ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 判定 その他 属さない(申立て不成立) W38 |
---|---|
管理番号 | 1374095 |
判定請求番号 | 判定2020-600033 |
総通号数 | 258 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標判定公報 |
発行日 | 2021-06-25 |
種別 | 判定 |
2020-09-24 | |
確定日 | 2021-04-14 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第6134790号商標の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | 役務「オンラインによる知識の教授」に使用するイ号標章は、登録第6134790号商標の商標権の効力の範囲に属しない。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第6134790号商標(以下「本件商標」という。)は、「VTeacher」の欧文字を標準文字で表してなり、平成30年5月25日に登録出願、第38類「インターネットその他の通信網により電子媒体・電子情報をアップロード・投稿・展示・掲示・付加・ブログ・共有その他の方法で提供する放送,電気通信(放送を除く。),放送,報道をする者に対するニュースの供給,電話機・ファクシミリその他の通信機器の貸与」を指定役務として、同31年4月5日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。 第2 イ号標章 請求人が判定を求める標章は、「V-teacher」の文字からなるものである(以下「イ号標章」という。)。 第3 請求人の主張 請求人は、被請求人が「インターネットその他の通信網により電子媒体・電子情報をアップロード・投稿・展示・掲示・付加・ブログ・共有その他の方法で提供する放送、電気通信(放送を除く。)」に使用するイ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属する、との判定を求め、その理由を判定請求書において要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第49号証を提出した。 1 判定請求の必要性 請求人は、本件商標の商標権者であるが(甲1)、被請求人がイ号標章(構成態様がイ号標章と同一の標章)を使用していることについて(甲2?甲4、甲46)、令和2年6月6日に被請求人に対し、本件商標の商標権を侵害するものである旨の警告及び請求人の連絡先を発した(甲5?甲7)。しかし、被請求人から請求人に連絡はなく、交渉の機会を持つことができない。 本件商標の商標権の効力の範囲について、専門的知識をもって中立的立場から判断される判定を特許庁に求め、その判定に基づいてこの問題を解決することにした。よって、本件判定を求める。 2 イ号標章の説明 被請求人は、令和2年4月頃より請求人の役務と類似する「インターネットその他の通信網により電子媒体・電子情報をアップロード・投稿・展示・掲示・付加・ブログ・共有その他の方法で提供する放送,電気通信(放送を除く。)」を開始し(甲8?甲10)、イ号標章を使用し(甲11、甲12)、同年6月1日に「進研ゼミ中学講座別冊」を発行しイ号標章(甲3)、及び「Vティーチャー」の標章を使用し(甲13、?甲16)、同月7日より「Vティーチャー」の標章を使用した役務を開始した(甲2、甲46?甲48)。 また、請求人が最初に広告を出稿した令和元年11月26日に(甲30)、被請求人が「商願2019?148680」を出願しているため(甲31)、不正競争に該当する行為が懸念される。 3 イ号標章が商標権の効力の範囲に属するとの説明 本件商標は、「VTeacher」の文字からなるものであるから、これより「ブイティーチャー」の称呼及び「バーチャルティーチャー(仮想の先生)」の観念を生ずる。 他方、イ号標章は、「V-tcacher」の文字からなるものであるから、イ号標章は「ブイティーチャー」の称呼及び「バーチャルティーチャー(仮想の先生)」の観念をも生ずる。 したがって、本件商標とイ号標章とは、アルファベットの大文字、小文字、記号の表記が相違するとしても、「ブイティーチャー」の称呼、「バーチャルティーチャー(仮想の先生)」の観念を共通にし、役務の出所について混同を生じさせるおそれがあるから、類似するものである。 本件商標に係る指定役務は、上記第1のとおりであるところ、イ号標章を使用する役務は、テレビ会議用通信端末による通信(videoconferencing services)、インターネット利用のチャットルーム形式による電子掲示板通信(providing internet chatrooms)、オンラインフォーラム形式による通信(providing onlnine forums)の機能を有していることから(甲32?甲35)、本件商標の指定役務に含まれる「電気通信」と類似の役務であり、本件商標の商標権の効力が及ぶと考えられる。 被請求人は、放送中、識別名称(タイトル)を画面左上に常時表示しており(甲12)、少なくとも令和2年6月7日14時の放送(甲36)、同日15時の放送(甲37)、同日16時の放送(甲38)、同月14日14時の放送(甲39)、同日15時の放送(甲40)及び同日16時の放送(甲41)では、括弧で囲んだイ号標章を常時表示した状態で放送を実施した。被請求人は、同年8月23日10時31分頃からの放送において、イ号標章と構成態様が同一の「Vティーチャー」を画面右上に約10分間表示した状態で放送を実施した(甲46?甲48)。 また、被請求人が投稿した動画の中で、イ号標章の称呼、観念を説明していることから(甲42?甲45)、出所混同のおそれ及び出所表示機能の希釈化が生じる懸念がある。 なお、被請求人は「商願2019?148680」を出願しているため(甲31)、「V?teacher」(及び構成態様が同一の「Vティーチャー」)を商標として認識し、イ号標章を商標として使用していると考えられる。 以上のとおり、イ号標章は本件商標と類似する標章であり、その使用役務と指定役務も類似する役務であるから、被請求人が役務について使用するイ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属するものである。 第4 被請求人の主張 被請求人は、結論同旨の判定を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第8号証を提出した。 1 被請求人の反論 被請求人は、本件商標とイ号標章は、いずれも「ブイティーチャー」という同一の称呼が生じる商標であり、商標全体として互いに類似するという主張に異論はない。 しかしながら、イ号標章の使用役務は、第38類に分類されるものではなく、本件商標に係る指定役務と類似するとの主張は失当である。 第38類の「電気通信(放送を除く。)」とは、他人のために「電気通信(放送を除く。)」を可能にするために提供されるサービスであり、インターネット接続の電気通信役務を提供するインターネットプロバイダーや、固定電話や携帯電話等の電気通信サービスを提供する電気通信事業者のように、通信環境(インフラ)を提供する役務が該当する。また、同様に、第38類の「放送」とは、テレビ放送を行うテレビジョン放送局や、ラジオ放送を行うラジオ放送局などが行う役務が該当する。 しかるところ、イ号標章の使用役務はインターネット等の通信回線(通信網)を利用しているとしても、既存のインターネット環境を利用しているものであって、ケーブルテレビ回線のような独自の通信環境(インフラ)を利用して提供しているものではない。 請求人が提出する証拠に表示されている文字(甲2、甲3、甲8?甲12、甲15、甲32?甲35、甲46、甲49)からイ号標章の使用役務が学習教育用のコンテンツの配信であることは誰の目にも明らかであるから、被請求人の使用役務は、第38類の「放送」や「電気通信(放送を除く。)」に該当するものでなく、第41類に分類される、インターネットを利用した「知識の教授(通信教育)」に該当するものである。 被請求人は、通信教育を提供する手段としてインターネットを利用しているにすぎないから、イ号標章の使用役務におけるインターネットは、「知識の教授(通信教育)」の提供に付随するサービスであって、商標法上の「役務」に該当するものではない。そもそも、被請求人は、株式会社ベネッセホールディングスを持株親会社とし、「進研ゼミ」や「こどもちゃれんじ」を中心とする通信教育講座や「進研模試」を中心とする大学入試模擬などの校外学習事業や学校向け教育事業を行う企業(乙3)であって、イ号標章の使用役務についても、当該教育事業の中で実施しているものである。 その他、イ号標章の使用役務が、本件商標の指定役務中、「報道をする者に対するニュースの供給,電話機・ファクシミリその他の通信機器の貸与」に該当しないことも明らかである。 したがって、本件商標とイ号標章は、同一又は類似の商標に該当するものの、イ号標章の使用役務は、本件商標の第38類の指定役務とは互いに類似しないものである。 2 特許庁の審決 特許庁の審決は、第38類の「電気通信」等の役務の定義等に照らし、第三者が提供している通信手段を利用しているにすぎない役務は、第38類の役務に該当しないと判断している。これらの審決は、登録商標の使用が争われた商標法第50条に基づく商標登録の取消審判において下されたものであるが、第38類の役務の該当性に関する判断は本件判定請求事件にもそのまま当てはまるものである(乙4?乙8)。 3 結語 以上のとおり、本件商標とイ号標章は、同一又は類似の商標に該当するものの、イ号標章の使用役務は、本件商標の第38類の指定役務とは互いに類似しないものである。 第5 当審の判断 1 本件商標とイ号標章の類否について 本件商標は、「VTeacher」の欧文字からなるところ、当該文字に相応し、「ブイティーチャー」の称呼を生じ、また、当該文字は、全体として辞書等に載録されている語ではなく、何らかの親しまれた意味合いを認識させることのない一種の造語というべきであるから、特定の観念を生じないものである。 他方、イ号標章は、「V-teacher」の欧文字を横書きしてなるところ、当該文字に相応し、「ブイティーチャー」の称呼を生じ、また、当該文字は、全体として辞書等に載録されている語ではなく、何らかの親しまれた意味合いを認識させることのない一種の造語というべきであるから、特定の観念を生じないものである。 そこで、本件商標とイ号標章の類否について検討するに、外観においては、両者は、「V」の後の「-」(ハイフン)の有無及び「T」が大文字か小文字かに差異を有するものの、「V」及び「T(t)eacher」の全ての構成文字を共通にするから、外観上、両者は近似するものである。 また、称呼においては、両者は、共に「ブイティーチャー」の称呼を生じるものであるから、称呼上、同一である。 さらに、観念においては、両者は、共に特定の観念を生じないものであるから、観念上、両者を比較することができない。 してみれば、両商標は、観念において比較できないとしても、外観が近似し、称呼が同一であるから、類似の商標というべきである。 なお、この点については、被請求人も争っていない。 2 本件商標の指定役務とイ号標章の使用役務の類否について (1)本件商標の指定役務について 本件商標の指定役務は、前記第1のとおり、第38類に属する役務であるところ、請求人がイ号標章の使用役務と類似すると主張する役務は「インターネットその他の通信網により電子媒体・電子情報をアップロード・投稿・展示・掲示・付加・ブログ・共有その他の方法で提供する放送、電気通信(放送を除く。)」である(以下「類似主張役務」という。)。 (2)イ号標章の使用役務について ア 請求人が提出した証拠によれば、以下の事実が認められる。 (ア)進研ゼミ中学講座別冊 「被請求人の進研ゼミ中学講座別冊裏表紙の写真」とされる画像が表示された書面には、「進研ゼミ/中学講座」、「発行所:(株)ベネッセコーポレーション」等の記載の下、「8号のお知らせ」として、「中学初めての夏を大応援!/夏の特別オンライン授業/開催決定!」の見出しの下、「V-teacherがズバリ教えちゃう!」との記載がある(甲3)。 (イ)進研ゼミ中1オンライン朝授業 「被請求人の進研ゼミオンライン朝授業の写真1」とされる画像が表示された書面には、「中2(4月15日 10時30分?)オンライン朝授業」の記載の下、「講師・自己紹介」として、筆記体で表された「V-teacher/だて先生」の文字の記載がある(甲11)。 また、「被請求人の進研ゼミオンライン朝授業の写真2」とされる画像が表示された書面には、「中2)6月7日15時?連立方程式(1)(V-teacher)(審決注:方程式の後の(1)は○付き数字で表示されている。)の記載の下、「今日のゴール」として「『加減法』と『代入法』を攻略して,連立方程式の基本問題が解けるようになる!」の記載がある(甲12)。 ウ イ号標章の使用について 上記アより、イ号標章は、オンライン授業の広告及びオンライン授業の画面上で使用されているものと認められるから、被請求人は、イ号標章を被請求人が提供するオンライン授業において使用しているものと認められる。 そして、被請求人の提供するオンライン授業は、「オンラインによる知識の教授」といえるものである。 エ 以上によれば、イ号標章の使用役務は、「オンラインによる知識の教授」に該当するものと判断できる。 (3)両役務の類否について 請求人の指定役務中、類似主張役務は、いずれも、他人のために、有線、無線その他の電磁的方法により、符号、音響又は映像を送り、伝え又は受けることを目的とするものであり、少なくとも一人の者が感覚を手段として他の者と通信することを可能にする通信回線の提供サービスである。 一方、イ号標章の使用役務は、オンラインによって知識を教授することを目的とするものであり、教育提供サービスであるということができる。 そうすると、両役務は、インターネット等を使用することにおいて共通するとしても、役務の目的、用途は全く異なるものであり、役務の提供に関連する物品、需要者、取引者の範囲が一致するものとはいえず、また、役務を提供する者の業種が同じであるともいい難いものである。 したがって、両役務は、非類似の役務である。 3 イ号標章が本件商標の商標権の範囲に属するかについて 上記1のとおり、本件商標とイ号標章とは類似する商標といえるものである。 しかしながら、イ号標章の使用役務と本件商標の指定役務中、類似主張役務とは、上記2に記載のとおり、非類似の役務であり、イ号標章が本件商標の商標権の効力の範囲に属するものということはできない。 4 請求人の主張について 請求人は、イ号標章の使用役務は、第38類の範ちゅうに属する役務「インターネットその他の通信網により電子媒体・電子情報をアップロード・投稿・展示・掲示・付加・ブログ・共有その他の方法で提供する放送,電気通信(放送を除く。)」である旨主張している。 しかしながら、第38類の「電気通信(放送を除く。)」の役務とは、他人のために「有線、無線その他の電磁的方法により、符合、音響又は映像を送り、伝え又は受けるサービス」であり、また、「放送」の役務とは他人のために「公衆によって直接受信されることを目的とする無線通信・有線電気通信の送信を行うサービス」であって、当該役務の提供者は、主にインターネット接続ための回線を提供するインターネットプロバイダー、固定電話や携帯電話等の回線を提供する事業者、テレビ放送を行うテレビジョン放送局、ラジオ放送を行うラジオ放送局であるところ、被請求人は、「進研ゼミ」や「こどもちゃれんじ」等の通信教育講座や「進研模試」を中心とする大学入試模擬などの校外学習事業や学校向け教育事業を行う企業(乙3)であって、「電気通信」や「放送」を提供する事業者ではなく、また、上記3のとおり、イ号標章もオンライン授業の広告及びオンライン授業の画面(コンテンツ)上で使用されていることからすると、仮に、被請求人がインターネットを用いて利用者と通信することによってイ号標章の使用役務の提供を行っているとしても、当該標章は、「知識の教授」に使用されているといい得るものであって、独立した役務としての「電気通信(放送を除く。)」や「放送」について使用されているものということはできない。 したがって、請求人の上記主張は採用することはできない。 5 まとめ 以上のとおり、被請求人がイ号標章を使用する役務は「オンラインによる知識の教授」であり、本件商標の指定役務とは非類似の役務であるから、被請求人が使用するイ号標章は、本件商標権の効力の範囲に属しないものである。 よって、結論のとおり判定する。 |
判定日 | 2021-03-02 |
出願番号 | 商願2018-75837(T2018-75837) |
審決分類 |
T
1
2・
9-
ZB
(W38)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 濱田 佐代子 |
特許庁審判長 |
半田 正人 |
特許庁審判官 |
大森 友子 鈴木 雅也 |
登録日 | 2019-04-05 |
登録番号 | 商標登録第6134790号(T6134790) |
商標の称呼 | ブイティーチャー、ティーチャー |
代理人 | 佐藤 俊司 |
代理人 | 阪田 至彦 |
代理人 | 田中 克郎 |