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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y37
管理番号 1373885 
審判番号 取消2018-300533 
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2018-07-13 
確定日 2021-04-08 
事件の表示 上記当事者間の登録第4718912号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 登録第4718912号商標の指定役務中,第37類「建設工事,建築工事の斡旋・媒介又は取次ぎ,建築工事に関する助言,建築工事の監理,建築設備の運転・点検・整備,建築・土木機械器具の修理又は保守,建築資材・土木機械器具の貸与」についての商標登録を取り消す。 審判費用は,被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4718912号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおりの構成からなり,平成14年9月4日に登録出願,「建設工事,建築工事の斡旋・媒介又は取次ぎ,建築工事に関する助言,建築工事の監理,建築設備の運転・点検・整備,建築・土木機械器具の修理又は保守,建築資材・土木機械器具の貸与」を含む第37類及び第36類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務を指定役務として,同15年10月17日に設定登録され,現に有効に存続しているものである。
なお,本件審判の請求の登録は,平成30年7月30日であり,本件審判の請求の登録前3年以内の平成27年7月30日から同30年7月29日までを,以下「要証期間」という場合がある。

第2 請求人の主張
請求人は,本件商標の指定役務中「結論掲記の指定役務」についての登録を取り消す旨の審決を求め,審判請求書及び審判事件弁駁書において,その理由を要旨次のように述べ,甲第1号証ないし甲第6号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は,その指定役務中,第37類「建設工事,建築工事の斡旋・媒介又は取次ぎ,建築工事に関する助言,建築工事の監理,建築設備の運転・点検・整備,建築・土木機械器具の修理又は保守,建築資材・土木機械器具の貸与」について,継続して3年以上日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても使用されていないから,商標法第50条第1項の規定により,その登録は取り消されるべきである。
2 答弁に対する弁駁
(1)本件商標について
ア 本件商標の外観
本件商標は,青地の円形から欧文字「A.」を白抜きに表した図形(以下,この図形を「A図形」という。)と,欧文字「A.Style」とを組み合わせた商標であり,一見しただけで,図形と欧文字が独立して存在している状態を看取することができる。
本件商標のような図形を文字から独立して表示させた商標は,一般的に,図形によりコーポレートマークを表示し,文字により文字商標を表示する例が多く見られるところである。したがって,欧文字「A.Style」は,これが1つのまとまりを有する文字商標であると認識される。
イ 本件商標の称呼
本件商標は,A図形から「まるエイ」,「エイまる」,「まるエース」の称呼が生じ,欧文字「A.Style」から「エイスタイル」,「エイドットスタイル」,「アスタイル」の称呼が生じる。
ウ 本件商標の観念
本件商標は,A図形から「まるエイ印」,「エイまる印」,「まるエース印」の観念が生じ,欧文字「A.Style」から「A様式(スタイル)」,「A級のスタイル」の観念が生じる。
(2)被請求人主張の使用商標について
被請求人は,「法令看板の写真」(乙2の3),「法令看板の仕様書」(乙3の2),「パンフレット」(乙5)において,別掲2のとおり,本件商標と同様の構成からなるA図形(以下「青色で表したA図形」という。)の右下に「S」が掛かるよう「Style」を横書きしてなる標章と,「y」のはらいの左右に「LOG」と「HOMES」を振り分けた細文字(以下「LOGHOMES」という。)を組み合わせた構成からなる商標(以下「使用商標(1)」という。)を使用し,「工事請負契約書」(乙1)において,別掲3のとおり,灰色の円形から欧文字「A.」を白抜きした本件商標と同様の構成からなる図形(以下「灰色で表したA図形」という。)の右下に「S」が掛かるよう「Style」を横書きしてなる標章と,「LOGHOMES」を組み合わせた構成からなる商標(以下,「使用商標(2)」という。)を使用している旨主張しているところ,請求人は,被請求人が主張する使用事実は不知であるが,この2つの使用商標は,図形の色彩が若干相違するだけで,実質的に同一商標であるので,以下,両者を観察する(以下,使用商標(1)及び使用商標(2)をまとめて「使用商標」という場合がある。)。
ア 使用商標の外観
使用商標は,青色又は灰色で表したA図形と,欧文字「Style」及び「LOGHOMES」とを組み合わせた商標であり,一見しただけで,図形と欧文字が独立して存在している状態を看取させられ,本件商標と同様に,独立的に表示されたA図形がコーポレートマークの表示とされ,独立的に表示された欧文字「Style」は,これが1つのまとまりを有する文字商標であると認識される。
イ 使用商標の称呼
使用商標は,A図形から「まるエイ」,「エイまる」の称呼を生じ,欧文字から「スタイルログホームズ」の称呼を生じる。
ウ 使用商標の観念
使用商標は,A図形から「まるエイ印」,「エイまる印」の観念を生じ,欧文字「Style」から「スタイル(様式,流儀)」の観念を生じる。
欧文字「LOGHOMES」は,造語ないし和製英語であり,言語としての意味を有していないが,あえて,イメージを浮かべるならば,「丸太組構法(ログハウス構法)による家」である。
(3)本件商標と使用商標の同一性について
使用商標と本件商標は,形式的にも実質的にも重要な点に差異があるため,これが社会通念上同一商標ではない。
ア 外観上の差異について
(ア)本件商標は,A図形と欧文字「A.Style」が独立した存在を示すように表示されている。
使用商標は,A図形と欧文字「Style」及び「LOGHOMES」が独立した存在を示すように表示されている。
そこで,両者を対比すると,使用商標は,本件商標の欧文字「A.Style」に対応しておらず,「A.」を削除した「Style」の文字に変更している。また,使用商標は,本件商標にはない「LOGHOMES」の文字を追加している。
(イ)本件商標は,A図形から独立した状態で表示された欧文字「A.Style」が1つの文字商標としてのまとまりを有し,同様に,使用商標は,A図形から独立した状態で表示された欧文字「Style」が1つの文字商標としてのまとまりを有しており,それぞれの文字商標の間において,本件商標と使用商標は,「A.」の有無の点で相違しており,明確な外観上の差異がある。この差異は,付記的なものではなく,まとまりのある1つの文字列の中に存在しているため,全く別異の文字商標として認識されるべきものである。
イ 称呼上の差異について
(ア)本件商標は,A図形と欧文字「A.Style」が独立して表示されているから,A図形から生じる称呼(「まるエイ」「エイまる」「まるエース」)と,欧文字「A.Style」から生じる称呼(「エイスタイル」「エイドットスタイル」「アスタイル」)の2つの称呼が生じる。
これに対して,使用商標は,A図形と欧文字「Style」が独立して表示されているから,A図形から生じる称呼(「まるエイ」「エイまる」「まるエース」)と,欧文字「Style」から生じる称呼(「スタイル」)の2つの称呼が生じる。
したがって,本件商標と使用商標は,A図形に関する限りは,称呼が同一であるが,まとまりのある欧文字の文字列から生じる称呼は,本件商標の「エイスタイル」に対して,使用商標は,「スタイル」であるから,称呼が明確に異なる。
(イ)被請求人は,使用商標から「エイスタイル」の称呼が生じると主張しているが,使用商標は,A図形と欧文字「Style」が独立して表されているのであり,これを一連に読むことは極めて不自然であるから,A図形の文字「A」だけを抽出し,それを欧文字の文字列「Style」と無理に結合することにより,「エイスタイル」と呼称されるようなことは,常識的にあり得ず,本件商標のまとまりのある文字商標部分から生じる「エイスタイル」の称呼に対して,使用商標のまとまりのある文字商標部分から生じる「スタイル」の称呼は,これが社会通念上同一であると解し得る余地はない。
ウ 観念上の差異について
(ア)本件商標は,A図形と欧文字「A.Style」が独立して表示されているから,A図形から「まるエイ印」,「エイまる印」の観念が生じ,欧文字(A.Style)から「A様式(スタイル)」「A流(スタイル)」あるいは「Aクラスの様式」の観念が生じる。
これに対して,使用商標は,A図形と欧文字「Style」が独立して表示されているから,A図形から「まるエイ印」「エイまる印」の観念が生じ,欧文字(Style)から「スタイル(様式,流儀)」の観念が生じる。
(イ)被請求人は,使用商標から「Aクラスの様式」の観念が生じると主張しているが,使用商標は,A図形と欧文字「Style」が独立して表されているのであり,これを一連に観察することは極めて不自然であり,一般的には独立的に表示されたA図形はコーポレートマークのようなものと認識されるから,そのようなA図形を「Style」と無理に結合することにより,1つの観念が生じると考えるようなことは,常識的にあり得ない。
(4)まとめ
以上のとおり,使用商標は,本件商標と社会通念上同一の商標と認めることはできないから,仮に,これが本件審判請求前の3年以内に使用された事実がある場合でも,本件商標の使用には当たらない。

第3 被請求人の主張
被請求人は,本件審判の請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする,と答弁し,その理由を答弁書において要旨次のように述べ,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第6号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 本件商標の使用事実
本件商標の商標権者(以下「本件商標権者」という。)は,本件審判の請求登録前に本件商標を本件商標の指定役務中,第37類「建設工事」に使用した事実がある。
2 本件商標権者の実施業務
本件商標権者は,岐阜県恵那市大井町の氏名A(以下「A氏」という。)との間で,平成30年3月16日付け「工事請負契約書」(乙1)を締結した。この契約締結は,第37類「建設工事」の役務実施である。
本件商標権者は,乙第1号証の工事請負契約実施に伴い,A氏邸の建設工事の進行状況を撮影した(乙2の1:平成30年6月12日撮影の(写真1),同号証の2同年7月10日撮影の(写真2))乙第2号証の3(写真3)は,本建設のために設置された「法令看板」の写真で,上記(写真2)の下端中央部を拡大したものである。
「法令看板」(乙2の2,乙2の3)は,名古屋市瑞穂区川澄町の「たつ工房」こと氏名Y(以下「たつ工房」という。)が制作したもので,その事実は,メール(乙3の1)及び同メールに添付された「A様邸 新築工事」の法令看板の仕様書(乙3の2)と,その取引を裏付ける「納品書」(乙4の1)並びに「請求書」(乙4の2)から明らかである。
「パンフレット」(乙5)は,本件商標権者が,「ログハウスの建設工事」の役務に使用しているもので,本件審判請求時に使用していた事実は,たつ工房の「報告書」(乙6)から明らかである。同「パンフレット」裏面上端に表示された本件商標権者の建設許可番号「建設業知事許可(般-12)13408号」の「(般-12)」は,平成12年に一般建設業許可を受けたことを表している。許可の有効期限は5年であるから,このパンフレットが,平成12年から同17年の間に制作されていたことを示している。
3 本件商標権者の商標使用
「法令看板の写真」(乙2の3),「法令看板の仕様書」(乙3の2)「パンフレット」(乙5)においては,青色で表したA図形の右下に「S」が掛かるよう「Style」を横書きしてなる標章(以下「A.(青)Style」という。)と,「LOGHOMES」を組み合わせた構成になる使用商標(1)を使用している。「工事請負契約書」(乙1)においては,灰色のA図形の右下に「S」が掛かるよう「Style」を横書きしてなる標章(以下「A.(灰)style」という。)と,「LOGHOMES」を組み合わせた構成からなる使用商標(2)を使用している。
4 「LOGHOMES」について
「LOGHOMES」の文字は,本件商標権者が建設した「LOGHOMES」で営まれる「家庭」をイメージした単なる飾り文字にすぎないから,「A.(青)Style」又は「A.(灰)Style」との組合せにおいて,一連不可分の称呼「エイスタイルログホームズ」や一体的な特定の観念は生じない。極めて小さな文字ポイントである上,フォントも細くあっさりした付記的表現にとどまっているので,この部分は,本件商標と使用商標の対比においては除外して考察されるべきである。
5 本件商標の簡略表示
使用商標は,本件商標の構成中下段文字列の先頭「A.」を削除し,「Style」の「S」を青色で表したA図形又は灰色で表したA図形の右下に掛かるように配列している。
6 本件商標と使用商標の称呼
本件商標からは,「エイスタイル」の称呼が生じ,本件商標の青色で表したA図形は,下段の「A.Style」の「A.」部分の称呼と重複することもあって,青色で表したA図形から称呼は生じず,本件商標から,「エイエイスタイル」の称呼は生じない。
これに対して,使用商標は,青色で表したA図形又は灰色で表したA図形と密着状に「Style」を接続することによって,「A.Style」のつづりとして認識できるよう一体的なデザイン表示になっているから,「エイスタイル」の称呼が生じる。
このようなことから,本件商標及び使用商標は,共に「エイスタイル」の称呼によって特定され,同一称呼である。
7 本件商標と使用商標の観念
本件商標と使用商標は,共に「Aクラスの(最上の)様式」の観念を有し,両商標に別意の観念は見いだせない。
8 Styleの独立性
使用商標は,「A.Style」のつづりとして認識できる一体的なデザイン表示になっているから,「Style」部分だけが分離独立して認識されるようなことはない。
9 外観上の近似性
使用商標は,本件商標の重複表示ともいえる印象の強い青色で表したA図形部分と,印象の強くない下段の「A.Style」の「A.」について,下段の「A.」を削除して青色で表したA図形(灰色で表したA図形)と「Style」を接続しており,外観上は,同一とはいえないまでも,本件商標の外観的な特徴及び印象を保持する形となっているので,使用商標は,本件商標との関連において,外観上極めて近似する構成を保持しているといえる。
10 社会通念上の同一性
使用商標は,本件商標と同一とはいえないにしても,登録商標の使用の実際においては,種々の事情に応じて,何らかの文字を付加・欠落又は変更することはしばしば行われることであり,使用商標の場合も,「A.」の削除を含む「A.Style」の表現方法等が本件商標と若干異なるとしても,そのことから,商標の印象に格別の差異を感じさせるものではない。
使用商標からは,本件商標から生ずる「エイスタイル」と同一の称呼が生じ,また,本件商標と同一の観念「Aクラスの(最上の)様式」を有し,さらに,両商標は,外観上ほぼ同じ印象の近似態様を有しているので,社会通念上,同一と認識し得る範囲内の商標である。
11 まとめ
以上のとおり,本件商標権者は,本件審判請求登録前に本件商標を第37類「建設工事」に使用した事実がある。

第4 被請求人に対する審尋及び同審尋への回答
審判長は,被請求人に対し,審判事件答弁書における主張及び添付された証拠を総合してみるに,使用商標(1)及び使用商標(2)については,本件商標とは商標中の「A.」の文字の有無等に差異を有し,明らかに構成が異なるものであって,本件商標と社会通念上同一の商標とみることはできない旨の合議体の暫定的見解を示した令和2年11月4日付け審尋を送付し,相当の期間を指定して,当該審尋に対して回答をする機会を与えた。
しかしながら,被請求人は,上記審尋に対し,何ら回答をしていない。

第5 当審の判断
被請求人は,本件商標権者が,要証期間内に,日本国内において,本件商標の指定役務中,第37類「建設工事」に使用している使用商標が本件商標と社会通念上同一であると主張しているので,以下検討する。
1 被請求人提出証拠における使用商標
被請求人の提出に係る乙各号証によれば,以下の事実が認められる。
(1)乙第1号証は,注文者A氏と被請求人との間で締結した平成30年3月16日付けの工事請負契約書であるところ,その1葉目の工事請負契約書の表紙の下方には,本件商標権者の名称,及び,灰色円図形の中に白抜きで「A.」の文字を太字で表し,その右下に「Style」の文字及びその下に小さく「LOGHOMES」の文字を配した構成からなる使用商標(2)が表示されている。
(2)乙第2号証の1ないし3は,乙第1号証の工事請負契約実施に伴い,新築工事の進行状況を撮影したとされる写真と,該工事のために設置された法令看板とされる写真であるところ,乙第2号証の3の法令看板の上方には,「A様邸 新築工事」の記載,及び,青色円図形の中に白抜きで「A.」の文字を太字で表し,その右下に「Style」の文字及びその下に小さく「LOGHOMES」の文字を配した構成からなる使用商標(1)が表示されている。
(3)乙第3号証の1は,「たつ工房」から被請求人あての電子メールの写しであり,また,乙第3号証の2は,同メールに添付された上記(2)の法令看板の仕様書であるところ,そこには,上方に「A様邸 新築工事」の記載と共に,青色円図形の中に白抜きで「A.」の文字を太字で表し,その右下に「Style」の文字及びその下に小さく「LOGHOMES」の文字を配した構成からなる使用商標(1)が表示されている。
(4)乙第4号証は,「たつ工房」から本件商標権者あての「納品書」及び「請求書」であり,これらの書証には使用商標(1)及び使用商標(2)の表示はない。
(5)乙第5号証は,裏表紙に被請求人の名称が印刷された「パンフレット」であり,その表紙中央右及び2葉目表面の下部には,青色円図形の中に白抜きで「A.」の文字を太字で表し,その右下に「Style」の文字及びその下に小さく「LOGHOMES」の文字を配した構成からなる使用商標(1)が表示されている。
(6)乙第6号証は,「たつ工房」の代表者の記名及び押印のある「報告書」であるところ,1葉目,資料1(「法令看板」)及び資料5(「パンフレット」)に使用商標(1)が表示されている。
2 上記1において認定した事実によれば,以下とおりである。
(1)本件商標
本件商標は,別掲1のとおり,青色円図形の中に白抜きで「A.」の文字を太字で表し,その右下に「A.Style」の文字を配した構成からなるものである。
(2)使用商標
「工事請負契約書の表紙」(乙1),「法令看板」(乙2の3),「法令看板の仕様書」(乙3の2),「パンフレット」(乙5)及び「報告書」(乙6)には,別掲2及び別掲3のとおり,青色円図形(又は灰色円図形)の中に白抜きで「A.」の文字を太字で表し,その右下に「Style」の文字及びその下に小さく「LOGHOMES」の文字を配した構成からなる使用商標(1)又は使用商標(2)が表示されているところ,使用商標(1)と使用商標(2)は,円図形部分の色彩が若干相違するものの,実質的に同一の構成からなる商標であるから,使用商標が本件商標と社会通念上同一の商標であるかを検討する。
(3)本件商標と使用商標が社会通念上同一の商標であるかについて
本件商標と使用商標を比較するに,本件商標と使用商標とは,円図形の中に白抜きで「A.」の文字を太字で表した部分を同じくするものの,当該部分の下部に表示された「A.Style」の文字部分と「Style」の文字部分における「A.」の有無及び下部に小さく表示された「LOGHOMES」の有無に差異を有するものである。
してみれば,本件商標と使用商標は,全体の構成が異なるものであって,同視できるものではないから,両商標を社会通念上同一の商標と認めることはできない。
したがって,使用商標は,本件商標と社会通念上同一と認められる商標ということはできない。
その他,被請求人が提出した証拠から,使用商標が本件商標と社会通念上同一であると認めるに足りる証拠は見いだせない。
3 被請求人の主張について
被請求人は,「使用商標は,本件商標と同一とはいえないにしても,登録商標の使用の実際においては,種々の事情に応じて,何らかの文字を付加・欠落又は変更することはしばしば行われることであり,使用商標の場合も,「A.」の削除を含む「A.Style」の表現方法等が本件商標と若干異なるが,そのことから,商標の印象に格別の差異を感じさせるものではない。使用商標からは,本件商標から生ずる「エイスタイル」と同一の称呼が生じ,また,本件商標と同一の観念「Aクラスの(最上の)様式」を共有しており,両商標は,外観上ほぼ同じ印象の近似態様を呈しているので,若干の変更がなされているとしても,社会通念上,同一と認識し得る範囲内の商標である。」旨主張している。
しかしながら,本件商標と使用商標とは,構成中に共通の部分があるとしても,上記2のとおり構成全体が異なるものであって,同視できるものではないから,個別の事情に応じて登録商標の一部を変更して使用される取引の実情があるとしても,使用商標が本件商標と社会通念上同一と認めることはできない。
よって,被請求人の主張は,採用することができない。
4 まとめ
以上のとおり,被請求人が提出した証拠から認定できる使用商標は,本件商標と社会通念上同一と認められる商標ということはできず,ほかに被請求人が要証期間内に本件審判請求に係る指定役務について,本件商標を使用していることを証明するものはなく,被請求人は,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが本件商標の指定役務中,第37類「建設工事,建築工事の斡旋・媒介又は取次ぎ,建築工事に関する助言,建築工事の監理,建築設備の運転・点検・整備,建築・土木機械器具の修理又は保守,建築資材・土木機械器具の貸与」のいずれかについて,本件商標(社会通念上同一のものを含む。)の使用をしていることを証明したものということはできない。
また,被請求人は,本件商標の使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにしていない。
したがって,本件商標の登録は,商標法第50条の規定によりその指定役務中,「結論掲記の指定役務」について取り消すべきものである。
なお,審判費用の負担については,商標法第56条第1項において準用する特許法第169条第2項によって準用する民事訴訟法第61条に規定する敗訴当事者の負担の原則に基づき,被請求人の負担とするのが相当である。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
別掲1 本件商標(色彩は原本参照)


別掲2 使用商標(1) (色彩は乙2の3,乙3の2,乙5参照)


別掲3 使用商標(2) (色彩は乙1参照)


審理終結日 2021-02-09 
結審通知日 2021-02-12 
審決日 2021-02-26 
出願番号 商願2002-75213(T2002-75213) 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (Y37)
最終処分 成立  
特許庁審判長 半田 正人
特許庁審判官 大森 友子
鈴木 雅也
登録日 2003-10-17 
登録番号 商標登録第4718912号(T4718912) 
商標の称呼 エイ、エイスタイル、アスタイル、スタイル 
代理人 三宅 始 
代理人 中野 収二 

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