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審決分類 審判 全部無効 観念類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W36
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W36
審判 全部無効 外観類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W36
審判 全部無効 称呼類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W36
管理番号 1371799 
審判番号 無効2019-890084 
総通号数 256 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-04-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2019-12-18 
確定日 2021-02-05 
事件の表示 上記当事者間の登録第5727369号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5727369号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5727369号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおり,「ロイヤルプラウド」の片仮名及び「ROYAL PROUD」の欧文字を上下二段に横書きしてなり,平成25年10月10日に登録出願,第36類「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供」を指定役務として,同26年11月11日に登録査定,同年12月19日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が,本件商標の登録の無効の理由において引用する商標は,以下の2件の登録商標(これら2件の登録商標をまとめていうときは,以下「引用商標」という。)であり,いずれも,現在有効に存続しているものである。
1 登録第4682402号商標(以下「引用商標1」という。)は,別掲2のとおり,「プラウド」の片仮名及び「PROUD」の欧文字を上下二段に横書きしてなり,平成14年10月30日に登録出願,第16類「印刷物」及び第36類「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供」を指定商品及び指定役務として,同15年6月13日に設定登録され,その後,同25年2月26日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。
2 登録第5065990号商標(以下「引用商標2」という。)は,別掲3のとおりの構成よりなり,平成18年11月17日に登録出願,「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供」を含む第36類,第16類及び第37類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として,同19年7月27日に設定登録されたものであり,その後,同29年7月11日に商標権存続期間の更新登録がされたものである。

第3 請求人の主張
請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第37号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求の理由の要点
本件商標は,引用商標に類似する商標であって,その登録に係る指定役務と同一又は類似する役務について使用をするものであるから,商標法第4条第1項第11号に該当する。
また,本件商標は,その指定役務に係る業界において,請求人が長年にわたって大々的に使用し,需要者・取引者の間で周知・著名となっている商標「PROUD(プラウド)」に類似し,請求人の業務に係る役務と混同を生ずるおそれがあるから,商標法第4条第1項第15号に該当する。
したがって,本件商標は同法第46条第1項第1号により,無効とされるべきである。
2 本件商標を無効とすべき理由
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標と引用商標の概要
本件商標は,片仮名「ロイヤルプラウド」と欧文字「ROYAL PROUD」を二段に併記した態様からなり,その指定役務は,第36類「建物の管理 建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供」である。
一方,引用商標1は,別掲2のとおりの構成態様からなり,第36類「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供」を指定役務に含むものである。
また,引用商標2は,別掲3のとおりの構成態様からなり,第36類「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供」を指定役務に含むものである。
イ 本件商標と引用商標の指定役務の類似性
本件商標及び引用商標とも第36類のいわゆる不動産業に係る役務をカバーする商標であり,本件商標と引用商標は,指定役務において同一又は類似するものである。
ウ 本件商標と引用商標の対比
本件商標の欧文字を観察すると,「L」と「P」の間にスペースが設けられているため,既成語である「ROYAL」と「PROUD」を結合した構成と看取され,上段の片仮名は,その自然な読みを併記したものと把握される。
そして,構成中「ROYAL(ロイヤル)」の文字は,比較的平易な英単語であって,「国王の,素晴らしい」といった意で我が国でも良く知られており(甲4),特に,商取引においては,商品・役務の等級が優れていることを示す品質誇称として使用されることが少なくない(甲5?甲8)。
したがって,本件商標中「ROYAL(ロイヤル)」の部分は,商標としての特徴が弱い部分と評価するのが適当である。
他方,「PROUD(プラウド)」の語については,「誇りに思う,自慢にする,尊大な」といった意味のある言葉であるが(甲4),何らかの商品・役務内容を普通に表すような意味合いは特になく,取引において普通に用いられているといった事情もないから,本件商標中「PROUD」は,「ROYAL」と比較して商標としての特徴は強いと見るべきであり,双方の識別性について,両語の間には大きな差違がある。
したがって,本件商標は,識別力の弱い誇称表示「ROYAL」が,「PROUD」とはスペースを持って分離して表記されていることから,識別力の強い「PROUD」が識別標識たる商標の要部と見られた上で,「ROYAL」はその誇称表示として,需要者・取引者に「PROUD」の高級版,上位モデルといった認識をさせるものである。
以上のとおり,本件商標から「ROYAL」が捨象され,「PROUD」が商標の要部として取引に資されることは明らかである。
そして,本件商標の要部「PROUD」で比較すれば,引用商標と欧文字の構成が同一であることから,まず称呼が同一であり,また,観念及び外観についても共通することから,本件商標は,引用商標に類似する。
加えて,請求人の使用に係る引用商標「PROUD(プラウド)」は,本件商標の指定役務に係る不動産の需要者・取引者の間で広く知られた商標である。
そうすると,誇称表示にすぎない「ROYAL」に比べて,周知・著名商標である「PROUD」の識別力は圧倒的であり,本件商標において「PROUD」の部分こそ識別標識として強く支配的といえる。
したがって,本件商標は,「PROUD」の部分のみでの比較が免れないものである。
エ まとめ
以上のように,本件商標は,「PROUD(プラウド)」の部分が商標の要部となって取引に資されるものであり,当該要部と称呼,外観及び観念を共通にする引用商標に類似であり,かつ,引用商標の指定役務と同一又は類似の役務について使用するものであるから,商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号について
ア 請求人商標「PROUD(プラウド)」の著名性について
(ア)総論
請求人は,マンション・戸建分譲やビル賃貸などの不動産事業等を営む企業であって,半世紀以上もの長期間にわたって大々的に事業を展開してきた業界大手である。
そして,「PROUD(プラウド)」は,請求人による住宅事業の中核ブランドであり,2002年12月のブランドリリース以来,今日に至るまで首都圏・関西・名古屋・仙台といった大都市圏において大規模に事業展開しており,その結果,「PROUD」ブランドは,請求人の建築物件を表示する商標として,不動産業界はもちろんのこと,一般需要者の間でもあまねく知られるに至っている。
(イ)請求人の「PROUD(プラウド)」に係る事業について
「PROUD」は,請求人による住宅事業の基幹ブランドであり,主に分譲マンションシリーズの物件名として用いられている。
具体的には,「プラウド中目黒」(甲11)のように,「PROUD(プラウド)」に物件の所在地を後続させた構成か,「プラウド鷺宮エアリーコート」(甲11)のように同所在地の物件が二軒目以降になる等の理由から,その後ろにさらにサブネームを付加して物件名として使用している。
請求人は,「PROUD」を高級マンション(住宅)と呼ぶに相応しい同社最上級の物件に一貫して使用している。
なお,前述の「プラウド中目黒」や「プラウド鷺宮エアリーコート」は,標準的な中層階の物件であり,これらと同様の物件については基本的に「プラウド」を単独で使用しており,大規模物件については物件自体が一種の街をなすとの考えから「プラウドシティ」を主に使用し,また,高層階の物件には「プラウドタワー」,戸建分譲住宅には「プラウドシーズン」,さらには賃貸物件に「プラウドフラット」を使用して全体のブランドコンセプトを統一しつつ,様々な種類の物件を展開している。
「PROUD」をシリーズ化して幅広く事業展開することで,消費者への効果的な浸透を図っており,前記いずれのシリーズ名称も請求人が商標登録を確保している。
請求人の手掛ける「PROUD」ブランドの物件は,ブランド立ち上げから今日まで既に数百件を数え,住宅物件のシリーズ名称として,国内最多規模を誇っている。
2008年から本件商標の登録時までの分譲開始物件に限ってみても,首都圏279件,関西65件,名古屋(愛知)46件,仙台23件と数多く存在する(甲12)。
かかる精力的な事業展開により,請求人は,2012年には,全国のマンション供給戸数ランキングで業界首位となっているが(甲13),そのほとんどは「PROUD」を冠した物件である。
(ウ)個別物件の広告実績
モデルルームでは,「PROUD」ブランドを随所に表示して宣伝広告しているが,来場者・購入希望者に配布される個別物件のパンフレット類一式もその一例である(甲14の1?甲14の12)。このようなパンフレット類は,分譲マンションの販売に際して重要であるため,おおむね全ての物件について作成している。
また,請求人は,各「PROUD」物件の発売時期に合わせ,その物件の近隣を中心にチラシ広告を行っている。典型的な配布方法は,新聞紙の折込チラシ,及び投函であり,1物件につき数種類の折込チラシを配布することも珍しくないが,代表的なチラシを提出する(甲15の1?甲15の11)。
各チラシの配布枚数は,2008年には,首都圏の物件だけで約1億2,400万部,全国合計では約1億2,700万部もの大量のチラシを作成・配布しており,以降,全国で,2009年は約7,500万部,2010年は約6,800万部,2011年は約1億部,2012年は約1億5,400万部,2013年は約9,000万部,2014年は約7,300万部にも上っている。
個別物件の広告では,不動産情報誌における雑誌広告を行っており,「株式会社リクルート」が発行し,不動産情報誌として最大の発行部数を誇る「SUUMO(スーモ)(首都圏版)」において,「PROUD」の宣伝広告を大量に行っている(甲17の1?甲17の25)。
前述のとおり,「PROUD」の物件数は非常に多く,常にいずれかの物件が分譲販売中の状況にあるため,毎号のように「PROUD」の物件情報が掲載されている。
また,請求人はインターネットを活用した広告も積極的に展開しており,「PROUD」では,分譲販売中の全ての物件について,専用のホームページを製作し一般公開している(甲19の1?甲19の27)。
そして,様々なサイトにバナー広告を貼って「PROUD」を露出すると共に(甲20),各物件のホームページに誘導することで物件情報の提供を行っている。
物件別のバナー広告の表示回数は,物件リスト「WEB広告(バナー)の表示回数」の列に示すとおりであり,現状確認できるものだけでも,全国合計で,2011年は約3億9,000万回,2012年には13億回超,2013年14億回超,2014年20億回超,2015年34億回超といった膨大な閲覧回数に上っている(甲12)。
以上のように,請求人は様々なメディアを通じて,「PROUD」物件を大々的に宣伝広告している。これら広告物には引用商標と実質的に同一の標章が顕著に表示されているから,需要者が引用商標を目にする機会は極めて多い。
(エ)「PROUD」のイメージ広告の実績
請求人は,「PROUD」ブランドのリリース以降,毎年ほぼ定期的に新春と夏の2季,東京・大阪・愛知・宮城及びその近郊で大々的にテレビCMを行っており,請求人の「PROUD」ブランドは,テレビという強力な情報伝達媒体を介して大々的に宣伝されている。
CMの内容は,放映時期によって異なるものの,請求人商標「PROUD」が大きく表示されるとともに,印象的な「プラウド」の音声が用いられているといった点では一貫している(甲21)。
してみれば,請求人商標の露出が莫大であることは想像に難くない。
「PROUD」ブランドのイメージ広告は,新聞紙上でも大々的に行われており,請求人は,これまで日本経済新聞,朝日新聞をはじめとする全国紙及び有力紙に多数広告を出稿しているが(甲25),特に日本経済新聞には,2008年ないし2017年の毎年少なくとも新春の時期に,全面広告(15段サイズ)を掲載している。
2008年以降の日本経済新聞における新聞広告の実施概要(甲26)と,代表的な広告例(甲27の1?甲27の7)及び広告原稿写しを提出する(甲28の1?甲28の10)が,広告例(甲27の1?甲27の7)から分かるように,請求人の広告が紙面全体,あるいは見開きの全体を占めており,かつ,「PROUD」が紙面の目立つ箇所に顕著に表示されていることから,「PROUD」ブランドが読者の記憶に鮮明に残ることは確実である。
数百万部の発行部数を誇る日本経済新聞等の全国紙に,「PROUD」の全面広告がカラーで,かつ,全国通しで出稿されており,毎年数億円もの広告費用を費やしているが,これによる一般需要者に対する請求人商標「PROUD」の露出と影響は絶大なものといわなければならない。
請求人は,さらに,前記リクルート社が発行する有力な住宅情報誌「SUUMO新築マンション」などに「PROUD」のイメージ広告や特集記事を掲載している(甲29の1?甲29の21)。リクルート社の各種雑誌に掲載した各年の広告回数は,2008年については毎月欠かさず計56回,2009年は計20回,2010年8回,2011年8回,2012年11回,2013年9回,2014年6回といった具合であり,2010年以降は減少傾向にあるが,これはインターネット広告に重点をシフトしているためである。
また,需要者におけるインターネット利用とその影響力の拡大に伴い,昨今,請求人は,インターネット広告を重視している。
「PROUD」に関する年次別の広告宣伝費実績(甲31)を見ると,全体では毎年80億円から100億円超もの莫大な巨費を投下して,積極的に「PROUD」の宣伝広告を実施しているが,それに占めるインターネット広告費の割合は年々増加しており,現在では30億円から40億円超となっている。
その他,「PROUD」の公式ウェブサイトを開設して,ブランドの浸透を図っているほか,住宅情報サイト「SUUMO」の公式サイトや,「Yahoo!JAPAN」のような知られたポータルサイトに,物件別若しくは「PROUD」ブランドのバナー広告を貼ることで,不動産の需要者にとどまらず一般需要者にとっても,同ブランドを目にする機会は極めて多い。
さらに,請求人の「PROUD」物件はデザインにおいても高く評価されており,毎年のようにグッドデザイン賞を受賞している(甲33)。
グッドデザイン賞受賞により,世間の注目はより一層「PROUD」物件に集まったといえるから,その受賞歴は「PROUD」ブランドの浸透や名声の高揚に多大な貢献をしている。
(オ)請求人の「PROUD」に対する一般認識
上述したような請求人の積極的な広告戦略と企業努力により,「PROUD」ブランドは請求人の住宅事業の中核ブランドとしての地位を確立すると共に,その名声は同業大手の主力マンションブランドを凌駕するほどに,日本全国にあまねく知れわたっており,需要者・取引者の間で請求人の「PROUD」が周知・著名であることに疑いの余地はない。
2009年に日本経済新聞社が実施したマンションブランドに関するアンケートにおいて,請求人の「PROUD」の認知度は,「ライオンズマンション」に続く第2位を獲得しており,回答者の69.3%が「PROUD」を知っていると回答している(甲34の1)。
また,同アンケートでは,「PROUD」のブランドイメージについて,「安心感がある」「高級感がある」「一流である」「信頼性がある」「洗練されている」「センスがよい」「個性がある」といった項目で第1位を獲得しており,「PROUD」に対する信用の蓄積がうかがえる。
このアンケートは毎年継続して実施されており,2010年以降の「PROUD」の認知度(甲34の2?甲34の10)からも,継続的に8割前後の需要者が「PROUD」を知っていると回答しており,マンションブランドとして「PROUD」が周知・著名であることは明らかである。
また,新聞・雑誌において,請求人の「PROUD」が記事になった事例(甲35の1?甲35の275)を見ても,請求人の「PROUD」が需要者・取引者の間で高い信用と人気のほどが容易にうかがい知れる。
このことからも首肯されるように,「PROUD」ブランドヘの信用と人気は非常に高く,需要者・取引者一般において,「PROUD」が既に広く知られていたことは明らかであり,その名声は今なお高まり続けている。
(カ)周知・著名性に関するまとめ
以上のような長年にわたる請求人による事業活動や広告戦略により,本件商標の登録日前の段階において,「PROUD(プラウド)」が請求人の不動産事業に係る商標として,周知・著名であったことに疑いの余地はない。
イ 混同のおそれについて
請求人の商標「PROUD(プラウド)」が不動産分野において周知著名であることや,「プラウドシーズン」「プラウドタワー」「プラウドシティ」「プラウドクラブ」などを含む「PROUD」ブランドがシリーズ化して大々的に事業展開されていることは,さきに述べたとおりである。
そして,本件商標は「ROYAL(ロイヤル)」と「PROUD(プラウド)」を結合した構成である。
「ROYAL(ロイヤル)」の語は,「国王の,素晴らしい」の意味があり,取引においては品質・誇称表示として「極上の,上級の」との意味合いを有するところ,不動産業において周知著名となっている「PROUD(プラウド)」と結合した場合には,数々の請求人「PROUD」シリーズの一つのように把握され,「ROYAL(ロイヤル)」はその誇称表示として,あたかも請求人「PROUD」の高級版,上位モデルであるかのごとく誤認混同するであろうことは想像に難くない。
したがって,業界における請求人商標の高い周知著名性にかんがみると,本件商標の使用が,請求人の業務との関係で出所の混同を生ずるおそれがあることは明らかであり,請求人の長年にわたる真摯な事業活動とブランドマネジメントにより築いてきた「PROUD(プラウド)」の信用や顧客吸引力を毀損又は希釈化させるおそれもあるといわざるを得ない。
ウ まとめ
以上のことからすれば,本件商標に接する需要者・取引者は,その指定役務である不動産業界で周知著名な請求人の「PROUD(プラウド)」を捉えて,請求人の業務に係る商品・役務であるかのように誤認し,あるいは,請求人と経済的ないし組織的に何らかの関係を有する者の提供する商品・役務であるかのように誤認して,出所の混同を生ぜしめるおそれがある。
したがって,本件商標がその指定役務について使用された場合には,請求人の業務に係る役務と混同を生ずるおそれがあるから,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。
3 結語
以上のように,本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当し,商標登録を受けることができないものであるから,その登録は同法第46条第1項第1号により,無効とされるべきである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は,本件審判の請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁し,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として乙第1号証及び乙第2号証を提出した。
1 答弁の理由
(1)拒絶理由通知の内容
本件商標に係る審査において,平成26年(2014年)3月3日付けで拒絶理由が通知された。拒絶理由通知の内容は,「この商標登録出願に係る商標は,引用商標1(登録第4682402号)及び引用商標2(登録第5065990号)と同一又は類似であって,その商標に係る指定商品(指定役務)と同一又は類似の商品(役務)について使用するものであるから,商標法第4条第1項第11号に該当する。」というものである(乙1)。
(2)意見書の内容
これに対して,商標登録出願人(被請求人)は,平成26年(2014年)4月8日付けで意見書を提出した。意見書では,「本願商標は,『ROYAL』(A)に『PROUD』(B)を結合した商標である。」と述べた上で,A+Bの商標とAあるいはBの商標とを非類似と判断した登録例を列挙し,商標法第4条第1項第11号には該当しない旨を主張した(乙2)。
そして,意見書の主張が認められた結果,平成26年(2014年)11月11日付けで登録査定となった。
(3)審査における判断の尊重
本件商標の審査段階で引用された引用商標1及び引用商標2は,本件審判請求書に記載された商標法第4条第1項第11号の先願先登録商標と同一である。すなわち,請求人は,審査段階と同一の引用商標に基づいて同法第4条第1項第11号に該当するとの主張をしている。
また,請求人は,請求人の使用する商標「PROUD(プラウド)」の周知・著名性に基づいて商標法第4条第1項第15号に該当すると主張しているが,本件商標の審査段階において同号に関する指摘は一切なされていない。
被請求人は,本件商標の審査を通してなされた本件商標の有効性の判断について何ら疑念を抱くことなく商標登録を維持してきたものである。いったん認められた商標登録が無効とされることは制度上認められるものとしても,審査における判断は十分に尊重されるべきものである。
(4)むすび
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当するものではなく,その商標登録は同法第46条第1項第1号に該当しない。

第5 当審の判断
請求人が本件審判を請求するにつき,利害関係について争いがないから,本案について判断する。
1 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用商標の周知性について
ア 請求人の提出した証拠及びその主張によれば,以下のとおりである。
(ア)請求人は,マンション・戸建分譲やビル賃貸などの不動産事業を営む企業であって,半世紀以上もの長期間にわたって事業を展開してきた。
(イ)「PROUD(プラウド)」は,請求人による住宅事業の中核ブランドであり,2002年12月のブランドリリース以来,今日に至るまで首都圏・関西・名古屋・仙台といった大都市圏において大規模に事業展開している。
(ウ)「PROUD」,「プラウド」は,主に分譲マンションシリーズの物件名として用いられている(甲11)。
(エ)請求人の手掛ける「PROUD」,「プラウド」ブランドの物件は,ブランド立ち上げから今日まで既に数百件を数え,住宅物件のシリーズ名称として,国内最多規模であり,2008年から本件商標の登録時までの分譲物件に限ってみても,首都圏,関西,名古屋(愛知),仙台といった地域に数多く存在することがうかがえる(甲12)。2012年には,全国のマンション供給戸数ランキングで業界首位となっており(甲13),そのほとんどは「PROUD」を冠した物件である。
(オ)分譲マンションの販売に際して,モデルルームでは「PROUD」ブランドを表示して宣伝広告をしており,個別物件のパンフレット類には引用商標2が表示されている(甲14)。
(カ)請求人は,各「PROUD」物件の発売時期に合わせ,その物件の近隣を中心にチラシ広告を行っているとし,新聞の折込チラシの写しにも引用商標2が表示されている(甲15)。
各チラシの配布枚数は,2008年には,首都圏の物件だけで約1億2,400万部,全国合計では約1億2,700万部のチラシを作成・配布しており,以降,全国で,2009年は約7,500万部,2010年は約6,800万部,2011年は約1億部,2012年は約1億5,400万部,2013年は約9,000万部,2014年は約7,300万部である(甲12,甲16)。
(キ)個別物件の広告については,「株式会社リクルート」が発行する不動産情報誌「SUUMO(スーモ)(首都圏版)」において,「PROUD(プラウド)」の宣伝広告を行う(甲17)と共に,不動産情報検索サイト「SUUMO」(関東版)においても「PROUD(プラウド)」の宣伝広告を行っている(甲18)。
(ク)請求人はインターネットを活用した広告も展開しており,分譲販売中の「PROUD(プラウド)」物件について,専用のホームページを製作し一般公開しており(甲19),また,様々なサイトにバナー広告を貼って誘導することで物件情報の提供を行っている(甲20)。そして,それらの広告には,引用商標2が表示されている。
(ケ)請求人は,「PROUD」ブランドのリリース以降,東京・大阪・愛知・宮城及びその近郊でテレビCMを行っており(甲21,甲22),また,日本経済新聞,朝日新聞をはじめとする全国紙及び有力紙に多数広告を出稿している(甲25?甲28)。
(コ)請求人は,住宅情報誌などに「PROUD(プラウド)」のイメージ広告や特集記事を掲載しており(甲29),リクルート社の各種雑誌に掲載した広告回数は,2008年56回,2009年20回,2010年8回,2011年8回,2012年11回,2013年9回,2014年6回である(甲30)。
(サ)「PROUD(プラウド)」に関する2008年度ないし2017年度の年別の広告宣伝費の実績は,全体では毎年80億円から100億円超である(甲31)。
(シ)請求人の「PROUD(プラウド)」物件は,2004年ないし2018年の間,毎年のようにグッドデザイン賞を受賞している(甲33)。
(ス)2009年に日本経済新聞社が実施したマンションブランドに関するアンケートにおいて,請求人の「PROUD(プラウド)」の認知度は,「ライオンズマンション」に続く第2位を獲得しており,回答者の69.3%が「PROUD(プラウド)」を知っていると回答している(甲34の1)。当該アンケートは毎年継続して実施されており,2010年ないし2018年の認知度も第2位を獲得し,おおむね7割から8割程の需要者が「PROUD(プラウド)」を知っていると回答している(甲34の2?甲34の10)。
(セ)新聞・雑誌においても,請求人の「PROUD(プラウド)」に関する記事が多く掲載されている(甲35)。
イ 判断
引用商標2について防護標章登録が認められていること(甲10),及び上記認定事実を総合勘案すれば,引用商標2は,「建物(マンション)の売買」について,請求人が使用する商標として,本件商標の登録出願前から,取引者,需要者の間において広く認識されており,それが本件商標の登録査定時においても継続しているものというのが相当である。
そして,引用商標2は,別掲3のとおりの構成よりなるところ,「PROUD」の欧文字を顕著に有するものであり,上記アに挙げたような紹介記事を併せてみれば,「PROUD」及び「プラウド」の文字も,「建物(マンション)の売買」について,請求人が使用する商標として,本件商標の登録出願前から,取引者,需要者の間に広く認識されているというのが相当である。
そうすると,引用商標は,請求人の取扱いに係る「建物(マンション)の売買」を表示するものとして,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,取引者,需要者の間に広く認識されているものというべきである。
(2)本件商標と引用商標の類似性について
本件商標は,「ロイヤルプラウド」の片仮名及び「ROYAL PROUD」の欧文字を上下二段に横書きした構成からなるところ,その構成中には,請求人の取扱いに係る「建物(マンション)の売買」を表示するものとして,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,取引者,需要者の間に広く認識されている「プラウド」又は「PROUD」の文字が顕著に含まれていることからすれば,本件商標と引用商標の類似性の程度は高いというべきである。
(3)本件商標の指定役務と請求人の業務に係る役務との関連性について
本件商標の指定役務中には,「建物の売買」が含まれており,当該役務は,請求人の業務に係る「建物(マンション)の売買」と同一又は類似するものである。また,「建物の売買」以外の指定役務である「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供」と請求人の業務に係る「建物(マンション)の売買」は,いずれも主として,宅地建物取引業法の規制を受ける不動産関連業務というべきものであって,同一の事業者が提供する場合が多いものといえる。
そうすると,本件商標の指定役務と請求人の業務に係る役務とは,関連性の高い役務というのが相当である。
(4)需要者の共通性について
上記(3)のとおり,本件商標の指定役務と請求人の業務に係る役務とは,関連性の高い役務であるから,需要者の範囲を共通にすることも多いものである。
(5)小括
以上のとおり,引用商標は,我が国において,請求人の業務に係る役務を表示するものとして,需要者及び取引者の間に広く認識されていたといえるものであり,請求人の業務に係る役務と本件商標の指定役務は,関連性が高く,需要者を共通にするものであって,かつ,本件商標と引用商標の類似性の程度は高いものである。
そうすると,本件商標権者が,本件商標をその指定役務に使用した場合,これに接する需要者,取引者は,引用商標を連想又は想起し,その役務が請求人あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように,その役務の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標
本件商標は,前記第1に示したとおりの構成からなるところ,構成各文字は外観上まとまりよく一体的に表されており,その構成全体より生ずる「ロイヤルプラウド」の称呼も無理なく一連に称呼し得るものである。
そして,「ロイヤルプラウド」又は「ROYAL PROUD」のいずれの文字も辞書等に載録のある成語ではなく,本件商標構成中の「ロイヤル」及び「ROYAL」の文字部分が「王の,王室の,最良の,最高の」等を意味する語(甲4)であるとしても,当該語が役務の質等を具体的に表示するものとして直ちに理解されるとはいい難いものであるから,本件商標は,その構成全体をもって一体不可分の造語と認識し,把握されるとみるのが自然である。
そうすると,本件商標は,その構成文字全体に相応して,「ロイヤルプラウド」の称呼のみを生じ,特定の観念を生じないものである。
(2)引用商標
引用商標1及び引用商標2は,前記第2に示したとおりの構成からなるところ,いずれも「PROUD」又は「プラウド」の文字を顕著に有するものであるから,当該文字に相応して「プラウド」の称呼が生じ,「誇りに思う,自慢にする」(甲4)等の観念を生ずるものであり,また,上記1(1)のとおり,引用商標は,請求人の取扱いに係る「建物(マンション)の売買」を表示するものとして,取引者,需要者の間に広く認識されていることからすれば,「請求人の取扱いに係るマンションのブランド」の観念が生ずるものである。
(3)本件商標と引用商標の類否
本件商標と引用商標は,それぞれ,上記(1)及び(2)のとおりの構成よりなるところ,外観においては,「ROYAL」及び「ロイヤル」の文字の有無という明らかな差異を有するものであるから,判然と区別し得るものである。
そして,本件商標から生ずる「ロイヤルプラウド」の称呼と引用商標から生ずる「プラウド」の称呼とは,構成音数,構成音が明らかに異なるものであるから,明瞭に聴別できるものである。
また,引用商標は,「誇りに思う,自慢にする」,「請求人の取扱いに係るマンションのブランド」の観念を生ずるのに対し,本件商標は特定の観念を生じないものであるから,観念において,紛れるおそれはない。
そうすると,本件商標と引用商標とは,外観,称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標というのが相当である。
(4)小括
上記(3)のとおり,本件商標と引用商標は,非類似の商標であるから,両商標の指定役務が類似するものであるとしても,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 むすび
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当しないとしても,同第15号に該当するものであり,その登録は,同条第1項の規定に違反してされたものであるから,同法第46条第1項の規定に基づき,その登録を無効とすべきである。
よって,結論のとおり審決する。

別掲
【別掲1】
本件商標


【別掲2】
引用商標1


【別掲3】
引用商標2(色彩は原本参照)


審理終結日 2020-12-02 
結審通知日 2020-12-07 
審決日 2020-12-23 
出願番号 商願2013-79394(T2013-79394) 
審決分類 T 1 11・ 261- Z (W36)
T 1 11・ 262- Z (W36)
T 1 11・ 271- Z (W36)
T 1 11・ 263- Z (W36)
最終処分 成立  
特許庁審判長 山田 正樹
特許庁審判官 鈴木 雅也
冨澤 美加
登録日 2014-12-19 
登録番号 商標登録第5727369号(T5727369) 
商標の称呼 ロイヤルプラウド、ローヤルプラウド、ロイアルプラウド、ロイヤル、ローヤル、ロイアル、プラウド 
代理人 一色国際特許業務法人 
代理人 信末 孝之 

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