく書してなるところ、被請求人は、イ号標章を、商品「ビール」に付して、令和2年5月11日から現在に至るまで、インターネット等を介して販売している(甲1)。 3 イ号標章が商標権の効力の範囲に属するとの説明 (1)本件商標とイ号標章について 本件商標は、片仮名で「フランシスコ」と書してなるものであり、本件商標から「フランシスコ」の称呼が生ずる。 一方、イ号標章は、上記2のとおり、図形と文字とが組み合わされたものであるところ、赤色ローマ字で「FRANCISCO」と大きく明瞭に表示されており、この文字に相応し「フランシスコ」の称呼が生ずること明らかである。 そして、「HAZY STYLE TDE」の文字は、「FRANCISCO」の文字より小さく、色彩も背景との関係において目立たない黄色であることから、視覚上、看る者の注意をあまり惹かず、「FRANCISCO」の文字が看る者に圧倒的な印象を与えるものである。加えて、「HAZY STYLE TDE」の文字は、ビール醸造業界において「濁ったタイプのビール」を表わす慣用語であり、識別力を有する語句ではないから、「FRANCISCO」の文字と「HAZY STYLE TDE」の文字とは、不離一体に結合されたものとはいえず、イ号標章から「フランシスコハジースタイルテイディエイチ」なる称呼が生ずるとはいえない。 そうすると、イ号標章からは「フランシスコ」の称呼が生ずるものであるから、本件商標とイ号標章とは、称呼を共通にする、類似の関係にある。 (2)本件商標の指定商品とイ号標章の使用商品について 本件商標の指定商品中、第32類「ビール」とイ号標章の使用商品「ビール」とは同一商品であり、本件商標の指定商品中、第33類「洋酒」とイ号標章の使用商品「ビール」とは類似商品の関係にある。 (3)むすび 以上のとおり、イ号標章は本件商標と類似する標章であり、その使用商品と本件商標の指定商品も同一又は類似の関係にあるから、被請求人が商品「ビール」に使用しているイ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属するものである。 第4 被請求人の答弁 被請求人は、イ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属さないとの判定を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第4号証を提出した。 1 イ号標章が付されている商品について 被請求人がイ号標章を付しているのは「発泡酒」である(乙2) 。 2 イ号標章が本件商標と類似しないことについて (1)「FRANCISCO」のみを抽出して比較すべきでないこと ア イ号標章は、海を走る船の甲板の上に、擬人化されたホップや宝箱が描かれ、その上部に「FRANCISCO」及び「HAZY STYLE TDH」の文字があり、その全体を縄で四角く囲ったものである。 このように、イ号標章は、一見して船の甲板上を描いたものであることが分かり、かつ、縄で囲ってあることから、全体としてまとまった印象を与えている。 また、「HAZY STYLE TDH」の文字は、「FRANCISCO」の文字より小さいものの、青色の背景の上に明るい黄色で記載されており、また文字の下に黄色の線も引かれているため、「FRANCISCO」の文字と比べて、視覚的印象が薄いということはない。 加えて、イ号標章は、擬人化されたホップが、同標章の左半分のほとんどを占める大きさで描かれている。そして、この擬人化されたホップは、目・ロ・鼻の形が特徴的な形をしているだけではなく、顔全体が濃さの異なる複数の緑色で彩られており、イ号標章の中で特に強い印象を与えている。 以上からすると、イ号標章において、「FRANCISCO」の文字だけが、出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものとは認められない。 イ イ号商標の付された商品は発泡酒であるから、同標章に触れる主たる取引者・需要者は、消費者である成人であり、専門家ではない。したがって、「HAZY STYLE TDH」の文字から出所識別標識としての称呼、観念が生じるか否かの判断は、成人全体を基準にしてされるのであり、ビール醸造業を営む者を基準に判断されることにはならない。 そして、一般消費者において、「HAZY STYLE」が「濁ったタイプのビール」を意味するというのは、通常知られているものではないことは明らかである。また、「TDH」の部分は濁ったタイプのビールという意味でもない。 そうすると、「HAZY STYLE TDH」の文字には識別力が認められるのであって、同文字から、出所識別標識としての称呼が生じないとはいえない。 ウ 以上のとおり、イ号標章は、「FRANCISCO」の文字部分のみが出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものではなく、それ以外の部分からも出所識別標識としての称呼、観念も生じる。 したがって、本件商標とイ号標章の類似性の判断においては、イ号標章の「FRANCISCO」の文字のみを抽出して比較することは許されない。 (2)イ号標章の称呼及び観念 イ号標章の文字部分からは、「フランシスコ ヘジースタイルティーディーエイチ」、「フランシスコ ヘジースタイル」、「フランシスコ ヘジー」、「フランシスコ」、「ヘジースタイル」、「ティーディーエイチ」などの様々な称呼が生じる余地がある。 また、イ号標章から生じる観念としては、擬人化されたホップが大きく描かれていることから、ホップが考えられる。さらに、海上に大波が描かれた上で「FRANCISCO」の文字があることから、台風の観念が生じる余地がある。 (3)取引の実情 請求人は、登録日(平成5年11月30日)から現在においても、ビールないし発泡酒(以下、「発泡酒等」という。)を製造販売していない(乙3) 。請求人が本件商標を使用している商品は、ワインのみである(乙4)。 この点、ワインの醸造と発泡酒等の醸造とでは、その方法が大きく異なり、ワイン醸造業者が発泡酒等の醸造業者を兼ねることがほとんどないことは周知の事実である。すなわち、ワインと発泡酒等では、出所の混同が生じるおそれは乏しいのである。 (4)本件商標の称呼及び観念について 本件商標からは「フランシスコ」以外の称呼が生じるとは考え難い。また、観念についても、特定の親念が生じるとはいえない。 (5)本件商標とイ号標章の類否判断 イ号標章からは様々な称呼が生じるものの、「フランシスコ」の称呼が生じる場合には、本件商標とイ号標章とで、称呼について類似する場合がある。 しかし、本件商標とイ号標章では、外観において著しく相違し、観念も類似しないし、上述した取引の実情を考慮すると、イ号標章が発泡酒に使用されても、商品の出所に誤認混同を生じさせるおそれはないといえる。 よって、本件商標とイ号標章は類似しない。 第5 当審の判断 1 イ号標章の使用商品について 請求人は、イ号標章の使用商品を「ビール」としているが、イ号標章を付している商品の写真のラベルには品目として「発泡酒」の文字が表示されているから(乙2)、当審においては、イ号標章の使用商品を「発泡酒」として、以下判断する。 2 本件商標について 本件商標は、上記第1のとおり、「フランシスコ」の片仮名からなるところ、その文字に相応し「フランシスコ」の称呼が生じ、特定の観念は生じないものである。 3 イ号標章について イ号標章は、別掲のとおり、上部に、赤字で大きく表された「FRANCISCO」の文字と、黄字で表された「HAZY STYLE TDH」の文字とを二段に横書きしてなるもの(以下、まとめて「文字部分」という。)を、波がある海上の船の甲板上に、擬人化された図形や舵輪、宝箱等の図形(以下、まとめて「図形部分」という。)とともに、縄状の枠内に表した構成からなるものである。 そして、文字部分と図形部分とは、一体となって特別な観念を有することや一連一体の称呼が生じるなど、何らかの関連性を有しているともいえないものであり、文字部分と図形部分とは、分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合していると認めることはできないから、それぞれが独立して出所識別機能を有するというべきである。 さらに、文字部分についてみるに、上段の「FRANCISCO」の文字は、赤色で顕著に表されていることに加え、下段の「HAZY STYLE TDH」の文字に比して2倍以上の大きさであり、外観上、看者に強い印象を与えるものである。また、「FRANCISCO」の文字と「HAZY STYLE TDH」の文字とが一体となって何らかの観念を有しているともいえないものであるから、「FRANCISCO」の文字が、独立して商品の出所識別標識として機能し得るものと認められる。 そうすると、イ号標章から「FRANCISCO」の文字部分を要部として抽出し、これと本件商標とを比較して商標の類否を判断することも許されるというべきであり、当該文字に相応した「フランシスコ」の称呼が生じ、特定の観念は生じないものである。 4 本件商標とイ号標章との類否について 本件商標とイ号標章の類否を検討すると、その構成全体をもって比較するときは、外観上、区別し得る差異があるといえるものの、本件商標の「フランシスコ」とイ号標章の構成中、独立して商品の出所識別標識たり得る「FRANCISCO」の文字部分とを比較するときは、両者は、片仮名と欧文字であって文字種及びその色彩に相違を有するものの、両者は、普通に用いられる方法で表されていることに加え、商標の使用においては、商標の構成文字を同一の称呼が生じる範囲内で文字種を相互に変換して表記したり、デザイン化したりすることが一般的に行われている取引の実情があることに鑑みれば、両者における文字種の相違が、看者に対し、出所識別標識としての外観上の顕著な差異として強い印象を与えるとまではいえない。 そして、本件商標の「フランシスコ」の文字とイ号標章の構成中の「FRANCISCO」の文字とは、「フランシスコ」の称呼を共通にするものであり、観念においては、本件商標とイ号標章は、いずれも特定の観念を生じないものであるから、観念上、比較することができない。 そうすると、本件商標とイ号標章の要部である「FRANCISCO」の文字とは、観念において比較できないとしても、称呼を共通にし、外観おいて書体又は文字種に違いがあるとしても、称呼の同一性をしのぐほどの顕著な差異として強い印象を与えるとまではいえないことから、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合的に勘案すれば、本件商標とイ号標章は、互いに相紛れるおそれのある類似の商標というべきである。 5 本件商標の指定商品とイ号標章の使用商品の類否について 本件商標の指定商品中の第32類「ビール」及び第33類「洋酒,果実酒」とイ号標章の使用商品である「発泡酒」とは、生産者、販売部門、用途及び需要者の範囲等を共通にする類似の商品と認められる。 6 被請求人の主張について 被請求人は、本件商標とイ号標章では、外観において著しく相違し、観念も類似しない旨述べるとともに、請求人は、本件商標の登録日から現在においても、発泡酒等を製造販売しておらず、請求人が本件商標を使用している商品はワインのみであり、ワインの醸造と発泡酒等の醸造は、その方法が大きく異なるため、ワイン醸造業者が発泡酒等の醸造業者を兼ねることがほとんどないから、商品の出所の混同が生じるおそれは乏しい旨主張する。 しかしながら、上記4のとおり、本件商標とイ号標章とは類似の商標と認められるところ、商標の類否判断において、一概に、称呼、観念よりも外観を重視すべきものとまではいえず、また、イ号標章の使用商品の取引の実情として、外観が重視されるとする証左の提出もない。さらに、商標の類否判断にあたっては、本件商標が現在使用されている商品についてのみの特殊的・限定的な取引の実情は考慮しない。 7 まとめ 以上のとおり、イ号標章は、本件商標と類似するものであって、本件商標の指定商品と類似する商品に使用するものであるから、被請求人が商品「発泡酒」に使用するイ号標章は、本件商標の効力の範囲に属する。 よって、結論のとおり判定する。 |
別掲 |
別掲 イ号標章(色彩は原本参照) |
判定日 | 2021-04-13 |
出願番号 | 商願平3-101298 |
審決分類 |
T
1
2・
9-
YA
(132)
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最終処分 | 成立 |
特許庁審判長 |
半田 正人 |
特許庁審判官 |
水落 洋 大森 友子 |
登録日 | 1993-11-30 |
登録番号 | 商標登録第2604498号(T2604498) |
商標の称呼 | フランシスコ |
代理人 | 藤吉 繁 |
代理人 | 土井 洋平 |