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審決分類 審判 一部申立て  登録を取消(申立全部取消) W18
審判 一部申立て  登録を取消(申立全部取消) W18
審判 一部申立て  登録を取消(申立全部取消) W18
審判 一部申立て  登録を取消(申立全部取消) W18
管理番号 1372930 
異議申立番号 異議2019-900276 
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2021-05-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-09-26 
確定日 2021-03-12 
異議申立件数
事件の表示 登録第6159464号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6159464号商標の指定商品中、第18類「かばん類,袋物」についての商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第6159464号商標(以下「本件商標」という。)は、「HEADS」の欧文字を書してなり、平成30年7月3日に登録出願、「かばん類,袋物」のほか第18類、第16類、第17類、第20類、第22類及び第26類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、令和元年6月14日に登録査定、同年7月5日に設定登録されたものである。

第2 登録異議申立人が引用する商標
1 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議申立ての理由において、商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する登録商標(以下、まとめていうときは「引用商標」という。)は、以下の2件であり、いずれも現に有効に存続している。
(1)登録第4484695号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:HEAD(標準文字)
登録出願日:平成12年1月7日(優先権主張:1999年(平成11年)10月27日、オーストリア共和国)
設定登録日:平成13年6月22日
指定商品:第18類「スポーツバッグ,リュックサック,ウエストバッグ,ハンドバッグ,ショッピングバッグ,ビーチバッグ,キャンピングバッグ,学生かばん,キャスター付きスーツケース,その他のスーツケース,キャスター付き旅行かばん,その他の旅行かばん,その他のかばん類,財布(貴金属製のものを除く。),携帯用化粧道具入れ」並びに第14類及び第21類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
(2)登録第5356771号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:別掲のとおり
登録出願日:平成19年6月21日
設定登録日:平成22年10月1日
指定役務:「リュックサック・その他のかばん類及び袋物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」のほか第35類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務
2 申立人が、本件商標に係る登録異議申立ての理由において、商標法第4条第1項第8号、同項第15号及び同項第19号商標に該当するとして引用する商標は、同人の業務に係る商品「スポーツ用品,かばん類,被服,履物等」に使用し、著名商標として認知され、かつ、同人を指し示す名称の著名な略称として一般に受け入れられている上記引用商標及び申立人が使用する「HEAD」の欧文字からなる商標(以下、上記1とまとめていうときは、「使用商標」という。)である。

第3 登録異議の申し立ての理由
申立人は、本件商標について、商標法第4条第1項第11号、同第15号、同第19号及び同第8号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その指定商品中、第18類「かばん類,袋物」についての登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第253号証を提出した。なお、証拠の表記に当たっては、「甲第○号証」を「甲○」のように省略して記載する。
1 商標法第4条第1項第11号該当性について
本件商標は、欧文字で「HEADS」と一般的な書体で横書きし、その文字に応じて「ヘッズ」の称呼、「頭」の観念が生じる。
引用商標1からは、その文字「HEAD」に応じて「ヘッド」の称呼、「頭」「申立人の著名ブランドのヘッド」の観念が生じ、また、引用商標2からは、その文字「HEAD」に応じて「ヘッド」の称呼、「頭」「申立人の著名ブランドのヘッド」の観念が生じる。
本件商標は、引用商標の複数形であるところ、複数形を表す「S」の発音「ズ」は比較的弱く発音され、明確には聴取され難い場合が多く、それぞれの称呼を明確に聴別することは困難である。
また、日本語において単数形か複数形を日常的に意識することは少なく、どちらも「頭」を、または上述のとおり「申立人の著名ブランド」を認識する。
引用商標は、いずれもその文字に照応した「ヘッド」の称呼及び「頭」「申立人の著名ブランドとしてのヘッド」との観念が生じるものである。
以上のことから、本件商標と引用商標とは、称呼・外観において類似し、観念において共通する類似する商標である。
このことは、特許庁の審判等において互いに類似するとされた例からも首肯される。
そして、本件商標の指定商品中、第18類「かばん類,袋物」は、引用商標1に係る指定商品中、第18類「スポーツバッグ,リュックサック,ウエストバッグ,ハンドバッグ,ショッピングバッグ,ビーチバッグ,キャンピングバッグ,学生かばん,キャスター付きスーツケース,その他のスーツケース,キャスター付き旅行かばん,その他の旅行かばん,その他のかばん類,財布(貴金属製のものを除く.)」、引用商標2に係る指定役務中、第35類「リュックサック・その他のかばん類及び袋物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」と同一又は類似する商品である。
以上のことから本件商標と引用商標とはその外観・称呼・観念において類似し、また指定商品も同一又は類似するものであることは明瞭である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
2 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)申立人は商標「HEAD」(ヘッド)を長年にわたり継続的にスキー用具、スノーボード用品、テニス用品、バッグ類、ウェア、アクセサリー等について使用しており、我が国はもちろんのこと、世界中の人々に支持されてきている。これにより、商標「HEAD」は申立人を直接的に表す一流スポーツブランドとして世界的に著名となり、高い信頼と名声を獲得し、世界中の人々に支持されてきた(甲74?甲249)。なお、申立人のブランド「HEAD」が著名であることは、これら雑誌等における掲載回数の多さから明らかである。
全世界におけるHEADブランド商品の売上げは過去5年間、毎年300億円以上あり、2015年は約343億円、2016年は約342億円である。また申立人は売上げの約10%を広告宣伝費に費やしている。
日本においても、HEADブランド商品の売上げは過去5年間、毎年20億円以上あり、2015年は約28億円、2016年は約23億円である。また日本における広告宣伝費には毎年1億円以上を費やしている。
2016年テニス商品のヨーロッパにおけるマーケットシェアは第2位、約30%であり、日本においては、第3位、約12.7%である(甲249)。
2016年スキー用品のヨーロッパにおけるマーケットシェアは第2位、約19%であり、日本においては第3位、約7.2%、スキーブーツは第2位、約12%、ビンディングも第2位、約20.1%を誇る(甲249)。
このように商標「HEAD」は、その商品の品質の高さ、小売店における使用状況、その歴史及び大規模な宣伝広告やイベント活動等を背景に、高い信用と名声を獲得した世界的一流ブランドとして、スポーツファンを始め、競技者やその関係者、取り扱う取引者や一般消費者など、世界中の人々に深く浸透するに至っている。
したがって、商標「HEAD」は申立人の業務に係るスポーツ用品や被服、履物等に関する出所識別標識として、本件商標の登録出願時及び登録査定時において著名であり、その著名性の程度は極めて高いものである。
(2)申立人の著名商標「HEAD」と本件商標が類似することは前述したとおりであり、申立人と何ら関係のない商標権者等が本件商標をその指定商品中第18類「かばん類,袋物」について使用すれば、申立人の業務に係る商品と混同され、その出所につき誤認されるおそれがあることは明白である。
このことは、「HEADS」(登録第4900787号の1及び同第4900487号の2)の登録を取り消した異議2006-90006の決定(甲250)において次のとおり判断されていることからも首肯できるものである。
「申立人がスキー用具、テニス用具、運動用バッグ、スポーツウェアに使用する上記構成よりなる引用標章は、本件商標の登録出願前はもちろんのこと登録査定時においても、取引者・需要者の間に広く認識され、著名性を獲得していたものと判断するのが相当である。(略)そうとすれば、本件商標と引用標章とは、「頭」の観念を共通にし、称呼において近似する類似の商標といわなければならず、また、本件商標の指定商品は、申立人の商品と密接な関連性を有するから、商標権者が本件商標をその指定商品に使用した場合、申立人又は申立人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように混同するおそれがあるといわなければならない。(略)」
以上のことから、仮に本件商標と引用商標が類似しないとしても、申立人と何ら関係のない商標権者等が本件商標に係る指定商品について使用するときは、あたかも申立人の系列会社等の緊密な営業上の関係にある営業主の業務に係る商品であると、取引者、需要者に誤信されるものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
3 商標法第4条第1項第19号該当性について
本件商標の構成の一部である「HEAD」は、その著名性の高さ故にgoogleやyahooなどの検索エンジンで検索すれば常に上位に表示され(甲251及び甲252)、商標「HEAD」がスポーツ用品はもちろん、被服やかばん類などについても申立人の著名商標であることは容易に把握できる。
そうすると、商標権者が申立人の「HEAD」ブランドを全く知らなかったとは考えにくく、むしろ、商標権者は申立人が長年の歴史、多額の広告宣伝費等により築き上げた著名商標「HEAD」に化体した信用、名声、顧客吸引力等にフリーライドする意図をもって本件商標を採択したと考えるのが自然であり、本件商標が係る指定商品に使用されれば、著名商標「HEAD」に化体した信用や名声等を毀損させるおそれが多分に存するものである。
以上のことを総合的に勘案すれば、商標権者は、不正の目的をもって本件商標を係る指定商品に使用をするものであると容易に推認することができる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第19号に違反してされたものである。
4 商標法第4条第1項第8号該当性について
申立人は1950年に創業したオーストリア国ケンネルバッハに本社を置くオーストリア法人であり、その名称「Head Technology GmbH(ヘッド、テクノロジー、ゲゼルシャフト、ミット、ベシュレンクテル、ハフツング)」の略称「HEAD」でブランド展開をし、現在、ヘッド・グループはヨーロッパ、アメリカを中心に世界80か国以上に販売網を持つ程の大規模な事業展開をするに至っている(甲6)。そして、前述したとおり、申立人はテニス等の人気選手との専属契約や、国際的なテニスの大会での宣伝広告などにより「HEAD」の認知度向上に努め、本件商標の登録出願時においては、既に申立人を指し示す略称としても世界中の人々に受け入れられているものである。
他方、本件商標は欧文字の「HEADS」を一般的な書体でスペースを設けず横書きした構成態様からなる商標であるが、本件商標の構成文字はいずれも我が国において親しまれている英単語「HEAD」の複数形にすぎない。
そうすると、本件商標の構成中、申立人の著名な略称「HEAD」と綴りを同一にする「HEAD」の文字は判然と認識されるものであり、本件商標に接する取引者、需要者が本件商標を全体で一体の造語商標と認識する、又は申立人の著名な略称「HEAD」が埋没して認識されないということは到底考えられないものであるから、本件商標は、明らかに申立人の名称の著名な略称を含む商標である。
そして、当然ながら、商標権者は本件商標を出願することについて申立人の承諾を得ていない。
したがって、本件商標が「かばん類,袋物」について使用されれば、申立人の承諾なしにその名称の略称を商標に使われることがない申立人の人格的利益を害するものである。
したがって、本件商標登録は、商標法第4条第1項第8号に違反してされたものである。

第4 取消理由の通知
当審において、令和2年7月22日付けで、商標権者に対し、「本件商標は、その指定商品中、第18類『かばん類,袋物』について、商標法第4条第1項第11号に該当し、また、本件商標は、これを本件商標権者が、前記商品について使用した場合、これに接する取引者、需要者が、使用商標を想起又は連想し、当該商品が申立人又は同人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように誤認し、商品の出所について混同を生じるおそれがあったものというべきであるから、仮に、商標法第4条第1項第11号に該当しないとしても、申立に係る商品について同項第15号に該当するから、本件商標は、商標法43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものである。」旨の取消理由を通知し,相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えた。

第5 商標権者の意見
前記第4の取消理由に対し、商標権者は、何ら意見を述べるところがない。

第6 当審の判断
1 使用商標の周知性について
(1)申立人提出の甲各号証、同人の主張によれば、次のとおりである。
ア 申立人について
申立人は、引用商標の商標権者であり、オーストリア国ケンネルバッハに本社を置くオーストリア法人であり、HEADグループのグループ会社として、1950年以来世界中において事業を展開してきたスポーツメーカーである(請求人の主張)
申立人は、スキー用具、スノーボード用品、テニス用品、かばん類、ウェア、アクセサリー等を販売し、申立人のハウスマークである「HEAD」をこれら商品について使用してきた(甲7?甲55、甲74?甲249)
イ 商品カタログについて
本件商標の登録出願前に我が国で発行された商品カタログには、以下の記載がある。
(ア)スキー用具
スキー板及びスキーブーツを中心に、スキーウェア、キャップ、スキー用バッグ、スキー板用バッグ等の商品の写真とともに、使用商標が使用されている(甲9?甲15、甲26、甲27、甲35、甲36、甲74、甲75)
(イ)テニス用品
テニス用ラケットを中心に、テニス用バッグ、テニスラケット用バッグ、テニス用シューズ、キャップ、スポーツバッグ、テニスボール、スポーツウェア等の商品の写真とともに、使用商標が使用されている(甲7、甲18、甲19、甲21?甲25、甲29、甲34、甲39、甲40、甲47、甲48)。
(ウ)バッグ類
デイバッグなどのバッグ類の商品の写真とともに、使用商標が使用されている(甲19、甲23、甲35、甲39、甲40、甲47、甲48)。
ウ 書籍及び雑誌について
(ア)スキー用具
「Ski」、「世界のスキー用具」等の各雑誌において、スポーツウエア(甲131、甲132、甲139)、スキー板(甲76、甲77?甲79、甲133、甲243?甲247)に使用商標が付され、また、スポーツウェア等に関する紹介記事が掲載され、その記事の中に使用商標が表示されている。
さらに、「男の一流品大図鑑’86年版」において、申立人のスキー板が1986年のニューモデルとして掲載され、そのスキー板について、使用商標が付されている(甲128)。
(イ)テニス用品
「Tennis Classic break」、「スマッシュ」、「T.Tennis」及び「Tennis Magazine」等の各雑誌において、テニス用ラケットの広告に使用商標が使用され、その広告に掲載されているテニス用ラケットにも使用商標が付され、また、使用商標が付されたテニス用ラケットに関する紹介記事が掲載され、その記事の中に使用商標が表示されている(甲80、甲82?甲90、甲92?甲94、甲142?甲148)。
さらに、「男の一流品大図鑑’94年版」において、「ヘッド」の項に、「HEAD オーストリア」、「テニスラケット」と記載されている(甲129)。
エ 新聞記事について
1999年(平成11年)11月5日付け日経産業新聞には、「HEADブランド/テニス用品を拡充/ワールド通商 ウエア販売参入」の見出しの下、「スポーツ用品、時計を輸入販売するワールド通商・・・は、『HEAD』ブランドのテニス用品事業を拡充する。今秋、チタンラケットを三機種増やして九機種にしたほか、二〇〇〇年の春夏物を皮切りにウエア販売にも参入する。」の記載がある(甲141)。
オ スポーツ産業白書(甲249)について
「2017年版 スポーツ産業白書」(2017年3月30日 株式会社 矢野経済研究所発行)の251頁には、2014年から2017年(予測)までの硬式テニスラケット国内出荷数量・金額が記載されており、「HEAD Japan(株)」においては、その出荷数量及び金額は、「2014年 数量57,000本、金額6億円」、「2015年 数量69,000本、金額7億3,000万円」、「2016年(見込)数量73,000本、金額7億8,500万円」、「2017年(予測)数量79,000本、金額8億5,500万円」であり、2016年(見込)では、数量及び金額で国内第4位、金額では12.7%のシェアと記載されている。
また、同白書の126頁には、2014年から2017年(予測)までのスキー板国内出荷数量・金額が記載されており、「HEAD Japan(株)」においては、その出荷数量及び金額は、「2014年 数量32,000セット、金額6億円」、「2015年 数量30,000セット、金額5億6,500万円」、「2016年(見込)数量25,000セット、金額4億7,500万円」、「2017年(予測)数量24,000セット、金額4億6,000万円」であり、2016年(見込)では、数量では国内第2位、金額では7.2%のシェアで3位と記載されている。
さらに、同白書の127頁には、2014年から2017年(予測)までのスキーブーツ国内出荷数量・金額が記載されており、「HEAD Japan(株)」においては、その出荷数量及び金額は、「2014年 数量45,000足、金額7億2,000万円」、「2015年 数量41,000足、金額6億6,000万円」、「2016年(見込)数量33,000足、金額5億3,500万円」、「2017年(予測)数量33,000足、金額5億4,000万円」であり、2016年(見込)では、数量は国内3位、金額では国内第2位、12.0%のシェアであると記載されている。
(2)上記の事実からすれば、使用商標は、申立人の業務に係る各種のテニス用品及びスキー用品である「テニス用ラケット,テニス用シューズ,テニス用バッグ,テニスラケット用バッグ,スキー板,スキーブーツ,スキー用バッグ,スキー板用バッグ、スポーツバッグなどのスポーツ用品」(以下「申立人商品」という。)に付され、日本向け商品カタログに掲載され、各種雑誌に継続して掲載され広告宣伝されたものであり、我が国におけるテニス用ラケット、スキー板及びスキーブーツの国内出荷数量も相当程度であって、かかる数量に相当する商品が販売されたものということができる。
そうすると、使用商標は、申立人の業務に係る申立人商品を表示するものとして、本件商標の登録出願日及び登録査定日において、需要者の間に広く認識されていたものと認められる。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標と引用商標との類否について
ア 本件商標は、前記第1のとおり、「HEADS」の欧文字を書してなるところ、構成文字に相応して、「ヘッズ」の称呼を生じ、「頭」の観念を生じるといえる。
イ 引用商標は、前記第2の1(1)及び別掲のとおり、「HEAD」の欧文字を書してなるところ、該構成文字に相応して、「ヘッド」の称呼を生じ、「頭」の観念を生じる。
ウ 本件商標と引用商標とを比較するに、外観においては、語尾の「S」の文字の有無に差異があるものの、語頭からの4文字「HEAD」を全て共通にするものである。
次に、本件商標から生じる「ヘッズ」の称呼と引用商標から生じる「ヘッド」の称呼は、語尾における音が「ズ」になるか「ド」になるかの差異はあるものの、語頭における音を含めた「ヘッ」の音を共通にするものである。
さらに、本件商標と引用商標は、ともに「頭」の観念が生じ、観念において同一といえる。
そして、外観における語尾の「S」の文字の有無及び称呼における語尾の「ズ」又は「ド」の音の差異は、いずれも単に複数形か単数形かの相違によるものであって、その相違が本件商標及び引用商標に接する取引者及び需要者に対し、強い印象として残るものとはいえない。
そうすると、本件商標と引用商標との外観、称呼、観念等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合し全体的に考察すれば、たとえ、外観における語尾の「S」の文字の有無及び称呼における語尾の「ズ」又は「ド」の音の差異があるとしても、これらは取引者及び需要者に対し強い印象として残るものとはいえないものであり、外観において語頭からの4文字「HEAD」を全て共通にし、称呼において語頭を含めた「ヘッ」の音を共通にし、かつ、同一の観念が生じる両商標は、商品又は役務の出所について誤認混同を生じさせるおそれのある類似する商標と判断するのが相当である。
(2)本件商標の申立てに係る指定商品と引用商標の指定商品及び指定役務との類否について
本件商標の登録について、申立人は、その指定商品中、第18類「かばん類,袋物」について登録異議の申立てをしている(以下、当該商品を「申立てに係る商品」という。)。
そして、引用商標1の指定商品には、「スポーツバッグ,リュックサック,ウエストバッグ,ハンドバッグ,ショッピングバッグ,ビーチバッグ,キャンピングバッグ,学生かばん,キャスター付きスーツケース,その他のスーツケース,キャスター付き旅行かばん,その他の旅行かばん,その他のかばん類,財布(貴金属製のものを除く。)」が含まれ、引用商標2の指定役務には、「リュックサック・その他のかばん類及び袋物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」が含まれている。
そうすると、引用商標1の指定商品中に含まれる上記商品は、本件商標の申立てに係る商品と同一又は類似の商品であり、また、引用商標2の指定役務中に含まれる上記役務と本件商標の申立てに係る商品とは、商品の販売と役務の提供が同一事業者によって取り扱われるのが一般的であり、また、需要者を共通にするものであるから、両者は類似するというのが相当である。
(3)小括
以上のとおり、本件商標と引用商標とは、類似の商標であって、本件商標の指定商品中、申立てに係る商品「かばん類,袋物」は、引用商標の指定商品及び指定役務と同一又は類似の商品であるから、本件商標は、申立てに係る商品について、商標法第4条第1項第11号に該当する。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
上記2(1)のとおり、本件商標は、引用商標と類似する商標であるから、本件商標と使用商標との類似性の程度は高いといえる。
そして、上記1のとおり、使用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたものと認められる。
また、申立人商品の中には、本件商標における申立てに係る商品と同じく、様々な物を収納して運ぶことができる「スポーツ用バッグ」を含むものであるから、「スポーツ用バッグ」と「かばん,袋物」は、用途や機能、需要者を共通にし、相当程度の関連性を有するものということができる。
そうすると、本件商標は、これを本件商標権者が申立てに係る商品について使用した場合、これに接する取引者、需要者が、使用商標を想起又は連想し、当該商品が申立人又は同人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように誤認し、商品の出所について混同を生じるおそれがあるものというべきである。
したがって、本件商標は、申立てに係る商品について、仮に、商標法第4条第1項第11号に該当しないとしても、同項第15号に該当する。
4 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、その指定商品中、第18類「かばん,袋物」について、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものと認められ、仮に、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものでないとしても、同項第15号に違反してされたものと認められるから、その余の申立ての理由について判断するまでもなく、同法第43条の3第2項の規定により、その指定商品中、「結論掲記の指定商品」について、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲


異議決定日 2020-11-04 
出願番号 商願2018-86487(T2018-86487) 
審決分類 T 1 652・ 261- Z (W18)
T 1 652・ 263- Z (W18)
T 1 652・ 262- Z (W18)
T 1 652・ 271- Z (W18)
最終処分 取消  
前審関与審査官 宗像 早穂 
特許庁審判長 中束 としえ
特許庁審判官 木村 一弘
山田 啓之
登録日 2019-07-05 
登録番号 商標登録第6159464号(T6159464) 
権利者 株式会社ヘッズ
商標の称呼 ヘッズ 
代理人 鈴木 亜美 
代理人 保崎 明弘 
代理人 安田 幹雄 
代理人 片桐 務 
代理人 和田 光子 
代理人 水野 勝文 

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