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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W03 |
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管理番号 | 1371915 |
異議申立番号 | 異議2020-900184 |
総通号数 | 256 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2021-04-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2020-07-30 |
確定日 | 2021-03-11 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6251672号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6251672号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第6251672号商標(以下「本件商標」という。)は、「LE TAN」の欧文字及び「ルタン」の片仮名を上下二段に表してなり、令和元年6月20日に登録出願、第3類「せっけん類,歯磨き,化粧品」を指定商品として、令和2年4月10日に登録査定され、同年5月14日に設定登録されたものである。 2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において引用する商標(商願2019-137795。以下「引用商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、第3類「日焼け止め用化粧品,化粧用ローション,日焼け止め用オイル,日焼け止めクリーム,日焼け用化粧品,人工日焼け用クリーム,人工日焼け用ローション,人工日焼け用ミスト状の化粧品,人工日焼け用化粧品,化粧品」を指定商品として、令和元年10月28日に登録出願されたものである。 3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第25号証(枝番号を含む。)を提出した。 (1)引用商標の外観、称呼及び観念について 引用商標は、別掲のとおりの構成よりなるところ、その構成文字「Le Tan」から「ルタン」の称呼が生じ、また、「Le」が「フランス語の男性定冠詞」で、「Tan」が「日焼け」の意味を有するから、「その日焼け」の観念が生じる(甲3)。 (2)商標の類否について 本件商標は、「LE TAN」の欧文字と「ルタン」の片仮名を二段に書してなる構成であるところ、その構成文字から、「ルタン」の称呼が生じ、上記(1)と同様に「その日焼け」の観念が生じる。 そうすると、本件商標と引用商標は、つづり、称呼及び観念において共通する、互いに類似する商標である。 (3)申立人について 申立人は、オーストラリアの法人であり、1977年の設立後現在に至るまで、マイナーチェンジを加えつつ、引用商標を継続して日焼け用化粧品及び日焼け止め化粧品等に使用している(甲4)。引用商標に係る「Le Tan」ブランドは、オーストラリアにおいて老舗ブランドとして広く知られている。 (4)引用商標に係るブランドの周知性 ア 売上について 引用商標が付された製品(日焼け用化粧品、日焼け止め化粧品を含む。)の国内外トータルの年間売上は、約509万豪ドル(2011年)、約498万豪ドル(2012年)、約515万豪ドル(2013年)、約388万豪ドル(2014年。日本円にして約2億8千万円。)、約1,582万豪ドル(2015年)、約1,676万豪ドル(2016年。日本円にして約12億2千万円。)、約1,609万豪ドル(2017年)、約1,453豪ドル(2018年)、約1,149豪ドル(2019年)、約300万豪ドル(2020年途中)である(甲5)。 イ オーストラリア国内の市場シェアについて 申立人は、自身のウェブサイトでの販売のほか、オーストラリア国内でもスーパーマーケットやドラッグストアでの販売に力を入れており(甲7)、2013年には、オーストラリア国内の4大小売店における日焼け関連化粧品(日焼け止め化粧品、日焼け用化粧品及びアフターサンローション)の市場シェアは、約16%、2位であった(甲8)。また、日焼け止め化粧品に絞ると、シェアは約4%、8位であり、日焼け用化粧品については、シェアは約46%、1位である(甲8)。 このように、引用商標に係る製品の売上高及び市場シェアは、オーストラリア国内の業界トップクラスである。 ウ ウェブサイトの訪問者数について 申立人のウェブサイトの訪問者数は、1年間(2019年8月1日?)で約8万6千人、申立人に対しコンタクトをしたのは約3万人、そのうち約2万4千人が毎月のメールマガジンを購読している(甲9)。 エ ソーシャルメディアのフォロワー数 申立人の「Instagram」のオーストラリア国内向けアカウントにおいては、約25万人のフォロワーがおり(甲10)、「Facebook」においては、約18万人のフォロワーがいる(甲11)から、人口が約2,500万人の同国においては、相当の認知度を誇る。 オ 宣伝広告について 申立人は、ここ10年では年間60万豪ドルから100万豪ドル(日本円にして4千万円から7千万円)程度の費用を投入し、引用商標を用いた製品の宣伝広告をしている(甲12、甲13)。 宣伝広告活動は、主にテレビ、ラジオ、雑誌並びにウェブ上で行っている(甲13?甲17)。 カ 小括 これらの事実を総合的に判断すれば、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、オーストラリアの需要者の間で広く認識されている商標であったというべきである。 (5)外国への輸出について 申立人は、2015年頃から外国への輸出を本格的にスタートさせ(甲5)、今後も輸出先を拡大する意向を有している。その足掛かりの一つとして各国に商標登録出願を行い、今のところ、オーストラリアのほか、ニュージーランド、米国、英国、欧州、中国、台湾及びインドネシアで商標登録を受けている(甲18)。 (6)申立人の日本への進出について 申立人は、引用商標を用いた製品を2019年4月から我が国で販売し始めたが、本件商標の登録出願前から各種ファッション情報サイトでも同ブランドの日本初上陸が話題となっていた(甲19)。現在でも、輸入総代理店による通信販売のほか、セレクトショップ等での店頭販売、各種通信販売サイトにて継続して販売されており(甲20、甲21)、我が国での販売開始から1年以上経過しているが、着々と認知度を高めている(甲22)。 (7)本件商標権者の不正の目的について 本件商標権者は、静岡県静岡市に本社を置く、化粧品、健康食品メーカーである(甲23の1)。化粧品は訪問販売及び美容室での販売が中心だったようであるが、現在はエステティックサロンでの対面販売に重点を置いているようである(甲24)。 ところで、本件商標権者は、用途ごとに複数の化粧品ブランドを有しているところ、その中に「LE TEMPS(ルタン)」という長年愛されているエイジングケア用のブランドがある(甲23の2)。「LE TEMPS(ルタン)」とは仏語で「時」を意味し、同ブランドにつき、昭和59年に商標登録(登録第1667582号)を受けている(甲25)。 本件商標権者は、本件商標を出願、登録をしたが、このように長年愛されているブランドを、称呼はそのまま据え置きつつ、つづり及びそこから生じる観念を根底から別異のものに変更せんとする意図は、社会通念上特異なものである。特に、エイジングケア化粧品の需要者層にとっては、あまり歓迎されない「日焼け」を意味する「Tan」というワードを用いることに強い違和感がある。もちろん、本件商標を日焼け止め化粧品に使用する可能性は否定できないが、本件商標権者の看板ブランドと称呼が共通する別ブランドを、全く用途の異なる商品について立ち上げるのは、商品に化体した業務上の信用を保護する趣旨からは、一般的には得策ではない。 また、本件商標の登録出願日(2019年6月20日)は、申立人の商品が我が国で紹介され始めた時期、つまり2019年4月から6月(甲19)に符合する。 そうすると、本件商標権者は、自身の看板ブランドと商標同士は非類似であるものの、称呼が共通する引用商標を何らかの形で発見し、オーストラリアにおいて周知、著名な引用商標の我が国への参入を阻止すべく本件商標を出願し、登録を受けたものと解するのが自然である。 (8)結論 上記のとおり、本件商標は引用商標と同一のつづりからなるところ、いずれも造語からなり、偶然に一致するとは考え難いこと、本件商標権者が自身の看板ブランドに係る登録商標と同一の称呼を生じさせるが、つづり、観念が異なる別異の商標を権利化するのは不自然であること、本件商標の指定商品が申立人の業務に係る商品「日焼け止め化粧品」等と同一又は類似のものであること、申立人が本件商標の登録出願日前から、諸外国においても引用商標と同一の構成からなる商標又は近似する商標を商標登録し、海外進出を図っていたこと等を総合すれば、本件商標権者は、本件商標が他人の業務に係る商品を表示するものとしてオーストラリアにおける需要者の間に相当程度広く認識されている商標と同一又は類似の商標であることを承知の上、引用商標及びこれと関連する商標が我が国において未だ登録されていないことを奇貨として、申立人の国内参入を阻止し、あるいは引用商標等の顧客吸引力を希釈化若しくは便乗し不当な利益を得る等の目的のもとに出願し、権利を取得したものと推認せざるを得ない。 (9)むすび 以上のとおり、本件商標は、他人の業務に係る商品を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と類似する商標であって、不正の目的をもって使用をするものであるから、商標法第4条第1項第19号に該当する。 4 当審の判断 (1)商標法第4条第1項第19号該当性について ア 申立人提出の証拠及び主張によれば、以下の事実が認められる。 (ア)申立人は、オーストラリアに所在する法人であって、1977年以降、同国において、「Le Tan」と称する「日焼け関連化粧品」(以下「申立人商品」という。)を販売している(甲4)ところ、申立人商品の包装には、引用商標と構成を共通にする商標(引用商標と同一の構成であって、「Le Tan」の文字部分の末尾に、円囲いした「R」の文字を加えてなる。)が付されている(甲8)。 (イ)申立人商品の売上高は、オーストラリア国内の売上及び同国外への輸出額を含めて、9年間(2011年?2019年)で、合計で約9千4百万豪ドル(日本円で約68億6千万円。1豪ドル=73.1円で換算。以下同じ。)であり、各年で変動はあるものの、年平均で約7億6千万円程度の売上規模になる(甲5)。 また、申立人商品の、オーストラリアの大手小売店4店における市場シェア(日焼け止め、日焼け剤及びアフターサンローション)は、2013年時点で、16%(2位)であったとされる(甲8)。 (ウ)申立人は、オーストラリアにおいて、テレビ、雑誌等を通じて、申立人商品に関するものを含む広告をしており、2011年(同年7月1日?翌年6月30日)の広告費用として約64万6千豪ドル(日本円で約4千7百万円)、2012年(同年7月1日?翌年6月30日)の広告費用として約61万8千豪ドル(日本円で約4千5百万円)を支出している(甲12、甲13)。 (エ)ウェブサイト(「Oggi.jp」、「VOCE」、「VOGUE」等)において、2019年4月17日から同年6月5日にかけて、申立人商品やその日本国内発売(同年4月18日)を紹介する記事情報が掲載されている(甲19の1?6)。 その後も、申立人商品は、我が国において、継続して販売、広告等がされており、取扱店は広い地域(東京、大阪、名古屋、札幌、福岡、沖縄等)に及んでいる(甲20?甲22)。 (オ)他方、本件商標権者は、静岡県所在の化粧品事業を行う企業(甲23の1、甲24)であって、「LE TEMPS」(ルタン)と称する、スキンケア化粧品を取り扱っている(甲23の2)。 そして、本件商標権者は、「LE TAN」の欧文字及び「ルタン」の片仮名を上下二段に表してなる本件商標を、令和元年(2019年)6月20日に登録出願し、同2年(2020年)5月14日に設定登録している。 イ 以上を踏まえると、引用商標に係る申立人商品は、オーストラリアにおいて、本件商標の登録出願日の40年以上前から販売されており、その売上規模(売上高、市場シェア)も相当程度あるから、広告宣伝のための経費支出は必ずしも多くないとしても、同国における需要者の間において、ある程度知られていることはうかがえる。 しかしながら、申立人提出の証拠によれば、引用商標と共通する構成文字(LE TAN)を含む本件商標は、我が国において申立人商品の発売が報道され始めた数か月後に登録出願されているものの、本件商標権者における出願経緯及び出願目的までは明らかではないから、本件商標が、その商標登録出願時において、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的)をもって使用又は出願されたものであると認めることはできない。 ウ 申立人は、本件商標権者は「LE TEMPS」(ルタン)という長年愛されている化粧品ブランドを有しながら、それと称呼を共通するものの、つづり及び観念が異なる本件商標を出願していること、そして、本件商標の登録出願日(2019年6月20日)は、申立人商品が我が国で紹介され始めた時期(同年4月?6月)に符号することなどを指摘した上で、本件商標権者は、自身の看板ブランドと商標は非類似であるものの、称呼が共通する引用商標を何らかの形で発見し、申立人商品の我が国への算入を阻止すべく、本件商標を出願、登録を受けたものと解するのが自然で、不正の目的があった旨を主張する。 しかしながら、本件商標権者に係る「LE TEMP」と称するブランドや申立人商品に係る報道と、本件商標の登録出願との具体的な関連性は必ずしも明らかではなく、出願目的や出願経緯を推し量る根拠としては不確かであるから、本件商標に係る不正の目的を認めることはできない。 なお、仮に本件商標権者が申立人商品に係る報道を知りながら本件商標を出願していたとしても、その出願目的としては様々な可能性があり得るもので、直ちに不正の目的(図利目的、加害目的、その他の取引上の信義則に反するような目的)の存在を認定し得ないことは明らかである。また、我が国における申立人商品に係る事業活動が、本件商標権者によって阻止又は阻害されている具体的な事実を示す証拠もない(むしろ、申立人は、我が国における申立人商品に係る事業を拡大している。)。 エ 以上のとおり、本件商標は、不正の目的をもって出願、使用されているものとは認められないから、引用商標と共通する構成文字を含むとしても、また、引用商標の外国(オーストラリア)における需要者の間における著名性の程度にかかわらず、商標法第4条第1項第19号に該当しない。 (2)結論 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものではなく、その登録は同条第1項の規定に違反してされたものではないもので、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲(引用商標。色彩は原本を参照。) |
異議決定日 | 2021-03-02 |
出願番号 | 商願2019-86422(T2019-86422) |
審決分類 |
T
1
651・
222-
Y
(W03)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 野口 沙妃 |
特許庁審判長 |
佐藤 松江 |
特許庁審判官 |
鈴木 雅也 阿曾 裕樹 |
登録日 | 2020-05-14 |
登録番号 | 商標登録第6251672号(T6251672) |
権利者 | 株式会社シャンソン化粧品 |
商標の称呼 | ルタン、タン、テイエイエヌ |
代理人 | 鈴木 亜美 |
代理人 | 水野 勝文 |
代理人 | 保崎 明弘 |
代理人 | 和田 光子 |
代理人 | 特許業務法人きさ特許商標事務所 |