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審決分類 審判 一部申立て  登録を維持 W30
審判 一部申立て  登録を維持 W30
管理番号 1374082 
異議申立番号 異議2020-900307 
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2021-06-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-11-22 
確定日 2021-04-22 
異議申立件数
事件の表示 登録第6286315号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第6286315号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6286315号商標(以下「本件商標」という。)は,「Himalayan mist」の文字を標準文字で表してなり,令和2年3月4日に登録出願,第30類「紅茶,茶,食品香料(精油のものを除く。),コーヒー,ココア,氷,菓子(果物・野菜・豆類又はナッツを主原料とするものを除く。),パン,調味料,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,コーヒー豆,穀物の加工品,チョコレートスプレッド,ベーキングパウダー,即席菓子のもと」を指定商品として,同年8月11日に登録査定,同月31日に設定登録されたものである。

2 登録異議申立人が引用する商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が,本件商標は商標法第8条第1項に該当するとして引用する登録商標は次のとおりであり(以下,これらをまとめて「引用商標」という。),いずれも現に有効に存続しているものである。
(1)登録第5805278号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:別掲1のとおり
登録出願日:平成26年3月9日
設定登録日:平成27年11月13日
指定商品:第30類「ヒマラヤ地方で生産された和菓子,ヒマラヤ地方で生産された洋菓子,ヒマラヤ地方で生産された蜂蜜・コーヒー・コーヒー豆・茶・米,ヒマラヤ地方で生産された茶葉と冬虫夏草を粉末にして製造された抹茶」,第31類「ヒマラヤ地方で生産された栗・ひえ・きび・ゴマ・そば・トウモロコシ・茶の葉・木・草・花・果実・種子類」及び第33類「ヒマラヤ地方で生産された日本酒・洋酒・果実酒・中国酒・薬味酒,ヒマラヤ地方で生産された冬虫夏草を漬け込んだ薬味酒」
(2)登録第6122952号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:別掲2のとおり
登録出願日:平成30年2月26日
設定登録日:平成31年2月22日
指定商品:第30類「ヒマラヤ地方で生産されたコーヒー・コーヒー豆」

3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は商標法第8条第1項及び同法第4条第1項第7号に該当するものであるから,その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして,その理由を以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第5号証を提出した。
(1)商標法第8条第1項について
本件商標の「主要部と指定商品」は,申立人の本件商標に先行する引用商標1及び引用商標2の「商標主要部と指定商品」と同じ又は酷似しており,需要者は単にHIMALAYAとそれに続く産品,例えば,COFFEEや紅茶,茶を一つのブランドとして,認識するだけである。
例えば,本件商標のコーヒーを例にとると,「Himalayan mist Coffee」と,申立人の登録にかかわる,「Himalaya Mountains Coffee」又は「ヒマラヤン コーヒー」がともに市場に出回った場合においては,出所・品質の差別化をすることは不可能である。
つまり,両者は,視覚的にも,音感的にも,表意的にもそのいずれをとってもこれら両者を差別して扱うことは一般消費者には不可能なのであるから,当該事実においては,先願登録に同一又は類似の商標は登録できないとする商標法第8条第1項に明らかに抵触していることとなり,本件商標は違法であるといえる。
(2)商標法第4条第1項第7号について
本件商標は,「Himalayan mist」と英語2単語を組み合わせた文字商標である。また,その主要部を構成する英語表示は「Himalayan」であり,これは日本語訳では「ヒマラヤの」という所有格を構成する。
つまり,これは明らかに商標法第3条第1項第3号が規定する出所の概念を構成する以外の何物でもない。
にもかかわらず,本件商標の指定商品は,何らの出所を明記せず,単に「紅茶,茶,コーヒー,パン,菓子,コーヒー豆,穀物の加工品」等が指定されている。
つまるところ,本件商標権者はそのことをもって,どの国のどの地方の産品であっても,当該商標を付して,例えば,Himalayan mist coffee(=ヒマラヤの霧で育ったコーヒーほどの意味)と大手を振って商品化し,市場で販売を開始することができることになる。
上記のとおり,本件商標は,上記の誤解を招くことを危惧して法整備された「原産地冒用回避のための法」=商標法第4条第1項第7号の一類型である原産地冒用を直接的に引き起こすことは自明であり,「公序良俗」に違反している。
(3)結論
上記理由のとおり,本件商標は,商標法第8条第1項及び同法第4条第1項第7号に違反して登録されたものである。

4 当審の判断
(1)商標法第8条第1項該当性について
ア 本件商標について
本件商標は,上記1のとおり,「Himalayan mist」の文字を表してなるところ,構成中の「Himalayan」の文字は,「ヒマラヤ(山脈)の」の意味を,「mist」の文字は,「霧,かすみ,もや」の意味をそれぞれ有する語(ランダムハウス英和辞典(第二版)小学館)であるところ,その構成文字は同書同大でまとまりよく一体的に表され,構成文字全体から生ずる「ヒマラヤンミスト」の称呼は,格別冗長というべきものでなく,よどみなく一連に称呼し得るものである。さらに,構成文字全体から「ヒマラヤ山脈の霧」の観念を生じるものである。
したがって,本件商標は,その構成全体をもって一体不可分のものと把握,認識されるものであり,「ヒマラヤンミスト」の称呼を生じ,「ヒマラヤ山脈の霧」の観念を生じるものである。
イ 引用商標1について
引用商標1は,別掲1のとおり,四角形の枠内の上部に「ヒマラヤ・ヒマラヤン」,「Himalaya・Himalayan」の文字,下部に「蜂蜜\冬虫 夏草 茶\冬虫 夏草 酒\そば\茶紅茶\コヒー」の文字を、それぞれ枠内に1文字又は2文字ずつ横書きした構成からなるところ,構成中の「蜂蜜\冬虫 夏草 茶\冬虫 夏草 酒\そば\茶紅茶\コヒー」の文字は,指定商品との関係においては商品の原材料,品質を表示するにすぎないものである。
そうすると,引用商標1は,その構成中の「ヒマラヤ・ヒマラヤン」及び「Himalaya・Himalayan」の文字部分が自他商品の識別標識としの機能を果たし得るものである。
したがって,引用商標1は,「ヒマラヤ・ヒマラヤン」及び「Himalaya・Himalayan」の構成文字に相応して「ヒマラヤヒマラヤン」の称呼が生じ,また,当該文字は直ちに何らかの具体的な意味合いを理解させるものではないから,特定の観念は生じないものである。
ウ 引用商標2について
引用商標2は,別掲2のとおり,緑色の「HIMALAYA Mountains」と「Sacred Paradise COFFEE」の文字を2段に横書きし,その下に,緑色の2重円の中に山の図形を描き,外円の内側中央上部から右側に白抜きの「HIMALAYA Mountains」の文字を,左側に白抜きの「Sacred Paradise COFFEE」の文字を表し,さらにその下に,緑色の「ヒマラヤ〈聖天の〉コーヒー」の文字を横書きしてなるところ,「HIMALAYA Mountains」及び「Sacred Paradise COFFEE」の文字と「ヒマラヤ〈聖天の〉コーヒー」の文字が同じ書体,同じ大きさで,外観上まとまりよく表されていることから,「HIMALAYA Mountains Sacred Paradise COFFEE」の構成文字に相応し「ヒマラヤマウンテンズセイクリッドパラダイスコーヒー」の称呼を,「ヒマラヤ聖天のコーヒー」の構成文字に相応し「ヒマラヤセーテンノコーヒー」の称呼が生じるものである。
そして,引用商標2の構成中,「HIMALAYA Mountains Sacred Paradise COFFEE」及び「ヒマラヤ聖天のコーヒー」の文字は,それぞれ直ちに特定の意味を理解させることのない一種の造語として認識されるとみるのが自然である。
したがって,引用商標2は,「ヒマラヤマウンテンズセイクリッドパラダイスコーヒー」及び「ヒマラヤセーテンノコーヒー」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。
エ 本件商標と引用商標との類否について
(ア)本件商標と引用商標1との類否について
本件商標は,「Himalayan mist」の文字を表してなるものであるのに対し,引用商標1は,四角形の上部枠内に「ヒマラヤ・ヒマラヤン」,「Himalaya・Himalayan」の文字と下部に「蜂蜜\冬虫 夏草 茶\冬虫 夏草 酒\そば\茶紅茶\コヒー」の文字を横書きした構成からなるものであるから,両商標は,構成文字及び構成態様が異なり,外観上,相紛れるおそれはないものである。
次に,称呼においては,本件商標から生じる「ヒマラヤンミスト」と引用商標1から生じる「ヒマラヤヒマラヤン」の称呼とは,その音構成及び音数において明白な差異を有するものであるから,両者は,称呼上,明瞭に聴別できるものである。
そして,観念においては,本件商標は,「ヒマラヤ山脈の霧」の観念を生じるのに対し,引用商標1は,特定の観念は生じないものであるから,観念においても紛れるおそれはない。
そうすると,本件商標と引用商標1とは,外観,称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標というのが相当である。
(イ)本件商標と引用商標2との類否について
本件商標は,「Himalayan mist」の文字を表してなるものであるのに対し,引用商標2は,緑色の「HIMALAYA Mountains」と「Sacred Paradise COFFEE」の文字を2段に横書きし,その下に,緑色の2重円の中に山の図形を描き,外円の内側中央上部から右側に白抜きの「HIMALAYA Mountains」の文字を,左側に白抜きの「Sacred Paradise COFFEE」の文字を表し,さらにその下に,緑色の「ヒマラヤ〈聖天の〉コーヒー」の文字を横書きした構成からなるものであるから,両商標は,構成文字及び構成態様が異なり,外観上,相紛れるおそれはないものである。
次に,称呼においては,本件商標から生じる「ヒマラヤンミスト」と引用商標2から生じる「ヒマラヤマウンテンズセイクリッドパラダイスコーヒー」及び「ヒマラヤセーテンノコーヒー」の称呼とは,その音構成及び音数において明白な差異を有するものであるから,両者は,称呼上,明瞭に聴別できるものである。
そして,観念においては,本件商標は,「ヒマラヤ山脈の霧」の観念を生じるのに対し,引用商標2は,特定の観念は生じないものであるから,観念においても紛れるおそれはない。
そうすると,本件商標と引用商標2とは,外観,称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標というのが相当である。
エ 小括
以上のとおり,本件商標は,引用商標と非類似の商標であるから,両者の指定商品が類似のものであって引用商標が先願であるとしても,商標法第8条第1項の規定に違反して登録されたものではない。
(2)商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標は,「Himalayan mist」の文字よりなり,その構成文字から「ヒマラヤンミスト」の称呼及び「ヒマラヤ山脈の霧」の観念を生じる一連一体の商標であると認識される。
そして,本件商標は,その構成自体が矯激,卑猥,差別的な文字ではなく,その商標を使用することが社会公共の利益に反し,又は社会の一般的道徳観念に反するものということはできない。
また,本件商標の本件指定商品についての使用は,他の法律によって禁止されているものでもない。
さらに,本件商標ないしその使用が特定の国若しくはその国民を侮辱し又は一般に国際信義に反するものでもなく,本件商標の登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものともいえないことから,その商標登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合ということはできない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当しない。
(3)むすび
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第8条第1項及び同法第4条第1項第7号のいずれにも違反してされたものとはいえず,他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから,同法第43条の3第4項の規定により,維持すべきである。
よって,結論のとおり決定する。
別掲 別掲1 引用商標1


別掲2 引用商標2(色彩については,原本参照。)


異議決定日 2021-04-14 
出願番号 商願2020-23685(T2020-23685) 
審決分類 T 1 652・ 22- Y (W30)
T 1 652・ 4- Y (W30)
最終処分 維持  
前審関与審査官 野口 智代 
特許庁審判長 佐藤 松江
特許庁審判官 鈴木 雅也
平澤 芳行
登録日 2020-08-31 
登録番号 商標登録第6286315号(T6286315) 
権利者 株式会社菱和園
商標の称呼 ヒマラヤンミスト、ヒマラヤン、ミスト 

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