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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z05
管理番号 1373873 
審判番号 取消2019-300057 
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2019-01-22 
確定日 2021-03-29 
事件の表示 上記当事者間の登録第4531899号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4531899号商標の商標登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4531899号商標(以下「本件商標」という。)は、「ALTOZAR」の欧文字と「アルトザール」の片仮名を上下2段に横書きしてなり、平成13年1月19日に登録出願、第5類「薬剤」を指定商品として、同年12月21日に設定登録がされ、現に有効に存続しているものである。
なお、本件審判の請求の登録日は、平成31年2月5日であり、本件審判の請求の登録前3年以内の同28年2月5日から同31年2月4日までの期間を、以下「要証期間」という。

2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第6号証を提出した。
(1)請求の理由
本件商標は、その指定商品について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないこと、及び、本件商標を使用していないことについて何ら正当な理由が存する事実も認められないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
(2)答弁に対する弁駁
ア 本件商標と使用予定商標との同一性について
本件商標は、「ALTOZAR」と「アルトザール」とを、上下2段に書してなるところ、「医薬品輸入承認申請書」(乙1)及び「FD申請受付票(正)」(乙2)に記載された販売名は、「アルトザールNV」であって、該文字は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標には該当しない。
したがって、「アルトザールNV」を使用したとしても、本件商標の使用とは認められないものであるから、「医薬品輸入承認申請書」(乙1)及び「FD申請受付票(正)」(乙2)をもって、本件商標の使用をしていないことについて正当な理由があるとはいえない。
イ 指定商品と使用予定商品との同一性について
「医薬品輸入承認申請書」(乙1)の備考欄には「殺虫剤(1)製剤原料」と記載されている。形式的には「医薬品輸入承認申請書」という様式にて医薬品の輸入の承認が申請されているとしても、その申請に係る商品の実質は、同備考欄の記載のとおり、殺虫剤(1)という薬剤(製剤)それ自体ではなく、同薬剤(製剤)を製造するための原料である。すなわち「アルトザールNV」は、薬剤ではなく、薬剤製造用原料(製剤原料)について使用を予定するものである。
よって、「アルトザールNV」が使用されたとしても、指定商品について使用したとは認められないから、「医薬品輸入承認申請書」(乙1)及び「FD申請受付票(正)」(乙2)をもって、本件商標の使用をしていないことについて正当な理由があるとはいえない。
ウ 使用予定の主体について
「医薬品輸入承認申請書」(乙1)を提出したとされる日本国法人である「ノバルティス アニマルヘルス株式会社」と、商標権者との関係が何ら明らかにされておらず、また、両者の関係を証明する証拠も提出されていない。該社が本件商標の使用権者でなければ、本件商標を使用したとしても、不使用取消を免れることはできないのであるから、「医薬品輸入承認申請書」(乙1)及び「FD申請受付票(正)」(乙2)をもって、本件商標の使用をしていないことについて正当な理由があるとはいえない。
エ 「本件商標権者と国内法人は医薬品の輸入の承認を得ることを希望している」について
「ALTOZAR」は、かつては諸外国において商標登録されていたが、日本国以外はすべて更新されることなく権利期間が満了しており、しかもその後諸外国における新たな商標登録出願もまったくなされていない(甲3)。このことから、少なくとも「ALTOZAR」に係る商品をグローバルに使用する意志がないことが推認される。
また、上記事実は、本件商標権者が日本国への輸入を希望していると主張する商品の製造国や、輸出元となるべき諸外国においては、「ALTOZAR」の商標登録が全く維持されておらず、商標登録の確保に向けた手段も何ら講じられていないことを示している。本件商標権者が、日本国における本件商標の登録の維持にはこだわりつつ、本件商標権者の本国たるスイス国を含め、輸入されるべき商品の製造国や輸出元となるべき諸外国における商標登録の維持・確保に無頓着であるとは通常考えられない。
したがって、輸入承認申請書を提出した時点ではともかく、その後現在に至るまで「本件商標権者と国内法人は輸入の承認を得ることを希望している」旨の被請求人の主張は、客観的にみてきわめて疑わしい。むしろ、本件商標権者や上記日本法人は、申請後、現時点に至るまでの間に、申請に係る商品の輸出入を希望しなくなったとみるのが自然である。
オ 医薬品輸入承認審査について
(ア)審査の係属について
一般に医薬品関連の承認申請は、最終的に承認処分を受けるか、さもなければ、(たとえ申請者の責めに帰すべき事情によって承認がなされない状況であったとしても、)その申請が取り下げられない限りは、申請された状態が存続することとなる。被請求人は「申請そのものは審査に係属している」としているが、そもそも申請が取り下げられていないことを示す証拠が何ら示されておらず、現在も当該申請が係属しているのか明らかではない。
(イ)審査に要している期間について
仮に申請が取り下げられていないとしても、「アルトザールNV」は、平成12年12月26日に申請が受け付けられてから、少なくとも18年もの期間が経過している。
昭和60年10月1日付けの「各都道府県知事あて厚生省薬務局長通知」によれば、医薬品の承認の標準的事務処理期間は長くとも1年以内とされている(甲4)。平成6年9月28日付けの「各都道府県知事あて厚生省薬務局長通知」においても、当該標準的事務処理期間をもって標準処理期間とするとされている(甲5)。
そして、医薬品関連の承認申請の審査においては、通常、面談等を通じて、審査側(国側)は申請者に対して必要な照会・確認等を行い、申請者側はこれに対する回答・プレゼンテーション等(回答に必要な試験・データ取得なども含む)を準備したうえで応答する、といったやりとりが行われる。
医薬品の承認審査における審査側(国側)の標準処理期間は1年であり、審査側(国側)の都合による多少の審査遅延があったとしても、上記18年の期間はあまりに長い。しかも、「医薬品輸入承認申請書」(乙1)によれば、申請に係る製剤原料たる化学品の一般名称は「S-ハイドロプレン」であるところ、かかる化学品は既に第三者によって使用・販売されている薬剤に含有されているものであり(甲6)、これまでに存在しなかった極めて特殊な化学品ゆえ承認までに極めて長期間を要している、などの特殊な事情も考えられない。
仮に、審査側(国側)の懈怠等によって現在に至るまで審査が遅延しており、真に承認を希望しているのであれば、審査側(国側)への催促や、法律上の行政不服申立手段など、あらゆる措置を講じうるところ、申請者においてかかる措置を講じた証拠も何ら提出されていない。
そうすると、18年以上もの間承認が得られていないという事実は、上記の各事実にも照らすと、客観的にみて、申請者側が審査側(国側)における承認審査事務処理を待っているというよりも、むしろ申請後の審査側(国側)からの照会等に対して、承認取得に向けた応答をしていない状態(申請者側において事実上放置されている状態)が相当期間継続しているとみるのが自然である。
カ 「正当な理由」(商標法第50条第2項ただし書)について
商標法第50条第2項ただし書きの登録商標の使用をしていないことについての正当な理由としては、その商標を使用する予定の商品の生産の準備中に天災地変等によって、工場等が損壊した結果、その使用ができなかったような場合、許認可手続の遅延その他の公権力の発動による場合、時限立法によって一定期間(3年以上)その商標の使用が禁止されたような場合等が事例として挙げられており、東京高裁平成9年(行ケ)第53号判決では「商標法は本来、登録商標の使用を保護の前提としていること、及び、不使用取消審判制度が設けられている趣旨からすると、登録商標を使用しないことについて当該商標権者の責めに帰すことができないやむを得ない事情があり、不使用を理由に当該商標登録を取り消すことが、社会通念上商標権者に酷であるような場合をいうものと解するのが相当である」と判示されている。
そして上記各事実に照らすと、本件については、登録商標を使用しないことについて当該商標権者の責めに帰すことができないやむを得ない事情があるとはいえず、また、不使用を理由に当該商標登録を取り消すことが社会通念上商標権者に酷であるような場合に該当するともいえない。

3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証及び乙第2号証を提出した。
(1)本件商標については、販売名「アルトザールNV」のもと、日本国法人であるノバルティス アニマルヘルス株式会社により、医薬品の輸入の承認を求めるため、平成12年12月26日に東京都衛生局薬務部薬事審査課に医薬品輸入承認申請書を提出して、その申請が受け付けられている(乙1、乙2)。
その後、未だに承認が得られていない状態のまま、申請そのものは審査に係属しているが、本件商標権者と国内法人は医薬品の輸入の承認を得ることを希望している。
したがって、本件商標は、使用をしていないことについて正当な理由がある(商標法第50条第2項)ことは明らかである。

4 当審の判断
(1)被請求人は、要証期間に、本件商標を本件審判の請求に係る指定商品について使用していないことにつき、商標法第50条第2項ただし書にいう「正当な理由」がある旨主張するところ、当該「正当な理由」とは、地震、水害等の不可抗力によって生じた事由、放火、破壊等の第三者の故意又は過失によって生じた事由、法令による禁止等の公権力の発動に係る事由その他の商標権者、専用使用権者又は通常使用権者(以下「商標権者等」という場合がある。)のいずれの責めに帰すことができない事由(以下「不可抗力等の事由」という場合がある。)が発生したために、商標権者等において、登録商標をその指定商品について使用することができなかった場合をいうものと解される(知的財産高等裁判所、平成19年11月29日、平成19年(行ケ)第10227号判決)。
そこで、この点に係る被請求人の主張及び同人提出の乙第1号証及び乙第2号証についてみるに、その内容によれば、以下のとおりである。
ア 乙第1号証は、平成12年12月26日付けで「ノバルティス アニマルヘルス株式会社」(以下「ノバルティス社」という。)から厚生大臣に提出された「医薬品輸入承認申請書」であるところ、当該申請書の販売名欄には「アルトザールNV」の記載がある。
イ 乙第2号証は、受付日を平成12年12月26日とする東京都衛生局薬務部薬事審査課による「FD申請受付票」であるところ、申請者氏名欄にノバルティス社の名称、提出先に厚生大臣とある。
ウ 昭和60年10月1日付け各都道府県知事あて厚生省薬務局長通知(甲4)によれば、医療用医薬品に承認等を与えるまでの標準的事務処理期間は1年、一般用医薬品に承認等を与えるまでの標準的事務処理期間は10月とされている(平成6年9月28日付け各都道府県知事あて厚生省薬務局長通知(甲5)においても、上記標準的事務処理期間をもって標準処理期間とするとされている)。そして、上記通知(甲4)には、「標準的事務処理期を経過した場合には、申請書の申出に基づき、申請者に対し速やかに、期間内に処理できなかつた理由を示すものとする。」との記載がある。
エ 上記アないしウによれば、ノバルティス社が、平成12年12月26日付けで「医薬品輸入承認申請書」(以下「申請書」という。)を厚生大臣に提出し、東京都がそれを受領していることは認められるものの、本件商標権者と、申請書を提出したノバルティス社との関係を示す具体的な証拠方法の提出がなく、例えば、ノバルティス社が本件商標の専用使用権者である、あるいは、通常使用権者である、といった関係性が不明である。
また、医薬品輸入承認申請において、標準的事務処理期間を経過しても、承認等がおりない場合には、申請者は、処理遅延の理由を示すよう、厚生労働省に求めることができるといえる。
しかしながら、ノバルティス社が、当該医薬品輸入承認申請より、標準的事務処理期間を経過した平成13年12月以降、処理遅延の理由を示すよう厚生労働省へ申し出たり、同省がその理由を示したとする証拠は、一切提出されていない。
そうすると、平成12年の申請から18年を経過しているにもかかわらず、「未だに承認が得られていない状態のまま、申請そのものは審査に継続している」とする被請求人の主張は、にわかに採用しがたい。
オ したがって、ノバルティス社が平成12年12月26日に厚生大臣宛てに医薬品輸入承認申請を行っているとしても、そのことのみをもって、要証期間に、本件商標を本件審判の請求に係る指定商品について使用していないことにつき、商標権者等において不可抗力等の事由が発生したとは到底いえず、その他、当該医薬品輸入承認が得られていないということを認めるに足る事実を裏付ける証拠は、一切提出されていない。
そうすると、被請求人は、本件審判の請求について、商標法第50条第2項ただし書にいう「正当な理由」があることを明らかにしたということにはならない。
したがって、本件審判の請求において、商標権者等が、要証期間に、その請求に係る指定商品について本件商標(社会通念上同一の商標と認められるものを含む。)を使用していないことについて正当な理由があると認めることはできない。
(2)まとめ
以上によれば、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品についての本件商標の使用をしていることを証明していない。
また、被請求人は、本件審判の請求に係る指定商品について本件商標の使用をしていないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2020-10-28 
結審通知日 2020-11-02 
審決日 2020-11-16 
出願番号 商願2001-3213(T2001-3213) 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (Z05)
最終処分 成立  
特許庁審判長 半田 正人
特許庁審判官 石塚 利恵
大森 友子
登録日 2001-12-21 
登録番号 商標登録第4531899号(T4531899) 
商標の称呼 アルトザール 
代理人 長谷 玲子 
代理人 特許業務法人浅村特許事務所 

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