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審決分類 審判 一部申立て  登録を維持 W162021
審判 一部申立て  登録を維持 W162021
審判 一部申立て  登録を維持 W162021
審判 一部申立て  登録を維持 W162021
審判 一部申立て  登録を維持 W162021
審判 一部申立て  登録を維持 W162021
審判 一部申立て  登録を維持 W162021
管理番号 1374081 
異議申立番号 異議2020-900290 
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2021-06-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-11-02 
確定日 2021-04-22 
異議申立件数
事件の表示 登録第6280529号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第6280529号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6280529号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおりの構成よりなり,平成30年12月20日に登録出願,第1類,第16類,第20類及び第21類に属する別掲2のとおりの商品を指定商品として,令和2年7月17日に登録査定,同年8月14日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
1 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が,本件登録異議の申立ての理由において,本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する登録商標は,以下の5件の商標であり(以下,これらをまとめて「引用登録商標」という。),いずれも現に有効に存続しているものである。
(1)登録第6159713号商標(以下「引用商標1」という。)は,別掲3のとおりの構成よりなり,平成30年5月25日に登録出願,第3類,第8類ないし第11類,第14類,第16類,第18類,第20類,第21類,第25類,第26類,第28類ないし第30類及び第32類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として,令和元年7月5日に設定登録されたものである。
(2)登録第5927497号商標(以下「引用商標2」という。)は,別掲4のとおりの構成よりなり,平成27年10月19日に登録出願,第3類,第9類,第14類,第16類,第18類,第20類,第21類,第24類,第25類,第28類及び第35類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として,同29年3月3日に設定登録されたものである。
(3)登録第5927498号商標(以下「引用商標3」という。)は,別掲5のとおりの構成よりなり,平成27年10月19日に登録出願,第3類,第16類,第18類,第20類,第21類,第25類及び第28類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として,同29年3月3日に設定登録されたものである。
(4)登録第5927499号商標(以下「引用商標4」という。)は,別掲6のとおりの構成よりなり,平成27年10月19日に登録出願,第3類,第9類,第14類,第16類,第18類,第20類,第21類,第24類,第25類,第28類及び第35類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として,同29年3月3日に設定登録されたものである。
(5)登録第6146196号商標(以下「引用商標5」という。)は,別掲7のとおりの構成よりなり,平成30年5月25日に登録出願,第35類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として,令和元年5月24日に設定登録されたものである。
2 申立人が,本件登録異議の申立ての理由において,本件商標が商標法第4条第1項第10号及び同項第15号に該当するとして引用する商標は,申立人の展開する「各種生活雑貨とそれら商品を取り扱う小売業」の出所を表示する「MINISO」ブランドとして,本件商標の登録出願時に我が国の需要者の間で周知となっていたと主張するものであり,「MINISO」の欧文字を構成要素とするものである(以下「申立人商標」といい,引用登録商標と申立人商標をまとめて「引用商標」という。)。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標はその指定商品中,第16類「全指定商品」,第20類「全指定商品」及び第21類「全指定商品」(以下,まとめて「申立商品」という。)について,商標法第4条第1項第10号,同項第11号及び同項第15号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第46号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標
本件商標は,上段に図形を配し,下段に丸みを帯びたフォントで表記された欧文字「minima」を配してなるものであり,当該欧文字部分が要部として認識され得るものである。
(2)引用登録商標
引用登録商標は,他の図形要素や漢字を含む場合もあるが,いずれも「MINISO」の文字が独立して要部として認識され得るものである。
(3)本件商標と引用登録商標の類否
本件商標の要部「minima」と引用登録商標の要部「MINISO」を比較すると,1文字目ないし4文字目の4文字において,大文字・小文字の差異はあるものの,構成文字が共通している。さらに,本件商標の「minima」の文字は,丸みのある独特なフォントで表示されており,末尾に位置する「a」の文字には右下方に若干の縦棒があるものの,それはごく僅かであり,ほとんど円形状の文字と認識されるから,外観上「o」の文字と認識され得るというべきである。その場合,本件商標の要部は「minimo」と認識され,引用登録商標の要部「MINISO」と,看者の目につきやすい語頭の1文字目から4文字目までの4文字に加えて,6文字目においても大文字・小文字の差異はあるものの構成文字が共通することになる。したがって,両商標は,外観上相紛らわしい。
また,本件商標の要部「minima」は,その構成文字に相応して「ミニマ」の称呼を生じ,当該文字が「minimo」と認識された場合には「ミニモ」の称呼を生じ得る。一方,引用登録商標の要部「MINISO」は,その構成文字に相応して「ミニソ」の称呼を生じ,両商標から生じる称呼を比較すると,全体の3音中,商標の類否を決定する上で重要な語頭において「ミニ」の2音が共通する。したがって,両商標は,称呼上相紛らわしい。
そして,本件商標の要部「minima」及び引用登録商標の要部「MINISO」は,いずれも特定の観念を認識させない造語である。したがって,観念により本件商標と引用商標を区別することは困難である。
なお,両商標は「mini」又は「MINI」の文字が構成上共通しているため,共に「小型のもの」を意味する英語「mini」に基づいて作られた造語であると認識され得るものである。
本件商標及び引用登録商標の指定商品等の分野に関し,それらが一般的な日用品・身の回り品であることを考慮すると,需要者は購入等に際し,常に高度の注意力を持って商標を観察するとは限らず,造語として特定の観念を認識させない両商標は,語頭部分の外観及び称呼を共通にし,出所混同のおそれがある。
以上のとおり,本件商標と引用登録商標は,外観及び称呼において相紛らわしく,観念において区別することが困難であるところ,外観,称呼及び観念を総合して全体的に観察した場合,互いに相紛らわしく,類似するものである。
(4)指定商品及び指定役務の類否
本件商標の指定商品中,第16類「紙製又はプラスチック製の吸収機能を有する食品包装用シート,紙製又はプラスチック製の包装袋,紙製又はプラスチック製のごみ収集用袋,紙製又はプラスチック製の食品包装用調湿シート,包装用プラスチックフィルム,プラスチック製気泡状包装材料,パレット運搬用伸縮プラスチック製密着フィルム」,第20類「瓶用栓又はふた(金属製のものを除く。),木製又はプラスチック製の箱,袋を密封するためのプラスチック製包装用クリップ,食品用プラスチック製装飾品,プラスチック製包装容器」及び第21類「乗物の窓用ガラス(半製品),ブラシ製品,タンク及び容器の洗浄用ブラシ,はし,洗濯ばさみ,紙製又はプラスチック製コップ,飲料用角杯,水差し,化粧落とし器,化粧用スポンジ,せっけん箱,飲物用ストロー,食卓用器具(ナイフ・フォーク及びスプーンを除く。),食卓用皿」は,引用登録商標の指定商品及び指定役務の一部と同一又は類似の関係にある。
(5)小括
以上より,本件商標は,引用登録商標と類似し,かつ,その指定商品も引用登録商標の指定商品及び指定役務に抵触するから,商標法第4条第1項第11号に該当する。
2 商標法第4条第1項第10号及び同項第15号について
(1)申立人商標の周知性
ア 申立人の「MINISO」ブランドについて
申立人の生活雑貨ブランド「MINISO」は,2013年に創設されたブランドであり,当該ブランドの下,インテリア・日用雑貨,健康・美容雑貨,ファッション雑貨,デジタル周辺機器,飲食料品など幅広い各種の生活雑貨を製造・販売している(甲7)。自ら企画・製造した商品は,小売店舗で消費者に販売する事業形態を採用しており,各地に小売店舗を展開している。
イ 申立人商標について
申立人商標は,申立人及びそのグループ会社のハウスマークであり,ブランド創設者は,取扱商品のほとんどが「小さい(mini)」ものであることから,当該語をハウスマーク商標として採択した。
申立人商標は,申立人及びそのグループ会社が製造・販売する商品やその包装,小売店舗の看板などに付して使用されており,申立人及びそのグループ会社に係る商品及び小売業の出所を表示するものとして機能している。
ウ 「MINISO」ブランドの世界的展開
申立人の生活雑貨ブランド「MINISO」は,2013年の創設以降約7年の間に急激な成長を遂げ,現在では米国,イギリス,カナダ,オーストラリア,スペイン,アラブ首長国連邦,インド,メキシコなどを含む80以上の国と地域において店舗が開店され,世界中で4,200以上の店舗が存在している(甲8)。
その売上高は,好調に伸びており,2015年度に約7.5億ドル,2016年度に約15億ドル,2017年度に約18億ドル,2018年度に約25億ドルに達したとされる(甲9,甲10)。
また,2020年10月15日にはニューヨーク証券取引所に上場しており(甲11,甲12),いまや名実ともに世界規模で活躍する企業となっている。
「MINISO」ブランドは,プロモーション活動にも積極的であり,例えば,中国の広州で開催される歴史ある大規模な貿易展示会である「中国輸出入商品交易会(China Import and Export Fair)」に参加している。甲第13号証は,2018年に開催された展示会における「MINISO」ブランドの出展ブースの写真である。
そして,「MINISO」ブランドの世界における飛躍的な展開は,各国の報道メディアの注目するところとなっている。例えば,ベトナムにおける各種メディアによる「MINISO」ブランドに関する紹介記事(甲14)では,「MINISO」ブランドのベトナム市場への進出や出店情報,店舗の特徴などが紹介・報道されており,高い関心を集めていることをうかがわせる。
さらに,「MINISO」ブランドは,世界的に著名なブランドとのコラボレーション商品を展開するのにも積極的であり(甲8,甲15),消費者の人気・関心を集めている。
このように,「MINISO」ブランドは,その企業理念・ブランドコンセプトとおりにシンプルで洗練されたデザインの商品を手頃な価格で提供しており,世界各国で高い人気を博しており,世界中でその店舗数を急速に増やしてきた。
エ 日本における「MINISO」ブランドの展開と需要者の注目
日本においても,ブランド創設当初の2013年には株式会社名創優品産業が設立され(甲16),これまで出店してきた。池袋店,原宿店,渋谷店,川越店は既に閉店しているものの,現在では高田馬場店,イオンモール幕張新都心店,イオンモール津田沼店,イオンモール小名浜店,イオンモール名取店が存在し(甲17,甲18),店舗数はさほど多くはないものの,「MINISO」ブランドの世界での躍進は日本の需要者も注目するところとなっている。
日本において「MINISO」ブランドは,「名創優品」という漢字表記のブランド名の「名創」を片仮名で表示した「メイソウ」の名でも広く知られている。検索エンジンGoogleで「miniso AND メイソウ」というAND条件で検索したところ,約18,400件がヒットしており,検索ワードに片仮名を含むことから,主に日本語で書かれたものが検出されていると考えられ,「MINISO」ブランドに言及した日本語のウェブページが数多く存在していることが分かる(甲19)。
また,「MINISO」ブランドについて紹介・解説をした日本語のウェブ記事(甲20?甲25)により,「MINISO」ブランドの世界での急速な躍進の理由,ブランド戦略,株式上場,各国での市場進出,展開商品などに対して,日本の消費者からも非常に高い注目が集まっていることが分かる。つまり,「MINISO」ブランドは,日本の需要者の間でも,グローバルに展開する生活雑貨ブランドとして広く認知されている状態にある。
オ 商標「MINISO」の世界各国での登録
商標「MINISO」は,引用登録商標のように日本での登録が存在するに留まらず,世界各国においても登録されている(甲26?甲32)。
カ 小括
以上のとおり,申立人の生活雑貨ブランド「MINISO」は,世界各国において急速に拡大し,その店舗数を増やし売上高を伸ばしながら,消費者の高い人気を集め,需要者に広く知られたブランドとなっており,世界各国で登録されている。
また,日本国内においても,これまで複数の店舗の出店しており,「MINISO」ブランドの世界的躍進は日本でも頻繁に紹介・解説されており,我が国消費者の高い関心を集めている。
それゆえ,申立人商標は,グローバルに展開している生活雑貨ブランドを表示する商標として,我が国の需要者の間においても広く認識されるに至っており,周知な商標となっているものである。
(2)商標法第4条第1項第10号該当性について
ア 引用商標の周知性について
上記(1)のとおり,申立人商標は,申立人の展開するインテリア・日用雑貨,健康・美容雑貨,ファッション雑貨,デジタル周辺機器,飲食料品などの各種生活雑貨とそれら商品を取り扱う小売業の出所を表示する商標として,本件商標の出願時には既に,我が国の需要者の間で周知となっていたものである。
イ 商標の類否について
上記1(3)と同様に,本件商標と引用商標とは,互いに相紛らわしく,類似する商標というべきである。
ウ 商品の類否について
申立人は,「MINISO」ブランドにおいて,多岐にわたる生活雑貨を製造・販売しており,具体的な取扱商品のごく一例としては,「紙袋」(甲33),「紙箱」(甲34),「スプーン及びフォーク」(甲35),「マグカップ」(甲36),「弁当箱」(甲37),「ごみ箱」(甲38),「化粧用ブラシ」(甲39),「ヘアブラシ」(甲40),「家庭用ヘアドライヤー」(甲41),「ペット用ブラシ」(甲42),「保冷用アイスパック」(甲43)などがある。
本件商標は,その指定商品に第16類「紙製又はプラスチック製の吸収機能を有する食品包装用シート,紙製又はプラスチック製の包装袋,紙製又はプラスチック製のごみ収集用袋,紙製又はプラスチック製の食品包装用調湿シート,包装用プラスチックフィルム」及び第21類「ブラシ製品,タンク及び容器の洗浄用ブラシ,はし,洗濯ばさみ,食品及び飲料の保冷用アイスパック,紙製又はプラスチック製コップ,飲料用角杯,水差し,化粧落とし器,化粧用スポンジ,せっけん箱,飲物用ストロー,食卓用器具(ナイフ・フォーク及びスプーンを除く。),食卓用皿」を含んでおり,かかる商品は,引用商標が実際使用されているとして例示した上記の申立人の取扱商品と同一又は類似の関係にある。
つまり,本件商標の指定商品は,引用商標が生活雑貨ブランドの表示として周知性を獲得している商品・役務と同一又は類似の関係にある指定商品を含んでいる。
エ 小括
以上より,本件商標は申立人が展開する生活雑貨ブランドを表示する商標として需要者の間に広く認識されている申立人商標と類似する商標であって,本件商標の指定商品は,申立人の生活雑貨ブランドに係る商品及び役務と同一又は類似の関係にある指定商品を含むものである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第10号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 引用商標の周知性について
上記(1)のとおり,申立人商標は,申立人の展開するインテリア・日用雑貨,健康・美容雑貨,ファッション雑貨,デジタル周辺機器,飲食料品などの各種生活雑貨とそれら商品を取り扱う小売業の出所を表示する商標として,本件商標の出願時には既に,世界各国及び我が国における需要者の間で周知となっていたものである。
混同を生じるおそれ
本件商標の要部「minima」と引用商標の要部「MINISO」とを比較すると,上記1(3)のとおり,両商標は,看者の注意を引きやすい語頭部分において外観及び称呼を共通にする。
また,申立商品は,いずれも,申立人が展開する「MINISO」の生活雑貨ブランドにおいて取り扱われ得る(製造され小売販売され得る)商品と関連性の高い商品である。
引用商標の周知性の程度,本件商標と引用商標の類似性の程度,商品間又は商品と役務間の関連性の程度に鑑みれば,本件商標がその指定商品に使用された場合には,需要者は,異議申立人の業務に係る商品と誤認し,又は,異議申立人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であると誤認して,商品・役務の出所について混同するおそれがあるというべきである。
ウ その他
申立人及びそのグループ会社は,「MINISO」の他にも,「MINI HOME」(甲44),「Minihome」(甲45),「MINIgo」(甲46)など,「MINI○○」の構成からなる商標を保有している。
本件商標の要部である「minima」は,申立人及びそのグループ会社が保有する「MINI」を接頭辞とした一連の商標と同様の構成からなるものであり,この点からも,本件商標は申立人の業務に係る商品・役務と出所の混同を生じ得るというべきである。
エ 小括
上記のとおり,本件商標を付した商品に接した需要者は,当該商品を申立人の商品であると誤認し,又は,申立人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であると誤認して,商品・役務の出所について混同を生じるおそれがある。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。

第4 当審の判断
1 引用商標の周知性について
ア 申立人の提出に係る証拠及び同人の主張によれば,以下のとおりである。
(ア)「MINISO」ブランドは,2013年に設立され,2020年6月30日までの時点で,世界80以上の国・地域に4,200店以上を出店し(甲11),2020年10月15日にはニューヨーク証券取引所に上場したとされる(甲12)。
(イ)申立人は,「MINISO」ブランドの売上は,2015年度に約7.5億ドル,2016年度に約15億ドル,2017年度に約18億ドル,2018年度に約25億ドルに達した旨を主張している(甲9,甲10)ものの,商品及び役務について引用商標の具体的な使用態様や,我が国における売上に関する事実に関する記載はない。
(ウ)申立人は,プロモーション活動を行い,例えば,中国の広州で開催された貿易展示会「中国輸出入商品交易会(China Import and Export Fair)」に参加した旨主張し,看板に「名創優品」の文字と共に引用商標5を表示した申立人の出展ブースの写真を提出しているものの(甲13),当該展示ブースへの来場者数は不明である。
(エ)申立人は,我が国において,看板に引用商標5を掲げた店舗を,高田馬場店,イオンモール幕張新都心店等に出店していることがうかがえ(甲17,甲18),日本語のウェブサイトには,申立人の「MINISO」ブランドに触れた記事が存在する(甲21?甲24)。
(オ)申立人は,「MINISO」の文字又は「Miniso」の文字からなる商標や,「MINI」及び「SO」の文字を構成中に含む商標を,中国や韓国等の国・地域おいて商標登録している(甲26?甲32)。
(カ)申立人は,英語で記載されたウェブサイトにおいて,引用商標5及び申立人商標を表示して,「紙袋」,「紙箱」,「スプーン及びフォーク」,「マグカップ」等を販売していることがうかがえる(甲33?甲43)ものの,我が国において申立人がどの引用商標を使用して,どのような商品又は役務を販売又は提供しているのか等,具体的な商標の使用事実や当該商品又は役務の販売又は提供事実に関する記載は見当たらない。
イ 判断
以上によれば,申立人は,「MINISO」ブランドを2013年に設立し,2020年6月30日の時点で,我が国を含む国・地域に4,200店以上の店舗を出店し,英語で記載されたウェブサイトにおいて引用商標5及び申立人商標を表示して生活雑貨の商品を販売していることはうかがえるものの,我が国において,引用商標を使用した具体的な商品及び役務の販売及び提供の事実を示す証拠や,引用商標を使用した商品及び役務の売上高や市場シェアなどの実績,メディアを通じた広告・宣伝の程度,取引状況を示す客観的な証拠の提出はなく,他に,本件商標の登録出願時及び登録査定時における引用商標の使用事実を示す証拠は見いだせない。
してみれば,引用商標は,具体的な使用事実に基づいて使用状況を把握し,その周知性の程度を客観的に推し量ることができないから,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人の業務に係る商品及び役務を表すものとして,我が国の取引者,需要者の間に広く認識されていたと認めることはできない。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
本件商標は,別掲1のとおり,両端が丸められたC字状の図形を3つ組み合わせてなる図形(以下「本件図形部分」という。)の下に「minima」の欧文字を全体に丸みを帯びた字体で横書きしてなるところ,本件図形部分と「minima」の文字部分とは,視覚上分離して看取されるから,それぞれが独立して,取引者,需要者に対し商品の出所識別標識としての機能を果たし得るものである。
そして,「minima」の文字は辞書等に掲載のないものであって,特定の意味合いを想起させることのない,一種の造語として理解されるものであるから,特定の観念は生じないものである。
また,本件図形部分は,我が国において特定の事物を表したもの,又は意味合いを表すものとして認識され,親しまれているというべき事情は認められないことから,本件図形部分からは,特定の称呼及び観念は生じないものである。
したがって,本件商標は,その構成中,独立して自他商品の識別標識としの機能を果たし得る「minima」の文字部分に相応して,「ミニマ」の称呼を生じ,特定の観念は生じないものである。
(2)引用登録商標について
ア 引用商標1
引用商標1は,別掲3のとおり,「MINISO」のオレンジ色の欧文字を横書きしてなるところ,当該文字は辞書等に掲載がないものであって,特定の意味合いを想起させることのない,一種の造語として理解されるものであるから,引用商標1はその構成文字に相応して「ミニソ」の称呼を生じ,特定の観念は生じないものである。
イ 引用商標2
引用商標2は,別掲4のとおり,上部に持ち手状の図形が付いたオレンジ色の横長長方形と,同じ大きさ及び色彩の横長長方形を上下に配し,その中間に横長長方形と同じ横幅で「MINISO」のオレンジ色の欧文字を横書きし(以下「オレンジ図形部分1」という。),その左上部に小さく「MINISO」の黒色の欧文字を横書き(以下「黒文字部分1」という。)してなるところ,オレンジ図形部分1と黒文字部分1とは,視覚上分離して看取されるから,それぞれが独立して,取引者,需要者に対し商品の出所識別標識としての機能を果たし得るものである。
そして,黒文字部分1及びオレンジ図形部分1中の「MINISO」の文字は,辞書等に掲載がないものであって,特定の意味合いを想起させることのない,一種の造語として理解されるものであり,また,オレンジ図形部分1の図形部分は,我が国において特定の事物を表したもの,又は意味合いを表すものとして認識され,親しまれているというべき事情は認められないことから,その図形からは,特定の称呼及び観念は生じないものである。
したがって,本件商標は,その構成中,独立して自他商品の識別標識としの機能を果たし得る「MINISO」の構成文字に相応して,「ミニソ」の称呼を生じ,特定の観念は生じないものである。
ウ 引用商標3
引用商標3は,別掲5のとおり,「MINISO」のオレンジ色の欧文字を大きく横書きし,その下にはやや小さく細く「名創優品」のオレンジ色の漢字を横書きし(以下「オレンジ文字部分1」という。),さらに,左上部に小さく「MINISO/名創優品」の黒色の文字を横書き(以下「黒文字部分2」という。)してなるところ,オレンジ文字部分1と黒文字部分2とは,視覚上分離して看取されるから,それぞれが独立して,取引者,需要者に対し商品の出所識別標識としての機能を果たし得るものである。
また,オレンジ文字部分1についてみると,その構成中「MINISO」の文字と「名創優品」の文字とは,文字の種類と大きさ,太さ等が異なることから,視覚上分離して看取され,両者を分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとはいい難いものであるから,当該「MINISO」の文字が独立して,取引者,需要者に対し商品の出所識別標識としての機能を果たし得るものといえる。
そして,「MINISO」及び「名創優品」の文字は,いずれも辞書等に掲載がないものであって,特定の意味合いを想起させることのない,一種の造語として理解されるものである。
さらに,黒文字部分2の「MINISO」の文字は,「名創優品」の文字とは「/」によって分けられていること,文字の種類が異なり,観念上のつながりもないことに加え,構成文字全体から生じる「ミニソメイソウユウヒン」の称呼は11音とやや冗長であることからすると,語頭の「MINISO」の文字部分を捉えて,これから生じる称呼により取引に資する場合も少なくないものといえる。
したがって,引用商標3は,全体の構成文字及び「名創優品」の文字から生じる称呼の他に,独立して自他商品の識別標識としの機能を果たし得る「MINISO」の構成文字に相応して,「ミニソ」の称呼をも生じ,特定の観念は生じないものである。
エ 引用商標4
引用商標4は,別掲6のとおり,上部に持ち手状の図形が付いたオレンジ色の横長長方形と,同じ大きさ及び色彩でその図形中に「名創優品」の文字を配した横長長方形を上下に配し,その中間に横長長方形と同じ横幅で「MINISO」のオレンジ色の欧文字を横書きし(以下「オレンジ図形部分2」という。),その左上部に小さく「MINISO/名創優品」の黒色の欧文字を横書き(以下「黒文字部分3」という。)してなるところ,オレンジ図形部分2と黒文字部分3とは,視覚上分離して看取されるから,それぞれが独立して,取引者,需要者に対し商品の出所識別標識としての機能を果たし得るものである。
そして,「MINISO」の文字及び「名創優品」の文字は,辞書等に掲載がないものであって,特定の意味合いを想起させることのない,一種の造語として理解されるものであると共に,オレンジ図形部分2の図形部分は,我が国において特定の事物を表したもの,又は意味合いを表すものとして認識され,親しまれているというべき事情は認められないことから,その図形からは,特定の称呼及び観念は生じないものである。
また,オレンジ図形部分2の構成中「MINISO」の文字は,他の図形要素とは視覚上分離して看取され,また,「名創優品」の文字とは,観念上のつながりもないこと,構成文字全体から生じる「ミニソメイソウユウヒン」の称呼は11音とやや冗長であることからすると,引用商標4に接する取引者,需要者は,その構成中,大きくはっきりと表された「MINISO」の文字部分を捉えて,取引に資する場合も少なくないというべきである。
さらに,黒文字部分3の「MINISO」の文字は,上記ウと同様,語頭の「MINISO」の文字部分を捉えて,これから生じる称呼により取引に資する場合も少なくないものといえる。
したがって,引用商標4は,全体の構成文字及び「名創優品」の文字から生じる称呼の他に,独立して自他商品の識別標識としの機能を果たし得る「MINISO」の構成文字に相応して「ミニソ」の称呼を生じ,特定の観念は生じないものである。
オ 引用商標5
引用商標5は,別掲7のとおり,上部に持ち手状の図形が付いた赤色の縦長長方形(以下「赤色図形部分」という。)の内部に,「MINI」の欧文字と「SO」の欧文字を白抜きで二段に横書きし,「SO」の欧文字の右側に点と横線と曲線を組み合わせた図形(以下「組み合わせ図形」という。)を白抜きで表してなるところ,その構成中,「MINI」の文字は「小型のもの」等の意味を有する英語であり,「SO」の文字は「そう。そのように。」等の意味を有する英語(いずれも「リーダーズ英和辞典第2版」株式会社研究社)であるものの,構成文字全体としては辞書等に掲載がないものであって,特定の意味合いを想起させることのない,一種の造語として理解されるものであるから,当該文字部分からは,「ミニソ」の称呼を生じ,特定の観念は生じないものである。
また,赤色図形部分及び組み合わせ図形は,我が国において特定の事物を表したもの,又は意味合いを表すものとして認識され,親しまれているというべき事情は認められないものである。
したがって,引用商標5は,その構成文字に相応して「ミニソ」の称呼を生じ,特定の観念は生じないものである。
(3)本件商標と引用登録商標の類否について
ア 外観
本件商標と引用登録商標の外観を比較すると,両者の全体の構成はそれぞれ上記(1)及び(2)のとおりであるから,それぞれ,図形の有無及び色彩の差異などにより,容易に区別し得るものである。
また,本件商標の構成中「minima」の文字と引用登録商標の構成中の「MINISO」の文字との比較においても,両者は,書体,色彩,大文字と小文字の差異に加えて,5文字目及び6文字目に「ma」と「SO」の文字の差異を有するものである。そして,この2文字の差異が,共に6文字という比較的短い文字構成からなる両者の外観全体の視覚的印象に与える影響は小さいものとはいえないものである。
してみれば,両商標は,外観において,相紛れるおそれのないものとみるのが相当である。
イ 称呼
称呼においては,本件商標から生じる「ミニマ」と引用登録商標から生じる「ミニソ」の称呼を比較すると,両者は語尾における「マ」と「ソ」の音の差異を有するところ,この差異が共に3音という短い音構成からなる両称呼全体に及ぼす影響は少なくなく,両者をそれぞれ一連に称呼しても,相紛れるおそれのないものと判断するのが相当である。
ウ 観念
観念においては,本件商標及び引用登録商標は,共に特定の観念を生じないものであるから,比較することができない。
エ そうすると,本件商標と引用登録商標とは,観念において比較することができないものであるとしても,外観及び称呼において相紛れるおそれがないものであるから,両者の外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すれば,両者は相紛れるおそれのない非類似の商標である。
(4)小括
本件商標と引用登録商標とは,上記2(3)のとおり,非類似の商標であるから,申立商品と引用登録商標の指定商品及び指定役務が同一又は類似であるとしても,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第10号及び同項第15号該当性について
(1)引用商標の周知著名性について
引用商標は,上記1のとおり,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人の業務に係る商品及び役務を表すものとして,我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることができないものである。
(2)本件商標と引用商標の類似性の程度について
本件商標と引用登録商標とは,上記2(3)のとおり,非類似の商標であって,別異の商標というべきものである。
また,申立人商標は,上記第2の2のとおり,「MINISO」の欧文字からなるところ,当該文字は,上記2(2)アと同様に,辞書等に掲載がないものであり,特定の意味合いを想起させない一種の造語として理解されるものであって,その構成文字に相応して,「ミニソ」の称呼を生じ,特定の観念は生じないものであるから,本件商標と申立人商標も,上記2(3)と同様に,非類似の商標であって,別異の商標というべきものである。
そうすると,本件商標と引用商標は,いずれも別異の商標であり,類似性の程度が高いとはいえないものである。
(3)出所の混同のおそれについて
以上から判断するに,本件商標の申立商品が引用商標に係る商品又は役務とは,互いに関連性を有する商品又は役務であるとしても,上記(1)のとおり,引用商標は本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人の業務に係る商品及び役務を表すものとして,我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることができないものであり,また,上記(2)のとおり,本件商標と引用商標とは別異の商標であり,両商標の類似性の程度が高いとはいえない。
そして,他に,本件商標が商品又は役務の出所の混同を生ずるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
そうすると,本件商標は,商標権者がこれを申立商品について使用しても,取引者,需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく,その商品が申立人あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように,その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
(4)小括
引用商標は,上記(1)のとおり,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人の業務に係る商品又は役務を表示する商標として,我が国の需要者の間で広く認識されていたとは認められないものであるから,本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当しない。
また,上記(3)のとおり,本件商標は,その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきであるから,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 申立人の主張について
申立人は,本件商標の末尾に位置する「a」の文字には右下方に若干の縦棒があるものの,それはごく僅かであり,円形状の文字であると看者により認識されるもので,外観上「o」の文字と認識され得る旨を主張しているが,本件商標の構成文字の字体は全体が丸み帯びている中で,当該円形状の文字の縦棒は小さくても外観上明確に表されているものといえるから,当該円形状の文字は「o」ではなく「a」を表したと認識されるものとみるのが自然である。したがって,申立人の主張は採用できない。
5 むすび
以上のとおり,本件商標は,申立商品について,商標法第4条第1項第10号,同項第11号及び同項第15号のいずれにも違反して登録されたものではないから,同法第43条の3第4項の規定に基づき,その登録を維持すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。

別掲

別掲1 本件商標


別掲2 本件商標の指定商品
第1類「耐酸性化学合成物,未加工アクリル樹脂,ベンゼン誘導体(化学品として用いられるものに限る。),炭水化物,プラスチック分散剤,乳化剤,未加工エポキシ樹脂,肥料,工業用グリセリン,イオン交換体(化学剤),乳酸,炭酸カルシウム,塩化カルシウム,未加工プラスチック,未加工ポリマー樹脂」
第16類「紙製又はプラスチック製の吸収機能を有する食品包装用シート,紙製又はプラスチック製の包装袋,紙製又はプラスチック製のごみ収集用袋,紙製又はプラスチック製の食品包装用調湿シート,包装用プラスチックフィルム,プラスチック製気泡状包装材料,パレット運搬用伸縮プラスチック製密着フィルム」
第20類「瓶用栓又はふた(金属製のものを除く。),木製又はプラスチック製の箱,袋を密封するためのプラスチック製包装用クリップ,食品用プラスチック製装飾品,プラスチック製包装容器,排水用プラスチック製トラップ(バルブ)」
第21類「乗物の窓用ガラス(半製品),ブラシ製品,タンク及び容器の洗浄用ブラシ,はし,洗濯ばさみ,食品及び飲料の保冷用アイスパック,紙製又はプラスチック製コップ,飲料用角杯,水差し,化粧落とし器,化粧用スポンジ,せっけん箱,飲物用ストロー,食卓用器具(ナイフ・フォーク及びスプーンを除く。),食卓用皿」

別掲3 引用商標1(色彩は,原本参照。以下同じ。)


別掲4 引用商標2


別掲5 引用商標3


別掲6 引用商標4


別掲7 引用商標5



異議決定日 2021-04-14 
出願番号 商願2018-157752(T2018-157752) 
審決分類 T 1 652・ 251- Y (W162021)
T 1 652・ 261- Y (W162021)
T 1 652・ 253- Y (W162021)
T 1 652・ 271- Y (W162021)
T 1 652・ 262- Y (W162021)
T 1 652・ 252- Y (W162021)
T 1 652・ 263- Y (W162021)
最終処分 維持  
前審関与審査官 石戸 拓郎武谷 逸平 
特許庁審判長 半田 正人
特許庁審判官 鈴木 雅也
須田 亮一
登録日 2020-08-14 
登録番号 商標登録第6280529号(T6280529) 
権利者 ミニマ テクノロジー カンパニー リミテッド
商標の称呼 ミニマ 
代理人 特許業務法人R&C 
代理人 特許業務法人深見特許事務所 

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